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審決分類 |
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 H02J 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H02J 審判 一部申し立て 2項進歩性 H02J |
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管理番号 | 1368099 |
異議申立番号 | 異議2019-700653 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-08-20 |
確定日 | 2020-10-09 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6471766号発明「電池制御システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6471766号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3-6、9〕について訂正することを認める。 特許第6471766号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6471766号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、2012年7月17日(優先権主張2011年9月2日)を国際出願日とする出願である特願2013-531156号の一部を平成29年4月27日に新たな特許出願としたものであって、平成31年2月1日にその特許権が設定登録され、平成31年2月20日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 1年 8月20日 :特許異議申立人高田真利により請求項1-2に係る特許に対する特許異議の申立て 令和 1年10月23日付け :取消理由通知 令和 1年12月26日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 2年 2月14日受付け:特許異議申立人による意見書の提出 令和 2年 3月 6日付け :取消理由通知(決定の予告) 令和 2年 5月 8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 2年 7月10日受付け:特許異議申立人による意見書の提出 なお、令和2年5月8日に訂正の請求がなされたので、特許法第120条の5第7項の規定により、令和1年12月26日になされた訂正の請求は取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和2年5月8日付けの訂正請求の趣旨は、特許第6471766号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-6、9について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1(請求項1について) 請求項1に「劣化関連情報、である、電池制御システム。」と記載されているのを、「劣化関連情報、であり、前記劣化関連情報は、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの放電深度、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報であり、前記選択手段は、所定の前記劣化関連情報の値が所定の範囲内にある前記電池システムを前記調整用電池システムとして選択する、電池制御システム。」に訂正する。 (2)訂正事項2(請求項2について) 請求項2に「前記電池システムの劣化関連情報は、前記電池システムのSOC許容値、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの放電深度、前記電池システムの寿命、前記電池システムの温度、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの電圧、前記電池システムの電流、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報である」と記載されているのを、「前記電池システムの前記劣化関連情報は、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報である」と訂正する。 (3)訂正事項3(請求項3について) 請求項3に、「請求項1又は2記載の電池制御システムにおいて、前記選択手段は、複数回検出された前記電池システムの劣化関連情報の変化から劣化している電池システムを特定する、電池制御システム。」と記載されているうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、「各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、前記選択手段は、複数回検出された前記電池システムの劣化関連情報の変化から劣化している電池システムを特定する、電池制御システム。」と訂正する。 (4)訂正事項4(請求項4について) 請求項4に、「請求項1?3記載の電池制御システムにおいて、前記選択手段は、前記複数の電池システムの中から、劣化している電池システム以外を前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムとして選択する、電池制御システム。」と記載されているうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、「各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、前記選択手段は、前記複数の電池システムの中から、劣化している電池システム以外を前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムとして選択する、電池制御システム。」と訂正する。 (5)訂正事項5(請求項5について) 請求項5に、「請求項1?4記載の電池制御システムにおいて、前記選択手段は、前記電池システムの特性として、更に、前記電池システムのロケーション情報、前記電池システムの連系点の電圧、前記電池システムの電池の種類、前記電池システムの電池のオン/オフ状態、前記電池システムの充電状態に対するSOCの上下限値、のうち少なくともいずれか一つの特性に基づいて、前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムを選択する、電池制御システム。」と記載されているうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、「各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、前記選択手段は、前記電池システムの特性として、更に、前記電池システムのロケーション情報、前記電池システムの連系点の電圧、前記電池システムの電池の種類、前記電池システムの電池のオン/オフ状態、前記電池システムの充電状態に対するSOCの上下限値、のうち少なくともいずれか一つの特性に基づいて、前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムを選択する、電池制御システム。」と訂正する。 (6)訂正事項6(請求項6について) 請求項6に、「請求項1?5記載の電池制御システムにおいて、前記選択手段は、前記複数の電池システムの中から、更に、需要家にて設定された許可情報に基づいて前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムを選択する、電池制御システム。」と記載されているうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、「各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、前記選択手段は、前記複数の電池システムの中から、更に、需要家にて設定された許可情報に基づいて前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムを選択する、電池制御システム。」と訂正する。 (7)訂正事項7(請求項9について) 請求項3に「請求項1又は2記載の電池制御システムにおいて、 前記選択手段は、複数回検出された前記電池システムの劣化関連情報の変化から劣化している電池システムを特定する、電池制御システム。」と記載されているうち、請求項2を引用するもの、請求項4に「請求項1?3記載の電池制御システムにおいて、前記選択手段は、前記複数の電池システムの中から、劣化している電池システム以外を前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムとして選択する、電池制御システム。」と記載されているうち請求項2を引用するもの、請求項5に「請求項1?4記載の電池制御システムにおいて、前記選択手段は、前記電池システムの特性として、更に、前記電池システムのロケーション情報、前記電池システムの連系点の電圧、前記電池システムの電池の種類、前記電池システムの電池のオン/オフ状態、前記電池システムの充電状態に対するSOCの上下限値、のうち少なくともいずれか一つの特性に基づいて、前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムを選択する、電池制御システム。」と記載されているうち請求項2を引用するもの、請求項6に「請求項1?5記載の電池制御システムにおいて、前記選択手段は、前記複数の電池システムの中から、更に、需要家にて設定された許可情報に基づいて前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムを選択する、電池制御システム。」と記載されているうち請求項2を引用するものを、請求項9に1つのものとしてまとめて、「請求項3?6記載の電池制御システムにおいて、前記電池システムの劣化関連情報は、前記電池システムのSOC許容値、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの放電深度、前記電池システムの寿命、前記電池システムの温度、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの電圧、前記電池システムの電流、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくとも一つの情報である、電池制御システム。」と訂正する。 (8)一群の請求項 上記訂正事項1ないし7に係る本件訂正前の請求項1ないし6について、請求項2ないし6は請求項1を引用しているものであるから、本件訂正前の請求項1ないし6に対応する本件訂正の請求項1ないし6,9は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。 (9)別の訂正単位とする求め 特許権者は、訂正後の請求項3ないし6,9については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、請求項1及び2とは別途訂正することを求めている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた「前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報」について、「前記劣化関連情報は、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの放電深度、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報であり」と限定するものである。 また、訂正前の請求項1に記載されていた「前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段」について「前記選択手段は、所定の前記劣化関連情報の値が所定の範囲内にある前記電池システムを前記調整用電池システムとして選択する」と限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 訂正前の請求項2には、「劣化関連情報は、」「前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの放電深度、」「前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、」「前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報」であることが記載されている。 また、明細書の段落【0059】に「選択部7eは、電力系統4の電力を調整する調整用電池の候補を選択するために使用する電池特性範囲(以下、単に「電池特性範囲」と称する)を用いて、・・・電池特性範囲に属する特性を有する電池(以下「該当電池」と称する)を選択する。また、選択部7eは、該当電池の中から、必要となる電力量等の所定の条件に基づいて、電力系統4の電力を調整するために用いる調整用電池を選択する。」、段落【0060】に「なお、該当電池を選択するために使用する電池特性範囲は、所定の電池特性範囲の一例である。」と、電池特性が所定の範囲の電池を調整用電池として選択することが記載されている。また、段落【0080】-【0084】に「【0080】・・・電池選択部7e2は、状態管理部7e1内のデータベースを用いて、総需要曲線を平滑化目標値に近づけるまたは一致させるために使用する電池(調整用電池)を選択する・・・【0081】・・・電池選択部7e2は、・・・ESの個数の最も多い充放電遅延時間(例えば、充放電遅延時間が8?10秒)を有するESを第1選考ESとして選択する。【0082】続いて、電池選択部7e2は、・・・第1選考ESの中から、SOCの値が50%±5%のESを、第2選考ESとして選択する。【0083】続いて、電池選択部7e2は、・・・第2選考ESの中から、(6)最長充放電継続時間が5秒以上のESを該当電池(調整用電池の候補)として選択する。【0084】このように選択された、充放電遅延時間8?10秒、SOC値50%±5%、最長充放電継続時間5秒以上、の該当電池の中から、電池選択部7e2は、・・・調整用電池を選択する。」と、電池選択部7e2が劣化関連情報に含まれる充放電遅延時間、最長充放電継続時間が所定の範囲にある調整用電池の候補の中から調整用電池を選択することが記載されている。 よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項1及び2について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、訂正前の請求項2の「前記電池システムの劣化関連情報は、前記電池システムのSOC許容値、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの放電深度、前記電池システムの寿命、前記電池システムの温度、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの電圧、前記電池システムの電流、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報である」という構成から選択肢である「前記電池システムのSOC許容値」、「前記電池システムの放電深度」、「前記電池システムの寿命」、「前記電池システムの温度」、「前記電池システムの電圧」、「前記電池システムの電流」を削除して「前記電池システムの前記劣化関連情報は、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報である」とするものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 訂正前の請求項2には、「前記電池システムの劣化関連情報は、」「前記電池システムの満充電容量、」「前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、」「前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報である」ことが記載されている。 よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項1及び2について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項2に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3は、訂正前の請求項3に「請求項1又は2記載の電池制御システムにおいて、前記選択手段は、複数回検出された前記電池システムの劣化関連情報の変化から劣化している電池システムを特定する、電池制御システム。」と記載されているうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、「各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、前記選択手段は、複数回検出された前記電池システムの劣化関連情報の変化から劣化している電池システムを特定する、電池制御システム。」とするものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 訂正事項3は、訂正前の請求項3に「請求項1又は2記載の電池制御システムにおいて、前記選択手段は、複数回検出された前記電池システムの劣化関連情報の変化から劣化している電池システムを特定する、電池制御システム。」と記載されているうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改めるものである。 よって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的 訂正事項4は、訂正前の請求項4に「請求項1?3記載の電池制御システムにおいて、前記選択手段は、前記複数の電池システムの中から、劣化している電池システム以外を前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムとして選択する、電池制御システム。」と記載されているうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、「各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、前記選択手段は、前記複数の電池システムの中から、劣化している電池システム以外を前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムとして選択する、電池制御システム。」とするものである。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 訂正事項4は、訂正前の請求項4に「請求項1?3記載の電池制御システムにおいて、前記選択手段は、前記複数の電池システムの中から、劣化している電池システム以外を前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムとして選択する、電池制御システム。」と記載されているうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改めるものである。 よって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (5)訂正事項5について ア 訂正の目的 訂正事項5は、訂正前の請求項5に「請求項1?4記載の電池制御システムにおいて、前記選択手段は、前記電池システムの特性として、更に、前記電池システムのロケーション情報、前記電池システムの連系点の電圧、前記電池システムの電池の種類、前記電池システムの電池のオン/オフ状態、前記電池システムの充電状態に対するSOCの上下限値、のうち少なくともいずれか一つの特性に基づいて、前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムを選択する、電池制御システム。」と記載されているうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、「各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、前記選択手段は、前記電池システムの特性として、更に、前記電池システムのロケーション情報、前記電池システムの連系点の電圧、前記電池システムの電池の種類、前記電池システムの電池のオン/オフ状態、前記電池システムの充電状態に対するSOCの上下限値、のうち少なくともいずれか一つの特性に基づいて、前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムを選択する、電池制御システム。」とするものである。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 訂正事項5は、訂正前の請求項5に「請求項1?4記載の電池制御システムにおいて、前記選択手段は、前記電池システムの特性として、更に、前記電池システムのロケーション情報、前記電池システムの連系点の電圧、前記電池システムの電池の種類、前記電池システムの電池のオン/オフ状態、前記電池システムの充電状態に対するSOCの上下限値、のうち少なくともいずれか一つの特性に基づいて、前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムを選択する、電池制御システム。」と記載されているうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改めるものである。 よって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (6)訂正事項6について ア 訂正の目的 訂正事項6は、訂正前の請求項6に「請求項1?5記載の電池制御システムにおいて、前記選択手段は、前記複数の電池システムの中から、更に、需要家にて設定された許可情報に基づいて前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムを選択する、電池制御システム。」と記載されているうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、「各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、前記選択手段は、前記複数の電池システムの中から、更に、需要家にて設定された許可情報に基づいて前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムを選択する、電池制御システム。」とするものである。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 訂正事項6は、訂正前の請求項6に「請求項1?5記載の電池制御システムにおいて、前記選択手段は、前記複数の電池システムの中から、更に、需要家にて設定された許可情報に基づいて前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムを選択する、電池制御システム。」と記載されているうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改めるものである。 よって、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (7)訂正事項7について ア 訂正の目的 訂正事項7の訂正の目的は、以下のとおりである。 (a)訂正前の請求項3に「請求項1又は2記載の電池制御システムにおいて、 前記選択手段は、複数回検出された前記電池システムの劣化関連情報の変化から劣化している電池システムを特定する、電池制御システム。」と記載されているうち、請求項1を引用するものが訂正事項3によって独立形式に改められたのに伴い、請求項2を引用するものを、当該独立形式の請求項3(訂正後の請求項3)を引用するものとする。 (b)訂正前の請求項4に「請求項1?3記載の電池制御システムにおいて、前記選択手段は、前記複数の電池システムの中から、劣化している電池システム以外を前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムとして選択する、電池制御システム。」と記載されているうち、請求項1を引用するものが訂正事項4によって独立形式に改められたのに伴い、請求項2を引用するものを、当該独立形式の請求項4(訂正後の請求項4)を引用するものとする。 (c)訂正前の請求項5に「請求項1?4記載の電池制御システムにおいて、前記選択手段は、前記電池システムの特性として、更に、前記電池システムのロケーション情報、前記電池システムの連系点の電圧、前記電池システムの電池の種類、前記電池システムの電池のオン/オフ状態、前記電池システムの充電状態に対するSOCの上下限値、のうち少なくともいずれか一つの特性に基づいて、前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムを選択する、電池制御システム。」と記載されているうち、請求項1を引用するものが訂正事項5によって独立形式に改められたのに伴い、請求項2を引用するものを、当該独立形式の請求項5(訂正後の請求項5)を引用するものとする。 (d)訂正前の請求項6に「請求項1?5記載の電池制御システムにおいて、前記選択手段は、前記複数の電池システムの中から、更に、需要家にて設定された許可情報に基づいて前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムを選択する、電池制御システム。」と記載されているうち、請求項1を引用するものが訂正事項6によって独立形式に改められたのに伴い、請求項2を引用するものを、当該独立形式の請求項6(訂正後の請求項6)を引用するものとする。 (e)上記(a)ないし(d)で述べた訂正後の請求項3ないし6を引用するものを1つのものとしてまとめて、「請求項3?6記載の電池制御システムにおいて、前記電池システムの劣化関連情報は、前記電池システムのSOC許容値、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの放電深度、前記電池システムの寿命、前記電池システムの温度、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの電圧、前記電池システムの電流、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくとも一つの情報である、電池制御システム。」とするものである。 したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 訂正事項7は、訂正事項3ないし6によって請求項3ないし6が独立形式に改められたのにともなって、請求項の引用関係を整理するものである。 よって、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 3 小括 以上とおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 そして、特許権者から、訂正後の請求項3ないし6,9について訂正が認められる場合には、請求項1及び2とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項3ないし6,9は訂正後の請求項1及び2とは別の訂正単位とすることを認める。 よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1,2〕、〔3-6,9〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし9に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明9」という。)は、その訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された次の事項により特定されるものである。 「【請求項1】 各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、 前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、 前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、 前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、 前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、 前記劣化関連情報は、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの放電深度、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報であり、 前記選択手段は、所定の前記劣化関連情報の値が所定の範囲内にある前記電池システムを前記調整用電池システムとして選択する、電池制御システム。 【請求項2】 請求項1記載の電池制御システムにおいて、 前記電池システムの前記劣化関連情報は、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報である、電池制御システム。 【請求項3】 各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、 前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、 前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、 前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、 前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、 前記選択手段は、複数回検出された前記電池システムの劣化関連情報の変化から劣化している電池システムを特定する、電池制御システム。 【請求項4】 各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、 前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、 前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、 前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、 前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、 前記選択手段は、前記複数の電池システムの中から、劣化している電池システム以外を前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムとして選択する、電池制御システム。 【請求項5】 各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、 前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、 前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、 前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、 前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、 前記選択手段は、前記電池システムの特性として、更に、前記電池システムのロケーション情報、前記電池システムの連系点の電圧、前記電池システムの電池の種類、前記電池システムの電池のオン/オフ状態、前記電池システムの充電状態に対するSOCの上下限値、のうち少なくともいずれか一つの特性に基づいて、前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムを選択する、電池制御システム。 【請求項6】 各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、 前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、 前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、 前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、 前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、 前記選択手段は、前記複数の電池システムの中から、更に、需要家にて設定された許可情報に基づいて前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムを選択する、電池制御システム。 【請求項7】 各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、 前記複数の電池システムの中から、動作指示を受け付けてから前記動作指示に応じた動作を実行するまでの時間である遅延時間とSOCとに基づいて前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、 前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する前記動作指示を出力する制御手段と、を含む電池制御システム。 【請求項8】 各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、 前記複数の電池システムの中から、動作指示を受け付けてから前記動作指示に応じた動作を実行するまでの時間である遅延時間と最長充放電継続時間とに基づいて前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、 前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する前記動作指示を出力する制御手段と、を含む電池制御システム。 【請求項9】 請求項3?6記載の電池制御システムにおいて、 前記電池システムの劣化関連情報は、前記電池システムのSOC許容値、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの放電深度、前記電池システムの寿命、前記電池システムの温度、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの電圧、前記電池システムの電流、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報である、電池制御システム。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審が令和2年3月6日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 (1)取消理由1 請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 記 引用文献1:国際公開第2011/016273号(甲第1号証) (2)取消理由2 本件の特許請求の範囲の請求項1には、「前記劣化関連情報は、前記電池システムのSOC許容値、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの放電深度、前記電池システムの寿命、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの電圧、前記電池システムの電流、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報であり、前記選択手段は、所定の前記劣化関連情報の値が所定の範囲内にある前記電池システムを前記調整用電池システムとして選択する」と記載されているが、「劣化関連情報」が「前記電池システムのSOC許容値」、「前記電池システムの寿命」、「前記電池システムの電圧」、「前記電池システムの電流」「のうち少なくともいずれか一つの情報であり」かつ「選択手段」が「所定の前記劣化関連情報の値が所定の範囲内にある前記電池システムを前記調整用電池システムとして選択する」という発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 請求項1を引用する請求項2についても同様である。 よって、請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 引用文献の記載事項・引用発明 (1)取消理由通知において引用した引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。 「[0031] 図1に示すように、第1の実施の形態のエネルギーシステム100は、電力利用者が備える、電力を消費する電気機器150と、太陽電池等の再生可能電源140と、電力を蓄積する蓄電池130と、蓄電池130の充放電を制御する情報処理装置110と有する構成である。エネルギーシステム100は、例えば配電用変電所から送出された電力を各電力利用者に分配する末端変圧器160毎に構築される。 [0032] 再生可能電源140及び蓄電池130は、例えば電力利用者毎に分散設置されている。本実施形態のエネルギーシステム100では、分散設置された複数の再生可能電源140及び複数の蓄電池130を各電力利用者で共用する。 [0033] 電力利用者毎の電気機器150には、電力利用者(住宅や施設)が備えるコンセントを介して配電系統から電力が供給されると共に、各再生可能電源140で発電された電力及び蓄電池130に蓄えられた電力が供給される。 [0034] 蓄電池130は、配電系統から供給される電力あるいは各再生可能電源140で発電された電力を蓄電する。 [0035] 再生可能電源140は、発電した電力を電力利用者が備える各電気機器150及び蓄電池130に供給すると共に、エネルギーシステム100内で利用しない余剰電力が有る場合は、該余剰電力を配電系統へ供給(逆潮流)できる。 [0036] 情報処理装置110は、電気機器150、再生可能電源140及び蓄電池130とそれぞれ通信線を介して接続されている。情報処理装置110は、通信線を介して、電力利用者毎の電力消費量、再生可能電源140毎の発電量、蓄電池130毎の固有情報(後述)を受信する。また、情報処理装置110は、受信した情報に基づいて、再生可能電源140の発電量及び蓄電池130の充放電を制御する。」 「[0049] 蓄電池130の固有情報としては、定格容量、最大SOC、最小SOC、出力電圧等がある。これらの情報は予め情報処理装置110内に格納しておいてもよく、各蓄電池130から情報処理装置110へ送信してもよい。 [0050] 図1に示すエネルギーシステム100では、各蓄電池130を連続して充電あるいは放電できるとは限らないため、本実施形態では、蓄電池130が後述する充電用蓄電池群に指定されているか放電用蓄電池群に指定されているかを示す情報及びSOCの測定値も固有情報に含める。これらの情報は、情報処理装置110で管理してもよく、各蓄電池130から情報処理装置110へ送信してもよい。 [0051] なお、情報処理装置110は、蓄電池130毎の充放電サイクルや使用開始時からの累積使用時間等を蓄積しておき、予想される蓄電池130の性能劣化等を考慮して蓄電池130毎の充電あるいは放電指示を決定してもよい。例えば充放電サイクルが予め設定された規定回数を越えた場合や累積使用時間が予め設定された規定時間を越えた場合は、最大SOCや最小SOCの値を変更してもよい。また、情報処理装置110は、開放電圧や充放電中のインピーダンスの変化から蓄電池130の劣化を判断し、充放電時の最大電流値を変更してもよい。 (4)アルゴリズム 図1に示したエネルギーシステム100では、各電力利用者の電力消費量が一定ではなく、時間と共に変動する。そのため、図3(a)に示すように電力消費量の変動に応じて蓄電池130を充電または放電していたのでは、蓄電池130の充放電サイクルが増大し、蓄電池130の製品寿命が短縮してしまう。」 「[0053] そこで、本実施形態では、エネルギーシステム100内の各蓄電池130を充電用蓄電池群と放電用蓄電池群とに分類し、充電用蓄電池群に指定した蓄電池130は、該蓄電池130から取得したSOCの値に基づいて最大SOCになるまで充電を継続し、放電用蓄電池群に指定した蓄電池130は、該蓄電池130から取得したSOCの値に基づいて最小SOCになるまで放電を継続する。すなわち、本実施形態では、情報処理装置110によってエネルギーシステム100内の各蓄電池130の充放電を個別に制御し、かつ各蓄電池130の充放電を最大SOCまたは最小SOCで切り替える。」 「[0058] 本実施形態の情報処理装置110は、上述したようにエネルギーシステム100内の各蓄電池130の充放電を個別に制御しつつ、エネルギーシステム100内の電力消費量に応じて再生可能電源140による発電量や配電系統からエネルギーシステム100が受電する電力量を制御する。 [0059] 図4は第1の実施の形態の情報処理装置による電力消費量及び電力供給量の制御手順を示すフローチャートである。 [0060] 図4に示すように、情報処理装置110は、まず電力利用者毎の電力消費量、再生可能電源140毎の発電量、蓄電池130毎の固有情報をそれぞれ取得する(ステップS1)。 [0061] 次に、情報処理装置110は、自装置が管理するエネルギーシステム100内の各再生可能電源140による電力供給量の総和と、各電気機器150による電力消費量の総和とを比較し、電力供給量の総和が電力消費量の総和よりも大きいか否かを判定する(ステップS2)。 [0062] 電力供給量の総和が電力消費量の総和よりも大きい場合、情報処理装置110は、以下の(a)?(c)の選択肢のうちの少なくともいずれか1つを実行する(ステップS3)。 (a)電力供給量の総和から電力消費量の総和を減じた余剰電力を配電系統へ逆潮流させる。 (b)充電用蓄電池群に指定した蓄電池130を充電する。 (c)再生可能電源140の発電量を低減する。 [0063] このとき、再生可能電源140を有効に利用するには、(c)再生可能電源140の発電量を低減するよりも、(a)余剰な電力を配電系統へ逆潮流させる、または(b)充電用蓄電池群に指定した蓄電池130を充電することを優先するのが望ましい。 [0064] 一方、電力供給量の総和が電力消費量の総和以下の場合、情報処理装置110は、以下の(d)?(f)の選択肢のうち、少なくともいずれか1つを実行する(ステップS4)。 (d)電力消費量の総和から電力供給量の総和を減じた不足電力を配電系統から受電する。 (e)放電用蓄電池群に指定した蓄電池130を放電させる。 (f)再生可能電源140の発電量を増大する。 [0065] このとき、蓄電池130の充放電サイクルを低減し、かつ再生可能電源140を有効に利用するには、(d)不足する電力を配電系統から受電する、または(f)再生可能電源140の発電量を増大するよりも、(e)再生可能電源140の発電量を増大することを優先するのが望ましい。」 「[0068] 一方、配電系統から受電する電力量が指示されている場合、図6に示すように、情報処理装置110は、上記ステップS1を実行した後、エネルギーシステム100内の不足電力と該受電すべき電力量とを比較し(ステップS22)、不足電力が受電すべき電力量よりも大きい場合は上記(e)または(f)の少なくともいずれか一方を実行し(ステップS23)、不足電力が受電すべき電力量以下の場合は、上記(b)または(c)の少なくともいずれか一方を実行すればよい(ステップS24)。 [0069] また、充電用蓄電池群に指定した全ての蓄電池130で充電可能な電力量よりも充電すべき電力量が少ない場合、あるいは放電用蓄電池群に指定した全ての蓄電池130で放電可能な電力量よりも放電すべき電力量が少ない場合は、予め充電用蓄電池群及び放電用蓄電池群の各蓄電池130に対して優先順位を付与し、該優先順位にしたがって充電あるいは放電を実行する蓄電池130を選択してもよい。 [0070] 例えば、充電用蓄電池群に付与する優先順位としては、最小SOCの蓄電池130を最も高い優先度に設定し、続いて最大SOCに到達していない充電用蓄電池群のうち、SOCの値が小さい順に高い優先度を設定し、最後に充放電サイクルが少ない順に高い優先度を設定する方法が考えられる。 [0071] また、各蓄電池130を高SOC領域で利用しないように、充電用蓄電池群の各蓄電地に優先順位を付与する方法も考えられる。例えば、各蓄電池130で充電可能な電力量よりも充電すべき電力量が十分に少ない場合は、充電用蓄電池群に指定された各蓄電池に、充電を停止する指標である、最大SOCよりも低い充電停止SOCを個別に設定し、該充電停止SOCまで充電された時点で充電を停止して放電用蓄電池群に指定することで、高SOC領域を利用しないようにすればよい。なお、充電停止SOCの最大値は、蓄電池毎に設定されている最大SOCの値となる。 [0072] また、充電用蓄電池群に指定された各蓄電池に、最大SOCと最小SOC間のSOC領域(以下、利用可能SOC範囲と称す)内で充電停止比率を個別に設定し、該充電停止比率まで充電された時点で充電を停止して放電用蓄電池群に指定することで、高SOC領域を利用しないようにすればよい。充電停止比率は、充電を停止する指標となる、利用可能SOC範囲内の利用率であり、利用可能SOC範囲内の利用率とは、利用可能SOC範囲全体を100%とした場合に何%まで充電されているかを示す値である。例えば、利用可能SOC範囲として、最大SOCを90%、最小SOCを10%に設定した場合、その利用可能SOC範囲内の利用率70%とは、利用可能SOC範囲の幅を100とした場合に、その70%まで充電されている状態を示す。すなわち、SOC10%から90%の幅80%に対し、80×0.7=56%の電力量が充電された状態であり、SOCで表現すると66%となる。」 (2)上記摘記事項の記載より、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているといえる。 ・[0031]の記載より、エネルギーシステム100は、電力を消費する電気機器150と、太陽電池等の再生可能電源140と、電力を蓄積する蓄電池130と、蓄電池130の充放電を制御する情報処理装置110とを有する構成で、配電用変電所から送出された電力を各電力利用者に分配する末端変圧器160毎に構築される。 ・[0032]の記載より、エネルギーシステム100は、分散設置された複数の再生可能電源140及び複数の蓄電池130を各電力利用者で共用する。 ・[0034]の記載より、蓄電池130は、配電系統から供給される電力あるいは各再生可能電源140で発電された電力を蓄電する。 ・[0036]の記載より、情報処理装置110は、電気機器150、再生可能電源140及び蓄電池130とそれぞれ通信線を介して接続され、電力利用者毎の電力消費量、再生可能電源140毎の発電量、蓄電池130毎の固有情報を受信し、受信した情報に基づいて、蓄電池130の充放電を制御する。 ・[0049]及び[0050]の記載より、蓄電池130の固有情報としては、定格容量、最大SOC、最小SOC、出力電圧、蓄電池130が充電用蓄電池群に指定されているか放電用蓄電池群に指定されているかを示す情報及びSOCの測定値があり、これらの情報は、各蓄電池130から情報処理装置110へ送信される。 ・[0051]の記載より、情報処理装置110は、予想される蓄電池130の性能劣化等を考慮して蓄電池130毎の充電あるいは放電指示を決定するため、充放電サイクルが予め設定された規定回数を越えた場合や累積使用時間が予め設定された規定時間を越えた場合は、最大SOCや最小SOCの値を変更する。 ・[0053]の記載より、充電用蓄電池群に指定した蓄電池130は、該蓄電池130から取得したSOCの値に基づいて最大SOCになるまで充電を継続し、放電用蓄電池群に指定した蓄電池130は、該蓄電池130から取得したSOCの値に基づいて最小SOCになるまで放電を継続する。 ・[0068]と[0060]、[0062]、[0064]の記載より、配電系統から受電する電力量が指示されている場合、情報処理装置110は、まず電力利用者毎の電力消費量、再生可能電源140毎の発電量、蓄電池130毎の固有情報をそれぞれ取得する(ステップS1)を実行した後、エネルギーシステム100内の不足電力と該受電すべき電力量とを比較し(ステップS22)、不足電力が受電すべき電力量よりも大きい場合は、放電用蓄電池群に指定した蓄電池130の放電を実行し(ステップS23)、不足電力が受電すべき電力量以下の場合は、充電用蓄電池群に指定した蓄電池130の充電を実行する(ステップS24)。 ・[0069]、[0070]の記載より、充電用蓄電池群に指定した全ての蓄電池130で充電可能な電力量よりも充電すべき電力量が少ない場合、あるいは放電用蓄電池群に指定した全ての蓄電池130で放電可能な電力量よりも放電すべき電力量が少ない場合は、予め充電用蓄電池群及び放電用蓄電池群の各蓄電池130に対して優先順位を付与し、該優先順位にしたがって充電あるいは放電を実行する蓄電池130を選択し、最小SOCの蓄電池130を最も高い優先度に設定し、続いて最大SOCに到達していない充電用蓄電池群のうち、SOCの値が小さい順に高い優先度を設定し、最後に充放電サイクルが少ない順に高い優先度を設定する。 ・[0071]、[0072]の記載より、充電用蓄電池群に指定された各蓄電池に、最大SOCよりも低い充電停止SOCを個別に設定し、該充電停止SOCまで充電された時点で充電を停止して放電用蓄電池群に指定し、また、充電用蓄電池群に指定された各蓄電池に、最大SOCと最小SOC間のSOC領域内で充電停止比率を個別に設定し、該充電停止比率まで充電された時点で充電を停止して放電用蓄電池群に指定する。 (3)上記(2)より、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「エネルギーシステム100は、電力を消費する電気機器150と、太陽電池等の再生可能電源140と、電力を蓄積する蓄電池130と、蓄電池130の充放電を制御する情報処理装置110とを有する構成で、 配電用変電所から送出された電力を各電力利用者に分配する末端変圧器160毎に構築され、分散設置された複数の再生可能電源140及び複数の蓄電池130を各電力利用者で共用し、 蓄電池130は、配電系統から供給される電力あるいは各再生可能電源140で発電された電力を蓄電するものであるエネルギーシステム100において、 情報処理装置110は、電気機器150、再生可能電源140及び蓄電池130とそれぞれ通信線を介して接続され、電力利用者毎の電力消費量、再生可能電源140毎の発電量、蓄電池130毎の固有情報を受信し、受信した情報に基づいて、蓄電池130の充放電を制御し、 蓄電池130の固有情報としては、定格容量、最大SOC、最小SOC、出力電圧、蓄電池130が充電用蓄電池群に指定されているか放電用蓄電池群に指定されているかを示す情報及びSOCの測定値があり、これらの情報は、各蓄電池130から情報処理装置110へ送信され、 情報処理装置110は、予想される蓄電池130の性能劣化等を考慮して蓄電池130毎の充電あるいは放電指示を決定するため、充放電サイクルが予め設定された規定回数を越えた場合や累積使用時間が予め設定された規定時間を越えた場合は、最大SOCや最小SOCの値を変更し、 充電用蓄電池群に指定した蓄電池130は、該蓄電池130から取得したSOCの値に基づいて最大SOCになるまで充電を継続し、放電用蓄電池群に指定した蓄電池130は、該蓄電池130から取得したSOCの値に基づいて最小SOCになるまで放電を継続するものであり、 配電系統から受電する電力量が指示されている場合、 情報処理装置110は、まず電力利用者毎の電力消費量、再生可能電源140毎の発電量、蓄電池130毎の固有情報をそれぞれ取得する(ステップS1)を実行した後、エネルギーシステム100内の不足電力と該受電すべき電力量とを比較し(ステップS22)、不足電力が受電すべき電力量よりも大きい場合は、放電用蓄電池群に指定した蓄電池130の放電を実行し(ステップS23)、不足電力が受電すべき電力量以下の場合は、充電用蓄電池群に指定した蓄電池130の充電を実行(ステップS24)するものであり、 充電用蓄電池群に指定した全ての蓄電池130で充電可能な電力量よりも充電すべき電力量が少ない場合、あるいは放電用蓄電池群に指定した全ての蓄電池130で放電可能な電力量よりも放電すべき電力量が少ない場合は、予め充電用蓄電池群及び放電用蓄電池群の各蓄電池130に対して優先順位を付与し、該優先順位にしたがって充電あるいは放電を実行する蓄電池130を選択し、最小SOCの蓄電池130を最も高い優先度に設定し、続いて最大SOCに到達していない充電用蓄電池群のうち、SOCの値が小さい順に高い優先度を設定し、最後に充放電サイクルが少ない順に高い優先度を設定し、 充電用蓄電池群に指定された各蓄電池に、最大SOCよりも低い充電停止SOCを個別に設定し、該充電停止SOCまで充電された時点で充電を停止して放電用蓄電池群に指定し、また、充電用蓄電池群に指定された各蓄電池に、最大SOCと最小SOC間のSOC領域内で充電停止比率を個別に設定し、該充電停止比率まで充電された時点で充電を停止して放電用蓄電池群に指定する エネルギーシステム100。」 3 当審の判断 (1)取消理由1(特許法第29条第1項)について ア 対比・判断 本件発明1と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「蓄電池130」は、情報処理装置110と通信線を介して接続されるものであるから、通信のための構成を含むものであることは明らかであり、電池システムともいいうるものである。 また、引用発明の「蓄電池130」を有する「エネルギーシステム100」は、「配電用変電所から送出された電力を各電力利用者に分配する末端変圧器160毎に構築され、分散設置された複数の再生可能電源140及び複数の蓄電池130を各電力利用者で共用するもの」である。よって、引用発明の「蓄電池130」は、分散して複数あり、電力系統を構成する機器である末端変圧器160に各々が異なる箇所(連系点)で接続されているものを含むことは明らかである。 したがって、引用発明の複数ある「蓄電池130」は、本件発明1の「各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システム」に相当する。 (イ)引用発明の「情報処理装置110」は、「電気機器150、再生可能電源140及び蓄電池130とそれぞれ通信線を介して接続され、」「蓄電池130の充放電を制御するもの」であるから、複数の蓄電池130の動作を通信線を介して制御する制御システムともいいうるものである。 また、引用発明の「通信線」は、情報処理装置110と複数の蓄電池130等を接続するものであるから、本件発明1の「通信ネットワーク」に相当する。 したがって、上記(ア)の「蓄電池130」に関する対比を考慮すると、引用発明の「情報処理装置110」は、電力系統を構成する機器である末端変圧器160に各々が異なる箇所(連系点)で接続された「蓄電池130」の動作を通信線を介して制御するものであるから、本件発明1の「各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システム」に相当する。 (ウ)引用発明の「蓄電池130」毎の「固有情報」は、「定格容量、最大SOC、最小SOC、出力電圧」があるから、本件発明1の「複数の電池システムの各々の特性」に相当する。 また、引用発明は「情報処理装置110は、電気機器150、再生可能電源140及び蓄電池130とそれぞれ通信線を介して接続され、電力利用者毎の電力消費量、再生可能電源140毎の発電量、蓄電池130毎の固有情報を受信」するものであるから、引用発明の「情報処理装置110」が蓄電池130毎の固有情報を通信線を介して受信する構成を有することは明らかである。 してみれば、引用発明の「情報処理装置110」の上記受信する構成は、本件発明1の「前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段」に相当する。 (エ)引用発明は、「配電系統から受電する電力量が指示されている場合」、「情報処理装置110」が「エネルギーシステム100内の不足電力と該受電すべき電力量とを比較し」(ステップS22)、「不足電力が受電すべき電力量よりも大きい場合は、放電用蓄電池群に指定した蓄電池130の放電を実行」(ステップS23)、「不足電力が受電すべき電力量以下の場合は、充電用蓄電池群に指定した蓄電池130の充電を実行」(ステップS24)するものであるから、引用発明の「情報処理装置110」が、電力系統の電力の目標値といえる配電系統から受電する電力量の指示に近似または一致させるように、蓄電池130を充放電させてエネルギーシステム100内の電力の電力需給調整を行っていることは明らかである。 そして、引用発明は、「情報処理装置110」が「優先順位にしたがって充電あるいは放電を実行する蓄電池130を選択し、最小SOCの蓄電池130を最も高い優先度に設定し、続いて最大SOCに到達していない充電用蓄電池群のうち、SOCの値が小さい順に高い優先度を設定し、最後に充放電サイクルが少ない順に高い優先度を設定する」ものであるから、蓄電池130の充放電に際し、蓄電池130毎の固有情報である最大SOC、最小SOCやSOCの値に基づいて充放電に用いる蓄電池130を選択している。 してみれば、引用発明の「情報処理装置110」は、蓄電池130毎の固有情報である最大SOC、最小SOCやSOCの値に基づいて、電力系統の電力の目標値といえる配電系統から受電する電力量の指示に近似または一致させるように電力需給調整を行うために用いる蓄電池130を選択する構成を有するといえる。 そして、引用発明の「蓄電池130毎の固有情報である最大SOC、最小SOCやSOCの値」は本件発明1の「前記複数の電池システムの各々の特性」に、引用発明の上記選択された「蓄電池130」は本件発明1の「調整用電池システム」に相当する。また、引用発明の「情報処理装置110」の上記選択する構成は、本件発明1の「前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段」に相当する。 (オ)引用発明は、「情報処理装置110」が「予め充電用蓄電池群及び放電用蓄電池群の各蓄電池130に対して優先順位を付与し、該優先順位にしたがって充電あるいは放電を実行する蓄電池130を選択」するものであるから、引用発明の「情報処理装置110」が、選択した蓄電池130の充電あるいは放電を実行する構成を有することは明らかである。 そして、引用発明の「情報処理装置110」の上記実行する構成は、本件発明1の「前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段」に相当する。 (カ)引用発明は「予想される蓄電池130の性能劣化等を考慮して蓄電池130毎の充電あるいは放電指示を決定するため、充放電サイクルが予め設定された規定回数を越えた場合や累積使用時間が予め設定された規定時間を越えた場合は、最大SOCや最小SOCの値を変更し、充電用蓄電池群に指定した蓄電池130は、該蓄電池130から取得したSOCの値に基づいて最大SOCになるまで充電を継続し、放電用蓄電池群に指定した蓄電池130は、該蓄電池130から取得したSOCの値に基づいて最小SOCになるまで放電を継続する」ものであるから、引用発明は、蓄電池130の性能劣化を考慮して変更される最大SOC、最小SOCやSOCの測定値に基づいて、蓄電池130の充放電(電力需給調整)が行われるものである。 してみると、引用発明の「蓄電池130の固有情報」である「最大SOC、最小SOC」は、蓄電池130の性能劣化に関連する情報であり、電力需給調整に用いられるものである。 また、電力需給調整に用いる情報が調整の精度の良否の起因となることは明らかである。 したがって、引用発明の「蓄電池130の固有情報」が、最大SOC、最小SOCを含むことは、本件発明1の「前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報」であることに相当する。 (キ)本件発明1は「前記劣化関連情報は、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの放電深度、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報」であるのに対し、引用発明はそのような情報を用いる旨特定されていない。 (ク)引用発明は「予め充電用蓄電池群及び放電用蓄電池群の各蓄電池130に対して優先順位を付与し、該優先順位にしたがって充電あるいは放電を実行する蓄電池130を選択」するものであり、また、「充電用蓄電池群に指定された各蓄電池に、最大SOCよりも低い充電停止SOCを個別に設定し、該充電停止SOCまで充電された時点で充電を停止して放電用蓄電池群に指定」するものであるから、引用発明の全ての蓄電池130は、充電用蓄電池群又は放電用蓄電池群に指定される、すなわち、全ての蓄電池130は充放電に使用されうるものである。 してみると、本件発明1の「前記選択手段は、所定の前記劣化関連情報の値が所定の範囲内にある前記電池システムを前記調整用電池システムとして選択する」のに対し、引用発明はその旨特定されていない。 以上を総合すると、本件発明1と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。 〈一致点〉 「各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、 前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、 前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、 前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、 前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、である、電池制御システム。」 〈相違点1〉 本件発明は、「前記劣化関連情報は、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの放電深度、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報」であるのに対し、引用発明は、そのような情報を用いる旨特定されていない点。 〈相違点2〉 本件発明1の「前記選択手段は、所定の前記劣化関連情報の値が所定の範囲内にある前記電池システムを前記調整用電池システムとして選択する」のに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 したがって、本件発明1は引用発明であるとはいえないので、特許法第29条第1項第3号に該当しない。 よって、本件発明1は、特許法第29条第1項の規定に違反して特許されたものとはいえない。 イ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、令和2年7月10日受付けの意見書において、「引用発明において『蓄電池130の固有情報』が『SOCの固有値』であることが、本件発明の『電池システムの放電深度』に相当するので、訂正後の請求項1に係る発明は、依然として新規性または進歩性を有さない。」(第2頁第22-25行)と主張している。 ここで、引用文献1には「SOCの固定値」は記載されておらず、特許異議申立人のいう「SOCの固定値」は「SOCの測定値」を指すもの認める。 しかしながら、引用発明が「蓄電池130の固有情報」として用いる「SOCの測定値」は、測定時点での蓄電池の充電状態を表す値であり劣化関連情報といい得るものではないから、引用発明の「SOCの測定値」が、本件発明1の「劣化関連情報」の「電子値ステムの放電深度」に相当するとはいえない。 したがって、上記主張を採用することはできない。 (2)取消理由2(特許法第36条第6項第1号)について 令和2年3月6日付け取消理由通知(決定の予告)において、「劣化関連情報」が「前記電池システムのSOC許容値」、「前記電池システムの寿命」、「前記電池システムの電圧」、「前記電池システムの電流」のいずれかであり、かつ「選択手段」が「所定の前記劣化関連情報の値が所定の範囲内にある前記電池システムを前記調整用電池システムとして選択する」という発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない旨の通知をした。 これに対して、本件訂正により、本件発明1は「前記劣化関連情報は、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの放電深度、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報であり、前記選択手段は、所定の前記劣化関連情報の値が所定の範囲内にある前記電池システムを前記調整用電池システムとして選択する」もの、本件発明2は「前記劣化関連情報は、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報である」ものとなり、いずれも「劣化関連情報」として「前記電池システムのSOC許容値」、「前記電池システムの寿命」、「前記電池システムの電圧」、「前記電池システムの電流」を含まないものとなった。 したがって、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定するい要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立て理由の概要 特許異議申立書における特許異議申立ての要旨は、次のとおりである。 (1)申立理由1 請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)申立理由2 請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証ないし甲第9号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 甲第1号証:国際公開第2011/016273号(引用文献1) 甲第2号証:特開2011-135727号公報 甲第3号証:特開2010-239709号公報 甲第4号証:「劣化電池を含んでいるリチウムイオン二次電池パックの動作特性シミュレーション」、田中正志 外3名、平成23年電気学会電力・エネルギー部門大会 講演原稿42-7から42-8 甲第5号証:特開2010-35280号公報 甲第6号証:特開2008-136278号公報 甲第7号証:特許第4691140号公報 甲第8号証:特許第4713623号公報 甲第9号証:「ユビキタスパワーネットワークにおけるスマートストレージの提案」、太田豊 外5名、電気学会論文誌B 2010年11月号、電力・エネルギー部門誌 Vol.130、No.11、2010、989-994頁 また、特許異議申立人は、令和2年2月14日受付けの意見書において、周知技術を示す文献である下記参考資料1ないし8を提示し、請求項1及び2に係る発明は、引用文献1(甲第1号証)に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1または2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであると主張している。 記 参考資料1:「直流電源装置の保守点検と現地試験」、岩田直行、福田政寛、電気設備学会誌、第22巻、第3号、2002年3月、202(42)-205(45)頁 参考資料2:「蓄電池設備の点検・整備」、酒井茂、電気設備学会誌、第29巻、第2号、2009年2月、118(34)-124(40)頁 参考資料3:「蓄電池の耐久性と維持管理」、福岡喜久男、電気設備学会誌、第29巻、第9号、2009年9月、751(41)-754(44)頁 参考資料4:「蓄電池設備の劣化診断とメンテナンス」、高野章、電気と工事、2009年9月号、110-120頁 参考資料5:「Why Batteries Fail Prematurely Knowing what causes these backup power sources to expire early will help you prevent it from happening」 , Edward P. Rather, P.E. EC&M, September 2005, pp20-22 参考資料6:「リチウム二次電池の長寿命化方策-サイクル寿命,総放電容量に及ぼす放電電流の影響-」、熊井一馬 外3名、電力中央研究所報告、研究所報告:T91052、平成4年5月、1-24頁 参考資料7:「電池の寿命に及ぼす温度変化の影響(その1)」、村尾哲郎、市村雅弘 外2名、1995年電子情報通信学会総合大会講演論文集 通信2、社団法人電子情報通信学会、1995年3月、B-993、439頁 参考資料8:「メンテナンスフリー型鉛蓄電池の開発に関する基礎研究IV.過放電放置に起因する電池内部抵抗の増大のその解析」、小牧昭夫、斉藤慎治、松林敏、竹原善一郎、電気化学および工業物理化学、1996年、64巻、1号、p.47-52 2 申立理由1(サポート要件)について (1)「電池システム」について 特許異議申立人は、特許異議申立書(「(4)具体的理由」の「ロ.a.」)、令和2年7月10日受付けの意見書(第6頁第21行-第7頁第6行)において、概略、次のように主張している。 請求項1の「電池」の末尾に「システム」を新たに追加する補正が平成30年6月6日付け手続補正においてなされているが、この補正の根拠は出願時の明細書に記載も示唆も見あたらず、サポート要件違反に該当する。 請求項1の「前記複数の電池システムの各々の特性」および「電池システムの劣化関連情報」について、「電池システム」に含まれる「制御装置5eおよび6e」や「通信端末5dおよび6d」等の機器の特性も含み得る表現となっており、「電池」に関する記述を「電池システム」に拡張することは、サポート要件違反に該当する。 請求項1は「電池システム」や「調整用電池システム」へ補正されたのに対し、明細書の「発明を実施するための形態」の説明には、依然として「電池」や「調整用電池」の用語が用いられており、請求項と発明の詳細な説明との間で用語が統一されておらず、「電池」と「電池システム」、「調整用電池」と「調整用電池システム」の違いについて当業者に理解できる説明がなされておらず、両者の対応が不明瞭でありサポート要件違反に該当する。 上記主張について検討する。 本件特許明細書の段落【0026】、図2には、「供給側電池システム5」、「需要家側電池システム61?6m(mは2以上の整数)」と記載されており、「電池システム」は明細書に記載されたものである。 また、請求項1には、「前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、前記劣化関連情報は、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの放電深度、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報」と特定されており、請求項1の「電池システムの各々の特性」、「電池システムの劣化関連情報」に「制御装置5eおよび6e」や「通信端末5dおよび6d」等の機器の特性が含まれないことは明らかである。 そして、本件特許明細書の段落【0026】には「供給側電池システム5」、「需要家側電池システム61?6m(mは2以上の整数)」と記載され、段落【0032】には「供給側電池システム5は、ES5aと、AC/DCコンバータ5bと、同期装置5cと、通信端末5dと、ES制御装置5eと、を含む」と記載され、段落【0033】には「ES5aは、例えば、定置用蓄電池または電気自動車内の二次電池である。」と記載されており、本件明細書の記載は、「電池」と「電池システム」の違いが理解できないものではない。 してみれば、請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものであり、請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。 (2)「選択手段」について 特許異議申立人は、特許異議申立書(「(4)具体的理由」の「ロ.b.」)において、概略、次のように主張している。 請求項1には、「前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段」と記載されているが、「前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて」と、その掛かり先としての文節との対応関係が不明瞭な状況を生じており、サポート要件違反に該当する。 明細書の段落【0059】の記載によれば、「前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて」の掛かり先は、調整用電池の候補となる「該当電池」の選択である。本件特許発明の実施例では、「(i)調整用電池の候補(該当電池)として選択(ii)調整用電池の選択」の2つの選択を行っており、これら2つの選択は、それぞれ選択されるタイミングも条件も異なり、本件特許発明の目的を達成する上でいずれも不可欠な構成要件であるから、目的の達成手段が反映されていない現在の請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することとなっており、サポート要件違反に該当する。 上記主張について検討する。 本件の請求項1の「前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段」なる記載は、「特性に基づいて」の後に読点がある記載であるから、「電池システムの各々の特性に基づいて」が修飾するのは「調整用電池システムを選択する選択手段」であると解するのが自然である。 また、本件特許明細書の段落【0077】、【0080】-【0085】に、ES(蓄電池)の特性に基づいて該当電池(調整用電池の候補)を選択し、該当電池の中から調整用電池を選択することが記載されているから、調整用電池システムは電池システムの特性に基づいて選択されるものであり、該当電池の選択と調整用電池の選択とのタイミングや条件が互いに異なる場合があるとしても、「電池システムの各々の特性に基づいて」「調整用電池システムを選択する選択手段」は、発明の詳細な説明に記載されているといえる。 したがって、請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものであり、請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。 (3)「前記電力需給調整の精度の良否に起因となる」について 特許異議申立人は、特許異議申立書(「(4)具体的理由」の「ロ.c.」)において、概略、次のように主張している。 「前記電力需給調整の悪化の原因となる」ものとして、本件明細書の段落【0120】、【0123】、【0136】から読み取れるのは、「電池間のばらつき」、「充電または放電特性のばらつき」、あるいは「劣化電池の使用」であって「電池システムの劣化関連情報」ではない。「電力供給調整の精度の良否に起因となる」のは「電池間のばらつき」や「劣化電池の使用」といった”事象”であって、「劣化関連情報」といった”情報(手段)”ではないから、「電力需給調整の精度の良否に起因となる・・・劣化関連情報」という表現は不可解である。したがって、「前記電力供給調整の精度の良否に起因となる」との記載は、請求項及び発明の詳細な説明に記載された表現とが一致してなく、両者の対応関係が不明確となっているので、サポート要件違反に該当する。 上記主張について検討する。 本件明細書の段落【0119】-【0120】に、所定電池特性範囲内の特性を有する電池を調整用電池の候補(該当電池)として選択し、調整用電池の候補の中から所定の条件に基づいて調整用電池を選択することにより、調整用電池は電池特性が類似したものとなり、調整用電池間の電池特性のばらつきを小さくすることが可能になるため、電力需給調整の精度の悪化を抑制することが可能になることが記載されている。 してみると、電池(システム)の特性が電力需給調整の精度と関連し、精度の良否の起因となるといいうるものであることは明らかである。 したがって、請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものであり、請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。 3 申立理由2(進歩性要件)について (1)本件発明1について ア 特許異議申立人は、特許異議申立書(「(4)具体的理由」の「ハ.(3)」)において、概略、次のように主張している。 本件発明1と甲第1号証とを対比すると、甲第1号証には、蓄電池130の劣化関連情報に基づいて、使用する蓄電池130を選択することが記載されていない点で、本件発明1と甲第1号証に記載された発明とは相違する。 しかしながら、電池の劣化関連情報に基づいて、使用する電池を選択することは、甲第2号証及び甲第3号証に示されるとおり周知技術である。 一方、甲第1号証は、「蓄電池の寿命を延ばして蓄電池の低コスト化に寄与するエネルギーシステムを提供することを目的」としているが、蓄電池の寿命を延ばす上で、充放電電流値のばらつきが電池パック自体の寿命に大きな影響を与える可能性があることは、甲第4号証に示されているように当業者に周知であることから、長寿命化の観点から、劣化電池は早く取り除かねばならないという認識を当業者が有していたことは明らかである。 このような当業者の通常の知識を考慮すれば、甲第1号証に示された目的を達成するために、甲第1号証に示された実施例や蓄電池の寿命を伸ばす従来技術方法に代えて、甲第2号証、甲第3号証に示される周知技術を使用して、蓄電池130の劣化関連情報に基づいて、使用する蓄電池130を選択することは、当業者が容易に相当できることである。 イ 特許異議申立人は、令和2年2月14日受付の意見書(「3 意見の内容」の「2)」)において、請求項1の「前記選択手段は、所定の前記劣化関連情報の値が所定の範囲内にある前記電池システムを前記調整用電池システムとして選択する、電池制御システム」との構成(g)について、概略、次のように主張している。 最大SOCやSOCの値等に基づいて蓄電池130を選択する場合において、当該値が所定の範囲内にある蓄電池130を選択することは、当業者であれば当然検討すべき設計事項であり、容易に想到できる事項である。(第3頁第4-6行) 「所定の範囲」がどのような範囲であるのか特定されていないため、任意の範囲を取り得る記載になっており、例えば、引用文献1に係る発明においても、SOCの値として取り得る全範囲を「所定の範囲」と考えれば、電力需給調整を行うために選択される蓄電池130のSOCの値は、当然「所定の範囲」に含まれている。(第3頁第11-16行) 引用文献1には、蓄電池の充電が、充電停止SOC以上または充電停止比率以上の場合に、該蓄電池を放電用蓄電池群に指定することが記載されており、「充電停止SOC以上または充電停止比率以上」が「所定の範囲」に相当する。(第4頁第26行-第5頁第2行) ウ 特許異議申立人は、令和2年7月10日受付の意見書(「3 意見の内容」の「A.3)」)において、概略、次のように主張している。 引用発明1の「SOC測定値」に置き換えて、同じく劣化関連情報である「満充電容量」(または「放電深度」)の値が所定の範囲になる電池を調整用電池として選択することは、当業者の設計事項であり、容易になし得たことである。(第4頁第7-10行) 引用発明においても、「1回目」の充電制御の開始時には、劣化関連情報の値が所定の範囲にある電池を選択している。(第5頁第4-6行) 上記アの主張について、検討する。 甲第1号証の段落[0051]の「情報処理装置110は、蓄電池130毎の充放電サイクルや使用開始時からの累積使用時間等を蓄積しておき、予想される蓄電池130の性能劣化等を考慮して蓄電池130毎の充電あるいは放電指示を決定してもよい。例えば充放電サイクルが予め設定された規定回数を越えた場合や累積使用時間が予め設定された規定時間を越えた場合は、最大SOCや最小SOCの値を変更してもよい。」なる記載、段落[0053]の「エネルギーシステム100内の各蓄電池130を充電用蓄電池群と放電用蓄電池群とに分類し、充電用蓄電池群に指定した蓄電池130は、該蓄電池130から取得したSOCの値に基づいて最大SOCになるまで充電を継続し、放電用蓄電池群に指定した蓄電池130は、該蓄電池130から取得したSOCの値に基づいて最小SOCになるまで放電を継続する。・・・かつ各蓄電池130の充放電を最大SOCまたは最小SOCで切り替える。」なる記載、段落[0069]の「予め充電用蓄電池群及び放電用蓄電池群の各蓄電池130に対して優先順位を付与し、該優先順位にしたがって充電あるいは放電を実行する蓄電池130を選択してもよい。」なる記載より、甲第1号証(引用文献1)に記載された「エネルギーシステム100」は、蓄電池130の性能劣化を考慮して蓄電池130の充放電を切り替えるSOCの値を変更しつつ、エネルギーシステム100内の全ての蓄電池130を充電用蓄電池あるいは放電用蓄電池に分類し、優先順位に従って充電あるいは放電するものである。 してみると、甲第1号証に記載された「エネルギーシステム100」は全ての蓄電池130を使用する候補とするものであり、劣化関連情報の値が所定の範囲内にある電池を使用する電池として選択する(劣化関連情報の値が所定の範囲外の劣化電池を使用する電池として選択しない)動機はない。 したがって、甲第2号証や甲第3号証に示されるように、電池の劣化情報に基づいて使用する電池を選択することが周知技術であり、甲第4号証に示されるように、充放電電流値のばらつきが電池パック自体の寿命に大きな影響を与える可能性があることが周知であったとしても、甲第1号証に記載された「エネルギーシステム100」において、劣化関連情報に基づいて、使用する「蓄電池130」を選択することは、当業者が容易に想到しえたこととはいえない。 よって、本件発明1は、甲第1ないし4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 次に、上記イ及びウの主張について検討する。 上述したように、甲第1号証に記載された「エネルギーシステム100」は、充放電に使用する電池を選択する動機がないものであるから、本件発明1の所定の範囲がどのような範囲であるのか、選択に用いられる劣化関連情報がどのようなパラメータであるかにかかわらず、本件発明1が甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明とはいえない。 したがって、特許異議申立人の上記アないしウの主張を採用することはできない。 (2)本件発明2について ア 特許異議申立人は、特許異議申立書(「(4)具体的理由」の「ハ.(4)」)において、概略、次のように主張している。 甲第1号証および甲第9号証に記載されるように「SOC許容値(SOCの上下限値)」が劣化関連情報であることは周知技術であり、甲第7号証に記載されるように「満充電量」が劣化関連情報であることは周知技術であり、甲第8号証(第18頁第24行の「甲第7号」は「甲第8号」の誤記と認める。)に記載されるように「充電深度(満充電容量)が劣化情報であることは周知技術であり、甲第2、5及び6号証に記載されるように「温度」が劣化関連情報であることは周知技術であり、甲第3号証に記載されるように「電圧、電流」が劣化関連情報であることは周知技術である。また、「メンテナンス情報」を用いて電池を選択することは甲第1号証に示されるように周知技術である。 したがって、本件特許の請求項1に従属する請求項2に係る発明は、甲第1号証ないし甲第4号証に加え、甲第5号証ないし甲第9号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。(第20頁第22-25行) イ 特許異議申立人は、令和2年2月14日受付けの意見書(「3 意見の内容」の「3)」および、「4)」)において、概略、次のように主張している。 蓄電池の劣化情報としてどのようなパラメータを用いるかは、当業者が適宜選択できる設計事項であり、引用文献1に記載された発明において、「劣化関連情報」としてSOCに代えて、請求項2に列挙された情報を用いることは、当業者が適宜選択できる設計事項である。(第5頁第15-18行) 甲第1及び9号証に記載されるように「電池システムのSOC許容値」が劣化関連情報であること周知技術であり、甲第7号証に記載されるように「電池システムの満充電容量」が劣化関連情報であることは周知技術であり、甲第1号証の構成は「電池システムの寿命」に基づいて蓄電池を選択することと等価であり、参考資料5ないし8に記載されるように「電池システムの放電深度」が劣化関連情報であることは周知技術である。(第5頁第25行-第9頁第20行) 上記ア、イの主張について検討する。 本件訂正によって、本件発明2は劣化関連情報として「電池システムのSOC許容値(SOCの上下限値)」、「電池システムの寿命」、「電池システムの温度」、「電池システムの電圧、電流」を有さないものとなった。 したがって、「電池システムのSOC許容値(SOCの上下限値)」、「電池システムの寿命」、「電池システムの温度」、「電池システムの電圧、電流」が劣化関連情報であることが周知技術であったとしても、本件発明2はこれらの劣化情報を用いるものではないから、甲第1号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、甲第7号証や参考資料5ないし8に記載されるように、「電池システムの満充電容量」、「電池システムの放電深度」が劣化関連情報であることは周知技術であり、また、蓄電池の劣化情報としてどのようなパラメータを用いるかは設計事項であったとしても、そもそも甲第1号証に記載された「エネルギーシステム100」において、劣化関連情報の値が所定の範囲内にある電池を選択する(劣化関連情報の値が所定の範囲外の劣化電池を選択しない)動機はないから、本件発明1の構成を全て含む本件発明2は、甲第1号証に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)小括 以上のとおり本件発明1及び2は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとは言えない。 3 訂正により生じた特許異議申立人のその他の主張について (1)特許異議申立人は、令和2年2月14日受付けの意見書「「3 意見の内容」の「4)」)において、概略、次のように主張している。 参考資料1-4に示すように、「メンテナンス情報」とは「値」で表示できないものも含む概念であり、「メンテナンス情報」を「劣化関連情報」として用いた場合、「所定の前記劣化関連情報の値が所定の範囲内にある前記電池システム」がどのような電池システムなのか不明確である。(第7頁第13-17行) (2)特許異議申立人は、令和2年7月10日受付けの意見書(「3 意見の内容」の「B.」および「C.」)において、概略、次のように主張している。 「劣化関連情報」が「前記電池システムのメンテナンス情報」である場合の「値」が「所定の範囲内にある前記電池システムを前記調整用電池システムとして選択する」という発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。(第5頁第16-19行) 本件の明細書の「メンテナンス情報」に関する記載は段落【0138】、【0140】のみであり、「劣化関連情報」が「メンテナンス情報」である場合に、「劣化関連情報の値」の「メンテナンス情報の値」に対応する説明が見当たらない。(第7頁第12-16行) 上記(1)及び(2)の主張について検討する。 本件明細書には、段落【0138】に「ESのメンテナンス情報(例えば、メンテナンスが定期的に行われているかを表す情報、または、今後のメンテナンスの時期を表す情報等)」、段落【0140】に「情報収集部7bが各ESの今後のメンテナンスの時期を表す情報を収集した場合、電池選択部7e2Aは、ESのうち、現在の日時から今後のメンテナンスの時期までの期間が基準期間よりも短い電池を劣化電池として特定し、複数のESのうち劣化電池以外の電池の中から、該当電池を選択する。」と、「値」で表示できる「メンテナンス情報」である「今後のメンテナンスの期間を表す情報」を「劣化関連情報」として用い、「現在の日時から今後のメンテナンスの時期までの期間」が「基準期間よりも短い」電池を所定の範囲内の電池システムとして選択すること記載されている。 したがって、「メンテナンス情報」を「劣化関連情報」として用いた場合、「所定の前記劣化関連情報の値が所定の範囲内にある前記電池システム」がどのような電池システムなのか不明確であるとも、「劣化関連情報」が「前記電池システムのメンテナンス情報」である場合の「値」が「所定の範囲内にある前記電池システムを前記調整用電池システムとして選択する」という発明は発明の詳細な説明に記載されたものではないともいえない。 よって、特許異議申立人の主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおり、請求項1及び2に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論とのとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、 前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、 前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、 前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、 前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、 前記劣化関連情報は、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの放電深度、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報であり、 前記選択手段は、所定の前記劣化関連情報の値が所定の範囲内にある前記電池システムを前記調整用電池システムとして選択する、電池制御システム。 【請求項2】 請求項1記載の電池制御システムにおいて、 前記電池システムの前記劣化関連情報は、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報である、電池制御システム。 【請求項3】 各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、 前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、 前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、 前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、 前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、 前記選択手段は、複数回検出された前記電池システムの劣化関連情報の変化から劣化している電池システムを特定する、電池制御システム。 【請求項4】 各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、 前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、 前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、 前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、 前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、 前記選択手段は、前記複数の電池システムの中から、劣化している電池システム以外を前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムとして選択する、電池制御システム。 【請求項5】 各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、 前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、 前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、 前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、 前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、 前記選択手段は、前記電池システムの特性として、更に、前記電池システムのロケーション情報、前記電池システムの連系点の電圧、前記電池システムの電池の種類、前記電池システムの電池のオン/オフ状態、前記電池システムの充電状態に対するSOCの上下限値、のうち少なくともいずれか一つの特性に基づいて、前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムを選択する、電池制御システム。 【請求項6】 各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、 前記複数の電池システムの各々の特性を、前記通信ネットワークを介して収集する情報収集手段と、 前記複数の電池システムの各々の特性に基づいて、前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、 前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する動作指示を出力する制御手段と、を含み、 前記電池システムの特性は、前記電力需給調整の精度の良否の起因となる前記電池システムの劣化関連情報、であり、 前記選択手段は、前記複数の電池システムの中から、更に、需要家にて設定された許可情報に基づいて前記電力系統の電力を調整するために用いる調整用電池システムを選択する、電池制御システム。 【請求項7】 各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、 前記複数の電池システムの中から、動作指示を受け付けてから前記動作指示に応じた動作を実行するまでの時間である遅延時間とSOCとに基づいて前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、 前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する前記動作指示を出力する制御手段と、を含む電池制御システム。 【請求項8】 各々が異なる連系点で電力系統に接続された、複数の電池システムのうちのいくつかの電池システムの動作を、通信ネットワークを介して制御する電池制御システムであって、 前記複数の電池システムの中から、動作指示を受け付けてから前記動作指示に応じた動作を実行するまでの時間である遅延時間と最長充放電継続時間とに基づいて前記電力系統の電力の目標値に近似または一致させるよう電力需給調整を行うために用いる調整用電池システムを選択する選択手段と、 前記選択手段にて選択された調整用電池システムに対して、充電または放電を指示する前記動作指示を出力する制御手段と、を含む電池制御システム。 【請求項9】 請求項3?6記載の電池制御システムにおいて、 前記電池システムの劣化関連情報は、前記電池システムのSOC許容値、前記電池システムの満充電容量、前記電池システムの放電深度、前記電池システムの寿命、前記電池システムの温度、前記電池システムの最長充放電継続時間、前記電池システムのメンテナンス情報、前記電池システムの電圧、前記電池システムの電流、前記電池システムの充放電遅延時間、のうち少なくともいずれか一つの情報である、電池制御システム。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-09-29 |
出願番号 | 特願2017-88673(P2017-88673) |
審決分類 |
P
1
652・
537-
YAA
(H02J)
P 1 652・ 113- YAA (H02J) P 1 652・ 121- YAA (H02J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 猪瀬 隆広、原 嘉彦 |
特許庁審判長 |
國分 直樹 |
特許庁審判官 |
山本 章裕 山田 正文 |
登録日 | 2019-02-01 |
登録番号 | 特許第6471766号(P6471766) |
権利者 | 日本電気株式会社 |
発明の名称 | 電池制御システム |
代理人 | 天城 聡 |
代理人 | 速水 進治 |
代理人 | 綾田 英利 |
代理人 | 綾田 英利 |
代理人 | 天城 聡 |
代理人 | 速水 進治 |