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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1368060
異議申立番号 異議2019-700765  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-26 
確定日 2020-09-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6490380号発明「茹で麺の製造方法、茹で麺、及び茹で麺の保存後の食感改善方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6490380号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6-8〕について訂正することを認める。 特許第6490380号の請求項1、2、4?7に係る特許を維持する。 特許第6490380号の請求項3、8に係る特許についての特許異議の申立を却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6490380号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成26年10月3日の出願であって、平成31年3月8日に特許権の設定登録がされ、同年3月27日にその特許公報が発行された。本件特許異議申立の経緯は次のとおりである。

令和元年 9月26日 :特許異議申立人 落合憲一郎による特許異議
の申立て
同年11月27日付け:取消理由通知
令和2年 1月28日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 3月10日 :特許異議申立人 落合憲一郎による意見書の
提出
同年 3月31日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 5月18日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出

なお、令和2年1月28日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、令和2年6月2日付けで特許異議申立人に対して、期間を指定して、特許法第120条の5第5項の規定に基づく通知をするとともに訂正請求書等を送付し、意見書の提出を求めたが、特許異議申立人からは、指定期間内に意見書の提出はなかった。

第2 訂正の適否
1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容
特許権者が令和2年5月18日付け訂正請求書により請求する訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?8について訂正することを求めるものである。
その請求の内容は、請求項1?5からなる一群の請求項に係る訂正及び請求項6?8からなる一群の請求項に係る訂正であって、以下の訂正事項1?6のとおりのものである。

(1)訂正事項1
訂正前の請求項1に
「たん白質抽出率が30%以下の乾麺を、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬する工程、及び浸漬後の麺を茹でる工程、を含むことを特徴とする茹で麺の製造方法であって、前記茹で麺が、冷蔵又は冷凍保存用である茹で麺の製造方法。」と記載されているのを、
「たん白質抽出率が30%以下の乾麺を、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬する工程、及び浸漬後の麺を茹でる工程、を含み、前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加することを特徴とする茹で麺の製造方法であって、前記茹で麺が、冷蔵又は冷凍保存用である茹で麺の製造方法。」に訂正する(当審にて、訂正部分に下線を追加した。以下同様)。また請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、4及び5についても同様に訂正する。

(2)訂正事項2
訂正前の請求項3を削除する。

(3)訂正事項3
訂正前の明細書の段落【0010】に「上記目的は、たん白質抽出率が30%以下の乾麺を、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬する工程、及び浸漬後の麺を茹でる工程、を含むことを特徴とする茹で麺の製造方法であって、前記茹で麺が、冷蔵又は冷凍保存用である茹で麺の製造方法によって達成される。」と記載されているのを、「上記目的は、たん白質抽出率が30%以下の乾麺を、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬する工程、及び浸漬後の麺を茹でる工程、を含み、前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加することを特徴とする茹で麺の製造方法であって、前記茹で麺が、冷蔵又は冷凍保存用である茹で麺の製造方法によって達成される。」に訂正し、同段落の「これにより、冷蔵又は冷凍保存した後の食感の低下が生じ難い茹で麺が得られる。」の後に、「前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加することにより、さらに浸漬時の澱粉の溶出を防止でき、得られた茹で麺において、より冷蔵又は冷凍保存後の食感の低下を抑制することができる。」を追加し、明細書の段落【0012】の(2)の記載を削除する。

また、訂正前の明細書の段落【0017】に「本発明の茹で麺の製造方法は、たん白質抽出率が30%以下の乾麺を麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬する工程、及び浸漬後の麺を茹でる工程、を含み、前記茹で麺が、冷蔵又は冷凍保存用である。」と記載されているのを、「本発明の茹で麺の製造方法は、たん白質抽出率が30%以下の乾麺を麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬する工程、及び浸漬後の麺を茹でる工程、を含み、前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加することを特徴とし、前記茹で麺が、冷蔵又は冷凍保存用である。」に訂正し、段落【0024】に「本発明において、浸漬水に浸漬する工程は、浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記浸漬水に有機酸を添加することが好ましい。」と記載されているのを、「本発明において、浸漬水に浸漬する工程は、浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加する。」に訂正する。

さらに、訂正前の明細書の段落【0035】【表1】、【0036】、【0038】【表2】、【0039】、【0041】【表3】、【0042】、【0044】【表4】、【0045】、【0046】、【0047】【表5】、【0048】【表6】及び【0049】において、実施例1?15、実施例18、実施例21及び実施例22を、それぞれ参考例1?15、参考例18、参考例21及び参考例22に訂正する。また段落【0036】及び【0039】の「実施例」(当審注:数字を伴わないもの。)との記載を「参考例」に訂正する。

(4)訂正事項4
訂正前の請求項6に「乾麺を茹でることで得られる茹で麺の、冷蔵又は冷凍保存後の食感を改善する方法であって、前記乾麺のたん白質抽出率が30%以下であり、前記乾麺を茹でる前に、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬することを含むことを特徴とする方法。」と記載されているのを、「乾麺を茹でることで得られる茹で麺の、冷蔵又は冷凍保存後の食感を改善する方法であって、前記乾麺のたん白質抽出率が30%以下であり、前記乾麺を茹でる前に、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬することを含み、前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加することを特徴とする方法。」に訂正する。また、請求項6の記載を直接的に引用する請求項7についても同様に訂正する。

(5)訂正事項5
訂正前の請求項8を削除する。

(6)訂正事項6
訂正前の明細書の段落【0014】に「上記目的は、乾麺を茹でることで得られる茹で麺の、冷蔵又は冷凍保存後の食感を改善する方法であって、前記乾麺のたん白質抽出率が30%以下であり、前記乾麺を茹でる前に、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬することを含むことを特徴とする方法によって達成される。」と記載されているのを、「上記目的は、乾麺を茹でることで得られる茹で麺の、冷蔵又は冷凍保存後の食感を改善する方法であって、前記乾麺のたん白質抽出率が30%以下であり、前記乾麺を茹でる前に、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬することを含み、前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加することを特徴とする方法によって達成される。」に訂正し、明細書の段落【0015】の(2)の記載を削除する。
また訂正前の明細書の段落【0029】に「本発明は、乾麺を茹でることで得られる茹で麺の、冷蔵又は冷凍保存後の食感を改善する方法であって、前記乾麺のたん白質抽出率が30%以下であり、前記乾麺を茹でる前に、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬することを含むことを特徴とする方法を提供する。」と記載されているのを、「本発明は、乾麺を茹でることで得られる茹で麺の、冷蔵又は冷凍保存後の食感を改善する方法であって、前記乾麺のたん白質抽出率が30%以下であり、前記乾麺を茹でる前に、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬することを含み、前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加することを特徴とする方法を提供する。」に訂正する。

2 訂正目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について

ア 訂正目的の適否について
訂正前の請求項1には乾麺を浸漬水に浸漬する工程について、「麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬する」ことのみが特定されていたところ、訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1の乾麺を浸漬水に浸漬する工程について「前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加する」ことをさらに特定し、請求項1に係る発明を限定したものであるから、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。請求項1を引用する請求項2、4及び5の訂正についても同様である。

イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正前の請求項3には「前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記浸漬水に有機酸を添加する」という工程が記載され、発明の詳細な説明【0031】にはその具体的な態様として「2.茹で麺の作製方法
(1)乾麺の浸漬水への浸漬
バットに乾麺200g、及び常温の浸漬水(水、又は有機酸あるいはpH調整剤を含有させた実施例の場合は、表に記載した通り、有機酸あるいはpH調整剤を添加した)600g(乾麺の3倍量)を投入し、各実施例で設定した麺の水分になるように、浸漬時間を調整して浸漬した。浸漬温度は25℃で実施した。」と記載されている。
この記載からみて、訂正前の請求項3に記載された「前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記浸漬水に有機酸を添加する」という工程には、乾麺を浸漬する前の浸漬水に有機酸を添加しておき、これに乾麺を浸漬して、浸漬後の麺のpHを4.0?6.0の範囲とする態様が含まれていたことは明らかといえる。
したがって、訂正事項1は、訂正前の請求項3及び訂正前の発明の詳細な説明【0031】の記載に基づいた技術的事項を追加したものであるから、本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。請求項1を引用する請求項2、4及び5の訂正についても同様である。

ウ まとめ
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について

ア 訂正目的の適否について
訂正事項2は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。

イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで述べたとおり、訂正事項2は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ まとめ
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3について

ア 訂正目的の適否について
訂正事項3に係る明細書についての訂正は、上記訂正事項1及び2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合性をとるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものといえる。

イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3に係る明細書についての訂正は、訂正事項1及び2によって、請求項1に訂正前の請求項3及び発明の詳細な説明【0031】に記載された事項に基づく技術的事項を組み込みむとともに、請求項3を削除したのに伴って、明細書の課題を解決するための手段、発明を実施するための形態、及び実施例の記載を、訂正事項1と2に整合するものとしたものであるから、請求項に記載された事項の解釈に影響を与えるものではない。
よって、上記訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ まとめ
したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項4について

ア 訂正目的の適否について
訂正前の請求項6には「乾麺を茹でる前に、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬する」ことのみが特定されていたところ、訂正事項4に係る請求項6についての訂正は、「前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加する」ことをさらに特定し、請求項6に係る発明を限定したものであるから、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。請求項6を引用する請求項7の訂正についても同様である。

イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正前の請求項8には「前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記浸漬水に有機酸を添加する」という工程が記載され、発明の詳細な説明【0031】にはその具体的な態様として「2.茹で麺の作製方法
(1)乾麺の浸漬水への浸漬
バットに乾麺200g、及び常温の浸漬水(水、又は有機酸あるいはpH調整剤を含有させた実施例の場合は、表に記載した通り、有機酸あるいはpH調整剤を添加した)600g(乾麺の3倍量)を投入し、各実施例で設定した麺の水分になるように、浸漬時間を調整して浸漬した。浸漬温度は25℃で実施した。」と記載されている。
この記載からみて、訂正前の請求項8に記載された「前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記浸漬水に有機酸を添加する」という工程には、乾麺を浸漬する前の浸漬水に有機酸を添加しておき、これに乾麺を浸漬して、浸漬後の麺のpHを4.0?6.0の範囲とする態様が含まれていたことは明らかといえる。
したがって、訂正事項4は、訂正前の請求項6に訂正前の請求項8及び発明の詳細な説明【0031】の記載に基づいた技術的事項を追加したものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。請求項6を引用する請求項7の訂正についても同様である。

ウ まとめ
したがって、訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項5について

ア 訂正目的の適否について
訂正事項5は、訂正前の請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。

イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで述べたとおり、訂正事項5は、訂正前の請求項8を削除するものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ まとめ
したがって、訂正事項5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(6)訂正事項6について

ア 訂正目的の適否について
訂正事項6に係る明細書についての訂正は、上記訂正事項4及び5に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合性をとるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものといえる。

イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項6に係る明細書についての訂正は、訂正事項4及び5によって、請求項6に訂正前の請求項8の記載及び発明の詳細な説明【0031】の記載に基づく技術的事項を組み込みむとともに、請求項8を削除したのに伴って、明細書の課題を解決するための手段、発明を実施するための形態の記載を、訂正事項4と5に整合するものとしたものであるから、請求項に記載された事項の解釈に影響を与えるものではない。
よって、上記訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ まとめ
したがって、訂正事項6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3 一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1?5について、請求項2は請求項1を、請求項3は請求項1又は2を、請求項4および5は請求項1?3を、それぞれ引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正事項1は、一群の請求項[1-5]に対して請求されたものである。
訂正事項3に係る訂正は、願書に添付した明細書を訂正するものであるが、一群の請求項である請求項[1-5]に関係する訂正である。
訂正事項4に係る訂正前の請求項6?8について、請求項7は請求項6を、請求項8は請求項6又は7をそれぞれ引用しているものであって、訂正事項4によって記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものであるから、訂正事項4は、一群の請求項[6-8]に対して請求されたものである。
訂正事項5に係る訂正は、願書に添付した明細書を訂正するものであるが、一群の請求項である請求項[6-8]に関係する訂正である。

4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-5]、[6-8]について訂正することを認める。


第3 訂正後の本件発明
上述の第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正により訂正された請求項1?8に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項1?8に係る発明をそれぞれ、「本件発明1」?「本件発明8」という。)

「【請求項1】
たん白質抽出率が30%以下の乾麺を、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬する工程、及び
浸漬後の麺を茹でる工程、
を含み、
前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加することを特徴とする茹で麺の製造方法であって、
前記茹で麺が、冷蔵又は冷凍保存用である茹で麺の製造方法。
【請求項2】
前記乾麺が、タピオカ澱粉を含む請求項1に記載の茹で麺の製造方法。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記茹で麺が、茹で調理後、冷蔵条件下で6時間以上経過後に、再加熱なしで喫食される冷蔵食品用である請求項1又は2に記載の茹で麺の製造方法。
【請求項5】
前記茹で麺が、茹で調理後、茹で麺の周囲が高水分材料で覆われた状態で、冷蔵又は冷凍条件下で長期間保存された後に、再加熱して喫食する冷蔵又は冷凍食品用である請求項1又は2に記載の茹で麺の製造方法。
【請求項6】
乾麺を茹でることで得られる茹で麺の、冷蔵又は冷凍保存後の食感を改善する方法であって、
前記乾麺のたん白質抽出率が30%以下であり、
前記乾麺を茹でる前に、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬することを含み、
前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加することを特徴とする方法。
【請求項7】
前記乾麺が、タピオカ澱粉を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】(削除)」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について

1 取消理由の概要
訂正前の請求項1?8に係る特許に対して、当審が令和元年11月27日付け及び令和2年3月31日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。

(1)取消理由1(新規性)(令和元年11月27日付け)
訂正前の請求項1、2、6、7に係る発明は、刊行物1(甲第1号証)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)取消理由2(進歩性)(令和元年11月27日付け及び令和2年3月31日付け)
訂正前の請求項1、2、4?7に係る発明は、刊行物1(甲第1号証)に記載された発明及び刊行物2?5、8(甲第2、4?6、8号証)、電子的技術情報6、9?15(甲第3、9?15号証)に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、訂正前の請求項3?5、8に係る発明は、刊行物1(甲第1号証)に記載された発明及び刊行物7(甲第7号証)に記載された事項と、刊行物2?5、8(甲第2、4?6、8号証)、電子的技術情報6、9?15(甲第3、9?15号証)に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。



刊行物1(甲第1号証):特開2004-154002号公報
刊行物2(甲第2号証):小林佳祐、中村卓著
「デュラム小麦澱粉の糊化特性へのパスタ乾燥条件をモデルとし
た高湿加熱処理の影響」、
日本食品科学工学会誌 第60巻 第8号、
412頁?417頁(2013年)
刊行物3(甲第4号証):小田聞多著
「新訂 めんの本」、株式会社食品産業新聞社、
2003年12月25日、42頁?43頁、86頁?88頁、
134頁?136頁
刊行物4(甲第5号証):塚本守著
「パスタ入門」、株式会社日本食糧新聞社、
平成12年8月22日、76頁?78頁
刊行物5(甲第6号証):Mike Sissons著
「Second Edition DURUM WHEAT CHEMISTRY AND TECHNOLOGY」、
AACC International,Inc.、2012年第2版発行、pp.166-169
電子的技術情報6(甲第3号証):
辻調おいしいネット 半歩プロの西洋料理
パスタ工場に行ってきました
[オンライン]、2004年5月6日、
検索日:2019年9月6日
fabbrica.html>
刊行物7(甲第7号証):特開2010-172217号公報
刊行物8(甲第8号証):特開2008-148561号公報
電子的技術情報9(甲第9号証):HatenaBlog sasasamaの日記
セブンイレブン:トマトと生ハムの冷製パスタ
[オンライン]、2009年7月13日、
検索日:2019年9月6日

電子的技術情報10(甲第10号証):Ameblo 誰がチキン野郎だ
冷やして食べよう!魚介のトマトソース冷製パスタ@セブンイレ
ブン
[オンライン]、2011年6月30日、
検索日:2019年9月6日

電子的技術情報11(甲第11号証):livedoorblog 今日も食べておる
セブンイレブンの冷凍「エビグラタン」は美味しいけど小さい
[オンライン]、2014年5月13日、
検索日:2019年9月6日

電子的技術情報12(甲第12号証):
RakutenBlog 明治 えびグラタン
[オンライン]、2013年2月17日、
検索日:2019年9月6日

電子的技術情報13(甲第13号証):Amazon.co.jp グラタン お弁当
小さなエビグラタン(35g×6個)簡単調理
[オンライン]、2011年11月16日、
検索日:2019年9月6日
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電子的技術情報14(甲第14号証):kakukakunews.blog
セブンイレブンの新商品「自家製グリルチキンのマカロニグラタ
ン」
[オンライン]、2011年9月20日、
検索日:2019年9月6日

電子的技術情報15(甲第15号証):Ameblo 路地裏シンドローム
ファミマのポテトベーコングラタン♪
[オンライン]、2012年7月5日、
検索日:2019年9月6日


なお、上記刊行物8及び電子的技術情報9?15は、周知技術を示すためのものである。

2 取消理由についての当審の判断
(1)刊行物等の記載
(1-1)刊行物1の記載
刊行物1には、以下の事項が記載されている。

(1a)「【請求項1】 密度1.36g/cm^(3)以上の乾麺を水分30?55%に調整した後茹でることを特徴とする、茹麺の製造法。
【請求項2】 乾麺が少なくとも20重量%のデュラム粉を含有してなる請求項1記載の茹麺の製造法。
【請求項3】 請求項1または2記載の茹麺を冷却または冷凍することを特徴とする冷蔵または冷凍麺の製造法。
【請求項4】 請求項1または2記載の茹麺を加熱殺菌処理することを特徴とするロングライフ茹麺の製造法。」(特許請求の範囲)

(1b)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者等は、乾麺から食感が優れ、茹でのびが遅く、かつ作業性が良く、見栄えのよい茹麺を得る方法について種々研究を重ねた結果本発明を完成するに至った。」

(1c)「【0007】
【発明の実施の形態】
本発明方法で用いる乾麺は、密度1.36g/cm^(3)以上、特に1.40?1.50g/cm^(3)の範囲のものが好ましい。これらの密度を有する乾麺は例えばエクストルダー等により減圧下押出成型し乾燥することによって調製することができる。このようにして得られる乾麺としては、うどん、そば、中華麺、素麺、冷麦、マカロニ、スパゲッティ等が挙げられる。
【0008】
本発明の乾麺は、薄力粉、中力粉、強力粉、そば粉、デュラムセモリナ、デュラム小麦粉等のデュラム粉を単独または適宜組合せて原料粉として用いることができる。特に少なくとも20重量%のデュラム粉を含有する乾麺が好ましい。
また前記原料粉の外、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉等の澱粉類、活性グルテン、食塩、かん水等の副原料を適宜用いることができる。」

(1d)「【0015】
本発明方法によって得られた茹麺は必要により、冷却して冷蔵麺にしたり、冷凍して冷凍麺としたり、あるいは加熱殺菌処理してロングライフ茹麺とすることができる。特に冷凍麺は電子レンジ解凍しても食感等の劣化がなく、またロングライフ茹麺も加熱殺菌処理による食感等の劣化のない保存麺類を得ることができる。」

(1e)「【0016】
【実施例】
次に本発明をさらに具体的に示すために実施例を掲げて説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0017】
実施例1
乾麺[#12角うどん(密度1.36g/cm^(3))]を水に浸漬して水分45%に調整する。次に水に浸漬した乾麺を沸騰水中に移し1分間茹でて茹麺を得た。
なお、水に浸漬した乾麺を茹槽に移すときも麺線の切れはなかった。
【0018】
実施例2
乾麺[#12丸うどん(デュラム小麦粉20%含有)(密度1.30g/cm^(3))]を水に浸漬して水分45%に調整する。次に水に浸漬した乾麺を沸騰水中に移し1分間茹でて茹麺を得た。
なお、水に浸漬した乾麺を茹槽に移すときも麺線の切れはなかった。
【0019】
実施例3
乾麺[#20日本そば(密度1.38g/cm^(3))]を水に浸漬して水分45%に調整する。次に水に浸漬した乾麺を沸騰水中に移し1分間茹でて茹麺を得た。
なお、水に浸漬した乾麺を茹槽に移すときも麺線の切れはなかった。
【0020】
実施例4
乾麺[1.7mmスパゲッティ(デュラムセモリナ100%)(密度1.45g/cm^(3))]を水に浸漬して水分45%に調整する。次に水に浸漬した乾麺を沸騰水中に移し1分間茹でて茹麺を得た。
なお、水に浸漬した乾麺を茹槽に移すときも麺線の切れはなかった。
【0021】
実施例5
乾麺[#22棒状ラーメン(密度1.40g/cm^(3))]を水に浸漬して水分45%に調整する。次に水に浸漬した乾麺を沸騰水中で1分間茹でて茹麺を得た。
なお、水に浸漬した乾麺を茹槽に移すときも麺線の切れはなかった。
・・・
【0023】
実施例7
乾麺[1.7mmスパゲッティ(密度1.45g/cm^(3))]を水に浸漬して水分53%に調整する。次に水に浸漬した乾麺を沸騰水中に移し30秒間茹でて茹麺を得た。
なお、水に浸漬した乾麺を茹槽に移すときも麺線の切れはなかった。
【0024】
実施例8
乾物マカロニ(ペンネリガーテ(密度1.47g/cm^(3)))を水に浸漬してから水分45%に調整する。
次に水に浸漬した乾物マカロニを沸騰水中に移し1分間茹でて茹でマカロニを得た。
なお、水に浸漬した乾物マカロニを茹槽に移すときもマカロニの破損はなく、かつ良い形状であった。」

(1f)「【0030】
【発明の効果】
本発明方法によれば、優れた食感を有すると共に、茹麺線の肌荒れもなく、優れた光沢と色調を有する茹麺を得ることができる。また水浸漬後における茹槽への移送の際にも麺線が切れることもない等の種々の利点を有する。」

(1-2)刊行物2の記載
刊行物2には、以下の事項が記載されている。

「そのためパスタの乾燥工程では,高湿度条件下で加熱される.例えば相対湿度80%程度で温度90℃前後の超高温乾燥,75℃前後の高温乾燥,60℃前後の低温乾燥が知られている」(第412頁左下欄第9行?第12行)

(1-3)刊行物3の記載
刊行物3には、以下の事項が記載されている。

(3a)「澱粉の使用目的は、食感の改良が主であるが、この他茹で時間ないし茹で戻し時間の短縮や外見上の艶、透明感の向上のためにも利用される。
利用される主な澱粉に、馬鈴薯澱粉、もちとうもろこし澱粉(ワキシーコーンスターチ)、タピオカ澱粉がある。それぞれの特徴は、・・・。タピオカ澱粉は、食感に軟らかい弾力感を与える。これらの特徴を生かして、即席めん類には馬鈴薯澱粉、生めん類にはタピオカ澱粉が多用されている。」(第43頁左欄第3行?第16行)

(3b)「(1)高温乾燥(70℃以上)
高温乾燥は、前記のように高温ほど速く乾燥することができるので短時間乾燥を第一の目的とするものであり、実用面でスパゲッティ類の乾燥に用いられる。
スパゲッティは、原料粉のタンパク質含有量が高く、脱気押し出しによって製線するため麺線が緻密であり、形状が丸型で表面積が小さいこと等から乾燥が難しく、無理をすると製品に亀裂を生じる。このため高温且つ高湿で、表面乾燥を抑えながら内部拡散を促して徐々に乾燥させる必要がある。
一般に多く行われている中温乾燥では、普通の乾めんなら5?6時間で乾燥が終わるが、スパゲッティでは20時間以上を要しこれが生産性のネックになっている。高温乾燥では、これを12時間程度に短縮することができる。
通常の乾めんでも高温乾燥は可能であり1?2時間で済むが、高温高湿の条件をつくり保つためにはそれなりの設備が必要である。また、高温乾燥の場合はめんの質にも影響が認められ、スパゲッティの場合は食感に硬さがでると共に歯切れがよくなり、この面からも高温乾燥は効果的であり、むしろこの食感改良が主目的と考えてもよい。しかし、一般乾めんにとってはこの効果はマイナスである。」(第88頁左欄第7行?最終行)

(3c)「(2)製造のポイント
一般のめん類に較べて、低加水率(30%程度)で混捏する。この結果、高圧(7,840kPa以上)で押し出すことになるが、原料デュラムの特性として、生地が低加水でも流動性に富むことによっている。また、低加水のため、比較的高温(40℃程度以上)で生地の結合能力と流動性を高めている。
・・・
マカロニ類は、構造が緻密なため乾燥が難しい。無理があるとすぐ亀裂が入る。表面乾燥を極度に抑えるため、予備乾燥で1?2時間、表面浅層の自由水を飛ばした後、本乾燥に入る。過去には、低温(50℃程度)で長時間(20時間以上)乾燥する方式が主体であったが、近年は、プリプリとした食感が得られやすい高温(80℃程度以上)で短時間(6時間程度)乾燥する設備に移行してきている。」(第136頁左欄第8行?右欄第13行)

(1-4)刊行物4の記載
刊行物4には、以下の事項が記載されている。

(4a)「乾燥温度の高温化は、パスタの品質にも変化をもたらすことになったが、高温で乾燥することが一般化しつつあるのも現状である。」(第76頁下欄第11行?第13行)

(4b)「乾燥温度五〇?六〇℃で三〇時間前後、六〇?七五℃で一五時間前後、七五?九〇℃で五時間前後の乾燥時間が標準的な関係である。」(第78頁上欄第10行?第12行)

(1-5)刊行物5の記載
刊行物5には、以下の事項が記載されている(日本語訳で示す)。

「このごろは、パスタ乾燥処理の多くは70℃?100℃の範囲の空気温度を採用する。製品温度は60℃?90℃に保つ。」(第167頁左欄下から2行目?右欄第1行)

(1-6)電子的技術情報6の記載
電子的技術情報6には、以下の事項が記載されている。

「乾燥時間や温度は会社によって違いますが、A社では、78℃でスパゲッティなどのロングパスタは11?18時間、ペンネなどのショートパスタはカットしてから8時間乾燥させています。」(下から11行目?下から8行目)

(1-7)刊行物7の記載
刊行物7には、以下の事項が記載されている。

(7a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
常法により得られる未α化状態の生麺線を、温度5?50℃でpH3?6の酸性水溶液に0.5?10分間浸漬した後、茹で処理を行うことを特徴とする茹で麺類の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法で得られる茹で麺類。」

(7b)「【0009】
本発明の目的は、茹でたときに茹でどけが少なく、また滑らかさや粘弾性などの食感に優れる、高品質の茹で麺類が得られる製造方法を提供することにある。また、パスタ類においては、パスタらしい適度な弾性を有する高品質の茹でパスタが得られる製造方法を提供することにある。」

(7c)「【0015】
酸性水溶液のpH値は、pH3?6の範囲であり、好ましくはpH3?5.5の範囲である。このpH範囲の酸性水溶液を用いることによって、浸漬しない場合や中性の水に浸漬した場合に比べて、得られる麺類の茹でどけが一層少なくなり、しかも滑らかさに優れ、且つ粘弾性のバランスが良好なものとなる。酸性水溶液に用いる酸の種類としては、食品に使用可能な有機酸、無機酸のいずれもが使用できるが、飲食品の製造においてpH調整剤として用いられている有機酸またはその塩が好ましく、特に乳酸、クエン酸、リンゴ酸またはこれらの塩が好ましい。これらの酸は、単独で用いてもよいが、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0016】
酸性水溶液への生麺線の浸漬時間は、0.5?10分間であり、1?5分間が好ましい。この浸漬時間は、酸の種類、酸性水溶液の温度やpH値、麺線の太さ、麺の種類などによって上記範囲内で適宜調節すればよい。酸性水溶液への浸漬時間が0.5分間より短すぎると、上述の食感向上効果が得られなくなり、一方浸漬時間が10分間より長すぎると、得られる麺類の茹でどけが大きくなったり、滑らかさ、粘弾性の低下などが生じる。
【0017】
上記の酸性水溶液への浸漬処理後、生麺線を茹で処理することにより、本発明の茹で麺類が得られる。この茹で処理は、麺の種類に応じた従来の生麺線の茹で処理と同様の方法および条件により行うことができる。
【0018】
本発明の方法で製造された茹で麺類は、冷蔵もしくはチルド状態の茹で麺として、または冷凍麺の形態で流通・販売することが好ましいが、茹で麺類に殺菌処理などの所定の処理を施し、常温品として流通・販売してもよい。」

(7d)「【実施例】
【0019】
次に本発明をさらに具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0020】
〔実施例1?3および比較例1〕
中力小麦粉(日清製粉「金すずらん」)100質量部に対して、予め食塩3質量部を水35質量部に溶かした食塩水を加えて、横型ミキサーで均一に混合した。この生地を製麺ロールを用いて常法により複合、圧延して厚さ2.4mmの麺帯にした後、10番の角の切刃を用いて麺線に切り出して生麺線(生うどん)を得た。
得られた生麺線(生うどん)を、下記の表1に示す浸漬処理を行った後、沸騰水中で茹でて、歩留まりが290?300%の茹で麺(茹でうどん)を得た。この茹でうどんを密封容器中に入れ、5℃にて24時間保存した後、沸騰水中で1分間茹で戻しし、つゆの入った容器に移した。次いで、10名のパネラーにより、下記の表2に示す評価基準にしたがって官能試験を行った。得られた評点の平均値を下記の表1に示す。なお、浸漬処理を行わなかった茹でうどんを対照例1とし、その評点を標準の3点とした。
【0021】
【表1】

・・・
【0023】
上記表1に示す結果から、生うどんを各種酸性水溶液に浸漬した本発明の場合(実施例1?3)には、未浸漬の場合(対照例1)や中性の水に浸漬した場合(比較例1)と比較して、茹でどけ・つゆの濁りが抑えられ、得られる茹でうどんは、滑らかさ、粘弾性に優れることが確認された。
【0024】
〔実施例4?7および比較例2〕
中力小麦粉(日清製粉「金すずらん」)100質量部に対して、予め食塩3質量部を水35質量部に溶かした食塩水を加えて、横型ミキサーで均一に混合した。この生地を製麺ロールを用いて常法により複合、圧延して厚さ1.5mmの麺帯にした後、6番の角の切刃を用いて麺線に切り出して生麺線(生きしめん)を得た。
・・・
【0025】
【表3】

【0026】
上記表3に示す結果から、10?40℃の1%乳酸水溶液に浸漬した本発明の場合(実施例4?7)には、茹でどけ・つゆの濁りが抑えられ、しかも滑らかさ、粘弾性に優れる茹できしめんが得られるのに対して、60℃の1%乳酸水溶液に浸漬した場合(比較例2)には、茹でどけ・つゆの濁りはやや抑えられるものの、滑らかさと粘弾性は本発明の場合(実施例4?7)と比較して十分なものではなかった。
【0027】
〔実施例8?12および比較例3?4〕
実施例1と同じ方法で得られた生うどんを、下記の表4に示す浸漬処理を行った後、沸騰水中で茹でて、歩留まりが290?300%の茹でうどんを得た。この茹でうどんを密封容器中に入れ、5℃にて24時間保存した後、沸騰水中で1分間茹で戻しし、つゆの入った容器に移した。
・・・
【0028】
【表4】

【0029】
上記表4に示す結果から、1%リンゴ酸/リンゴ酸塩水溶液への浸漬時間が0.5?10分間の本発明の場合(実施例8?12)には、茹でどけ・つゆの濁りが少なく、得られる茹でうどんも滑らかさ、粘弾性に優れるのに対して、浸漬時間が0.1分間および20分間の場合(比較例3および4)では、対照例3と比較して茹でどけがやや抑えられ、食感についてもやや滑らかさ、粘弾性が向上するものの十分となもとのはいえないことが確認された。
【0030】
〔実施例13〕
実施例1と同じ方法で得られた生うどんを、下記の表5に示す浸漬処理を行った。なお、浸漬後の生うどんのpHは5.2であった。浸漬処理後、沸騰水中で茹でて、歩留まりが290?300%の茹でうどんを得た。この茹でうどんを密封容器中に入れ、5℃にて24時間保存した。
・・・
【0033】
【表5】

【0034】
上記表5に示す結果から、1%リンゴ酸/リンゴ酸塩水溶液に生うどんを浸漬した本発明の場合(実施例13)には、茹でどけ・つゆの濁りが抑えられ、得られる茹でうどんも滑らかさ、粘弾性に優れることが確認された。一方、麺原料に乳酸を配合して茹で処理前の生うどんのpHを合わせても、浸漬処理を行わない場合(比較例5)には、本発明の場合と同様な効果が得られないばかりか、却って滑らかさ、粘弾性が低下し、茹でうどんとして品質に劣ることが確認された。
【0035】
〔実施例14および比較例6〕
デユラム小麦粉(日清製粉社製「デュエリオ」)100質量部に対して、予め食塩3質量部を水34質量部に溶かした食塩水を加えて、横型ミキサーで均一に混合した。この生地を製麺ロールを用いて常法により複合、圧延して厚さ1.5mmの麺帯にした後、8番の角の切刃を用いて麺線に切り出して生パスタ(フィトチーネ)を得た。
得られた生パスタを、下記の表6に示す浸漬処理を行った後、沸騰水中で茹でて、歩留まりが170?180%の茹でパスタを得た。この茹でパスタを密封容器中に入れ、5℃にて24時間保存した後、電子レンジ(500W)で2分間再加熱し、10名のパネラーにより、下記の表7に示す評価基準にしたがって官能試験を行った。得られた評点の平均値を下記の表6に示す。なお、浸漬処理を行わなかった茹でパスタを対照例5とし、その評点を標準の3点とした。
【0036】
【表6】



(1-8)刊行物8の記載
刊行物8には、以下の事項が記載されている。

(8a)「【0024】
<パスタサラダの製造方法>
下記に示す配合割合で仕上がり10kgのパスタサラダを製した。スパゲティ(乾麺)を95℃で25分間茹でた後、流水で冷却し、水切りして茹でたスパゲティを製した。得られた茹でたスパゲティ、上記方法で得られた酸性水中油型乳化食品、茹でた千切りのにんじん、水さらしした3mmダイス状の玉ねぎ、食酢(酸度5%)、清水をムラがなくなるまで十分に混合した後、ポリ袋に1kgずつ充填・密封し、65℃で60分間湯欲中で加熱殺菌した。得られたパスタサラダには、DE4の澱粉分解物を約1%、DE4の澱粉分解物を約0.4%含有している。」

(8b)「【0034】
[試験例1]
含有させた澱粉分解物のDE値の違いよるパスタサラダへの影響、具体的には、パスタ類への吸水性によるパスタ類の歯応え、及びパスタ類の周りに付着した酸性水中油型乳化食品の口溶けへの影響を調べるため、実施例1?5、及び比較例1?4で得られた各パスタサラダを2日間冷蔵保管(4℃)し、得られた保管後の各パスタサラダを喫食して評価した。」

(1-9)電子的技術情報9の記載
電子的技術情報9には、以下の事項が記載されている。

「セブンイレブン:トマトと生ハムの冷製パスタ

という訳で前回のエントリの続き的な。


・・・
夏の終わりにもっかいくらい食べたいかもしれん…。」

(1-10)電子的技術情報10の記載
電子的技術情報10には、以下の事項が記載されている。

「冷やして食べよう!魚介のトマトソース冷製パスタ@セブンイレブン

クソあちーので珍しくこんなものを。

セブンイレブンの冷やして食べよう!魚介のトマトソース冷製パスタ430円。
・・・

◇◆本日のカロリー◆◇
冷やして食べよう!魚介のトマトソース冷製パスタ
表示:492kcal」

(1-11)電子的技術情報11の記載
電子的技術情報11には、以下の事項が記載されている。

「セブンイレブンの冷凍「エビグラタン」は美味しいけど小さい

セブンイレブンの冷凍食品食べてみましたシリーズ、今回はエビグラタンです。
・・・
今回は「エビグラタン」を食べてみました。これ、100円です。
・・・
繰り返しですが、これは冷凍食品のグラタンです。冷蔵のとは別です。
・・・
さて、実食。マカロニが入っています。美味しいです。・・・。1個では、夜食にはちょっと足りないので、副菜にしたら良いのかな。

以上です!」

(1-12)電子的技術情報12の記載
電子的技術情報12には、以下の事項が記載されている。

「明治 えびグラタン
カテゴリ:冷凍食品
・・・
ホワイトソースは、それほど濃厚ではないが、しっかりとえびや野菜の旨みが溶け込んでいる。
焼き目はあまりついておらず、香ばしさはそれほど感じない。
マカロニは、やや柔らかい印象があるので、もう少し歯ごたえがあった方がよい。
・・・
以前紹介した「蔵王 えびグラタン ニチレイ」よりも、全体的に1ランク下がったイメージ。」

(1-13)電子的技術情報13の記載
電子的技術情報13には、以下の事項が記載されている。

「商品の説明
グラタン お弁当 小さなエビグラタン(35g×6個)簡単調理
お弁当のおかずにグラタン!小さなエビグラタンにはクリーミーなベシャメルソースにエビ風味のアメリケーヌソースも入れてコクとうまみをプラスしました。
・・・
[冷凍|電子レンジ|オーブン]
:冷凍便でお届け」(商品の説明欄第1行?第5行)

(1-14)電子的技術情報14の記載
電子的技術情報14には、以下の事項が記載されている。

「セブンイレブンの新商品「自家製グリルチキンのマカロニグラタン」

今回ご紹介するのは
セブンイレブンの新商品「自家製グリルチキンのマカロニグラタン」です。

グラタンの上に大きなグリルチキンが乗っかった商品ですね。
焦げ目が付いていてとても美味しそうです。

ホワイトソースとチーズの濃厚な味わいがいいですね。
ソースの中には柔らかいマカロニも入っています。
・・・
食べ応えがあり、少しニンニクも入っているのか香ばしくて美味しいですね。
価格は398円 526kカロリーでした。」

(1-15)電子的技術情報15の記載
電子的技術情報15には、以下の事項が記載されている。

「ファミマのポテトベーコングラタン♪

そして、今日のバイト上がりの晩ご飯!
・・・
そんなグラタンたちの中でも、5月22日発売の“ポテトベーコングラタン”を今日は頂きました♪

信者がの時期に合わせて発売されたグラタンでしょうか…
具材はポテトとベーコンと言う、とってもシンプルなグラタンです!
“ミルク感のあるホワイトソースに、大きめにスライスしたじゃがいもとベーコンをトッピングしたポテトグラタンです。黒粒胡椒を入れることで、じゃがいもの旨みをより一層感じられます。”とのこと。
・・・
是非とも、今年はファミマで夏グラタンしてみませんか??」

(2)刊行物1に記載された発明
摘記(1a)から、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「密度1.36g/cm^(3)以上の乾麺を水分30?55%に調整した後茹でた茹麺を、冷却または冷凍する、冷蔵または冷凍麺の製造法。」(以下、「引用発明1」という。)

また摘記(1a)、(1d)から、刊行物1には、以下の発明も記載されていると認められる。
「密度1.36g/cm^(3)以上の乾麺を水分30?55%に調整した後茹でた茹麺を、冷却または冷凍する、冷蔵または冷凍麺の製造法であって、得られた茹麺の冷凍麺は電子レンジ解凍しても食感等の劣化がない、上記製造法。」(以下、「引用発明2」という。)

(3)対比・判断
(3-1)本件発明1について

ア 対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「密度1.36g/cm^(3)以上の乾麺」は、本件発明1の「乾麺」に相当する。
また、引用発明1の乾麺の水分量の範囲は、本件発明1の水分量の範囲と重複しているうえに、摘記(1e)に、引用発明1の具体的実施態様として記載されている乾麺は、浸漬を行うことによってその水分を45%あるいは53%にしているから、引用発明1の「乾麺を水分30?55%に調整し」は、本件発明1の「麺の水分が44?53質量%の範囲になるように、浸漬水に浸漬する工程」に相当する。
したがって、本件発明1と引用発明1とは、「乾麺を、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬する工程、及び浸漬後の麺を茹でる工程を含む茹で麺の製造方法であって、茹で麺が、冷蔵又は冷凍保存用である茹で麺の製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1では、「乾麺のたん白質抽出率が30%以下」であると特定されているのに対して、引用発明1では、この点が特定されていない点

<相違点2>
本件発明1では、「浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加する」のに対して、引用発明1では、これらの点が特定されていない点

イ 判断

イ-1 相違点1について
本件発明1の麺は、実施例にも記載されるとおりパスタやうどんを包含するものであるが、摘記(1c)の段落【0007】の記載から、引用発明1の乾麺も、マカロニ、スパゲティのようなパスタやうどんを包含するものである。
ここで、刊行物2には、パスタの乾燥工程では、高湿温度条件で加熱が行われ、例えば相対湿度80%程度で、90℃前後の超高温、75℃前後の高温、60℃前後の低温で乾燥が行われることが、
刊行物3には、摘記(3b)に、実用面から、スパゲッティ類の乾燥には、70℃以上の高温乾燥が用いられること、及び通常の乾麺でも高温乾燥が可能であることが、また摘記(3c)に、近年マカロニは、プリプリとした食感が得られやすい80℃以上の高温で短時間乾燥する設備に移行してきていることが、
刊行物4には、摘記(4a)及び(4b)に、パスタの乾燥は高温で行われることが一般的で、時間が60?75℃で15時間前後、75?90℃で5時間前後が標準的な関係であることが、
刊行物5には、このごろは、パスタの乾燥処理の多くは70℃?100℃の範囲の空気温度を採用することが、
電子的技術情報6には、ある会社Aでは、78℃でスパゲティなどのロングパスタは11?18時間、ペンネなどのショートパスタはカットしてから8時間乾燥させることが、
それぞれ記載されている。
これらの記載からすると、パスタやうどんを乾燥して乾麺とする際に、60?90℃程度の温度で高温乾燥することは周知であるから、引用発明1の乾麺がパスタやうどんである場合、これらは高温乾燥されたものであると認められる。そして、たん白質は加熱により変性して水に対する可溶性が低下することが技術常識であるから、パスタやうどんを高温乾燥した乾麺中のたん白質は熱変性して可溶性が低下し、その結果乾麺のたん白質抽出率は低下すると認められる。
なお、このことに関しては、本件特許明細書にも、
「【0020】
一般に、乾麺中のたん白質の変性度が高く成る程、たん白質抽出率は低下する。そして、乾麺のたん白質抽出率は、乾麺の種類、乾麺に用いる原料、乾燥前の水分、乾燥温度、乾燥時間等に影響を受ける。たん白質抽出率を調整するには、例えばパスタやうどんの場合、乾麺を製造する際の乾燥温度によって調整することが容易である点で好ましい。乾燥温度は、特に制限は無いが、60?90℃が好ましい。」と、同趣旨の事項が記載されている。
そうすると、引用発明1の乾麺がパスタやうどんである場合、たん白質抽出率は本件発明1に特定される「30%以下」である蓋然性が高いといえるから、相違点1は実質的な相違点とはいえないか、仮に相違点であるとしても当業者であれば容易になし得た技術的事項である。

イ-2 相違点2について
引用発明1は、乾麺に関するものであり、摘記(1b)、(1d)?(1f)から、乾麺の水分を所定の範囲に調整してから茹でることによって、冷蔵麺や冷凍麺とした場合にも優れた食感を有する茹で麺を得ることを課題とするものであると理解できる。
一方、刊行物7は、生麺線に関するものであり、摘記(7a)?(7c)から、生麺線を温度5?50℃でpH3?6の酸性水溶液に0.5?10分間浸漬してから茹でることによって、茹でる際の茹でどけが少なく、滑らかさ等の食感に優れた茹で麺を得ることを課題とするものであると理解できる。
刊行物7には生麺線を酸性水溶液に浸漬した後に茹で処理を行うことは記載されているが、乾麺については記載されていない。
そして、乾麺と生麺線は技術的に異なるものであり、茹でる前の取り扱いについても、それぞれに適した方法が異なるものであるから、乾麺に関する引用発明1に対して、生麺線に関する刊行物7に記載された技術的事項を適用することは、動機づけられない。
また、その他の刊行物及び電子的技術情報の記載をみても、相違点2について記載ないし示唆されておらず、引用発明1に対して当該技術的事項を適用することは、動機づけられない。

イ-3 本件発明1の効果について
本件特許明細書の段落【0010】の記載及び段落【0030】?【0050】の実施例の内容、特に段落【0043】、【0044】の例から、乾麺について、浸漬水に当初から有機酸を添加し、麺の水分が40?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬した場合に、冷蔵又は冷凍保存後の食感が改善された茹で麺が得られるという効果が奏されることが理解でき、このことは引用発明1及び刊行物7に記載された技術的事項から予測できたものであるとはいえない。
また、その他の刊行物及び電子的技術情報の記載をみても、上記効果は予測できたものであるとはいえない。

ウ 結論
上記のとおり、相違点2は実質的な相違点であり、当業者が容易に想到できたものでもないから、本件発明1は引用発明1ではなく、また、引用発明1及び刊行物7に記載された事項と刊行物2?5、8(甲第2、4?6、8号証)、電子的技術情報6、9?15(甲第3、9?15号証)に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3-2)本件発明2、4、5について
本件発明2、4、5は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明2は、本件発明1において、さらに、「タピオカ澱粉を含む」ことを特定したものであり、本件発明4は、本件発明1又は2において、さらに、「茹で麺が、茹で調理後、冷蔵条件下で6時間以上経過後に、再加熱なしで喫食される冷蔵食品用である」ことを特定したものであり、本件発明5は、本件発明1又は2において、さらに、「茹で麺が、茹で調理後、茹で麺の周囲が高水分材料で覆われた状態で冷蔵又は冷凍条件下で長期間保存された後に、再加熱して喫食する冷蔵又は冷凍食品用である」ことを特定したものである。
本件発明2、4、5のいずれの発明も、本件発明1の茹で麺の製造方法を含む発明であり、本件発明1と同じ相違点を有するものである。
そして、本件発明1の相違点については、上記(3-1)で既に検討したとおりであるから、本件発明2、4、5は、本件発明1と同様に、引用発明1ではなく、また、引用発明1及び刊行物7に記載された技術的事項と刊行物2?5、8(甲第2、4?6、8号証)、電子的技術情報6、9?15(甲第3、9?15号証)に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3-3)本件発明6について

ア 対比
本件発明6と、引用発明2とを対比する。
本件発明6と引用発明2とは、「乾麺を茹でる前に、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬することを含むことを特徴とする方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点3>
本件発明6では、「乾麺のたん白質抽出率が30%以下」であると特定されているのに対し、引用発明2では、この点が特定されていない点

<相違点4>
本件発明6では、「浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加する」のに対して、引用発明2では、これらの点が特定されていない点

<相違点5>
本件発明6は、「乾麺を茹でることで得られる茹で麺の、冷凍又は冷凍保存後の食感を改善する方法」であるのに対して、引用発明2は「茹麺の冷凍麺は電子レンジ解凍しても食感等の劣化がない」方法である点

イ 判断

イ-1 相違点3について
上記(3)(3-1)イのイ-1で相違点1について述べたのと同様の理由から、相違点3は、実質的な相違点とはいえないか、仮に相違点であるとしても当業者であれば容易になし得た技術的事項である。

イ-2 相違点4について
上記(3)(3-1)イのイ-2で相違点2について述べたのと同様の理由から、乾麺に関する引用発明2に対して、生麺線に関する刊行物7に記載された技術的事項を適用することは、動機づけられない。
また、その他の刊行物及び電子的技術情報の記載をみても、相違点4について記載ないし示唆されておらず、引用発明2に対して当該技術的事項を適用することは、動機づけられない。

イ-3 相違点5について
引用発明2の「茹麺の冷凍麺は電子レンジ解凍しても食感等の劣化がない」とは、本件発明6にいう「茹で麺の」、「冷凍保存後の食感を改善する」ことに該当するといえるから、引用発明2の「茹麺の冷凍麺は電子レンジ解凍しても食感等の劣化がない」、「冷蔵または冷凍麺の製造法」は、「乾麺を茹でることで得られる茹で麺の、冷凍又は冷凍保存後の食感を改善する方法」に該当するといえる。
したがって、相違点5は実質的な相違点ではない。

イ-4 本件発明6の効果について
上記(3)(3-1)イのイ-3で述べたのと同様に、本件発明6は、乾麺について、浸漬水に当初から有機酸を添加し、麺の水分が40?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬した場合に、冷蔵又は冷凍保存後の食感が改善された茹で麺が得られるという効果が奏されることが理解でき、このことは引用発明2及び刊行物7に記載された技術的事項から予測できたものであるとはいえない。
また、その他の刊行物及び電子的技術情報の記載をみても、上記効果は予測できたものであるとはいえない。

ウ 結論
上記のとおり、相違点4は実質的な相違点であり、当業者が容易に想到できたものでもないから、本件発明6は引用発明2ではなく、また、引用発明2及び刊行物7に記載された事項と刊行物2?5、8(甲第2、4?6、8号証)、電子的技術情報6、9?15(甲第3、9?15号証)に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3-4)本件発明7について
本件発明7は、本件発明6を直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明6において、さらに、タピオカ澱粉を含むことを特定したものである。
本件発明7の発明も、本件発明6の乾麺を茹でることで得られる茹で麺の、冷蔵又は冷凍保存後の食感を改善する方法を含む発明であり、本件発明6と同じ相違点を有するものである。
そして、本件発明6の相違点については、上記(3-3)で既に検討したとおりであるから、本件発明7は、本件発明6と同様に、引用発明2ではなく、引用発明2及び刊行物7に記載された技術的事項と刊行物2?5、8(甲第2、4?6、8号証)、電子的技術情報6、9?15(甲第3、9?15号証)に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)当審の判断のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1、2、4?7に係る特許につき、当審が通知した取消理由はいずれも理由がなく、その他の取消理由を発見しないから、本件発明1、2、4?7に係る特許は取り消すことはできない。
また、訂正後の本件発明3、8に係る特許に対する特許異議の申立ては、訂正によりその技術事項が全て削除され、申立ての対象を欠くものであり、不適法となったものであって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。

第5 むすび
以上のとおり、本件特許に係る特許権者の訂正請求による訂正は適法であるから、これを認容し、当該訂正後の本件の請求項1、2、4?7に係る発明についての特許は維持すべきものであり、訂正後の本件の請求項3、8に係る特許に対する特許異議の申立ては、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
茹で麺の製造方法、茹で麺、及び茹で麺の保存後の食感改善方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスタ等の茹で麺の製造方法に関し、特に、茹で麺の冷蔵又は冷凍保存後の食感を改善することができる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
茹で麺は、通常、パスタ、うどん、そば、中華麺等の生麺又は乾麺を沸騰水中で茹でることで製造され、茹で立てが喫食されるか、冷蔵又は冷凍保存後に、冷蔵の場合はそのまま又は再加熱されて、冷凍の場合は再加熱されて喫食されている。一般に、茹で立ての茹で麺は、コシ(弾力)及びなめらかさに優れ、良好な食感を有するが、保存後、特に冷蔵保存後の茹で麺の食感の低下は著しいといわれている。
【0003】
麺類の内、パスタ類は、一般に小麦粉に加水したものを混練した生地を、押出機等で押出成形したものである。そして、スパゲッティ、マカロニ等は、保存性が高く、茹で上げ後に独特な食感が得られることから、押出成形後に乾燥した乾燥パスタの形態で流通され、茹で調理されることが多い。また、スパゲッティ、マカロニ等は、例えば、茹でられ、冷却された後、サラダ等に混合され、冷蔵で長時間保存後に、再加熱なしにそのまま喫食される場合もある。この場合、冷蔵保存後の茹で麺の食感の劣化が極めて大きいことが知られている。さらに、茹で麺を冷蔵又は冷凍保存後に、再加熱して喫食する場合であっても、グラタン類のように茹で麺の周囲がソース等の高水分材料で覆われた状態で長期間保存された場合は、再加熱しても食感の劣化が大きいことが知られている。
【0004】
従来から、茹で麺の食感を向上させるために、種々の方法が開発されている。例えば、茹で麺の茹で調理後の食感の経時劣化を低減させるため、バレイショデンプン、ワキシーコーンスターチ、タピオカデンプン等の澱粉、又はこれらの澱粉にエステル化等の加工処理が施された加工澱粉が配合された麺及び麺の製造方法が開発されている(特許文献1及び2)。また、特許文献3には、乾麺から茹でられる茹で麺であって、食感が優れ、茹でのびが遅く、作業性が良く、見栄えの良い茹で麺を製造するため、所定の密度の乾麺を、水に浸漬する等により所定の水分の範囲に調整した後、茹でることを特徴とする茹で麺の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59-125858号公報
【特許文献2】特開平03-244357号公報
【特許文献3】特開2004-154002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討によると、特許文献1?3に記載されたような方法を用いても、上述のように、乾麺を用いた茹で麺をサラダやグラタン等に混合し、冷蔵又は冷凍保存した場合の茹で麺の食感の低下を抑制することは困難であった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、乾麺を茹でることで得られる茹で麺の製造方法であって、冷蔵又は冷凍保存後の食感が改善された茹で麺が得られる製造方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、乾麺を茹でることで得られる茹で麺であって、冷蔵又は冷凍保存後の食感が改善された茹で麺を提供することにある。
【0009】
さらに本発明の目的は、乾麺を茹でることで得られる茹で麺の、冷蔵又は冷凍保存後の食感を改善する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、たん白質抽出率が30%以下の乾麺を、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬する工程、及び浸漬後の麺を茹でる工程、を含み、前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加することを特徴とする茹で麺の製造方法であって、前記茹で麺が、冷蔵又は冷凍保存用である茹で麺の製造方法によって達成される。これにより、冷蔵又は冷凍保存した後の食感の低下が生じ難い茹で麺が得られる。前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加することにより、さらに浸漬時の澱粉の溶出を防止でき、得られた茹で麺において、より冷蔵又は冷凍保存後の食感の低下を抑制することができる。
なお、本発明において、たん白質抽出率は、乾麺の総たん白質含有量に対する、温度30℃の0.05N酢酸溶液に溶解するたん白質量の比率を%で表したものである。
【0011】
この要因は明確ではないが、乾麺を麺の水分が上記の範囲になるように浸漬水に浸漬させた後に茹でることで、麺中の澱粉の糊化が、麺の表面から中心部まで均一に生じることになる上、乾麺が上記の低いたん白質抽出率を有することで、その浸漬中における澱粉の溶出を防止すると共に、得られる茹で麺において、糊化した澱粉の老化を抑制し、冷蔵又は冷凍保存後の食感の低下が抑制されるものと考えられる。
【0012】
本発明の茹で麺の製造方法の好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記乾麺が、タピオカ澱粉を含む。得られた茹で麺において、より冷蔵又は冷凍保存後の食感の低下を抑制することができる。
(2) (削除)
(3)前記茹で麺が、茹で調理後、冷蔵条件下で6時間以上経過後に、再加熱なしで喫食される冷蔵食品用である。
(4)前記茹で麺が、茹で調理後、茹で麺の周囲が高水分材料で覆われた状態で、冷蔵又は冷凍条件下で長期間保存された後に、再加熱して喫食する冷蔵又は冷凍食品用である。
これらは本発明の製造方法が特に有効な用途である。
【0014】
さらに、上記目的は、乾麺を茹でることで得られる茹で麺の、冷蔵又は冷凍保存後の食感を改善する方法であって、前記乾麺のたん白質抽出率が30%以下であり、前記乾麺を茹でる前に、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬することを含み、前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加することを特徴とする方法によって達成される。上述の通り、上記のたん白質抽出率を有する乾麺を用い、茹でる前に、麺の水分が上記の範囲になるように浸漬水に浸漬させることで、得られる茹で麺の冷蔵又は冷凍保存後の食感の低下を生じ難くすることができる。
【0015】
本発明の方法の好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記乾麺が、タピオカ澱粉を含む。
(2) (削除)
【発明の効果】
【0016】
本発明の茹で麺の製造方法では、所定の低いたん白質抽出率の乾麺を用い、麺の水分が所定の範囲になるように浸漬水に浸漬した後に茹でることで、得られる茹で麺の冷蔵及び冷凍保存後の食感の低下を抑制することができる。これにより、製造後、サラダ等の食品に混合された後、いわゆるチルド条件下で一定期間経過した後に、再加熱なしで、そのまま喫食される茹で麺や、グラタン等の茹で麺の周囲をソース等の高水分材料が覆うような食品の冷蔵又は冷凍品に用いられ、再加熱されて喫食される茹で麺において、食感の改善を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の茹で麺の製造方法は、たん白質抽出率が30%以下の乾麺を麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬する工程、及び浸漬後の麺を茹でる工程、を含み、前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加することを特徴とし、前記茹で麺が、冷蔵又は冷凍保存用である。後述の実施例で示す通り、本発明の製造方法により製造された茹で麺は、冷蔵又は冷凍保存した後、経時的に再加熱なし(冷蔵のみ)又は再加熱して喫食した場合、弾力及びなめらかさ等の食感の低下が生じ難い。この要因は明確ではないが、以下のように考えられる。即ち、乾麺を麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬することで、茹で調理において、麺中の澱粉の糊化が、麺の表面部から中止部まで、均一に生じることになるため、冷蔵又は冷凍保存後の食感改善効果が高まる。これは例えば、一般的な乾燥パスタの茹で調理における、中心部に芯を残すような、いわゆる「アルデンテ」の状態の茹で麺とは全く異なる状態である。そして、用いる乾麺が、30%以下という低いたん白質抽出率を有することから、麺中の溶出しないたん白質(変性しているものと解される)が澱粉の周囲を覆うことで、その浸漬中における澱粉の溶出を防止するとともに、得られる茹で麺において、糊化した澱粉の老化を抑制することができるものと考えられる。浸漬水への浸漬時間が少なく、麺の水分が上記の範囲より低い場合は、本発明の効果が得られず、浸漬水への浸漬時間が長すぎて、麺の水分が上記の範囲を超える場合は、茹で調理直後の食感が低下し、本発明の効果も得られない。なお、麺の水分は、乾燥重量法によって求めることができる。具体的には、麺を一定重量秤量し、乾熱乾燥させた後、計量し、減量分を水分とすることで求めることができる。
【0018】
本発明において、用いる乾麺は、上記ではパスタを例に挙げて、説明したが、どのような種類の乾麺でも良い。例えば、スパゲッティ、マカロニ等のパスタ、うどん、そば、冷麦、そうめん、中華そば等が挙げられる。特に本発明が有効な点で、パスタが好ましい。生地を押出成形して製造されるパスタは、ロール製麺機などで製麺されるその他の麺類に比べて、脆い特徴があり、茹で調理後に冷蔵または冷凍保存した場合の食感の劣化が著しいため、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
【0019】
本発明において、乾麺のたん白質抽出率は、乾麺の総たん白質含有量に対する、温度30℃の0.05N酢酸溶液に溶解するたん白質量の比率を%で表したものである。例えば、乾麺を粉砕したサンプルを精秤し、過剰量(例えば50倍量)の0.05N酢酸溶液を投入し、30℃、1時間振とう抽出した後、遠心分離により得られた上清のたん白質量を測定し、抽出に用いた乾麺の総たん白質含有量と、抽出されたたん白質量からたん白質抽出率を算出できる。乾麺のたん白質抽出率は、28%以下が好ましく、特に25%以下が好ましい。下限については、特に制限は無いが、通常5%以上であり、特に15%以上が好ましい。
【0020】
一般に、乾麺中のたん白質の変性度が高く成る程、たん白質抽出率は低下する。そして、乾麺のたん白質抽出率は、乾麺の種類、乾麺に用いる原料、乾燥前の水分、乾燥温度、乾燥時間等に影響を受ける。たん白質抽出率を調整するには、例えばパスタやうどんの場合、乾麺を製造する際の乾燥温度によって調整することが容易である点で好ましい。乾燥温度は、特に制限は無いが、60?90℃が好ましい。
【0021】
本発明において、乾麺を浸漬水に浸漬する工程は、麺の水分を上記の範囲に調整できれば良く、通常の浸漬手段を用いることができる。例えば、常温又は冷温の浸漬水を張ったバットに、乾麺を浸漬し、上記の麺の水分となるまで浸漬することができる。浸漬水は、通常、水であり、塩水を用いても良く、後述するように添加剤を配合しても良い。浸漬水の温度は、特に制限は無く、通常4?30℃、好ましくは10?25℃である。浸漬時間は、特に制限は無く、浸漬水の温度との関係で調整することができる。浸漬時間は通常1?24時間、好ましくは2?10時間、さらに好ましくは2?5時間である。また、浸漬後の麺を茹でる工程は、十分な量の沸騰水中に麺を投入し、茹で上げるといった、通常の茹で調理手段を用いれば良い。沸騰水には、食塩やその他の添加剤を添加しても良い。茹で時間は、麺が喫食に好ましい状態になれば良く、本発明においては、通常、乾麺をそのまま茹でるよりも短時間で茹で上がる。茹で時間は、茹で調理中の麺の水分を確認することで判断することもできる。
【0022】
本発明において、用いる乾麺は、タピオカ澱粉を含むことが好ましい。タピオカ澱粉とは、キャッサバ又はマニオカから得られる澱粉である。本発明において、タピオカ澱粉は、その澱粉に物理的、化学的な加工を単独又は複数組み合わせて施した加工澱粉を含むものとする。特許文献1及び2においても、澱粉を配合することで、食感の経時劣化を防止することが開示されていたが、後述する実施例に示す通り、本発明の茹で麺の製造方法において、タピオカ澱粉を含有した乾麺を用いると、従来技術と比較して著しい効果が発揮される。即ち、乾麺をそのまま茹でる、一般的な製造方法に、タピオカ澱粉を含有した乾麺を用いた場合は、本発明の食感改善効果は全く認められないが、本発明の、乾麺を浸漬水に浸漬し、所定の麺の水分にした後に茹でる製造方法に、タピオカ澱粉を含有した乾麺を用いた場合、茹で麺の冷蔵保存後の食感改善効果が、さらに高められる。この要因は明確ではないが、乾麺を浸漬水に浸漬した後で茹でることで、乾麺に含有するタピオカ澱粉も十分に糊化され、タピオカ澱粉に多く含まれるアミロペクチンが乾麺中の澱粉の老化防止に十分に寄与するものと考えられる。一方、乾麺をそのまま茹でる場合は、乾麺の中心部に含有されるタピオカ澱粉が十分に糊化されず、澱粉の老化防止効果が十分発揮されないものと考えられる。
【0023】
乾麺におけるタピオカ澱粉の含有量は、特に制限は無いが、少な過ぎると効果が得られず、多過ぎると茹で麺の初期の食感が低下するため、乾麺の質量を基準として、4?15質量%が好ましく、さらに4?10質量%が好ましく、特に4?8質量%が好ましい。なお、乾麺には、タピオカ澱粉の他、グルテン、増粘多糖類等、他の副材料を配合しても良い。
【0024】
本発明において、浸漬水に浸漬する工程は、浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加する。後述する実施例に示す通り、麺のpHを上記の範囲とすることで、より浸漬時の澱粉の溶出を防止することができ、得られた茹で麺において、より食感の低下を抑制することができる。この要因は明確ではないが、麺のpHが弱酸性となることで、澱粉の周囲に溶出しないたん白質がより多くなり、澱粉の溶出を防止できるものと考えられる。なお、麺のpHが低過ぎると、麺に酸味が生じる上、逆に澱粉の溶出が多くなり、食感の改善効果が低下する場合がある。浸漬後の麺のpHは、例えば、ポリ袋に浸漬後の麺10gと、蒸留水90gを投入し、麺を潰して蒸留水と均一に混合した後、30分間静置し、上清のpHをpH計で測定することによって求めることができる。
【0025】
浸漬水に含有させる有機酸としては、食品用であれば特に制限はない。例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、酢酸等、及びこれらの混合物が挙げられる。また、これらの有機酸の塩を併用しても良く、これらの有機酸や有機酸の塩を含む市販のpH調整剤を用いても良い。有機酸の添加量は、乾麺の種類等により、得られる浸漬後の麺のpHに応じて調整することができる。有機酸は、通常、浸漬液の質量を基準として0.01?2.0質量%、好ましくは0.05?1.0質量%、さらに好ましくは0.1?0.5質量%で用いることができる。
【0026】
本発明において、得られる茹で麺は、茹で調理後、冷蔵条件下で6時間以上経過後に、再加熱なしで喫食される冷蔵食品用であることが好ましい。例えば、茹で調理後、冷却され、サラダ等に混合されるスパゲッティ、マカロニ等のパスタ、及び茹で調理後、冷却され、調味液をかけて喫食される冷やしうどん等は、工場で製造され、チルド流通され、各小売店にて冷蔵ケースにおいて一定期間経過後、購入した消費者により再加熱なしで喫食される場合がある。このような茹で麺類は、通常、茹で調理後、冷蔵条件下で6時間以上経過しており、一般に茹で麺の食感は著しく低下している。本発明の製造方法により製造された茹で麺であれば、このような茹で麺の食感が最も低下し易い条件下であっても、食感の低下が抑制され、十分な弾力となめらかさを有しているので好ましい。
【0027】
また、本発明において、得られる茹で麺は、茹で調理後、茹で麺の周囲が高水分材料で覆われた状態で、冷蔵又は冷凍条件下で長期間保存された後に、再加熱して喫食する冷蔵又は冷凍食品用であることも好ましい。例えば、茹で調理後、グラタン類の具材としてホワイトソース等に混合されるマカロニ等のパスタ等は、工場で製造され、冷蔵又は冷凍されて流通され、長期間経過後、購入した消費者により再加熱されて喫食される場合がある。一般に、ソース等の高水分材料で覆われた茹で麺は、長期間冷蔵又は冷凍保存された場合、再加熱しても食感の低下は大きい。本発明の製造方法により製造された茹で麺であれば、このような条件下であっても、食感の低下が抑制され、十分な弾力となめらかさを有しているので好ましい。
【0028】
また、本発明は、本発明の製造方法により製造された茹で麺を提供する。本発明の茹で麺は、上述の通り、冷蔵又は冷凍保存後の食感が改善された茹で麺であり、上述の用途に最適である。
【0029】
さらに、本発明は、乾麺を茹でることで得られる茹で麺の、冷蔵又は冷凍保存後の食感を改善する方法であって、前記乾麺のたん白質抽出率が30%以下であり、前記乾麺を茹でる前に、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬することを含み、前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加することを特徴とする方法を提供する。上述の通り、上記のたん白質抽出率を有する乾麺を用い、茹でる前に、麺の水分が上記の範囲になるように浸漬水に浸漬させることで、得られる茹で麺の冷蔵又は冷凍保存後の食感の低下を生じ難くすることができる。なお、本発明の方法の好ましい態様は、上述の本発明の茹で麺の製造方法と同様である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
1.乾麺の作製方法
(1)乾燥うどん
各実施例に用いた乾燥うどんを、以下のように作製した。まず、小麦粉に水を加えて混練して得た生地を、ロール製麺機(角10番、麺厚2.0mm)を使用して常法により製麺した。その後、表に記載した乾燥温度で乾燥した。乾燥うどんの水分は12?13質量%に調整した。
(2)乾燥スパゲッティ
各実施例に用いた乾燥スパゲッティを、以下のように作製した。まず、デュラムセモリナ(タピオカ澱粉を含有させた実施例の場合は、表に記載した通りタピオカ澱粉及びグルテンを配合)に水を加えて真空下で混練して得た生地を、押出製麺機(ダイス径1.6mm)を使用して常法により製麺した。その後、表に記載した乾燥温度で乾燥した。乾燥スパゲッティの水分は11?12質量%に調整した。
(3)乾燥マカロニ
各実施例に用いた乾燥マカロニを、以下のように作製した。まず、デュラムセモリナに水を加えて混練して得た生地を、押出製麺機(マカロニ用ダイス)を使用して常法により製麺した。その後、表に記載した乾燥温度で乾燥した。乾燥マカロニの水分は11?12質量%に調整した。
【0031】
2.茹で麺の作製方法
(1)乾麺の浸漬水への浸漬
バットに乾麺200g、及び常温の浸漬水(水、又は有機酸あるいはpH調整剤を含有させた実施例の場合は、表に記載した通り、有機酸あるいはpH調整剤を添加した)600g(乾麺の3倍量)を投入し、各実施例で設定した麺の水分になるように、浸漬時間を調整して浸漬した。浸漬温度は25℃で実施した。
(2)茹で調理
浸漬後、各実施例の麺の水を切り、2Lの沸騰水中で茹で調理した。茹で時間は、うどん、スパゲッティの場合、麺の水分が69?71質量%、マカロニの場合、63?65質量%になるように調整した。なお、浸漬する工程が無い比較例の場合は、乾麺をそのまま同様な水分になるように茹で調理した。
【0032】
3.評価用サンプルの作製方法
(1)冷蔵保存用(再加熱なしの喫食用(サラダ想定))サンプルの作製
茹で上がった茹で麺を冷水で冷却し、水切りした後、サラダ油を茹で麺に対して、1質量%添加し、混ぜ合わせた。これを密閉パックに入れ、冷蔵庫(約7℃)にて表に記載した期間保存した。
(2)冷蔵又は冷凍保存用(再加熱ありの喫食用(グラタン想定))サンプルの作製
茹で上がった茹で麺(乾燥マカロニから得た茹で麺を使用)を冷水で冷却し、水切りした後、サラダ油を茹で麺に対して、1質量%添加し、混ぜ合わせた。得られた茹で麺75gにホワイトソース75gを絡めたものを耐熱性紙容器(容量266cc)に投入し、さらにホワイトソース75gを上掛けした。蓋をして、冷蔵庫(約7℃)及び冷凍庫(約-20℃)にて、表に記載した期間保存した。
なおホワイトソースは、鍋にハインツホワイトソース500g、牛乳500g、食塩3g、コンソメ3g、白コショウ1gを投入し、混ぜ合わせた後、ソース重量が5%減少するまで加熱することにより調製した。得られたホワイトソースは、冷蔵庫で約10℃に冷却した後使用した。
【0033】
4.分析、評価方法
(1)たん白質抽出率の測定
試料乾麺を粉砕し、蓋付きサンプル瓶に、粉砕したサンプル30mg、及び0.05N酢酸溶液1.5mlを投入した。これを30℃の水浴中で1時間振とうし、たん白質を抽出した後、遠心分離(13000rpm、10分)し、上清を得た。得られた上清のたん白質量を、Protein Assay Rapid Kit(和光純薬社製)を用いて、測定した。たん白質抽出率は、以下の式:
たん白質抽出率(%)=(上清(1.5ml分)のたん白質量/サンプル30mgの総たん白質含有量)×100
により算出した。
(2)浸漬後の麺のpHの測定
ポリ袋に浸漬後の麺10gと、蒸留水90gとを投入し、麺を潰して蒸留水と均一に混合した後、30分間静置し、上清のpHをpH計で測定することによって求めた。
(3)浸漬後または茹で後の麺の水分測定
麺の水分の測定は、ブラベンダー社製水分計を用いて行った。麺を10g秤量し、130℃で3時間乾熱乾燥させた。乾熱乾燥後の麺の質量を計量し、減量分を水分とすることで、水分(質量%)を算出した。
(4)浸漬後の澱粉溶出状態の評価
浸漬後の浸漬水について澱粉の溶出状態(濁り)を目視観察し、以下の通り評価した。
◎:ほとんど溶出が認められない。○:わずかに溶出が認められる。△:溶出がやや多く認められる。×:溶出が多く認められる。
(5)茹で麺の保存後の食感の官能評価
上記保存茹で麺サンプルについて、表に記載した所定の期間保存後、3.(1)の冷蔵保存用の場合は、再加熱なしで、サラダ用ドレッシングをかけて試食し、3.(2)の冷蔵又は冷凍保存用の場合は、電子レンジで、喫食に適した温度まで再加熱した後、試食した。食感を、10名のパネルにより、以下の評価基準に従い、点数をつけ、平均の評価点を算出した。なお、評価点は小数点以下第二位を四捨五入した。
(i)弾力
1点:ほとんど弾力が感じられない。2点:弾力は感じられるが弱い。3点:弾力が感じられる。4点:やや弾力が強く感じられる。5点:極めて弾力が強く感じられる。
(ii)なめらかさ
1点:ほとんどなめらかさが感じられず、極めてぼそつき感が強い。2点:ややなめらかさが感じられるがぼそつき感が強い。3点:なめらかさが感じられる。4点:ややなめらかさが強く感じられる。5点:極めてなめらかさが強く感じられる。
【0034】
5.評価結果
(1)乾麺のたん白質抽出率の影響
茹で麺の冷蔵保存後の食感に及ぼす、用いた乾麺のたん白質抽出率の影響について検討した結果を表1に示す。スパゲッティの乾燥温度は、80℃で実施した。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示した通り、乾麺のたん白質抽出率が30%以下の参考例1?6(浸漬後の麺の水分は48?49質量%)は、浸漬後の澱粉溶出が生じ難く、茹で麺の冷蔵保存後に、再加熱なしで喫食する、極めて食感低下が生じ易い条件下で、弾力、なめらかさの評価が良好であった。一方、乾麺のたん白抽出率が30%を超えている比較例1?3(浸漬後の麺の水分は49?50質量%)では、浸漬後の澱粉溶出が生じ、冷蔵保存後の評価が参考例に比較して大幅に低い結果であった。これにより、本発明において、上記の乾麺のたん白質抽出率が必須要件であることが示された。
【0037】
(2)浸漬後の麺の水分の影響
茹で麺の冷蔵保存後の食感に及ぼす、乾麺を浸漬水に浸漬する工程における、浸漬後の麺の水分の影響について検討した結果を表2に示す。スパゲッティの乾燥温度は、80℃で実施した。
【0038】
【表2】

【0039】
表2に示した通り、乾麺を浸漬後の麺の水分が44?53質量%の参考例7?9(乾麺のたん白質抽出率は18%に調整した)は、茹で麺の冷蔵保存後に、再加熱なしで喫食する、極めて食感低下が生じ易い条件下で、弾力、なめらかさの評価が良好であった。一方、乾麺の浸漬後の麺の水分が低い比較例4及び5、並びに乾麺の浸漬後の麺の水分が高い比較例6(乾麺のたん白質抽出率は18%に調整した)では、冷蔵保存後の評価が参考例に比較して低い結果であった。比較例6においては、浸漬後の澱粉の溶出もやや多く認められた。これにより、本発明において、上記の浸漬後の麺の水分が必須要件であることが示された。
【0040】
(3)乾麺へのタピオカ澱粉の添加の影響
茹で麺の冷蔵保存後の食感に及ぼす、乾麺へのタピオカ澱粉の添加の影響について検討した結果を表3に示す。スパゲッティの乾燥温度は、80℃で実施した。
【0041】
【表3】

【0042】
表3に示した通り、タピオカ澱粉を含有させた乾麺を用いた参考例11?14は、タピオカ澱粉を含まない参考例10(参考例8と同じ)よりも冷蔵保存時の経時的な食感の低下を抑制していた。一方、乾麺をそのまま茹でる、一般的な製造方法の場合、タピオカ澱粉を含まない、比較例7とタピオカ澱粉を含有させた比較例8?11を比較すると、冷蔵保存後の食感に改善は認められなかった。これにより、本発明の茹で麺の製造方法において、タピオカ澱粉を含有した乾麺を用いると、従来技術では認められなかった、茹で麺の冷蔵保存後の食感改善効果が、さらに高められることが示された。また、タピオカ澱粉の配合率を4?10質量%に調製すると、より高い食感改善効果が得られた。
【0043】
(4)浸漬水への有機酸の添加による浸漬後の麺のpHの影響
茹で麺の冷蔵保存後の食感に及ぼす、浸漬水への有機酸の添加による浸漬後の麺のpHの影響について検討した結果を表4に示す。スパゲッティの乾燥温度は、80℃で実施した。
【0044】
【表4】

【0045】
表4に示した通り、浸漬水に有機酸を含有させ、浸漬後の麺のpHを4.0?6.0の範囲に調整した実施例16、17、19、20は、浸漬水に有機酸を添加していない参考例15(参考例8と同じ)よりも冷蔵保存時の経時的な食感の低下を抑制していた。pHが4.0未満の参考例18は、浸漬後の澱粉の溶出もやや多く認められ、浸漬による食感改善効果が認められるものの、やや低かった。これにより、本発明の茹で麺の製造方法において、浸漬後の麺のpHを4.0?6.0の範囲とすることで、より浸漬時の澱粉の溶出を防止することができ、茹で麺の冷蔵保存後の食感改善効果が、さらに高められることが示された。
【0046】
(5)高水分材料で覆われた茹で麺の冷蔵又は冷凍保存後の食感改善効果
上記3.(2)の冷蔵又は冷凍保存用(再加熱ありの喫食用(グラタン想定))サンプルについて、保存後の食感を評価した結果を表5及び6に示す。参考例21、22及び比較例12、14のマカロニの乾燥温度は、85℃で実施し、比較例13、15のマカロニの乾燥温度は、60℃で実施した。
【0047】
【表5】

【0048】
【表6】

【0049】
表5及び6に示した通り、高水分材料(ホワイトソース)に覆われた茹で麺を冷蔵又は冷凍保存後に再加熱して試食した場合、本発明の製造方法により作製した参考例21及び22の茹で麺は、浸漬水への浸漬をしない比較例12及び14と比較して、冷蔵又は冷凍保存による経時的な食感の低下を抑制していた。一方、たん白抽出率が30%を超える乾麺を用いて浸漬を行った、比較例13及び比較例15では、浸漬後の澱粉溶出が生じ、冷蔵又は冷凍保存による経時的な食感の低下も大きかった。これにより、本発明の製造方法により製造された茹で麺は、ソース等の高水分材料で覆われた茹で麺を、長期間冷蔵又は冷凍保存した後、再加熱して喫食する場合でも、食感の低下が抑制され、食感改善効果が得られることが示された。
【0050】
以上の実施例により、たん白質抽出率が30%以下の乾麺を用い、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬した後、茹でるという本発明の製造方法により得られた茹で麺は、冷蔵又は冷凍保存後の食感の低下が抑制され、優れた保存後の食感改善効果を有することが示された。また、その効果は、用いる乾麺にタピオカ澱粉を配合すること、及び浸漬水に有機酸を添加し、浸漬後の麺のpHを4.0?6.0に調整することで、さらに向上することが示された。
【0051】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明により、サラダ等の食品に混合後、チルド条件下で一定期間経過した後に、再加熱なしで、そのまま喫食される茹で麺や、グラタン等の茹で麺の周囲をソース等の高水分材料が覆うような食品の冷蔵又は冷凍品に用いられ、再加熱されて喫食される茹で麺として、保存後の食感が改善された茹で麺を提供することができる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たん白質抽出率が30%以下の乾麺を、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬する工程、及び
浸漬後の麺を茹でる工程、
を含み、
前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加することを特徴とする茹で麺の製造方法であって、
前記茹で麺が、冷蔵又は冷凍保存用である茹で麺の製造方法。
【請求項2】
前記乾麺が、タピオカ澱粉を含む請求項1に記載の茹で麺の製造方法。
【請求項3】 (削除)
【請求項4】
前記茹で麺が、茹で調理後、冷蔵条件下で6時間以上経過後に、再加熱なしで喫食される冷蔵食品用である請求項1又は2に記載の茹で麺の製造方法。
【請求項5】
前記茹で麺が、茹で調理後、茹で麺の周囲が高水分材料で覆われた状態で、冷蔵又は冷凍条件下で長期間保存された後に、再加熱して喫食する冷蔵又は冷凍食品用である請求項1又は2に記載の茹で麺の製造方法。
【請求項6】
乾麺を茹でることで得られる茹で麺の、冷蔵又は冷凍保存後の食感を改善する方法であって、
前記乾麺のたん白質抽出率が30%以下であり、
前記乾麺を茹でる前に、麺の水分が44?53質量%の範囲になるように浸漬水に浸漬することを含み、
前記浸漬後の麺のpHが4.0?6.0の範囲となるように、前記乾麺を浸漬する前の前記浸漬水に有機酸を添加することを特徴とする方法。
【請求項7】
前記乾麺が、タピオカ澱粉を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】 (削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-09-01 
出願番号 特願2014-204411(P2014-204411)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田中 晴絵  
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 安孫子 由美
関 美祝
登録日 2019-03-08 
登録番号 特許第6490380号(P6490380)
権利者 昭和産業株式会社
発明の名称 茹で麺の製造方法、茹で麺、及び茹で麺の保存後の食感改善方法  
代理人 野村 悟郎  
代理人 野村 悟郎  

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