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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1368116
異議申立番号 異議2020-700507  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-07-21 
確定日 2020-11-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第6634044号発明「易解体性ホットメルト組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6634044号の請求項1?3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6634044号(請求項の数3。以下、「本件特許」という。)は、平成29年3月2日(優先権主張:平成28年3月31日)に出願された特許出願(特願2017-39296号)に係るものであって、令和1年12月20日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和2年1月22日である。)。
その後、令和2年7月21日に、本件特許の請求項1?3に係る特許に対して、特許異議申立人である星正美(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。


第2 本件発明
本件の請求項1?3に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明3」という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。

「【請求項1】重量平均分子量が15万以上のSEEPSブロックコポリマー(A)100重量部に対して、
動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)300?1000重量部と、
軟化点が100℃以上の芳香族系石油樹脂(C)50?400重量部と、
テルペン樹脂(D)50?600重量部と、を含み、
ポリプロピレンワックスを含まないことを特徴とする易解体性ホットメルト組成物。
【請求項2】芳香族系石油樹脂(C)が、α-メチルスチレン系共重合体であることを特徴とする請求項1記載の易解体性ホットメルト組成物。
【請求項3】自動車灯具に用いられることを特徴とする請求項1又は2記載の易解体性ホットメルト組成物。」


第3 異議申立ての理由の概要
申立人の異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。
・申立ての理由1
本件発明1?3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?7号証に記載された技術的事項に基づいて、又は、甲8号証に記載された発明及び甲第3?7号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到したものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件発明1?3に係る特許は同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

<証拠方法>
甲第1号証:特表2010-530905号公報
甲第2号証:特開2015-91917号公報
甲第3号証:特開2011-153227号公報
甲第4号証:特開2010-254809号公報
甲第5号証:国際公開第2015/159912号
甲第6号証:特開2011-190287号公報
甲第7号証:特開平11-256123号公報
甲第8号証:特開2011-162747号公報


第4 各甲号証に記載された事項
申立人が提示した甲第1号証ないし甲第8号証について記載された事項を以下に確認する。

(1)甲第1号証に記載された事項
本件特許に係る出願の優先日前の平成22年9月16日に頒布された刊行物である特表2010-530905号公報(甲第1号証)には、以下の事項が記載されている。

(甲1a)「【請求項1】約1重量%から約20重量%のスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンランダムブロック共重合体と、
約10重量%から70重量%の、約85℃から約125℃の軟化点を有する第1中間ブロックの粘着付与樹脂と、
約0%から65%の第2中間ブロックの粘着付与樹脂と、
約5重量%から約60重量%の可塑剤と、
約0重量%から約20重量%の、115℃以上の軟化点を有する末端ブロックの強化樹脂とを含む成分から成る混合物を含む熱溶融性接着剤組成物であって、
前記成分が合計で前記組成物の100重量%であって、かつ前記組成物の粘度が160℃で約20,000mPa.s以下である組成物。
・・・
【請求項15】約40重量%から約65重量%の前記第1中間ブロックの粘着付与樹脂を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】約50重量%から約60重量%の前記第1中間ブロックの粘着付与樹脂を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】前記組成物が少なくとも約70%の初期接着保持率を有する、請求項1に記載の組成物。
・・・
【請求項20】少なくとも約50%の1週間後の接着保持率をさらに有する、請求項1に記載の組成物。
・・・
【請求項23】前記中間ブロックの粘着付与樹脂が、脂肪族炭化水素樹脂およびその水素化誘導体、水素化脂環式炭化水素樹脂、芳香族変性脂肪族炭化水素樹脂または水素化脂環式炭化水素樹脂、脂肪族変性芳香族炭化水素樹脂、部分的または完全な水素化芳香族炭化水素樹脂、ポリテルペン樹脂、およびスチレン化ポリテルペン樹脂から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】前記可塑剤が鉱油および液体ポリブテンから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】石油ワックス、微結晶ワックス、低分子量のポリエチレンおよびポリプロピレンの合成ワックス、およびポリオレフィンワックスから成る群から選択されるワックスをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
・・・」(特許請求の範囲)

(甲1b)「本発明は、熱溶融性接着剤、より具体的には、使い捨ておむつに使用される弾性ストランドを含む積層板等の弾性構成材を製造するための、高い初期接着抵抗を与える高分子量のスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEEPS)を用いた熱溶融性接着剤に関する。」(段落【0001】)

(甲1c)「本発明は、特におむつの構造物への弾性接着のための、高分子量スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)ブロック共重合体を用いた独特の調製に基づく。本発明は、被覆技術およびアドオンレベル等の現在用いられているものと同じ適用技術を用いて、比較的低い適用温度、すなわち170℃未満で塗布される熱溶融性接着剤を有すること、また、力学的抵抗および熱抵抗によって最終使用に現在の技術で期待される同じレベルの性能、すなわちクリープ抵抗、剥離力、および一般的には接着保持力の点で高い接着強度レベルを提供することという緊要な要件を解決する。加えて、高分子量の等級のSEEPSは、潜在的な費用節減を提供する調製において、より高い油の装填を可能にする。同様に、SEEPSは、中間ブロック樹脂のより高い装填を可能にするSEBS等のその他の重合体と比べて比較的低いガラス転移温度を有する。最後に、SEEPSは高温にて熱的に安定である。」(段落【0022】)

(甲1d)「本発明の接着剤組成物および/または積層板は、様々な最終製品の製造において用いることができる。例としては、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、ベッドパッド、包帯、外科用ドレープ、テープ、ラベル、プラスチックシート、不織シート、紙シート、ボール紙、本、フィルター、または包装が挙げられる。」(段落【0043】)

(甲1e)「本発明の熱溶融性接着剤組成物は、SEEPS共重合体の中間ブロックと相溶性のある固体の粘着付与剤も含む。代表的な樹脂としては、C_(5)/C_(9)炭化水素樹脂、合成ポリテルペン、ロジン、ロジンエステル、天然テルペンなどが挙げられる。より詳細には、当該有用な粘着付与樹脂としては、(1)ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、二量体ロジン、および重合ロジンを含む天然ロジンおよび変性ロジン、(2)淡色ウッドロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのペンタエリトリトールエステル、およびロジンのフェノール変性ペンタエリトリトールエステルを含む天然ロジンおよび変性ロジンのグリセロールエステルおよびペンタエリトリトールエステル、(3)スチレン/テルペンおよびαメチルスチレン/テルペン等の天然テルペンの共重合体および三元重合体、(4)中程度に低温でのフリーデル・クラフツ触媒の存在下における、ピネンとして知られている二環式モノテルペン等のテルペン炭化水素の重合によって一般的に生じるポリテルペン樹脂(水素化ポリテルペン樹脂も含む)、(5)例えば、酸性媒質中における二環式テルペンおよび二環式フェノールの縮合によって生じる樹脂生成物等のフェノール変性テルペン樹脂およびその水素化誘導体、(6)主にオレフィンおよびジオレフィンから成る単量体の重合によって生じる脂肪族石油炭化水素樹脂(水素化脂肪族石油炭化水素樹脂も含む)、および(7)環式石油炭化水素樹脂およびその水素化誘導体等のあらゆる相溶性のある樹脂またはその混合物が挙げられる。2つ以上の上記の粘着付与樹脂の混合物は、いくつかの調製に必要であり得る。同様に、環式または非環式のC_(5)の樹脂、および芳香族変性非環式または環式の樹脂も挙げられる。好適であるのは、芳香族変性環式または非環式のC_(5)の樹脂である。
当該粘着付与樹脂は、少なくとも約85℃、好ましくは約85℃から約125℃の環球式軟化点を有するはずである。より好ましくは、当該軟化点は約95℃から115℃である。好適な粘着付与剤は、約100℃から115℃の環球式軟化点を有する水素化芳香族変性ジシクロペンタジエン樹脂である。これらの樹脂は、商品名Escorez 5600およびEscorez 5615としてExxon Mobil Chemical社より市販されており、それらの軟化点はそれぞれ100℃および115℃である。
「中間ブロック樹脂」とも呼ばれる粘着付与剤は一般的に、そのブロック共重合体の量よりも多い量で接着剤組成物中に存在している。この範囲内にて、その組成物の約10重量%から70重量%の量、好ましくは約40重量%から65重量%の量が利用され、最も好ましくは約50重量%から60重量%の量である。2つ以上の粘着付与樹脂の混合物も用いることができる。例えば、第1中間ブロックの粘着付与樹脂、および第1中間ブロックの粘着付与樹脂とは異なる第2中間ブロックの粘着付与樹脂の混合物もまた用いることができる。約0重量%から約60重量%の1つ以上のさらなる中間ブロックの粘着付与樹脂が、所望であれば第1中間ブロックの粘着付与樹脂とともに混合することができる。」(段落【0047】?【0049】)

(甲1f)「本発明に従う熱溶融性接着剤の製法において用いられる主要な重合体成分は、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンランダムブロック共重合体(SEEPS)である。当該SEEPS重合体は、約1重量%から約20重量%、好ましくは約4重量%から約15重量%、最も好ましくは約5重量%から約13重量%の量で組成物に組み込むことができる。SEEPSは、水素化ポリ(スチレン-b-イソプレン/ブタジエン-b-スチレン)ランダムブロック共重合体である。SEEPSは下記の化学式を有する:
【化1】・・・
本発明の熱溶融性接着剤において有用なSEEPS重合体は、140,000ダルトン以上、好ましくは160,000ダルトン以上、最も好ましくは180,000ダルトン以上の重量平均分子量(Mw)を有する。SEEPSは、主に下記のその分子量に基づいて識別可能な様々な等級でSepton Company of America社より市販されている:
【表1】


当該SEEPS重合体の分子量はGPCによって測定した。GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)は、重合体試料を公知のポリスチレン標準試料と比較することによって分子量および分子量分布(Mz、Mw、およびMn)を測定するクロマトグラフ法である。用いられた方法はASTM D5296-05と類似している。Mz(z:平均分子量)は、当該重合体の高分子量テールを指す値である。Mw(重量平均分子量)は、その重合体の平均分子量を指す。Mn(数平均分子量)は、当該重合体のより低い分子量を指す。」(段落【0050】?【0051】)

(甲1g)「本発明に従う熱溶融性接着剤の製法は、約5重量%から約60重量%、好ましくは約15重量%から約55重量%、より好ましくは約20重量%から約50重量%のあらゆる可塑剤も含む。適切な可塑剤は、鉱油等の通常の可塑油だけでなく、オレフィン数量体および低分子量の重合体、安息香酸グリコール、ならびに植物油、動物油、およびこのような油の誘導体も含む群から選択することができる。用いることができる石油由来の油は、非常に小さい割合の芳香族炭化水素を含む比較的沸点が高い物質である。この点において、当該芳香族炭化水素は、好ましくは30重量%未満、より好ましくは15重量%未満の油であるべきである。あるいは、その油は完全に非芳香族であり得る。当該数量体は、約100g/molから約10,000g/molの平均分子量を有するポリプロピレン、ポリブテン、水素化ポリイソプレン、水素化ブタジエンなどであり得る。適切な植物油および動物油としては、通常の脂肪酸のグリセロールエステル、およびその重合生成物が挙げられる。適切な相溶性を有する場合、その他の可塑剤を用いてもよい。Nynas社によって製造されるナフテン酸鉱油Ny flex 222Bもまた、適切な可塑剤であることが分かっている。当然のことながら、可塑剤は一般的に、接着剤の接着強度および/または使用温度を実質的に減少させることなく、接着剤組成物全体の粘性を下げるために用いられている。可塑剤の選択は、特定の最終用途(例えば、湿潤強度のコア用途)のための調製において有用となり得る。生産および材料費に関わる経済状況のために、可塑剤は重合体および粘着付与樹脂等の調製に関わるその他の材料よりも通常は低価格であるので、接着剤中の可塑剤の量は経費検討のために最大にするべきである。」(段落【0054】)

(甲1h)「ワックスもまた当該接着剤組成物において用いることができ、その接着特性をそれほど減少させることなく、熱溶融性構造用接着剤の溶融粘度を低減するために用いられる。これらのワックスは、温度性能に影響を及ぼすことなく組成物の開放時間を低減するためにも用いられる。」(段落【0055】)

(甲1i)「当該接着剤は一般的に、約0.1%から約5%の安定剤または酸化防止剤も含む。本発明の熱溶融性接着剤組成物において有用である安定剤は、通常は接着剤の製造および塗布の間、ならびに最終生成物の周囲環境への一般的な暴露中に起こる熱的分解および酸化的分解の影響から、上記の重合体、ひいては全体の接着剤系を保護することを促進するために組み込まれる。このような分解は通常、接着剤の外観、物理的特性、および性能特性における劣化によって明らかにされる。特に好適な酸化防止剤は、Ciba-Geigy社によって製造されるIrganox 1010、テトラキス(メチレン(3,5-ジ-teri-ブチル-4-ヒドロキシヒドロケイ皮酸))メタンである。・・・」(段落【0066】)

(甲1j)「別の実施形態では、当該接着剤の製法は、完全に芳香族性または実質上完全に芳香族性の末端ブロック強化樹脂を含むことができる。その芳香族性の樹脂または実質上完全に芳香族性の樹脂は、115℃以上の軟化点を有するはずである。このような末端ブロック樹脂の例は、重合可能な不飽和基を有する任意の実質的に芳香族性の単量体から調製することができる。このような芳香族性の単量体の典型的な例としては、スチレン単量体、スチレン、αメチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン、3級ブチルスチレン、クロロスチレン等、ならびにクマロン、インデンを含むインデン単量体、およびメチルインデンが挙げられる。その芳香族性の末端ブロック樹脂の環球式軟化点は、115℃から160℃であることが好ましい。より好ましくは、その軟化点は約115℃から140℃であり、最も好ましくは約120℃から140℃である。2つの好適な例は、Eastman chemical社より市販されているPlastolyn 240およびPlastolyn 290である。この2つは120℃および140℃の環球式軟化点をそれぞれ有する。好ましくは、スチレンおよび/またはα-メチル-スチレンおよび/またはビニル-トルエン単量体が用いられる。この強化樹脂は、当該接着剤組成物中に約20%未満の量で、好ましくは約2%から約15%の間の量で、より好ましくは約4%から約12%の量で、最も好ましくは約6%から約10%の量で存在するはずである。」(段落【0081】)

(甲1k)「【実施例】
本明細書にて下記に記載される材料および混合手順を用いて、熱溶融性接着剤を調製した。
・・・」(段落【0089】?【0090】)

(甲1l)「実施例に示される様々な組成物において、下記の原料を用いた:
NYNAS 222Bは、Nynas社より市販されているナフテン油である。
SUKOREZ SU-120は、Kolon Chemical社より市販されている、約120℃の軟化点を有する完全に水素化された炭化水素粘着付与樹脂である。
ESCOREZ 5600、ESCOREZ 5615、およびESCOREZ 5637は全て、Exxon Mobil Chemicals社より市販されている、約100℃、約115℃、および約130℃の軟化点をそれぞれ有する水素化多環式芳香族変性脂肪族粘着付与樹脂である。
IRGANOX 1010は、Ciba-Specialty Chemicals社(ニューヨーク州、タリートン)より入手したヒンダーフェノール型の酸化防止剤である。
・・・
Piccolyte HM 106は、Pinova Chemical社より市販されている、約105℃の軟化点を有するスチレン化テルペンの粘着付与樹脂である。
PLASTOLYN 140は、Eastman Chemical社より市販されている、約140℃の軟化点を有する完全な芳香族炭化水素樹脂である。
SEPTON S4044は、Septon Company of America社より市販されている、32%のスチレンを含むスチレン-エチレン/エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)である。30℃のトルエン中における10%での溶液粘度は460mPa.sであり、5%では22mPa.sである。
・・・
本明細書にて用いられる「HC」は、「炭化水素」の省略形である。
・・・」(段落【0096】?【0115】)

(甲1m)「【実施例7】
表10は、テープおよびラベル用途での使用のための、本発明に従って調製された組成物を例示している。表10はその組成物の剥離強度のデータを示している。これらの結果から、本発明が記載している要件およびテープおよびラベル用途における接着剤としての機能を満たすために製法1636-131-2が適切であることは明らかである。
【表10】


」(段落【0123】)

(2)甲第2号証に記載された事項
本件特許に係る出願の優先日前の平成27年5月14日に頒布された刊行物である特開2015-91917号公報(甲第2号証)には、以下の事項が記載されている。

(甲2a)「【請求項1】ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とのブロック共重合体及びその水素添加物のうち少なくとも一種を含んでいる熱可塑性ブロック共重合体(A)、及び不飽和カルボン酸類又はその無水物によって酸変性されてなる酸変性石油樹脂(B)を含んでいることを特徴とするホットメルト接着剤。
【請求項2】酸変性石油樹脂(B)の含有量が、熱可塑性ブロック共重合体(A)100重量部に対して、10?200重量部であることを特徴とする請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】不飽和カルボン酸類又はその無水物によって酸変性されていない未変性石油樹脂(C)を含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】未変性石油樹脂(C)の含有量が、熱可塑性ブロック共重合体(A)100重量部に対して、100?300重量部であることを特徴とする請求項3に記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】可塑剤(D)を含有していることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項6】ワックス(E)を含有していることを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項7】ワックス(E)が、ポリオレフィン系ワックスを含有していることを特徴とする請求項6に記載のホットメルト接着剤。
【請求項8】ポリオレフィン系ワックスが、酢酸ビニル成分を含有していることを特徴とする請求項7に記載のホットメルト接着剤。
【請求項9】請求項1?8のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤を用いてなることを特徴とする使い捨て製品。」

(甲2b)「本発明は、ホットメルト接着剤に関し、特に、紙おむつなどの使い捨て製品を製造するために好適に用いられるホットメルト接着剤に関する。」(段落【0001】)

(甲2c)「したがって、本発明は、熱安定性の低下や臭気の発生をさせることなく、ポリオレフィン系樹脂フィルム、不織布、ティッシュ、及び天然ゴムなどの構成部材に対して、湿潤接着性が向上されているホットメルト接着剤を提供することを目的とする。」(段落【0013】)

(甲2d)「(熱可塑性ブロック共重合体(A))
本発明のホットメルト接着剤は、熱可塑性ブロック共重合体(A)を含んでいる。熱可塑性ブロック共重合体(A)としては、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とを共重合させてなるブロック共重合体及びその水素添加物が挙げられる。熱可塑性ブロック共重合体(A)は、上記ブロック共重合体及びその水素添加物のうち少なくとも一種を含んでいるが、上記ブロック共重合体及びその水素添加物のうち少なくとも一種のみからなることが好ましい。
・・・
熱可塑性ブロック共重合体(A)として、具体的には、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、及びスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)などのブロック共重合体の未水素添加物;スチレン-ブタジエン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、及びスチレン-エチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)などの水素添加物等が挙げられる。これらの熱可塑性ブロック共重合体(A)は、一種単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
熱可塑性ブロック共重合体(A)の重量平均分子量は、50,000?300,000が好ましく、70,000?250,000がより好ましく、100,000?200,000が特に好ましい。重量平均分子量(Mw)が小さ過ぎるスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体では、ホットメルト接着剤の凝集力が低下し、そのため湿潤接着性が低下する虞れがある。また、重量平均分子量(Mw)が大き過ぎるスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体では、ホットメルト接着剤の塗工性を低下させる虞れがある。
なお、本発明において、熱可塑性ブロック共重合体(A)の重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置を用いて、標準ポリスチレンで換算することにより得られる測定値のことを意味する。」(段落【0015】?【0023】)

(甲2e)「(酸変性石油樹脂(B))
本発明のホットメルト接着剤は、不飽和カルボン酸類又はその無水物によって酸変性されてなる酸変性石油樹脂(B)を含んでいる。酸変性石油樹脂(B)は、分子内にカルボキシル基(-COOH)及びカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)のうち少なくとも一種の極性基を有する。酸変性石油樹脂(B)は、カルボキシル基及びカルボン酸無水物基のうち、いずれか一方を有していてもよく、双方を有していてもよい。また、酸変性石油樹脂(B)は、一種のみが用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。
・・・
酸変性石油樹脂(B)は、未変性の石油樹脂を不飽和カルボン酸類又はその無水物によって酸変性することにより得られる。
未変性の石油樹脂としては、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂などの石油樹脂、及びそれら石油樹脂の水添物などが挙げられる。
不飽和カルボン酸類又はその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、及びこれらの酸無水物などが挙げられる。
・・・」(段落【0025】?【0035】)

(甲2f)「(未変性石油樹脂(C))
本発明のホットメルト接着剤は、不飽和カルボン酸類又はその無水物によって酸変性されていない未変性石油樹脂(C)を含んでいることが好ましい。
酸変性石油樹脂(B)と未変性石油樹脂(C)とを組み合わせて用いることによって、ホットメルト接着剤の臭気の発生をより高く低減できると共に、熱安定性をさらに向上させることができる。
未変性石油樹脂(C)としては、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、及びこれらの水添物などが挙げられる。水添物において、不飽和結合の全てが水素添加されていてもよく、不飽和結合の一部が水素添加されていてもよい。未変性石油樹脂(C)は、一種のみが用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。
・・・」(段落【0036】?【0042】)

(甲2g)「(可塑剤(D))
本発明のホットメルト接着剤は、可塑剤(D)を含んでいることが好ましい。可塑剤(D)によれば、ホットメルト接着剤の湿潤接着性をさらに向上させることができる。
可塑剤(D)としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、及び芳香族系プロセスオイルなどのプロセスオイルなどが挙げられる。なかでも、
パラフィン系プロセスオイル及びナフテン系プロセスオイルが好ましく、パラフィン系プロセスオイルがより好ましい。これらの可塑剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
・・・
パラフィン系プロセスオイルの数平均分子量(Mn)は、100?1500が好ましく、250?1000がより好ましい。数平均分子量(Mn)が小さ過ぎるパラフィン系プロセスオイルでは、ホットメルト接着剤の凝集力を低下させて湿潤接着性が不十分となる虞れがある。また、数平均分子量(Mn)が大き過ぎるパラフィン系プロセスオイルでは、ホットメルト接着剤の溶融粘度を高くし過ぎて、ホットメルト接着剤の塗工性が低下する虞れがある。
パラフィン系プロセスオイルとしては、市販されている製品を用いることができる。市販品としては、例えば、日本油脂製の商品名「NAソルベント」、出光興産製の商品名「PW-380」、出光興産社製の商品名「ダイアナフレシアS32」、出光興産社製の商品名「PS-32」、出光石油化学社製の商品名「IP-ソルベント2835」、出光石油化学社製の製品名「ダイアナプロセスオイルPW-90」、三光化学工業社製の商品名「ネオチオゾール」などが挙げられる。
ナフテン系プロセスオイルは、脂肪族系環状炭化水素が好ましい。ナフテン系プロセスオイルに含まれている脂肪族系環状炭化水素の炭素数は、3以上であることが好ましい。
・・・
ナフテン系プロセスオイルとしては、市販されている製品を用いることができる。市販品としては、例えば、出光興産社製の商品名「ダイアナフレシアN28」、出光興産社製の商品名「ダイアナフレシアU46」、出光興産社製の商品名「ダイアナプロセスオイルNR」、シェル化学社製の製品名「シェルフレックス371N」などが挙げられる。
・・・
ホットメルト接着剤中における可塑剤(D)の含有量としては、熱可塑性ブロック共重合体(A)100重量部に対して、25?250重量部が好ましく、50?150重量部がより好ましい。可塑剤(D)の含有量が高過ぎるホットメルト接着剤では、耐クリープ性が低下したり、凝集力が低下して湿潤接着性が低下したりする虞れがある。また、可塑剤(D)の含有量が低過ぎるホットメルト接着剤では、加熱溶融後の固化速度が高くなり過ぎて、接着性、特に湿潤接着性が低下する虞れがある。」(段落【0043】?【0052】)

(甲2h)「本発明のホットメルト接着剤は、ワックス(E)を含んでいることが好ましい。ワックス(E)によれば、ホットメルト接着剤の湿潤接着性をさらに向上させることができる。
ワックス(E)としては、例えば、シュラックワックス、蜜ろうなどの動物系ワックス;カルナバワックス、はぜろうなどの植物系ワックス;パラフィンワックス、マクロクリスタリンワックスなどの鉱物系ワックス;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エチレン-酢酸ビニル共重合体系ワックスなどのポリオレフィン系ワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックスなどが挙げられるが、なかでも、ポリオレフィン系樹脂フィルムに対する湿潤接着性を高め、且つ、熱安定性を低下させることがなく、臭気の発生を低減させる観点から、ポリオレフィン系ワックスが好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)系ワックスがより好ましい。
・・・
ホットメルト接着剤中におけるワックス(E)の含有量としては、熱可塑性ブロック共重合体(A)100重量部に対して、5?50重量部が好ましく、10?30重量部がより好ましい。ワックス(E)の含有量が高すぎると、ホットメルト接着剤が硬くなり、ホットメルト接着剤の湿潤接着性が低下する虞れがある。また、ワックス(E)の含有量が低過ぎると、ポリオレフィン系樹脂に対するホットメルト接着剤の湿潤接着性が低下する虞れがある。
なお、ポリオレフィン系樹脂フィルムに対する湿潤接着性を高め、且つ、臭気をより抑制するために、ホットメルト接着剤は、ポリオレフィン系ワックスとプロセスオイルとを含有することが好ましい。」(段落【0053】?【0059】)

(甲2i)「本発明のホットメルト接着剤は、使い捨て製品の製造に好適に用いられる。使い捨て製品としては、特に限定されないが、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、ペットシート、病院用ガウン、及び手術用白衣などのいわゆる衛生材料などが挙げられる。」(段落【0065】)

(甲2j)「以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例】
後記する実施例及び比較例において、ホットメルト接着剤の製造に用いた熱可塑性ブロック共重合体、酸変性石油樹脂、未変性石油樹脂、及び可塑剤、酸化防止剤、及びワックスのそれぞれについて、以下に詳細な説明を記載する。
熱可塑性ブロック共重合体:
・スチレン‐イソプレン‐スチレン(SIS)ブロック共重合体(A1)[スチレン成分含有量16重量%、重量平均分子量(Mw)171,000、日本ゼオン社製、製品名「Quintac3433N」]
・スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロック共重合体(A2)[スチレン成分含有量30重量%、重量平均分子量(Mw)122,300、旭化成ケミカルズ社製、
製品名「AsapreneT-436」]
・スチレン-ブタジエン/ブチレン-スチレン(SBBS)ブロック共重合体(A3)[スチレン含有量30重量%、重量平均分子量(Mw)100,000、旭化成ケミカルズ社製、製品名「タフテック P1500」]
・スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン(SEPS)ブロック共重合体(A4)[スチレン含有量30重量%、重量平均分子量(Mw)55,000、クラレ社製、製品名「セプトン 2002」]
・スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)ブロック共重合体(A5)[スチレン含有量30重量%、重量平均分子量(Mw)200,000、旭化成ケミカルズ社製、製品名「タフテック H1041」]
・マレイン酸変性スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)ブロック共重合体[旭化成社製 商品名「タフテック M1913」]
酸変性石油樹脂:
・マレイン酸により酸変性されてなる酸変性石油樹脂(B1)[軟化点100℃、酸価1.8mgKOH/g、日本ゼオン社製 商品名「クインタックCX495」]
未変性石油樹脂:
・未変性石油樹脂(C1)[脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、軟化点100℃、荒川化学製 製品名「Arkon M-100」]
・未変性石油樹脂(C2)[脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、軟化点80℃、ゼネラル製 製品名「E5380」]
・未変性石油樹脂(C3)[脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、軟化点120℃、出光興産製 製品名「アイマーブP120」]
可塑剤:
・パラフィン系プロセスオイル(D1)(数平均分子量(Mn)980、脂肪族鎖状炭化水素、出光石油社製 製品名「ダイアナプロセスオイルPW-90」)
・ナフテン系プロセスオイル(D2)(数平均分子量(Mn)100?1500、脂肪族系環状炭化水素、シェル化学社製 製品名「シェルフレックス371N」)
酸化防止剤:
フェノール系酸化防止剤(BASF社製 製品名「IRGANOX1010」)
ワックス:
・エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)系ワックス(E1)(融点92℃、Honeywell社製 製品名「A-C400」)
・ポリエチレン(PE)ワックス(E2)(融点113℃、Honeywell社製 製品名「A-C8」)
・カルボン酸無水物によって酸変性された酸変性ポリエチレン(PE)ワックス(E3)(融点104℃、イノスペック社製 製品名「Viscowax261」)」(段落【0068】?【0074】)

(甲2k)「(実施例1?16及び比較例1?3)
それぞれ上述した、SISブロック共重合体(A1)、SBSブロック共重合体(A2)、SBBSブロック共重合体(A3)、SEPSブロック共重合体(A4)、SEBSブロック共重合体(A5)、マレイン酸変性SEBSブロック共重合体、酸変性石油樹脂(B1)、未変性石油樹脂(C1)?(C3)、パラフィン系プロセスオイル(D1)、ナフテン系プロセスオイル(D2)、フェノール系酸化防止剤、EVA系ワックス(E1)、PEワックス(E2)、及び、酸変性PEワックス(E3)を、それぞれ表1、2に示した配合量で、加熱装置を備えた攪拌混練機中に投入した後、145℃で90分に亘って加熱しながら混練することにより、ホットメルト接着剤を製造した。
・・・
【表1】


【表2】


」(段落【0075】?【0089】)

(3)甲第3号証に記載された事項
本件特許に係る出願の優先日前の平成23年8月11日に頒布された刊行物である特開2011-153227号公報(甲第3号証)には、以下の事項が記載されている。

(甲3a)「【請求項1】(A)スチレン系単量体からなる重合体のブロック単位(s)と、共役ジエン化合物からなる重合体のブロック単位(b)とからなるブロック共重合体(Z)の水素添加物である、重量平均分子量が180,000?500,000の水添熱可塑性スチレン系エラストマー、
(B)40℃での動粘度が20?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル、及び
(C)密度が870?940kg/m^(3)、メルトマスフローレイトが100g/10min以下のポリエチレン
を含有してなる熱可塑性エラストマー組成物であって、前記パラフィンオイルの含有量が、前記水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、50?300質量部であり、前記ポリエチレンの含有量が、前記水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、10?200質量部である、熱可塑性エラストマー組成物。
・・・
【請求項3】水添熱可塑性スチレン系エラストマーが、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体、及びスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1又は2記載の熱可塑性エラストマー組成物。
・・・」(特許請求の範囲)

(甲3b)「本発明は、シール材・パッキン・制振部材・チューブ・工業用品、雑貨、スポーツ用途等に用いられる熱可塑性エラストマー組成物に関する。」(段落【0001】)

(甲3c)「水添熱可塑性スチレン系エラストマーの具体例としては、・・・等が挙げられる。これらは、単独であっても、2種以上の混合物であってもよいが、原料調製及び作業性の観点から、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、及びスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、特にブロック単位(b)を構成する共役ジエン化合物部に分岐鎖の少ないSEBSがより好ましい。
・・・
水添熱可塑性スチレン系エラストマーの重量平均分子量は、180,000?500,000である。耐熱性や機械特性の観点から、180,000以上であり、好ましくは190,000以上、より好ましくは200,000以上である。また、加熱時の流れやすさ、つまり製造時における成形性の観点から、500,000以下であり、好ましくは300,000以下、より好ましくは250,000以下である。これらの観点から、水添熱可塑性スチレン系エラストマーの重量平均分子量は、好ましくは190,000?300,000、より好ましくは200,000?250,000である。」(段落【0014】?【0018】)

(甲3d)「パラフィンオイルの40℃での動粘度は、20?1000mm^(2)/sである。動粘度が低すぎると、揮発し易く、得られる組成物の保存安定性が低下することがあるため、20mm^(2)/s以上であり、好ましくは25mm^(2)/s以上、より好ましくは30mm^(2)/s以上である。また、動粘度が高すぎると製造時における操作性に不備が生じるため、1000mm^(2)/s以下であり、好ましくは700mm^(2)/s以下、より好ましくは500mm^(2)/s以下である。これらの観点から、パラフィンオイルの40℃での動粘度は、好ましくは25?700mm^(2)/s、より好ましくは30?500mm^(2)/sである。
パラフィンオイルの含有量は、水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、50?300質量部である。パラフィンオイルの含有量が少なすぎると、各種配合成分の分散性が低下するため、水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、50質量部以上であり、好ましくは55質量部以上、より好ましくは60質量部以上である。また、パラフィンオイルの含有量が多すぎると、オイルブリードが生じ、物性等の劣化にもつながるため、水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、300質量部以下であり、好ましくは290質量部以下、より好ましくは280質量部以下である。これらの観点から、パラフィンオイルの含有量は、水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、好ましくは55?290質量部、より好ましくは60?280質量部である。」(段落【0017】?【0018】)

(甲3e)「ポリエチレンの密度は、870?940kg/m^(3)である。・・・
・・・
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ベタツキを低減し、使用感を向上する観点から、さらに相溶化剤を含有していることが好ましい。
相溶化剤としては、非晶部分(ゴム部分)のブロックAと結晶性ポリオレフィンブロックBをそれぞれ分子中に少なくとも1個有するブロック共重合体が好ましい。
・・・
さらに、本発明において相溶化剤として用いられ得るブロック共重合体としては、前記一般式で示したブロック共重合体を構成するブロックBの一部をビニル芳香族化合物の重合体のブロックCで置き換えたブロック共重合体があってもよい。
ビニル芳香族化合物の具体例としては、スチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルスチレン、1,1-ジフェニルスチレン等が挙げられ、これらの中では、スチレン及びα一メチルスチレンが好ましい。
・・・
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、圧縮永久歪みの改良の観点から、さらにポリフェニレンエーテルを含有していることが好ましい。
・・・
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、カーボンブラック、シリカ、炭素繊維、ガラス繊維等の補強剤;炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化チタン、マイカ等の充填剤;滑剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、粘着付与剤、架橋剤、架橋助剤、発泡剤、香料等の各種添加剤を含有していてもよい。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他のポリマーを適宜含有していてもよい。」(段落【0019】?【0039】)

(甲3f)「本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、シール材・パッキン・制振部材・チューブ・工業用品、雑貨、スポーツ用途等に用いられる。」(段落【0071】)

(4)甲第4号証に記載された事項
本件特許に係る出願の優先日前の平成22年11月11日に頒布された刊行物である特開2010-254809号公報(甲第4号証)には、以下の事項が記載されている。

(甲4a)「【請求項1】(A)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つからなるブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体であって、重量平均分子量が30万?45万である水添ブロック共重合体100質量部、
(B)40℃における動粘度が350?400mm^(2)/secで、かつゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が1.3以下である非芳香族系ゴム用軟化剤180?270質量部及び
(C)ポリプロピレン3.0?10質量部
を含有する、ショアA硬度が4?12度の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】(A)成分である水添ブロック共重合体が、ポリスチレン-水添ポリブタジエン-ポリスチレンのトリブロック共重合体、ポリスチレン-水添ポリイソプレン-ポリスチレンのトリブロック共重合体及びポリスチレン-水添ブタジエン/イソプレン共重合体-ポリスチレンのトリブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物を成形して得られる成形体。」(特許請求の範囲)

(甲4b)「本発明は、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加した水添ブロック共重合体、非芳香族系ゴム用軟化剤及びポリプロピレンを含有する熱可塑性エラストマー組成物、並びにその成形体に関する。」(段落【0001】)

(甲4c)「【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された熱可塑性エラストマー組成物は、硬度(JIS A)が22度であり、超低硬度(12度以下)の熱可塑性エラストマーは得られていない。一方、特許文献3に開示された熱可塑性エラストマー組成物は、硬度(JIS A)が4?7と低い。そこで、本発明者らは特許文献3の実施例に準じて熱可塑性エラストマー組成物を製造してみたところ、確かに超低硬度となるものの、若干軟化剤がブリードアウトしており、更なる改良の余地があることがわかった(本明細書の比較例10参照。)。
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記問題に着目し、鋭意検討した結果、所定の重量平均分子量の水添ブロック共重合体100質量部に対して、所定の動粘度(40℃)を有し、かつ分子量分布(Mw/Mn)が所定値以下である非芳香族系ゴム用軟化剤180?270質量部、及びポリプロピレン3.0?10質量部を含有する熱可塑性エラストマー組成物であれば、超低硬度(ショアA硬度=4?12度)を達成しながらも、非芳香族系ゴム用軟化剤のブリードアウトが発生せず、また圧縮永久歪が小さくなることを見出し、本発明を完成した。」(段落【0003】?【0005】)

(甲4d)「[(A)水添ブロック共重合体]
(A)成分である、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つからなるブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体の重量平均分子量は、30万?45万である必要があり、好ましくは33万?42万、より好ましくは35万?40万である。(A)成分の重量平均分子量が30万未満の場合、後述する(B)成分の配合量に耐えられず、熱可塑性エラストマー組成物から(B)成分がブリードアウトする傾向にあり、また、熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪も大きくなる。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、単分散ポリスチレンを基準としてポリスチレン換算で求めた値である。
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つからなるブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体としては、例えばポリスチレン-水添ポリブタジエン-ポリスチレンのトリブロック共重合体(以下、SEBSと略す。)、ポリスチレン-水添ポリイソプレン-ポリスチレンのトリブロック共重合体(以下、SEPSと略す。)、ポリスチレン-水添ブタジエン/イソプレン共重合体-ポリスチレンのトリブロック共重合体(以下、SEEPSと略す。)などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
・・・
SEEPSにおいては、ポリスチレンブロックの含有率に特に制限は無いが、好ましくは10?70質量%、より好ましくは20?40質量%である。また、ブタジエン/イソプレン共重合体ブロックの水素添加率に特に制限は無いが、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70?100モル%である。
SEEPSの製造方法については特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。また、SEEPSは市販されており、重量平均分子量が前記範囲である市販品を使用してもよい。」(段落【0009】?【0015】)

(甲4e)「[(B)非芳香族系ゴム用軟化剤]
(B)成分である非芳香族系ゴム用軟化剤としては、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、シリコーンオイル、芳香族系オイル、植物系オイルなどが挙げられる。これらの中でも、相溶性の観点から、パラフィン系オイル、シリコーンオイルが好ましく、パラフィン系オイルがより好ましい。これらは1種を単独で使用してもよいし、相溶性が良好であれば、2種以上を併用してもよい。
(B)成分は、動粘度(40℃)が350?400mm^(2)/secである必要がある。動粘度(40℃)が350mm^(2)/sec未満であるか又は400mm^(2)/secを超えていると、(B)成分が熱可塑性エラストマー組成物からブリードアウトする傾向にある。なお、かかる動粘度はJIS K2283に準じて測定した値である。
パラフィン系オイルとしては、例えばダイアナプロセスオイルPW380(商品名、出光興産株式会社製、分子量750、動粘度(40℃)380mm^(2)/S)などが挙げられる。
・・・」(段落【0014】?【0015】)

(甲4f)「[(C)ポリプロピレン]
(C)成分のポリプロピレンに特に制限は無いが、成形性の観点からは、JIS K7210[190℃、21.18N(2.16kgf)]に従って測定したメルトフローレート(以下、MFRと略称する。)が、0.1?100g/10分であるポリオレフィンを使用することが好ましく、0.5?50g/10分であるポリオレフィンを使用することがより好ましい。・・・
・・・
(C)成分であるポリプロピレンには、熱可塑性エラストマー組成物の加工性及び耐熱性を向上させる目的で、スチレン系樹脂を併用することができる。・・・」(段落【0016】?【0017】)

(甲4g)「[その他の成分]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造するに際し、前記(A)?(C)成分に加え、(D)成分としてポリフェニレンエーテルを含有させることができる。
・・・
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造するに際し、本発明の目的が損なわれない範囲で、前記(A)?(D)成分以外に、さらにその他の添加剤を含有させてもよい。
かかる添加剤としては、例えばセラミック、カーボンブラック、アンバー、シェンナ、カオリン、ニッケルチタンイエロー、コバルトブルー、プラマスターグレー、キノフタロン、ジケトピロロピロール、キナクリドン、ジオキサジン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどの顔料:難燃剤:老化防止剤:帯電防止剤:抗菌剤:酸化防止剤:タルク、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、ガラス粉、ガラスバルーンなどの無機中空フィラー、セラミックス粉、マイカなどの無機充填剤:コルク粉末、木粉、グラファイトなどの有機充填剤:ステアリン酸などの離型剤:光安定剤:ロジン誘導体などの粘着付与剤(タッキファイヤー):「レオストマー(登録商標)B」(商品名、理研テクノス株式会社製)などの接着性エラストマー:クマロン樹脂、クマロン-インデン樹脂、フェノールテルペン樹脂などが挙げられる。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、架橋剤や架橋助剤などを添加して部分架橋させることも可能である。
・・・」(段落【0018】?【0023】)

(甲4h)「本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、圧縮永久歪が小さく、超低硬度に設計したにもかかわらずオイル保持性が高いなどの特性を有するため、幅広い用途、例えばシール材、ガスケット材、防振材、衝撃吸収材、カバー材、緩衝材などの用途の利用可能である。」(段落【0034】)

(5)甲第5号証に記載された事項
本件特許に係る出願の優先日前の平成27年10月22日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されている国際公開第2015/159912号(甲第5号証)には、以下の事項が記載されている。

(甲5a)「【請求項1】水添ブロック共重合体(a)100質量部と、
ポリプロピレン系樹脂(b)3?50質量部と、
ポリフェニレンエーテル樹脂(c)5?100質量部と、
非芳香族系軟化剤(d)50?200質量部と、を含む熱可塑性エラストマー組成物であって、
前記水添ブロック共重合体(a)が、少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする重合体ブロックA1と、少なくとも1個の共役ジエン化合物単量体単位を主体とする重合体ブロックB1と、を含むブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体(a-1)であり、
前記水添ブロック共重合体(a-1)の重量平均分子量が100,000?350,000である、熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】水添ブロック共重合体(a)100質量部と、
ポリプロピレン系樹脂(b)3?50質量部と、
ポリフェニレンエーテル樹脂(c)5?100質量部と、
非芳香族系軟化剤(d)50?200質量部と、を含む熱可塑性エラストマー組成物であって、
前記水添ブロック共重合体(a)が、
少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする重合体ブロックA1と、少なくとも1個の共役ジエン化合物単量体単位を主体とする重合体ブロックB1と、を含むブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体(a-1’)と、
少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする重合体ブロックA2と、少なくとも1個の共役ジエン化合物単量体単位を主体とする重合体ブロックB2と、を含むブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体(a-2)と、を含み、
前記水添ブロック共重合体(a-1’)の重量平均分子量が140,000?350,000であり、
前記水添ブロック共重合体(a-2)の重量平均分子量が50,000?120,000であり、
前記水添ブロック共重合体(a-1’)と前記水添ブロック共重合体(a-2)の質量比((a-1’)/(a-2))が70/30?95/5である、熱可塑性エラストマー組成物。
・・・
【請求項10】前記非芳香族系軟化剤(d)が、40℃における動粘度が300?400mm^(2)/秒である非芳香族系軟化剤(d-1)である、請求項1?9のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項11】前記非芳香族系軟化剤(d)が、40℃における動粘度が100mm^(2)/秒以下である非芳香族系軟化剤(d-2)である、請求項1?9のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項12】前記非芳香族系軟化剤(d)が、40℃における動粘度が300?400mm^(2)/秒である非芳香族軟化剤(d-1)と、40℃における動粘度が100mm^(2)/秒以下である非芳香族系軟化剤(d-2)の混合物であり、
前記非芳香族系軟化剤(d-1)と非芳香族系軟化剤(d-2)の質量比((d-1)/(d-2))が30/70?60/40であり、
前記非芳香族系軟化剤(d-1)と前記非芳香族系軟化剤(d-2)の合計含有量が、水添ブロック共重合体(a)100質量部に対し、100?200質量部である、請求項1?9のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
・・・
【請求項19】請求項1?18のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を含む封止体を備える、医療容器用栓体。
【請求項20】請求項19に記載の医療容器用栓体を備える、医療容器。」(特許請求の範囲)

(甲5b)「本発明は、熱可塑性エラストマー組成物、医療容器用栓体及び医療容器に関する。」(段落〔0001〕)

(甲5c)「本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたものであり、特に針刺し抵抗性と耐液漏れ性に優れる熱可塑性エラストマー組成物、医療容器用栓体及び医療容器を提供することを目的とする。」(段落〔0007〕)

(甲5d)「<非芳香族系軟化剤(d)>
非芳香族系軟化剤(d)としては、芳香族性を示さず、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を軟化しうるものであれば特に限定されず、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン・ワックス、流動パラフィン、ホワイト・ミネラル・オイル、植物系軟化剤等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態の医療容器用栓体の低温特性や耐溶出性等の観点から、パラフィン系オイル、流動パラフィン、ホワイト・ミネラル・オイルがより好ましい。
非芳香族系軟化剤(d)の40℃における動粘度は、好ましくは500mm^(2)/秒以下である。非芳香族系軟化剤(d)の40℃における動粘度の下限値は特に限定されないが、10mm^(2)/秒であることが好ましい。非芳香族系軟化剤(d)の40℃における動粘度が500mm^(2)/秒以下であれば、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物の流動性がより向上し、成形加工性がより向上する傾向にある。非芳香族系軟化剤(d)の動粘度は、ガラス製毛管式粘度計を用いて試験する方法等によって測定することができる。
本実施形態の一つの実施形態では、非芳香族系軟化剤(d)の40℃における動粘度が300?400mm^(2)/秒の範囲である非芳香族系軟化剤(d-1)を好適に用いることができる。非芳香族系軟化剤(d-1)の40℃における動粘度が上記範囲内であれば、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物の非芳香族軟化剤保持性(オイル保持性)が良く、さらに圧縮永久歪みと反発弾性のバランスが向上する傾向にある。
また、別の実施形態では、非芳香族系軟化剤(d)の40℃における動粘度が100mm^(2)/秒以下である非芳香族系軟化剤(d-2)を好適に用いることができる。非芳香族系軟化剤(d-2)の40℃における動粘度が100mm^(2)/秒以下であれば、オイル保持性を維持したまま、柔軟性、反発弾性により優れる熱可塑性エラストマー組成物が得られる傾向にある。
さらに、非芳香族系軟化剤(d)は40℃における動粘度が異なる2種以上を組み合わせてもよい。例えば、非芳香族系軟化剤(d-1)と非芳香族系軟化剤(d-2)を組み合わせて用いることができる。非芳香族系軟化剤(d-1)と非芳香族系軟化剤(d-2)を組み合わせることによって、非芳香族系軟化剤の保持性を向上することができるだけでなく、柔軟性、圧縮永久歪み、反発弾性のバランスがより向上する傾向にある。
・・・
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物において、非芳香族系軟化剤(d)の含有量は、水添ブロック共重合体(a)100質量部に対し、50?200質量部、好ましくは80?180質量部、より好ましくは90?170質量部である。非芳香族系軟化剤(d)の配合量が上記範囲内であれば、非芳香族軟化剤の保持性をより向上できるだけでなく、耐液漏れ性、針刺し抵抗性、再シール性により優れた熱可塑性エラストマー組成物が得られる傾向にある。
なお、40℃における動粘度が異なる2種以上を組み合わせる場合、非芳香族系軟化剤(d)の合計含有量(たとえば、非芳香族系軟化剤(d-1)と非芳香族系軟化剤(d-2)の合計含有量)は、水添ブロック共重合体(a)100質量部に対し、好ましくは100?200質量部であり、より好ましくは120?180質量部である。非芳香族系軟化剤(d)の合計含有量が上記範囲内であれば、組み合わせる2種以上の非芳香族系軟化剤の双方の特性を良好に発揮できる傾向にある。・・・」(段落〔0099〕?〔0106〕)

(甲5e)「<カーボンブラック(e)及び無機充填剤(f)>
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は機械強度や反発弾性、加工性の観点から、カーボンブラック(e)及び/又は無機充填剤(f)を含有していてもよい。
・・・
<有機過酸化物(g)>
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、圧縮永久歪み性と耐液漏れ性の観点から、有機過酸化物(g)存在下で部分架橋されていてもよい。
・・・
<架橋助剤(h)>
また、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を部分架橋する場合、架橋度を調整するために必要に応じて架橋助剤を使用する事ができる。
・・・
<その他の成分>
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、本実施形態の目的が損なわれない範囲で、上述した(a)?(h)の成分以外に、さらにその他の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、可塑剤、光安定剤、結晶核剤、衝撃改良剤、顔料、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、相溶化剤、粘着性付与剤等が挙げられる。これらの添加剤は1種のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。」(段落〔0107〕?〔0113〕)

(甲5f)「<医療容器用栓体及び医療容器>
本実施形態の医療容器用栓体は、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を含む封止体を備える。また、本実施形態の医療容器は、本実施形態の医療容器用栓体を備える。本実施形態の医療容器としては、以下に限定されないが、例えば、輸液バッグ、腹膜透析バッグ、輸液ボトル、輸液ソフトボトル、ガラスバイアル、プラスチックバイアル等が挙げられる。
本実施形態の封止体の形状としては、特に限定されないが、例えば、円錐台状、円柱状、円盤状等が挙げられ、その直径は通常、5?25mm程度である。本実施形態の封止体の厚さ(注射針を刺通する方向の厚さ)も特に限定されないが、通常、2?10mm程度である。」(段落〔0117〕?〔0118〕)

(6)甲第6号証に記載された事項
本件特許に係る出願の優先日前の平成23年9月29日に頒布された刊行物である特開2011-190287号公報(甲第6号証)には、以下の事項が記載されている。

(甲6a)「【請求項1】スチレン-(エチレン/プロピレン)-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-(エチレン/プロピレン)-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-(エチレン/ブタジエン)-スチレンブロック共重合体(SEBS)、の少なくとも何れか一つを含むスチレン系熱可塑性エラストマーと、炭化水素系可塑剤と、スチレン系樹脂とを含み、
前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対し、前記炭化水素系可塑剤500質量部以上2000質量部以下を配合すると共に、
前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対し、前記スチレン系樹脂50質量部以上500質量部以下を含有してなることを特徴とするホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】更に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含み、
前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対し、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤を1質量部以上20質量部以下を含有してなることを特徴とする請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】前記スチレン系熱可塑性エラストマーの質量平均分子量が、20万以上50万以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項4】請求項1?3の何れか一項に記載のホットメルト接着剤組成物を用いてなることを特徴とするシール材。」(特許請求の範囲)

(甲6b)「【技術分野】
本発明は、自動車や車両等のホットメルト接着剤として好適に用いられるホットメルト接着剤組成物及びシール材に関する。
【背景技術】
・・・
特に、自動車分野においては、ランプなどの自動車照明灯具のレンズとハウジングとを接着、シールするのにホットメルト組成物が用いられているが、電子部品の集積化や特に近年の環境問題からハイブリッド車や電気自動車が注目されており、自動車内に備えられる部品等から発生する熱も高くなってきていることからより耐熱性の高いホットメルト組成物が求められている。」(段落【0001】?【0004】)

(甲6c)「【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のホットメルト組成物では、120℃程度の温度領域で長期間放置すると、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)が分解し液状化する、という問題がある。
本発明は、前記問題に鑑み、熱老化安定性を向上させたホットメルト接着剤組成物を提供することである。」(段落【0006】?【0008】)

(甲6d)「本発明は、スチレン-エチレン-(エチレン/プロピレン)-スチレンブロック共重合体(以下、「SEEPS」ともいう。)、スチレン-(エチレン/ブタジエン)-スチレンブロック共重合体(以下、「SEBS」ともいう。)、スチレン-(エチレン/プロピレン)-スチレンブロック共重合ゴム(以下、「SEPS」ともいう。)の少なくとも何れか一つを含むスチレン系熱可塑性エラストマーと、炭化水素系可塑剤と、スチレン系樹脂とを含み、前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対し、前記炭化水素系可塑剤500質量部以上2000質量部以下を配合すると共に、前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対し、前記スチレン系樹脂50質量部以上500質量部以下を含有してなるホットメルト接着剤組成物である。以下、本発明のホットメルト接着剤組成物を、「本発明の組成物」という。」(段落【0012】)

(甲6e)「<スチレン系熱可塑性エラストマー>
熱可塑性エラストマーは、分子間架橋しないで常温における高弾性ゴム状態を維持するエラストマーであり、高温で成形が可能であり、かつ通常の架橋エラストマーと違い再生利用することができる。熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されるものではなく、ポリオレフィン樹脂、ジエン(共)重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリアミド樹脂等が挙げられる。これらのうち、一般に、接着強度の観点から、ポリオレフィン樹脂及びジエン(共)重合体が用いられている。ジエン(共)重合体の中でも、特に、自動車部品、電子部品、建材等のシール材としては、弾性、凝集力、塗工基材との密着性等の観点からスチレン系熱可塑性エラストマーが好適に用いられている。
スチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレンから誘導されるポリスチレンブロックと、ゴム弾性を付与できるゴム中間ブロックとを有している。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、・・・等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらのうち、SBS、SIS、SEPS、SEBS、SEEPS、SIBS、MAH-SEBS、MAH-SEPSが好適に用いられる。
本発明において、スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、SEPS、SEEPS、SEBSの少なくとも何れか一つを含んで構成されている。本発明の組成物において、スチレン系熱可塑性エラストマーとして含まれるSEPS、SEEPS、SEBSはホットメルト組成物のベースポリマーとして含有される。
スチレン系熱可塑性エラストマーとして含まれるSEPS、SEEPS、SEBSの質量平均分子量は、20万以上のものであれば特に制限されるものではなく、20万以上50万以下であるのが好ましく、25万以上50万以下であるのがより好ましく、30万以上40万以下であるのが更に好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーとして含まれるSEPS、SEEPS、SEBSの質量平均分子量が20万以上であると、本発明の組成物から得られる硬化物は柔らかく解体性に優れるからである。スチレン系熱可塑性エラストマーとして含まれるSEPS、SEEPS、SEBSの質量平均分子量が20万を下回ると、材料として硬くなりシール材としての柔軟性に欠けるからである。また、熱可塑性エラストマーとして含まれるSEPS、SEEPS、SEBSの質量平均分子量が50万を越えると、溶融粘度が高くなり吐出作業性が悪化するからである。なお、本発明において質量平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)装置によって測定され、質量平均分子量は、ポリスチレンを標準としてGPC法で求められる値である。
スチレン系熱可塑性エラストマーとして含まれるSEPS、SEEPS、SEBSのスチレン含有量は、組成物が作業しやすい粘度となり、組成物の凝集性に優れ、得られる硬化物の解体性により優れるという観点から、10質量%以上70質量%以下が好ましく、20質量%以上40質量%以下がより好ましい。これは、作業性と凝集性の両立できるバランスからである。
・・・
(SEEPS)
本発明において、SEEPSは、上述のとおり、スチレン-エチレン-(エチレン/プロピレン)-スチレンブロック共重合体である。SEEPSの製造方法は特に制限されるものではなく、例えば、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)を水素添加する方法によって得ることができる。SEEPSの具体例としては、「セプトン4077」(スチレン含有量30質量%、クラレ社製)、「商品名:セプトン4055」(スチレン含有量30質量%、クラレ社製)、「商品名:セプトン4099」(スチレン含有量30質量%、クラレ社製)等が挙げられる。
・・・」(段落【0013】?【0021】)

(甲6f)「<炭化水素系可塑剤>
炭化水素系可塑剤について説明する。本発明の組成物に含有される炭化水素系可塑剤は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。炭化水素系可塑剤としては、特に制限されるものではなく、従来より公知の可塑剤を用いることができ、例えば、パラフィン系、ナフテン系若しくは芳香族系のプロセスオイル、液状ポリブテン、液状ポリブタジエン及び液状ポリイソプレン等の液状樹脂、流動パラフィン、オレフィンプロセスオイル、及びこれらを2種以上混合した混合物等が挙げられる。なかでも、ベースポリマーとの相溶性および耐熱性の点から、パラフィン系プロセスオイルが好ましい。
炭化水素系可塑剤の含有量は、組成物が基材に対して施される際、基材の形状に対して密着でき、硬化物の解体性により優れるという観点から、スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、500質量部以上2000質量部以下であり、600質量部以上1800質量部以下であるのが好ましく、700質量部以上1600質量部以下であるのがより好ましい。」(段落【0022】?【0023】)

(甲6g)「<スチレン系樹脂>
スチレン系樹脂について説明する。本発明の組成物に含有されるスチレン系樹脂は、本発明の組成物の粘着付与剤として用いられる。スチレン系樹脂以外の従来より公知の粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂(ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジン、ロジングリセリンエステル、水添ロジングリセリンエステル等)、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂(α-ピネン主体、β-ピネン主体、ジペンテン主体等)、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、石油樹脂(脂肪族系、脂環族系、芳香族系等)、クマロン・インデン樹脂、フェノール系樹脂(アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等)、アクリル樹脂、スチレン- アクリル共重合体樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。これらはスチレン系樹脂単独あるいは2種以上合わせて用いることができる。本発明においては、熱老化安定性及び相溶性の観点から、スチレン系樹脂が用いられる。スチレン系樹脂としては、例えば、「Endex 155」(EASTMAN社製)、「kristalex 1120」(EASTMAN社製)、「kristalex 5140」(EASTMAN社製),「FMR 150」(三井化学社製)、「FTR-2140」(三井化学社製)、「FTR-6125」(三井化学社製)等が挙げられる。スチレン系樹脂とスチレン系樹脂以外の従来より公知の粘着付与剤とを2種以上組み合わせて用いる場合、その混合比は特に限定されるものではない。
スチレン系樹脂の含有量は、組成物が基材に対して施される際、基材の形状に対して密着でき、硬化物の解体性により優れるという観点から、スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、50質量部以上500質量部以下であり、100質量部以上450質量部以下であるのが好ましく、200質量部以上400質量部以下であるのがより好ましい。」(段落【0024】?【0025】)

(甲6h)「<ヒンダードフェノール系酸化防止剤>
本発明の組成物は、更に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有するのが好ましい態様の1つである。・・・
・・・
また、本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上述した各成分以外に、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、充填剤、炭化水素系可塑剤以外の可塑剤、シランカップリング剤、顔料、染料、ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、安定剤、分散剤、溶剤、発泡防止剤などが挙げられる。これらの中の2種類以上を含有してもよい。
充填剤としては、特に限定されず、従来より公知の充填剤を用いることができ、各種形状の無機、有機のものが挙げられる。・・・有機充填剤としては、例えば、カーボネート類、有機ベントナイト、ハイスチレン樹脂、クマロン-インデン樹脂、フェノール樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、変性メラミン樹脂、環化ゴム、リグニン、エボナイト粉末、セラック、コルク粉末、骨粉、木粉、セルローズパウダー、ココナッツ椰子がら、木材パルプ等が挙げられる。これらの充填剤は、1種単独でも2種以上を併用しても使用することができる。
炭化水素系可塑剤以外の可塑剤としては、例えば、・・・;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等を用いることができる。また、連鎖移動剤を用いず、150℃以上350℃以下の重合温度で重合され、数平均分子量が500以上5000以下のアクリル重合体を用いることができる。
・・・」(段落【0026】?【0039】)

(甲6i)「本発明の組成物の用途は特に限定されないが、本発明の組成物は、以上のような優れた特性を有することから、本発明の組成物は、例えば、自動車や車両(新幹線、電車)、電気、建材・木工及び製本包装等の用途に使用することができる。自動車関連の用途としては、天井、ドア、シート等の内装材の接着、ランプなどの自動車照明灯具、サイドモール等の外装材の接着等を挙げることができる。具体的には、自動車照明灯具を製造する際にレンズとハウジングとを接着、シールするのに好適に用いることができる。また、電気関連の用途としては、ランプシェイド、スピーカ等の組立等を挙げることができる。また、建材・木工関係での用途としては、建築現場、建材の工場製造におけるドア、アクセスフロア、複層床、家具組立、縁貼り、プロファイルラッピング等の接着等を挙げることができる。」(段落【0044】)

(甲6j)「【実施例】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
<1.ホットメルト接着剤組成物の調整>
ホットメルト接着剤組成物を調整した。ホットメルト接着剤組成物を調整する際に用いた各成分と、その添加量(質量部)を表1、2に示す。表1、2に示す成分を表1、2に示す量で、200℃に加熱して混合し、各ホットメルト接着剤組成物を調製した。
【表1】


【表2】


上記表1、2に示される各成分は、以下のとおりである。
・スチレン系熱可塑性エラストマー
SEEPS:セプトン4099(質量平均分子量40万、スチレン含有量30質量%)、クラレ社製
SEPS:セプトン2063(質量平均分子量18万、スチレン含有量13質量%)、クラレ社製
・炭化水素系可塑剤:パラフィン系プロセスオイル(ハイコールK350、カネダ株式会社製)
・スチレン系樹脂1:芳香族系炭化水素樹脂(FMR150、三井化学社製)
・スチレン系樹脂2:スチレン-ビニルトルエン共重合体(エンデックス155、イーストマンケミカル社製)
・粘着付与剤1:C5系石油樹脂(ESCOREZ1304、エクソンモービル社製)
・粘着付与剤2:テルペンフェノール樹脂(YSポリスター U-115、水酸基価:25、ヤスハラケミカル社製)
・・・」(段落【0053】?【0054】)

(甲6k)「以上のように、本発明にかかるホットメルト接着剤組成物は、熱老化安定性に優れるため、例えば自動車等の照明灯具のシール材として好適に用いることができる。」(段落【0062】)

(7)甲第7号証に記載された事項
本件特許に係る出願の優先日前の平成11年9月21日に頒布された刊行物である特開平11-256123号公報(甲第7号証)には、以下の事項が記載されている。

(甲7a)「【請求項1】配合物中のビニルアルコール含量が2?15モル%であるポリオレフィン系樹脂よりなるポリエチレン用易剥離性接着剤。
【請求項2】ビニルアルコール含量が2?15モル%であるケン化エチレン-酢酸ビニル共重合体よりなるポリエチレン用易剥離性接着剤。
【請求項3】ケン化エチレン-酢酸ビニル共重合体とポリオレフィン系樹脂よりなり、該配合物中のビニルアルコール含量が2?15モル%であることを特徴とするポリエチレン用易剥離性接着剤。
【請求項4】請求項1?3に記載のポリエチレン用易剥離性接着剤を用い、その少なくとも一面がポリエチレンと接着することを特徴とする構造物。」(特許請求の範囲)

(甲7b)「【発明の属する技術分野】本発明はポリエチレンを被着面とする容器、シートまたは構成物に対し易剥離性を有する接着剤及びその構造物に関する。更に詳しくは、・・・配合した組成物を、ポリエチレン製容器、シート、または被着面がポリエチレンである多層容器、シート等構成物に対して易剥離性接着剤として用いる事を特徴としたポリエチレン用易剥離性接着剤およびその構造物に関するものである。
【従来の技術】近年、産業廃棄物の問題から食品用容器はポリスチレンや塩化ビニル製から燃焼時に有害ガスを発生しないポリエチレンやポリプロピレン製に替わりつつある。特にポリエチレンを使用した容器またはポリエチレンを紙に積層した容器が使用されてきている。例えば紙にポリエチレンを押出しラミネートしカップ状にしたヨーグルト用容器やマヨネーズ、ケチャップ等のポリエチレンを主成分とする多層容器、点滴ボトルなどのポリエチレン製容器等が挙げられる。」(段落【0001】?【0003】)

(甲7c)「【発明の実施の形態】本発明において用いられるビニルアルコール含量が2?15モル%である配合物は、ケン化エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下S-EVAと称す)又はS-EVAとポリオレフィン系樹脂よりなる配合物を用いる事ができる。S-EVAを単独で使用する場合、ケン化前のエチレン-酢酸ビニル共重合体(以下EVAと称す)は通常の高圧法ポリエチレンプラントによりエチレンと酢酸ビニルを共重合して得られるものが使用でき、ケン化後に得られるS-EVAはビニルアルコール含量が2?15モル%である事が必要である。S-EVAのビニルアルコール含量が2モル%以下では接着を阻害する要因となるビニルアルコール分が少なく、EVAの性能が強く残るためポリエチレンと強固に接着してしまい、15モル%を超えるとシーラントとして重要なポリエチレンとの接着強度が低下してしまう。S-EVAを得るために用いるEVAの酢酸ビニル含量は3?20モル%が好ましい。特に好ましくは5?12モル%である。酢酸ビニル含量が3モル%未満では、基本性能としてポリエチレンと同等となるため被着体であるポリエチレンと強接着となってしまうため3モル%以上が好ましい。」(段落【0009】)

(甲7d)「本発明の接着剤には包装資材に一般的に用いられる酸化防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤等を必要に応じて添加しても構わない。」(段落【0013】)

(甲7e)「少なくとも一面がポリエチレンである構造物としては、ポリエチレンの単層ブロー容器である洗剤容器、輸液バッグ等、多層ブロー容器であるケチャップやマヨネーズ用容器等、ポリエチレンのラミネート容器であるヨーグルトやアイスクリーム用の紙カップ等が挙げられるが、少なくとも被着面がポリエチレンであればよく、構成中に塩化ビニリデンやエチレン-ビニルアルコール共重合体(以下EVOH)あるいはアルミ等バリアー性のある包装資材が使用されている容器またはシートでも構わない。」(段落【0014】)

(8)甲第8号証に記載された事項
本件特許に係る出願の優先日前の平成23年8月25日に頒布された刊行物である特開2011-162747号公報(甲第8号証)には、以下の事項が記載されている。

(甲8a)「【請求項1】スチレン系ブロック共重合物(A)5?40重量部、粘着付与樹脂(B)25?60重量部及び可塑剤(C)20?50重量部を合計が100重量部になるように配合してなるホットメルト型粘着組成物であって、
スチレン系ブロック共重合物(A)は、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合物の水素添加物、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合物の水素添加物及びスチレン-ブタジエン-イソプレン-スチレンブロック共重合物の水素添加物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
粘着付与樹脂(B)は、ホットメルト型粘着組成物100重量部中5重量部以上の割合を占めるスチレン樹脂と、石油系樹脂及び/又はテルペン系樹脂とを含み、
可塑剤(C)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算重量平均分子量が700?10000である、
ことを特徴とするホットメルト型粘着組成物。」(特許請求の範囲)

(甲8b)「【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低温から高温までの幅広い温度領域で優れた粘着力を発現し、かつ可塑剤のブリードによる汚染、べた付きがないホットメルト型粘着組成物及び該ホットメルト型粘着組成物を用いた積層体を提供することにある。」(段落【0012】?【0013】)

(甲8c)「本発明のホットメルト型粘着組成物について説明する。
本発明のホットメルト型粘着組成物は、後述するスチレン系ブロック共重合物(A)、粘着付与樹脂(B)、可塑剤(C)、必要に応じてその他の添加剤を配合してなる。
本発明に用いられるホットメルト型粘着組成物を構成するスチレン系ブロック共重合物(A)は、・・・およびスチレン-ブタジエン-イソプレン-スチレンブロック共重合物の水素添加物(以下、「SEEPS」とも略記する)からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
・・・
本発明のホットメルト型粘着組成物を構成するスチレン系ブロック共重合物(A)、粘着付与樹脂(B)、及び可塑剤(C)の合計を100重量部としたとき、スチレン系ブロック共重合物(A)の配合量は5?40重量部である。好ましくは10?35重量部である。スチレン系ブロック共重合物(A)の配合量が5重量部未満であると、得られるホットメルト型粘着組成物の凝集力が低下する傾向にある。スチレン系ブロック共重合物(A)の配合量が40重量部を超えると、混練加工による製造が困難になる恐れがある。
スチレン系ブロック共重合物(A)の市販品としては、・・・、商品名「Septon S-4033」(クラレ社製)、商品名「Septon S-4044」(クラレ社製)、商品名「Septon S-4055」(クラレ社製)、商品名「Septon S-4077」、商品名「Septon S-4099」(クラレ社製)、・・・等を挙げることができる。」(段落【0019】?【0022】)

(甲8d)「本発明に用いられるホットメルト型粘着組成物を構成する粘着付与剤(B)は、ホットメルト型粘着組成物100重量部中5重量部以上の割合を占めるスチレン樹脂と、石油系樹脂及び/又はテルペン系樹脂とを含むものであり、これは、高温下および常温下における粘着力の優れたバランスをもたらす。
また、スチレン樹脂の量は、ホットメルト型粘着組成物100重量部中、好ましくは30重量部以下である。
粘着付与樹脂(B)を構成する石油系樹脂及び/又はテルペン系樹脂の軟化点は、90?150℃であることが好ましい。軟化点が90℃未満であると、可塑剤のブリードが生じることがある。軟化点が150℃を超えると、低温でタックが消失してしまうことがある。
・・・
本発明におけるスチレン樹脂とはスチレン或いはスチレン誘導体を重合又は共重合してなる樹脂である。
粘着付与樹脂(B)を構成するスチレン樹脂の市販品としては、商品名・・・、商品名「クリスタレックス F100」(イーストマンケミカル社製)、・・・等を挙げることができる。
本発明における石油系樹脂とはナフサを原料として製造される樹脂であり、テルペン系樹脂とは松脂などの成分を原料とした植物成分のみからなる樹脂である。
粘着付与樹脂(B)を構成する石油系樹脂及び/又はテルペン系樹脂の市販品としては、商品名「アルコンP-90」(荒川化学工業社製)、商品名「アルコンP-100」(荒川化学工業社製)、商品名「アルコンP-115」(荒川化学工業社製)、商品名「アルコンP-125」(荒川化学工業社製)、商品名「アルコンP-140」(荒川化学工業社製)、商品名「アルコンM-90」(荒川化学工業社製)、商品名「アルコンM-100」(荒川化学工業社製)、商品名「アルコンM-135」(荒川化学工業社製)、商品名「アイマーブP-100」(出光興産社製)、商品名「アイマーブP-120」(出光興産社製)、商品名「クリアロンP-105」(ヤスハラケミカル社製)、商品名「クリアロンM-105」(ヤスハラケミカル社製)、商品名「リガライト R1090」(イーストマンケミカル社製)、商品名「リガライト R1100」(イーストマンケミカル社製)、商品名「リガライト R1125」(イーストマンケミカル社製)、商品名「リガライト R5100」(イーストマンケミカル社製)、商品名「リガライト R6100」(イーストマンケミカル社製)、商品名「リガライト R7100」(イーストマンケミカル社製)、商品名「イーストタック C-100W」(イーストマンケミカル社製)、商品名「イーストタック C-100L」(イーストマンケミカル社製)、商品名「イーストタック C-100R」(イーストマンケミカル社製)、商品名「イーストタック C-115W」(イーストマンケミカル社製)、商品名「イーストタック C-115R」(イーストマンケミカル社製)、商品名「イーストタック C-130L」(イーストマンケミカル社製)、商品名「イーストタック C-130W」(イーストマンケミカル社製)、商品名「ピコタック 8095」(イーストマンケミカル社製)、商品名「ピコタック 1095」(イーストマンケミカル社製)、商品名「ピコタック 1098」(イーストマンケミカル社製)、商品名「ピコタック 1100」(イーストマンケミカル社製)、等を挙げることができる。
本発明のホットメルト型粘着組成物を構成するスチレン系ブロック共重合物(A)、粘着付与樹脂(B)、及び可塑剤(C)の合計を100重量部としたとき、粘着付与樹脂(B)の配合量は25?60重量部である。好ましくは30?55重量部である。粘着付与樹脂(B)の配合量が25重量部未満であると、粘着性が低下することがある。粘着付与樹脂(B)の配合量が60重量部を超えると、低温領域でタックが消失してしまうことがある。」(段落【0023】?【0027】)

(甲8e)「本発明に用いられるホットメルト型粘着組成物を構成する可塑剤(C)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(以下、「GPC」とも略記する)によるポリスチレン換算重量平均分子量は700?10000である。好ましくは1000?9000である。可塑剤(C)の重量平均分子量が700未満であると、ブリードが起こる傾向にある。可塑剤(C)の重量平均分子量が10000を超えてしまうと、溶融時の流動性が低下する傾向にある。
可塑剤の種類としては、パラフィン成分が60重量%以上を占めるパラフィン系鉱物油軟化剤、流動パラフィン、ポリブテン等が挙げられる。好ましくはパラフィン系鉱物油軟化剤が挙げられる。
可塑剤(C)の市販品としては、商品名「ダイアナプロセス PW-90」(出光興産社製)、商品名「ダイアナプロセス PS-90」(出光興産社製)、商品名「ダイアナプロセス PW-380」(出光興産社製)、商品名「イデミツポリブテン 100R」(出光興産社製)、商品名「イデミツポリブテン 2000H」(出光興産社製)等を挙げることができる。
本発明のホットメルト型粘着組成物を構成するスチレン系ブロック共重合物(A)、粘着付与樹脂(B)、及び可塑剤(C)の合計を100重量部としたとき、可塑剤(C)の配合量は20?50重量部である。好ましくは25?45重量部である。可塑剤(C)の配合量が20重量部未満であると、溶融時の流動性が低下する傾向にある。可塑剤(C)の配合量が50重量を超えると、柔軟性が損なわれ、ゴム弾性が低下する傾向にある。」(段落【0028】?【0030】)

(甲8f)「【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様に過ぎず、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
なお、例中、「部」とあるのは「重量部」を、「%」とあるのは「重量%」をそれぞれ表すものとする。
本発明におけるGPCによる重量平均分子量とは、ゲル状の粒子を充填したカラムに希薄な樹脂の溶液を流し、分子の大きさによって流出するまでの異なる時間を測定することにより得られる、ポリスチレン換算された重量平均分子量である。・・・」(段落【0047】?【0048】)

(甲8g)「(製造例1?15)
表1に示した部数で、撹拌機を備えたニーダーにスチレン系ブロック共重合物(A)、粘着付与樹脂(B)、可塑剤(C)、必要に応じて(A)、(B)、(C)以外のその他の成分を添加し、160℃で3時間撹拌し、ホットメルト型粘着組成物を得た。
【表1】


」(段落【0049】?【0050】)

(甲8h)「表1に記載のスチレン系ブロック共重合物(A)の略号を以下に示す。
・・・
Septon S-4033:クラレ社製「Septon S-4033」、スチレン-エチレン/エチレン/プロピレン-スチレン共重合体(SEEPS)、重量平均分子量95000、スチレン含量30%
・・・
表1に記載の粘着付与樹脂(B)の略号を以下に示す。
クリスタレックス 1120:イーストマンケミカル社製「クリスタレックス 1120」、α-メチルスチレンとスチレンの共重合体、軟化点120℃
クリスタレックス 3085:イーストマンケミカル社製「クリスタレックス 3085」、α-メチルスチレンとスチレンの共重合体、軟化点85℃
クリスタレックス 3100:イーストマンケミカル社製「クリスタレックス 3100」、α-メチルスチレンとスチレンの共重合体、軟化点100℃
クリスタレックス 5140:イーストマンケミカル社製「クリスタレックス 5140」、α-メチルスチレンとスチレンの共重合体、軟化点140℃
クリスタレックス F100:イーストマンケミカル社製「クリスタレックス F100」、α-メチルスチレンとスチレンの共重合体、軟化点100℃
プラストリン 240:イーストマンケミカル社製「プラストリン 240」、α-メチルスチレンとスチレンの共重合体、軟化点120℃
プラストリン 290:イーストマンケミカル社製「プラストリン 290」、α-メチルスチレンとスチレンの共重合体、軟化点140℃
アイマーブ P-100:出光石油化学社製「アイマーブ P-100」、完全水添石油樹脂、軟化点100℃
アイマーブ P-120:出光石油化学社製「アイマーブ P-120」、完全水添石油樹脂、軟化点120℃
アルコン P-100:荒川化学工業社製「アルコン P-100」、完全水添石油樹脂、軟化点100℃
アルコン P-110:荒川化学工業社製「アルコン P-110」、完全水添石油樹脂、軟化点110℃
アルコン M-100:荒川化学工業社製「アルコン M-100」、部分水添石油樹脂、軟化点100℃
リカタック F-105:理化ファインテク社製「リカタック F-105」、完全水添グリセリンエステルロジン樹脂、軟化点105℃
クリアロン P-90:ヤスハラケミカル社製「クリアロン P-90」、完全水添テルペン樹脂、軟化点90℃
クリアロン P-115:ヤスハラケミカル社製「クリアロン P-115」、完全水添テルペン樹脂、軟化点115℃
クリアロン M-115:ヤスハラケミカル社製「クリアロン M-115」、部分水添テルペン樹脂、軟化点115℃
リガライト R-1090:イーストマンケミカル社製「リガライト R-1090」、完全水添石油樹脂、軟化点90℃
イーストタック C-115W:イーストマンケミカル社製「イーストタック C-115W」、完全水添石油樹脂、軟化点115℃
ピコタック 8095:イーストマンケミカル社製「ピコタック 8095」、部分水添石油樹脂、軟化点95℃
表1に記載の可塑剤(C)の略号を以下に示す。
ダイアナプロセス PW-32:出光興産社製「ダイアナプロセス PW-32」、重量平均分子量500
ダイアナプロセス PW-90:出光興産社製「ダイアナプロセス PW-90」、重量平均分子量750
ダイアナプロセス PS-90:出光興産社製「ダイアナプロセス PS-90」、重量平均分子量750
ダイアナプロセス PW-380:出光興産社製「ダイアナプロセス PW-380」、重量平均分子量1200」(段落【0051】?【0053】)

(9)引用文献Aに記載された事項
当審で引用する、本件特許に係る出願の優先日前の平成25年3月28日に頒布された刊行物である特開2013-57060号公報(以下「引用文献A」という。)には、以下の事項が記載されている。

(引A1)「アルキルフェノール樹脂を分散及び/又は溶解させるために用いられた鉱物油は次の通りである。
・パラフィン系オイル-1(ダイアナプロセスオイルPW32、動粘度(40℃)=30.9mm^(2)/sec、%CA=0、硫黄分=7ppm、出光興産株式会社製)
・パラフィン系オイル-2(ダイアナプロセスオイルPW90、動粘度(40℃)=95.5mm^(2)/sec、%CA=0、硫黄分=10ppm、出光興産株式会社製
・パラフィン系オイル-3(ダイアナプロセスオイルPW380、動粘度(40℃)=381.6mm^(2)/sec、%CA=0、硫黄分=6ppm、出光興産株式会社製)
・パラフィン系オイル-4(ダイアナプロセスオイルPS32、動粘度(40℃)=31.4mm^(2)/sec、%CA=0.1、硫黄分=0.01wt%、出光興産株式会社製)
・パラフィン系オイル-5(ダイアナプロセスオイルPS90、動粘度(40℃)=92.4mm^(2)/sec、%CA=0.2、硫黄分=0.01wt%、出光興産株式会社製)」(段落【0047】)


(10)引用文献Bに記載された事項
当審で引用する、本件特許に係る出願の優先日前の平成25年4月11日に頒布された刊行物である特開2013-63967号公報(以下「引用文献B」という。)には、以下の事項が記載されている。

(引B1)「25℃で液状の炭化水素油の具体例としては、・・・等が挙げられる。例えば、・・・ハイコールK-350(動粘度74.0mm2/s?88.0mm2/s)、・・・(以上、カネダ社)等の市販品を使用することができ、必要に応じて1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。特に好ましくは流動パラフィンであり、経時安定性の点で良好である。」(段落【0044】)


第5 当審の判断
1 甲第1号証を主引用例とした申立理由1の検討
(1) 甲第1号証に記載された発明について
甲第1号証の上記摘記(甲1m)には、実施例7として、

「鉱油である「Nyplast 222B」 34.5%
水素化HC樹脂である「Sukprez 130」 20.0%
スチレン化テルペン樹脂である「Piccolyte HM 106」 23.0%
芳香族末端ブロック樹脂である「Plastolyn 140」 10.0%
SEEPSである「SEPTON 4044」 12.0%
酸化防止剤である「Irganox 1010」 0.5%
からなるテープおよびラベル用途の組成物」の発明が記載されている。

この「テープおよびラベル用途の組成物」は、(甲1k)の記載からみて、「熱溶融性接着剤」の組成物であるといえる。
また、(甲1l)には、
「Nyplast 222B」について「NYNAS 222Bは、・・・ナフテン油である」と記載され、
「水素化HC樹脂である「Sukprez 130」」について、「HC」は「炭化水素の省略形」と記載され、
「芳香族末端ブロック樹脂である「Plastolyn 140」」について、「PLASTOLYN 140は、・・・約140℃の軟化点を有する完全な芳香族炭化水素樹脂である」と記載され、
「SEEPSである「SEPTON 4044」」について、「SEPTON S4044は、・・・32%のスチレンを含むスチレン-エチレン/エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)である」と記載されている。

また、(甲1f)の記載(特に、【表1】)からみて、「SEPTON S4044」は、Mw(重量平均分子量)が185,874(ダルトン)である「スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンランダムブロック共重合体(SEEPS)」であるといえる。

そうすると、甲第1号証には、
「ナフテン油である「NYNAS 222B」 34.5%
水素化炭化水素樹脂である「SUKOREZ 130」 20.0%
スチレン化テルペン樹脂である「Piccolyte HM 106」 23.0%
約140℃の軟化点を有する完全な芳香族炭化水素樹脂である「PLASTOLYN 140」 10.0%
Mw(重量平均分子量)が185,874(ダルトン)の「スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンランダムブロック共重合体(SEEPS)」である「SEPTON S4044」 12.0%
酸化防止剤である「Irganox 1010」 0.5%
からなるテープおよびラベル用途の熱溶融性接着剤の組成物」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。

本件発明1の「ホットメルト組成物」の「ホットメルト」は熱により溶融することであり、また、「ホットメルト組成物」は、本件明細書の段落【0002】の「・・・ホットメルト樹脂により接着し、製品を仕上げる・・・」、段落【0006】の「自動車分野においては、自動車灯具の製造工程にて、ホットメルト樹脂が用いられることもある。具体的には、自動車の灯具部分を構成する、ポリプロピレン樹脂製等のハウジング部と、その前面を覆うポリカーボネート樹脂製等のレンズ部との接着に使用されている」の記載からみて「接着剤」の用途で使用することを意図しているといえるから、甲1発明の「熱溶融性接着剤の組成物」は、本件発明1の「ホットメルト組成物」に相当する。

甲1発明の「Mw(重量平均分子量)が185,874(ダルトン)の「スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンランダムブロック共重合体(SEEPS)」である「SEPTON S4044」」は、本件発明1の「重量平均分子量が15万以上のSEEPSブロックコポリマー(A)」に相当する。

甲1発明において、「ナフテン油である「NYNAS 222B」」は、「熱溶融性接着剤の組成物」中に「34.5%」含まれており、一方、「Mw(重量平均分子量)が185,874(ダルトン)の「スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンランダムブロック共重合体(SEEPS)」である「SEPTON S4044」」は「12.0%」含まれているから、前者の「NYNAS 222B」は、「SEPTON S4044」100重量部に対して、287.5重量部含まれているといえる。

甲1発明の「熱溶融性接着剤の組成物」は、「ポリプロピレンワックス」を含んでいないので、本件発明1と同様に、「ポリプロピレンワックスを含まない」ものであるといえる。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「重量平均分子量が15万以上のSEEPSブロックコポリマー(A)100重量部に対して、
ポリプロピレンワックスを含まない、ホットメルト組成物。」
で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:「ホットメルト組成物」中に、本件発明1では、「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」を、「重量平均分子量が15万以上のSEEPSブロックコポリマー(A)」100重量部に対して、「300?1000重量部」含むのに対し、甲1発明では、「ナフテン油」を「287.5重量部」含んでいる点。

相違点2: 「ホットメルト組成物」中の「SEEPSブロックコポリマー(A)」以外の樹脂成分について、本件発明1では、「SEEPSブロックコポリマー(A)」100重量部に対して、「軟化点が100℃以上の芳香族系石油樹脂(C)50?400重量部」、「テルペン樹脂(D)50?600重量部」を含むのに対し、甲1発明では、「スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンランダムブロック共重合体(SEEPS)」である「SEPTON S4044」12.0%に対して、「水素化炭化水素樹脂である「SUKOREZ SU-130」」を「20.0%」、「スチレン化テルペン樹脂である「Piccolyte HM 106」」を「23.0%」、「約140℃の軟化点を有する完全な芳香族炭化水素樹脂である「PLASTOLYN 140」を「10.0%」含む点。

相違点3:「ホットメルト組成物」中に、甲1発明では、「酸化防止剤である「Irganox 1010」」を含んでいるのに対し、本件発明1では、酸化防止剤を含むか明らかでない点。

相違点4:「ホットメルト組成物」について、本件発明1では、「易解体性」であると特定しているのに対し、甲1発明では、「易解体性」であるか否か明らかでない点。

イ 判断
事案に鑑みて、上記相違点1について、まず検討する。

(ア)相違点1について
甲第1号証の上記摘記(甲1g)には、「本発明に従う熱溶融性接着剤の製法は、約5重量%から約60重量%、好ましくは約15重量%から約55重量%、より好ましくは約20重量%から約50重量%のあらゆる可塑剤も含む。適切な可塑剤は、鉱油等の通常の可塑油だけでなく、オレフィン数量体および低分子量の重合体、安息香酸グリコール、ならびに植物油、動物油、およびこのような油の誘導体も含む群から選択することができる。用いることができる石油由来の油は、非常に小さい割合の芳香族炭化水素を含む比較的沸点が高い物質である。・・・適切な相溶性を有する場合、その他の可塑剤を用いてもよい。Nynas社によって製造されるナフテン酸鉱油Ny flex 222Bもまた、適切な可塑剤であることが分かっている。当然のことながら、可塑剤は一般的に、接着剤の接着強度および/または使用温度を実質的に減少させることなく、接着剤組成物全体の粘性を下げるために用いられている。可塑剤の選択は、特定の最終用途(例えば、湿潤強度のコア用途)のための調製において有用となり得る。」と、種々の「可塑剤」を用いることについて記載されている。
しかしながら、本件発明1における「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」を用いることについて記載されておらず、(甲1l)及び甲第1号証の段落【0117】?【0124】の実施例にも「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」を用いた例は記載されていない。
そうすると、甲1発明において、「ナフテン油」に代えて、特に、本件発明1における「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」を用いる動機付けがあるとはいえない。

甲第2号証の上記摘記(甲2a)?(甲2k)には、紙おむつ、生理用ナプキン、ペットシート、病院用ガウン、及び手術用白衣などのいわゆる衛生材料などに用いられる「ホットメルト接着剤」(特に、(甲2b)及び(甲2i)を参照)において、「SEEPS」等の「ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とのブロック共重合体及びその水素添加物のうち少なくとも一種を含んでいる熱可塑性ブロック共重合体(A)」、「不飽和カルボン酸類又はその無水物によって酸変性されてなる酸変性石油樹脂(B)」、「未変性石油樹脂(C)」、「可塑剤(D)」等を含むことが記載されており(特に、(甲2a)、(甲2d)?(甲2h)、(甲2j)?(甲2k)を参照)、(甲2g)には、「可塑剤(D)としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、及び芳香族系プロセスオイルなどのプロセスオイルなどが挙げられる」こと、「パラフィン系プロセスオイルとしては、市販されている製品を用いることができる。市販品としては、例えば、・・・、出光興産製の商品名「PW-380」、・・・などが挙げられる」ことも記載され、(甲2j)及び(甲2k)の実施例では、実施例2として、「パラフィン系プロセスオイル(D1)(数平均分子量(Mn)980、脂肪族鎖状炭化水素、出光石油社製 製品名「ダイアナプロセスオイルPW-90」)」を用いた例も記載されており、実施例7の「ナフテン系プロセスオイル(D2)(数平均分子量(Mn)100?1500、脂肪族系環状炭化水素、シェル化学社製 製品名「シェルフレックス371N」)」の例に比べて、「接着性」や「熱安定性」が優れていることが示されている。
しかしながら、甲第2号証の実施例2の「パラフィン系プロセスオイル(D1)(数平均分子量(Mn)980、脂肪族鎖状炭化水素、出光石油社製 製品名「ダイアナプロセスオイルPW-90」)」は、本件明細書の段落【0023】の記載からみて、本件発明1の「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/s」の範囲に入るものではない。また、甲第2号証には、種々の「可塑剤」、「パラフィンオイル」が記載されているところ、その中で「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」を特に選択することを動機付ける記載はないから、甲第2号証には、甲1発明において、「ナフテン油」に代えて、「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」を特に選択することを動機付ける記載があるとはいえない。

甲第3号証の上記摘記(甲3a)?(甲3f)及び甲第4号証の(甲4a)?(甲4h)には、シール材等に用いる「熱可塑性エラストマー組成物」について記載され、甲第5号証の(甲5a)?(甲5f)には、医療容器用栓体及び医療容器に用いられる「熱可塑性エラストマー組成物」について記載され、(甲3c)、(甲4a)及び(甲4e)、(甲5a)及び(甲5d)には、「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/s」の範囲内の「パラフィンオイル(B)」を用いることが記載されている。
しかしながら、甲第3?4号証の「熱可塑性エラストマー組成物」」及び甲第5号証の「医療容器用栓体及び医療容器」と、甲1発明の「ホットメルト組成物」とは要求される機能、性状及び物性が異なるから、甲第3?5号証にも、甲1発明において、「ナフテン油」に代えて、「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」を特に選択することを動機付ける記載があるとはいえない。

甲第6号証の上記摘記(甲6a)?(甲6k)には、自動車等の照明灯具のシール材として用いる「ホットメルト接着剤組成物」において(特に、(甲6b)及び(甲6k)を参照)、「スチレン-(エチレン/プロピレン)-スチレンブロック共重合体(SEPS)」等の「スチレン系熱可塑性エラストマー」、「炭化水素系可塑剤」、「スチレン系樹脂」等を含むものが記載されている(特に、(甲6a)、(甲6d)?(甲6j)を参照)。また、(甲6f)には、「本発明の組成物に含有される炭化水素系可塑剤は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。炭化水素系可塑剤としては、特に制限されるものではなく、従来より公知の可塑剤を用いることができ、例えば、パラフィン系、ナフテン系若しくは芳香族系のプロセスオイル、液状ポリブテン、液状ポリブタジエン及び液状ポリイソプレン等の液状樹脂、流動パラフィン、オレフィンプロセスオイル、及びこれらを2種以上混合した混合物等が挙げられる。なかでも、ベースポリマーとの相溶性および耐熱性の点から、パラフィン系プロセスオイルが好ましい」ことが記載されており、(甲6j)に実施例では、「パラフィン系プロセスオイル(ハイコールK350、カネダ株式会社製)」を用いた例も記載されている。
しかしながら、「パラフィン系プロセスオイル(ハイコールK350、カネダ株式会社製)」は、引用文献Bの上記摘記(引B1)からみて、「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)」の範囲内のものではないし、甲第6号証には、「パラフィンオイル」として「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)」の範囲のものを選択することは記載されていないから、第6号証には、甲1発明において、本件発明1における「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」を特に選択することを動機付ける記載があるとはいえない。

甲第7号証の上記摘記(甲7a)?(甲7e)には容器等に用いる「ポリエチレン用易剥離性接着剤」が記載されているが、甲1発明の「ホットメルト組成物」とは要求される機能、性状及び物性が異なるものであるし、また、本件発明1の「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」を含有させることについて記載されていない。

さらに、甲第8号証の上記摘記(甲8a)?(甲8i)には、一般ラベル、シール等に用いる「ホットメルト型粘着組成物」において(特に、(甲8i)を参照)、「SEEPS」等の「スチレン系ブロック共重合物(A)」、「粘着付与樹脂(B)」である「スチレン樹脂」と「テルペン系樹脂」、「可塑剤(C)」等を含むものが記載されている((甲8a)、(甲8c)?(甲8h)を参照)。また、(甲8e)には、「可塑剤(C)」として「可塑剤の種類としては、パラフィン成分が60重量%以上を占めるパラフィン系鉱物油軟化剤、流動パラフィン、ポリブテン等が挙げられる。好ましくはパラフィン系鉱物油軟化剤が挙げられる」こと、「可塑剤(C)の市販品としては、商品名「ダイアナプロセス PW-90」(出光興産社製)、商品名「ダイアナプロセス PS-90」(出光興産社製)、商品名「ダイアナプロセス PW-380」(出光興産社製)、商品名「イデミツポリブテン 100R」(出光興産社製)、商品名「イデミツポリブテン 2000H」(出光興産社製)等を挙げることができる」ことも記載され、(甲8g)及び(甲8h)の実施例においても、商品名「ダイアナプロセス PW-380」(出光興産社製)を用いた例も記載されている。
しかしながら、(甲8e)には、他の「パラフィン系オイル」も列記され、(甲8g)及び(甲8h)の実施例にも他の「パラフィン系オイル」を用いた例も示されており、甲第8号証には、「パラフィンオイル」として「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)」の範囲のものを選択することの有意性は記載されていないから、第8号証には、甲1発明において、特に、本件発明1における「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」を特に選択することを動機付ける記載があるとはいえない。

そして、本件発明1における「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」を含むことによる効果について、本件明細書の段落【0012】の「・・・本発明にかかる組成物においては、当該(B)成分を配合することにより、高温領域下に放置した際の、粘度低下の変化率を抑えることができる。・・・この範囲内であることにより、組成物を塗布する際の作業性が良好となり、また粘度低下の変化率を抑えられることから、耐熱性が向上する傾向がある。・・・ 当該(B)成分の配合量としては、上記(A)成分100重量部に対して、300?2000重量部配合することが好ましく、・・・。この範囲内において、配合することにより、組成物を塗布する際の作業性が良好となり、また粘度低下の変化率を抑えられることから、耐熱性が向上する傾向がある。」との記載からみて、「組成物を塗布する際の作業性」を良好とし「粘度低下の変化率を抑え」るものであるといえるし、本件明細書の段落【0023】?【0024】の実施例3と比較例1を比較すると、実施例3の「パラフィン1」である「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」を配合した場合は、比較例1の当該パラフィンオイルを配合しない場合よりも、「粘度変化率」を抑えることができるという効果を確認することができる。
さらに、実施例1?7、比較例1?4全体をみると、本件発明1の「ホットメルト組成物」は、「テルペン樹脂」のほか、「重量平均分子量が15万以上のSEEPSブロックコポリマー(A)」、「軟化点が100℃以上の芳香族系石油樹脂(C)」、「テルペン樹脂(D)」を所定量を含み、かつ、「ポリプロピレンワックス」を含まないことにより、「粘度変化率」、「剥離性」、「解体性」に優れるという効果を奏することが示されているといえる。

したがって、相違点1は、甲1発明及び甲第2?8号証に記載された事項から、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(イ)特許異議申立書における申立人の判断
申立人は、特許異議申立書の第20頁?第22頁の「(4.3.1.1)本件特許発明1と甲第1号証との対比」において、「[B]動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B) 300?1000重量部と」を相違点とし、「(4.3.1.2)要件[B]に関する相違点について」において、「甲第1号証の熱用優勢接着剤組成物の可塑剤として、甲第2号証のホットメルト接着剤に可塑剤として含まれるパラフィン系プロセスオイルを採用し、さらに、ホットメルト組成物の自明の課題である耐熱性の向上を図るために、より動粘度の高いパラフィン系プロセスオイルを選択する動機があるということができる。すなわち、パラフィン系プロセスオイルとして、ダイアナプロセスオイルPW-90に代えて、ダイアナプロセスオイルPW-380を選択する動機があるということができる」と判断している。
しかしながら、上述したように、甲1発明において、「ナフテン油」に代えて、特に、本件発明1における「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」を用いる動機付けがあるとはいえないし、甲第2号証には、甲1発明において、「ナフテン油」に代えて、「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」を特に選択することを動機付ける記載があるとはいえない。また、甲第3?5号証について、甲第3?4号証の「熱可塑性エラストマー組成物」及び甲第5号証の「医療容器用栓体及び医療容器」と、甲1発明の「ホットメルト組成物」とは要求される機能、性状及び物性が異なるから、甲第3?5号証に記載の「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」を、甲第2号証の(甲2j)及び(甲2l)の実施例2と実施例7の結果を勘案しても、甲1発明に「ナフテン油」に代えて適用する動機付けがあるとはいえない。
したがって、上記申立人の判断を採用することはできない。

また、申立人は、特許異議申立書の第4頁?第7頁の「(4.2.1)甲第1号証」において、甲第1号証の摘記箇所を示し(摘記箇所は、上記摘記(甲1a)、(甲1e)?(甲1g)、(甲1j)、(甲1m)でも摘記されている。)、第18頁?第20頁の「(4.3.1.1)本件発明1と甲第1号証の対比」において、(甲1a)の請求項1及び(甲1m)の表10の具体的な組成物の記載のほか、他の当該摘記箇所に、本件発明1の各発明特定事項が記載されているか否かを検討し、本件発明1の、甲第1号証に開示されていない発明特定事項である「[B]動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)300?1000重量部」及び「[F]易解体性」の「ホットメルト組成物」のみを相違点として判断している。すなわち、「[A]重量平均分子量が15万以上のSEEPSブロックコポリマー(A)100重量部に対して」、「[C]軟化点が100℃以上の芳香族系石油樹脂(C)50?400重量部と」、「[D]テルペン樹脂(D)50?600重量部と、を含み」、「[E]ポリプロピレンワックスを含まないことを特徴とする」の発明特定事項については、甲第1号証に記載された発明であると判断している。
しかしながら、上記[A]、[C]?[E]の構成を全て有する「ホットメルト組成物」は、甲第1号証の実施例・比較例等に具体的な「組成物」として記載されていないし、実施例・比較例の具体的な「組成物」に裏付けられているともいえない。
また、申立人が甲第1号証に記載されているとして判断した、上記[A]、[C]?[E]の構成を全て有する「組成物」は、(甲1a)の請求項1の各発明特定事項について、甲第1号証に記載されている個別の記載事項から、本件発明1に合わせて恣意的に抽出して寄せ集めたものに過ぎず、甲第1号証において、まとまりのある技術思想として記載されているものともいえない。
したがって、申立人の上記判断を採用することはできない。
本決定では、甲第1号証に記載された発明として、申立人が摘記箇所として示した【表10】の実施例7として具体的に記載された「ホットメルト組成物」を、甲第1号証に記載された発明として認定した。

ウ 小括
以上のとおり、上記相違点2?4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)本件発明2?3について
本件発明2?3は、本件発明1を引用して限定した発明であるから、本件発明2?3は、上記(2)で示した理由と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、甲1発明を主引用発明とした場合に、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできない。


2 甲第8号証を主引用例とした申立理由1の検討
(1) 甲第8号証に記載された発明について
甲第8号証の上記摘記(甲8g)には、(甲8f)の「例中、「部」とあるのは「重量部」を、・・・それぞれ表すものとする」との記載を踏まえると、製造例5として、
「Septon S-4033 20重量部
クリスタレックス F100 25重量部
アルコン M-100 25重量部
ダイアナプロセス PS-90 30重量部
からなるホットメルト型粘着組成物」の発明が記載されている。
この「ホットメルト型粘着組成物」の各成分について、(甲8h)には、
「Septon S-4033」が「スチレン-エチレン/エチレン/プロピレン-スチレン共重合体(SEEPS)、重量平均分子量95000」の「スチレン系ブロック共重合物」であり、
「クリスタレックス F100」が「α-メチルスチレンとスチレンの共重合体、軟化点100℃」の「粘着付与樹脂(B)」であり
「アルコン M-100」が「部分水添石油樹脂、軟化点100℃」の「粘着付与剤」であることが記載されている。

そうすると、甲第8号証には、
「重量平均分子量95000のSEEPSである「Septon S-4033」 20重量部
軟化点100℃のα-メチルスチレンとスチレンの共重合体である「クリスタレックス F100」 25重量部
軟化点100℃の部分水添石油樹脂である「アルコン M-100」 25重量部
「ダイアナプロセス PS-90」 30重量部
からなるホットメルト型粘着組成物」の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されているといえる。

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲8発明とを、上記2(1)での検討を踏まえて対比する。

甲8発明の「ホットメルト型粘着組成物」は、本件発明1の「ホットメルト組成物」であるといえる。

甲8発明の「重量平均分子量95000のSEEPSである「Septon S-4033」は、本件発明1の「重量平均分子量が15万以上のSEEPSブロックコポリマー(A)」と、「SEEPSブロックコポリマー(A)」である限りにおいて一致する。

甲8発明の「ダイアナプロセス PS-90」は、引用文献Aの(引1A)の記載によれば「動粘度(40℃)」が「92.4mm^(2)/sec」である「パラフィン系オイル」であるから、本件発明1の「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」とは、「パラフィン系オイル」である限りにおいて一致する。

甲8発明において、「ダイアナプロセス PS-90」は、「ホットメルト型粘着組成物」中に「30重量部」含まれており、一方、「重量平均分子量95000のSEEPSである「Septon S-4033」」は「20重量部」含まれているから、前者の「ダイアナプロセス PS-90」は、「Septon S-4033」100重量部に対して、150重量部含まれているといえる。

甲8発明の「ホットメルト型粘着組成物」は、「ポリプロピレンワックス」を含んでいないので、本件発明1と同様に、「ポリプロピレンワックスを含まない」ものであるといえる。

そうすると、本件発明1と甲8発明とは、
「SEEPSブロックコポリマー(A)100重量部に対して、
パラフィンオイル(B)と、を含み、
ポリプロピレンワックスを含まない、ホットメルト組成物。」
で一致し、以下の点で相違する。


相違点5:「SEEPSブロックコポリマー(A)」について、本件発明1では、「重量平均分子量が15万以上」のものであるのに対し、甲8発明では、「重量平均分子量」が「95000」である点

相違点6:「パラフィンオイル(B)」について、本件発明1では、「動粘度(40℃)」が「200?1000mm^(2)/s」のものを「SEEPSブロックコポリマー(A)」「100重量部」に対して「300?1000重量部」含むのに対し、甲1発明では、「動粘度(40℃)」が「92.4mm^(2)/sec」のものを「SEEPSブロックコポリマー(A)」「100重量部」に対して「150重量部」含む点。

相違点7:「ホットメルト組成物」中の「SEEPSブロックコポリマー(A)」以外の樹脂成分について、本件発明1では、「SEEPSブロックコポリマー(A)」100重量部に対して、「軟化点が100℃以上の芳香族系石油樹脂(C)50?400重量部」、「テルペン樹脂(D)50?600重量部」を含むのに対し、甲1発明では、「・・・SEEPSである「Septon S-4033」の「20重量部」に対し、「軟化点100℃のα-メチルスチレンとスチレンの共重合体である「クリスタレックス F100」」を「25重量部」、「軟化点100℃の部分水添石油樹脂である「アルコン M-100」」を「25重量部」を含む点。

相違点8:「ホットメルト組成物」について、本件発明1では、「易解体性」であると特定しているのに対し、甲8発明では、「易解体性」であるか明らかでない点。

イ 判断
事案に鑑みて、上記相違点6について、まず検討する。

相違点6について
上記1(2)イ(ア)で述べたとおり、甲第8号証の上記摘記(甲8e)には、商品名「ダイアナプロセス PW-380」(出光興産社製)以外の、他の「パラフィン系オイル」も列記され、(甲8g)及び(甲8h)の実施例にも他の「パラフィン系オイル」を用いた例も示されており、甲第8号証には、「パラフィンオイル」として「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)」の範囲のものを選択することの有意性は記載されていない。
そうすると、甲第8号証には、甲8発明において、特に、本件発明1における「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」を特に選択することを動機付ける記載があるとはいえない。

また、甲第1?7号証にも、上記1(2)イ(ア)で検討したとおり、甲8発明において、「可塑剤」として、「ダイアナプロセス PS-90」に代えて、本件発明1における「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」を特に選択することを動機付ける記載があるとはいえない。

そして、上記1(2)イ(ア)で述べたとおり、本件発明1の「ホットメルト組成物」において、「動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)」を含有させることは、当該組成物について粘度変化率」を抑えることができるという効果を奏するものである。

したがって、相違点6は、甲8発明及び甲第1?7号証に記載された事項から、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(イ)特許異議申立書における申立人の判断
申立人は、特許異議申立書の第13頁?第18頁の「(4.2.8)甲第8号証」において、甲第8号証の摘記箇所を示し(摘記箇所は、上記摘記(甲8a)、(甲8c)?(甲8e)、(甲8h)でも摘記されている。)、第18頁?第20頁の「(4.3.2.1)本件発明1と甲第8号証の対比」において、(甲8a)の請求項1のほか、他の当該摘記箇所に、本件発明1の各発明特定事項が記載されているか否かを検討し、本件発明1の、甲第8号証に開示されていない発明特定事項である「[F]易解体性」の「ホットメルト組成物」のみを相違点として判断している。すなわち、「[A]重量平均分子量が15万以上のSEEPSブロックコポリマー(A)100重量部に対して」、「[B]動粘度(40℃)が200?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)300?1000重量部と」、「[C]軟化点が100℃以上の芳香族系石油樹脂(C)50?400重量部と」、「[D]テルペン樹脂(D)50?600重量部と、を含み」、「[E]ポリプロピレンワックスを含まないことを特徴とする」の発明特定事項については、甲第8号証に記載された発明であると判断している。
しかしながら、上記[A]?[E]の構成を全て有する「組成物」は、甲第8号証の実施例・比較例等に具体的な「組成物」として記載されていないし、実施例・比較例の具体的な「組成物」に裏付けられているともいえない。
また、申立人が甲第8号証に記載されているとして判断した上記[A]?[E]の構成を全て有する「組成物」は、(甲8a)の請求項1の各発明特定事項について、甲第8号証に記載されている個別の記載事項から、本件発明1に合わせて抽出して寄せ集めたものに過ぎず、甲第8号証において、まとまりのある技術思想として記載されているものともいえない。
したがって、申立人の上記判断を採用することはできない。
本決定では、申立人は甲第8号証の特定の実施例・比較例の摘記箇所を特に示さなかったことから、甲第8号証に記載された発明として、本件発明1の「SEEPSブロックコポリマー」を用いた唯一の実施例であり、「芳香族系石油樹脂」を含有する実施例5について、甲第8号証に記載された発明として認定した。

ウ 小括
以上のとおり、上記相違点5、7?8について検討するまでもなく、本件発明1は、甲8号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)本件発明2?3について
本件発明2?3は、本件発明1を引用して限定した発明であるから、本件発明2?3は、上記(2)で示した理由と同じ理由により、甲第8号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり、甲8発明を主引用発明とした場合であっても、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできない。


第6 むすび
以上のとおり、申立人が主張する異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2020-10-29 
出願番号 特願2017-39296(P2017-39296)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 横山 法緒  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 杉江 渉
安田 周史
登録日 2019-12-20 
登録番号 特許第6634044号(P6634044)
権利者 アイカ工業株式会社
発明の名称 易解体性ホットメルト組成物  
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