• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
管理番号 1368066
異議申立番号 異議2019-700794  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-03 
確定日 2020-09-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6496980号発明「免疫測定方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6496980号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第6496980号の請求項1、2、4、6ないし8に係る特許を維持する。 特許第6496980号の請求項3及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6496980号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成26年3月27日(優先権主張 平成25年3月29日 日本国)の出願であって、平成31年3月22日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、令和元年10月3日に特許異議申立人 萩山 弘文(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年12月5日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和2年2月12日に意見書の提出及び訂正の請求があり、令和2年2月14日付けでその訂正の請求を申立人に通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を設けたが、異議申立人からは何ら応答がなかったものである。そして、同年5月12日付けで取消理由通知書(決定の予告)により取消理由が通知され、同年7月13日に意見書の提出及び訂正の請求があったものである。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容(下線は、訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「検体中の抗原又は抗体との免疫反応を12?20のHLB値を有する非イオン性界面活性剤が存在する液相中で起こし、次いで、固相上で測定を行うことを特徴とする」と記載されているのを、「検体中の抗原又は抗体との免疫反応を、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ、ピログルタミン酸エステル、ポリオキシエチレン(15)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の12.5?20のHLB値を有する非イオン性界面活性剤が0.005?10重量%の濃度で存在する液相中で起こし、次いで、あらかじめブロッキング剤を添加した固相上で測定を行うことを特徴とする」に訂正する。
また、請求項1に係る発明を引用する請求項2、4、6、7及び8も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「工程(1):測定対象物質を含有する試料と、前記測定対象物質と結合可能な抗体であってリガンドで修飾された抗体(一次抗体)を含む溶液と、前記測定対象物質と結合可能な抗体であって酵素で標識された抗体(二次抗体)を含む溶液とを混合し、12?20のHLB値を有する非イオン性界面活性剤が存在する液相中で、免疫反応により前記一次抗体、前記測定対象物質および前記二次抗体のサンドイッチ複合体をつくる。工程(2):前記サンドイッチ複合体を含む溶液を、あらかじめ前記リガンドと結合可能な物質を固相化した担体に触れさせて、前記複合体を前記固相化担体上の抗体に結合させる。」と記載されているのを、「工程(1):測定対象物質を含有する試料と、前記測定対象物質と結合可能な抗体であってリガンドで修飾された抗体(一次抗体)を含む溶液と、前記測定対象物質と結合可能な抗体であって酵素で標識された抗体(二次抗体)を含む溶液とを混合し、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ、ピログルタミン酸エステル、ポリオキシエチレン(15)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の12.5?20のHLB値を有する非イオン性界面活性剤が0.005?10重量%の濃度で存在する液相中で、免疫反応により前記一次抗体、前記測定対象物質および前記二次抗体のサンドイッチ複合体をつくる。工程(2):前記サンドイッチ複合体を含む溶液を、あらかじめ前記リガンドと結合可能な物質を固相化した担体であって、あらかじめブロッキング剤を添加した固相担体に触れさせて、前記複合体を前記固相化担体上の抗体に結合させる。」に訂正する。
また、請求項2に係る発明を引用する請求項4、6及び8も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1?請求項3のいずれかに記載の方法」と記載されているのを、「請求項1又は2のいずれかに記載の方法」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?請求項5のいずれかに記載の方法」と記載されているのを、「請求項1、2、又は4のいずれかに記載の方法」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?請求項6のいずれかに記載の方法」と記載されているのを、「請求項1、2、4、又は6のいずれかに記載の方法」に訂正する。

(6)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ、ピログルタミン酸エステル、ポリオキシエチレン(15)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1?7のいずれかに記載の方法。」と記載されているのを、「前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1、2、4、6、又は7のいずれかに記載の方法」に訂正する。

なお、訂正前の請求項1?8について、請求項2?8はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、上記訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1及び2について
訂正事項1に係る請求項1についての訂正及び訂正事項2に係る請求項2についての訂正は、いずれも、「非イオン性界面活性剤」が「ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ、ピログルタミン酸エステル、ポリオキシエチレン(15)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の12.5?20のHLB値を有する」ものであり、「非イオン性界面活性剤」の濃度が「0.005?10重量%の濃度」であり、「固相」が「あらかじめブロッキング剤を添加した」ものである旨の限定をしたものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の発明の詳細な説明に、「ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ、ピログルタミン酸エステル、ポリオキシエチレン(15)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の12.5?20のHLB値を有する、非イオン性界面活性剤」は、表1?6において本件発明の効果が確認された非イオン性界面活性剤として記載され、また、

「【0039】
本発明によれば、液相中において検体中の抗原又は抗体と免疫反応を起こし、あらかじめブロッキング剤を添加した固相上で測定する際に、反応系由来の物質による非特異的な反応を減少させることによりブランクを下げることができる。更に免疫反応が促進されるため、S/N比が高くなり、これにより測定感度が向上する。・・・」

「【0077】
0.005?10重量%の範囲において、ブランクが低く、高いS/N値を示した。」

と記載されていることから、これらの訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項3及び5について
訂正事項3及び5に係る訂正は、いずれも特許請求の範囲の請求項3及び5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、これらの訂正が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(3)訂正事項4、6及び7について
訂正事項4、6及び7は、上記訂正事項3及び5において、請求項3及び5が削除されたことに伴い、訂正事項4は、請求項1?3において、訂正事項6は、請求項1?5おいて、訂正事項7は、請求項1?6において択一的に記載されていた引用請求項の一つ(当該請求項3及び5)を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項8について
訂正事項8は、「前記非イオン性界面活性剤」を、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ、ピログルタミン酸エステル、ポリオキシエチレン(15)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種である」ものから、「前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種である」ものにすることにより、「非イオン性界面活性剤」をポリオキシエチレンアルキルエーテルの一種である「ポリオキシエチレンラウリルエーテル」と、「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテル」の三種より選択されるものである旨限定し、さらに請求項3及び5が削除されたことに伴い、「請求項1、2、4、6、又は7のいずれかに記載の方法」と、請求項1?7において、択一的に記載されていた引用請求項の一つ(当該請求項3及び5)を削除するものであるあるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、「ポリオキシエチレンラウリルエーテル」がポリオキシエチレンアルキルエーテルの下位概念であることは、本件明細書の発明の詳細な説明に、

「【0031】
そのような化合物として、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(具体的には、エマルゲン108(HLB12.1)、エマルゲン109P(HLB13.6)、エマルゲン120(HLB15.3)、エマルゲン123P(HLB16.9)、エマルゲン130K(HLB18.1)、エマルゲン147(HLB16.3)、エマルゲン150(HLB18.4)(以上ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、エマルゲン220(HLB14.2)(ポリオキシエチレンセチルエーテル)、エマルゲン320P(HLB13.9)、エマルゲン350(HLB17.8)(以上ポリオキシエチレンステアリルエーテル)、エマルゲン420(HLB13.6)、エマルゲン430(HLB16.2)(以上ポリオキシエチレンオレイルエーテル)(以上花王製、「エマルゲン」は登録商標)など)、・・・などが挙げられる。
・・・」

と記載されていることから、訂正事項8が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

3 小括
したがって、上記の訂正請求による訂正事項1?8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の請求項1-8に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1-8に係る発明(以下「本件発明1-8」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1-8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「 【請求項1】
検体中の抗原又は抗体との免疫反応を、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ、ピログルタミン酸エステル、ポリオキシエチレン(15)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の12.5?20のHLB値を有する非イオン性界面活性剤が0.005?10重量%の濃度で存在する液相中で起こし、次いで、あらかじめブロッキング剤を添加した固相上で測定を行うことを特徴とする、検体中の抗原又は抗体の測定におけるブランク値の低減方法であって、検体中の抗原又は抗体の測定がアデノウイルス抗原の免疫測定を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、以下の工程(1)?(4)に従って実行される、測定対象物質の測定におけるブランク値の低減方法。
工程(1):測定対象物質を含有する試料と、前記測定対象物質と結合可能な抗体であってリガンドで修飾された抗体(一次抗体)を含む溶液と、前記測定対象物質と結合可能な抗体であって酵素で標識された抗体(二次抗体)を含む溶液とを混合し、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ、ピログルタミン酸エステル、ポリオキシエチレン(15)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の12.5?20のHLB値を有する非イオン性界面活性剤が0.005?10重量%の濃度で存在する液相中で、免疫反応により前記一次抗体、前記測定対象物質および前記二次抗体のサンドイッチ複合体をつくる。
工程(2):前記サンドイッチ複合体を含む溶液を、あらかじめ前記リガンドと結合可能な物質を固相化した担体であって、あらかじめブロッキング剤を添加した固相化担体に触れさせて、前記複合体を前記固相化担体上の抗体に結合させる。
工程(3):前記固相化担体を洗浄液で洗浄することにより、前記固相化担体上の抗体に結合していない一次抗体および二次抗体を除去する。
工程(4):前記固相化担体に前記酵素の基質を含む液を添加し、前記固相化担体上で酵素による基質の化学変化量をモニタリングすることにより測定を行う。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤のHLB値が16?19である、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
前記液相中の非イオン性界面活性剤の濃度が0.2?5重量%である、請求項1、2又は4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
検体が体液又は組織抽出液である、請求項1、2、4又は6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1、2、4、6又は7のいずれかに記載の方法。」

第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1-8に係る特許に対して、当審が令和2年5月12日付けの取消理由通知(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び甲5号証に記載された技術事項に基づいて、請求項2-8に係る特許は、引用文献1に記載された発明、甲5号証及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1-8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

引用文献1:特開2008-122372号公報(甲9号証)
引用文献2:特開2012-220357号公報(甲1号証)
甲5号証:特開2006-047255号公報

第5 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について
1 引用文献及び各甲号証に記載された事項
(1) 引用文献1について
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審にて付した。以下同様である。)

(引1a)「【0029】
以下に、本発明の方法についてより具体的な手順の一例を示し、本発明を説明する。
(1)ウイルスや細菌等に感染した疑いがある患者の咽頭、鼻腔あるいは直腸等から綿棒等の検体採取器具を用いて直接採取した検体試料を、後述するような検体浮遊液に浮遊させる。あるいは患者から採取した鼻腔吸引液、尿、便等の被分析対象物から綿棒等の検体採取器具を用いて採取した検体試料を、後述するような検体浮遊液に浮遊させる。
(2)この浮遊液を、ろ過フィルターを備えた検体試料用ろ過チューブ中に入れてろ過する。
(3)このろ過液を、メンブレンを備えたアッセイ装置中の被検出物に特異的に結合して被検出物を捕捉する捕捉試薬が結合したメンブレンに滴下等により添加して、被検出物をメンブレン上に捕捉させる。この際、ろ過液をサンプル滴下パッドに滴下することにより、毛細管現象により被検出物がメンブレンに流れていく。
(4)前記メンブレン上に、被検出物に特異的に結合する検出試薬である標識物質を滴下等により添加し、捕捉試薬/被検出物/標識物質の複合体を形成させる。この際、標識物質はあらかじめアッセイ装置に組み込んでおいてもよい。この場合、検体試料を含む浮遊液をアッセイ装置に添加することにより、該浮遊液がアッセイ装置上を流れ、検出試薬を含むパッド部分に到達すると、検出試薬が前記浮遊液に溶解し、被検体とともにメンブレンに到達し、メンブレンの捕捉試薬との間で複合体を形成する。
(5)前記複合体中の標識物質により、複合体の存在を検出することにより、検体試料中の被検出物の有無を測定する。複合体の存在の検出の前に、必要に応じて反応停止液を用いて反応を停止させてもよい。」

(引1b)「【0051】
本発明の検査方法により分析するための検体は、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、肺胞洗浄液、便懸濁液、血漿、血清、尿、唾液、羊水、髄液、膿、臓器抽出液、各種組織抽出液等の生体試料、食品抽出液、培養上清、上水、下水、湖水、河川水、海水、土壌抽出液、汚泥抽出液を用いることができるがこれらに限定されない。この中でも、特に生体試料を検体とした場合に有用であり、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、鼻腔洗浄液、肺胞洗浄液、直腸拭い液又は便懸濁液を検体とした場合に極めて有用である。生体試料はヒト由来であっても、非ヒト動物由来であってもよい。」

(引1c)「【0054】
検体浮遊液には、通常、塩及びpHを一定に維持するための緩衝剤が含まれる。緩衝液としては、免疫学的試験に通常使用される緩衝液等を使用することができ、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、グッドの緩衝液等が挙げられる。さらに検体浮遊液には特異的な凝集反応を阻害しない範囲で非特異反応を減じる目的で界面活性剤を含有させることが可能である。界面活性剤としては、Triton X-100(商品名):ポリエチレングリコールモノ-р-イソオクチルフェニルエーテル、Tween 20:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、Tween 80:ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、Nonidet P-40:ノニデット P-40、ZWITTERGENT 3-14:n-テトラデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネ-ト、CHAPS:3-〔(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕プロパンスルホン酸、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等あるいはこれらを2種類以上混合したものを用いることができる。
【0055】
検体浮遊液にはその他、非特異反応を減じる目的でウシ血清アルブミン、イムノグロブリン、カゼイン等のタンパク質、ウサギやマウス等の血清等を含有させることも可能である。
【0056】
また、例えば、被検出物が細菌のように細胞壁を有し、かつ標識物質や捕捉物質の被検出物への結合部位が細菌の内部にある場合には、検体浮遊液中に検体を浮遊させただけでは結合部位が容易に外部に露出せず、検出・定量ができないことがある。その際にはNaOH等のアルカリ等の添加、中和、又は熱処理等の前処理が必要な場合もある。
上記のような工夫によっても偽陽性の発生を減じることができるが、完全に防ぐことはできない。
【0057】
(検出試薬)
本明細書において、検出試薬とは、被検出物に特異的に結合し、被検出物と複合体を形成しうるものである。また、標識物質とは、被検出物と複合体を形成した後に何らかの手段で検出可能なように標識された検出試薬を意味する。例えば、被検出物がウイルス等の抗原物質である場合には、そのウイルスに対する抗体であって、酵素等で標識化された抗体が挙げられる。このように酵素で標識された場合には、該酵素により触媒される反応により、比色法、蛍光法により検出可能な物質を生成する該酵素の基質を添加することにより、複合体の検出を行うことができる。標識化される前の検出試薬としては、捕捉試薬について述べたものと同じものが挙げられる。また、標識は、酵素、蛍光発光性標識、磁性体標識、放射性同位元素、金コロイド、着色ラテックス等が挙げられる。検出試薬は、検体試料をアッセイ装置に添加した後に、アッセイ装置に添加してもよく、またあらかじめアッセイ装置に組み込んでおいてもよい。検出試薬をアッセイ装置に組み込む場合、例えば、検出試薬を含浸させて乾燥させたパッドをサンプル滴下パッドと捕捉物質を含むメンブレンの間に組み込んでおけばよい。この場合、検体試料を含む浮遊液をアッセイ装置に添加することにより、該浮遊液がアッセイ装置上を流れ、検出試薬を含むパッド部分に到達すると、検出試薬が前記浮遊液に溶解し、被検体とともにメンブレンに到達し、メンブレンの捕捉試薬との間で複合体を形成する。検出試薬を含むパッド部は、例えば、セルロース、ガラス繊維などでできた不織布等が用いられる。
【0058】
酵素標識を用いる場合には、使用される酵素としては例えば、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、グルコース‐6‐リン酸脱水素酵素が挙げられる。
標識物質の標識として酵素標識を用いた場合には、通常その酵素に対する基質であって、該酵素により触媒される反応により、比色法、蛍光法により検出可能な物質を生成するものを添加する。具体例としては、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(BCIP)/ニトロテトラゾリウムブルー(NBT)、テトラメチルベンチジン(TMB)、グルコース‐6‐リン酸NAD+が挙げられる。」

(引1d)「【0066】
[実施例1]ラテラルフロー式イムノクロマトアッセイによる鼻腔吸引液中のインフルエンザウイルス及びRSウイルスの検出1
1.モノクローナル抗体の作製
(1)抗A型インフルエンザウイルスNP(Nucleoprotein;核蛋白)モノクローナル抗体(マウス)の作製
精製A型インフルエンザウイルス抗原を免疫し、一定期間維持したBALB/cマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al.,Nature, vol, 256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。」

(引1e)「【0092】
(2)メンブレンアッセイ法による検出
鼻腔吸引液1検体より調製した検体試料の入った6本のチューブの先端に6.で作製した各種の試料ろ過フィルターをそれぞれ2個ずつ装着した。検体採取に用いた綿棒の種類と試料ろ過フィルターの種類の組み合わせを表3に示した。
【0093】
検体試料全量をろ過用ノズルに通過させてろ過したろ過液をチューブに集めた後、上記5.で作製したインフルエンザ及びRSウイルス検出用ラテラルフロー式メンブレンアッセイ装置のサンプル滴下パッド側を液に浸した。10分後、アッセイ装置を観察し、図1又は図2のhの位置(コントロールライン)に発色が認められた場合を有効とし、eの位置に標識に用いた着色ラテックスの色調の発色(この場合、赤色)が認められた場合にはA型インフルエンザウイルス陽性、fの位置に着色ラテックスの色調の発色(この場合、青色)が認められた場合にはB型インフルエンザウイルス陽性、gの位置に着色ラテックスの色調の発色(この場合、緑色)が認められた場合はRSウイルス陽性、いずれの位置にも発色が認められない場合は陰性と判定した。またhの位置に発色が認められない場合を無効とした。
試験の結果を表3に示す。」

(引1f)「【0116】
[実施例5] ラテラルフロー式イムノクロマトアッセイによる咽頭拭い液中のアデノウイルスの検出
1.モノクローナル抗体の作製
(1)アデノウイルスヘキソン蛋白モノクローナル抗体(マウス)
ヒトアデノウイルスのヘキソン蛋白のアミノ酸配列の一部を合成したポリペプチドを免疫し、一定期間維持したBALB/cマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al.,Nature, vol, 256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。
【0117】
得られた融合細胞(ハイブリドーマ)を、37℃インキュベーター中で維持し、アデノウイルスヘキソン蛋白抗原固相プレートを用いたELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。
【0118】
取得した該細胞2株をそれぞれプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。得られた腹水をそれぞれProteinAカラムクロマトグラフィー(アマシャム社製)を用いたアフィニティ精製によってIgGを精製し、2種類の精製抗アデノウイルスヘキソン蛋白モノクローナル抗体を得た。
【0119】
2.標識抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体(標識物質)の作製
(1)ラテックス粒子標識抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体の調製
抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体のうち1種類を50mM MES(2-Morpholinoethanesulfonicacid,monohydrate;同仁化学社)緩衝液(pH6.0)溶液で透析後、O.D.280nm=0.5になるように同じ緩衝液で希釈した溶液を10mL調製した。次に10(W/V)%青色ポリスチレンラテックス粒子(粒径0.45μm、表面官能基はカルボキシル基、官能基密度65Å2/COOH基;Magsphere社)と液量比40:1になるように混合し、反応させた。次に、1(W/V)%のEDAC(N-(3-Dimethlaminopropyl)-N'-ethylcarbodiimidehydrochloride;Sigma社)を最終濃度0.1%になるように添加した後、2時間反応させた。洗浄後、最終浮遊液(5mM Tris, 0.04(W/V)% BSA(ウシ血清アルブミン), 0.4Mトレハロース,0.2(V/V)% TritonX-100)20mL中に浮遊し、超音波分散装置(オリンパス社)にかけ、ラテックス粒子を分散させた。
【0120】
3.ラテックス粒子標識抗体の乾燥化
(1)ラテックス粒子標識抗体乾燥パッドの作製
2.で作製したラテックス粒子標識抗体を陽圧噴霧装置(BioJet;BioDot社)を用いて8μL/cmの塗布量でリール状に巻いた幅15mmのセルロース不織布全面に噴霧した。噴霧後、50℃の温風を1分間吹きつけて乾燥させ、ラテックス粒子標識抗体乾燥パッドを作製した。
【0121】
4.メンブレン固相用抗体の調製
(1)固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体の調製
上記1.(1)で作製した精製抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体のうち標識に用いなかった方を、固相液(10mM Tris-HCl(pH7.5))に透析し、透析後に0.22μmろ過を行い、O.D.280nm=4.0になるように固相液で希釈して固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体を調製した。
【0122】
5.アデノウイルス検出用ラテラルフロー式メンブレンアッセイ装置の作製
アデノウイルス検出用ラテラルフロー式メンブレンアッセイ装置は、図1及び図2に示すものと同様の構成のものを用いた。
メンブレンは、幅3cm×長さ10cmのニトロセルロースメンブレン(孔径12μm;ワットマン社製)シート(白色)を用いた(図1及び図2のd)。その長軸側の一端(この端を上流端、反対側を下流端とする)から6mm離れたeの位置に固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体を1μL/cmの塗布量で陽圧噴霧装置(BioJet;BioDot社)を用いて線状に塗布し、22mm離れたhの位置に抗マウスIgG抗体をO.D.280nm=1.0に希釈し、1μL/cmの塗布量で陽圧噴霧装置(BioJet;BioDot社)を用いて線状に塗布した。fとgの位置には何も塗布しなかった。塗布後、45℃の温風を10分間吹き付けて乾燥した。
【0123】
次に、部材を固定し、かつ強度を増すため、メンブレンの抗体塗布面(この面を上面とする)の反対側(この面を下面とする)にプラスチック製バッキングシート(BioDot社製)を接着した(図2のi)。
【0124】
次に、上記3(2)で作製したラテックス粒子標識抗体乾燥パッド(図1及び図2のb)を幅15mm×長さ10cmに切断し、メンブレンの上面に、メンブレンの上流端が2mm重なる様に配置して貼り付け、さらに幅23mm×長さ10cmのセルロースろ紙(ワットマン社)をラテックス粒子標識抗体乾燥パッドの上面に13mm重なる様に配置して貼り付け、サンプル滴下パッド(図1及び図2のa)とした。
【0125】
次に、幅30mm×長さ10cmのセルロースろ紙(ワットマン社)をメンブレンの上面に、メンブレンの下流端と5mm重なる様に配置して貼り付け、サンプル吸収パッド(図1及び図2のc)とした。
【0126】
次にサンプル滴下パッドの上流端の幅5mmを除いて、上面全面を透明プラスチックラミネート(Adhesive Research社)で被覆した(図2のj)。
【0127】
最後に長軸方向に沿って、5mmずつ切断し、図1及び図2に示すメンブレンアッセイ装置を作製した。
【0128】
6.試料ろ過フィルターの作製
実施例1及び2で作製した試料ろ過フィルターのうちA、C及びDを用いた。
【0129】
7.アデノウイルスの検出
(1)検体の採取と検体試料の調製
臨床的にアデノウイルス感染が疑われる患者から頭部がナイロン繊維からなるブラシ状綿棒(検体採取部分の水分吸収量90μL;microRheologics社)を用いて咽頭拭い液を4本採取した。まず、そのうち1本を2mLのウイルス分離用培地に浮遊し、この浮遊液を用いてFujimoto等の方法(Single-tube multiplex PCR for rapid and sensitive diagnosis ofsubgenus B and other subgenera adenovirus in clinical samples. Microbiology andImmunology. 44. 821-826, 2000)を用いたPCR法により検体中にアデノウイルス遺伝子が存在するかを確認した。その結果より、採取した咽頭拭い液中からアデノウイルス遺伝子が検出された患者を5人及びアデノウイルス遺伝子が検出されなかった患者を5人選び出し、その患者から採取した咽頭拭い液を図6に示した様なチューブ内に分注した検体浮遊液(20mM MES緩衝液(pH6.0)、1(W/V)% TritonX-100、5(W/V)% アルギニン塩酸塩、1.0(W/V)%ウシ血清アルブミン)0.3mL中にそれぞれ浮遊し、検体試料を調製した。
【0130】
(2)メンブレンアッセイ法による検出
1人の患者より採取した咽頭拭い液より調製した検体試料の入った3本のチューブの先端に2.で作製したA、C及びDの各種試料ろ過フィルターをそれぞれ1個ずつ装着し、実施例1と同じ方法で試験を実施した。
試験の結果を表9に示す。10分後、アッセイ装置を観察し、図1あるいは図2のhの位置(コントロールライン)に青色の発色が認められた場合を有効とし、eの位置に青色の発色が認められた場合にアデノウイルス陽性と判定した。またhの位置に発色が認められない場合を無効とした。
【0131】
【表9】

【0132】
結果の説明
アデノウイルス陽性:PCRにてアデノウイルス遺伝子が検出された検体から調製された検体試料を用いてメンブレンアッセイ法にて試験した際にアデノウイルス陽性と判定された場合
陰性:PCRにてアデノウイルス遺伝子が検出されなかった検体から調製された検体試料を用いてメンブレンアッセイ法にて試験した際に陰性と判定された場合
非特異:試験した際にPCRにて検体からアデノウイルス遺伝子が検出されなかった検体から調製された検体試料を用いてメンブレンアッセイ法にて試験した際にアデノウイルス陽性であると判定された場合
無効:メンブレンアッセイ法にてhの位置に発色が認められなかった場合
【0133】
簡易メンブレンアッセイにおいて咽頭拭い液から調製した検体試料を、焼結フィルターを含む試料ろ過フィルターでろ過することにより、目詰まりによる無効や偽陽性を防ぐことが判明した。」

イ 引用文献1に記載された発明
(ア)上記(引1a)より、引用文献1には、「本発明の方法についてより具体的な手順の一例」として、
「メンブレン上に、被検出物に特異的に結合する検出試薬である標識物質を滴下等により添加し、捕捉試薬/被検出物/標識物質の複合体を形成させ、
標識物質をあらかじめアッセイ装置に組み込んでおく場合、検体試料を含む浮遊液をアッセイ装置に添加することにより、該浮遊液がアッセイ装置上を流れ、検出試薬を含むパッド部分に到達すると、検出試薬が前記浮遊液に溶解し、被検体とともにメンブレンに到達し、メンブレンの捕捉試薬との間で複合体を形成し、
複合体中の標識物質により、複合体の存在を検出することにより、検体試料中の被検出物の有無を測定する手順」
が記載されている。

(イ)上記(引1d)及び(引1e)には、実施例1の「ラテラルフロー式イムノクロマトアッセイによる鼻腔吸引液中のインフルエンザウイルス及びRSウイルスの検出1」の検出方法として、「検体試料全量をろ過用ノズルに通過させてろ過したろ過液をチューブに集めた後」、「インフルエンザ及びRSウイルス検出用ラテラルフロー式メンブレンアッセイ装置のサンプル滴下パッド側を液に浸し」「10分後、アッセイ装置を観察し」、「hの位置(コントロールライン)に発色が認められた場合を有効とし、eの位置に標識に用いた着色ラテックスの色調の発色が認められた場合にはA型インフルエンザウイルス陽性」、「いずれの位置にも発色が認められない場合は陰性と判定し」、「hの位置に発色が認められない場合を無効と」する検出方法が記載されている。

(ウ)上記(引1f)には、「ラテラルフロー式イムノクロマトアッセイによる咽頭拭い液中のアデノウイルスの検出」方法として、以下の方法が記載されている。

「ヒトアデノウイルスのヘキソン蛋白のアミノ酸配列の一部を合成したポリペプチドから、2種類の精製抗アデノウイルスヘキソン蛋白モノクローナル抗体を作成し、
抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体のうち1種類を緩衝液で希釈し、青色ポリスチレンラテックス粒子と混合し、反応させ、洗浄後、最終浮遊液中に浮遊し、超音波分散装置にかけ、ラテックス粒子を分散させ、
作製されたラテックス粒子標識抗体をセルロース不織布全面に噴霧し、乾燥させ、ラテックス粒子標識抗体乾燥パッドを作製し、
標識に用いなかった精製抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体を、固相液に透析し、透析後にろ過を行い、固相液で希釈して固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体を調製し、
メンブレンは、ニトロセルロースメンブレンシートを用い、その長軸側の一端から6mm離れたeの位置に固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体を線状に塗布し、22mm離れたhの位置に抗マウスIgG抗体を線状に塗布し、塗布後、乾燥し、
ラテックス粒子標識抗体乾燥パッドを幅15mm×長さ10cmに切断し、メンブレンの上面に、メンブレンの上流端が2mm重なる様に配置して貼り付け、さらに幅23mm×長さ10cmのセルロースろ紙をラテックス粒子標識抗体乾燥パッドの上面に13mm重なる様に配置して貼り付け、サンプル滴下パッドとし、
幅30mm×長さ10cmのセルロースろ紙をメンブレンの上面に、メンブレンの下流端と5mm重なる様に配置して貼り付け、サンプル吸収パッドとして
メンブレンアッセイ装置を作製し、
アデノウイルス遺伝子が検出された患者から採取した咽頭拭い液をチューブ内に分注した検体浮遊液(20mM MES緩衝液(pH6.0)、1(W/V)% TritonX-100、5(W/V)% アルギニン塩酸塩、1.0(W/V)%ウシ血清アルブミン)0.3mL中にそれぞれ浮遊させ、検体試料を調製し、
患者より採取した咽頭拭い液より調製した検体試料の入ったチューブの先端にろ過フィルターを装着し、実施例1と同じ方法で試験を実施し、
10分後、アッセイ装置を観察し、hの位置(コントロールライン)に青色の発色が認められた場合を有効とし、eの位置に青色の発色が認められた場合にアデノウイルス陽性と判定し、
またhの位置に発色が認められない場合を無効とする
ラテラルフロー式イムノクロマトアッセイによる咽頭拭い液中のアデノウイルスの検出方法」

(エ)上記(イ)に記載された実施例1の「ラテラルフロー式イムノクロマトアッセイによる鼻腔吸引液中のインフルエンザウイルス及びRSウイルスの検出1」の検出方法を踏まえると、上記cの「患者より採取した咽頭拭い液より調製した検体試料の入ったチューブの先端にろ過フィルターを装着し、実施例1と同じ方法で試験を実施」することは、「患者より採取した咽頭拭い液より調製した検体試料の入ったチューブの先端にろ過フィルターを装着し、検体試料全量をろ過用ノズルに通過させてろ過したろ過液をチューブに集めた後、前記メンブレンアッセイ装置のサンプル滴下パッド側を液に浸して試験を実施」することであるといえる。
また、上記(ウ)の「メンブレンアッセイ装置」は、「ラテックス粒子を分散させ」た「抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体」である「ラテックス粒子標識抗体」を含有する「セルロース不織布」である「ラテックス粒子標識抗体乾燥パッド」が、「メンブレンの上面に」「貼り付け」られたものであることから、上記(ア)の「本発明の方法についてより具体的な手順の一例」の「標識物質をあらかじめアッセイ装置に組み込んでおく場合」に相当する。この場合、上記(ア)の手順が、「検体試料を含む浮遊液をアッセイ装置に添加することにより、該浮遊液がアッセイ装置上を流れ、検出試薬を含むパッド部分に到達すると、検出試薬が前記浮遊液に溶解し、被検体とともにメンブレンに到達し、メンブレンの捕捉試薬との間で複合体を形成」するものであることを踏まえると、上記「前記メンブレンアッセイ装置のサンプル滴下パッド側を液に浸して試験を実施」することは、「サンプル滴下パッド側」に「検体試料全量をろ過用ノズルに通過させてろ過したろ過液」を滴下することにより、「検体試料」中の、「TritonX-100」を含む「検体浮遊液」が「メンブレンアッセイ装置」上を流れ、「検出試薬」である「ラテックス粒子標識抗体」を含む「ラテックス粒子標識抗体乾燥パッド」に到達すると、「ラテックス粒子標識抗体」が「検体浮遊液」に溶解し、「被検体」である「アデノウイルス」とともに「メンブレン」に到達し、「メンブレンの捕捉試薬」である「固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体」との間で複合体を形成することであるといえる。そして、上記(ア)における手順は、「メンブレン上に、被検出物に特異的に結合する検出試薬である標識物質を滴下等により添加し、捕捉試薬/被検出物/標識物質の複合体を形成させ」ることから、「検出試薬」である「ラテックス粒子標識抗体」/「被検出物」である「アデノウイルス」/「捕捉試薬」である「固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体」の複合体形成は、「TritonX-100」を含む「検体浮遊液」中で起こることも明らかである。

(オ)上記(ウ)の検出方法は、「eの位置に青色の発色が認められた場合にアデノウイルス陽性と判定し」ており、上記(ア)における手順に、「複合体中の標識物質により、複合体の存在を検出することにより、検体試料中の被検出物の有無を測定する」と記載されていることから、上記(ウ)の検出方法における「アデノウイルス」の検出は、「eの位置に」「複合体中の標識物質により、複合体の存在を検出することにより、検体試料中の」「アデノウイルス」「の有無を測定する」ことにより検出しているといえる。

(カ)以上のことから、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「ヒトアデノウイルスのヘキソン蛋白のアミノ酸配列の一部を合成したポリペプチドから、2種類の精製抗アデノウイルスヘキソン蛋白モノクローナル抗体を作成し、
抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体のうち1種類を緩衝液で希釈し、青色ポリスチレンラテックス粒子と混合し、反応させ、洗浄後、最終浮遊液中に浮遊し、超音波分散装置にかけ、ラテックス粒子を分散させ、
作製されたラテックス粒子標識抗体をセルロース不織布全面に噴霧し、乾燥させ、ラテックス粒子標識抗体乾燥パッドを作製し、
標識に用いなかった精製抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体を、固相液に透析し、透析後にろ過を行い、固相液で希釈して固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体を調製し、
メンブレンは、ニトロセルロースメンブレンシートを用い、その長軸側の一端から6mm離れたeの位置に固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体を線状に塗布し、22mm離れたhの位置に抗マウスIgG抗体を線状に塗布し、塗布後、乾燥し、
ラテックス粒子標識抗体乾燥パッドを幅15mm×長さ10cmに切断し、メンブレンの上面に、メンブレンの上流端が2mm重なる様に配置して貼り付け、さらに幅23mm×長さ10cmのセルロースろ紙をラテックス粒子標識抗体乾燥パッドの上面に13mm重なる様に配置して貼り付け、サンプル滴下パッドとし、
幅30mm×長さ10cmのセルロースろ紙をメンブレンの上面に、メンブレンの下流端と5mm重なる様に配置して貼り付け、サンプル吸収パッドとして
メンブレンアッセイ装置を作製し、
アデノウイルス遺伝子が検出された患者から採取した咽頭拭い液をチューブ内に分注した検体浮遊液(20mM MES緩衝液(pH6.0)、1(W/V)% TritonX-100、5(W/V)% アルギニン塩酸塩、1.0(W/V)%ウシ血清アルブミン)0.3mL中にそれぞれ浮遊し、検体試料を調製し、
患者より採取した咽頭拭い液より調製した検体試料の入ったチューブの先端にろ過フィルターを装着し、検体試料全量をろ過用ノズルに通過させてろ過したろ過液をチューブに集めた後、
サンプル滴下パッド側に検体試料全量をろ過用ノズルに通過させてろ過したろ過液を滴下することにより、検体試料中の、TritonX-100を含む検体浮遊液がメンブレンアッセイ装置上を流れ、ラテックス粒子標識抗体を含むラテックス粒子標識抗体乾燥パッドに到達すると、ラテックス粒子標識抗体が検体浮遊液に溶解し、アデノウイルスとともにメンブレンに到達し、固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体との間で複合体を形成し、
ラテックス粒子標識抗体/アデノウイルス/固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体の複合体の形成は、TritonX-100を含む検体浮遊液中で起こり、
10分後、アッセイ装置を観察し、
eの位置に複合体中の標識物質により、複合体の存在を検出することにより、検体試料中のアデノウイルスの有無を測定する
ラテラルフロー式イムノクロマトアッセイによる咽頭拭い液中のアデノウイルスの検出方法」

(2)引用文献2
引用文献2には、以下の事項が記載されている。

(引2a)「【0020】
糞便に由来する検体を、pHが0.5?2.9の範囲内に保たれた、Gly-HCl緩衝液、Ala-HCl緩衝液またはSer-HCl緩衝液で懸濁する工程においては、前処理した検体の目的成分を測定する際における非特異的発光の防止効果を上げるために、また、当該測定において免疫学的反応を使用する場合は免疫反応の感度を上げるために、界面活性剤を含んでもよい。
界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、非イオン性界面活性剤が好ましい。例えば、Triton X-100、Tween20、Pluronicなどが挙げられる。 界面活性剤の濃度は0.10重量%から0.25重量%が好ましい。中でも0.25重量%が好ましい。
界面活性剤は、前処理液に添加されていても良いし、検体抽出液に添加されていてもよい。
【0021】
糞便に由来する検体を、pHが0.5?2.9の範囲内に保たれた、Gly-HCl緩衝液、Ala-HCl緩衝液またはSer-HCl緩衝液で懸濁する工程においては、前処理した検体の目的成分を測定する際において免疫学的反応を使用する場合は、前記検体を懸濁する際に、抗原が該懸濁液を入れる容器の表面へ吸着することを防止するために、BSA(ウシ血清アルブミン)を含んでも良い。また、防腐のためにアジ化ナトリウムなどの各種防腐剤を含んでも良い。
これらの試薬は、前処理液に添加されていても良いし、検体抽出液に添加されていてもよい。」

(引2b)「【0029】
当該実施形態における検体前処理方法については、上記で詳しく説明したとおりである。
また、当該実施形態における目的成分測定方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の(A)に記載された(a)から(e)の工程、または、(B)に記載された(a)から(d)の工程を含む酵素免疫測定法が例示できる。この測定法は、特開2001-235471号公報(特許文献1)などで公知である。
(A)
(a)目的成分を含む処理検体と、該目的成分に特異的に結合する第一の抗体にリガンドが結合された結合体(試薬1)を含む溶液とを接触させて、試薬1と該目的成分との複合体を溶液中にて形成する工程。
(b)該複合体を含む溶液を、上記リガンドの補捉剤が結合された多孔性フィルタの表面に滴下して、該複合体のリガンド部分を、該リガンド補捉剤に結合させる工程。
(c)多孔性フィルタの表面に、上記目的成分に特異的に結合する、酵素で標識された第二の抗体(試薬2)の溶液を滴下して、試薬2を、リガンド補捉剤とリガンド部分とを介して多孔性フィルタに結合している第一の抗体と目的成分との複合体に結合させる工程。
(d)多孔性フィルタを洗浄することにより、多孔性フィルタに結合していない試薬を除去する工程。
(e)多孔性フィルタに結合した酵素の活性を、発光基質を用いて測定する工程。
(B)
(a)目的成分を含む処理検体と、該目的成分に特異的に結合する第一の抗体にリガンドが結合された結合体(試薬1)と、該目的成分に特異的に結合する第一の抗体とは別の抗体であって、第一の抗体と同じもしくは異なる部分で該目的成分に結合する第二の抗体が酵素で標識された第二の抗体(試薬2)を接触させて、試薬1と試薬2と目的成分との複合体を溶液中にて形成する工程。
(b)該複合体を含む溶液を、上記リガンドの補捉剤が結合された多孔性フィルタの表面に滴下して、該複合体のリガンド部分を、該リガンド補捉剤に結合させる工程。
(c)多孔性フィルタを洗浄することにより、多孔性フィルタに結合していない試薬を除去する工程。
(d)多孔性フィルタに結合した酵素の活性を、発光基質を用いて測定する工程。」

(引2c)「【0033】
(実施例)
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
(実験1)ビオチン標識抗ロタウイルス抗体の調製
抗ロタウイルスマウスモノクローナル抗体(Fitzgerald社)1 mgとビオチンアミドカプロン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを25℃で4時間反応させ、Amicon Ultra-4(ミリポア社製)を用いて分画し、第1抗体液を調製した。
(実験2)ALP標識抗ロタウイルス抗体の調製
抗ロタウイルスマウスモノクローナル抗体(Fitzgerald社)0.1 mgをAlkaline Phosphatase Labeling Kit - SH(同人化学社製)を用いて、第2抗体液を調製した。
(実験3)ロタウイルス抗原測定の実施
症状から明らかにロタウイルス感染症である人より糞便を採取し、そのうちイムノクロマト法を原理とする市販のロタウイルス検出キット(日本ベクトン・ディッキンソン社 商品名BD Rota/Adeno エグザマンTM スティック)でロタウイルス感染症陽性であることを確認できた糞便を使用し(52例)、ロタウイルス抗原を測定した。検体抽出液としては、0.15重量% Triton X-100(ナカライテスク社製)、0.1重量% Tween20(ナカライテスク社製)、1重量% BSAを含む溶液を用い、糞便を前記検体抽出液に懸濁したものを検体とした。検体30μlに各種強酸性溶液(1.0M HCl、1.0M NaNO3、0.5M H2SO4)20μlを添加し、40℃で1分間インキュベーション後、1.0M Tricine-NaOH緩衝液(pH 8.0)25μlを添加した。前記溶液75μlに第1抗体液20μlを添加し、混合後、40℃でインキュベーションした(検体・第1抗体液混合液)。10秒後に、検体・第1抗体液混合液70μlをあらかじめ50μlの蒸留水を添加したPOCube(東洋紡績社製)専用反応容器(第1抗体に結合したリガンドを特異的に認識するリガンド捕捉剤が結合された多孔性フィルタを含む容器)に添加し、さらに、第2抗体液を20μl添加し、40℃でインキュベーションした。150秒後に、0.05%のTween20を含む蒸留水を80μlずつ2回添加し、さらに発色基質としてLumigenTM APS-5(Lumigen社製)を30μl添加し、発光強度を測定した。発光強度で10000以上を示す検体をロタウイルス感染症陽性と判定した。結果を表1に示す。」

(3)甲5号証
ア 甲5号証に記載された事項
甲5号証(特開2006-047255号公報)には、以下の事項が記載されている。

(甲5a)「【0019】
前記界面活性剤としては非イオン界面活性剤、好ましくはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(トウィーン系界面活性剤)およびポリオキシエチレンp-t-オクチルフェニルエーテル(トリトン系界面活性剤)が挙げられ、最も典型的にはTween20およびTritonX-100が例示される。なお、かかる界面活性剤を特異的結合対形成物質同士の反応(例えば、抗原抗体反応、相補的核酸同士の反応など)の反応液に存在させると、ブランク値を低下させる効果を示す。さらに、固相に結合した特異的結合対の一方の物質と遊離の他方の物質による反応の前あるいは後の固液分離(洗浄等)を行なう際に、かかる界面活性剤を存在させることによってもブランク値を低下させることができる。」

(甲5b)「【0021】
かかる本発明安定化剤は、後述の本発明ブロッキング剤としても使用することが可能であり、かかる使用を行うと、特異的結合対形成物質を安定化させる働きを奏する非特異的吸着のブロッキング剤とすることができ、極めて有用である。
(2)本発明ブロッキング剤
本発明ブロッキング剤は、植物由来のポリペプチドを有効成分とする、特異的結合対形成物質を用いる測定における非特異的吸着のブロッキング剤である。ここで「ブロッキング剤」とは、特異的結合対形成物質を固着させた固相(又は担体)に対し、特異的結合対形成物質を用いて測定されるべき物質が非特異的に結合して、目的物質の測定が正確に行えなくなることを防ぐ作用を有する物質を意味する。
【0022】
本発明ブロッキング剤における、「植物」、「植物由来のポリペプチド」、「分解」は、上記本発明安定化剤と同様である。
【0023】
本発明ブロッキング剤は、特異的結合対形成物質を用いる測定において、固相(又は担体)に特異的結合対形成物質(特異的結合タンパク質、抗体、抗原又は核酸など、特に抗体が好ましい)を固着させた後、検体中の特異的結合物質と複合体を形成する物質が固相に対して非特異的に結合するのを防止するために固相に固着させて使用される。この様な固相の形態としては、例えばプレート、ビーズ、ラテックス粒子、膜等が例示され、その中でも特にプレートが好ましい。また、固相の材質としては、ポリスチレン、ニトロセルロース、セルロースアセテート、シリカゲル、ガラス、金属、半導体、シリコン、磁性担体、セラミック、紙、布などが挙げられ、その中でもポリスチレンが好ましい。本発明ブロッキング剤を固相へ固着又は被覆する方法は、物理的吸着方法や化学的吸着方法などがあり、いずれにも限定はされないが、通常用いられている物理的吸着方法で行うことが好ましい。
また、本発明のブロッキング剤と特異的結合対形成物質とを含む特異的結合対形成物質を用いる測定のための組成物としては、例えば、特異的結合対形成物質、特に、抗体、抗原又は核酸が固着された固相の該特異的結合対形成物質が結合していない部分に、本発明のブロッキング剤を固着又は被覆させて、該特異的結合対形成物質が該部分に非特異的に結合することを防止できるようにしたものが挙げられる。
更に、上記組成物としては、例えば、本発明のブロッキング剤と、前記抗体、抗原又は核酸に免疫学的測定、核酸プローブ又は核酸チップに使用される標識物質が結合した複合体とを含む組成物であってもよい。
【0024】
本発明ブロッキング剤を、例えばプレートに固着させる場合には、以下の方法に従って行うことができる。すなわち、抗体などを固着させたプレートを、例えば、PBSなどで数回程度洗浄し、その後、0.1?10%(w/v)で本発明ブロッキング剤を含むPBSなどをプレートに分注した後、10分?24時間、2?40℃条件下でインキュベートする。そして、インキュベート後に溶液を除去し、数回PBS(Tween20等の非イオン性界面活性剤を含んでいてもよい)等で洗浄する。かかる操作により本発明ブロッキング剤が固着したプレートを調製することが可能である。かかる抗体などを固着させたプレートは、本発明ブロッキング剤でインキュベートし、溶液を捨てた後、そのまま乾燥させて抗体と特異的に結合する抗原等の測定用のキットの構成要素としてキットに加えることが可能であり、固相への非特異的結合を防止できるだけでなく、抗体の品質保持期限を大幅に延ばすことが可能となるため極めて有用である。この様なキットには、更に上述の本発明安定化剤を構成要素として加えることも可能である。」

(甲5c)「【実施例1】
【0025】
本発明安定化剤の酵素標識抗体に対する安定化作用の検討
1)方法
(1)酵素標識抗体溶液の調製及び保存
表1に記載の試験物質(安定化剤)を0.15mol/l塩化ナトリウム、0.05%Tween20及び防腐剤として0.05%プロクリン300を含む50mmol/l トリス塩酸緩衝液(Tris-HCl:pH7.3?7.7)(以下、T-TBSと記載する)で、所定の濃度に調整した後、0.22μmフィルターで濾過した溶液を試験物質溶液とした。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗マウスIgG抗体(以下、HRP-抗マウスIgG抗体と記載)(Jackson社製)を上記試験物質溶液で10000倍希釈した溶液を試験に用いた。調製当日(day0)、37℃で保存した5日目(day5)及び12日目(day12)におけるHRP-抗マウスIgG抗体の安定性を検討した。各試験溶液は、測定前に常温に戻して、活性測定に使用した。
(2)酵素標識抗体の活性測定方法
(i)固相化ヤギ抗マウスIgG抗体プレートの作成
ヤギ抗マウスIgG抗体(Jackson社製)をリン酸緩衝生理食塩水〔pH7.2?7.5、カルシウムイオン等の2価イオン不含:以下、PBS(-)と記載する〕で、20μg/mLに希釈し、この溶液50μLずつをヌンクイムノプレート(商品名:マキシソープ、ヌンク社製)の各ウェルに加え、4℃で14?18時間保存することにより、均一にコーティングした。このプレートをPBS(-)で2回洗浄し、ウェルのヤギ抗マウスIgG抗体でコーティングされていない部分をブロッキングするためのブロッキング物質として,2%ウシ血清アルブミン(BSA)(生化学工業株式会社製)及び防腐剤として0.05%プロクリン300を含むPBS(-)溶液を加え、室温で2時間静置した。静置後、このプレートを洗浄液(T-TBS)で4回洗浄して、所望する固相化抗マウスIgG抗体プレートを得た。
(ii)酵素標識抗体の活性測定方法
上記洗浄後、上記(i)において作成した固相化ヤギ抗マウスIgG抗体プレートの各ウェルに、1%BSAを含むT-TBS(以下、反応液と記載する)を100μL ずつ加え、続いて、所定の各ウェルに反応液で100ng/mLに調製したマウスIgGを20μLあるいはブランクとして反応液のみを20μL加え、37℃で60分間静置して抗原抗体反応を行った。
【0026】
この反応終了後、T-TBSで各ウェルを4回洗浄した後、上記(1)で調製した試験物質(安定化剤)を含む各HRP-抗マウスIgG抗体溶液を各ウェルに100μL加え、これを37℃で60分間静置して反応させた。
【0027】
反応終了後、このプレートをT-TBSで4回洗浄し、ペルオキシダーゼの基質としてテトラメチルベンジジン(TMB)溶液(モス社製)を100μL 加え、37℃で30分間反応させ、発色させた。プレートに1N-HClを100μL 加えて反応を停止させ、TMBの分解による着色液の波長450nmの吸光度(対照波長630nm)をウェルリーダー(商標名)SK-603(生化学工業株式会社販売)で測定した。
【0028】
HRP-抗マウスIgGの反応性は、マウスIgG100ng/mLにおける吸光度からブランクにおける吸光度を減算した吸光度差(以下、吸光度差と記載する)で評価した。HRP-抗マウスIgGの安定性は、各試験物質ともに、試験溶液調製当日(day0)における吸光度差に対する各試験日における吸光度差の百分率(残存活性、%)で示した。対照品であるBSAでの残存活性の-10%を許容範囲とし、それ以上の残存活性を有する物質をBSAと同等以上の安定化効果ありと評価した。結果を表1に示した。なお、BSAは生化学工業株式会社販売、ゼラチン、脱脂粉乳はナカライテスク社販売、カゼインは和光純薬工業株式会社販売を使用し、ダイズ(大豆)タンパク質分解物、コムギ(小麦)タンパク質分解物、ジャガイモタンパク質分解物及びトウモロコシタンパク質分解物は、それぞれ、前記の2)ダイズタンパク質ペプトン、3)ダイズタンパク質酵素分解物、4)ダイズタンパク質酸分解物、5)コムギタンパク質加水分解物、6)コムギタンパク質加水分解物誘導体、7)ジャガイモタンパク質加水分解物、8)トウモロコシタンパク質加水分解物を使用した。
【0029】
2)結果
37℃、12日間保存において、HRP-抗マウスIgG抗体の残存活性は、無添加では4%、BSA添加では68%であった。BSA以外によく使用される動物性タンパクについては、カゼインが69%と良好であったが、ゼラチンは14%、脱脂粉乳は17%と不良であった。」

イ 甲5号証に記載された技術事項
上記(甲5c)より、甲5号証には、以下の技術事項(以下「技術事項5」という。)が記載されている。

「試験物質(安定化剤)を0.15mol/l塩化ナトリウム、0.05%Tween20及び防腐剤として0.05%プロクリン300を含む50mmol/lトリス塩酸緩衝液(Tris-HCl:pH7.3?7.7)(以下、T-TBSと記載する)で、所定の濃度に調整した後、0.22μmフィルターで濾過した溶液を試験物質溶液とした。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗マウスIgG抗体(以下、HRP-抗マウスIgG抗体と記載)(Jackson社製)を上記試験物質溶液で10000倍希釈した溶液を用い、
ヤギ抗マウスIgG抗体(Jackson社製)をリン酸緩衝生理食塩水〔pH7.2?7.5、カルシウムイオン等の2価イオン不含:以下、PBS(-)と記載する〕で、20μg/mLに希釈し、この溶液50μLずつをヌンクイムノプレート(商品名:マキシソープ、ヌンク社製)の各ウェルに加え、4℃で14?18時間保存することにより、均一にコーティングし、
ウェルのヤギ抗マウスIgG抗体でコーティングされていない部分をブロッキングするためのブロッキング物質として,2%ウシ血清アルブミン(BSA)(生化学工業株式会社製)及び防腐剤として0.05%プロクリン300を含むPBS(-)溶液を加え、室温で2時間静置し、
静置後、このプレートを洗浄液(T-TBS)で4回洗浄して、所望する固相化抗マウスIgG抗体プレートを得、
固相化ヤギ抗マウスIgG抗体プレートの各ウェルに、1%BSAを含むT-TBS(以下、反応液と記載する)を100μL ずつ加え、続いて、所定の各ウェルに反応液で100ng/mLに調製したマウスIgGを20μLあるいはブランクとして反応液のみを20μL加え、37℃で60分間静置して抗原抗体反応を行う方法」

2 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「アデノウイルス」は、本件発明1の「検体中の抗原」に相当する。また、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0030】及び【0031】によれば、「TritonX-100」は、HLB値が13.5の非イオン性界面活性剤である。そして、引用発明の「検体浮遊液」に含有させた界面活性剤である「TritonX-100」の濃度は「1(W/V)%」である。また、引用発明の「ラテックス粒子標識抗体/アデノウイルス/固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体の複合体の形成」は、免疫反応により起こるものであって、該形成は「TritonX-100を含む検体浮遊液中で起こ」るものである。
そうすると、引用発明の「ラテックス粒子標識抗体/アデノウイルス/固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体の複合体の形成は」、濃度が「1(W/V)%」の「TritonX-100を含む検体浮遊液中で起こ」ることと、本件発明1の「検体中の抗原又は抗体との免疫反応を、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ、ピログルタミン酸エステル、ポリオキシエチレン(15)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の12.5?20のHLB値を有する非イオン性界面活性剤が0.005?10重量%の濃度で存在する液相中で起こ」すこととは、「検体中の抗原又は抗体との免疫反応を」、「12.5?20のHLB値を有する非イオン性界面活性剤が0.005?10重量%の濃度で存在する液相中で起こ」すことで共通する。

(イ) 引用発明は「検体浮遊液」に「1.0(W/V)%ウシ血清アルブミン」を含有させており、引用文献1には「検体浮遊液にはその他、非特異反応を減じる目的でウシ血清アルブミン、イムノグロブリン、カゼイン等のタンパク質、ウサギやマウス等の血清等を含有させることも可能である。」と記載されていることから、「検体浮遊液」に含有させた「1.0(W/V)%ウシ血清アルブミン」は、本件発明の「ブロッキング剤」に相当するものであるといえる。また、引用発明は、「10分後、アッセイ装置を観察し、eの位置に複合体中の標識物質により、複合体の存在を検出することにより、検体試料中のアデノウイルスの有無を測定する」ものであって、「eの位置」には、「固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体」が「線状に塗布」されているものである。
すると、引用発明の「検体浮遊液」に「1.0(W/V)%ウシ血清アルブミン」を含有させ、「10分後、アッセイ装置を観察し、eの位置に複合体中の標識物質により、複合体の存在を検出することにより、検体試料中のアデノウイルスの有無を測定する」ことと、本件発明1の「次いで、あらかじめブロッキング剤を添加した固相上で測定を行うこと」とは、「次いで、ブロッキング剤とともに固相上で測定を行うこと」で共通する。

(ウ)引用発明の「ラテックス粒子標識抗体/アデノウイルス/固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体の複合体」を形成し「10分後、アッセイ装置を観察し、eの位置に複合体中の標識物質により、複合体の存在を検出することにより、検体試料中のアデノウイルスの有無を測定する」ことは、本件発明1の「アデノウイルス抗原の免疫測定」に相当し、引用発明と本件発明1とは、「検体中の抗原又は抗体の測定がアデノウイルス抗原の免疫測定を含む」点で一致する。

(エ)以上のことから、本件発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。

(一致点)「検体中の抗原又は抗体との免疫反応を、12.5?20のHLB値を有する非イオン性界面活性剤が0.005?10重量%の濃度で存在する液相中で起こし、次いで、ブロッキング剤とともに固相上で測定を行う方法であって、検体中の抗原又は抗体の測定がアデノウイルス抗原の免疫測定を含む、方法。

(相違点1)非イオン性界面活性剤及びブロッキング剤が、本件発明1は、非イオン性界面活性剤が、「ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ、ピログルタミン酸エステル、ポリオキシエチレン(15)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される」ものであって、ブロッキング剤が、「固相上」に「あらかじめ」「添加」されたものであるのに対し、引用発明は、非イオン性界面活性剤が、「TritonX-100」であって、ブロッキング剤が、「検体浮遊液」に含有させたものである点。

(相違点2)本件発明が「検体中の抗原又は抗体の測定におけるブランク値の低減方法」であるのに対し、引用発明はそのような特定がない点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
技術事項5の「固相化抗マウスIgG抗体プレート」及び「2%ウシ血清アルブミン(BSA)」は、それぞれ、本件発明1の「固相」及び「ブロッキング剤」に相当する。そして、技術事項5は、「ブロッキング物質として,2%ウシ血清アルブミン(BSA)(生化学工業株式会社製)及び防腐剤として0.05%プロクリン300を含むPBS(-)溶液を加え、室温で2時間静置し、静置後、このプレートを洗浄液(T-TBS)で4回洗浄して、所望する固相化抗マウスIgG抗体プレートを得」ているから、技術事項5の「ブロッキング物質として」の「2%ウシ血清アルブミン(BSA)」は、「固相化抗マウスIgG抗体プレート」上にあらかじめ添加されているといえる。また、技術事項5は、「固相化ヤギ抗マウスIgG抗体プレートの各ウェルに、1%BSAを含むT-TBS(以下、反応液と記載する)を100μLずつ加え、続いて、所定の各ウェルに反応液で100ng/mLに調製したマウスIgGを20μLあるいはブランクとして反応液のみを20μL加え」、「37℃で60分間静置して抗原抗体反応を行う」から、技術事項5の「抗原抗体反応」は、「固相化抗マウスIgG抗体プレート」上で行うものである。
すると、技術事項5の「抗原抗体反応」は、あらかじめ「ブロッキング物質として」の「2%ウシ血清アルブミン(BSA)」を添加した「固相化抗マウスIgG抗体プレート」上で行うものであるといえるから、技術事項5は、本件発明1の「あらかじめブロッキング剤を添加した固相上で測定を行うこと」を含んでいるといえる。
しかしながら、技術事項5の非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(トウィーン系界面活性剤)である「Tween20」であって、甲5号証の発明の詳細な説明中には、「Tween20」以外にはポリオキシエチレンp-t-オクチルフェニルエーテル(トリトン系界面活性剤)であるTritonX-100が例示されているだけであり、非イオン性界面活性剤として、「ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ、ピログルタミン酸エステル、ポリオキシエチレン(15)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される」ものについては記載されていない。
そうすると、技術事項5は、上記相違点1に係る構成を有していないといえる。
また、引用文献2において使用される非イオン性界面活性剤は、技術事項5と同様に、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(トウィーン系界面活性剤)である「Tween20」及び「Tween20」以外にはポリオキシエチレンp-t-オクチルフェニルエーテル(トリトン系界面活性剤)であるTritonX-100、Pluronicが例示されているだけであって、これらは、「ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ、ピログルタミン酸エステル、ポリオキシエチレン(15)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される」ものではない。そして、本件発明において「ブロッキング剤」として例示されている「BSA(ウシ血清アルブミン)」を使用しているが、該「BSA(ウシ血清アルブミン)」は、前処理液や検体抽出液等に添加されるものであって、あらかじめ固相上に添加されたものではない。
そうすると、引用文献2にも、上記相違点1に係る構成が記載されているとはいえない。
したがって、上記相違点1に係る構成は、技術事項5であるとも、引用文献2に記載された技術事項であるともいえないから、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、引用発明、技術事項5及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2、4及び6?8について
本件発明2、4及び6?8は、本件発明1に対して、さらに技術的事項を追加したものである。よって、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2、4及び6?8は、引用発明、引用文献2及び甲5号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易になし得るものではない。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明1、2、4及び6?8は、引用発明、技術事項5及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易になし得るものではない。

第6 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1?8に係る発明は、甲1号証に記載された発明及び甲2?12号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に想到できる旨、また、請求項1?8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない旨主張する。

2 進歩性について
(1)各甲号証の記載
ア 甲1号証、甲5号証及び甲9号証
甲1号証及び甲9号証は、それぞれ、当審の取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の引用文献2及び引用文献1で有り、各甲号証の記載事項等は、上記第4の2(2)ア?ウで指摘したとおりである。

イ 甲2号証に記載された事項
甲2号証(特開2010-101673号公報)には、以下の事項が記載されている。

(甲2a)「【実施例1】
【0032】
(1)精製抗Biotin-(AC_(5))_(2)-OSuポリクローナル抗体の作製
23.3mg/mLのKLH(CALBIOCHEM社製) 100μLに28mg/mLのBiotin-(AC_(5))_(2)-OSu(同仁化学社製)(以下、長鎖ビオチンと表記する。)を40μL添加し25℃で2時間インキュベートした。インキュベート後、PD-10カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用い未標識のビオチンを除去し、長鎖ビオチン標識KLHを得た。
得られた長鎖ビオチン標識KLHを2.0mg/mLの濃度でヤギに1週間ごとに計4回免疫を行った。最終免疫実施日の1週間後に全採血を行い、抗血清を得た。
得られた抗血清はProtein Gカラム及びKLH結合アフィニテイーカラムを用いて精製を行
い、精製抗長鎖ビオチンポリクローナル抗体を得た。
【0033】
(2)精製抗長鎖ビオチンポリクローナル抗体固定化クロマトグラフィー媒体の作製
ニトロセルロースから成る、幅が16mmの膜担体(ミリポア社製:HF120)に、塗布機(BioDot社製)を用いて、実施例1(1)で作製した精製抗長鎖ビオチンポリクローナル抗体をリン酸緩衝液(pH6.0)で3mg/mLの濃度になるように希釈後塗布し、50℃で1時間乾燥させた。その後、一晩室温で乾燥させた。
【0034】
(3)Biotin-OSu標識タンパク質の作製
0.15MのNaClを含むリン酸緩衝液(pH7.4)(以下、PBSと略すこともある)に溶解した1.0mg/mLのヤケヒョウヒダニ抽出物(LSL社製) 1mLに対して、PBSに溶解した28mg/mLのBiotin-OSu (同仁化学社製)(以下、短鎖ビオチンと表記する)を20μL添加し25℃で2時間インキュベートした。インキュベート後、PD-10カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用い未標識のビオチンを除去し、短鎖ビオチン標識ヤケヒョウヒダニ抽出物を得た。
【0035】
(4)標識物質溶液の作製
金コロイド懸濁液(田中貴金属工業社製: 平均粒子径40 nm)0.5mLに、リン酸緩衝液(pH7.4)で0.1mg/mLの濃度になるように希釈したマウス由来の抗ヒトIgEモノクローナル抗体を0.1mL加え、室温で10分間静置した。次いで、10重量%の牛血清アルブミンを含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1mL加え、十分撹拌した後、8000×gで15分間遠心分離を行った。上清を除去した後、1重量%の牛血清アルブミンを含むリン酸緩衝液(pH7.4)0.1mLを加え、標識物質溶液とした。
【0036】
(5)イムノクロマトグラフィー用試験片の作製
上記作製した短鎖ビオチン標識タンパク質及び標識物質溶液の各々を幅が16mmのグラスファイバー製パッドに均一になるように添加した後、真空乾燥機にて乾燥させ、短鎖ビオチン標識タンパク質保持部材及び標識保持部材とした。次いで、バッキングシートから成る基材に、上記調製したクロマトグラフィー媒体、短鎖ビオチン標識タンパク質保持部材、標識物質保持部材、試料を添加する部分に用いるサンプルパッド、及び展開した試料、不溶性担体を吸収するための吸収パッドを貼り合わせた。最後に、裁断機で幅が5mmとなるように裁断し、イムノクロマトグラフィー用試験片を作製した。
【0037】
(6)測定
上記作製したイムノクロマトグラフィー用試験片を用いて、以下の方法で陰性検体及び陽性検体中のヤケヒョウヒダニに対する特異IgE抗体を測定した。
0.3%のTritonX-100、150mM塩化ナトリウムを含むトリス緩衝溶液(pH8.0)から成る展開溶媒を作製した。陰性検体(0.15IU/mL)、陽性検体(2.24IU/mL)を試料とし、各試料20μLをイムノクロマトグラフィー用試験片のサンプルパッド上に載せ、次いで展開溶媒を80μL載せて展開させ、15分後にイムノクロマトリーダー(浜松ホトニクス社製)を用いて判定部位の発色強度を数値化した。陰性検体及び陽性検体の発色値よりS/N比を求めた。
図1に結果を示す。」

ウ 甲3号証に記載された事項
甲3号証(特開平06-066798号公報)には、以下の事項が記載されている。

(甲3a)「【0019】本発明の特徴は、上記免疫反応を行なう際に、12?19のHLB値を有する非イオン界面活性剤を1.5?6 w/w%の濃度となるように抗原-抗体反応系に存在させる点にある。
【0020】非イオン界面活性剤としては、HLB値が12?19であれば特に限定されないが、好ましくは、ポリオキシエチレン系非イオン界面活性剤及び多価アルコール系非イオン界面活性剤からなる群から選ばれる化合物が挙げられる。
【0021】たとえば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(具体的には、ノニオンNS-208.5、ノニオンNS-220、及びノニオンNS-270(日本油脂製)など)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(具体的には、ノニオンE-215(日本油脂製)など)、ポリオキシエチレンモノステアレート(具体的には、ノニオンS-15.4、及びノニオンS-40(日本油脂製)など)、並びにポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(具体的には、ツウィーン20など)、等である。
【0022】本発明で使用する非イオン界面活性剤の免疫反応系への添加量は、1.5?6w/w%であるが、好ましくは、2?5 w/w%である。
【0023】添加量が1.5 w/w%未満においては、免疫反応容器の汚染を防止し、かつ免疫反応を促進させる効果が得られない。また、6 w/w%を越えると、かえって非特異反応によるブランク値の上昇をきたすことになる。」

(甲3b)「【0028】実施例1
各種界面活性剤の効果を下記のサンドイッチ法によるNCC-ST-439抗原の酵素免疫測定法により調べた。
【0029】免疫反応用緩衝液(1%牛血清アルブミン含有リン酸生理食塩水)およびペルオキシダーゼ標識NCC-ST-439抗体を免疫反応用緩衝液で希釈した酵素標識抗体液に、各種界面活性剤を3 w/w%になるように添加した。
【0030】測定操作は以下のように行った。
【0031】サンドイッチ法によるNCC-ST-439抗原の酵素免疫測定法
反応用トレイにNCC-ST-439抗体が結合した直径6.25mmのポリスチレンビーズを入れ、これに0u/ml,2.5u/mlおよび100u/mlの標準抗原溶液を50μl採取し、免疫反応用緩衝液を200μl加え、37℃で2時間の免疫反応を行った。1mlの生理食塩水で3回ビーズを洗浄し、次いで免疫反応用緩衝液と同一の界面活性剤を含有する酵素標識抗体液250μlを加えて室温で1時間反応した。さらに、ビーズを1mlの生理食塩水で3回洗浄したのち別の試験管に移し、2.87mM 2,2’-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)および0.014%過酸化水素を含む発色液300μlを加えて室温で1時間反応した。その後、0.14mMアジ化ナトリウムを含む反応停止液を2ml加えて精製水を対照に420nmの吸光度を測定した。
【0032】測定は5回の多重測定で行い、吸光度の平均値、変動係数(CV)および0u/mlの場合の吸光度に対する2.5u/mlの場合の吸光度の比(SN比)を求め比較した。
【0033】対照として界面活性剤無添加および免疫反応促進効果の知られるポリオキシエチレングリコール(PEG)を添加した系でも同様の測定を行った。
【0034】結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】表1から明らかなごとく、12から19のHLB値を有する非イオン界面活性剤を添加することによって、NCC-ST-439抗原濃度が0u/mlの場合の発色は低くなり、2.5および100u/mlの場合の発色は高くなっており、変動係数も小さくなった。またSN比も対照に比べ大きくなった。
【0037】このことは免疫反応を促進しながらバックグラウンドは下がり、低値における免疫反応の測定感度及び測定精度は向上したことを示している。
【0038】実施例2
界面活性剤濃度の影響をサンドイッチ法によるNCC-ST-439抗原の酵素免疫測定法により調べた。
【0039】界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB値18.7)およびポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(HLB値16.7)を用い、実施例1と同一の免疫反応用緩衝液および酵素標識抗体液に0.1から8.0 w/w%になるように添加して実施例1と同様の測定操作で測定した。
【0040】測定は5回の多重測定で行い、吸光度の平均値、変動係数(CV)を求め比較した。
【0041】対照として界面活性剤無添加及びポリオキシエチレングリコール20000を添加した系でも同様の測定を行った。
【0042】結果を表2に示す。
【0043】低濃度の界面活性剤添加ではバックグラウンドを下げる効果も免疫反応の促進効果も十分でなく、高濃度では逆にバックグラウンドが高くなることが判った。1.5から6.0 w/w%の添加で良好な効果が得られた。
【0044】
【表2】



エ 甲4号証に記載された事項
甲4号証(特開昭58-187862号公報)には、以下の事項が記載されている。

(甲4a)「本発明に用いられる合成界面活性剤としては、非イオン,アニオン,カチオンおよび両性界面活性剤があげられる。
非イオン界面活性剤としては、(ポリ)オキシアルキレン系非イオン界面活性剤(アルキロールアミド,ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルキルアリールエーテル,ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール,ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル,ポリオキシアルキレンアルキルアミンなど),および多価アルコール系非イオン界面活性剤(多価アルコール脂肪酸エステルなど)があげられる。具体的には下記のとおりである。」

(甲4b)「実施例1
各種界面活性剤を免疫反応媒体に加え,サンドウィッチ法によるインシュリンの酵素免疫法を行ないその効果を調べた。
免疫反応媒体として,免疫反応用緩衝液(0.85%NaCl,0.1%牛血清アルブミン,含有リン酸ナトリウム緩衝液pH7.3)に界面活性剤を添加した,下記4種類の免疫反応媒体を調製した。
免疫反応媒体A;0.1%ポリオキシエチレン(付加モル数10)オクチルフェニルエーテル含有免疫反応用緩衝液
免疫反応媒体B;0.1%ポリオキシエチレン(付加モル数20)ソルビタンラウリン酸エステル含有免疫反応用緩衝液
免疫反応媒体C;0.1%ポリオキシエチレン(付加モル数4)ラウリルエーテル硫酸エステルトリエタノールアミン塩含有免疫反応用緩衝液
免疫反応媒体D;0.1%ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド含有免疫反応用緩衝液
サンドウィッチ法によるインシュリンの酵素免疫測定法:上記の免疫反応媒体(A?D)0.45mlにインシュリン含有液(インシュリン濃度0μU/ml,10μU/ml,320μU/mlの3種類)50μlを加え,更にガラスビーズ-抗インシュリン抗体結合物(φ6.6mm)を1ケ加えて,37℃で1時間振とうし免疫反応を行なった。(各インシュリン濃度について,10回多重測定を行なう。)振とう終了後,脱イオン水にてガラスビーズを2回洗浄し,次いで各免疫反応媒体(A?D)で希釈した抗インシュリン抗体-ペルオキシダーゼ複合体0.5mlを加えて,37℃で1時間振とうし免疫反応を行なった。反応終了後,ガラスビーズを脱イオン水で2回洗浄し,次いでガラスビーズに結合したペルオキシダーゼ活性を過酸化水素-Oフェニレンジアミン系の発色剤を用いて492nmの吸光度にて測定した。各濃度のインシュリン含有液の10回の多重測定値の平均,変動係数及びゼロ比(0μU/mlの測定値に対する10μU/mlの測定値の比)を比較した。
結果を表-1に示す。なお,界面活性剤無添加の免疫反応媒体の系を対照として示す。
表-1から明らかな如く,免疫反応媒体A?Dの様に,界面活性剤を免疫反応系に添加することによって,各インシュリン濃度での変動係数が小さくなり,またゼロ比も無添加の対照に比べて大きくなった。このことは低濃度領域での測定感度,測定精度が向上したことを示している。」

オ 甲6号証に記載された事項
甲6号証(特開2005-291783号公報)には、以下の事項が記載されている。

(甲6a)「【0009】
本発明の検体浮遊液調製用媒体組成物を用いて検体浮遊液を調製し、免疫測定法に供すると、測定時の疑似反応の要因となる患者検体由来成分の非特異的な吸着やバックグラウンドの発生を抑えることができ、非特異的反応に起因する疑似陽性反応を有意に防止するすることができる。」

(甲6b)「【0012】
上記イオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、組成物全体の重量に対し0.01?10w/v%の範囲であり、好ましくは0.5?5w/v%である。
【0013】
本発明の組成物は、上記イオン性界面活性剤に加え、さらに非イオン性界面活性剤を含んでいてもよい。非イオン性界面活性剤としては、HLB値が10以上、さらに好ましくはHLB値が13以上のポリオキシエチレン系界面活性剤を好ましく用いることができる。HLB値の上限は特にないが、通常、HLB値は、20以下である。ポリオキシエチレン系界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等を挙げることができ、より具体的には、ポリオキシエチレンp-t-オクチルフェニルエーテル(商品名「Triton」シリーズ)、特にTriton X-100(商品名、HLB値13.5)、Nonidet P-40(商品名、HLB値13.1)、TritonX-102(商品名、HLB14.6)、TritonX-165(商品名、HLB15.8)、TritonX-405(商品名、HLB17.9)、ポリオキシエチレンp-t-ノニルフェニルエーテル(商品名「TritonN」シリーズ)、特にTritonN-101(商品名、HLB13.5)、TritonN-111(商品名、HLB13.8)、TritonN-150(商品名、HLB15.0)等を挙げることができる。非イオン性界面活性剤は、単独でも2種以上を混合して用いることもできる。
【0014】
上記した非イオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、組成物全体の重量に対し0.01?10w/v%の範囲であり、好ましくは0.5?5w/v%である。」

(甲6c)「【0018】
本発明の組成物は、上記した成分に加え、従来の検体浮遊液調製用媒体組成物と同様、緩衝剤を含有することが好ましい。緩衝剤の好ましい例としては、リン酸塩、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、グッドの緩衝剤等を挙げることができる。また、さらに他の成分として、従来の検体浮遊液調製用媒体組成物と同様、ウシ血清アルブミン(BSA)等のタンパク質成分(含有量は通常0.01w/v%?10w/v%)、変性剤(例えば、尿素、グアニジン塩酸、チオシアン酸塩等、含有量は通常0.01M?8M)、高分子ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロースなどの可溶性セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等)、塩基性化合物(例えば、スペルミン、スペルミジン、硫酸プロタミン等、含有量は通常0.01w/v%?3w/v%)等を任意的に含んでいてもよい。」

カ 甲7号証に記載された事項
甲7号証(特開2005-291780号公報)には、以下の事項が記載されている。

(甲7a)「【0009】
本発明の検体浮遊液調製用媒体組成物を用いて検体浮遊液を調製し、免疫測定法に供すると、測定時の疑似反応の要因となる患者検体由来成分の非特異的な吸着やバックグラウンドの発生を抑えることができ、非特異的反応に起因する疑似陽性反応を有意に防止するすることができる。」

(甲7b)「【0014】
非イオン性界面活性剤としては、HLB値が10以上、さらに好ましくはHLB値が13以上のポリオキシエチレン系界面活性剤を好ましく用いることができる。HLB値の上限は特にないが、通常、HLB値は、20以下である。ポリオキシエチレン系界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等を挙げることができ、より具体的には、ポリオキシエチレンp-t-オクチルフェニルエーテル(商品名「Triton」シリーズ)、特にTriton X-100(商品名、HLB値13.5)、Nonidet P-40(商品名、HLB値13.1)、TritonX-102(商品名、HLB14.6)、TritonX-165(商品名、HLB15.8)、TritonX-405(商品名、HLB17.9)、ポリオキシエチレンp-t-ノニルフェニルエーテル(商品名「TritonN」シリーズ)、特にTritonN-101(商品名、HLB13.5)、TritonN-111(商品名、HLB13.8)、TritonN-150(商品名、HLB15.0)等を挙げることができる。非イオン性界面活性剤は、単独でも2種以上を混合して用いることもできる。」

(甲7c)「【0016】
上記した非イオン性界面活性剤及びイオン性界面活性剤は、いずれか一方のみを配合してもよいし、両者を配合してもよい。非イオン性界面活性剤及びイオン性界面活性剤含有量は、特に限定されないが、組成物全体の重量に対しそれぞれ0.01?10w/v%の範囲であり、好ましくは0.5?5w/v%である。
【0017】
本発明の組成物の溶媒は、従来の検体浮遊液調製用媒体組成物と同様、通常、水である。
【0018】
本発明の組成物は、上記した成分に加え、従来の検体浮遊液調製用媒体組成物と同様、緩衝剤を含有することが好ましい。緩衝剤の好ましい例としては、リン酸塩、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、グッドの緩衝剤等を挙げることができる。また、さらに他の成分として、従来の検体浮遊液調製用媒体組成物と同様、ウシ血清アルブミン(BSA)等のタンパク質成分(含有量は通常0.01w/v%?10w/v%)、変性剤(例えば、尿素、グアニジン塩酸、チオシアン酸塩等、含有量は通常0.01M?8M)、高分子ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロースなどの可溶性セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等)、塩基性化合物(例えば、スペルミン、スペルミジン、硫酸プロタミン等、含有量は通常0.01w/v%?3w/v%)等を任意的に含んでいてもよい。」

キ 甲8号証に記載された事項
甲8号証(特開平02-287257号公報)には、以下の事項が記載されている。

(甲8a)「本発明で使用し得る非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルアルコールエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのポリオキシエチレン誘導体が挙げられ、親水性親油性バランス(HLB)値11?17のものが特に好ましい。代表的な例としては、HLB値が16.7であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween20)を挙げることができる。
非イオン性界面活性剤の使用量は、用いる非イオン性界面活性剤の種類によって多少異なるが、反応系に対して、0.01?1重量%、特に0.1?1重量%が好ましい。但し、過剰の界面活性剤は抗体とG-CSFの結合をかえって阻害することとなり、また非特異的な発色を強めるので、非イオン性界面活性剤は1重量%以下で使用することが望ましい。」

(甲8b)「ペルオキシダーゼ標識-Fab′を用いたヒトG-CSFの測定
(1)1%BSAを含むPBS中での測定1%BSAを含むPBS(1%BSA-PBS)でヒトG-CSFを希釈して調製した標準液(緩衝液系標準液)を実施例3で製造したマイクロタイタープレートにそれぞれ1ウェルあたり50μlずつ分注した。4℃で12時間放置後、反応液を除去し、PBSで5回洗浄した。実施例2で調製したペルオキシダーゼ標識-Fab′を1%BSA-PBSで希釈し、各ウェルに50μlずつ分注した。室温で2時間放置後、液を捨て、PBSで5回洗浄した。0.4mg/ml O-フェニレンジアミン-0.006%過酸化水素水を含む0.1%クエン酸緩衝液pH5.2を各ウェルに100μl分注後、室温で10分間反応させた。1N HCl50μlを加えて反応を停止させ、600nmを対照に492nmの吸光度を測定した。
492nmの吸光度を縦軸に、ヒトG-CSFの濃度を横軸に取り、片対数グラフを用いて標準曲線を作成した(第1図参照)。」

(甲8c)「(3)非イオン性界面活性剤を添加した健常人の血漿中での測定
血漿中に種々の非イオン性界面活性剤を添加し、血漿中の干渉物質の影響を出来る限り小さくする条件についての検討を行なった。健常人血漿標準液に非イオン性界面活性剤としてTween20(POLY SCIENCE WARRINGTON,PA社製)、Tween85(ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、HLB=11.0、純正化学(株)社製)、Brij-35(ポリオキシエチレンラウリルアルコールエーテル、HLB=16.9、ナカライテスク(株)社製)を10%(V/V)添加し、実施例4(1)と同様に測定した。結果を第3図に示す。血漿に非イオン性界面活性剤を添加すると緩衝液系標準液における検量線とよく一致するようになることが分る。なお、非イオン性界面活性剤の添加量の検討として、種々の濃度のTween20を血漿体積に対し10%(V/V)添加し、実施例4(1)の方法で測定した。血漿中のTween20の濃度を上げていくと、測定結果は、次第に緩衝液系標準液における検量線に近付いていき、0.1?1%Tween20の添加条件で最もよい結果が得られた(第4図参照)。1重量%より多量のTween20の添加は非特異的反応を起こしたり、抗ヒトG-CSF抗体との結合を阻害するので好ましくなかった。また、非イオン性界面活性剤の至適濃度は、各非イオン性界面活性剤ごとに異なっていた。」

ク 甲10号証に記載された事項
甲10号証(特開2009-036781号公報)には、以下の事項が記載されている。

(甲10a)「【0058】
検体浮遊液には、通常、塩及びpHを一定に維持するための緩衝剤が含まれる。緩衝液としては、免疫学的試験に通常使用される緩衝液等を使用することができ、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、グッドの緩衝液等が挙げられる。さらに検体浮遊液には特異的な凝集反応を阻害しない範囲で非特異反応を減じる目的で界面活性剤を含有させることが可能である。界面活性剤としては、Triton X-100(商品名):ポリエチレングリコールモノ-р-イソオクチルフェニルエーテル、Tween 20:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、Tween 80:ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、Nonidet P-40:ノニデット P-40、ZWITTERGENT 3-14:n-テトラデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネ-ト、CHAPS:3-〔(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕プロパンスルホン酸、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等あるいはこれらを2種類以上混合したものを用いることができる。
【0059】
検体浮遊液にはその他、非特異反応を減じる目的でウシ血清アルブミン、イムノグロブリン、カゼイン等のタンパク質、ウサギやマウス等の血清等を含有させることも可能である。」

(甲10b)「【0123】
[実施例5] ラテラルフロー式イムノクロマトアッセイによる咽頭拭い液中のアデノウイルスの検出
1.モノクローナル抗体の作製
(1)アデノウイルスヘキソン蛋白モノクローナル抗体(マウス)
ヒトアデノウイルスのヘキソン蛋白のアミノ酸配列の一部を合成したポリペプチドを免疫し、一定期間維持したBALB/cマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al.,Nature, vol, 256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。
【0124】
得られた融合細胞(ハイブリドーマ)を、37℃インキュベーター中で維持し、アデノウイルスヘキソン蛋白抗原固相プレートを用いたELISAにより上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。
【0125】
取得した該細胞2株をそれぞれプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。得られた腹水をそれぞれProteinAカラムクロマトグラフィー(アマシャム社製)を用いたアフィニティ精製によってIgGを精製し、2種類の精製抗アデノウイルスヘキソン蛋白モノクローナル抗体を得た。
【0126】
2.標識抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体(標識物質)の作製
(1)ラテックス粒子標識抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体の調製
抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体のうち1種類を50mMMES(2-Morpholinoethanesulfonic acid,monohydrate;同仁化学社)緩衝液(pH6.0)溶液で透析後、O.D._(280nm)=0.5になるように同じ緩衝液で希釈した溶液を10mL調製した。次に10(W/V)%青色ポリスチレンラテックス粒子(粒径0.45μm、表面官能基はカルボキシル基、官能基密度65Å^(2)/COOH基;Magsphere社)と液量比40:1になるように混合し、反応させた。次に、1(W/V)%のEDAC(N-(3-Dimethlaminopropyl)-N'-ethylcarbodiimidehydrochloride;Sigma社)を最終濃度0.1%になるように添加した後、2時間反応させた。洗浄後、最終浮遊液(5mM Tris, 0.04(W/V)% BSA(ウシ血清アルブミン), 0.4Mトレハロース,0.2(V/V)% TritonX-100)20mL中に浮遊し、超音波分散装置(オリンパス社)にかけ、ラテックス粒子を分散させた。
【0127】
3.ラテックス粒子標識抗体の乾燥化
(1)ラテックス粒子標識抗体乾燥パッドの作製
2.で作製したラテックス粒子標識抗体を陽圧噴霧装置(BioJet;BioDot社)を用いて8μL/cmの塗布量でリール状に巻いた幅15mmのセルロース不織布全面に噴霧した。噴霧後、50℃の温風を1分間吹きつけて乾燥させ、ラテックス粒子標識抗体乾燥パッドを作製した。
【0128】
4.メンブレン固相用抗体の調製
(1)固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体の調製
上記1.(1)で作製した精製抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体のうち標識に用いなかった方を、固相液(10mM Tris-HCl(pH7.5))に透析し、透析後に0.22μmろ過を行い、O.D._(280nm)=4.0になるように固相液で希釈して固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体を調製した。
【0129】
5.アデノウイルス検出用ラテラルフロー式メンブレンアッセイ装置の作製
アデノウイルス検出用ラテラルフロー式メンブレンアッセイ装置は、図1及び図2に示すものと同様の構成のものを用いた。
【0130】
メンブレンは、幅3cm×長さ10cmのニトロセルロースメンブレン(孔径12μm;ワットマン社製)シート(白色)を用いた(図1及び図2のd)。その長軸側の一端(この端を上流端、反対側を下流端とする)から6mm離れたeの位置に固相用抗アデノウイルスヘキソン蛋白抗体を1μL/cmの塗布量で陽圧噴霧装置(BioJet;BioDot社)を用いて線状に塗布し、22mm離れたhの位置に抗マウスIgG抗体をO.D._(280nm)=1.0に希釈し、1μL/cmの塗布量で陽圧噴霧装置(BioJet;BioDot社)を用いて線状に塗布した。fとgの位置には何も塗布しなかった。塗布後、45℃の温風を10分間吹き付けて乾燥した。
【0131】
次に、部材を固定し、かつ強度を増すため、メンブレンの抗体塗布面(この面を上面とする)の反対側(この面を下面とする)にプラスチック製バッキングシート(BioDot社製)を接着した(図2のi)。
【0132】
次に、上記3(2)で作製したラテックス粒子標識抗体乾燥パッド(図1及び図2のb)を幅15mm×長さ10cmに切断し、メンブレンの上面に、メンブレンの上流端が2mm重なる様に配置して貼り付け、さらに幅23mm×長さ10cmのセルロースろ紙(ワットマン社)をラテックス粒子標識抗体乾燥パッドの上面に13mm重なる様に配置して貼り付け、サンプル滴下パッド(図1及び図2のa)とした。
【0133】
次に、幅30mm×長さ10cmのセルロースろ紙(ワットマン社)をメンブレンの上面に、メンブレンの下流端と5mm重なる様に配置して貼り付け、サンプル吸収パッド(図1及び図2のc)とした。
【0134】
次にサンプル滴下パッドの上流端の幅5mmを除いて、上面全面を透明プラスチックラミネート(Adhesive Research社)で被覆した(図2のj)。
【0135】
最後に長軸方向に沿って、5mmずつ切断し、図1及び図2に示すメンブレンアッセイ装置を作製した。
【0136】
6.試料ろ過フィルターの作製
実施例1及び2で作製した試料ろ過フィルターのうちA、C及びDを用いた。
【0137】
7.アデノウイルスの検出
(1)検体の採取と検体試料の調製
臨床的にアデノウイルス感染が疑われる患者から頭部がナイロン繊維からなるブラシ状綿棒(検体採取部分の水分吸収量90μL;microRheologics社)を用いて咽頭拭い液を4本採取した。まず、そのうち1本を2mLのウイルス分離用培地に浮遊し、この浮遊液を用いてFujimoto等の方法(Single-tube multiplex PCR for rapid and sensitive diagnosis ofsubgenus B and other subgenera adenovirus in clinical samples. Microbiology andImmunology. 44. 821-826, 2000)を用いたPCR法により検体中にアデノウイルス遺伝子が存在するかを確認した。その結果より、採取した咽頭拭い液中からアデノウイルス遺伝子が検出された患者を5人及びアデノウイルス遺伝子が検出されなかった患者を5人選び出し、その患者から採取した咽頭拭い液を図6に示した様なチューブ内に分注した検体浮遊液(20mM MES緩衝液(pH6.0)、1(W/V)% TritonX-100、5(W/V)% アルギニン塩酸塩、1.0(W/V)%ウシ血清アルブミン)0.3mL中にそれぞれ浮遊し、検体試料を調製した。
【0138】
(2)メンブレンアッセイ法による検出
1人の患者より採取した咽頭拭い液より調製した検体試料の入った3本のチューブの先端に2.で作製したA、C及びDの各種試料ろ過フィルターをそれぞれ1個ずつ装着し、実施例1と同じ方法で試験を実施した。
【0139】
試験の結果を表9に示す。10分後、アッセイ装置を観察し、図1あるいは図2のhの位置(コントロールライン)に青色の発色が認められた場合を有効とし、eの位置に青色の発色が認められた場合にアデノウイルス陽性と判定した。またhの位置に発色が認められない場合を無効とした。
【0140】
【表9】

【0141】
結果の説明
アデノウイルス陽性:PCRにてアデノウイルス遺伝子が検出された検体から調製された検体試料を用いてメンブレンアッセイ法にて試験した際にアデノウイルス陽性と判定された場合
陰性:PCRにてアデノウイルス遺伝子が検出されなかった検体から調製された検体試料を用いてメンブレンアッセイ法にて試験した際に陰性と判定された場合
非特異:試験した際にPCRにて検体からアデノウイルス遺伝子が検出されなかった検体から調製された検体試料を用いてメンブレンアッセイ法にて試験した際にアデノウイルス陽性であると判定された場合
無効:メンブレンアッセイ法にてhの位置に発色が認められなかった場合
【0142】
簡易メンブレンアッセイにおいて咽頭拭い液から調製した検体試料を、焼結フィルターを含む試料ろ過フィルターでろ過することにより、目詰まりによる無効や偽陽性を防ぐことが判明した。」

ケ 甲11号証に記載された事項
甲11号証(特開平11-153601号公報)には、以下の事項が記載されている。

(甲11a)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のような免疫クロマトグラフィー装置において、判定部の固定相抗体以外の部分の着色(バックグラウンド)及び検出物質が存在しない場合での固定化相の発色(ブランク)は、検出時のSN比を下げるばかりでなく、誤動作の原因にもなりうる。バックグラウンド着色の原因は、可視化された移動相抗体と多孔質担体との疎水的な結合である。また、ブランク発色の原因は、負電荷を帯びた移動相抗体と正電荷を帯びた固定相抗体との電気的相互作用である。」

(甲11b)「【0018】本発明の免疫クロマトグラフィー装置は、抗原がhCG、LH(黄体形成ホルモン)、またはCRP(C反応性タンパク質)のいずれかである場合に特に有効である。本発明に用いる界面活性剤としては、アルキルフェノールエーテル系の非イオン界面活性剤が用いられる。トリトン系界面活性剤、なかでもトリトン(Triton)X-100の名で販売されているものが好ましい。アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウム塩、例えば塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウムなどが好ましい。添加剤含浸部におけるpH緩衝剤の担持量は、担体の試料導入部にあらかじめ定めた体積の試料を添加したとき、判定部における試料のpHが8.0?8.5の範囲になる量であることが好ましい。pH緩衝剤は、ホウ酸、2-(N-モルフォリノ)エタンスルフォン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、およびリン酸からなる群より選ばれたものが好ましい。」

(甲11c)「【0020】
【実施例】以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
《実施例1》
[各部材の作製方法]
(1)判定部のブロッキング剤及び洗浄剤の作製方法
蒸留水1Lにトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(以下Trisで表す)を0.1mol(12.11g)加えて攪拌した後、1NのHClによりpH8.2に調整し、ニトロセルロースの洗浄剤とした。また、前記の洗浄剤にスキムミルクを10g加えて攪拌し、ニトロセルロースのブロッキング剤とした。
【0021】(2)判定部の抗体固定化方法
ニトロセルロースのシート(ミリポア社製:HFM SPHF04020)を大きさ0.9cm×1.2cmに裁断した厚さ約220μm(支持体を含む)のシートを担体とした。このシートの上に、試料導入部側から0.5cm、吸液部側から0.7cmの箇所に、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンに対する抗hCGβ抗体(α-hCGβ)のリン酸緩衝溶液(以下PBS溶液で表す)(5mg/mL)を塗布し、40℃で8時間遮光状態で乾燥した。乾燥後、シートを上記のブロッキング剤に、ブロッキング剤が30シートあたり70mLの割合となるよう浸潤し、30℃で30分間シェイカーにてブロッキングした。ブロッキング後、上記の洗浄剤(70mL/30シート)により30℃で30分間洗浄する操作を3回繰り返した後、デシケータ内にて一晩乾燥した。
(3)添加剤含浸部の作製方法
蒸留水1LにTrisを1mol(121.1g)加えて攪拌した後、1NのHClによりpH8.2に調整した。これに塩化テトラメチルアンモニウム(以下TMAで表す)1mol(109.6g)とトリトン系界面活性剤Triton X-100(以下Tritonで表す)の10%水溶液10mLを加えて攪拌し、pH8.2のTris(1M)-TMA(1M)-Triton(0.1%)溶液を作製した。これをガラス繊維濾紙を大きさ0.9cm×6.0cmに裁断したものに0.36mL含浸した後、凍結乾燥した。」

コ 甲12号証に記載された事項
甲12号証(戸田新細菌学 改訂33版、2007年5月7日、南山堂、742?745頁)には、以下の事項が記載されている。

(甲12a)「表VII-3-3にアデノウイルスによる感染症の種類と原因となる主な血清型を示す。飛沫、接触、目の分泌物、糞便を介して感染が広がる。」(744頁右欄3-6行)

(甲12b)「喉頭ぬぐい液、うがい液。結膜ぬぐい液、糞便、尿の沈渣、陰部の分泌物などを病状に応じて採取し、ウイルスの分離培養や抗原、DNAの検出を行う。」(745頁左欄10-13行)

(甲12c)「早期診断法として、ELISAにより糞便や気道分泌物中のウイルス抗原を検出する方法や、患者から採取した細胞を免疫蛍光染色する方法がある。」(745頁右欄4-6行)

(2)当審の判断
甲1号証に記載された発明は、そもそも、アデノウイルス抗原の免疫測定に関するものでないことから、主引例としての適格性を欠いたものである。そして、本件発明1と甲1号証(引用文献2)に記載された発明とを対比すると、アデノウイルス抗原の免疫測定について記載されていないことに加えて、上記第5の2(1)イで検討したとおり、甲1号証には、上記第5の2(1)アで検討した上記相違点1に係る構成が記載されていないから、上記相違点1が相違点となる。そして、上記相違点1は、上記第5の2(1)ア及びイで検討したとおり、甲5号証及び取消理由における引用文献1である甲9号証に記載されていない。
また、甲11号証には、「判定部の抗体固定化方法」として、「前記の洗浄剤にスキムミルクを10g加えて攪拌し、ニトロセルロースのブロッキング剤とし」、「ニトロセルロースのシート(ミリポア社製:HFM SPHF04020)を大きさ0.9cm×1.2cmに裁断した厚さ約220μm(支持体を含む)のシートを担体とし」、「このシートの上に、試料導入部側から0.5cm、吸液部側から0.7cmの箇所に、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンに対する抗hCGβ抗体(α-hCGβ)のリン酸緩衝溶液(以下PBS溶液で表す)(5mg/mL)を塗布し、40℃で8時間遮光状態で乾燥し」、「乾燥後、シートを上記のブロッキング剤に、ブロッキング剤が30シートあたり70mLの割合となるよう浸潤し、30℃で30分間シェイカーにてブロッキングした」旨記載されており(上記(甲11c)参照)、該記載より甲11号証には、本件発明1の「あらかじめブロッキング剤を添加した固相上で測定を行うこと」に相当する構成が記載されているといえるから、甲11号証には、上記相違点1に係る構成のうち、ブロッキング剤が、「固相上」に「あらかじめ」「添加」されたものである点が記載されているといえる。
しかしながら、甲11号証の非イオン性界面活性剤は、TritonX-100であって、これは、「ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ、ピログルタミン酸エステル、ポリオキシエチレン(15)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の」「非イオン性界面活性剤」ではない。
そうすると甲11号証には、上記相違点1に係る構成が記載されているとはいえない。
また、甲2?8、10及び12号証には、ブロッキング剤が、「固相上」に「あらかじめ」「添加」されたものである点が記載されていないから、上記相違点1に係る構成が記載されているとはいえない。
したがって、本件発明1、2、4及び6?8は、甲1号証に記載された発明及び甲2?12号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に想到できるものであるとはいえないから、申立人のかかる主張は、採用することができない。

3 サポート要件について
申立人は、訂正前の請求項1に係る発明に関し、本件明細書の発明の詳細な説明の実施例2において、ブロッキング剤を添加しないものは、非イオン性界面活性剤によるブランク低減効果が顕著に見られるとはいえず、また、S/N比も向上しているとはいえないことから、ブロッキング剤を添加しないものは、本件発明の課題を解決できるものであるとはいえない点、及び、実施例6において、HLB値が本件発明1で限定されている12?20の範囲内の界面活性剤であるHLB値18.1のポリオキシエチレン(41)ラウリルエーテル(花王製、エマルゲン130K)を用いた場合、その添加量が0.005?10重量%となるよう前処理液に添加したものは、ブランクが低く、高いS/N値を示しているが、15重量%及び20重量%となるよう前処理液に添加したものは、界面活性剤なしのものと比べてもブランクが低いとはいえず、また、S/N値も高いとはいえないから、HLB値18.1のポリオキシエチレン(41)ラウリルエーテル(花王製、エマルゲン130K)を15重量%及び20重量%となるよう前処理液に添加したものは、本件発明の課題を解決できるものであるとはいえない点から、訂正前の請求項1に係る発明は、本件発明の課題を解決できないものを含んでおり、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるといえるから、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない旨主張しているが、本件発明1は、訂正により、「検体中の抗原又は抗体との免疫反応を、・・・12.5?20のHLB値を有する非イオン性界面活性剤が0.005?10重量%の濃度で存在する液相中で起こし、次いで、あらかじめブロッキング剤を添加した固相上で測定を行う」旨限定されたから、上記理由は解消した。
そして、本件発明1を引用する本件発明2、4及び6?8に関しても同様に、上記理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、請求項1、2、4及び6?8に係る発明は、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、4及び6?8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2、4及び6?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項3及び5に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項3及び5に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体中の抗原又は抗体との免疫反応を、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ、ピログルタミン酸エステル、ポリオキシエチレン(15)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の12.5?20のHLB値を有する非イオン性界面活性剤が0.005?10重量%の濃度で存在する液相中で起こし、次いで、あらかじめブロッキング剤を添加した固相上で測定を行うことを特徴とする、検体中の抗原又は抗体の測定におけるブランク値の低減方法であって、検体中の抗原又は抗体の測定がアデノウイルス抗原の免疫測定を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、以下の工程(1)?(4)に従って実行される、測定対象物質の測定におけるブランク値の低減方法。
工程(1):測定対象物質を含有する試料と、前記測定対象物質と結合可能な抗体であってリガンドで修飾された抗体(一次抗体)を含む溶液と、前記測定対象物質と結合可能な抗体であって酵素で標識された抗体(二次抗体)を含む溶液とを混合し、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ、ピログルタミン酸エステル、ポリオキシエチレン(15)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の12.5?20のHLB値を有する非イオン性界面活性剤が0.005?10重量%の濃度で存在する液相中で、免疫反応により前記一次抗体、前記測定対象物質および前記二次抗体のサンドイッチ複合体をつくる。
工程(2):前記サンドイッチ複合体を含む溶液を、あらかじめ前記リガンドと結合可能な物質を固相化した担体であって、あらかじめブロッキング剤を添加した固相化担体に触れさせて、前記複合体を前記固相化担体上の抗体に結合させる。
工程(3):前記固相化担体を洗浄液で洗浄することにより、前記固相化担体上の抗体に結合していない一次抗体および二次抗体を除去する。
工程(4):前記固相化担体に前記酵素の基質を含む液を添加し、前記固相化担体上で酵素による基質の化学変化量をモニタリングすることにより測定を行う。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤のHLB値が16?19である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
前記液相中の非イオン性界面活性剤の濃度が0.2?5重量%である、請求項1、2、又は4に記載の方法。
【請求項7】
検体が体液又は組織抽出液である、請求項1、2、4、又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びポリオキシエチレン(30)ノニルフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1、2、4、6、又は7に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-08-26 
出願番号 特願2014-65664(P2014-65664)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (G01N)
P 1 651・ 121- YAA (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 赤坂 祐樹  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 森 竜介
福島 浩司
登録日 2019-03-22 
登録番号 特許第6496980号(P6496980)
権利者 東洋紡株式会社
発明の名称 免疫測定方法  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ