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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61B
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61B
管理番号 1368074
異議申立番号 異議2019-700627  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-08-06 
確定日 2020-09-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6465551号発明「光干渉眼寸法測定装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6465551号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。 特許第6465551号の請求項1、2、4及び5に係る特許を維持する。 特許第6465551号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6465551号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成26年2月20日に出願され、平成31年1月18日にその特許権の設定登録がされ、同年2月6日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1?5に係る特許に対し、令和元年8月6日に特許異議申立人 小林勝(以下、単に「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年11月5日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和2年1月9日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年3月5日に申立人から意見書が提出され、さらに、同月31日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年6月4日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年7月31日に申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否

1 訂正の内容

(1)特許権者が令和2年6月4日にした訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、請求項1?5を一群の請求項として訂正することを求めるものであり、その具体的内容は、以下の訂正事項1?7のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。

(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に「取得した前記2次元断層画像に基づいて被検眼の眼寸法の測定値を算出する光干渉眼寸法測定装置において、」と記載されているのを、「取得した前記2次元断層画像に基づいて被検眼の測定対象面の位置を特定し、特定した前記測定対象面の位置に基づいて前記測定対象面間の距離の測定値を算出する光干渉眼寸法測定装置において、前記測定対象面は、角膜前面、角膜後面、水晶体前面、水晶体後面及び網膜表面の少なくとも2つであり、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2及び5も同様に訂正する。)

(訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項1に「前記表示手段に表示された被検眼内部の前記2次元断層画像に対して1つ以上の位置を任意に指定する指定手段をさらに備え、」と記載されているのを、「前記表示手段に表示された被検眼内部の前記2次元断層画像に含まれる前記測定対象面のうち前記測定対象面間の距離の測定値を算出するための2つの面の位置のそれぞれに対して新たな位置を指定可能な指定手段をさらに備え、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2及び5も同様に訂正する。)

(訂正事項3)
特許請求の範囲の請求項1に「該指定手段により指定された位置に基づいて測定値を補正する」と記載されているのを、「該指定手段により指定された前記新たな位置に基づいて前記測定対象面間の距離の測定値を補正し、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2及び5も同様に訂正する。)

(訂正事項4)
特許請求の範囲の請求項1に「ことを特徴とする光干渉眼寸法測定装置。」と記載されているのを、「前記表示手段に表示された被検眼内部の前記2次元断層画像に対して被検眼の深さ方向(Z方向)に対して垂直方向の位置を1つ以上指定する指定手段をさらに有し、指定された1つ以上の位置(光軸)の被検眼の深さ方向の1次元画像(Aスキャン画像)を1つ以上表示する、光干渉眼寸法測定装置。」(請求項1の記載を引用する請求項2及び5も同様に訂正する。)

(訂正事項5)
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(訂正事項6)
特許請求の範囲の請求項4に「取得した前記2次元断層画像に基づいて被検眼の眼寸法の測定値を算出する光干渉眼寸法測定装置において、」と記載されているのを、「取得した前記2次元断層画像に基づいて被検眼の測定対象面の位置を特定し、特定した前記測定対象面の位置に基づいて前記測定対象面間の距離の測定値を算出する光干渉眼寸法測定装置において、」に訂正する。(請求項4の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)

(訂正事項7)
特許請求の範囲の請求項5に「請求項2?4のいずれかに記載の光干渉眼寸法測定装置。」と記載されているのを、「請求項1、2又は4のいずれかに記載の光干渉眼寸法測定装置。」に訂正する。

(2)訂正の単位について
訂正前の請求項1?5について、請求項2及び3は、請求項1を引用するものであって、訂正事項1?4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、請求項5は、請求項1又は4を引用するものであって、訂正事項1?4によって記載が訂正される請求項1又は訂正事項6によって記載が訂正される請求項4に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1?5に対応する訂正後の請求項1?5は、一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項〔1?5〕に対して請求されたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、「光干渉眼寸法測定装置」が、「取得した前記2次元断層画像に基づいて被検眼の測定対象面の位置を特定し、特定した前記測定対象面の位置に基づいて前記測定対象面間の距離の測定値を算出する」ことを発明特定事項とすることにより、眼寸法の「測定値」をより具体的に特定し、さらに限定するものである。その上で、訂正事項1は、「前記測定対象面は、角膜前面、角膜後面、水晶体前面、水晶体後面及び網膜表面の少なくとも2つであり、」との発明特定事項を追加することにより、「前記測定対象面」を具体的に特定し、さらに限定するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項1により訂正される内容は、本件特許に係る出願の願書に添付した明細書の【0030】「演算装置64は、受光素子26からの干渉信号をフーリエ変換することによって、被検眼100の各部位(角膜102の前後面、水晶体104の前後面、網膜106の表面)の位置を特定し、被検眼100の眼軸長を算出する。」、【0016】「上記のように、本発明にかかる眼寸法測定装置は、得られた複数の干渉信号に基づいて被検眼内部の2次元断層画像を取得し、取得した2次元断層画像から被検眼内部の測定対象部位の位置を特定すると共に、取得した2次元断層画像を表示し、視覚的に測定結果をより精密に評価できるため、より正確な眼軸長などの眼寸法測定が可能になるのである。」、【0043】「また、上記説明では、補正する位置が角膜前面位置(270)と網膜位置(280)になっているが、角膜後面位置、水晶体前面位置や水晶体後面位置も選択可能である。」、【0004】「特許文献1及び2に開示されているような従来の眼科装置では、被検眼を検査する際は、被検眼に照射される光の光軸が被検眼の視軸と一致するように調整し、その1つの光軸から得られる干渉信号から被検眼内部の測定対象部位の位置を特定し、特定した位置から前房深度(ACD)や眼軸長などの値を算出し、それらの値をモニタなどに表示する」などの記載、及び本件特許に係る出願の願書に添付した図面、例えば、表示画面の1例である図9には、眼軸長、前房深度、レンズ及び角膜厚の測定値が示されていることが見て取れることなどから理解できる。
よって、訂正事項1は、本件特許に係る出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について

ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、「指定手段」が、「前記表示手段に表示された被検眼内部の前記2次元断層画像に含まれる前記測定対象面のうち前記測定対象面間の距離の測定値を算出するための2つの面の位置のそれぞれに対して新たな位置を指定可能」であることを発明特定事項とすることにより、任意に指定する「位置」をより具体的に特定し、さらに限定するものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項2により訂正される内容は、本件特許明細書等の【0037】「もし、検者が画像表示部210の2次元断層画像に表示された被検眼100の角膜前面位置(220)と網膜位置(230)が適切ではないと判断した場合は、検者は、再測定をするか、又はキャリパーボタン240を押して手動で、被検眼100の角膜前面位置や網膜位置などを指定して補正することもできる。」、【0016】「上記のように、本発明にかかる眼寸法測定装置は、得られた複数の干渉信号に基づいて被検眼内部の2次元断層画像を取得し、取得した2次元断層画像から被検眼内部の測定対象部位の位置を特定すると共に、取得した2次元断層画像を表示し、視覚的に測定結果をより精密に評価できるため、より正確な眼軸長などの眼寸法測定が可能になるのである。」、【0043】「また、上記説明では、補正する位置が角膜前面位置(270)と網膜位置(280)になっているが、角膜後面位置、水晶体前面位置や水晶体後面位置も選択可能である。」などの記載から理解できる。
よって、訂正事項2は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について

ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、訂正事項1及び2の訂正に伴って「指定された位置」を「指定された前記新たな位置」に訂正し、「測定値」を「前記測定対象面間の距離の測定値」に訂正することで、特許請求の範囲の記載の整合性を図るものである。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項3により訂正される内容は、訂正事項1及び2により訂正される内容と実質的に同じである。
よって、訂正事項3は、訂正事項1及び2と同じ理由により、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について

ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は、請求項1に訂正前の請求項3に記載の内容を追加するものである。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項4により訂正される内容は、訂正前の請求項3の記載に対応するものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、発明特定事項の直列的付加に該当するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5について

ア 訂正の目的の適否
訂正事項5は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項5は、請求項3を削除するものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項6について

ア 訂正の目的の適否
訂正事項6は、「光干渉眼寸法測定装置」が、「取得した前記2次元断層画像に基づいて被検眼の測定対象面の位置を特定し、特定した前記測定対象面の位置に基づいて前記測定対象面間の距離の測定値を算出する」ことを発明特定事項とすることにより、眼寸法の「測定値」をより具体的に特定し、さらに限定するものである。
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項6により訂正される内容は、本件特許明細書等の【0030】「演算装置64は、受光素子26からの干渉信号をフーリエ変換することによって、被検眼100の各部位(角膜102の前後面、水晶体104の前後面、網膜106の表面)の位置を特定し、被検眼100の眼軸長を算出する。」、【0016】「上記のように、本発明にかかる眼寸法測定装置は、得られた複数の干渉信号に基づいて被検眼内部の2次元断層画像を取得し、取得した2次元断層画像から被検眼内部の測定対象部位の位置を特定すると共に、取得した2次元断層画像を表示し、視覚的に測定結果をより精密に評価できるため、より正確な眼軸長などの眼寸法測定が可能になるのである。」、【0043】「また、上記説明では、補正する位置が角膜前面位置(270)と網膜位置(280)になっているが、角膜後面位置、水晶体前面位置や水晶体後面位置も選択可能である。」、【0004】「特許文献1及び2に開示されているような従来の眼科装置では、被検眼を検査する際は、被検眼に照射される光の光軸が被検眼の視軸と一致するように調整し、その1つの光軸から得られる干渉信号から被検眼内部の測定対象部位の位置を特定し、特定した位置から前房深度(ACD)や眼軸長などの値を算出し、それらの値をモニタなどに表示する」などの記載、及び本件特許明細書等の図面、例えば、表示画面の1例である図9には、眼軸長、前房深度、レンズ及び角膜厚の測定値が示されていることが見て取れることなどから理解できる。
よって、訂正事項6は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)訂正事項7について

ア 訂正の目的の適否
訂正事項7は、請求項3の削除に伴い、引用する請求項の記載を訂正するものであるから、 特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項7は、請求項3の削除に伴い、引用する請求項の記載を訂正するものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 小括
上記のとおり、訂正事項1?7に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明(以下、それぞれ請求項の番号に応じて「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4及び5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、本件特許の請求項3は、本件訂正により削除されている。

(本件発明1)
「【請求項1】
光源からの光が、被検眼に対し複数の異なる位置に入射する入射手段と、
該入射手段を用いて取得される複数の干渉信号に基づいて被検眼内部の2次元断層画像を取得する2次元断層画像取得手段と、
取得した該2次元断層画像を表示する表示手段を有し、
取得した前記2次元断層画像に基づいて被検眼の測定対象面の位置を特定し、特定した前記測定対象面の位置に基づいて前記測定対象面間の距離の測定値を算出する光干渉眼寸法測定装置において、
前記測定対象面は、角膜前面、角膜後面、水晶体前面、水晶体後面及び網膜表面の少なくとも2つであり、
前記表示手段に表示された被検眼内部の前記2次元断層画像に含まれる前記測定対象面のうち前記測定対象面間の距離の測定値を算出するための2つの面の位置のそれぞれに対して新たな位置を指定可能な指定手段をさらに備え、該指定手段により指定された前記新たな位置に基づいて前記測定対象面間の距離の測定値を補正し、
前記表示手段に表示された被検眼内部の前記2次元断層画像に対して被検眼の深さ方向(Z方向)に対して垂直方向の位置を1つ以上指定する指定手段をさらに有し、指定された1つ以上の位置(光軸)の被検眼の深さ方向の1次元画像(Aスキャン画像)を1つ以上表示する、光干渉眼寸法測定装置。」

(本件発明2)
「【請求項2】
前記入射手段により取得される複数の干渉信号を平均化処置して被検眼の深さ方向の1次元画像(Aスキャン画像)を表示することを特徴とする請求項1に記載の光干渉眼寸法測定装置。」

(本件発明4)
「【請求項4】
光源からの光が、被検眼に対し複数の異なる位置に入射する入射手段と、
該入射手段を用いて取得される複数の干渉信号に基づいて被検眼内部の2次元断層画像を取得する2次元断層画像取得手段と、
取得した該2次元断層画像を表示する表示手段を有し、
取得した前記2次元断層画像に基づいて被検眼の測定対象面の位置を特定し、特定した前記測定対象面の位置に基づいて前記測定対象面間の距離の測定値を算出する光干渉眼寸法測定装置において、
前記表示手段に表示された被検眼内部の前記2次元断層画像に対して被検眼の深さ方向(Z方向)に対して垂直方向の位置を1つ以上指定する指定手段をさらに備え、該指定手段により指定された1つ以上の位置(光軸)の被検眼の深さ方向の1次元画像(Aスキャン画像)を1つ以上表示することを特徴とする光干渉眼寸法測定装置。」

(本件発明5)
「【請求項5】
前記表示手段に被検眼内部の前記1次元画像と前記2次元断層画像を並列して表示することを特徴とする請求項1、2又は4のいずれかに記載の光干渉眼寸法測定装置。」

第4 取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正前の請求項1?5に係る特許に対して、当審が令和2年3月31日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。

理由(進歩性)
1 請求項1に係る発明は、甲第5号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 請求項2及び5に係る発明は、甲第5号証に記載された発明、甲第1号証に記載された技術事項及び甲第2号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

第5 甲号証の記載
申立人が提出した甲第1号証?甲第7号証(以下「甲1」?「甲7」という。)は、以下のとおりである。

甲1:特開2008-73099号公報
甲2:特開2012-161425号公報
甲3:特開2008-154950号公報
甲4:米国特許出願公開第2008/0100612号明細書
甲5:特開2010-191号公報
甲6:特開2012-75641号公報
甲7:特開2011-214967号公報

1 甲1について
(1)本件特許出願前に頒布された甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同様。)。

(甲1ア)
「【0075】
[全体構成]
この実施形態に係る眼底観察装置1は、図1に示すように、図23、図24の眼底カメラと同様の機能を有する眼底カメラユニット1Aと、光画像計測装置(OCT装置)の光学系を格納したOCTユニット150と、各種の演算処理や制御処理等を実行する演算制御装置200とを含んで構成されている。
・・・
【0077】
〔眼底カメラユニットの構成〕
眼底カメラユニット1Aは、光学的に取得されるデータ(撮像装置10、12により検出されるデータ)に基づいて被検眼の眼底の表面の2次元画像を形成する装置であり、図23に示した従来の眼底カメラ1000とほぼ同様の外観構成を有している。また、眼底カメラユニット1Aは、図24に示した従来の光学系と同様に、被検眼Eの眼底Efを照明する照明光学系100と、この照明光の眼底反射光を撮像装置10に導く撮影光学系120とを備えている。
・・・
【0092】
この実施形態の撮影光学系120には、走査ユニット141と、レンズ142とが設けられている。走査ユニット141は、OCTユニット150から出力される光(信号光LS;後述する。)の眼底Efに対する照射位置を走査するための構成を具備し、この発明の「走査手段」の一例として作用するものである。
・・・
【0100】
〔OCTユニットの構成〕
次に、図3を参照しつつOCTユニット150の構成について説明する。同図に示すOCTユニット150は、光学的に取得されるデータ(後述のCCD184により検出されるデータ)に基づいて眼底の断層画像を形成するための装置である。
【0101】
このOCTユニット150は、従来の光画像計測装置とほぼ同様の光学系を備えている。すなわち、OCTユニット150は、光源から出力された光を参照光と信号光とに分割するとともに、参照物体を経由した参照光と被測定物体(眼底Ef)を経由した信号光とを重畳して干渉光を生成する干渉計と、この干渉光を検出し、その検出結果としての信号(検出信号)を演算制御装置200に向けて出力する手段とを具備している。演算制御装置200は、この信号を解析することにより被測定物体(眼底Ef)の断層画像を形成する。」
・・・
【0144】
(画像形成部)
画像形成部220は、眼底カメラユニット1Aの撮像装置10、12からの映像信号に基づいて眼底画像の画像データを形成する処理と、OCTユニット150のCCD184からの検出信号に基づいて眼底Efの断層画像の画像データを形成する処理とを行う。画像形成部220は、画像形成ボード208や通信インターフェイス209等を含んで構成される。なお、本明細書において、「画像」と、それに対応する「画像データ」とを同一視することがある。」

(甲1イ)
「【0222】
[使用形態]
以上のような構成を有する眼底観察装置1の使用形態について説明する。図10に示すフローチャートは、それぞれ、眼底観察装置1の使用形態の一例を表している。また、図11?図14は、この使用形態において表示される表示画面の一例を表している。
【0223】
まず、検者は、操作部240Bを操作して、図11に示す眼底観察画面400を表示部240Aに表示させるとともに、眼底画像Ef′を眼底観察画面400に表示させる(S1)。
【0224】
検者が、操作部240Bを操作して、表示された眼底画像Ef′上の画像領域を指定すると(S2)、断層画像形成部231は、画像記憶部212に記憶された断層画像Gi(i=1?m)に基づいて、指定された画像領域を断面とする断層画像Gを形成する(S3)。制御部210は、この断層画像Gを眼底観察画面400に表示させる(S4)。眼底観察画面400は、断層画像Gと眼底画像Ef′とを並べて表示するようになっている。
・・・
【0239】
層位置解析部232は、断層画像Gを解析し、この断層画像Gにおける眼底Efの所定の層の位置(層の境界位置)を求める(S5)。制御部210は、求められた層の位置(境界位置)を示す画像を断層画像G上に重畳表示させる(S6)。
【0240】
図14は、図11に示した眼底観察画面400について、ステップS6で層の境界位置を示す画像を表示したときの表示態様の一例を表している。図14に示す眼底観察画面400の眼底画像G上には、第1?第4の層位置画像L1?L4が表示されている。
【0241】
ここで、第1の層位置画像L1は、内境界膜(眼底Efの表皮)に相当する位置を示している。また、第2の層位置画像L2は、神経繊維層の最深部(神経繊維層と神経節細胞層との境界)に相当する位置を示している。また、第3の層位置画像L3は、視細胞の内接・外接(内顆粒層と外網状層との境界)に相当する位置を示している。また、第4の層位置画像L4は、網膜色素上皮層に相当する位置を示している。各層位置画像L1?L4は、断面位置画像T上の各位置(各画素)毎に表示されている。また、層位置画像L1?L4は、それぞれの表示色を相異させるなどして、各層位置画像L1?L4を識別可能とすることが望ましい。
【0242】
続いて、眼底厚演算部233は、ステップS5で求められた断層画像Gにおける眼底Efの所定の層の位置に基づいて、眼底Efの所定部位の厚さを演算する(S7)。
【0243】
このステップS7の処理の一例として、図14に示す第1?第4の層位置画像L1?L4が得られる場合、眼底厚演算部233は、たとえば、第1の層位置画像L1と第2の層位置画像L2との間の距離(神経繊維層厚)と、第1の層位置画像L1と第3の層位置画像L3との間の距離(網膜厚)と、第1の層位置画像L1と第4の層位置画像L4との間の距離(網膜厚)とのうちの少なくともいずれか1つを演算する。
【0244】
次に、眼底厚グラフ形成部234は、眼底厚演算部233による演算結果に基づいて、眼底Efの所定部位の厚さの分布を示す眼底厚グラフ情報を形成する(S8)。この眼底厚グラフ情報は、深度方向(z方向)に直交する方向の距離(又は基準位置からの画素数)を定義域とし、この定義域の各位置における所定部位の厚さ(深度方向の距離)を値域とするグラフである。制御部210は、形成された眼底厚グラフ情報を、眼底観察画面400の眼底厚グラフ表示部403に表示させる(S9)。それにより、眼底観察画面400には、断面位置画像(T)が重畳表示された眼底画像Ef′と、層位置画像(L1?L4)が重畳表示された断層画像Gと、眼底厚グラフ情報とが並んで表示される。
【0245】
たとえばステップS7において第1の層位置画像L1と第3の層位置画像L3との間の距離(網膜厚)が演算された場合、図11や図14に示す眼底厚グラフRTが形成されて、眼底厚グラフ表示部403に表示されることになる。この眼底厚グラフ情報RTは、断層画像Gの基準位置(画像の左端位置)からの画素数を定義域として形成されたものである。
【0246】
なお、図12に示す眼底厚グラフ情報RT′は、断面位置画像T′に対応する断層画像G′を基にして同様の処理により形成された眼底厚グラフ情報である。また、図13に示す眼底厚グラフ情報RT″は、断面位置画像T″に対応する断層画像G″を基にして同様の処理により形成された眼底厚グラフ情報である。
【0247】
以上で、指定された断面位置に対応する断層画像の表示処理、層位置画像の表示処理、眼底厚グラフ情報の表示処理は終了となる。
【0248】
続いて、図15に示すフローチャートを参照しつつ、層位置画像の位置を手作業で変更するときの使用形態の一例を説明する。図16、図17は、この使用形態において表示される表示画面の一例を表している。また、図18?図20は、この使用形態における層位置画像の位置の変更方法の一例を表している。
【0249】
ここで、層位置画像の位置の変更を行う必要がある場合について説明する。眼底血管が存在する部分の断層画像を取得すると、眼底血管や血液による信号光LSの散乱などの影響により、眼底血管の深部に相当する画像領域が不明瞭になることがある。この不明瞭な画像領域に層の境界が存在する場合などには、層位置を求める際の精度が低下するおそれがある。このような場合、断層画像を観察しつつ層位置を手作業で変更できると便利である。
【0250】
そのためにまず、検者は、眼底観察画面400の編集ボタン410を操作部240Bによって操作する(S11)。この操作は、マウス206のクリック操作などにより行う。
【0251】
制御部210は、編集ボタン410が操作されたことに対応し、たとえば図16に符号420?440で示すような編集ツールを断層画像表示部401に表示させる(S12)。図16に示す編集ツールは、層位置画像指定部420と、断層画像切替部430と、断層画像識別情報表示部440とを含んでいる。
【0252】
層位置画像指定部420は、編集対象とする層位置画像を検者が指定するために用いられる。層位置画像指定420には、各層位置画像毎に指定欄が設けられている。なお、図16等において、内境界膜に相当する層位置画像L1は緑色(Green)で表示され、神経繊維層に相当する層位置画像L2は赤色(Red)で表示され、視細胞の内接・外接に相当する層位置画像L3は黄色(Yellow)で表示され、網膜色素上皮層に相当する層位置画像L4は青色(Blue)で表示されている。
【0253】
層位置画像指定部420には、層位置画像L1を指定するための「Green」の指定欄と、層位置画像L2を指定するための「Red」の指定欄と、層位置画像L3を指定するための「Yellow」の指定欄と、層位置画像L4を指定するための「Blue」の指定欄とが設けられている。検者は、各指定欄をマウス206でクリックすることにより、当該層位置画像の指定/指定解除を切り替えることができる。
【0254】
断層画像切替部430は、層位置画像の編集対象とする断層画像Gを切り替えるために操作される。断層画像Gは所定の順序が付されて保管されている。断層画像切替部430を操作することにより、この所定の順序に応じて異なる断層画像Gを順次に表示させることができる。たとえば、断層画像Gとして断層画像Giが表示されているときに、表示画像の順序を戻す操作を断層画像切替部430で行うと(図16において左方向を指す三角形のボタンをクリックすると)、一つ前の順序の断層画像G(i-1)が断層画像表示部401に表示される。また、表示画像の順序を進める操作を行うと(右方向を指す三角形のボタンをクリックすると)、一つ後の順序の断層画像G(i+1)が表示される。このようにして表示画像が切り替えられると、その断層画像Gの識別情報(画像順序等)が断層画像識別情報表示部440に表示される。なお、ここで説明した処理は制御部210等によって実行される。
【0255】
編集ツールが表示されると、検者は、必要に応じて断層画像Gを切り替え表示させた後に、上記の層位置画像指定部420を用いて編集対象とする層位置画像を指定する(S13)。また、検者は、図17に示すように、層位置画像に対して編集を施す領域(編集領域)Mを指定する(S14)。なお、ステップS13とステップS14は、どちらを先に行ってもよい。
【0256】
編集対象の層位置画像と編集領域Mとが指定されると、制御部210は、指定された層位置画像について、編集領域M内における部分画像を断層画像表示部401から消去する(S15)。それにより、編集対象として指定されていない層位置画像については、そのまま表示され、編集対象として指定された層位置画像については、編集領域Mの外部の部分のみが表示されることになる。
【0257】
図17は、層位置画像指定部420の「Yellow」の指定欄と「Blue」の指定欄とが指定された場合を示しており、「Green」、「Red」に対応する層位置画像L1、L2はそのまま表示され、「Yellow」、「Blue」に対応する層位置画像L3、L4は、編集領域M内の部分が消去されている。
【0258】
図18は、この図17に示す状態における層位置画像L3、L4の周辺を表す概略拡大図である。図18には、マウス206によって操作されるマウスポインタPが記載されている。
【0259】
検者は、断層画像Gを観察して、視細胞の内接・外接に相当する画像位置(層位置画像L3に対応する層位置)を把握するとともに、操作部240Bを操作して、把握した画像位置を断層画像G上に指定する(S16)。
【0260】
より具体的に説明すると、検者がマウス206を操作して目的の画像位置にマウスポインタPを配置させてクリックを行うと、制御部210は、その画像位置に点画像Qが表示させるとともに、断層画像G上における当該画像位置の座標値(前述のxyz座標系)を取得する。検者は、この要領で、視細胞の内接・外接に相当する画像位置を複数指定する(図19参照)。
【0261】
制御部210は、指定された画像位置を結ぶ画像を編集領域M内に形成して表示させる(S17)。この処理は、たとえば次のようにして行う。
【0262】
図19の紙面左方向から右方向に向かって画像位置を順次に指定していく場合に(ステップS16)、編集領域Mの右端から所定距離(所定ピクセル数)以内の領域に画像位置が指定されたことに対応して、制御部210は、それまでに指定された複数の画像位置を結ぶように画像(編集画像)L3′を形成して表示させる(図20参照)。
【0263】
このとき、制御部210は、編集領域Mの左端、右端における層位置画像L3の位置に編集画像L3′の端部を合わせるようにして編集画像L3′を形成する。すなわち、制御部210は、編集領域Mの左端、右端において層位置画像L3と編集画像L3′とが滑らかに接続するように編集画像L3′を形成する。
【0264】
このようにして層位置画像L3を変更することができる。層位置画像L4についても同様にして変更することができる。以上で、層位置画像の位置を手作業で変更するときの眼底観察装置1の使用形態の説明を終了する。」

(甲1ウ)
「【0265】
[作用・効果]
以上のような眼底観察装置1の作用及び効果について説明する。
【0266】
この眼底観察装置1は、被検眼Eの眼底Efの表面の2次元画像(眼底画像Ef′)を形成する機能と、眼底Efの断層画像Giを形成する機能とを備えている。更に、眼底観察装置1は、表示部240Aに表示された眼底画像Ef′の画像領域が操作部240Bにより指定されたときに、断層画像Giに基づいて、指定された画像領域に対応する断面を有する断層画像Gを形成するとともに、この断層画像Gにおける眼底Efの所定の層の位置を求めるように作用する。そして、眼底観察装置1は、眼底画像Ef′及び指定された画像領域を示す断面位置画像Tと、断層画像G及び上記所定の層の位置を示す層位置画像L1?L4とを並べて表示部240Aに表示させるように作用する。
【0267】
ここで、断面位置画像Tは、この発明の「指定位置情報」の一例に相当する。また、層位置画像L1?L4は、この発明の「層位置情報」及び「線状画像」の一例に相当するものである。
【0268】
このような眼底観察装置1によれば、検者は、眼底画像Ef′と、断層画像Gと、眼底画像Ef′上における断層画像Gの位置と、眼底画像Gにおける所定の層の位置とを把握することができるので、眼底Efの表面の状態と深層組織の状態の双方を詳細に観察して把握することが可能である。
【0269】
また、この眼底観察装置1は、断層画像Gにおける眼底の所定の層の位置に基づいて、操作部240Bにより指定された眼底画像Ef′上の画像領域の各位置における眼底Efの所定部位の厚さを演算するように作用する。ここで、眼底Efの所定部位とは、前述のように、眼底Efの複数の層のうちの1つ以上の層の部位を意味している。
【0270】
このような作用を奏する眼底観察装置1によれば、指定された画像領域の各位置における眼底Efの所定部位の厚さを求めることができるので、眼底Efの層の厚さを4分円にて呈示する従来の装置と比較して、眼底Efの層の厚さを高い精度で計測することが可能である。
【0271】
更に、眼底観察装置1によれば、指定された眼底画像Ef′上の画像領域の各位置における眼底Efの所定部位の厚さを示す眼底厚グラフ情報RTを表示部240Aに表示させるように作用することから、上記のように高い精度で計測された眼底Efの層の厚さを分かり易く表示できるとともに、従来の4分円による表示態様よりも高い精度で眼底Efの層の厚さの計測結果を呈示することができる。
【0272】
また、眼底観察装置1は、表示部240Aに表示された層位置情報(層位置画像L1?L4)の表示位置が操作部240Bにより変更されたときに、変更後の層位置情報が示す眼底Efの所定の層の位置に基づいて、眼底Efの所定部位の厚さを演算するように作用する。更に、層位置情報変更後の眼底Efの所定部位の厚さの演算結果を同様の眼底厚グラフ情報として呈示するように作用する。
【0273】
このような作用を奏する眼底観察装置1によれば、眼底血管の影響等により断層画像Gの一部が不明瞭である場合などにおいて、眼底観察装置1が層位置情報を高精度で検出できない場合であっても、検者が眼底画像Gを参照しつつ層位置情報の位置を変更できるので、眼底Efの層の位置ないしは所定部位の厚さを高い精度で求めることができ、検者に呈示することができる。」

(甲1エ)図1


(甲1オ)図3


(甲1カ)図5


(甲1キ)図7


(図1ク)図11


(甲1ケ)図14


(甲1コ)図16


(甲1サ)図17


(甲1シ)図18


(甲1ス)図19


(甲1セ)図20


(2)甲1に記載された技術事項
上記(甲1カ)図5及び上記(甲1キ)図7から、演算制御装置200は、制御部210(主制御部211、画像記憶部212)、画像形成部220、画像処理部230(断層画像形成部231、層位置解析部232、眼底厚演算部233、眼底厚グラフ形成部234)、UI240(操作部240B、表示部240A)を含むことが見て取れることから、上記(1)の記載及び図面を総合すると、甲1には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

「眼底カメラユニット1Aと、OCTユニット150と、演算制御装置200とを含んで構成され、
眼底カメラユニット1Aは、照明光学系100と撮影光学系120とを備え、
撮影光学系120には、走査ユニット141が設けられ、走査ユニット141は、OCTユニット150から出力される光(信号光LS)の眼底Efに対する照射位置を走査するための構成を具備し、
OCTユニット150は、光源から出力された光を参照光と信号光とに分割するとともに、参照物体を経由した参照光と被測定物体(眼底Ef)を経由した信号光とを重畳して干渉光を生成する干渉計と、この干渉光を検出し、その検出結果としての信号(検出信号)を演算制御装置200に向けて出力する手段とを具備し、
演算制御装置200は、制御部210(主制御部211、画像記憶部212)、画像形成部220、画像処理部230(断層画像形成部231、層位置解析部232、眼底厚演算部233、眼底厚グラフ形成部234)、UI240(操作部240B、表示部240A)を含んで構成され、画像形成部220は、眼底カメラユニット1Aの撮像装置10、12からの映像信号に基づいて眼底画像の画像データを形成する処理と、OCTユニット150のCCD184からの検出信号に基づいて眼底Efの断層画像の画像データを形成する処理とを行う、眼底観察装置1であって、
まず、検者は、操作部240Bを操作して、眼底観察画面400を表示部240Aに表示させるとともに、眼底画像Ef′を眼底観察画面400に表示させ(S1)、検者が、操作部240Bを操作して、表示された眼底画像Ef′上の画像領域を指定すると(S2)、断層画像形成部231は、画像記憶部212に記憶された断層画像Gi(i=1?m)に基づいて、指定された画像領域を断面とする断層画像Gを形成し(S3)、制御部210は、この断層画像Gを眼底観察画面400に表示させ(S4)、層位置解析部232は、断層画像Gを解析し、この断層画像Gにおける眼底Efの所定の層の位置(層の境界位置)を求め(S5)、制御部210は、求められた層の位置(境界位置)を示す画像を断層画像G上に重畳表示させ(S6)、続いて、眼底厚演算部233は、ステップS5で求められた断層画像Gにおける眼底Efの所定の層の位置に基づいて、眼底Efの所定部位の厚さを演算し(S7)、次に、眼底厚グラフ形成部234は、眼底厚演算部233による演算結果に基づいて、眼底Efの所定部位の厚さの分布を示す眼底厚グラフ情報を形成し(S8)、制御部210は、形成された眼底厚グラフ情報を、眼底観察画面400の眼底厚グラフ表示部403に表示させ(S9)、
層位置画像の位置を手作業で変更する必要がある場合、
まず、検者は、眼底観察画面400の編集ボタン410を操作部240Bによって操作し(S11)、制御部210は、編集ボタン410が操作されたことに対応し、編集ツールを断層画像表示部401に表示させ(S12)、編集ツールが表示されると、検者は、編集対象とする層位置画像を指定し(S13)、また、検者は、層位置画像に対して編集を施す領域(編集領域)Mを指定し(S14)、編集対象の層位置画像と編集領域Mとが指定されると、制御部210は、指定された層位置画像について、編集領域M内における部分画像を断層画像表示部401から消去し(S15)、検者は、断層画像Gを観察して、操作部240Bを操作して、把握した画像位置を断層画像G上に指定し(S16)、制御部210は、指定された画像位置を結ぶ画像を編集領域M内に形成して表示させ(S17)、変更後の層位置情報が示す眼底Efの所定の層の位置に基づいて、眼底Efの所定部位の厚さを演算し、更に、層位置情報変更後の眼底Efの所定部位の厚さの演算結果を同様の眼底厚グラフ情報として呈示する、
眼底観察装置1。」

2 甲2について
(1)本件特許出願前に頒布された甲2には、以下の事項が記載されている。

(甲2ア)
「【0006】
本明細書に開示する眼科装置は、光源と、光源からの光を被検眼の内部に照射すると共にその反射光を導く測定光学系と、光源からの光を参照面に照射すると共にその反射光を導く参照光学系と、測定光学系により導かれた反射光と参照光学系により導かれた反射光とが合成された干渉光を受光する受光素子と、受光素子で受光される干渉光から被検眼内部の測定対象部位の位置を特定する演算装置と、を有している。そして、測定光学系は、被検眼に照射される光の被検眼への入射角を被検眼の視軸に対して所定の角度範囲で変更する入射角度変更手段を有している。」

(甲2イ)
「【実施例1】
【0014】
図1に示すように、本実施例の眼科装置は、被検眼100を検査するための測定部10を有している。測定部10は、被検眼100から反射される反射光と参照光とを干渉させる干渉光学系14と、被検眼100の前眼部を観察する観察光学系50と、被検眼100に対して測定部10を所定の位置関係にアライメントするためのアライメント光学系(図示省略)を有している。アライメント光学系は、公知の眼科装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な説明は省略する。
【0015】
干渉光学系14は、光源12と、光源12からの光を被検眼の内部に照射すると共にその反射光を導く測定光学系と、光源12からの光を参照面に照射すると共にその反射光を導く参照光学系と、測定光学系により導かれた反射光と参照光学系により導かれた参照光とを合成した干渉光を受光する受光素子26によって構成されている。
【0016】
光源12は、波長掃引型の光源であり、出射される光の波長が所定の周期で変化するようになっている。光源12から出射される光の波長が変化すると、出射される光の波長に対応して、被検眼100の深さ方向の各部位から反射される光のうち参照光と干渉を生じる反射光の反射位置が被検眼の深さ方向に変化する。このため、出射される光の波長を変化させながら干渉光を測定することで、被検眼100の内部の各部位(すなわち、水晶体104や網膜106)の位置を特定することが可能となる。
【0017】
測定光学系は、ビームスプリッタ24と、ミラー28と、0点調整機構30と、ミラー34と、焦点調整機構40と、入射角調整機構46と、ホットミラー48によって構成されている。光源12から出射された光は、ビームスプリッタ24、ミラー28、0点調整機構30、ミラー34、焦点調整機構40、ガルバノミラー46、及びホットミラー48を介して被検眼100に照射される。被検眼100からの反射光は、ホットミラー48、ガルバノミラー46、焦点調整機構40、ミラー34、0点調整機構30、ミラー28、及びビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。0点調整機構30と焦点調整機構40と入射角調整機構46については、後で詳述する。
【0018】
参照光学系は、ビームスプリッタ24と参照ミラー22によって構成されている。光源12から出射された光の一部は、ビームスプリッタ24で反射され、参照ミラー22に照射され、参照ミラー22によって反射される。参照ミラー22で反射された光は、ビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。参照ミラー22とビームスプリッタ24と受光素子26は、干渉計20内に配置され、その位置が固定されている。このため、本実施例の眼科装置では、参照光学系の参照光路長は一定で変化しない。
【0019】
受光素子26は、参照光学系により導かれた光と測定光学系により導かれた光とを合成した干渉光を検出する。受光素子26としては、例えば、フォトダイオードを用いることができる。
・・・
【0023】
入射角調整機構46は、ガルバノミラー46aと、ガルバノミラー46aを駆動する第4駆動装置60を備えている。ガルバノミラー46aは、光軸上に配置されており、光軸に対して所定の角度範囲(例えば、±1°)で傾動可能となっている。第4駆動装置60がガルバノミラー46aを所定の角度範囲に振ることで、被検眼100に照射される光の入射位置と入射角が変化する。すなわち、図5に示すように、ガルバノミラー46aの振り角θに応じて、角膜102への光の入射位置と入射角が変化し、それによって、水晶体104への光の入射位置と入射角が変化し、さらに、網膜への光の入射位置も変化する。このため、水晶体104の法線方向が視軸からずれていても、水晶体104に略垂直に光を照射することができる。これにより、水晶体104からの反射光の強度が強くなり、水晶体104の位置を精度よく検出することができる。また、白内障等によって水晶体104に白濁部位があっても、その白濁部位を避けて光を照射することができる。これにより、水晶体104を透過する光の強度が強くなり、網膜106の位置を精度よく検出することができる。」

(甲2ウ)
「【0026】
次に、本実施例の眼科装置の制御系の構成を説明する。図2に示すように、眼科装置は演算装置64によって制御される。演算装置64は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)によって構成されている。演算装置64には、光源12と、第1?第4駆動装置54?60と、モニタ62と、観察光学系50が接続されている。演算装置64は、光源12のオン/オフを制御し、第1?第4駆動装置54?60を制御することで各機構16,30,40,46を駆動し、また、観察光学系50を制御して観察光学系50で撮像される前眼部像をモニタ62に表示する。また、演算装置64には、受光素子26が接続され、受光素子26で検出される干渉光の強度に応じた干渉信号が入力する。演算装置64は、受光素子26からの干渉信号をフーリエ変換することによって、被検眼100の各部位(角膜102の前後面、水晶体104の前後面、網膜106の表面)の位置を特定し、被検眼100の眼軸長を算出する。なお、演算装置64による被検眼100の各部位の位置を特定する処理の詳細については後述する。」

(甲2エ)
「【0027】
次に、本実施例の眼科装置を用いて眼軸長を測定する際の手順を説明する。図8に示すように、まず、検査者は図示しないジョイスティック等の操作部材を操作して、被検眼100に対して測定部10の位置合わせを行う(S10)。すなわち、演算装置64は、検査者の操作部材の操作に応じて、第1駆動装置54により位置調整機構16を駆動する。これによって、被検眼100に対する測定部10のxy方向(縦横方向)の位置とz方向(進退動する方向)の位置が調整される。また、演算装置64は、第2,第3駆動装置56,58を駆動して、0点調整機構30及び焦点調整機構40を調整する。これによって、光源12から被検眼100に照射される光の焦点の位置が被検眼100の所定の位置(例えば、角膜102の前面)となり、また、物体光路長と参照光路長が一致する0点の位置が被検眼100の所定の位置(例えば、角膜102の前面)となる。
【0028】
次に、演算装置64は、第4駆動装置60を駆動して、ガルバノミラー46aを走査角範囲内の1の走査角に調整する(S12)。これによって、光源12からの光は、調整された走査角に対応した入射位置及び入射角度で被検眼100に入射することとなる。
【0029】
ガルバノミラー46aの調整が終わると、演算装置64は、光源12から照射される光の周波数を変化させながら、受光素子26で検出される信号を取り込む(S14)。既に説明したように、光源12から照射される光の周波数を変化させると、測定光と参照光とが干渉して干渉波を生じる位置が被検眼100の深さ方向に変化する。このため、受光素子26から出力される干渉信号は、図6に示すように、信号強度が時間によって変化する信号となり、この信号には被検眼100の各部(角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)から反射された各反射光と参照光とを合成した干渉波による信号となる。そこで、演算装置64は、受光素子26から入力する信号をフーリエ変換することで、その信号から被検眼100の各部(角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)から反射された反射光による干渉信号成分を分離する。これにより、演算装置64は、被検眼100の各部の位置を特定することができる。なお、光源12から照射される光の周波数を変化させることで、干渉波が生じる位置を被検眼100の深さ方向に変化させることを、本明細書ではAスキャンという。
【0030】
次に、演算装置64は、上述したステップS14の測定を、全ての走査角(すなわち、全ての入射位置及び入射角)について実施したか否かを判断する(S16)。全ての走査角についてステップS14の測定を実施していない場合(ステップS16でNO)は、ステップS12に戻って、ステップS12からの処理が繰り返される。これによって、ガルバノミラー46aを走査する各走査角について、Aスキャンにより得られる干渉信号が取得される。なお、ガルバノミラー46aの走査角(振り角θ)を変化させることで、光源12からの光が入射する位置および入射角度を変化させることを、本明細書ではBスキャンという。
【0031】
全ての走査角についてステップS14の測定を実施している場合(ステップS16でYES)は、演算装置64は、各走査角について得られた干渉信号から、被検眼100の各部位(すなわち、角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)の位置を特定する(S18)。具体的には、各走査角についてステップS14の処理を実行すると、各走査角について干渉信号の情報(Aスキャン情報)が取得される。したがって、図7に示すように、各走査角の数(n個)だけ干渉信号情報(Aスキャン情報)が並んだ2次元情報が得られる。このため、演算装置64は、各干渉信号情報に含まれる被検眼100の各部位(すなわち、角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)の位置情報の平均値を算出することで、被検眼100の各部位の位置を特定する。被検眼100の各部位の位置が特定できると、演算装置64は、被検眼100の眼軸長を算出する。このように算出された被検眼100の各部位の位置及び眼軸長は、モニタ62に表示される。
【0032】
上述の説明から明らかように、本実施例に係る眼科装置では、ガルバノミラー46aの振り角θを走査することで、被検眼100への光の入射位置及び入射角度を所定の範囲で走査する。そして、ガルバノミラー46aの各走査角(振り角θ)について眼軸方向の干渉信号波形を取得し、これらの干渉信号波形から被検眼100の各部位(すなわち、角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)の位置を特定する。したがって、水晶体104に様々な入射角度で光が入射されてAスキャン情報が取得されるため、得られた測定結果の中には水晶体104からの反射光の強度が充分となるAスキャン情報が含まれることとなる。したがって、水晶体104の位置を精度良く特定することができる。また、水晶体104に光が入射する位置が変化するため、白内障等で水晶体104に白濁部位があったとしても、得られた測定結果の中には白濁部位を避けて測定されたAスキャン情報が含まれることとなる。したがって、白内障等で水晶体104に白濁部位があったとしても、被検眼100の各部位の位置を精度良く特定することができる。」

(甲2オ)
「【0038】
また、上述した実施例では、Aスキャン及びBスキャンをすることにより得られた二次元情報を単純に平均することで、被検眼100の各部位の位置を特定したが、このような方法に限られない。例えば、網膜106とその他の部位(角膜102、水晶体104)を特定する場合とで、その方法を変更してもよい。すなわち、網膜106からの反射光による干渉信号は、Bスキャンによる依存性が小さい。網膜106では入射した光が拡散反射するため、入射角による依存性は小さいためである。そこで、網膜106の位置を特定する際は、全ての走査角について得られた位置情報を加算して平均を取ることで、網膜106の位置を特定する。全ての走査角について得られた位置情報を加算することで、ノイズが除去され、S/N比を向上することができる。一方、角膜102や水晶体104からの反射光による干渉信号は、Bスキャンによる依存性が大きい。角膜102や水晶体104では、入射した光が鏡面反射するためである。そこで、角膜102や水晶体104の位置を特定する際は、干渉信号の強度が強くなる角度範囲について得られた位置情報のみを加算して平均値を取ることで、角膜102や水晶体104の位置を特定する。これによって、Bスキャンの影響を低減し、角膜102と水晶体104の位置を精度良く特定することができる。
【0039】
また、上述した実施例では、検査者が操作部材を操作することで測定部10の位置を調整したが、眼科装置が被検眼100に対して測定部10の位置を自動調整する機構を有していてもよい。さらに、上述した実施例は、フーリエドメイン方式の干渉計を利用した例であったが、タイムドーメイン方式の干渉計を利用してもよい。」

(甲2カ)図1


(甲2キ)図7


(2)甲2に記載された技術事項
上記(1)の記載及び図面を総合すると、甲2には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

「被検眼100から反射される反射光と参照光とを干渉させる干渉光学系14と、演算装置64とを有している眼科装置であって、
干渉光学系14は、光源12と、光源12からの光を被検眼の内部に照射すると共にその反射光を導く測定光学系と、光源12からの光を参照面に照射すると共にその反射光を導く参照光学系と、測定光学系により導かれた反射光と参照光学系により導かれた参照光とを合成した干渉光を受光する受光素子26によって構成されており、
測定光学系は、ビームスプリッタ24と、ミラー28と、0点調整機構30と、ミラー34と、焦点調整機構40と、入射角調整機構46と、ホットミラー48によって構成されており、
入射角調整機構46は、ガルバノミラー46aを備えており、ガルバノミラー46aの振り角θに応じて、角膜102への光の入射位置と入射角が変化し、それによって、水晶体104への光の入射位置と入射角が変化し、さらに、網膜への光の入射位置も変化し、
演算装置64には、受光素子26が接続され、受光素子26で検出される干渉光の強度に応じた干渉信号が入力し、
演算装置64は、ガルバノミラー46aの各走査角(振り角θ)について得られた干渉信号から、各走査角について干渉信号の情報(Aスキャン情報)が取得され、各走査角の数(n個)だけ干渉信号情報(Aスキャン情報)が並んだ2次元情報が得られ、このため、演算装置64は、各干渉信号情報に含まれる被検眼100の各部位(すなわち、角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)の位置情報の平均値を算出することで、被検眼100の各部位の位置を特定し、被検眼100の各部位の位置が特定できると、演算装置64は、被検眼100の眼軸長を算出し、このように算出された被検眼100の各部位の位置及び眼軸長は、モニタ62に表示される、
眼科装置。」

3 甲3について
本件特許出願前に頒布された甲3には、以下の事項が記載されている。

(甲3ア)
「【0037】
また、眼底画像処理装置1は、通常のコンピュータと同様に、ディスプレイ203、キーボード204、マウス205を備えている。
・・・
【0081】
眼底画像位置合わせ画面3300には、立体眼底カメラの左側の撮影光学系により撮影された眼底画像GLと、右側の撮影光学系により撮影された眼底画像GRとが並んで表示される。オペレータは、左右の眼底画像GL、GRのそれぞれに、位置合わせ用の枠FL、FRをそれぞれ入力する。各枠FL、FRの位置やサイズは、たとえば、マウス205のドラッグ操作によって調整するようになっている。
・・・
【0088】
このように左右の眼底画像GL、GRを立体視した状態において、オペレータは、操作部152を操作して視神経乳頭領域を指定する。図12に示す眼底画像表示画面3400中の符号Dは、左右の眼底画像GL、GRを交互に表示して得られる立体眼底画像GLR上に指定された視神経乳頭領域(の外縁)を表している。立体眼底画像GLRは、実際には、左右の眼底画像GL、GRを交互に視認するオペレータの脳内においてのみ認識される画像である。
・・・
【0093】
(ステップ6:陥凹領域の指定)
視神経乳頭領域Dの指定が終了したら、オペレータは、視神経乳頭領域D内に陥凹領域を指定する。陥凹領域の指定は、視神経乳頭領域Dと同様の操作によって行うことができる。
・・・
【0097】
(ステップ7:C/D比の算出)
立体眼底画像GLRに視神経乳頭領域Dと陥凹領域Cが指定されると、画像解析部13のC/D比演算部133は、位置特定部12により特定された視神経乳頭領域(の外縁)Dに対応する部位及び陥凹領域(の外縁)Cに対応する部位とに基づき、前述のようにして、垂直C/D比C/D(v1)、C/D(v2)と、水平C/D比C/D(h1)、C/D(h2)とをそれぞれ算出する。
【0098】
(ステップ8:R/D比の算出)
更に、画像解析部13のR/D比演算部131は、位置特定部12により特定された視神経乳頭領域(の外縁)Dに対応する部位及び陥凹領域(の外縁)Cに対応する部位とに基づき、前述のようにして複数個(たとえば5度間隔の72個)のR/D比R/D(i)を算出する。
・・・
【0110】
なお、乳頭外縁画像や陥凹外縁画像は、オペレータにより指定された視神経乳頭領域の外縁Dや陥凹領域の外縁Cに基づいて位置特定部12が特定した眼底画像GR上の部位の位置を表す画像であり、この発明の「画像情報」の一例に相当するものである。
・・・
【0146】
また、既に設定された視神経乳頭領域の外縁や陥凹領域の外縁を適宜に修正できるように構成することが可能である。たとえば、既に設定されて表示されている外縁の一部をマウス205によりドラッグすることにより、外縁の位置を修正するように構成することができる。外縁の位置が修正されたときに、この新たな外縁位置に基づいてC/D比やR/D比や面積や面積比などを再度演算して、その演算結果を表示することが可能である。また、グラフ情報や画像情報についても再度求めて表示することが可能である。なお、このような修正は、図13、図14に示した操作ボタン3530、3630のうちの修正ボタンをクリックして開始するようになっている。」

(甲3イ)図13


(甲3ウ)図14


4 甲4について
本件特許出願前に頒布された甲4には、以下の事項が記載されている。原文に続き当審訳を記す。

(甲4ア)
「[0128] Nominally, a volume is composed of a collection of B-scans. One segmentation methodology segments each B-scan separately associating a segmentation confidence with each segmented point of the B-scan. Just as the individual segmentations can be joined to provide a segmentation map, the resulting confidences can be arranged in a confidence map. A suspect point of a confidence map is a point where the confidence map has a low confidence value in a region of interest. A suspect region of a confidence map is a region where the confidence map has low confidence values through out. When a confidence region is suspect, the segmented image and the suspect segmentation of that image are displayed. It is useful to display both the image and the segmentation in a single viewport, with the segmentation overlaid on the image. For improved visualization of the image, the segmentation overlay can be transparent. The flow diagram of FIG. 15 illustrates this process. If the segmentation appears visually incorrect, the user enables a segmentation editor and modifies 880 the segmentation for that image.」
当審訳
「[0128] 名目上、ボリュームはB-スキャンの集まりで構成されている。1つのセグメントの方法は各Bスキャンを別々にセグメント化し、セグメンテーション信頼度Bスキャンの各セグメント化ポイントと関連付ける。個々のセグメンテーションを結合してセグメンテーションマップを提供できるように、結果として得られる信頼度を信頼度マップに配置することができる。信頼度マップの疑わしい点は、信頼度マップが関心領域において低い信頼値を有する点である。信頼マップの疑わしい領域は、信頼性マップが、全体を通して低い信頼値を有する領域である。信頼領域が疑わしい場合、セグメント化された画像とその画像の疑わしいセグメントが表示される。画像とセグメンテーションの両方を単一のビューポイントに表示し、セグメンテーションを画像の上に重ねて表示することは有用である。画像の視覚化を改善するために、セグメンテーションオーバーレイを透明にすることができる。図15のフローチャートはこのプロセスを示している。セグメンテーションが視覚的に正しくないように見える場合、ユーザはセグメンテーションエディタを有効にし、その画像のセグメンテーションを修正する(880)。」

(甲4イ)
「[0134] For example, the user is presented a summary image display such as an OCT en-face image, a thickness map, or a 3-D rendering of the layer segmentation. The user selects a B-scan from the image volume and the B-scan is displayed, including the segmentation results overlaying the B-scan image within the selected image display. The user selects one or more segmentation locations within the display, identifying modifications to the segmentation. (If there is only one segmentation layer within the display being reviewed, there is no ambiguity regarding which segmentation is being modified.)」
当審訳
「[0134] 例えば、OCT正面画像、厚さマップ、または層分割の3-Dレンダリングなどのサマリー画像表示がユーザに提示される。ユーザは画像ボリュームからのBスキャンを選択し、選択された画像表示内でBスキャン画像をオーバーレイするセグメンテーション結果を含むBスキャンが表示される。ユーザは、表示内の1つ以上のセグメンテーション位置を選択し、セグメンテーションに対する修正を識別する。(レビューされているディスプレイ内にセグメンテーションレイヤが1つしかない場合、どのセグメンテーションが変更されているかに関する曖昧さはない。)」

5 甲5について
(1)本件特許出願前に頒布された甲5には、以下の事項が記載されている。

(甲5ア)
「【0036】
[構成]
光画像計測装置1は、図1に示すように、眼底カメラユニット1A、OCTユニット150及び演算制御装置200を含んで構成される。眼底カメラユニット1Aは、従来の眼底カメラとほぼ同様の光学系を有する。眼底カメラは、眼底を撮影して2次元画像を取得する装置である。また、眼底カメラは、眼底血管の形態の撮影に利用される。OCTユニット150は、被検眼のOCT画像を取得するための光学系を格納している。演算制御装置200は、各種の演算処理や制御処理等を実行するコンピュータを具備している。」

(甲5イ)
「【0051】
眼底カメラユニット1Aには、走査ユニット141とレンズ142とが設けられている。走査ユニット141は、OCTユニット150から出力される信号光LSの被検眼E(たとえば眼底Ef)に対する照射位置を走査する。走査ユニット141は、この発明の「走査手段」の一例である。」

(甲5ウ)
「【0064】
〔OCTユニット〕
OCTユニット150の構成について図4を参照しつつ説明する。OCTユニット150は、従来のフーリエドメインタイプの光画像計測装置と同様の光学系を備えている。すなわち、OCTユニット150は、低コヒーレンス光を参照光と信号光に分割し、被検眼を経由した信号光と参照物体を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成する光学系と、この干渉光を検出する検出手段とを備えている。干渉光の検出結果(検出信号)は演算制御装置200に送られる。
【0065】
低コヒーレンス光源160は、広帯域の低コヒーレンス光L0を出力する広帯域光源である。この広帯域光源としては、たとえば、スーパールミネセントダイオード(Super Luminescent Diode:SLD)や、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)などを用いることができる。
・・・
【0078】
信号光LSは、光ファイバ152aにより導光されて眼底カメラユニット1Aに案内される。更に、信号光LSは、レンズ142、走査ユニット141、ダイクロイックミラー134、撮影レンズ126、リレーレンズ125、ハーフミラー190、変倍レンズ124、撮影絞り121、孔開きミラー112の孔部112a、対物レンズ113を経由して被検眼Eに照射される。なお、信号光LSを被検眼Eに照射させる際には、バリアフィルタ122、123は事前に光路から退避される。このとき、ハーフミラー190も光路から退避させてもよい。
【0079】
被検眼Eに入射した信号光LSは、被検眼Eの様々な部位にて反射される。たとえば、信号光LSは、角膜Ec、水晶体、眼底Efなどにおいて反射される。このとき、信号光LSは、角膜Ecや眼底Efの前面で反射されるだけでなく、その深部の屈折率境界において散乱される。たとえば、信号光LSは、角膜Ecの前面だけでなく、角膜Ecの後面や角膜細胞の層の境界などにおいても反射される。また、信号光LSは、眼底Efの前面面(網膜表面)だけでなく、網膜を構成する細胞層の境界や、網膜と脈絡膜との境界などにおいても反射される。また、信号光LSは、水晶体の前面だけでなく後面においても反射される。したがって、被検眼Eを経由した信号光LSは、被検眼Eの様々な部位の前面や後面の形態を反映する情報と、その深層組織の屈折率境界における後方散乱の状態を反映する情報とを含んでいる。
・・・
【0082】
スペクトロメータ(分光計)180は、干渉光LCのスペクトル成分を検出する。スペクトロメータ180は、コリメータレンズ181、回折格子182、結像レンズ183、CCD184を含んで構成される。回折格子182は、透過型でも反射型でもよい。また、CCD184に代えて、CMOS等の他の光検出素子(ラインセンサやエリアセンサ)を用いることも可能である。
【0083】
スペクトロメータ180に入射した干渉光LCは、コリメータレンズ181により平行光束とされ、回折格子182によって分光(スペクトル分解)される。分光された干渉光LCは、結像レンズ183によってCCD184の撮像面上に結像される。CCD184は、分光された干渉光LCの各スペクトル成分を検出して電荷に変換する。CCD184は、この電荷を蓄積して検出信号を生成する。更に、CCD184は、この検出信号を演算制御装置200に送る。スペクトロメータ180(特にCCD184)は、この発明の「検出手段」の一例である。」

(甲5エ)
「【0085】
〔演算制御装置〕
演算制御装置200の構成について説明する。演算制御装置200は、CCD184から入力される検出信号を解析して被検眼EのOCT画像を形成する。OCT画像の形成対象部位としては、眼底Ef、角膜Ec、水晶体などがある。OCT画像を形成するための演算処理は、従来のフーリエドメインタイプの光画像計測装置と同様である。」

(甲5オ)
「【0100】
(画像形成部)
画像形成部220は、撮像装置10、12からの映像信号を受けて眼底画像Ef′の画像データを形成する。
【0101】
また、画像形成部220は、CCD184からの検出信号に基づいて眼底Efの断層画像の画像データを形成する。この処理には、従来のフーリエドメインタイプのOCT技術と同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。
・・・
【0107】
干渉成分抽出部221は、CCD184から出力された検出信号から二つの信号成分を抽出する。この処理の例を説明する。検出信号は、眼底Efに相当する信号成分(眼底成分)と、角膜Ecに相当する信号成分(角膜成分)とを含んでいる。眼底成分と角膜成分は、検出信号において、互いに異なる周波数成分(周波数帯)を成している。すなわち、検出信号は、眼底成分を構成する周波数成分と、角膜成分を構成する周波数成分とを重ね合わせた信号である(その他、ノイズも含まれる)。
【0108】
干渉成分抽出部221は、(必要に応じてノイズを除去した後、)検出信号に含まれる様々な周波数成分を抽出する。この処理は、たとえば任意の周波数分解処理により行われる。更に、干渉成分抽出部221は、抽出された複数の周波数成分のうちから、眼底成分と角膜成分を選択する。この処理は、たとえば、事前に計測を行って決定した周波数成分を選択することにより実行できる。また、眼底成分と角膜成分以外はノイズに起因する周波数成分であることを考慮し、抽出された複数の周波数成分のうちから、信号強度の強い周波数成分を選択するようにしてもよい。
【0109】
眼底成分と角膜成分が抽出されると、画像形成部220は、眼底成分に基づいて眼底Efの断層画像を形成するとともに、角膜成分に基づいて角膜Ecの断層画像を形成する。」

(甲5カ)
「【0118】
(眼内距離演算部)
眼内距離演算部232は、被検眼Eの複数の断層画像のうちの一の断層画像中の位置と他の断層画像中の位置との間の距離を求める。特に、この実施形態では、眼内距離演算部232は、眼底Efの断層画像(眼底断層画像)と角膜Ecの断層画像(角膜断層画像)を解析して、被検眼Eの角膜網膜間距離を求める。以下、眼内距離演算部232が実行する処理の例を説明する。
【0119】
なお、眼内距離演算部232は、角膜網膜間距離以外にも、被検眼Eの任意の眼内距離を求めることが可能である。ここで、眼内距離には、被検眼Eの内部の二点間の距離、被検眼Eの表面の一点と内部の一点との間の距離、及び、被検眼Eの表面の二点間の距離が含まれるものとする。
【0120】
さて、眼内距離演算部232は、まず、眼底断層画像と角膜断層画像とを取得するための同時計測が実行されたときの、参照光LRaと参照光LRbとの光路長差を取得する。この光路長差は、たとえば、二つの参照ミラー174a、174bの位置から取得することができる。
【0121】
なお、前述したように、同時計測時には、参照ミラー174a、174bの光路長差は、角膜網膜間距離(眼軸長等)の標準値にほぼ等しくなるように設定することができる。この場合、眼内距離演算部232により取得される光路長差は角膜網膜間距離の標準値となる。
【0122】
光路長差の他の取得方法として、同時計測時における各参照ミラー174a、174bの位置に基づいて光路長差を求めることもできる。各参照ミラー174a、176bの位置は、たとえば、主制御部211から各参照ミラー駆動機構176a、176bに送られたパルス信号のパルス数を基に取得することができる。また、各参照ミラー174a、174bの位置を位置センサで検出するようにしてもよい。
【0123】
参照光LRa、LRbの光路長差を取得した眼内距離演算部232は、この光路長差の値を、眼球光学系の屈折率で除算する。この屈折率としては、たとえば眼球光学情報212aに記録された値(標準値、測定値)を用いることが可能である。この演算により、光路長差で表現された光学的距離が、空間的な距離に変換される。
【0124】
続いて、眼内距離演算部232は、求められた空間的な距離と、眼底断層画像及び角膜断層画像とに基づいて、被検眼Eの角膜網膜間距離を求める。この演算処理について以下に説明する。
【0125】
上記の空間的な距離は、眼底断層画像と角膜断層画像との間の距離にほぼ等しい。すなわち、上記の空間的な距離は、眼底断層画像が描写されるフレーム中の所定位置(たとえばフレームの上端)と、角膜断層画像が描写されるフレーム中の所定位置(前者と同じ位置)との深度方向における間隔にほぼ等しい。この関係を考慮することにより、双方の断層画像を同じ座標系(特にz座標)で表現することが可能となる。
【0126】
眼内距離演算部232は、眼底断層画像を解析して内境界膜(網膜表面)に相当する画像領域(内境界膜領域)を特定するとともに、角膜断層画像を解析して角膜表面に相当する画像領域(角膜表面領域)を特定する。この処理は、従来と同様に、断層画像を構成する画素の画素値(輝度値)に基づく閾値処理やフィルタ処理を行うことにより実行できる。なお、眼底断層画像や角膜断層画像を表示させ、この表示画像上にオペレータが手作業で内境界膜領域や角膜表面領域を指定するようにしてもよい(以下の処理についても同様である)。
【0127】
次に、眼内距離演算部232は、たとえば、内境界膜領域中の一点(たとえば視神経乳頭中心や黄斑中心等の特徴点)を特定する。この処理は、内境界膜領域の形状を解析して特徴点(窪みの中心位置等)を特定することにより実行できる。
【0128】
続いて、眼内距離演算部232は、内境界膜領域中の上記の一点と同じx座標値(及び/又はy座標値)を有する、角膜表面領域中の一点を特定する。なお、内境界膜領域中の上記一点に照射された信号光LSの軌跡が、眼底カメラユニット1Aの光学系の光軸に対して傾斜している場合(信号光LSの走査によりこのような場合がある)、当該軌跡と交差する角膜表面領域中の一点を特定するようにしてもよい。
【0129】
そして、眼内距離演算部232は、双方の断層画像を表現する上記座標系を参照し、内境界膜領域中の上記一点の座標値と、角膜表面領域中の上記一点の座標値とに基づいて、これら二点間の距離を演算する。一例として、眼内距離演算部232は、これら二点のz座標値の差を演算することにより、これら二点の間の距離を求める。なお、二点がz方向に延びる直線上に配置されない場合には、xyz座標系における距離を求める一般的な演算式(三つの座標軸のそれぞれの座標値の差の二乗和の平方根)を用いて二点間距離を算出することができる。以上の処理により、被検眼Eの二つの断層画像から角膜網膜間距離が得られる。取得された角膜網膜間距離(眼内距離)は、倍率演算部233に送られる。
【0130】
なお、上記処理例では、内境界膜領域中の一点を特定した後に、角膜表面領域中の一点を特定するようになっているが、これとは逆のプロセスを実行することも可能である。っとえば、まず、角膜頂点に相当する一点を角膜表面領域中から特定し、それから、この一点に対応する内境界膜領域中の一点を特定するようにしてもよい。」

(甲5キ)
「【0153】
〔信号光の走査及びOCT画像について〕
ここで、信号光LSの走査及びOCT画像について説明しておく。
・・・
【0159】
上記のような態様で信号光LSを走査することにより、走査線(走査軌跡)に沿った深度方向の断層画像を形成することができる。また、特に走査線の間隔が狭い場合には、前述の3次元画像を形成することができる。」

(甲5ク)
「【0160】
[動作]
光画像計測装置1の動作について説明する。図6に示すフローチャートは、光画像計測装置1の動作の一例を表す。なお、眼球光学情報212aは既に記憶部212に記憶されているものとする。また、前述の事前計測における模型眼の角膜曲率半径の値と、角膜表面の画像の基準位置とは、既に記憶部212に記憶されているものとする。
【0161】
まず、被検眼Eに対する光学系のアライメントを行う(S1)。アライメントは、図3に示すように、アライメント輝点P1、P2を被検眼Eに投影してその状態を観察しつつ眼底カメラユニット1Aの位置を調整することにより行う。
【0162】
次に、参照ミラー174aを眼底Efに対応する位置に配置させるとともに、参照ミラー174bを角膜Ecに対応する位置に配置させる(S2)。前述のように、参照ミラー174a、174bは、角膜網膜間距離の標準値に等しい光路長差を参照光LRa、LRbに与えるような位置に配置される。特に、参照ミラー174aは、眼底Efの所定部位(たとえば網膜表面)の画像が明瞭になる位置に配置され、参照ミラー174bは、角膜Ecの所定部位(たとえば角膜表面)の画像が明瞭になる位置に配置される。参照ミラー174a、174bの移動動作は、操作部250を用いて手作業で行うようにしてもよいし、検出信号やそれを加工した信号に基づいて主制御部211が制御するようにしてもよい。
【0163】
参照ミラー174a、174bが目的の位置に配置されたら、主制御部211は、低コヒーレンス光源160、走査ユニット141、CCD184等を制御し、眼底Efと角膜Ecの同時計測を実行させる(S3)。この同時計測は、たとえば操作部250を用いた開始要求に対応して開始される。また、参照ミラー174a、174bの移動動作の完了に対応して自動的に同時計測を開始するようにしてもよい。なお、同時計測の際には、必要に応じて、内部固視標により被検眼Eを固視させる。
【0164】
干渉成分抽出部221は、検出信号から眼底成分と角膜成分を抽出する(S4)。画像形成部220は、この眼底成分に基づいて眼底Efの断層画像を形成するとともに、この角膜成分に基づいて角膜Ecの断層画像を形成する(S5)。これら断層画像を形成する順序は任意である。また、双方の画像の形成処理を並行して行ってもよい。
【0165】
画像形成部220は、眼底断層画像と角膜断層画像を制御部210に送る。主制御部211は、眼底断層画像と角膜断層画像を画像処理部230に送る。また、主制御部211は、記憶部212から読み出して眼球光学情報212aを画像処理部230に送る。また、記憶部212は、画像処理部230により参照される各種情報(前述)を記憶部212から読み出して画像処理部230に送る。
【0166】
また、主制御部211は、眼底断層画像と角膜断層画像を表示部240に表示させてもよい。このときの表示態様の例を図7に示す。主制御部211は、眼底断層画像Gfと角膜断層画像Gcを表示部240の表示画面(の一部領域)240Aに表示させる。
【0167】
この標示態様では、眼底断層画像Gfと角膜断層画像Gcは深度方向に並べて配置される。このとき、断層画像Gf、Gcを同じ倍率で表示させてもよいし、異なる倍率で表示させてもよい。また、断層画像Gf、Gcの表示間隔は、実際の間隔(たとえば角膜網膜間距離の標準値)に合わせてもよいし、そうでなくてもよい。
【0168】
断層画像Gf、Gcを取得するための同時計測は、視神経乳頭の画像を取得するための固視方向に被検眼Eを固視させて実施される。眼底断層画像Gfは、眼底Efの視神経乳頭Dの近傍を描写している。符号Msは、網膜表面(内境界膜)に相当する画像領域を表している(内境界膜領域)。符号Cfは、角膜表面(角膜前面)に相当する画像領域を表している(角膜表面領域)。符号Cbは、角膜後面に相当する画像領域を表している。
【0169】
眼内距離演算部232は、眼底断層画像と角膜断層画像を解析し、被検眼Eの角膜網膜間距離を求める(S6)。図7に示す断層画像Gf、Gcにおいては、眼内距離演算部232は、角膜表面領域Cf上の点Pc(角膜頂点の位置など)と、内境界膜領域Ms上の点Pmとの間の距離Distを算出する。」

(甲5ケ)図1


(甲5コ)図4


(甲5サ)図5


(甲5シ)図7


(2)甲5に記載された事項の整理

角膜網膜間距離の求め方について
上記(甲5カ)には、
「【0126】
眼内距離演算部232は、眼底断層画像を解析して内境界膜(網膜表面)に相当する画像領域(内境界膜領域)を特定するとともに、角膜断層画像を解析して角膜表面に相当する画像領域(角膜表面領域)を特定する。この処理は、従来と同様に、断層画像を構成する画素の画素値(輝度値)に基づく閾値処理やフィルタ処理を行うことにより実行できる。なお、眼底断層画像や角膜断層画像を表示させ、この表示画像上にオペレータが手作業で内境界膜領域や角膜表面領域を指定するようにしてもよい(以下の処理についても同様である)。
【0127】
次に、眼内距離演算部232は、たとえば、内境界膜領域中の一点(たとえば視神経乳頭中心や黄斑中心等の特徴点)を特定する。この処理は、内境界膜領域の形状を解析して特徴点(窪みの中心位置等)を特定することにより実行できる。
【0128】
続いて、眼内距離演算部232は、内境界膜領域中の上記の一点と同じx座標値(及び/又はy座標値)を有する、角膜表面領域中の一点を特定する。なお、内境界膜領域中の上記一点に照射された信号光LSの軌跡が、眼底カメラユニット1Aの光学系の光軸に対して傾斜している場合(信号光LSの走査によりこのような場合がある)、当該軌跡と交差する角膜表面領域中の一点を特定するようにしてもよい。
【0129】
そして、眼内距離演算部232は、双方の断層画像を表現する上記座標系を参照し、内境界膜領域中の上記一点の座標値と、角膜表面領域中の上記一点の座標値とに基づいて、これら二点間の距離を演算する。一例として、眼内距離演算部232は、これら二点のz座標値の差を演算することにより、これら二点の間の距離を求める。なお、二点がz方向に延びる直線上に配置されない場合には、xyz座標系における距離を求める一般的な演算式(三つの座標軸のそれぞれの座標値の差の二乗和の平方根)を用いて二点間距離を算出することができる。以上の処理により、被検眼Eの二つの断層画像から角膜網膜間距離が得られる。」と記載されている。
また、上記(甲5ク)には、
「【0166】
また、主制御部211は、眼底断層画像と角膜断層画像を表示部240に表示させてもよい。このときの表示態様の例を図7に示す。主制御部211は、眼底断層画像Gfと角膜断層画像Gcを表示部240の表示画面(の一部領域)240Aに表示させる。
【0167】
この標示態様では、眼底断層画像Gfと角膜断層画像Gcは深度方向に並べて配置される。このとき、断層画像Gf、Gcを同じ倍率で表示させてもよいし、異なる倍率で表示させてもよい。また、断層画像Gf、Gcの表示間隔は、実際の間隔(たとえば角膜網膜間距離の標準値)に合わせてもよいし、そうでなくてもよい。
【0168】
断層画像Gf、Gcを取得するための同時計測は、視神経乳頭の画像を取得するための固視方向に被検眼Eを固視させて実施される。眼底断層画像Gfは、眼底Efの視神経乳頭Dの近傍を描写している。符号Msは、網膜表面(内境界膜)に相当する画像領域を表している(内境界膜領域)。符号Cfは、角膜表面(角膜前面)に相当する画像領域を表している(角膜表面領域)。符号Cbは、角膜後面に相当する画像領域を表している。
【0169】
眼内距離演算部232は、眼底断層画像と角膜断層画像を解析し、被検眼Eの角膜網膜間距離を求める(S6)。図7に示す断層画像Gf、Gcにおいては、眼内距離演算部232は、角膜表面領域Cf上の点Pc(角膜頂点の位置など)と、内境界膜領域Ms上の点Pmとの間の距離Distを算出する。」と記載されている。
これらの記載によれば、「角膜網膜間距離を演算するために、主制御部211は、内境界膜領域を眼底断層画像Gfに重畳表示させ、角膜表面領域を角膜断層画像Gcに重畳表示させ、表示させた内境界膜領域上の一点と角膜表面領域上の一点とを、それぞれ、オペレータが手作業で指定するようにしてもよい」ことが理解できる。

(3)甲5に記載された発明
上記(甲5サ)図5から、演算制御装置200は、制御部210(主制御部211)、画像形成部220(干渉成分抽出部221)、画像処理部230(眼内距離演算部232)を含むことが見て取れることから、上記(1)の記載及び図面並びに上記(2)の整理を総合すると、甲5には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているものと認められる。

「眼底カメラユニット1A、OCTユニット150及び演算制御装置200を含んで構成される光画像計測装置1であって、
眼底カメラユニット1Aには、走査ユニット141が設けられ、走査ユニット141は、OCTユニット150から出力される信号光LSの被検眼E(たとえば眼底Ef)に対する照射位置を走査し、被検眼Eに入射した信号光LSは、角膜Ecや眼底Efの前面で反射されるだけでなく、その深部の屈折率境界において散乱され、被検眼Eを経由した信号光LSは、被検眼Eの様々な部位の前面や後面の形態を反映する情報と、その深層組織の屈折率境界における後方散乱の状態を反映する情報とを含んでおり、信号光LSを走査することにより、走査線に沿った深度方向の断層画像を形成することができ、
OCTユニット150は、低コヒーレンス光源160からの低コヒーレンス光L0を参照光LRと信号光LSに分割し、被検眼Eを経由した信号光LSと参照物体を経由した参照光LRとを干渉させて干渉光LCを生成する光学系と、この干渉光LCを検出するスペクトロメータ180(特にCCD184)とを備え、
演算制御装置200は、制御部210(主制御部211)、画像形成部220(干渉成分抽出部221)、画像処理部230(眼内距離演算部232)を含み、
画像形成部220は、CCD184から出力された検出信号に含まれる眼底成分と角膜成分を抽出し、抽出された眼底成分に基づいて眼底Efの断層画像Gfを形成するとともに、角膜成分に基づいて角膜Ecの断層画像Gcを形成し、
眼内距離演算部232は、眼底断層画像Gfを解析して内境界膜(網膜表面)に相当する画像領域(内境界膜領域)を特定するとともに、角膜断層画像Gcを解析して角膜表面に相当する画像領域(角膜表面領域)を特定し、次に、内境界膜領域中の一点を特定し、続いて、角膜表面領域中の一点を特定し、そして、内境界膜領域中の上記一点の座標値と、角膜表面領域中の上記一点の座標値とに基づいて、これら二点間の距離(角膜網膜間距離)を演算し、
主制御部211は、眼底断層画像Gfと角膜断層画像Gcを表示部240の表示画面240Aに表示させ、
角膜網膜間距離を演算するために、主制御部211は、内境界膜領域を眼底断層画像Gfに重畳表示させ、角膜表面領域を角膜断層画像Gcに重畳表示させ、表示させた内境界膜領域上の一点と角膜表面領域上の一点とを、それぞれ、オペレータが手作業で指定するようにしてもよい、
光画像計測装置1。」

6 甲6について
本件特許出願前に頒布された甲6には、以下の事項が記載されている。

(甲6ア)
「【0025】
前述のように生成される第1参照光と眼底からの反射光は干渉光として合成された後、検出器120によって検出される。そして、検出器120によって検出された干渉光のスペクトルデータが制御部70へと入力され、フーリエ変換を用いて周波数が解析されることで、眼Eの深さ方向における情報(Aスキャン信号:深さプロファイル)が計測可能となる。
・・・
【0039】
以上のような構成を備える眼科撮影装置の動作について説明する。はじめに、眼軸長を測定する場合について説明する。検者は、前眼部像がモニタ75に現れるようにジョイスティック4を操作して装置本体3を移動させる。アライメント指標像Ma?Mhが撮像素子204に検出されると、制御部70は、指標像Ma?Mhによって形成されるリング中心のXY座標を略角膜頂点位置として検出し、頂点位置に対応するアライメント指標A1をモニタ75上に電子的に表示する(図3(a)参照)。そして、検者は、アライメントとなるレチクルLT内に指標A1が収まるようにアライメントを調整する(図3(b)参照)。
【0040】
また、制御部70は、無限遠の指標像Ma,Meの間隔と有限遠の指標像Mh,Mfの間隔とを比較することによりZ方向のアライメント偏位量を求める(詳しくは、特開平6-46999号参照)。そして、制御部70は、インジケータGをモニタ75上に表示し、アライメントずれに基づいてインジケータGの本数を増減させる。そして、検者は、インジケータGがアライメント完了を示すように装置本体3を前後に移動させる。これにより、アライメントが完了される。
・・・
【0043】
一方、眼底反射光と第1参照光による干渉信号の検出位置は、眼Eの眼軸長によって異なる。前述の所定距離Zaから眼底Efが外れていれば干渉信号は検出されない。制御部70は、駆動機構55の駆動を制御し、レンズ22及び端部24を連続的又は所定のステップにて段階的に移動させ、スペクトルデータを逐次検出し、各位置にてAスキャン信号を得る。そして、制御部70は、眼底反射光と第1参照光による干渉信号がAスキャン信号として検出されるように駆動機構55の駆動を制御する。
・・・
【0045】
制御部70は、各位置にて取得されたAスキャン信号をモニタリングし、眼底に対応する干渉信号が取得されたAスキャン信号を特定する。この場合、制御部70は、干渉信号の輝度値などを利用して眼底干渉信号の有無を判定する。このとき、角膜の信号と眼底の信号が所定量分離された状態のAスキャン信号を特定することにより、角膜位置と眼底位置を精度良く検出できる。なお、制御部70は、眼底の信号を含むAスキャン信号が取得された位置にて駆動機構55の駆動を停止するようにしてもよい。
・・・
【0053】
<眼底断層像の取得>
眼軸長の測定完了後、眼底断層像を撮影する場合、制御部70は、駆動機構50の駆動を制御して眼底Ef上で測定光を走査させ、検出器120から出力される受光信号に基づいて画像処理により断層像を形成させる(図6参照)。取得された断層像は、モニタ75に静止画又は動画として出力される他、メモリ72に記憶される。
・・・
【0059】
なお、以上の説明においては、角膜への投影指標を用いて眼Eに対するアライメントが行われるものとしたが、これに限るものではない。例えば、制御部70は、眼Eに対する装置本体のアライメント段階において、光源102から光を出射させ、検出器102からの出力信号に基づいてAスキャン信号を得る。そして、制御部70は、得られるAスキャン信号をモニタ75上に表示する(図4参照)。
【0060】
ここで、検者は、モニタ75上に表示されるAスキャン信号を見ながら、角膜に対応する干渉信号が所定の位置に現れるように装置本体3をZ方向に移動させる。このとき、干渉信号を用いたアライメントの基準となるマーカKが電子的に表示されることによりアライメントがスムーズに行われる。なお、マーカは、光路長一致位置から離れた位置にて表示されるのが好ましい。これにより、Zアライメントを精度良く行うことができる。
【0061】
また、制御部70は、眼軸長測定に用いるAスキャン信号として特定された信号をモニタ75上に表示するようにしてもよい。ここで、操作部74の操作信号に基づいて端部24が移動されることにより、検者は、角膜の信号と眼底の信号の分離が可能である。
・・・
【0067】
また、上記説明においては、眼軸長測定時には、測定光の走査を停止させるものとしたが、これに限るものではなく、測定光の走査を行うようにしてもよい。」

(甲6イ)図3


(甲6ウ)図4


7 甲7について
本件特許出願前に頒布された甲7には、以下の事項が記載されている。

(甲7ア)
「【0036】
また、603-1?3は断層信号表示領域であり、3つのスペクトル144-1?3を再構成処理して得られた信号が表示される。なお本実施形態においてはAスキャン画像またはAスキャンラインのプロファイルと呼ぶこととする。一方断層像表示領域605はXスキャン用ミラーを駆動することにより得られた複数のAスキャンを周知の補間処理により二次元画像として表示する領域である。以降の説明ではこの複数のAスキャンから構成される断層像をBスキャン画像と呼ぶ。図5に示す表示例では参照光が表示された状態であるため、断層信号表示領域603-1乃至603-3と、断層像表示領域605にはAスキャン画像またはBスキャン画像は表示されない。
・・・
【0042】
また、Aスキャンプロファイルと共にBスキャン画像も参照することにより、例えばBスキャン画像においてノイズが多くなっている領域等において、干渉光のスペクトルに異常がないかどうかを確認し、原因を特定するための情報を提示することができる。なお、Aスキャン画像及びBスキャン画像が表示された状態で、シャッタボタン608-2を押下して光路を遮蔽することにより、参照光を表示させることも可能である。
【0043】
断層像表示領域605の表示はその上部に設けられた領域選択ボタン606-1?3によって切り替えることができる。図6は中央の領域Aが選択されている状態を示しており、領域Aの測定光によるBスキャン像が断層像表示領域605に表示されている。選択される領域を切り替えると、選択された位置のBスキャン画像が断層像表示領域605に表示される。これと共に、選択された領域に対応する干渉光のスペクトルがスペクトル表示領域600に表示され、Aスキャンプロファイルが断層信号表示領域603-1乃至603-3に表示されることとなる。このようにして、領域選択ボタン606-1乃至606-3の選択に応じて表示が切り替わることとなる。なお、領域の選択に応じて、撮影対象のどの位置に照射された測定光に基づく干渉光を表示させるかは予め決まっているものとする。例えば、各測定光について中央の位置の干渉光を用いても、端部の干渉光を用いてもよい。また、複数のAスキャン位置に対応する干渉光のスペクトルの平均を取って表示してもよい。」

(甲7イ)図6


第6 当審の判断

1 本件発明1について

(1)対比
本件発明1と甲5発明とを対比する。

ア 甲5発明の「低コヒーレンス光源160からの」「信号光LSの被検眼E(たとえば眼底Ef)に対する照射位置を走査」する「走査ユニット141」は、本件発明1の「光源からの光が、被検眼に対し複数の異なる位置に入射する入射手段」に相当する。

イ 甲5発明の「低コヒーレンス光源160からの」「信号光LSの被検眼E(たとえば眼底Ef)に対する照射位置を走査」し、「被検眼Eを経由した信号光LSと参照物体を経由した参照光LRとを干渉させて干渉光LCを生成」し、「この干渉光LCを検出」した「検出信号に含まれる眼底成分と角膜成分を抽出し、抽出された眼底成分に基づいて眼底Efの断層画像Gfを形成するとともに、角膜成分に基づいて角膜Ecの断層画像Gcを形成」する「画像形成部220」は、本件発明1の「該入射手段を用いて取得される複数の干渉信号に基づいて被検眼内部の2次元断層画像を取得する2次元断層画像取得手段」に相当する。

ウ 甲5発明の「眼底断層画像Gfと角膜断層画像Gcを」「表示」する「表示部240」は、本件発明1の「取得した該2次元断層画像を表示する表示手段」に相当する。

エ 甲5発明の「眼内距離演算部232」が、「眼底断層画像Gfを解析して」「特定」された「内境界膜(網膜表面)に相当する画像領域(内境界膜領域)」「中の一点を特定し、」「角膜断層画像Gcを解析して」「特定」された「角膜表面に相当する画像領域(角膜表面領域)」「中の一点を特定し、そして、内境界膜領域中の上記一点の座標値と、角膜表面領域中の上記一点の座標値とに基づいて、これら二点間の距離(角膜網膜間距離)を演算」することは、本件発明1の「取得した前記2次元断層画像に基づいて被検眼の測定対象面の位置を特定し、特定した前記測定対象面の位置に基づいて前記測定対象面間の距離の測定値を算出」し、「前記測定対象面は、角膜前面、角膜後面、水晶体前面、水晶体後面及び網膜表面の少なくとも2つであ」ることに相当する。

オ 甲5発明の「内境界膜領域を眼底断層画像Gfに重畳表示させ、角膜表面領域を角膜断層画像Gcに重畳表示させ、表示させた内境界膜領域上の一点と角膜表面領域上の一点とを、それぞれ、オペレータが手作業で指定」する「操作部240B」と、「操作部240B」によって指定した「内境界膜領域中の上記一点の座標値と、角膜表面領域中の上記一点の座標値とに基づいて、これら二点間の距離(角膜網膜間距離)を演算」することと、本件発明1の「前記表示手段に表示された被検眼内部の前記2次元断層画像に含まれる前記測定対象面のうち前記測定対象面間の距離の測定値を算出するための2つの面の位置のそれぞれに対して新たな位置を指定可能な指定手段をさらに備え、該指定手段により指定された前記新たな位置に基づいて前記測定対象面間の距離の測定値を補正」することとは、「前記表示手段に表示された被検眼内部の前記2次元断層画像に含まれる前記測定対象面のうち前記測定対象面間の距離の測定値を算出するための2つの面の位置のそれぞれに対して新たな位置を指定可能な指定手段をさらに備え、該指定手段により指定された前記新たな位置に基づいて前記測定対象面間の距離の測定値を算出する」点で共通する。

カ 上記イ及びエを踏まえると、甲5発明の「光画像計測装置1」は、本件発明1の「光干渉眼寸法測定装置」に相当する。

(2)一致点・相違点
そうすると、本件発明1と甲5発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。

(一致点)
「光源からの光が、被検眼に対し複数の異なる位置に入射する入射手段と、
該入射手段を用いて取得される複数の干渉信号に基づいて被検眼内部の2次元断層画像を取得する2次元断層画像取得手段と、
取得した該2次元断層画像を表示する表示手段を有し、
取得した前記2次元断層画像に基づいて被検眼の測定対象面の位置を特定し、特定した前記測定対象面の位置に基づいて前記測定対象面間の距離の測定値を算出する光干渉眼寸法測定装置において、
前記測定対象面は、角膜前面、角膜後面、水晶体前面、水晶体後面及び網膜表面の少なくとも2つであり、
前記表示手段に表示された被検眼内部の前記2次元断層画像に含まれる前記測定対象面のうち前記測定対象面間の距離の測定値を算出するための2つの面の位置のそれぞれに対して新たな位置を指定可能な指定手段をさらに備え、該指定手段により指定された前記新たな位置に基づいて前記測定対象面間の距離の測定値を算出する、
光干渉眼寸法測定装置。」

(相違点1)
指定手段により指定された新たな位置に基づいて測定対象面間の距離の測定値を、本件発明1では「補正する」のに対し、甲5発明では、「操作部240B」によって指定した「内境界膜領域中の上記一点の座標値と、角膜表面領域中の上記一点の座標値とに基づいて、これら二点間の距離(角膜網膜間距離)を演算」する点。

(相違点2)
本件発明1では、「前記表示手段に表示された被検眼内部の前記2次元断層画像に対して被検眼の深さ方向(Z方向)に対して垂直方向の位置を1つ以上指定する指定手段をさらに有し、指定された1つ以上の位置(光軸)の被検眼の深さ方向の1次元画像(Aスキャン画像)を1つ以上表示する」のに対し、甲5発明では、このような特定がない点。

(3)判断
事案に鑑み、上記相違点2を検討する。

甲1?4、6及び7には、上記第5の1?4、6及び7のとおり、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項について記載も示唆もなく、周知技術であるという証拠もない。
そして、上記相違点2を備える本件発明1は、本件特許明細書の【0049】に「図14の2次元断層画像510には水晶体と網膜の真ん中辺りに小さな点が表示されている例が示されている。ライン620をこの小さな点がある位置に移動させることにより、Aスキャン画像のデータからこの小さな点の部分の波形状態を確認することができるため、例えばノイズかどうかの判断も可能になる。また、水晶体に濁りがある場合も、ライン620を移動させて、水晶体の濁り状態を詳細に確認できる。このような機能を持つことにより、上述のように、被検眼内部の状態が詳細に把握できるのである。」と記載されているように、被検眼内部の状態が詳細に把握できるという作用効果を奏するものである。
よって、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、甲1?7に接した当業者といえども容易に想到することができたとはいえない。

なお、請求人は、特許異議申立書(第63頁)において、「甲第6号証において、『眼軸長測定に用いるAスキャン信号』を特定する際には、検者もしくは制御部70のいずれかにより行われることが明白であり、検者によって特定される場合にその特定方法として、表示手段に表示された被検眼内部の2次元断層画像に対して、指定手段により位置を指定することにより行われる方法を選択することは、当業者が適宜取り得る設計事項に過ぎない。」と主張しているが、上記甲6(【0059】)には、前眼部の正面像から観察される角膜頂点位置を、眼軸長を測定する場合の位置(光軸)に調整することが記載されており、ここでの角膜頂点位置を、仮に、断層画像を用いて決定する場合、2次元断層画像でなく3次元断層画像を用いる必要があるから、上記主張は採用できない。

(4)小括
したがって、本件発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、甲5発明及び甲1?4、6及び7に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。

2 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用してさらに限定した発明であるから、上記1と同じ理由により、甲1?7に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。

3 本願発明4について
本件発明4は、光干渉眼寸法測定装置において、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項と同じ「前記表示手段に表示された被検眼内部の前記2次元断層画像に対して被検眼の深さ方向(Z方向)に対して垂直方向の位置を1つ以上指定する指定手段をさらに有し、指定された1つ以上の位置(光軸)の被検眼の深さ方向の1次元画像(Aスキャン画像)を1つ以上表示する」ことを発明特定事項としていることから、上記1と同じ理由により、甲1?7に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。

4 本件発明5について
本件発明5は、本件発明1を引用してさらに限定した発明、本件発明2を引用してさらに限定した発明、又は本件発明4を引用してさらに限定した発明であるから、上記1、2、又は3と同じ理由により、甲1?7に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。

第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

1 理由1(明確性違反)
申立人は、請求項1及び4の「被検眼の眼寸法の測定値」という記載が不明瞭であり、請求項1?5に係る発明に対して明確性違反を指摘しているが、本件訂正により「被検眼の測定対象面の位置を特定し、特定した前記測定対象面の位置に基づ」く「前記測定対象面間の距離の測定値」となったことから、当該理由1は解消した。

2 理由2(実施可能要件違反)
申立人は、請求項1?3に係る発明において、指定手段が補正対象とする「測定値」はどのように取得し、何を測定した測定値であるのか不明である(測定値に網膜の膜厚が含まれる場合、発明の詳細な説明には、網膜の位置が1本のピークでしか示されていないので、網膜における2点間の距離をどのように特定するのか不明である。)ことから、請求項1?3に係る発明に対して実施可能要件違反を指摘しているが、発明の詳細な説明(特に、【0036】?【0050】及び図9?14を参照。)には、本件発明1及び2の「角膜前面、角膜後面、水晶体前面、水晶体後面及び網膜表面の少なくとも2つであ」る「測定対象面間の距離の測定値を補正」することに対応する事項が記載されており、また、本件訂正により請求項3は削除されていることから、当該理由2は解消した。

3 理由3(新規性違反)
申立人は、請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明であるとの新規性違反を指摘しているが、本件発明1と甲1との間に少なくとも上記相違点2が存在することから、当該理由3は採用できない。

4 理由4(進歩性違反)
申立人は、請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、甲2に記載された発明及び甲1、3、4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項2に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲1、3、4、6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項3に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲1、3、4、6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項4に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項5に係る発明は、甲2に記載された発明及び6に記載された事項に基づいて、又は、甲2に記載された発明及び甲6、7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとの進歩性違反を指摘しているが、甲1又は2のいずれを主引例としても、上記相違点2に係る本件発明1、2、4及び5の発明特定事項を得ることができず、また、本件訂正により請求項3は削除されていることから、当該理由4は採用できない。

第8 令和2年7月31日付け意見書について

1 意見1(実施可能要件違反)
申立人は、「前記2次元断層画像に対して被検眼の深さ方向(Z方向)に対して垂直方向の位置」の指定には、図14に記載の2次元断層像510におけるライン610の指定が含まれると解釈され、「指定手段」によりライン610を指定しても、表示対象となる「1次元画像(Aスキャン画像)」を選択し、表示することはできないことから、本件発明1、2、4及び5に対して実施可能要件違反を指摘しているが、発明の詳細な説明(特に、【0048】?【0050】及び図14を参照。)には、「前記表示手段に表示された被検眼内部の前記2次元断層画像に対して被検眼の深さ方向(Z方向)に対して垂直方向の位置」を、ライン610でなくライン620を用いて「1つ以上指定する」ことにより、「指定された1つ以上の位置(光軸)の被検眼の深さ方向の1次元画像(Aスキャン画像)を1つ以上表示する」ことが記載されているから、当該意見1は採用できない。

2 意見2(サポート要件違反)
申立人は、本件特許明細書に具体的に記載されているのは、段落0048の、2次元断層画像510の深さ方向のライン620の位置を上下に移動して指定し、ライン620の1つの光軸における干渉信号のAスキャン画像を表示する方法であって、「前記2次元断層画像に対して被検眼の深さ方向(Z方向)に対して垂直方向の位置」を指定することにより「光軸」を一義的に指定する方法は、本件特許明細書には記載されていないから、本件発明1、2、4及び5に対してサポート要件違反を指摘しているが、発明の詳細な説明(特に、【0048】?【0050】及び図14を参照。)の記載によれば、表示された被検眼内部の2次元断層画像における各位置での光軸が、ライン620に平行であることを前提にしていることは明らかであり、ライン620を上下移動させることは、深さ方向に対して垂直方向の位置を指定することにほかならず、それにより光軸が定まることは明らかであるから、当該意見2は採用できない。

第9 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、4及び5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2、4及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件請求項3に係る特許は、訂正により削除された。これにより本件特許の請求項3に対してなされた特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光が、被検眼に対し複数の異なる位置に入射する入射手段と、
該入射手段を用いて取得される複数の干渉信号に基づいて被検眼内部の2次元断層画像を取得する2次元断層画像取得手段と、
取得した該2次元断層画像を表示する表示手段を有し、
取得した前記2次元断層画像に基づいて被検眼の測定対象面の位置を特定し、特定した前記測定対象面の位置に基づいて前記測定対象面間の距離の測定値を算出する光干渉眼寸法測定装置において、
前記測定対象面は、角膜前面、角膜後面、水晶体前面、水晶体後面及び網膜表面の少なくとも2つであり、
前記表示手段に表示された被検眼内部の前記2次元断層画像に含まれる前記測定対象面のうち前記測定対象面間の距離の測定値を算出するための2つの面の位置のそれぞれに対して新たな位置を指定可能な指定手段をさらに備え、該指定手段により指定された前記新たな位置に基づいて前記測定対象面間の距離の測定値を補正し、
前記表示手段に表示された被検眼内部の前記2次元断層画像に対して被検眼の深さ方向(Z方向)に対して垂直方向の位置を1つ以上指定する指定手段をさらに有し、指定された1つ以上の位置(光軸)の被検眼の深さ方向の1次元画像(Aスキャン画像)を1つ以上表示する、光干渉眼寸法測定装置。
【請求項2】
前記入射手段により取得される複数の干渉信号を平均化処置して被検眼の深さ方向の1次元画像(Aスキャン画像)を表示することを特徴とする請求項1に記載の光干渉眼寸法測定装置。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
光源からの光が、被検眼に対し複数の異なる位置に入射する入射手段と、
該入射手段を用いて取得される複数の干渉信号に基づいて被検眼内部の2次元断層画像を取得する2次元断層画像取得手段と、
取得した該2次元断層画像を表示する表示手段を有し、
取得した前記2次元断層画像に基づいて被検眼の測定対象面の位置を特定し、特定した前記測定対象面の位置に基づいて前記測定対象面間の距離の測定値を算出する光干渉眼寸法測定装置において、
前記表示手段に表示された被検眼内部の前記2次元断層画像に対して被検眼の深さ方向(Z方向)に対して垂直方向の位置を1つ以上指定する指定手段をさらに備え、該指定手段により指定された1つ以上の位置(光軸)の被検眼の深さ方向の1次元画像(Aスキャン画像)を1つ以上表示することを特徴とする光干渉眼寸法測定装置。
【請求項5】
前記表示手段に被検眼内部の前記1次元画像と前記2次元断層画像を並列して表示することを特徴とする請求項1、2又は4のいずれかに記載の光干渉眼寸法測定装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-09-09 
出願番号 特願2014-30201(P2014-30201)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A61B)
P 1 651・ 121- YAA (A61B)
P 1 651・ 536- YAA (A61B)
P 1 651・ 113- YAA (A61B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 九鬼 一慶  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
渡戸 正義
登録日 2019-01-18 
登録番号 特許第6465551号(P6465551)
権利者 株式会社トーメーコーポレーション
発明の名称 光干渉眼寸法測定装置  
代理人 特許業務法人快友国際特許事務所  
代理人 特許業務法人快友国際特許事務所  
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