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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
管理番号 1368062
異議申立番号 異議2019-700901  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-14 
確定日 2020-09-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6513332号発明「甘味料の呈味改善方法、甘味料の呈味改善剤、及び呈味改善組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6513332号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3〕〔4、5〕〔6、7〕について訂正することを認める。 特許第6513332号の請求項1、4、6に係る特許を維持する。 特許第6513332号の請求項2、3、5、7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6513332号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成26年1月31日に特許出願され、平成31年4月19日に特許権の設定登録がされ、令和1年5月15日にその特許公報が発行され、その後、令和1年11月14日に、特許異議申立人 増井 隆(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和2年1月30日付けで当審から取消理由通知が通知され、同年3月19日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年5月18日付けで当審から特許法120条の5第5項に基づく通知書が出され、特許異議申立人から同年6月16日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
令和2年3月19日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。

1 訂正の内容
本件訂正の内容は以下の訂正事項1?9のとおりである。
訂正事項1
訂正前の請求項1の「前記甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アドバンテーム、アセスルファムカリウム、ラカンカ抽出物、ネオテーム、アリテーム、及びサッカリンナトリウムからなる群より選択される1以上の高甘味度甘味料」との記載を訂正後に「前記甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料」とする。

訂正事項2
訂正前の請求項1の末尾の「高甘味度甘味料である、呈味改善方法。」との記載を訂正後に「高甘味度甘味料であり、
前記高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で組み合わされる、呈味改善方法。」とする。

(3)訂正事項3
請求項2を削除する。

訂正事項4
請求項3を削除する。

(5)訂正事項5
訂正前の請求項4の「前記甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アドバンテーム、アセスルファムカリウム、ラカンカ抽出物、ネオテーム、アリテーム、及びサッカリンナトリウムからなる群より選択される1以上の高甘味度甘味料」との記載を訂正後に「前記甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料」とする。

(6)訂正事項6
訂正前の請求項4の末尾の「高甘味度甘味料である、呈味改善剤。」との記載を訂正後に「高甘味度甘味料であり、
前記高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比となるように使用される、呈味改善剤。」とする。

(7)訂正事項7
請求項5を削除する。

(8)訂正事項8
訂正前の請求項6の「前記甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アドバンテーム、アセスルファムカリウム、ラカンカ抽出物、ネオテーム、アリテーム、及びサッカリンナトリウムからなる群より選択される1以上の高甘味度甘味料」との記載を訂正後に「前記甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料」とする。

(9)訂正事項9
請求項7を削除する。

なお、訂正前の請求項1?3について、請求項2、3は請求項1を直接的に引用しているものであって、訂正事項1、2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1?3に対応する訂正後の請求項1?3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正前の請求項4、5について、請求項5は請求項4を直接的に引用しているものであって、訂正事項5、6によって記載が訂正される請求項4に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項4、5に対応する訂正後の請求項4、5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
さらに、訂正前の請求項6、7について、請求項7は請求項6を直接的に引用しているものであって、訂正事項8によって記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項6、7に対応する訂正後の請求項6、7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2 判断
(1)訂正事項1について
ア 目的要件の適否について
本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、請
求項1の「甘味料」を「スクラロース、アスパルテーム、アドバンテーム、アセスルファムカリウム、ラカンカ抽出物、ネオテーム、アリテーム、及びサッカリンナトリウムからなる群より選択される1以上の高甘味度甘味料」から「前記甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料」との場合に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項について
本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、請求項1を引用する訂正前の請求項2の特定事項に基づくものであるから、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
また、上記訂正は、特許請求の範囲を減縮したものであって、かつ発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。

エ 訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2
ア 目的要件の適否について
本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、請求項1の「高甘味度甘味料」を「高甘味度甘味料である」から「高甘味度甘味料であり、
前記高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で組み合わされる、」と、「高甘味度甘味料1に対」する「N-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比」との限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項について
本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、請求項1を引用する訂正前の請求項3の特定事項に基づくものであるから、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
また、上記訂正は、特許請求の範囲を減縮したものであって、かつ発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。

エ 訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(3) 訂正事項3および4
ア 目的要件の適否について
本件訂正の訂正事項3および4に係る訂正は、それぞれ、訂正前の請求項2および請求項3を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項について
本件訂正の訂正事項3および4に係る訂正は、それぞれ、訂正前の請求項2および請求項3を削除したものであるから、新たな技術的事項の導入をするものではない。
訂正事項3および4は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
また、上記訂正は、特許請求の範囲を減縮したものであって、かつ発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項3および4は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。

エ 訂正事項3および4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(4) 訂正事項5について
ア 目的要件の適否について
本件訂正の訂正事項5に係る訂正は、請求項4の「甘味料」を「スクラロース、アスパルテーム、アドバンテーム、アセスルファムカリウム、ラカンカ抽出物、ネオテーム、アリテーム、及びサッカリンナトリウムからなる群より選択される1以上の高甘味度甘味料」から「前記甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料」との場合に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項について
本件訂正の訂正事項5に係る訂正は、請求項4を引用する訂正前の請求項5の特定事項に基づくものであるから、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
訂正事項5は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
また、上記訂正は、特許請求の範囲を減縮したものであって、かつ発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。

エ 訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(5) 訂正事項6
ア 目的要件の適否について
本件訂正の訂正事項6に係る訂正は、請求項4の「高甘味度甘味料」を「高甘味度甘味料である」から「高甘味度甘味料であり、
前記高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で組み合わされる、」と、「高甘味度甘味料1に対」する「N-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比」との限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項について
本件訂正の訂正事項6に係る訂正は、訂正前の請求項3の特定事項に基づくものであるから、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
訂正事項6は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
また、上記訂正は、特許請求の範囲を減縮したものであって、かつ発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。

エ 訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(6) 訂正事項7
ア 目的要件の適否について
本件訂正の訂正事項7に係る訂正は、訂正前の請求項5を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項について
本件訂正の訂正事項7に係る訂正は、訂正前の請求項5を削除したものであるから、新たな技術的事項の導入をするものではない。
訂正事項7は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
また、上記訂正は、特許請求の範囲を減縮したものであって、かつ発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。

エ 訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(7) 訂正事項8について
ア 目的要件の適否について
本件訂正の訂正事項8に係る訂正は、請求項6の「甘味料」を「スクラロース、アスパルテーム、アドバンテーム、アセスルファムカリウム、ラカンカ抽出物、ネオテーム、アリテーム、及びサッカリンナトリウムからなる群より選択される1以上の高甘味度甘味料」から「前記甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料」との場合に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項について
本件訂正の訂正事項8に係る訂正は、請求項6を引用する訂正前の請求項7の特定事項に基づくものであるから、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
訂正事項8は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
また、上記訂正は、特許請求の範囲を減縮したものであって、かつ発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。

エ 訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(8) 訂正事項9
ア 目的要件の適否について
本件訂正の訂正事項9に係る訂正は、訂正前の請求項7を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項について
本件訂正の訂正事項9に係る訂正は、訂正前の請求項7を削除したものであるから、新たな技術的事項の導入をするものではない。
訂正事項9は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で行われるものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
また、上記訂正は、特許請求の範囲を減縮したものであって、かつ発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。

エ 訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

3 訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

よって、訂正後の請求項〔1?3〕,〔4,5〕,〔6,7〕について訂正することを認める。

第3 特許請求の範囲の記載
本件訂正により訂正された特許請求の範囲は、以下のとおりのものであり、請求項1,4,6に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」,「本件特許発明4」,「本件特許発明6」という。まとめて、「本件特許発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、4、6に記載された事項により特定されるものである。

「【請求項1】
甘味料と、N-アセチルグルコサミンとを組み合わせることを特徴とする甘味料の呈味改善方法であって、
前記甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料であり、
前記高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で組み合わされる、呈味改善方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
N-アセチルグルコサミンを含有することを特徴とする甘味料の呈味改善剤であって、
前記甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料であり、
前記高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比となるように使用される、呈味改善剤。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
甘味料と、N-アセチルグルコサミンを含むことを特徴とする呈味改善組成物であって、
前記甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料であり、
組成物中の前記高甘味度甘味料が0.00001?1重量%、N-アセチルグルコサミンが0.001?0.1重量%である、呈味改善組成物。
【請求項7】
(削除)」

第4 取消理由及び特許異議申立理由
1 特許異議申立人が申し立てた理由
(1)新規性
異議理由1-1:訂正前の本件特許発明1、4は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証?甲第6号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の請求項1、4に係る特許は、特許法第29条に違反してされたものである。
異議理由1-2:訂正前の本件特許発明2、5は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証?甲第6号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の請求項2、5に係る特許は、特許法第29条に違反してされたものである。

(2)進歩性
異議理由2-1:訂正前の本件特許発明1,4は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証?甲第6号証に記載された発明から、訂正前の本件特許発明2,5は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証?甲第6号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものである。
異議理由2-2:訂正前の本件特許発明3,6は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証?甲第6号証に記載された発明から数値範囲の最適化又は好適化したにすぎないので、当業者が容易に発明することができたものである。

(3)実施可能要件
異議理由3:本件特許明細書の実施例には、特定の組み合わせに関して、甘味度を10%砂糖溶液に会わせた溶液に対して、N-アセチルグルコサミンを0.01%濃度で添加した実験データしかなく、1点の配合量のデータから本件特許の請求項1?7に記載された全ての発明において、同様の効果を期待できるか予測できない。

(4)サポート要件
異議理由4:本件特許明細書の実施例のデータからだけでは、本件特許の請求項1?7に記載された全ての発明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。

甲第1号証:米国特許出願公開第2007/0259094号明細書
甲第2号証:特開2001-333729号公報
甲第3号証:特開2002-360216号公報
甲第4号証:特開2006-180812号公報
甲第5号証:雪印メグミルクのホームページの宅配商品のご案内のサイトにおける「グルコサミンパワーすっきりタイプ 100ml」の商品ページ、URL<http://www.meg-snow.com/takuhai/products/healthy/7dalf.html>web.archive.orgにより立証されるとされる2014年1月21日の記事の写し
甲第6号証:岩谷産業ホームページのイワタニ「新グルコサミンドリンク10本入り」の商品ページURL<http://www.iwatani-i-collect.com/products/kenko/item-3213.html>web.archive.orgにより立証されるとされる2012年3月4日の記事の写し
甲第7号証:「砂糖類情報」、独立行政法人農畜産業振興機構のホームページ、URL<http://sugar.alic.go.jp/japan/fromalic/fa_0707c.htm>、最終更新日2010年3月6日の写し

2 当審が通知した取消理由
理由1:訂正前の請求項1、2、4、5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の請求項1、2、4、5に係る特許は、特許法第29条に違反してされたものである。
理由2:訂正前の請求項1、2、4、5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明に基いて、本件特許出願にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから、訂正前の請求項1、2、4、5に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものである。
理由3:訂正前の請求項1、3、4、6に係る特許は、本件特許明細書の実施例には、特定の甘味料とN-アセチルグルコサミンの配合例の場合しか記載されておらず、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、請求項1、3、4、6に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由4:訂正前の請求項1、3、4、6に係る特許は、本件特許明細書の実施例には、特定の甘味料とN-アセチルグルコサミンの配合例の場合しか記載されておらず、その発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、請求項1、3、4、6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。


刊行物1:米国特許出願公開第2007/0259094号明細書(甲第1号証)

第5 当審の判断
当審は、請求項1、4、6に係る特許は、当審の通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。

当審が通知した取消理由の判断
1 理由1(特許法第29条第1項第3号)及び理由2(特許法第29条第2項)について
(1)甲第1号証の記載事項
本願の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、以下の記載がある。
訳文にて示す。
(1a)「要約
本発明は、食品および飲料へのN-アセチルグルコサミンの添加、および甘味料としてのN-アセチルグルコサミンの使用に関する。本発明はまた、N-アセチルグルコサミンで調製された食品および飲料、ならびにその調整方法に関する。本発明は、身体に対する有益な効果、例えば、炎症性腸疾患または変形性関節症に苦しむ患者の痛み及び炎症の緩和のために、所望の1日量のN-アセチルグルコサミンを摂取する好ましい手段を提供する。」

(1b)「[0055]砂糖、サッカリン、アスパルテーム、シクラメート、アセスルファムK、スクラロース、アリテーム、ネオテームなどの一般的に使用される甘味料は、多くの場合、小袋に包装されている。この小袋又はキューブへのN-アセチルグルコサミンの追加により、消費者はN-アセチルグルコサミンの1日許容摂取量を得ることができる。例えば、1g、2g、4g、若しくは6gのN-アセチルグルコサミンを含む砂糖の小袋は、食品又は飲料に添加することによって、1日の処方に達する。N-アセチルグルコサミンを含む砂糖の小袋は、お茶やコーヒーなどのホット又はアイス飲料や、朝食用シリアルに添加するなど、通常の方法で使用される。」

(1c)「[0071]目的:グルコサミン硫酸塩及びN-アセチルグルコサミンを単独、または別の人工甘味料と組み合わせで、甘味テストをした。」

(1d)「「0072]テイストパネルは、少量のさまざまな処方をテイスティングし、甘味の程度、味が好みかどうか、ネガティブな味があるかどうかを示すように求められていた。甘さ及び「好みの味」については100ミリメートルのスケールを使用して記録した。スコアが100に近いほど、甘味度が高い、もしくは味覚パネルのメンバーが「好みの味」であることを示している。スコアは平均化されている。」

(1e)「[0075]様々な処方に対する平均甘味度と「好みの味」の点数」、
A1、A2、A3、A4、A5、A6の処方として、それぞれ、
N-アセチルグルコサミン/アスパルテームが985/15、978/22、955/45、940/60、1/0、0/0
甘味度(1?100)が、57.2、59.1、71.5、69.6、35.6、8.7
好みの味(1?100)が56.8、47.9、55.6、41.7、52.8、3
であることが示されている。

(1f)「[0076]N?アセチルグルコサミンは、N-アセチルグルコサミンとアスパルテームの組み合わせよりも甘味は低かったが、アスパルテームの温度が最も高い組み合わせの処方よりも好ましかった。100%のN-アセチルグルコサミンの処方に関連づけられて表現された言葉は、砂糖のような味、わずかに甘い、さっぱりしているであり、「不快」ではなかった。2人の被験者のみが純粋なN-アセチルグルコサミン(処方A5)に好みを示さなかった。ほぼ全ての被験者が、N-アセチルグルコサミンは滑らかな口当たりであると言っていた。」

(2)刊行物1に記載された発明
刊行物1には、摘記(1a)より、N-アセチルグルコサミンを食品及び飲料に適用することに関する技術が記載されており、また、摘記(1b)及び(1c)より、アスパルテームが甘味料であることが記載されている。
そして、摘記(1d)、(1e)及び(1f)の記載から、N-アセチルグルコサミンとアスパルテームを組み合わせて用いたことや、その際に、甘味の強さや味の好みについて変化したことが記載されており、具体的な処方A1ないしA5において、N-アセチルグルコサミン/アスパルテームが985/15、978/22、955/45、940/60の割合の時、甘味度は、57.2、59.1、71.5、69.6である。
そうすると、甘味料であるアスパルテームが最も多いとき(N-アセチルグルコサミン/アスパルテーム=940/60)に比べて、それよりもアスパルテームが少なくなりN-アセチルグルコサミンが多くなったとき(N-アセチルグルコサミン/アスパルテーム=955/45)に甘味度が向上していることから、N-アセチルグルコサミンはアスパルテームの甘味度をより向上させることができ、呈味を改善する効果を有しているといえる。
したがって、刊行物1には、アスパルテームとN-アセチルグルコサミンとを組み合わせて用いることで、呈味が改善することが記載されているといえる。
以上のことから、刊行物1には、以下の発明が記載されているといえる。

「甘味料と、N-アセチルグルコサミンとを組み合わせる甘味料の呈味改善方法であって、甘味料がアスパルテームである、呈味改善方法。」(以下「引用発明1」という。)

「N-アセチルグルコサミンを用いる呈味改善剤であって、甘味料がアスパルテームである、呈味改善剤。」(以下「引用発明2」という。)

(3)対比・判断
ア 本件特許発明1と引用発明1との対比
(ア)対比
本件特許発明1と引用発明1とを対比すると、本件特許発明1と引用発明1とは、「甘味料と、N-アセチルグルコサミンとを組み合わせることを特徴とする甘味料の呈味改善方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1-1:本件特許発明1において、「甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料」と特定されているのに対して、引用発明1においては、甘味料がアスパルテームである点

相違点2-1:本件特許発明1において、「高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で組み合わされる」と特定されているのに対して、引用発明1においては、そのような特定のない点

(イ)判断
a 相違点1-1について
まず、上記相違点1-1について検討する。
引用発明1の甘味料であるアスパルテームが高甘味度甘味料であることは、技術常識であるから、引用発明1のアスパルテームは、本件特許発明1の「甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料である」ことの選択肢の一つであるから、相違点1-1は、実質的相違点ではない。

b 相違点2-1について
次に、相違点2-1について検討する。
本件特許発明1の「高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で組み合わされる」との重量比の特定を引用発明1は、備えていないのであるから相違点2-1は、実質的な相違点であり、本件特許発明1は、刊行物1に記載された発明とはいえない。

刊行物1においては、具体的な処方A1ないしA5として、N-アセチルグルコサミン/アルパルテームが、985/15、978/22、955/45、940/60、1000/0であるものが示されている。
引用発明1を認定した刊行物1においては、N-アセチルグルコサミンは、それ自体の甘味料としての特徴に着目されて、N-アセチルグルコサミン単独で添加したもの(A5)を優位なものとして認識している。
したがって、上記着目のもとに、たまたま、A1ないしA4のものが示されていたとしても、着目しているN-アセチルグルコサミンの比率をわざわざ変更又は減少させる動機付けはなく、「高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で組み合わされる」との相違点2-1の構成をなすことは当業者が容易になし得るものとはいえない。

c そして、本件特許発明1で特定された全体の構成を採用することで、本件特許発明1は、高甘味度甘味料特有の不快な異味等を安全かつ安価に改善する呈味改善方法を得るという顕著な効果を奏しているといえる。

d したがって、本件特許発明1は、刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

イ 本件特許発明4と引用発明2との対比
(ア)対比
本件特許発明4と引用発明2とを対比すると、本件特許発明4と引用発明2とは、「甘味料と、N-アセチルグルコサミンとを組み合わせることを特徴とする甘味料の呈味改善剤」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1-4:本件特許発明4において、「甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料」と特定されているのに対して、引用発明2においては、アスパルテームである点

相違点2-4:本件特許発明4において、「高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で組み合わされる」と特定されているのに対して、引用発明2においては、そのような特定のない点

(イ)判断
a 相違点1-4について
まず、上記相違点1-4について検討する。
引用発明2の甘味料であるアスパルテームが高甘味度甘味料であることは、技術常識であるから、引用発明2のアスパルテームは、本件特許発明4の「甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料である」ことの選択肢の一つであるから、相違点1-4は、実質的相違点ではない。

b 相違点2-4について
次に、相違点2-4について検討する。
本件特許発明4の「高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で組み合わされる」との重量比の特定を引用発明2は、備えていないのであるから相違点2-4は、実質的な相違点であり、本件特許発明4は、刊行物1に記載された発明とはいえない。

刊行物1においては、具体的な処方A1ないしA5として、N-アセチルグルコサミン/アルパルテームが、985/15、978/22、955/45、940/60、1000/0であるものが示されている。
引用発明2を認定した刊行物1においては、N-アセチルグルコサミンは、それ自体の甘味料としての特徴に着目されて、N-アセチルグルコサミン単独で添加したもの(A5)を優位なものとして認識している。
したがって、上記着目のもとに、たまたま、A1ないしA4のものが示されていたとしても、着目しているN-アセチルグルコサミンの比率をわざわざ変更又は減少させる動機付けはなく、「高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で組み合わされる」との相違点2-1の構成をなすことは当業者が容易になし得るものとはいえない。

c そして、本件特許発明4で特定された全体の構成を採用することで、本件特許発明4は、高甘味度甘味料特有の不快な異味等を安全かつ安価に改善する呈味改善剤を得るという顕著な効果を奏しているといえる。

d したがって、本件特許発明4は、刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

ウ 本件特許発明6と引用発明2との対比
(ア)対比
本件特許発明6と引用発明2とを対比すると、本件特許発明4と引用発明2とは、「甘味料と、N-アセチルグルコサミンとを組み合わせることを特徴とする甘味料の呈味改善組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1-6:本件特許発明6において、「甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料」と特定されているのに対して、引用発明2においては、アスパルテームである点

相違点2-6:本件特許発明6において、「組成物中の前記高甘味度甘味料が0.00001?1重量%、N-アセチルグルコサミンが0.001?0.1重量%である」と特定されているのに対して、引用発明2においては、そのような特定のない点

(イ)判断
a 相違点1-6について
まず、上記相違点1-6について検討する。
引用発明2の甘味料であるアスパルテームが高甘味度甘味料であることは、技術常識であるから、引用発明2のアスパルテームは、本件特許発明6の「甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料である」ことの選択肢の一つであるから、相違点1-6は、実質的相違点ではない。

b 相違点2-6について
次に、相違点2-6について検討する。
本件特許発明6の「組成物中の前記高甘味度甘味料が0.00001?1重量%、N-アセチルグルコサミンが0.001?0.1重量%である」との組成物中の重量%の特定を引用発明2は、備えていないのであるから相違点2-6は、実質的な相違点であり、本件特許発明6は、刊行物1に記載された発明とはいえない。

刊行物1においては、[0101]の表に、N-アセチルグルコサミン及びアスパルテームをそれぞれ[0.9825%,0.015](フォーミュラP)、[0.9975%,0](フォーミュラQ)、[0.9525%,0.045%](フォーミュラR)(同時に流動剤であるフュームドシリカを添加している。)対象品に加えた例が示されている。
引用発明2を認定した刊行物1においては、N-アセチルグルコサミンは、それ自体の甘味料としての特徴に着目されて、N-アセチルグルコサミン単独で添加したもの(フォーミュラQ)を優位なものとして認識している。
したがって、上記着目のもとに、たまたま、(フォーミュラP)(フォーミュラR)のN-アセチルグルコサミン及びアスパルテームを含んだ組成物の例があるものの、N-アセチルグルコサミンの量が相当多く、着目しているN-アセチルグルコサミンの比率をわざわざ変更又は減少させる動機付けはなく、「組成物中の前記高甘味度甘味料が0.00001?1重量%、N-アセチルグルコサミンが0.001?0.1重量%である」との相違点2-6の構成をなすことは当業者が容易になし得るものとはいえない。

c そして、本件特許発明6で特定された全体の構成を採用することで、本件特許発明6は、高甘味度甘味料特有の不快な異味等を安全かつ安価に改善する呈味改善組成物を得るという顕著な効果を奏しているといえる。

d したがって、本件特許発明6は、刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

エ 取消理由1及び2の判断のまとめ
以上のとおり、本件特許発明1、4、6に関して、新規性及び進歩性の取消理由は存在せず、取消理由1及び2は解消している。

2 理由3(特許法第36条第6項第1号)について
(1)特許法第36条第6項第1号の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)特許請求の範囲の記載
請求項1には、「甘味料と、N-アセチルグルコサミンとを組み合わせることを特徴とする甘味料の呈味改善方法」として、「甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料であ」ること、「高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で組み合わされる」ことを特定した方法の発明が記載されている。
また、請求項4には、「甘味料と、N-アセチルグルコサミンとを組み合わせることを特徴とする甘味料の呈味改善剤」として、「甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料であ」ること、「高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比となるように使用される」ことを特定した物の発明が記載されている。
さらに、請求項6には、「甘味料と、N-アセチルグルコサミンとを組み合わせることを特徴とする甘味料の呈味改善組成物」として、「甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料であ」ること、「組成物中の前記高甘味度甘味料が0.00001?1重量%、N-アセチルグルコサミンが0.001?0.1重量%である」ことを特定した物の発明が記載されている。

(3)発明の詳細な説明の記載
本件明細書の発明の詳細な説明には、訂正前の請求項1?7に係る発明に関する記載として、特許請求の範囲の実質的繰り返し記載を除いて以下の記載がある。

(3-1)本件特許発明の背景技術及び課題について
「【背景技術】
【0002】
甘味料には、砂糖、ブドウ糖、マルトース等の糖類、還元パラチノース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール類などの天然甘味料;アスパルテーム、ネオテーム、アリテームに代表されるペプチド系甘味物質、ステビア甘味料のステビオサイドに代表される配糖体系甘味物質、スクラロースに代表される蔗糖誘導体、サッカリンナトリウム、アセスルファムKなどの合成甘味料がある。
【0003】
近年の健康志向の高まりから、くどい甘味は天然甘味料及び合成甘味料を含めて敬遠されつつある。また、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムK、ステビオサイド等の低カロリーの高甘味度甘味料を使用した飲食物が増加している。このような高甘味度甘味料は、低カロリーかつショ糖の数百倍の甘味度を有するという利点を有する反面、口中に含んだ際の不自然な甘味の出方や、後味として持続する甘味(いわゆる後引き)及び不自然な苦味等の後味等の高甘味度甘味料特有の不快な異味があり、呈味の質がショ糖よりも劣るという欠点を有している。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グルコサミンは、自然界ではエビやカニなどの甲殻類のキチンの主成分として存在する、グルコースの2位の水酸基がアミノ基に置換されたアミノ糖である。N-アセチルグルコサミンは、グルコサミンの2位のアミノ基がアセチル化されたものである。これらは主に関節の修復効果を目的とするサプリメントの成分として、よく食用に用いられている安全かつ安価な成分である。しかしながら、グルコサミン及びN-アセチルグルコサミンのうちの少なくとも一方の、甘味料の呈味改善効果は報告されていない。
【0007】
発明者らは、驚くべきことに、グルコサミン及びN-アセチルグルコサミンのうちの少なくとも一方を、甘味料を含む飲食品に添加することにより、かかる甘味料の呈味改善効果があることを見いだし、本発明を完成させるに至った。」(下線は当審にて追加。以下同様。)

(3-2)本件特許発明の効果について
「【0009】
食用に用いられているグルコサミン及び/又はN-アセチルグルコサミンを用いて、安全かつ安価に甘味料の呈味を改善することができる。」

(3-3)高甘味度甘味料について
「【0011】
本明細書において、「高甘味度甘味料」とは、砂糖に比べて強い甘味を有する(例えば砂糖の100倍以上の甘味を有する)天然甘味料及び/又は合成甘味料を意味する。そのような高甘味度甘味料の例としては、スクラロース、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、アスパルテーム及びアスパルテーム誘導体(アドバンテームなど)、ステビア抽出物(ステビオサイド、レバウディオサイドなど)、ソーマチン、グリチルリチン、ネオテーム、アリテーム、ラカンカ(羅漢果)抽出物、サッカリンナトリウムなどが挙げられる。
・・・
【0014】
好ましくは、高甘味度甘味料は、スクラロース、アスパルテーム、アドバンテーム、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物、ネオテーム、アリテーム、及びサッカリンナトリウムからなる群より選択される1以上の高甘味度甘味料である。」

(3-4)呈味改善剤としてのN-アセチルグルコサミンについて
「【0016】
N-アセチルグルコサミンは、グルコサミンの2位のアミノ基がアセチル化された公知のアミノ糖誘導体である。N-アセチルグルコサミンは公知の方法により製造してもよいし、または市販のN-アセチルグルコサミンを用いてもよい。市販のN-アセチルグルコサミンの例としては、例えば商品名「N-アセチルグルコサミンPG」(甲陽ケミカル株式会社)が挙げられる。
・・・
【0018】
本発明の方法においては、上記の甘味料を単独でまたは2種類以上を組み合わせたものに、呈味改善剤として・・・N-アセチルグルコサミン・・・使用する。」

(3-5)甘味料とN-アセチルグルコサミンの組み合わせ、呈味改善について
【0019】
甘味料とグルコサミン及びN-アセチルグルコサミンのうちの少なくとも一方とを組み合わせて、食品や飲料などの組成物を調製した場合、組成物中の甘味料の量、及びグルコサミン並びにN-アセチルグルコサミンのうちの少なくとも一方の量は、いずれも甘味料の呈味を改善する量で適宜決定してもよい。組成物中の甘味料の量は通常0.00001?30重量%であり、甘味料の種類によっても変更し得る。例えば高甘味度甘味料の場合、通常0.00001?10重量%、好ましくは0.00001?1、より好ましくは0.0001?1重量%、より好ましくは0.001?1重量%、さらにより好ましくは0.01?0.1重量%である。高甘味度甘味料のうちでも、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物、ネオテーム、アリテーム、及びサッカリンナトリウムは通常0.001?10重量%、好ましくは0.001?1重量%、より好ましくは0.01?0.1重量%であり、アドバンテームは通常0.00001?1重量%、好ましくは0.00001?1重量%、より好ましくは0.0001?1重量%であり得る。組成物中のグルコサミン及びN-アセチルグルコサミンのうちの少なくとも一方の量(グルコサミン及びN-アセチルグルコサミンの両方を用いる場合はそれらの合計量)は通常0.001?1重量%、より好ましくは0.01?0.1重量%である。グルコサミン及びN-アセチルグルコサミンのうちの少なくとも一方の量の下限値が0.001重量%未満だと呈味改善の効果が得られない。また、上限値は呈味改善の効果が得られる限り特に限定されないが、グルコサミン及びN-アセチルグルコサミン自体に少し甘味があるため、1重量%を超えると飲食品の風味に影響を及ぼし得るし、上記範囲を超えて加えても、呈味改善の更なる改良は期待できないので、経済的に不利である。甘味料に対するグルコサミン並びにN-アセチルグルコサミンのうちの少なくとも一方の量の重量比(グルコサミン並びにN-アセチルグルコサミンのうちの少なくとも一方/甘味料)は、その利用される食品または飲料組成物に求められる甘さの質や甘味料の甘味倍率に応じて適宜選択されるが、通常1/100以上100以下、好ましくは1/10以上(甘味料100重量部に対して10重量部以上)10以下(甘味料100重量部に対して1000重量部以下)である。下限値の1/100未満では、グルコサミン及び/又はN-アセチルグルコサミンによる甘味料の呈味改善効果が小さい。一方、上限値の100を超えてグルコサミン及び/又はN-アセチルグルコサミンを加えても、呈味改善の更なる改良は期待できないので、経済的に不利である。
【0020】
呈味改善は、甘味料の有するくどい甘さの低減、及び高甘味度甘味料の有する不快な異味の抑制を含む。より具体的には、角のある不自然な甘味の出方を円やかにし、後味として持続する甘味(いわゆる後引き)を抑制し、及び/又は不自然な苦味の後味等の高甘味度甘味料特有の不快な異味を抑制することができる。このため甘味の切れがよく、食品や飲料がおいしく全体的に自然な味わいになる。」

(3-6)本件特許発明の使用形態、添加物、適用分野、適用方法について
「【0021】
本発明の方法においては、上記の甘味料及び/又は、グルコサミン及び/又はN-アセチルグルコサミンの使用形態は問わず、目的に応じて、粉末、顆粒、キューブ、ペースト、液体など任意の形状で使用できる。
【0022】
本発明の呈味改善剤は、上記のグルコサミン及び/又はN-アセチルグルコサミンを有効成分として含む。
【0023】
本発明の呈味改善剤は、有効成分以外に、目的に応じて種々の添加物、例えば分散剤、賦形剤等を含有してもよい。分散剤、賦形剤としては、例えば還元パラチノース、各種糖類、有機酸或いは有機酸塩、デンプン、デキストリン、デキストラン、粉乳など食用上問題のないものを挙げることができ、いずれを用いるかは当業者により適宜選択される。また、本発明の呈味改善剤は、溶媒または分散媒を含むことができ、例えば水、エタノール等が挙げられる。
【0024】
本発明の呈味改善剤はその形態は特に限定されず、例えば粉末、顆粒、キューブ、ペースト、液体など任意の形状であることができる。
【0025】
本発明の組成物は、甘味料と、該甘味料の呈味が改善される量のグルコサミン及びN-アセチルグルコサミンのうちの少なくとも一方とを含む。組成物中の甘味料及びグルコサミン並びにN-アセチルグルコサミンのうちの少なくとも一方の量、及び/又は甘味料に対するグルコサミン及び/又はN-アセチルグルコサミンの割合は上述した通りである。この範囲外の場合には、上記したのと同様の不都合が生じる。
【0026】
本発明の組成物には、上記の甘味料及びグルコサミン及び/又はN-アセチルグルコサミンの他に、目的に応じて種々の添加物、例えば分散剤、賦形剤等を含むことができる。分散剤、賦形剤としては、上記したものを挙げることができる。また、本発明の組成物は、溶媒または分散媒を含むことができ、例えば水、エタノール等が挙げられる。
【0027】
本発明の組成物はその形態は特に限定されず、例えば粉末、顆粒、キューブ、ペースト、液体など任意の形状であることができる。したがって、本発明の組成物の製造方法も、用途に応じた製造方法によって製造できる。例えば粉末状の組成物を作る場合には、各成分を粉末化して均一に混合する、または混合した後に粉末化する。また、液体組成物の場合には、各成分を、溶媒(または分散媒)に溶解(または分散) させる。
【0028】
本発明の方法、呈味改良剤及び/又は組成物を適用できる分野は特に限定されず、甘味の付与を目的として高甘味度甘味料を添加し得る種々の分野において適用できる。例えば食品分野においては、各種甘味料(粉末、顆粒、キューブ、ペースト、液体などその形態は問わない)の、コーヒー、紅茶、コーラ、炭酸飲料、乳飲料、甘酒などの飲料類;ハードキャンディ、ソフトキャンディなどのキャンディ類; フォンダン、アイシング、ゼリー、ムース、チョコレート、クッキー、ケーキ、アイスクリーム、シャーベット、チューインガムなどの菓子類;スィートピクルス、ドレッシング、たれなどの食品等への利用を挙げることができる。
【0029】
本発明を飲料に適用する場合、グルコサミン及び/又はN-アセチルグルコサミンは熱に対して安定であり、かつ熱量が低いため、コーヒー、紅茶、ダイエットコーラ等の低カロリーの清涼飲料水への適用に特に適している。飲料を容器詰めにする場合、通常の飲料製造の工程に従い、原料成分を調合した後、PETボトルなどの容器に詰めたりビンや缶などの容器に詰め、容器詰めの前及び/又は後に加熱殺菌を施せばよい。
【0030】
また、食品以外の分野としては、例えば歯磨剤、口腔剤、経口医薬(漢方薬を含む)等が挙げられる。
【0031】
本発明の方法、呈味改良剤及び/又は組成物は、甘味料の使用量の多少によらず、種々の分野において使用できるが、特に高甘味度甘味料を多量に使用する製品(特に食品)において、呈味改善効果が著しく、有用性が高い。そのような高甘味度甘味料はスクラロース、アスパルテーム、アドバンテーム、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物、ネオテーム、アリテーム、及びサッカリンナトリウムからなる群より選択される1以上の高甘味度甘味料である。」

(3-7)各実施例試料及び比較例試料の測定結果及び官能評価結果について
「【0034】
実施例1.数種類の甘味料溶液にN-アセチルグルコサミン・・・を添加した場合の効果
甘味料を含む溶液にN-アセチルグルコサミン・・・を添加し、N-アセチルグルコサミン・・・を添加しない場合の甘味料を含む溶液(対照区)との比較で官能検査を行なった。
(方法)
甘味度を10%砂糖(上白糖)溶液にあわせた各甘味料(スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムK、ステビア、アセスルファムKとスクラロースの混合物、及びアセスルファムKとアスパルテームの混合物)の溶液を作製した(表1)。これにN-アセチルグルコサミン又はグルコサミンを0.01%の濃度になるよう添加し、それぞれの溶液で10人のパネラーを対象に、N-アセチルグルコサミン又はグルコサミンを添加しない場合の甘味料溶液と比較して、N-アセチルグルコサミン又はグルコサミンの添加による味覚の変化を以下の4段階で評価した:「おいしい=5点」、「ややおいしい=3点」、「変わらない=1点」、「まずい=-1点」。結果をWilcoxon符号付順位和検定で統計処理した。
【0035】
なお、各試薬の入手先は以下の通りである。
スクラロース:商品名「サンスイート」(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
アスパルテーム: 商品名「パルスイートダイエットG-100」(味の素株式会社)
アセスルファムK:商品名「サネット」 (キリン協和フーズ株式会社)
ステビア:商品名「レバウディオJ-100」(守田化学工業株式会社)
N-アセチルグルコサミン:商品名「コーヨーSQNAG」(甲陽ケミカル株式会社)
グルコサミン:商品名「コーヨーグルコサミンPG」(甲陽ケミカル株式会社)
【0036】

【0037】
(結果)
単体の甘味料溶液にN-アセチルグルコサミンを0.01%濃度で添加した場合、官能検査によると、単体のアセスルファム溶液以外で、N-アセチルグルコサミンを添加しない場合と比較して甘味料溶液の評価が向上し、N-アセチルグルコサミンの添加により、角のある不自然な甘味の出方を円やかにし、甘味の質に厚みを与え、高甘味度甘味料特有の不快な異味が低減されていることが分かった。アセスルファム溶液が、単体での評価が向上していなくてもスクラロースやアスパルテーム等の他の高甘味度甘味料と組み合わせると評価が向上するのは予想外の効果である。さらに、Wilcoxon符号付順位和検定によると、単体のスクラロース溶液において有意に味覚の改善を感じさせた。また有意差はつかなかったものの、N-アセチルグルコサミンはアセスルファムKとスクラロースの混合溶液においても甘味の質を円やかにして厚みを与え、味覚を改善させる傾向が見られた(表2)。
【0038】
【表2】



(4)判断
(4-1)本件特許発明の課題について
上記(3)(3-1)(3-2)の記載及び本件特許明細書全体を参酌して、本件特許発明1の課題は、高甘味合味度甘味料の不快な異味の呈味改善方法を提供することにあり、本件特許発明4の課題は、高甘味度甘味料の不快な異味の呈味改善剤を提供することにあり、本件特許発明6は、高甘味度甘味料の不快な異味の呈味改善組成物を提供することにあると認める。

(4-2)判断
ア まず、本件特許発明1は、上記(2)に記載のように、「甘味料と、N-アセチルグルコサミンとを組み合わせることを特徴とする甘味料の呈味改善方法」として、「甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料であ」ること、「高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で組み合わされる」ことを特定した方法の発明であるが、本件訂正により、高甘味度甘味料の種類や組み合わせが実施例のものに限定されたことにより、【0031】の高甘味度甘味料の呈味改善効果に関する記載や、【0019】の高甘味度甘味料に対するN-アセチルグルコサミン重量比の技術的意義の記載や、【0036】?【0038】の実施例の【表1】や結果からみて、当業者であれば、本件特許発明1が本件特許発明1の課題を解決できることを認識できるといえる。
本件特許発明1は、高甘味度甘味料の不快な異味の呈味改善という課題認識のもと、N-アセチルグルコサミンを高甘味度甘味料の呈味改善成分として用いたことを技術思想とする発明であって、実施例においては、甘味度を10%砂糖(上白糖)溶液にあわせた各甘味料(0.017%から0.05%)に対して、N-アセチルグルコサミンを0.01%濃度になるように添加した例が示されているものの、【0019】の高甘味度甘味料に対するN-アセチルグルコサミン重量比の技術的意義の記載や技術常識を考慮すれば、その他の本件特許発明1の範囲においても、当業者であれば、本件特許発明1が課題を一定程度解決できることを認識できるといえる。

イ また、本件特許発明4は、上記(2)に記載のように、「甘味料と、N-アセチルグルコサミンとを組み合わせることを特徴とする甘味料の呈味改善剤」として、「甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料であ」ること、「高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比となるように使用される」ことを特定した物の発明であるが、本件訂正により、高甘味度甘味料の種類や組み合わせが実施例のものに限定されたことにより、本件特許発明1と同様に、【0031】の高甘味度甘味料の呈味改善効果に関する記載や、【0019】の高甘味度甘味料に対するN-アセチルグルコサミン重量比の技術的意義の記載や、【0036】?【0038】の実施例の【表1】や結果からみて、当業者であれば、本件特許発明4が本件特許発明4の課題を解決できることを認識できるといえる。

ウ さらに、本件特許発明6は、上記(2)に記載のように、「甘味料と、N-アセチルグルコサミンとを組み合わせることを特徴とする甘味料の呈味改善組成物」として、「甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料であ」ること、「組成物中の前記高甘味度甘味料が0.00001?1重量%、N-アセチルグルコサミンが0.001?0.1重量%である」ことを特定した物の発明であるが、本件訂正により、高甘味度甘味料の種類や組み合わせが実施例のものに限定されたことにより、本件特許発明1と同様に、【0031】の高甘味度甘味料の呈味改善効果に関する記載や、【0019】の高甘味度甘味料に対するN-アセチルグルコサミン重量比の技術的意義の記載や、【0036】?【0038】の実施例の【表1】や結果からみて、当業者であれば、本件特許発明6が本件特許発明6の課題を解決できることを認識できるといえる。

エ よって、本件特許発明1、4、6は、発明の詳細な説明に裏付けをもって記載されているといえる。

オ 取消理由3の判断のまとめ
以上のとおり、請求項1、4、6に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たした特許出願に対してされたものであるといえ、取消理由3は解消されている。

3 理由4(特許法第36条第4項第1号)について
理由3で検討したように、本件特許発明は、本件訂正により、高甘味度甘味料の種類や組み合わせが実施例のものに限定されたことにより、【0031】の高甘味度甘味料の呈味改善効果に関する記載や、【0019】の高甘味度甘味料に対するN-アセチルグルコサミン重量比の技術的意義の記載や、【0036】?【0038】の実施例の【表1】や結果からみて、当業者であれば、本件特許発明を実施できる程度に記載されているといえる。
また、本件特許発明は、高甘味度甘味料の不快な異味の呈味改善という課題認識のもと、N-アセチルグルコサミンを高甘味度甘味料の呈味改善成分として用いたことを技術思想とする発明であって、実施例においては、甘味度を10%砂糖(上白糖)溶液にあわせた各甘味料(0.017%から0.05%)に対して、N-アセチルグルコサミンを0.01%濃度になるように添加した例が代表例として示されているのであるから、上記の【0019】の高甘味度甘味料に対するN-アセチルグルコサミン重量比の技術的意義の記載や、【0021】?【0030】に記載された使用形態、添加物、適用できる分野の記載、及び技術常識を考慮すれば、その他の本件特許発明の範囲においても、当業者であれば、本件特許発明を実施できる程度に記載されているといえる。

特許異議申立人は、甲第7号証を提出して、高甘味度甘味料の種類によって甘味度や、甘みの特徴が異なるので、本件特許明細書の実施例だけでは本件特許発明を当業者が実施できない旨主張している。
しかしながら、上述のとおり、本件特許発明は、高甘味度甘味料の不快な異味の呈味改善という課題認識のもと、N-アセチルグルコサミンを高甘味度甘味料の呈味改善成分として用いたことを技術思想とする発明であって、高甘味度甘味料の種類によって甘味料としての特性が異なること自体は、当業者にとってよく知られた事項であるから、それらも考慮しながら当業者であれば、本件特許発明を実施できる程度に本件特許明細書が記載されているといえる。

エ 取消理由4の判断のまとめ
以上のとおり、請求項1、4、6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たした特許出願に対してされたものであるといえ、取消理由4は解消されている。

取消理由に採用しなかった特許異議申立人が申し立てた理由について
1 特許法第29条第1項第3号(新規性)について
(1)特許異議申立人は、前記第4 1(1)に記載のとおり、訂正前の請求項1、2、4、5に対して新規性の異議申立理由を申立てていた。
そして、上述のとおり、本件訂正により、請求項2、3、5、7を削除するとともに、申立てのなかった訂正前の請求項3の発明特定事項であるといえる「前記高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で組み合わされる」又は「前記高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で使用される」で限定した訂正後の請求項1および請求項4と、申立てのなかった請求項6のみになったのであるから、特許法第29条第1項第3号(新規性)についての理由は存在しない。

(2)本件特許発明1、4、6は、甲第1、2、3、4、5、6号証に記載された発明とはいえず、特許異議申立人の特許法第29条第1項第3号(新規性)の主張は採用できない。

2 特許法第29条第2項(進歩性)について
(1) 甲第1号証に基づく主張
ア 特許異議申立人は、訂正前の請求項3、6に係る発明について、甲第1号証の[0055][0071]?[0076]を指摘し、「甘さ」および「好みの味」の評価結果から好適配合比又は配合量を設定することは、当業者が適宜なし得る数値範囲の最適化又は好適化にすぎないので、甲第1号証から当業者が容易に発明することができたものである旨主張している。

イ 引用発明1又は引用発明2を認定した甲第1号証においては、N-アセチルグルコサミンは、それ自体の甘味料としての特徴に着目されて、N-アセチルグルコサミン単独で添加したもの(A5)を優位なものとして認識している。
したがって、上記着目のもとに、たまたま、A1ないしA4のものが示されていたとしても、着目しているN-アセチルグルコサミンの比率をわざわざ変更又は減少させる動機付けはなく、「高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で組み合わされる」との構成、「高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比となるように使用される」との構成、「組成物中の前記高甘味度甘味料が0.00001?1重量%、N-アセチルグルコサミンが0.001?0.1重量%である」との構成をなすことは、本件特許発明のN-アセチルグルコサミンを高甘味度甘味料の呈味改善成分として用いるという技術思想がなければ、当業者といえども容易になし得るものとはいえない。
そして、本件特許発明で特定された全体の構成を採用することで、本件特許発明は、高甘味度甘味料特有の不快な異味等を安全かつ安価に改善する呈味改善という顕著な効果を奏しているのであるから、それらに対応する構成の好適配合比又は配合量の設定思想がなく、上記構成を数値範囲の最適化又は好適化にすぎないということはできない。

ウ したがって、本件特許発明1、4、6は、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(2)甲第2号証に基づく主張
ア 特許異議申立人は、甲第2号証の請求項1、【0014】【0015】の記載を摘記し、アセスルファムカリウム及びスクラロース及びN-アセチルグルコサミンを組み合わせて使用する甘味料組成物を甲第2号証に記載された発明として認定でき、好適配合比又は配合量を設定することは、当業者が適宜なし得る数値範囲の最適化又は好適化にすぎないので、訂正前の請求項1?7に係る発明は、甲第2号証記載の発明から当業者が容易に発明することができたものである旨主張している。

イ しかしながら、甲第2号証の「【請求項1】アセスルファムカリウム及びスクラロースを必須成分として含有することを特徴とする甘味料組成物。」に対して、【0014】【0015】のそれら以外に含んでいて良いという成分の記載は、「
【0014】本発明に係る甘味料組成物には、本発明の効果を損なわないことを限度に、例えば上記特定の物質以外に、他の甘味料、香料、着色料、防腐剤、安定化剤等といった成分を含んでいてもよい。
【0015】なお、ここで他の甘味料としては、従来公知若しくは将来知られ得る甘味成分を挙げることができ、具体的には、アスパルテーム、α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア、α-サイクロデキストリン、β-サイクロデキストリン、N-アセチルグルコサミン、アラビノース、アリテーム、イソトレハロース、イソマルチトール、イソマルトオリゴ糖(イソマルトース、イソマルトトリオース、パノース等)、エリスリトール、オリゴ-N-アセチルグルコサミン、ガラクトース、ガラクトシルスクロース、ガラクトシルラクトース、ガラクトピラノシル (β1-3) ガラクトピラノシル (β1-4) グルコピラノース、ガラクトピラノシル (β1-3) グルコピラノース、ガラクトピラノシル (β1-6) ガラクトピラノシル (β1-4)グルコピラノース、ガラクトピラノシル (β1-6) グルコピラノース、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、キシリトール、キシリトール、キシロース、キシロオリゴ糖(キシロトリオース、キシロビオース等)、グリセロール、グリチルリチン酸三アンモニウム、グリチルリチン酸三カリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、クルクリン、グルコース、ゲンチオオリゴ糖(ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース等)、サッカリン、サッカリンナトリウム、シクラメート、スクロース、スタキオース、ステビア抽出物、ステビア末、ズルチン、ソルビトール、ソルボース、タウマチン(ソーマチン)、テアンデオリゴ、テアンデオリゴ糖、テンリョウチャ抽出物、トレハルロース、トレハロース、ナイゼリアベリー抽出物、ニゲロオリゴ糖(ニゲロース等)、ネオテーム、ネオトレハロース、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、パラチニット、パラチノース、パラチノースオリゴ糖、パラチノースシロップ、フコース、フラクトオリゴ糖(ケストース、ニストース等)、フラクトシルトランスフェラーゼ処理ステビア、フラクトフラノシルニストース、ブラジルカンゾウ抽出物、フルクトース、ポリデキストロース、マルチトール、マルトース、マルトシルβ-サイクロデキストリン、マルトテトライトール、マルトトリイトール、マルトオリゴ糖(マルトトリオース、テトラオース、ペンタオース、ヘキサオース、ヘプタオース等)、マンニトール、ミラクルフルーツ抽出物、メリビオース、ラカンカ抽出物、ラクチトール、ラクチュロース、ラクトース、ラフィノース、ラムノース、リボース、異性化液糖、還元イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴、酵素処理カンゾウ、酵素分解カンゾウ、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)、大豆オリゴ糖、転化糖、水飴、蜂蜜等の甘味成分が例示できる。上記甘味成分の添加量は、調製する甘味料組成物の甘味度の設定、または使用する可食性製品に応じて、適宜調整することができる。」というものであり、そもそも、任意添加成分として様々な成分が想定され、他の甘味料としては、従来公知若しくは将来知られ得る甘味成分を挙げることができるとして膨大な選択肢が提示され、その1例にN-アセチルグルコサミンが含まれているだけである。
そして、その他の箇所でN-アセチルグルコサミンに触れている箇所は実施例を含めて全くない。

ウ 判断
したがって、甲第2号証に記載された発明として、アセスルファムカリウム及びスクラロースを必須成分として含有する甘味料組成物にさらにN-アセチルグルコサミンを含めた発明は認定できるとはいえないし、甲第2号証でも、N-アセチルグルコサミンは単に甘味料の一例としてとらえられており、本件特許発明の高甘味度甘味料の呈味改善成分として用いるという技術思想がないのであるから、本件特許発明の配合比又は配合量の数値範囲を設定することが当業者が容易になし得る技術的事項ということはできない。

エ したがって、本件特許発明1、4、6は、甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(2)甲第3号証に基づく主張
ア 特許異議申立人は、甲第3号証の請求項1、【0014】【0015】の記載を摘記し、ソーマチン及びネオテーム及びN-アセチルグルコサミンを組み合わせて使用する甘味料組成物を甲第3号証に記載された発明として認定でき、好適配合比又は配合量を設定することは、当業者が適宜なし得る数値範囲の最適化又は好適化にすぎないので、訂正前の請求項1?7に係る発明は、甲第3号証記載の発明から当業者が容易に発明することができたものである旨主張している。

イ しかしながら、甲第3号証の「【請求項1】ソーマチン及びネオテームを必須成分として含有することを特徴とする甘味料組成物。」に対して、【0014】【0015】のそれら以外に含んでいて良いという成分の記載は、「
【0014】本発明に係る甘味料組成物には、本発明の効果を損なわないことを限度に、例えば上記特定の物質以外に、他の甘味料、香料、着色料、防腐剤、安定化剤等といった成分を含んでいてもよい。
【0015】なお、ここで他の甘味料としては、従来公知若しくは将来知られ得る甘味成分を挙げることができ、具体的には、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ソーマチン、α-サイクロデキストリン、β-サイクロデキストリン、N-アセチルグルコサミン、アラビノース、アリテーム、イソトレハロース、イソマルチトール、イソマルトオリゴ糖(イソマルトース、イソマルトトリオース、パノース等)、エリスリトール、オリゴ-N-アセチルグルコサミン、ガラクトース、ガラクトシルスクロース、ガラクトシルラクトース、ガラクトピラノシル (β1-3) ガラクトピラノシル (β1-4) グルコピラノース、ガラクトピラノシル (β1-3) グルコピラノース、ガラクトピラノシル (β1-6) ガラクトピラノシル (β1-4)グルコピラノース、ガラクトピラノシル (β1-6) グルコピラノース、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、キシリトール、キシロース、キシロオリゴ糖(キシロトリオース、キシロビオース等)、グリセロール、グリチルリチン酸三アンモニウム、グリチルリチン酸三カリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、クルクリン、グルコース、ゲンチオオリゴ糖(ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース等)、サッカリン、サッカリンナトリウム、シクラメート、スクロース、スクラロース、スタキオース、ステビア、ズルチン、ソルビトール、ソルボース、テアンデオリゴ、テアンデオリゴ糖、テンリョウチャ抽出物、トレハルロース、トレハロース、ナイゼリアベリー抽出物、ニゲロオリゴ糖(ニゲロース等)、ネオトレハロース、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、パラチニット、パラチノース、パラチノースオリゴ糖、パラチノースシロップ、フコース、フラクトオリゴ糖(ケストース、ニストース等)、フラクトシルトランスフェラーゼ処理ソーマチン、フラクトフラノシルニストース、ブラジルカンゾウ抽出物、フルクトース、ポリデキストロース、マルチトール、マルトース、マルトシルβ-サイクロデキストリン、マルトテトライトール、マルトトリイトール、マルトオリゴ糖(マルトトリオース、テトラオース、ペンタオース、ヘキサオース、ヘプタオース等)、マンニトール、ミラクルフルーツ抽出物、メリビオース、ラカンカ抽出物、ラクチトール、ラクチュロース、ラクトース、ラフィノース、ラムノース、リボース、異性化液糖、還元イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴、酵素処理カンゾウ、酵素分解カンゾウ、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)、大豆オリゴ糖、転化糖、水飴、蜂蜜等の甘味成分が例示できる。上記甘味成分の添加量は、調製する甘味料組成物の甘味度の設定、または使用する可食性製品に応じて、適宜調整することができる。」というものであり、そもそも、任意添加成分として様々な成分が想定され、他の甘味料としては、従来公知若しくは将来知られ得る甘味成分を挙げることができるとして膨大な選択肢が提示され、その1例にN-アセチルグルコサミンが含まれているだけである。
そして、その他の箇所でN-アセチルグルコサミンに触れている箇所は実施例を含めて全くない。

ウ 判断
したがって、甲第3号証に記載された発明として、ソーマチン及びネオテームを必須成分として含有する甘味料組成物にさらにN-アセチルグルコサミンを含めた発明は認定できるとはいえないし、本件特許発明の高甘味度甘味料でもない。
そして、甲第3号証でも、N-アセチルグルコサミンは単に甘味料の一例としてとらえられており、本件特許発明の高甘味度甘味料の呈味改善成分として用いるという技術思想がないのであるから、本件特許発明の配合比又は配合量の数値範囲を設定することを当業者が容易になし得る技術的事項ということはできない。

エ したがって、本件特許発明1、4、6は、甲第3号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(4)甲第4号証に基づく主張
ア 特許異議申立人は、甲第4号証の【0052】【0054】【0065】の記載を摘記し、甘味料としてスクラロースを含むゼリー飲料において、N-アセチルグルコサミンを含むことによる呈味改善方法が甲第4号証に記載された発明として認定でき、好適配合比又は配合量を設定することは、当業者が適宜なし得る数値範囲の最適化又は好適化にすぎないので、訂正前の請求項1?7に係る発明は、甲第4号証記載の発明から当業者が容易に発明することができたものである旨主張している。

イ しかしながら、甲第4号証は、「【請求項1】
魚類由来コラーゲンペプチドと難消化性デキストリンを含有することを特徴とするゼリー飲料。」を前提とする文献であって、【0052】【0053】【0054】の記載は、「
【0052】
N-アセチルグルコサミンやキチンオリゴ糖は、さわやかな甘味を有しており、これらを用いることにより、より良好な風味を有するゼリー飲料を得ることができる。また、N-アセチルグルコサミンは、美容効果(O.Kajimoto et al, J. New Rem. & Clin., 52(3), 71-80, 2000)、関節症改善効果(O. Kajimoto et al, J. New Rem.& Clin., 49(5), 71-82, 2003)等を有しており、魚類由来コラーゲンペプチドとの相乗効果が期待できる。
【0053】
ビタミンCは、生体内でコラーゲンが合成されるときに必要なビタミンであり、ビタミンB2は、タンパク質、脂肪、炭水化物等の全ての栄養素の代謝に必要なビタミンであり、皮膚や口内の粘膜の発育を助け、保護することが知られている。したがって、これらのビタミンを配合することにより、魚類由来コラーゲンペプチドとの相乗効果が期待できる。
【0054】
本発明のゼリー飲料は、上記以外の成分として、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、糖アルコール、マンニトール、キシリトール、イノシトール、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、スクラロース、ショ糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース、オリゴ糖、デキストリン等の糖類、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸類、果汁・果肉、ミネラル類、他のビタミン類、香料、pH調整剤、着色料等を適宜含むことができる。」というものであり、魚類由来コラーゲンペプチドと難消化性デキストリンを含むゼリー飲料に対して、N-アセチルグルコサミン自体がさわやかな甘味を有しており、これらを用いてより良好な風味を有するゼリー飲料を製造することや美容効果、関節症改善効果という観点での魚類由来コラーゲンペプチドとの相乗効果が期待できることが記載され、その他適宜含むことができる多くの成分の選択肢の一つにスクラロースが挙げられているだけである。
そして、その他の箇所でスクラロースに触れている箇所は【0065】の実施例2を含めて全くない。

ウ 判断
したがって、「N-アセチルグルコサミンやキチンオリゴ糖は、さわやかな甘味を有しており、これらを用いることにより、より良好な風味を有するゼリー飲料を得ることができる。また、N-アセチルグルコサミンは、美容効果・・・、関節症改善効果・・・等を有しており、魚類由来コラーゲンペプチドとの相乗効果が期待できる。」との記載から明らかなように、甲第4号証に記載された発明に関して、魚類由来コラーゲンペプチドと難消化性デキストリンを含有することを前提とするゼリー飲料においてN-アセチルグルコサミンを添加するのは、それ自体がさわやかな甘味、美容効果、関節症改善効果を目的とするものであり、その他適宜含むことができる多くの成分の選択肢の一つのスクラロースを上記3成分にさらに添加した発明を認定できるとはいえない。
また、上記のとおり、甲第4号証では、N-アセチルグルコサミンは、甘味料、美容効果、関節症改善効果を生じる成分としてとらえられており、本件特許発明の高甘味度甘味料の呈味改善成分として用いるという技術思想がないのであるから、本件特許発明の配合比又は配合量の数値範囲を設定することが当業者が容易になし得る技術的事項ということはできない。

エ したがって、本件特許発明1、4、6は、甲第4号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(5)甲第5号証に基づく主張
甲第5号証の本願出願前の公知性は明確ではないが、念のため検討する。

ア 特許異議申立人は、甲第5号証の「「雪印メグミルク」のホームページの「宅配商品のご案内」のサイトにおける「MEGMILK グルコサミンパワーすっきりタイプ 100ml」の商品ページに、「N-アセチルグルコサミンを1200mg含有しています。」、「甘さを抑えたすっきり味です。」と記載されていること、「商品基本情報」に「原材料名」として、「甘味料(アセスルファムK、スクラロース)」と記載があることを指摘し、N-アセチルグルコサミンと甘味料としてスクラロースを含むゼリー飲料において、N-アセチルグルコサミンとアセスルファムK、とスクラロースとを組み合わせることによって呈味の改善がなされている発明が甲第5号証に記載された発明として認定でき、好適配合比又は配合量を設定することは、当業者が適宜なし得る数値範囲の最適化又は好適化にすぎないので、訂正前の請求項1?7に係る発明は、甲第5号証記載の発明から当業者が容易に発明することができたものである旨主張している。

イ 甲第5号証には、原材料名の甘味料(アセスルファムK、スクラロース)と「N-アセチルグルコサミンを1200mg含有しています。」(「栄養成分の項目」にも、「1本(100ml)当たり」「N-アセチルグルコサミン:1200mg含有」との記載がある。)との記載から、甲第5号証に記載された発明として、「甘味料(アセスルファムK、スクラロース)とN-アセチルグルコサミンを飲料100mlあたり1200mg含有した甘さを抑えたすっきり味の飲料」(以下「甲第5号証発明」という。)が記載されているといえる。

ウ 判断
本件特許発明と甲第5号証発明を対比すると、少なくとも上述の本件特許発明1の「高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で組み合わされる」点、本件特許発明4の「前記高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で使用される」点、本件特許発明6の「組成物中の前記高甘味度甘味料が.00001?1重量%、N-アセチルグルコサミンが0.001?0.1重量%である」点を特定事項として有しているのに対して、甲第5号証発明が、甘味料(アセスルファムK、スクラロース)に対するN-アセチルグルコサミンの重量比が不明又は甘味料(アセスルファムK、スクラロース)の組成物中の重量%が不明であり、N-アセチルグルコサミンを飲料100mlあたり1200mg含有している点で相違しているといえる。

甲第5号証では、N-アセチルグルコサミンは人体の構成成分に含まれているグルコサミンであるととらえられており、実際に、飲料100mlあたり1200mgも含有されており、N-アセチルグルコサミン本件特許発明の高甘味度甘味料の呈味改善成分として用いるという技術思想がないのであるから、本件特許発明の配合比又は配合量の数値範囲を設定することが、当業者が容易になし得る技術的事項ということはできない。

エ したがって、本件特許発明1、4、6は、甲第5号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(6)甲第6号証に基づく主張
甲第6号証の本願出願前の公知性は明確ではないが、念のため検討する。

ア 特許異議申立人は、甲第6号証の岩谷産業ホームページのイワタニ「新グルコサミンドリンク10本入り」の商品ページに、「グルコサミンの吸収がよいドリンクタイプ」の箇所に、「さらに飲みやすく美味しくなりました。」との記載があること、「商品説明」の欄に「原材料表示:」として、「N-アセチルグルコサミン」、「甘味料(スクラロース)」が成分の一つとして記載されていることを指摘し、N-アセチルグルコサミンと甘味料としてスクラロースとを組み合わせることによって呈味の改善がなされている発明が甲第6号証に記載された発明として認定でき、好適配合比又は配合量を設定することは、当業者が適宜なし得る数値範囲の最適化又は好適化にすぎないので、訂正前の請求項1?7に係る発明は、甲第6号証記載の発明から当業者が容易に発明することができたものである旨主張している。

イ 甲第6号証には、「新グルコサミンドリンク10本入り」の商品ページにおいて、「グルコサミンの吸収がよいドリンクタイプ」の箇所に、「さらに飲みやすく美味しくなりました。」との記載されていること、「商品説明」の欄に「原材料表示:」の「N-アセチルグルコサミン」、「甘味料(スクラロース)」との記載から、甲第6号証に記載された発明として、「N-アセチルグルコサミン、甘味料(スクラロース)とを含むグルコサミンの吸収がよい、さらに飲みやすく美味しくなったグルコサミンドリンク」(以下「甲第6号証発明」という。)が記載されているといえる。

ウ 判断
本件特許発明と甲第6号証発明を対比すると、少なくとも上述の本件特許発明1の「高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で組み合わされる」点、本件特許発明4の「前記高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で使用される」点、本件特許発明6の「組成物中の前記高甘味度甘味料が.00001?1重量%、N-アセチルグルコサミンが0.001?0.1重量%である」点を特定事項として有しているのに対して、甲第6号証発明が、甘味料(スクラロース)に対するN-アセチルグルコサミンの重量比が不明又は甘味料(スクラロース)およびN-アセチルグルコサミンの組成物中の重量%が不明である点で相違しているといえる。

甲第6号証では、「グルコサミン」を主要成分としてとらえており、N-アセチルグルコサミンについてはその働きについて記載がなく、本件特許発明の高甘味度甘味料の呈味改善成分として用いるという技術思想がないのであるから、本件特許発明の配合比又は配合量の数値範囲を設定することが、当業者が容易になし得る技術的事項ということはできない。

エ したがって、本件特許発明1、4、6は、甲第6号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

6 特許異議申立人の意見書について
特許異議申立人は、令和2年6月16日付け意見書2?4頁において、訂正後の本件特許発明1、4、6の発明特定事項に、高甘味度甘味料の甘味度を考慮した開きを含めて、重量比範囲の上下限、組成物中の両成分の上下限の開きから計算して大きな範囲を規定していることになるから、甲第1号証の各試料間の変化から同様の効果がもたらされるかどうか予測できないので、依然としてサポート要件違反、実施可能要件違反である旨主張している。

しかしながら、上述のとおり、本件特許発明は、高甘味度甘味料の不快な異味の呈味改善という課題認識のもと、N-アセチルグルコサミンを高甘味度甘味料の呈味改善成分として用いたことを技術思想とする発明であって、実施例においては、甘味度を10%砂糖(上白糖)溶液にあわせた各甘味料(0.017%から0.05%)に対して、N-アセチルグルコサミンを0.01%濃度になるように添加した例が示されているものの、【0019】の高甘味度甘味料に対するN-アセチルグルコサミン重量比の技術的意義の記載や技術常識を考慮すれば、その他の本件特許発明の範囲においても、当業者であれば、本件特許発明が課題を一定程度解決できることを認識できるといえる。
また、各成分の配合に際しては、N-アセチルグルコサミンが高甘味度甘味料の呈味改善剤として作用することを考慮しながら調整することを前提として明細書が記載されていると当業者は理解するといえる。
したがって、N-アセチルグルコサミンを高甘味度甘味料の呈味改善剤として使用することを前提とした呈味改善方法、呈味改善剤、呈味改善組成物の具体例を含めた記載があることを考慮すれば、数値範囲の上下限を理論的に仮定して、その場合に本件特許発明が、いわゆるサポート要件、実施可能要件を満たしていないとの上記異議申立人の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本件請求項1、4、6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、取り消されるべきものとはいえない。
また、他に本件請求項1、4、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件請求項2、3、5、7に係る特許については、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項2、3、5、7に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
甘味料と、N-アセチルグルコサミンとを組み合わせることを特徴とする甘味料の呈味改善方法であって、
前記甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料であり、
前記高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比で組み合わされる、呈味改善方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
N-アセチルグルコサミンを含有することを特徴とする甘味料の呈味改善剤であって、
前記甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料であり、
前記高甘味度甘味料1に対してN-アセチルグルコサミンが1/10以上10以下の重量比となるように使用される、呈味改善剤。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
甘味料と、N-アセチルグルコサミンを含むことを特徴とする呈味改善組成物であって、
前記甘味料が、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムとスクラロースとの組み合わせ、又は、アセスルファムとアスパルテームとの組み合わせである高甘味度甘味料であり、
組成物中の前記高甘味度甘味料が0.00001?1重量%、N-アセチルグルコサミンが0.001?0.1重量%である、呈味改善組成物。
【請求項7】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-09-01 
出願番号 特願2014-16889(P2014-16889)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
P 1 651・ 113- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川合 理恵千葉 直紀坂井田 京  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 天野 宏樹
瀬良 聡機
登録日 2019-04-19 
登録番号 特許第6513332号(P6513332)
権利者 甲陽ケミカル株式会社
発明の名称 甘味料の呈味改善方法、甘味料の呈味改善剤、及び呈味改善組成物  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
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