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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部申し立て 特29条の2  H01L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1368101
異議申立番号 異議2019-700532  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-05 
確定日 2020-10-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6455099号発明「太陽電池ユニット及び太陽電池ユニットの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6455099号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第6455099号の請求項1-4、6-10に係る特許を維持する。 特許第6455099号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6455099号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成26年11月27日に出願され、平成30年12月28日にその特許権の設定登録がされ、平成31年1月23日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和 元年 7月 5日 :特許異議申立人柴田基(以下「申立人」とい
う。)による請求項1?10に係る特許に対
する特許異議の申立て
令和 元年 9月30日付け:取消理由通知書
令和 元年12月 2日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 2年 1月22日 :申立人による意見書の提出
令和 2年 2月28日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和 2年 4月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、令和2年6月10日付けで当審から申立人に対し訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)をするとともに期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人から意見書は提出されなかった。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記太陽電池セルが、受光面とは反対側の裏面に配置された裏面電極、導電層、及び、絶縁層」とあるのを「前記太陽電池セルが、基板と、前記基板における受光面側に配置された表面電極と、前記基板における前記受光面側とは反対側の裏面側に配置されると共に、前記太陽電池セル同士の接続方向に延びる長尺部を有する裏面電極と、前記裏面側において、前記長尺部間の領域である前記配線部材の搭載領域に配置されると共に、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に延びる導電層と、前記裏面側に配置された絶縁層と、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?4、6?10も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「を備え、」とあるのを「を備え、前記絶縁層には、複数の開口部が形成され、当該開口部が、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に沿って形成され、前記導電層が、前記開口部内に形成され、前記長尺部が、前記開口部内に至るまで延びることにより前記基板のシリコン部に接しており、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?4、6?10も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「前記裏面電極及び前記導電層が、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に互いに接しており」とあるのを「前記裏面電極の前記長尺部及び前記導電層が、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に配置されていると共に互いに接続されており」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?4、6?10も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「前記太陽電池セルの前記裏面側において、前記配線部材の搭載領域が前記導電層及び前記絶縁層を有している」とあるのを「前記太陽電池セルの前記裏面側において、前記配線部材の搭載領域が前記導電層及び前記絶縁層を有しており、前記導電層及び前記絶縁層と前記配線部材とが接着部材により接合されている」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?4、6?10も同様に訂正する。)。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?5のいずれか一項」とあるのを「請求項1?4のいずれか一項」に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7?10も同様に訂正する。)。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?6のいずれか一項」とあるのを「請求項1?4、6のいずれか一項」に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8?10も同様に訂正する。)。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「前記受光面にバスバー電極が配置されることなく表面電極が前記太陽電池セルと前記配線部材との間に配置されており」とあるのを「前記受光面側にバスバー電極が配置されることなく前記表面電極が前記太陽電池セルの前記基板と前記配線部材との間に配置されており」に訂正する(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9及び10も同様に訂正する。)。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1?7のいずれか一項」とあるのを「請求項1?4、6?7のいずれか一項」に訂正する(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9及び10も同様に訂正する。)。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1?8のいずれか一項」とあるのを「請求項1?4、6?8のいずれか一項」に訂正する(請求項9の記載を直接的に引用する請求項10も同様に訂正する。)。

なお、訂正前の請求項1ないし10は、請求項2ないし10が請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1ないし10について請求されている。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、太陽電池セルの構成要素を「基板と、前記基板における受光面側に配置された表面電極と、前記基板における前記受光面側とは反対側の裏面側に配置されると共に、前記太陽電池セル同士の接続方向に延びる長尺部を有する裏面電極と、前記裏面側において、前記長尺部間の領域である前記配線部材の搭載領域に配置されると共に、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に延びる導電層と、前記裏面側に配置された絶縁層と」に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項1は、上記アで述べたとおり、特許請求の範囲を減縮するものであり、発明のカテゴリー、対象及び目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1に関して、本件特許明細書の段落【0032】に「第1実施形態に係る太陽電池セル110は、基板113と、受光面側に配置された反射防止膜114及び表面電極112と、裏面側に配置された絶縁層117、裏面電極115及び導電層(「裏面バスバー電極」ともいう)118とを有している。」と記載され、段落【0040】に「裏面電極115は、基板113及び絶縁層117の略全面を覆うように絶縁層117上に配置されている。裏面電極115は、ストリングス延在方向に延びる4つの長尺部115aを有しており、ストリングス延在方向と略直交する方向に延びる複数の導電層118が長尺部115a間に配置されることにより、隣接する長尺部115a同士が導電層118を介して接続されている。」と記載され、段落【0045】に「導電層118は、配線部材搭載領域R2において、主に、裏面電極115が形成される前に、開口部117aを設けた絶縁層117の開口部117a内に形成される」と記載され、段落【0067】に「長尺部125a間の領域は、配線部材搭載領域R2に相当する。」と記載されている。なお、「ストリングス延在方向」は、訂正前の本件請求項1においても記載されている「太陽電池セル同士の接続方向」に相当する。
したがって、訂正事項1は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、絶縁層及び導電層の内容を「前記絶縁層には、複数の開口部が形成され、当該開口部が、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に沿って形成され、前記導電層が、前記開口部内に形成され」ていることに限定した上で、当該開口部と、訂正事項1において限定された裏面電極の長尺部との関係を「前記長尺部が、前記開口部内に至るまで延びることにより前記基板のシリコン部に接して」いることに限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項2は、上記アで述べたとおり、特許請求の範囲を減縮するものであり、発明のカテゴリー、対象及び目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2に関して、本件特許明細書の段落【0036】に「絶縁層117には、複数の開口部117aが形成されている。開口部117aは、ストリングス延在方向と略直交する方向に沿って形成され、ストリングス延在方向に沿って所定の間隔をもって形成されている。」と記載され、段落【0045】に「導電層118は、配線部材搭載領域R2において、主に、裏面電極115が形成される前に、開口部117aを設けた絶縁層117の開口部117a内に形成される」と記載され、段落【0041】に「長尺部115aは、絶縁層117の開口部117a内に至るまで延びることにより基板113のシリコン部に接している。」と記載されている。
したがって、訂正事項2は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、裏面電極及び導電層の配置関係を「前記裏面電極の前記長尺部及び前記導電層が、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に配置されていると共に互いに接続されて」いることに限定するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項3は、上記アで述べたとおり、特許請求の範囲を減縮するものであり、発明のカテゴリー、対象及び目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3に関して、本件特許明細書の段落【0040】に「裏面電極115は、ストリングス延在方向に延びる4つの長尺部115aを有しており、ストリングス延在方向と略直交する方向に延びる複数の導電層118が長尺部115a間に配置されることにより、隣接する長尺部115a同士が導電層118を介して接続されている。」と記載されている(図5(a)等も参照)。ここで、隣接する長尺部115a同士が、ストリングス延在方向(太陽電池セル同士の接続方向)に直交する方向に延びる導電層118を介して接続されるためには、長尺部115a及び導電層118がストリングス延在方向に直交する方向に配置された上で、長尺部115aと導電層118とが互いに接続されていることは明らかである。
したがって、訂正事項3は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、導電層、絶縁層、配線部材及び接着部材の配置関係を「前
記導電層及び前記絶縁層と前記配線部材とが接着部材により接合されている」ことに限定するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項4は、上記アで述べたとおり、特許請求の範囲を減縮するものであり、発明のカテゴリー、対象及び目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4に関して、本件特許明細書の段落【0049】に「本実施形態では、太陽電池セル110の裏面の導電層118及び絶縁層117と、配線部材111とを接着部材119により接合することができる」と記載されている。
したがって、訂正事項4は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。

(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項5の記載を削除するものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項5は、上記アで述べたとおり、訂正前の請求項5の記載を削除するのみであり、発明のカテゴリー、対象及び目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、訂正前の請求項5の記載を削除するものであるから、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。

(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、請求項6が引用する請求項を減らすものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項6は、上記アで述べたとおり、請求項6が引用する請求項を減らすものであり、発明のカテゴリー、対象及び目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6は、請求項6が引用する請求項を減らすものである。
したがって、訂正事項6は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。

(7)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、請求項7が引用する請求項を減らすものである。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項7は、上記アで述べたとおり、請求項7が引用する請求項を減らすものであり、発明のカテゴリー、対象及び目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7は、請求項7が引用する請求項を減らすものである。
したがって、訂正事項7は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。

(8)訂正事項8
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、訂正後の請求項1との整合の観点から「前記受光面」との語句の後に「側」を付すと共に「表面電極」との語句の前に「前記」との語句を付し、表面電極の配置位置を「前記太陽電池セルの前記基板と前記配線部材との間」と明瞭にするものである。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項8は、上記アで述べたとおり、訂正後の請求項1との整合の観点から「前記受光面」との語句の後に「側」を付すと共に「表面電極」との語句の前に「前記」との語句を付し、「前記太陽電池セル」を「前記太陽電池セルの前記基板」と明瞭にするものであり、発明のカテゴリー、対象及び目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項8における表面電極の配置位置に関する訂正事項に関して、本件特許明細書の段落【0032】及び図4において、太陽電池セル110において基板113の受光面側に表面電極112が配置され、受光面側の配線部材搭載領域R1に配線部材が搭載されることが記載されており、当該記載において、表面電極が太陽電池セルの基板と配線部材との間に配置されることは明らかである。また、訂正事項8における他の訂正事項は、訂正後の請求項1との整合の観点から「前記受光面」との語句の後に「側」を付すと共に「表面電極」との語句の前に「前記」との語句を付すものである。
したがって、訂正事項8は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。

(9)訂正事項9
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、請求項8が引用する請求項を減らすものである。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項9は、上記アで述べたとおり、請求項8が引用する請求項を減らすものであり、発明のカテゴリー、対象及び目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項9は、請求項8が引用する請求項を減らすものである。
したがって、訂正事項9は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。

(10)訂正事項10
ア 訂正の目的について
訂正事項10は、請求項9が引用する請求項を減らすものである。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項10は、上記アで述べたとおり、請求項9が引用する請求項を減らすものであり、発明のカテゴリー、対象及び目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項10は、請求項9が引用する請求項を減らすものである。
したがって、訂正事項10は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしている。

3 小括
したがって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1ないし10に係る発明(以下順に「本件発明1」ないし「本件発明10」という。)は、下記のとおりのものである。

「【請求項1】
複数の太陽電池セルと、前記太陽電池セル同士を電気的に接続する配線部材と、を備える太陽電池ユニットであって、
前記太陽電池セルが、
基板と、
前記基板における受光面側に配置された表面電極と、
前記基板における前記受光面側とは反対側の裏面側に配置されると共に、前記太陽電池セル同士の接続方向に延びる長尺部を有する裏面電極と、
前記裏面側において、前記長尺部間の領域である前記配線部材の搭載領域に配置されると共に、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に延びる導電層と、
前記裏面側に配置された絶縁層と、を備え、
前記絶縁層には、複数の開口部が形成され、当該開口部が、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に沿って形成され、前記導電層が、前記開口部内に形成され、前記長尺部が、前記開口部内に至るまで延びることにより前記基板のシリコン部に接しており、
前記裏面電極の前記長尺部及び前記導電層が、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に配置されていると共に互いに接続されており、
前記太陽電池セルの前記裏面側において、前記配線部材の搭載領域が前記導電層及び前記絶縁層を有しており、
前記導電層及び前記絶縁層と前記配線部材とが接着部材により接合されている、太陽電池ユニット。
【請求項2】
前記導電層がAl、Al-Si合金、Cu、Sn又はAgを含む、請求項1に記載の太陽電池ユニット。
【請求項3】
前記裏面電極が前記導電層と同一の材料で構成されている、請求項1又は2に記載の太陽電池ユニット。
【請求項4】
前記絶縁層が窒化シリコン、酸化シリコン又は酸化アルミニウムを含む、請求項1?3のいずれか一項に記載の太陽電池ユニット。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記裏面電極の少なくとも一部が前記配線部材の搭載領域にまたがって配置されている、請求項1?4のいずれか一項に記載の太陽電池ユニット。
【請求項7】
前記導電層の少なくとも一部が前記裏面電極と重なって配置されている、請求項1?4、6のいずれか一項に記載の太陽電池ユニット。
【請求項8】
前記受光面側にバスバー電極が配置されることなく前記表面電極が前記太陽電池セルの前記基板と前記配線部材との間に配置されており、
前記配線部材の搭載領域における前記表面電極に相対する位置に前記導電層が配置されている、請求項1?4、6?7のいずれか一項に記載の太陽電池ユニット。
【請求項9】
請求項1?4、6?8のいずれか一項に記載の太陽電池ユニットの製造方法であって、
前記太陽電池セルの前記配線部材の搭載領域上に接着部材及び前記配線部材をこの順に配置する配置工程と、
前記配置工程の後、加圧して前記太陽電池セルと前記配線部材とを接続する接続工程と、を含む、太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項10】
前記配置工程において前記接着部材がフィルム状である、請求項9に記載の太陽電池ユニットの製造方法。」

第4 取消理由の概要
1 令和2年2月28日付け取消理由(決定の予告)の概要
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであり、
本件特許の請求項1、2,4、6、7に係る発明は、甲2に記載された発明、参4に記載された技術的事項及び周知技術、または、本件特許の請求項2、3、8?10に係る発明は、甲2に記載された発明、参4に記載された技術的事項、甲3に記載された技術的事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

引用文献等一覧
甲第1号証:国際公開第2015/146413号(優先権主張番号:特願2014-66030号)
甲第2号証:特開2014-157871号公報
甲第3号証:特開2014-203999号公報
甲第4号証:特開平10-144943号公報
甲第5号証:特開2010-161178号公報
甲第6号証:特開2013-183093号公報
甲第7号証:国際公開第2007/001004号
甲第8号証:国際公開第2012/046306号
参考資料1:国際公開第2007/060743号
参考資料2:特開2013-211341号公報
参考資料3:特許第5289625号公報
参考資料4:米国特許出願公開2013/0273687号明細書
参考資料5:特表2010-527147号公報
参考資料6:特開2013-145865号公報
(以下、甲第1ないし8号証を順に「甲1」ないし「甲8」と略して記載し、特願2014-66030号を「先願1」と略して記載し、参考資料1ないし6を順に「参1」ないし「参6」と略して記載する。)

2 令和元年9月30日付け取消理由の概要
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであり、
本件特許の請求項1、2、4?7に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に国際公開されたものとみなされる先願1の日本語特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、当該各発明に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、
本件特許の請求項1、2、4、5に係る発明は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該各発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、
または、本件特許の請求項2、3、6?10に係る発明は、甲2に記載された発明、甲3の技術的事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

3 なお、上記取消理由、及び取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由はない。

第5 取消理由に対する当審の判断
当審は、本件特許の請求項1?4、6?10に係る特許については、取消理由によって、これらの特許を取り消すことができないと判断する。
また、本件特許の請求項5に係る特許については、請求項が削除されたので、特許異議申立てを却下する。
その理由は、以下のとおりである。

1 令和元年2月28日付け取消理由(決定の予告)について
(1)明確性について
明確性不適合の概要は、本件特許の請求項8では、表面電極と太陽電池セルとが別部材として特定される一方、本件特許の請求項8が引用する請求項1の特定では、表面電極は、太陽電池セルの別部材ではなく、太陽電池セルに含まれる部材となっていることから、本件特許の請求項8?10について、表面電極は、太陽電池セルとは別部材なのか、太陽電池セルに含まれる部材なのか不明確になっているというものである。
本件補正により、本件特許の請求項8は、「前記表面電極が前記太陽電池セルの前記基板と前記配線部材との間に配置されており」と訂正されたため、表面電極と太陽電池セルとが別部材として特定されなくなり、よって、本件特許の請求項8?10に記載された発明は、明確になった。

(2)進歩性について
ア 甲号証の記載
(ア)甲2には、以下の記載がある。
a 「【0035】
水酸化アルミニウムは、250℃以上の加熱で酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))になる。水酸化アルミニウムを含有するパッシベーション層形成用組成物を半導体基板に付与して加熱(焼成)処理することにより形成される酸化アルミニウムは、半導体基板との界面付近で4配位になりやすく、この4配位酸化アルミニウムに起因する大きな負の固定電荷をもつことができると考えられる。この大きな負の固定電荷が半導体基板の界面近辺で電界を発生することで、半導体基板の界面での少数キャリアの濃度を低下させることができ、結果的に界面でのキャリア再結合速度が抑制されるため、優れたパッシベーション効果を有するパッシベーション膜を形成することができると考えられる。」(下線は、当審で付した。以下同様。)

b 「【0106】
<太陽電池素子>
本発明の太陽電池素子は、p型層及びn型層がpn接合されてなる半導体基板と、前記半導体基板上の全面又は一部に設けられた前記パッシベーション膜形成用組成物の焼成物層であるパッシベーション膜と、前記半導体基板の前記p型層及びn型層の少なくとも一方の層上に配置された電極とを有する。前記太陽電池素子は、必要に応じてその他の構成要素を更に有していてもよい。
前記太陽電池素子は、前記パッシベーション膜形成用組成物から形成されたパッシベーション膜を有することで、変換効率に優れる。
【0107】
前記パッシベーション膜形成用組成物を付与する半導体基板としては特に制限されず、目的に応じて通常用いられるものから適宜選択することができる。前記半導体基板としては、シリコン、ゲルマニウム等にp型不純物又はn型不純物をドープしたものであれば特に制限されない。中でも、半導体基板としてはシリコン基板であることが好ましい。また、半導体基板は、p型半導体基板であっても、n型半導体基板であってもよい。中でもパッシベーション効果の観点から、前記パッシベーション膜が設けられる半導体基板の面は、p型層であっても、n型層であってもよい。中でも変換効率の観点からp型層であることが好ましい。前記半導体基板上のp型層は、p型半導体基板に由来するp型層であっても、p型拡散層又はp^(+)型拡散層として、n型半導体基板又はp型半導体基板上に形成されたものであってもよい。また前記パッシベーション膜が設けられる半導体基板の面は、太陽電池素子における裏面(受光面とは反対面)であることが好ましい。」

c 「【0123】
図5に、裏面におけるパッシベーション膜の形成パターンの一例を概略平面図として示す。図7は、図5のA部を拡大した概略平面図である。図8は、図5のB部を拡大した概略平面図である。図5に示すパッシベーション膜の形成パターンの場合、図7及び図8からも分かるように、裏面のパッシベーション膜5は後の工程で裏面出力取出し電極7が形成される部分を除き、ドット状にp型半導体基板1が露出したパターンで形成される。このドット状開口部のパターンは、ドット径(La)及びドット間隔(Lb)で規定され、規則正しく配列していることが好ましい。ドット径(La)及びドット間隔(Lb)は任意に設定できるが、パッシベーション効果及び少数キャリアの再結合抑制の観点から、Laが5μm?2mmでLbが10μm?3mmであることが好ましく、Laが10μm?1.5mmでLbが20μm?2.5mmであることがより好ましく、Laが20μm?1.3mmでLbが30μm?2mmであることが更に好ましい。」

d 「【0125】
一方、図1(8)に示すように、裏面には、ガラス粉末を含むアルミニウム電極ペースト及びガラス粒子を含む銀電極ペーストを、スクリーン印刷等にて塗布する。図9は、太陽電池素子の裏面の一例を示す概略平面図である。裏面出力取出し電極7の幅は特に制限されないが、後の太陽電池の製造工程での配線材料の接続性などの観点から、裏面出力取出し電極7の幅は、100μm?10mmであることが好ましい。
【0126】
受光面及び裏面にそれぞれ電極ペーストを塗布した後は、乾燥後に大気中450℃?900℃程度の温度で、受光面及び裏面ともに加熱(焼成)して、受光面に受光面集電用電極8及び受光面出力取出し電極9を、裏面に裏面集電用アルミニウム電極6及び裏面出力取出し電極7を、それぞれ形成する。
【0127】
加熱(焼成)後、図1(9)に示すように、受光面では、受光面電極を形成する銀電極ペーストに含まれるガラス粒子と、反射防止膜4とが反応(ファイアースルー)して、受光面電極(受光面集電用電極8、受光面出力取出し電極9)とn^(+)型拡散層2とが電気的に接続(オーミックコンタクト)される。一方、裏面では、ドット状に半導体基板1が露出した部分(パッシベーション膜5が形成されなかった部分)では、加熱(焼成)時に、アルミニウム電極ペースト中のアルミニウムが半導体基板1中に拡散することで、p^(+)型拡散層10が形成される。本発明においては前記パッシベーション膜形成用組成物を用いることで、印刷滲みを抑制し、所望の形状に形成することが可能なパッシベーション膜を形成でき、パッシベーション効果を向上させることで、発電性能に優れた太陽電池素子を製造することができる。」

e 「【0136】
<太陽電池>
太陽電池は、前記太陽電池素子の少なくとも1つを含み、太陽電池素子の出力取出し電極上に配線材料が配置されて構成される。太陽電池は更に必要に応じて、配線材料を介して複数の太陽電池素子が連結され、更に封止材で封止されて構成される。前記配線材料及び封止材としては特に制限されず、当業界で通常用いられているものから適宜選択することができる。」

f 「【0148】
一方、裏面には、市販のアルミニウム電極ペースト(PVG-AD-02、PVG Solutions社製)及び市販の銀電極ペースト(PV-505、DuPont社製)をスクリーン印刷法にて図9のパターンで印刷した。銀電極ペーストからなる裏面出力取出し電極のパターンは、123mm×4mmで構成した。
【0149】
尚、加熱(焼成)後の裏面出力取出し電極の膜厚が20μmとなるように、銀電極ペーストの印刷条件(スクリーン版のメッシュ、印刷速度及び印圧)を適宜調整した。また、アルミニウム電極ペーストを、裏面出力取出し電極以外の全面に印刷して、裏面集電用電極パターンを形成した。このとき、加熱(焼成)後の裏面集電用電極の膜厚が30μmとなるように、アルミニウム電極ペーストの印刷条件を適宜調整した。
各電極ペーストを印刷した後、150℃の温度で5分間加熱し、溶剤を蒸散させることで乾燥処理を行った。」

g 「【0151】
(太陽電池の作製)
上記で得られた太陽電池素子1の受光面出力取出し電極及び裏面出力取出し電極の上に、配線部材(太陽電池用はんだめっき平角線、製品名:SSA-TPS 0.2×1.5(20)、厚さ0.2mm×幅1.5mmの銅線にSn-Ag-Cu系鉛フリーはんだを片面あたり最大20μmの厚さでめっきした仕様、日立電線社製)を配置し、タブ線接続装置(NTS-150-M、Tabbing&Stringing Machine、エヌピーシー社製)を用い、最高温度250℃、保持時間10秒の条件ではんだを溶融させることで、上記配線材料と受光面出力取出し電極及び裏面出力取出し電極とを接続した。」

h 図1(9)の記載から、裏面出力取出し電極(7)とp型半導体基板(1)の間にパッシベーション膜(5)を有することが、見て取れる。

i 上記e、g及び図9の記載から、配線部材が配置される裏面出力取出し電極(7)の長手方向に長尺部を有する裏面集電用アルミニウム電極(6、11)と、当該長尺部間の領域に裏面出力取出し電極(7)とを有し、裏面集電用アルミニウム電極(6、11)の長尺部及び裏面出力取出し電極(7)が、配線部材が配置される裏面出力取出し電極(7)の長手方向と直交する方向に配置されていると共に互いに接続されている太陽電池素子の裏面が、把握できる。

j したがって、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「太陽電池素子の少なくとも1つを含み、配線材料を介して複数の太陽電池素子が連結され、太陽電池素子の出力取出し電極上に配線材料が配置されて構成される太陽電池であって、
太陽電池素子は、シリコン基板である半導体基板(1)と、前記半導体基板(1)上に設けられたパッシベーション膜(5)と、前記半導体基板(1)上に配置された電極とを有し、
太陽電池素子における裏面(受光面とは反対面)にパッシベーション膜(5)が設けられ、受光面に受光面集電用電極(8)及び受光面出力取出し電極(9)を、裏面に裏面集電用アルミニウム電極(6、11)及び裏面出力取出し電極(7)を、それぞれ形成し、
配線部材が配置される裏面出力取出し電極(7)の長手方向に長尺部を有する裏面集電用アルミニウム電極(6、11)と、当該長尺部間の領域に裏面出力取出し電極(7)とを有し、
裏面集電用アルミニウム電極(6、11)の長尺部及び裏面出力取出し電極(7)が、配線材料が配置される裏面出力取出し電極(7)の長手方向と直交する方向に配置されていると共に互いに接続され、
太陽電池素子の受光面出力取出し電極(9)及び裏面出力取出し電極(7)の上に、配線材料を配置し、裏面出力取出し電極(7)と半導体基板(1)の間にパッシベーション膜(5)を有し、
裏面出力取出し電極(7)のパターンは、銀電極ペーストからなり、
酸化アルミニウムは、パッシベーション膜(5)を形成することができ、
アルミニウム電極ペーストを印刷して、裏面集電用電極パターンを形成し、裏面では、ドット状に半導体基板が露出した部分(パッシベーション膜(5)が形成されなかった部分)では、アルミニウム電極ペースト中のアルミニウムが半導体基板(1)中に拡散する、
太陽電池。」

(イ)甲3の【0022】、【0026】、【0030】、【0031】、】、【0033】、【0035】、【0042】、【0043】の記載から、甲3には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「複数の太陽電池セルが配線部材により電気的に接続される、1つの太陽電池モジュールであって、
複数の集電部材が、配線部材の延在方向であるY方向に沿って、離間して設けられ、
集電部材は、隣り合う裏面電極の双方に連結され、集電部材のX方向における端部は、基板と裏面電極とに挟まれ、
集電部材は、銀ペースト、銅ペースト若しくはアルミニウムペーストから形成され、
裏面電極は、アルミニウムペーストにより形成され、
受光面の配置領域AFは、フィンガー電極を電気的に接続する配線部材が配置される予定の領域であり、
裏面側の配置領域ABは、配線部材が配置される予定の領域であり、
裏面側の配置領域ABは、受光面及び裏面の法線方向において、基板を挟んで受光面側の配置領域AFと対向する位置に設定される、
太陽電池モジュール。」(甲3技術的事項A)

「導電性接着剤は、裏面側では、少なくとも集電部材が設けられている第1の領域に接着され、
太陽電池セルと配線部材とは、導電性接着剤により互いに固定され、
導電性接着剤の貼り付けに導電性接着テープが使用される。」(甲3技術的事項B)

(ウ)参4の[0001]、[0010]、[0035]、[0036]、[0039]、[0040]、[0048]、[0049]、FIG.1C、FIG.1D、FIG.2B、FIG.2Cの記載から、参4には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「Ag導体パターン13bの長手方向に直交する線または破線のAg導体パターン13aが形成され、
Ag導体パターン13bは、焼成後にタブ電極23bになり得り、タブ電極23bは、リボンをはんだ付けすることによってセルを別のセルに接続するものであり、
Ag導体パターン13aの銀およびAl導体パターン14のアルミニウムが不活性化層12a中に分散し、不活性化層12aを貫通して、銀とアルミニウムとが共存する領域において半導体基板10に達し、
Al導体パターン14から分散されて半導体基板10に達するアルミニウムは、太陽電池の電気的性質を改良し得るSi-Al合金層および裏面電界(BSF)15を形成することができる太陽電池。」(参4技術的事項)

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明を対比すると、以下のとおりとなる。
a 甲2発明の「複数の太陽電池素子」は、本件発明1の「複数の太陽電池セル」に、
甲2発明の「『複数の太陽電池素子が連結』する『配線材料』」は、本件発明1の「前記太陽電池セル同士を電気的に接続する配線部材」に、
甲2発明の「太陽電池」は、本件発明1の「太陽電池ユニット」に、
甲2発明の「半導体基板(1)」は、本件発明1の「基板」に、
甲2発明の「『半導体基板(1)上に配置された電極』であって、『受光面に』『形成』された『受光面集電用電極(8)及び受光面出力取出し電極(9)』」は、本件発明1の「前記基板における受光面側に配置された表面電極」に、
甲2発明の「『半導体基板(1)上に配置された電極』であって、『太陽電池素子における裏面(受光面とは反対面)に』『形成』された『裏面集電用アルミニウム電極(6,11)』」は、本件発明1の「『前記基板における前記受光面側とは反対側の裏面側に配置される』『裏面電極』」に、
甲2発明の「『裏面に』『形成』され『長尺部間の領域』の『裏面出力取出し電極(7)』」は、本件発明1の「『前記裏面側において、前記長尺部間の領域である前記配線部材の搭載領域に配置される』『導電層』」に、
甲2発明の「『太陽電池素子における裏面(受光面とは反対面)に』『設け』た『パッシベーション膜(5)』」は、本件発明1の「裏面側に配置された絶縁層」に、
甲2発明の「『ドット状に半導体基板(1)が露出した部分(パッシベーション膜(5)が形成されなかった部分)では、アルミニウム電極ペースト中のアルミニウムが』『シリコン基板である』『半導体基板(1)中に拡散する』」は、本件発明1の「『前記絶縁層には、複数の開口部が形成され、』『前記長尺部が、前記開口部内に至るまで延びることにより前記基板のシリコン部に接しており』」に、
それぞれ相当する。

b 甲2発明では「配線材料を介して複数の太陽電池素子が連結され、太陽電池素子の出力取出し電極上に配線材料が配置され」ていることから、甲2発明の「裏面出力取出し電極(7)の長手方向」は、複数の太陽電池素子を連結する配線材料の方向であり、本件発明1の「太陽電池セル同士の接続方向」に相当する。
そうすると、甲2発明の「配線材料が配置される裏面出力取出し電極(7)の長手方向に長尺部を有する裏面集電用アルミニウム電極(6、11)」は、本件発明1の「太陽電池セル同士の接続方向に延びる長尺部を有する裏面電極」に、
甲2発明の「裏面集電用アルミニウム電極(6、11)の長尺部及び裏面出力取出し電極(7)が、配線材料が配置される裏面出力取出し電極(7)の長手方向と直交する方向に配置されていると共に互いに接続され」は、本件発明1の「前記裏面電極の前記長尺部及び前記導電層が、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に配置されていると共に互いに接続されており」に、
それぞれ相当する。

c 甲2発明では「『太陽電池素子の』『裏面出力取出し電極(7)の上に、配線材料を配置し、裏面出力取出し電極(7)と半導体基板(1)の間にパッシベーション膜(5)を有し』」と特定されていることから、半導体基板と配線部材の間には、裏面出力取出し電極とパッシベーション膜を有している。
そうすると、甲2発明の「『太陽電池素子の』『裏面出力取出し電極(7)の上に、配線材料を配置し、裏面出力取出し電極(7)と半導体基板(1)の間にパッシベーション膜(5)を有し』」は、本件発明1の「前記太陽電池セルの前記裏面側において、前記配線部材の搭載領域が前記導電層及び前記絶縁層を有している」に相当する。

d 以上のことから、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「複数の太陽電池セルと、前記太陽電池セル同士を電気的に接続する配線部材と、を備える太陽電池ユニットであって、
前記太陽電池セルが、
基板と、
前記基板における受光面側に配置された表面電極と、
前記基板における前記受光面側とは反対側の裏面側に配置されると共に、前記太陽電池セル同士の接続方向に延びる長尺部を有する裏面電極と、
前記裏面側において、前記長尺部間の領域である前記配線部材の搭載領域に配置される導電層と、
前記裏面側に配置された絶縁層と、を備え、
前記絶縁層には、複数の開口部が形成され、前記長尺部が、前記開口部内に至るまで延びることにより前記基板のシリコン部に接しており、
前記裏面電極の前記長尺部及び前記導電層が、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に配置されていると共に互いに接続されており、
前記太陽電池セルの前記裏面側において、前記配線部材の搭載領域が前記導電層及び前記絶縁層を有している、太陽電池ユニット。」

【相違点1】
本件発明1は「前記導電層及び前記絶縁層と前記配線部材とが接着部材により接合されている」のに対し、甲2発明はそのようなものか明らかではない点。

【相違点2】
導電層が、本件発明1は「開口部内に形成され、」「太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に延びる」のに対し、甲2発明はそのようなものか明らかではない点。

【相違点3】
表面電極の長尺部が、開口部内に至るまで延びることにより基板のシリコン部に接するようにするための、絶縁層の開口部が、本件発明1は「前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に沿って形成され」るのに対し、甲2発明はそのようなものか明らかではない点。

(イ)判断
本件発明1は、訂正により、「前記導電層及び前記絶縁層と前記配線部材とが接着部材により接合されている」ことが限定されたので、当該限定事項に係る相違点1について、まず検討する。
a 甲2の【0123】-【0126】、【0151】及び図1(9)、図9の記載から、甲2ではパッシベーション膜(5)の上に裏面取出し電極(7)が配置されるとともに、裏面取出し電極(7)の上に配線材料を配置することが把握される。そして、甲2の【0151】には「はんだを溶融させることで、上記配線材料と受光面出力取出し電極及び裏面出力取出し電極とを接続した」と記載されている。
このように、甲2では、「パッシベーション膜(5)」と「配線材料」との間に「裏面取出し電極(7)」が配置されていることから、「パッシベーション膜(5)」と「配線材料」とが、接し得ることはなく、よって両者がはんだにより接続されることもない。

b また、相違点1に係る本件発明1の導電層及び絶縁層と配線部材とが接着部材により接合されているという構成は、参4に記載された技術的事項には記載されておらず、本願出願前に太陽電池に関する技術において周知技術であるともいえない。

c そして、甲2発明において、当該限定を有するようにする動機もない。

d したがって、本件発明1は、相違点2、3を検討するまでもなく、当業者であっても、甲2発明、参4に記載された技術的事項、及び周知技術に基づいて容易に発明ができたものとはいえない。

ウ 本件発明2?4、6?10について
本件発明2?4、6?10は、本件発明1の「前記導電層及び前記絶縁層と前記配線部材とが接着部材により接合されている」と同一の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、甲2発明、参4に記載された技術的事項、及び周知技術に基づいて容易に発明ができたものとはいえない。

2 上記1で判断しなかった特許異議申立理由について
(1)明確性について
本件特許の請求項5には、従属先の本件特許の請求項1に対して、太陽電池セルの一部が太陽電池セルに接している旨の矛盾する記載がある。その結果、本件特許の請求項5の範囲が不明確である。

本件特許の請求項5は、訂正により削除されたので、明確になった。

(2)拡大先願について
ア 先願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面には、以下の記載があり、これら記載は甲1にも記載されている(「・・・」は省略を表す。以下同様。)。
「【0012】
<太陽電池素子および太陽電池>
・・・また、太陽電池素子1には、受光面2a上に受光面側電極が設けられている。また、太陽電池素子1には、裏面2b上に裏面側電極が設けられている。」(甲1[0012])

「【0019】
・・・半導体基板2の裏面2bには、パッシベーション層6が設けられている。このパッシベーション層6は、半導体基板2の裏面2b側において、少数キャリアの再結合を低減する。これにより、太陽電池素子1の光電変換効率が向上する。パッシベーション層6・・・は、例えば、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化チタンまたは酸化アルミニウムなど・・・」 (甲1[0019])

「【0021】
第1電極7は、後のモジュール製造工程においてリード部材が接続される。・・・第1電極7は、第1方向(図2のY方向)に沿って裏面2b(主面)上に配置される。・・・」(甲1[0021])

「【0022】
また、隣り合う第1電極7の間に位置する間隙11に・・・パッシベーション層6・・・。これにより、太陽電池素子1の光電変換効率が向上する。」(甲1[0022])

「【0029】
・・・隣り合う太陽電池素子1同士は、・・・複数の第1電極7の上面・・・に導電性接着剤を介して接続されたリード部材15によって電気的に接続されている。・・・」(甲1[0030])

「【0040】
第2電極8の第2部分8bは、Y方向に隣り合っている第1電極7の第2側面7b同士を電気的に接続している。このとき、第2部分8bは、・・・第1電極7の第2側面7bの近傍に位置する第1電極7のX方向における端部を部分的に覆うように設けられてもよい。これにより、第1電極7と第2電極8との接触抵抗を低減・・・
【0041】
・・・スペーサ部材12は、例えば上述の第2電極8、第3電極9または補助集電電極10と同じ材質で・・・」(甲1[0044]、[0045])

「【0056】
・・・受光面側電極は、銀および銅のうち少なくとも一方を含有する導電成分と、ガラスフリットと、有機ビヒクルとを含有する導電ペースト・・・
【0057】
・・・まず、第1電極7を形成するための導電ペースト20bの塗布を行う。使用する導電ペーストは、上述の受光面2a側電極の形成時に用いたものと同様のものが使用可能であり・・・」(甲1[0062]、[0063])

図2又は図7(甲1、図2又は図8)の記載から、太陽電池素子1の裏面側に、第2電極8、8a、8b、第1電極7及びパッシベーション層6が設けられていることが、見て取れる。

図3(甲1、図3)の記載から、パッシベーション層6が開口を有しており、開口を介して第2電極8と半導体基板内部のBSF層14とが接していることが、見て取れる。

図7(甲1、図8)の記載から、隣り合う第1電極7の間に位置する間隙には、パッシベーション層6及びスペーサ部材12が設けられていることが、見て取れる。

図11(甲1、図13)の記載から、複数の太陽電池素子1と、前記太陽電池素子1同士を接続するリード部材15と、を備える太陽電池パネル22が、見て取れる。

したがって、先願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面には、以下の発明(以下「先願1発明」という。)が記載されていると認められる。
「複数の太陽電池素子と、前記太陽電池素子同士を接続するリード部材と、を備える太陽電池パネルであって、
隣り合う太陽電池素子同士は、リード部材によって電気的に接続され、
太陽電池素子には、受光面上に受光面側電極が設けられ、裏面上に裏面側電極が設けられ、
太陽電池素子の裏面側に、第2電極、第1電極及びパッシベーション層が設けられ、
第2電極の第2部分は、Y方向に隣り合っている第1電極の第2側面同士を電気的に接続し、このとき、第2部分は、第1電極の第2側面の近傍に位置する第1電極のX方向における端部を部分的に覆うように設けられ、
第1電極を形成するための導電ペーストは、銀および銅のうち少なくとも一方を含有し、
第1電極は、リード部材が接続され、隣り合う第1電極の間に位置する間隙には、パッシベーション層及びスペーサ部材が設けられ、
スペーサ部材は、第2電極と同じ材質で、
パッシベーション層は、窒化シリコン、酸化シリコン、または酸化アルミニウムなどであり、
パッシベーション層が開口を有しており、開口を介して第2電極と半導体基板とが接している、
太陽電池パネル。」

イ 本件発明1について
(ア)対比
a 先願1発明の「複数の太陽電池素子」は、本件発明1の「複数の太陽電池セル」に、
先願1発明の「『隣り合う太陽電池素子同士』を『電気的に接続』する『リード部材』」は、本件発明1の「太陽電池セル同士を電気的に接続する配線部材」に、
先願1発明の「太陽電池パネル」は、本件発明1の「太陽電池ユニット」に、
先願1発明の「半導体基板」は、本件発明1の「基板」に、
先願1発明の「『太陽電池素子』の『受光面上に』『設けられ』た『受光面側電極』」は、本件発明1の「基板における受光面側に配置された表面電極」に、
先願1発明の「『太陽電池素子』の『裏面上に』『設けられ』た『裏面側電極』」は、本件発明1の「『基板における前記受光面側とは反対側の裏面側に配置される』『裏面電極』」に、
先願1発明の「『第1電極は、リード部材が接続され、』『太陽電池素子の裏面側に、』『設けられ』た『第1電極』」は、本件発明1の「『前記裏面側において、』『前記配線部材の搭載領域に配置される』『導電層』」に、
先願1発明の「『太陽電池素子の裏面側』に『設けられ』た『パッシベーション層』」は、本件発明1の「裏面側に配置された絶縁層」に、
先願1発明の「『パッシベーション層が開口を有しており、』『隣り合う第1電極の間に位置する間隙には、パッシベーション層及びスペーサ部材が設けられ』」は、本件発明1の「『前記絶縁層には、複数の開口部が形成され、』『前記導電層が、前記開口部内に形成され』」に、
それぞれ相当する。

b 先願1の図2(甲1、図2)、図3(甲1、図3)、図7(甲1、図8)及び図11(甲1、図13)の記載から、第2電極8aは、太陽電池素子1同士の接続方向に延びる長尺部を有することが、見て取れ、第1電極7は、第2電極8a間の領域に配置されると共に、太陽電池素子1同士の接続方向に直交する方向に延びること、が見て取れる。また、先願1の背景技術にも記載されているように、太陽電池素子の基板にシリコンの半導体基板は、通常用いられている。
そうすると、先願1発明の「第2電極」は、本件発明1の「裏面電極」と、「太陽電池セル同士の接続方向に延びる長尺部を有する」点で一致し、先願1発明の「第1電極」は、本件発明1の「導電層」と、「太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に延びる」点で一致する。
また、先願1発明の「『パッシベーション層が開口を有しており、』『隣り合う第1電極の間に位置する間隙には、パッシベーション層及びスペーサ部材が設けられ』」は、本件発明1の「開口部が、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に沿って形成され、前記導電層が、前記開口部内に形成され」に、先願1発明の「パッシベーション層が開口を有しており、開口を介して第2電極と半導体基板とが接している」は、本件発明1の「『裏面電極』の『長尺部が、前記開口部内に至るまで延びることにより前記基板のシリコン部に接しており』」に、それぞれ相当する。

c 先願1発明では「『第1電極は、リード部材が接続され、隣り合う第1電極の間に位置する間隙には、パッシベーション層』『が設けられ、』」と特定されていることから、半導体基板とリード部材の間には、第1電極とパッシベーション層を有している。
また、先願1発明では「『太陽電池素子の裏面側に、第2電極、第1電極及びパッシベーション層が設けられ、』『第1電極は、リード部材が接続され、隣り合う第1電極の間に位置する間隙には、パッシベーション層』『が設けられ』」と特定されていることから、リード部材が接続されていない状態において、太陽電池素子の裏面側に、第1電極及びパッシベーション層が設けられている。
そうすると、先願1発明の「『太陽電池素子の裏面側に、第2電極、第1電極、及び、パッシベーション層が設けられ、』『第1電極は、リード部材が接続され、隣り合う第1電極の間に位置する間隙には、パッシベーション層』『が設けられ』」は、本件発明1の「前記太陽電池セルの前記裏面側において、前記配線部材の搭載領域が前記導電層及び前記絶縁層を有している」に相当する。

d 以上のことから、本件発明1と先願1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「複数の太陽電池セルと、前記太陽電池セル同士を電気的に接続する配線部材と、を備える太陽電池ユニットであって、
前記太陽電池セルが、
基板と、
前記基板における受光面側に配置された表面電極と、
前記基板における前記受光面側とは反対側の裏面側に配置されると共に、前記太陽電池セル同士の接続方向に延びる長尺部を有する裏面電極と、
前記裏面側において、前記長尺部間の領域である前記配線部材の搭載領域に配置されると共に、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に延びる導電層と、
前記裏面側に配置された絶縁層と、を備え、
前記絶縁層には、複数の開口部が形成され、当該開口部が、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に沿って形成され、前記導電層が、前記開口部内に形成され、前記長尺部が、前記開口部内に至るまで延びることにより前記基板のシリコン部に接しており、
前記太陽電池セルの前記裏面側において、前記配線部材の搭載領域が前記導電層及び前記絶縁層を有している、太陽電池ユニット。」

【相違点1】
本件発明1は「前記裏面電極の前記長尺部及び前記導電層が、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に配置されていると共に互いに接続されて」いるのに対し、先願1発明はそのようなものか明らかではない点。

【相違点2】
本件発明1は「前記導電層及び前記絶縁層と前記配線部材とが接着部材により接合されている」のに対し、先願1発明はそのようなものか明らかではない点。

(イ)判断
先願1発明の「『第2電極の』『第2部分は、第1電極の第2側面の近傍に位置する第1電極のX方向における端部を部分的に覆うように設けられ』」ているものの、先願1発明において、「第2電極」の長尺部分及び「第1電極」が配置されている方向と「第2電極」の長尺部分及び「第1電極」が接続される方向は異なるので、先願1発明において、「第2電極」の長尺部分及び「第1電極」が「太陽電池素子」同士の接続方向に直交する方向に配置されていると共に互いに接続されてはいない。
また、先願1発明の「パッシベーション層」と「リード部材」とが接着部材により接合していない。
そして、本件発明1と先願1発明との相違点1、2が、課題解決のための具体的手段による微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するもの)でもない。
したがって、本件発明1は、先願1発明と同一又は実質的に同一ではない。

ウ 本件発明2、4、6、7について
本件発明2、4、6、7は、本件発明1の「前記裏面電極の前記長尺部及び前記導電層が、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に配置されていると共に互いに接続されており」、「前記導電層及び前記絶縁層と前記配線部材とが接着部材により接合されている」と同一の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、先願1発明と同一又は実質的に同一ではない。

第6 むすび
以上のとおり、本件請求項1?4、6?10に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件請求項1?4、6?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件請求項5に係る特許は、訂正により削除されたため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、この特許についての特許異議の申立ては却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池セルと、前記太陽電池セル同士を電気的に接続する配線部材と、を備える太陽電池ユニットであって、
前記太陽電池セルが、
基板と、
前記基板における受光面側に配置された表面電極と、
前記基板における前記受光面側とは反対側の裏面側に配置されると共に、前記太陽電池セル同士の接続方向に延びる長尺部を有する裏面電極と、
前記裏面側において、前記長尺部間の領域である前記配線部材の搭載領域に配置されると共に、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に延びる導電層と、
前記裏面側に配置された絶縁層と、を備え、
前記絶縁層には、複数の開口部が形成され、当該開口部が、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に沿って形成され、前記導電層が、前記開口部内に形成され、前記長尺部が、前記開口部内に至るまで延びることにより前記基板のシリコン部に接しており、
前記裏面電極の前記長尺部及び前記導電層が、前記太陽電池セル同士の接続方向に直交する方向に配置されていると共に互いに接続されており、
前記太陽電池セルの前記裏面側において、前記配線部材の搭載領域が前記導電層及び前記絶縁層を有しており、
前記導電層及び前記絶縁層と前記配線部材とが接着部材により接合されている、太陽電池ユニット。
【請求項2】
前記導電層がAl、Al-Si合金、Cu、Sn又はAgを含む、請求項1に記載の太陽電池ユニット。
【請求項3】
前記裏面電極が前記導電層と同一の材料で構成されている、請求項1又は2に記載の太陽電池ユニット。
【請求項4】
前記絶縁層が窒化シリコン、酸化シリコン又は酸化アルミニウムを含む、請求項1?3のいずれか一項に記載の太陽電池ユニット。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記裏面電極の少なくとも一部が前記配線部材の搭載領域にまたがって配置されている、請求項1?4のいずれか一項に記載の太陽電池ユニット。
【請求項7】
前記導電層の少なくとも一部が前記裏面電極と重なって配置されている、請求項1?4、6のいずれか一項に記載の太陽電池ユニット。
【請求項8】
前記受光面側にバスバー電極が配置されることなく前記表面電極が前記太陽電池セルの前記基板と前記配線部材との間に配置されており、
前記配線部材の搭載領域における前記表面電極に相対する位置に前記導電層が配置されている、請求項1?4、6?7のいずれか一項に記載の太陽電池ユニット。
【請求項9】
請求項1?4、6?8のいずれか一項に記載の太陽電池ユニットの製造方法であって、
前記太陽電池セルの前記配線部材の搭載領域上に接着部材及び前記配線部材をこの順に配置する配置工程と、
前記配置工程の後、加圧して前記太陽電池セルと前記配線部材とを接続する接続工程と、を含む、太陽電池ユニットの製造方法。
【請求項10】
前記配置工程において前記接着部材がフィルム状である、請求項9に記載の太陽電池ユニットの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-09-16 
出願番号 特願2014-240037(P2014-240037)
審決分類 P 1 651・ 16- YAA (H01L)
P 1 651・ 113- YAA (H01L)
P 1 651・ 537- YAA (H01L)
P 1 651・ 121- YAA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉岡 一也  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 山村 浩
野村 伸雄
登録日 2018-12-28 
登録番号 特許第6455099号(P6455099)
権利者 日立化成株式会社
発明の名称 太陽電池ユニット及び太陽電池ユニットの製造方法  
代理人 清水 義憲  
代理人 古下 智也  
代理人 平野 裕之  
代理人 平野 裕之  
代理人 吉住 和之  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 古下 智也  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 吉住 和之  

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