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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C03C
管理番号 1368120
異議申立番号 異議2020-700655  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-03 
確定日 2020-11-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第6656310号発明「光学ガラスおよびその利用」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6656310号の請求項1ないし16に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許第6656310号(以下、「本件」という。)の請求項1?16に係る特許についての出願は、平成25年8月23日に出願された特願2013-173998号の一部を、平成29年2月6日に新たな特許出願とした特願2017-19225号の一部を、平成30年6月26日に更に新たな特許出願とした特願2018-120624号の特許請求の範囲に記載された請求項1?16に係る発明について、令和2年2月6日に設定登録、同年3月4日に登録公報の発行がされたものである。
その後、本件の全請求項に係る特許に対し、特許異議申立人 宮園 祐爾(以下、「申立人」という。)より、令和2年9月3日付けで特許異議の申立てがなされた。

第2 本件特許発明について

本件特許の請求項1?16に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明16」という。)は、特許請求の範囲の請求項1?16に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる。

「 【請求項1】
Si^(4+)、B^(3+)、La^(3+)、Ti^(4+)、Nb^(5+)、およびZr^(4+)を必須成分とし、
カチオン%表示で、
Si^(4+)およびB^(3+)を合計で20?30%、
La^(3+)を18?35%(但し、La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)を合計で50%以下)、
Ti^(4+)、Nb^(5+)、Ta^(5+)およびW^(6+)を合計で22?35%、
含み、
Y^(3+)の含有量は15%以下であり、
Ti^(4+)の含有量は22%以下であり、
Si^(4+)およびB^(3+)の合計含有量に対するSi^(4+)の含有量のカチオン比[Si^(4)/(Si^(4)+B^(3+))]が0.34以下、
La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)、Yb^(3+)、Zr^(4+)、Ti^(4+)、Nb^(5+)、Ta^(5+)、W^(6+)およびBi^(3+)の合計含有量が65%以上、
La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量に対するBa^(2+)の含有量のカチオン比[Ba^(2+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]が0.40以下、
Zr^(4+)の含有量に対するZr^(4+)、Ti^(4+)、Nb^(5+)、Ta^(5+)およびW^(6+)の合計含有量のカチオン比[(Zr^(4+)+Ti^(4+)+Nb^(5+)+Ta^(5+)+W^(6+))/Zr^(4+)]が2以上、
B^(3+)の含有量に対するTi^(4+)の含有量のカチオン比(Ti^(4+)/B^(3+))が0.85以上、
であり、
アッベ数νdが23?35の範囲であり、かつ屈折率ndが下記(1)式を満たす酸化物ガラスである光学ガラス。
nd≧2.205-(0.0062×νd) ・・・ (1)
【請求項2】
Ti^(4+)、Nb^(5+)、Ta^(5+)およびW^(6+)の合計含有量に対するNb^(5+)およびTa^(5+)の合計含有量のカチオン比[(Nb^(5+)+Ta^(5+))/(Ti^(4+)+Nb^(5+)+Ta^(5+)+W^(6+))]が0.41以下である請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
Zr^(4+)を1カチオン%以上含む請求項1または2に記載の光学ガラス。
【請求項4】
Nb^(5+)の含有量は20カチオン%以下である請求項1?3のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項5】
Nb^(5+)の含有量に対するNb^(5+)およびTa^(5+)の合計含有量のカチオン比[(Nb^(5+)+Ta^(5+))/Nb^(5+)]が7以下である請求項1?4のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項6】
Mg^(2+)、Ca^(2+)、Sr^(2+)およびBa^(2+)の合計含有量は0?10%の範囲である請求項1?5のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項7】
W^(6+)の含有量は0?10カチオン%の範囲である請求項1?6のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項8】
Si^(4+)、B^(3+)、La^(3+)、Ti^(4+)、Nb^(5+)、およびZr^(4+)を必須成分とし、
カチオン%表示で、
Si^(4+)およびB^(3+)を合計で15?30.40%、La^(3+)を15?35%(但し、La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)を合計で60%以下)、
Ti^(4+)、Nb^(5+)、Ta^(5+)およびW^(6+)を合計で23?45%(但し、Ti^(4+)を22%超)、
含み、
Y^(3+)の含有量は15%以下であり、
Si^(4+)およびB^(3+)の合計含有量に対するSi^(4+)の含有量のカチオン比[Si^(4+)/(Si^(4+)+B^(3+))]が0.35以下、
La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量に対するBa^(2+)の含有量のカチオン比[Ba^(2+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]が0.40以下、
La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量に対するGd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量のカチオン比[(Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]が0.02以上、
Zr^(4+)の含有量に対するZr^(4+)、Ti^(4+)、Nb^(5+)、Ta^(5+)およびW^(6+)の合計含有量のカチオン比[(Zr^(4+)+Ti^(4+)+Nb^(5+)+Ta^(5+)+W^(6+))/Zr^(4+)]が2以上、
Ti^(4+)、Nb^(5+)、Ta^(5+)およびW^(6+)の合計含有量に対するNb^(5+)およびTa^(5+)の合計含有量のカチオン比[(Nb^(5+)+Ta^(5+))/(Ti^(4+)+Nb^(5+)+Ta^(5+)+W^(6+))]が0.181以上、
B^(3+)の含有量に対するTi^(4+)の含有量のカチオン比(Ti^(4+)/B^(3+))が0.85 以上、
であり、
アッベ数νdが18以上35未満の範囲であり、かつ屈折率ndが下記(2)式を満たす 酸化物ガラスである光学ガラス。
nd≧2.540-(0.02×νd) ・・・ (2)
【請求項9】
Ti^(4+)、Nb^(5+)、Ta^(5+)およびW^(6+)の合計含有量に対するNb^(5+)およびTa^(5+)の合計含有量のカチオン比[(Nb^(5+)+Ta^(5+))/(Ti^(4+)+Nb^(5+)+Ta^(5+)+W^(6+))]が0.41以下である請求項8に記載の光学ガラス。
【請求項10】
Nb^(5+)の含有量は20カチオン%以下である請求項8または9に記載の光学ガラス。
【請求項11】
Nb^(5+)の含有量に対するNb^(5+)およびTa^(5+)の合計含有量のカチオン比[(Nb^(5+)+Ta^(5+))/Nb^(5+)]が7以下である請求項8?10のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項12】
Mg^(2+)、Ca^(2+)、Sr^(2+)およびBa^(2+)の合計含有量は0?10%の範囲である請求項8?11のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項13】
W^(6+)の含有量は0?10カチオン%の範囲である請求項8?12のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項14】
請求項1?13のいずれか1項に記載の光学ガラスからなるプレス成形用ガラスゴブ。
【請求項15】
請求項1?13のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる光学素子ブランク。
【請求項16】
請求項1?13のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる光学素子。」

第3 特許異議申立理由の概要
1 特許法第36条第6項第2号
本件特許発明1及び8は、Si^(4+)及びB^(3+)を必須成分としているところ、カチオン比Si^(4)/(Si^(4)+B^(3+))には下限値が規定されていないため、本件特許発明1、8及びこれらを引用する本件特許発明2?7、9?16は不明確である(特許異議申立書(4-4-1)?(4-4-3))。

2 特許法第36条第6項第1号
ア 本件特許発明1及び8は、Si^(4+)、B^(3+)、Nb^(5+)及びZr^(4+)を必須成分とするところ、これらの含有量の上限値及び下限値が規定されておらず、本件明細書の対応する実施例における最小値未満の場合又は上記最大値を超える場合に、「高屈折率低分散ガラスでありながら、優れたガラス安定性を有する光学ガラスを提供すること。」との課題を解決できるような光学ガラスが得られるか当業者は認識することができない(特許異議申立書(4-3-1)(ア)及び(4-3-8)(ア))。」

イ 本件特許発明1?13は、カチオン含有量又はカチオン比について規定される数値範囲の上限値又は下限値が、本件明細書の対応する実施例における最大値を超えるか、又は最小値を下回るものであるところ、当該数値範囲のうち、当該実施例における最小値未満の場合又は上記最大値を超える場合に、上記課題を解決できるような光学ガラスが得られるか当業者は認識することができないから、当業者が、実施例に記載された限定的な組成の範囲から、本件特許発明1?13において特定する数値範囲にまで拡張ないし一般化して認識することができない(特許異議申立書(4-3-1)(イ)?(4-3-1)(コ)、(4-3-2)?(4-3-7)、(4-3-8)(イ)?(4-3-8)(コ)、(4-3-9)?(4-3-13))。

ウ 本件特許発明1は、アッベ数νdが23?35の範囲であるところ、本件明細書の実施例のアッベ数νdの最小値は26.21、最大値は27.86であるため、本件特許発明1に規定するアッベ数νdの下限値または上限値になった場合に、nd≧2.205-(0.0062×νd)を満たすような光学ガラスが得られるか当業者は認識することができない。同様の理由で、本件特許発明8に規定するアッベ数νdの下限値または上限値になった場合に、nd≧2.540-(0.02×νd)を満たすような光学ガラスが得られるか当業者は認識することができないから、当業者が、実施例に記載された限定的な組成の範囲から、本件特許発明1、8において特定する数値範囲にまで拡張ないし一般化して認識することができない(特許異議申立書(4-3-1)(サ)、(4-3-8)(サ))。

エ 本件明細書では、本件特許発明1及び8の発明特定事項に加えて、以下のガラス組成を調整することで安定性が高い光学ガラスが得られることが記載されているところ、当該ガラス組成は本件特許発明1及び8に特定されていないから、本件特許発明1及び8は、当業者が明細書に記載された限定的な組成の範囲から、本件特許発明1及び8において特定する数値範囲にまで拡張ないし一般化して認識することができない(特許異議申立書(4-3-1)(シ)及び(4-3-8)(シ))。
本件特許発明1について、
・カチオン比[Y^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]の値
・カチオン比[(Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]の値
・Nb^(3+)の含有量
・カチオン比[(Nb^(5+)+Ta^(5+))/Nb^(5+)]の値
・カチオン比[W^(6+)/(Ti^(4+)+Nb^(5+)+Ta^(5+)+W^(6+))]の値
・カチオン比[(Nb^(5+)+Ta^(5+))/(Ti^(4+)+Nb^(5+)+Ta^(5+)+W^(6+))]の値
・カチオン比[(Ti^(4+)+Nb^(5+)+Ta^(5+)+W^(6+))/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]の値
本件特許発明8について、
・Nb^(3+)の含有量
・カチオン比[(Nb^(5+)+Ta^(5+))/Nb^(5+)]の値
・カチオン比[W^(6+)/(Ti^(4+)+Nb^(5+)+Ta^(5+)+W^(6+))]の値
・カチオン比[(Ti^(4+)+Nb^(5+)+Ta^(5+)+W^(6+))/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]の値
・カチオン比[Y^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]の値
・カチオン比[((Si^(4+)+B^(3+)))/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]の値

オ 本件特許発明14?16は、本件特許発明1?13に従属しているため、(4-3-1)?(4-3-13)と同様に、当業者が実施例に記載された限定的な範囲から、本件特許発明14?16において特定する範囲にまで拡張ないし一般化して認識することができない(特許異議申立書(4-3-14))。

第4 当審の判断

1 特許法第36条第6項第2号
本件特許発明1及び8は、Si^(4+)及びB^(3+)を必須成分としているから、カチオン比Si^(4)/(Si^(4)+B^(3+))は0にはならないことを、当業者は明確に把握することができる。また、カチオン比Si^(4)/(Si^(4)+B^(3+))の下限値が規定されていないということに起因して、当業者が本件特許発明1及び8を明確に把握することができないとはいえない。
したがって、本件特許発明1、8及びこれらを引用する本件特許発明2?7、9?16は、明確でないとはいえない。

2 特許法第36条第6項第1号
ア 本件特許発明の課題について
本件特許発明の課題は、「高屈折率低分散ガラスでありながら、優れたガラス安定性を有する光学ガラスを提供すること」(本件明細書【0005】)であると認められる。

イ 上記第3 2ア、2イ及び2エについて
上記第3 2アで指摘されるSi^(4+)及びB^(3+)については、本件特許発明1において「Si^(4+)およびB^(3+)を合計で20?30%」、「カチオン比[Si^(4)/(Si^(4)+B^(3+))]が0.34以下」と規定され、本件特許発明8において「Si^(4+)およびB^(3+)を合計で15?30.40%」、「カチオン比[Si^(4+)/(Si^(4+)+B^(3+))]が0.35以下」と規定されている。
同様に、同2アで指摘されるNb^(5+)及びZr^(4+)については、本件特許発明1において「Ti^(4+)、Nb^(5+)、Ta^(5+)およびW^(6+)を合計で22?35%」、「Zr^(4+)の含有量に対するZr^(4+)、Ti^(4+)、Nb^(5+)、Ta^(5+)およびW^(6+)の合計含有量のカチオン比[(Zr^(4+)+Ti^(4+)+Nb^(5+)+Ta^(5+)+W^(6+))/Zr^(4+)]が2以上」、「La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)、Yb^(3+)、Zr^(4+)、Ti^(4+)、Nb^(5+)、Ta^(5+)、W^(6+)およびBi^(3+)の合計含有量が65%以上」と規定され、本件特許発明8において「Ti^(4+)、Nb^(5+)、Ta^(5+)およびW^(6+)を合計で23?45%(但し、Ti^(4+)を22%超)」、「Zr^(4+)の含有量に対するZr^(4+)、Ti^(4+)、Nb^(5+)、Ta^(5+)およびW^(6+)の合計含有量のカチオン比[(Zr^(4+)+Ti^(4+)+Nb^(5+)+Ta^(5+)+W^(6+))/Zr^(4+)]が2以上」、「Ti^(4+)、Nb^(5+)、Ta^(5+)およびW^(6+)の合計含有量に対するNb^(5+)およびTa^(5+)の合計含有量のカチオン比[(Nb^(5+)+Ta^(5+))/(Ti^(4+)+Nb^(5+)+Ta^(5+)+W^(6+))]が0.181以上」と規定されている。
そうすると、Si^(4+)、B^(3+)、Nb^(5+)及びZr^(4+)の範囲は自ずと規定され、あらゆる範囲をとってよいことにはならない。
その上で、上記第3 2ア、2イ及び2エで指摘される点について検討するに、本件明細書には、「ガラス組成の調整により、高屈折率低分散ガラスでありながら安定性が高い光学ガラスが得られる」(【0006】)ことが記載され、ガラス組成の調節によって課題を解決するために資する情報として、高屈折率、低分散及び安定性(耐失透性)に関し、本件明細書には、組成要件として記載されている各カチオンの作用が以下のとおり記載されている。

Si^(4+)及びB^(3+ ):安定性
La^(3+ ):安定性、高屈折率、低分散
Gd^(3+)、Y^(3+)及びYb^(3+ ):高屈折率、低分散
Ti^(4+)、Nb^(5+)、Ta^(5+)及びW^(6+) :高屈折率、安定性
Zr^(4+ ):高屈折率、安定性

してみると、いずれかの実施例から出発して、一群とされたカチオン間の置換はもちろん、同様の作用を有するとされたカチオン間の置換によっても含有量の変更が可能であることは当業者に自明なことといえる。
また、本件特許発明のアッベ数及び屈折率の範囲には幅があることから、異なる群のカチオンを、本件特許発明のアッベ数及び屈折率の範囲を満たす範囲で置換することによっても、含有量の変更が可能であることは当業者に明らかである。
さらに、ガラスの安定性を維持するための成分を減少させた場合には、安定性の悪化が懸念されるものであるところ、安定性の悪化の影響をガラスを製造する際の冷却条件等を制御することによって抑えることは、当業者にとって技術常識であるといえる。
以上から、実施例におけるカチオン含有量やカチオン比の範囲が限定的であるとしても、当業者であれば、上記の相互置換により、本件特許発明1?13で規定されるカチオン含有量やカチオン比の範囲においても、上記課題を解決できると認識できる範囲といえる。
また、上記の検討のとおりであるから、当業者であれば、上記第3 2エのカチオン含有量及びカチオン比の特定がない本件特許発明1及び8で規定される組成範囲に拡張できることも認識できる。
したがって、本件特許発明1?13は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。

ウ 上記第3 2ウについて
上記イで説示したとおり、実施例から出発して様々なカチオン間の置換が可能であることから、例えば、実施例において、安定性に作用するB^(3+)や、高屈折率に作用するTi^(4+)の一部を、安定性及び高屈折率に加え低分散にも作用するLa^(3+)に置換すれば、当該実施例に比べ大きなアッベ数のガラスが得られ、逆の置換をすれば、アッベ数の小さなガラスとなることは当業者に自明なことといえる。
そうすると、実施例におけるアッベ数の範囲が限定的であるとしても、当業者であれば、上記相互置換により、本件特許発明で規定されるアッベ数の範囲に拡張できることを認識できる。
したがって、本件特許発明1、8は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。

エ 上記第3 2オについて
上記イ?ウで説示したとおり、本件特許発明1?13は本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえないから、本件特許発明1?13を引用するものである本件特許発明14?16も、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。

第5 むすび

以上のとおりであるので、本件特許発明1?16に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によって取り消すことはできない。

また、他に本件特許発明1?16に係る特許を取り消すべき理由がないかについて検討したが、これを見出すことはできない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-11-05 
出願番号 特願2018-120624(P2018-120624)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (C03C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山本 一郎  
特許庁審判長 宮澤 尚之
特許庁審判官 金 公彦
岡田 隆介
登録日 2020-02-06 
登録番号 特許第6656310号(P6656310)
権利者 HOYA株式会社
発明の名称 光学ガラスおよびその利用  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  

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