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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G06Q
管理番号 1368141
異議申立番号 異議2020-700572  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-07 
確定日 2020-11-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第6648328号発明「放射性医薬品の発注支援装置及び発注支援方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6648328号の請求項1,8ないし10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許6648328号の請求項1-10に係る特許についての出願は,平成31年3月28日に出願され,令和2年1月17日にその特許権の設定登録がされ,令和2年2月14日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許のうち請求項1,8-10に係る特許に対し,令和2年8月7日に特許異議申立人鈴木香織(以下「異議申立人」という。)は,特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許6648328号の請求項1,8-10の特許に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」,「本件発明8」-「本件発明10」という。)は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1,8-10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
対象となる検査施設の検査施設システムで生成された,該検査施設における核医学検査が予約されている各被検者の予約済み検査に関する検査日時情報及び放射性医薬品情報をそれぞれ取得する情報取得部と,
前記取得された予約済み検査ごとの検査日時情報及び放射性医薬品情報に基づいて,前記検査施設における所定期間内の核医学検査の予約リストと共に予約済み検査ごとの放射性医薬品情報を前記検査施設の検査施設端末に表示する表示処理部と,
前記予約リストの表示に対する発注操作が受け付けられた場合に,前記取得された予約済み検査ごとの放射性医薬品情報に基づいて,該予約リストに含まれる複数の予約済み検査で必要となる放射性医薬品の一括発注情報を発注先ごとに区分けして生成する情報生成部と,
を備える放射性医薬品の発注支援装置。」

「【請求項8】
前記表示処理部は,前記予約リストに含まれる或る予約済み検査に対するキャンセル操作が行われた場合に,該予約済み検査を前記予約リストから消去し,又は,前記予約リストにおける該予約済み検査の表示態様を変更し,
前記情報生成部は,前記キャンセル操作の対象とされた予約済み検査を除く前記予約リストに含まれる複数の予約済み検査で必要となる放射性医薬品の一括発注情報を発注先ごとに区分けして生成する,
請求項1から6のいずれか一項に記載の放射性医薬品の発注支援装置。
【請求項9】
放射性医薬品の発注期限情報を保持する期限保持部,
を更に備え,
前記表示処理部は,前記予約リスト内に前記発注期限情報で示される発注期限が徒過している放射性医薬品を使用する予約済み検査が存在しているか否かをチェックし,
前記予約リスト内に発注期限が徒過している放射性医薬品を使用する予約済み検査が含まれている場合には,前記発注操作が受け付け不可能な状態とされる,又は,前記発注操作に伴い警告表示が表示される,
請求項1から8のいずれか一項に記載の放射性医薬品の発注支援装置。
【請求項10】
少なくとも一つのコンピュータで実行される放射性医薬品の発注支援方法であって,
対象となる検査施設の検査施設システムで生成された,該検査施設における核医学検査が予約されている各被検者の予約済み検査に関する検査日時情報及び放射性医薬品情報をそれぞれ取得し,
前記取得された予約済み検査ごとの検査日時情報及び放射性医薬品情報に基づいて,前記検査施設における所定期間内の核医学検査の予約リストと共に予約済み検査ごとの放射性医薬品情報を前記検査施設の検査施設端末に表示し,
前記予約リストの表示に対する発注操作が受け付けられた場合に,前記取得された予約済み検査ごとの放射性医薬品情報に基づいて,該予約リストに含まれる複数の予約済み検査で必要となる放射性医薬品の一括発注情報を発注先ごとに区分けして生成する,
ことを含む放射性医薬品の発注支援方法。」

第3 申立理由の概要
異議申立人は,甲第1号証として特開2003-150830号公報(以下「甲1」という。)を提出し,甲第2号証として特開2018-28517(以下「甲2」という。)を提出し,請求項1,8-10に係る特許は甲1に基づいて特許法第29条第2項の規定に違反するものであり,請求項9に係る特許は甲1及び甲2に基づいて特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから,請求項1,8-10に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

第4 文献の記載
1 甲1の記載事項と甲1発明
甲1には,以下の事項が記載されている。下線は強調のため当審で付与した。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,発注システムに関し,特に,病院内の医薬品(RI薬品)の発注に関するもので放射線部門で使用されるシステムに関する。」
「【0014】
【発明の実施の形態】以下,本発明の好適な実施の形態の一例について,図面を参照して具体的に説明する。
【0015】(システムの全体構成)先ず,本発明の発注システムの一例である薬品発注システムを動作させる前提となる,システムの概略構成,とりわけその通信インフラ並びにハードウエア構成について,図1を参照して説明する。図1は,本実施の形態の薬品発注システムの全体構成を示す説明図である。
【0016】本実施の形態の薬品発注システム1は,薬品の管理ならびに薬品発注を行うものであり,図1に示すように,大きく,放射線部門側のシステム2と,このシステム2とネットワークN2ないしはN3などの各種通信網を介してデータ通信可能な薬品メーカー側のシステム3とを有する。
【0017】システム2は,放射線部門情報管理システム(以下RIS)とRI薬品在庫管理システムとが組み合わせて構成される。
【0018】ここに,RIS(ラジオロジーインフォメーションシステム)とは,放射線情報管理システムをいい,放射線検査を管理するものであり,在庫の管理の他に,どのような撮影を行ったか等の情報も格納されている。また,前記RISは,放射線検査に関する種々の情報を授受するネットワークであり,RI薬品の量などを管理するものである。
【0019】より詳細には,システム2は,RI薬品の予約ないしは発注を希望する希望者(ユーザー)側の一又は複数のRI薬品発注端末10と,RISの端末であってRI検査予約情報を操作入力するための一又は複数の(RI検査予約情報を入力する装置)端末12と,RI薬品管理情報を操作入力するための一又は複数の(RI薬品管理情報を入力する装置)端末14と,これら端末10,12,14,とネットワークN1などの通信網を介して無線,有線等により各々データ通信可能に形成されて薬品発注の管理を行うサーバー20と,システム2からシステム3に対してデータ通信を行うためのモデム又はターミナルアダプタ等の通信機器22と,を含んで構成されている。
【0020】ここに,前記端末12は,本発明にいう「第1の入力手段」に該当し得,前記端末14は,本発明にいう「第2の入力手段」に該当し得る。
【0021】-【0023】(略)
【0024】端末10は,RI薬品を発注するためのものであり,サーバー等にアクセス可能なコンピュータ機器である。この端末10は,ネットワークを介してデータ通信可能な機能を有していれば,デスクトップ,ラップトップコンピュータ,携帯電話端末・パームコンピュータ・PDA,モバイル,ページャその他無線・有線通信機能を有する情報機器,またはこれに類するコンピュータなどいかなるコンピュータでもよく,移動式・固定式を問わない。
【0025】なお,端末10は,図示しないが,種々の情報等を表示するための表示手段(スクリーン),この表示手段の表示画面上にデータを入力するための操作入力手段,データを送受信するための送受信手段(ないしは送信手段及び受信手段),各種データを記憶するための記憶手段(メモリ),これらの制御を司る制御手段などを有している。
【0026】-【0027】(略)
【0028】サーバー20は,有線通信に加えて無線通信機能を有し,データベース(DB)その他のメモリなど,サーバー20にアクセス可能なメモリを有する。サーバー20は,例えば情報をユーザーに提供するものであり,無線・有線通信機能をもつ専用のサーバー,または薬品情報,検査予約情報等を管理するのに必要な種々のソフトウエア機能を有し,さらには,インタラクティブなウェブページの管理その他インターネットサービスの提供,データベース管理の可能なサーバーでよい。
【0029】このサーバー20は,図示しないが,ユーザー側に発注画面等の各種画面が表示されるように促すプログラム等により形成された表示処理手段,端末10,12,14との間で例えばRI薬品情報などの各種データの送受信を行う送受信手段(ないしは送信手段及び受信手段),システム管理者用の表示手段及び操作入力手段,各種制御プログラム,サービス実行プログラムなどを記憶しておく記憶手段,などを含んで構成される。これらの各手段の構成は,種々のハードウエア及びソフトウエアによって実現できるよう構成される。
【0030】ハードウエア構成の具体例としては,図示しないが,通信機能の制御を行う通信用インターフェース,ハードディスク等の記憶装置,端末からのデータ入出力を行う入出力インターフェース,及びそれらの制御を司る制御手段たる中央演算処理装置(CPU)等が挙げられる。
【0031】また,ソフトウエアとしては,このグラフィカルユーザインターフェースを実現するための,標準ウェブページオーサリングツールおよびHTML,XML,CGI,Java,Javascript,ActiveX等の言語を用いてプログラムしてもよい。
【0032】さらに,「サーバー20」には,通常のサーバーとしての機能のみならず,データベース,電子メールを送受信するためのPOP及びSMTPサーバーやその他DNSサーバーなどの各種サーバーを含んで構成され,これらを含むシステムの総称として機能してよい。
【0033】なお,端末12,14は,端末10とほぼ同様の構成を有する。端末12は,RI検査予約情報(予約日,RI薬品名,数量)を登録するとともに,検査を実施した後の実施日等の入力を行うこともできる。端末14は,RI薬品在庫管理,RI薬品の半減期,及びメーカー情報(TEL,FAX,電子メールアドレス)を管理する。RI薬品も入庫情報,及びRISから入力される検査実施情報に基づき,出庫情報を管理する。出庫は,検査を実施した時をいう。
【0034】-【0035】(略)
【0036】上述のような構成を有する薬品発注システム1において,ある一定の時刻,または操作により翌日以降のRI検査を調べ,半減期,及び現在の在庫量に基づき,発注すべきRI薬品をメーカー別(発注先別)に検索し,表示画面上に発注薬品リスト(ないしは発注先別の各発注薬品リスト)として表示される。検索されたRI薬品の発注薬品リストは,FAX又は電子メール等のいずれかの通信手段により注文書として送信される。
【0037】本実施の形態では,RI検査の情報を入力する時に,使用する薬品の使用量などを入力して,RI検査をやると決まった時点で,その情報を入力して,その時点から薬品の半減期等をコンピュータを使って自動的に計算をして,発注しなければならない薬品の一覧を生成する。
【0038】この際,ある薬品メーカーについて当該薬品の一覧を出し,各薬品メーカー毎に発注に必要な薬品の一覧が生成される。サーバーは,当該一覧表示を出すための処理(検索)を行う。
【0039】このように,本実施の形態のシステムでは,検査の予約時に使用する薬品の使用量及び,半減期を管理し,在庫の不足が無くなるよう,発注日になれば,製造元単位に集計し,FAX又はメールで注文書を送信する方式を取る。これにより,従来よりも正確な医薬品の発注,手作業の軽減などの効果を得ることができる。
【0040】(表示画面について)ここに,端末10に表示される表示画面の一例について,図2?図3を用いて説明する。図2には,放射性医薬品使用予定一覧の表示画面の表示態様の一例が開示されている。
【0041】同図に示すように,表示画面40には,放射性医薬品名を表示するための放射性医薬品名表示部41,当該薬品の量を表示する薬品量表示部42,注射予定日を表示した注射予定日表示部43,患者IDを表示した患者ID表示部44a,患者氏名を表示した患者氏名表示部44b,患者の性別を表示した患者性別表示部44c,患者の年齢を表示した患者年齢表示部44d,当該患者が入院患者であるのかあるいは外来患者であるのかの識別情報を表示した入外識別部44e,患者の病棟を示した病棟表示部45,患者にRI薬品を投与する部位を示した部位表示部46などが表示形成されている。これら各部の各項目において各々データ入力が可能である。
【0042】また,図3には,薬品発注を行うための発注リストを表示した表示画面の一例が開示されている。同図に示すように,表示画面50には,各薬品メーカー,例えば,A社,B社,C社等の各々に対する薬品発注リストを表示した各表示欄51,52,53が設けられている。
【0043】表示欄51は,さらに,発注すべき放射性医薬品名を表示した放射性医薬品名表示部51a並びに当該医薬品の発注される量を表示した薬品量表示部51bが形成されている。他のB社,C社用の表示欄52,53においても同様に表示部52a・52b及び表示部53a・53bが表示形成されている。
【0044】なお,これらの各部各項目は操作入力によって新たに薬品を指定したり,薬品名,量を修正することも可能である。このような,発注先毎に発注薬品リストを端末10の表示手段の表示画面上に表示する。なお,この不図示の表示手段は,本発明にいう「表示手段」に該当する。
【0045】(処理手順について)次に,上述のような構成を有する薬品発注システムにおいてユーザーがサービスを受けるにあたり,特にサーバー側の処理を中心にその処理手順を,図4に示すネットワークシーケンス図を参照しつつ説明する。図4は,本例のシステムの全体の処理の流れを示すネットワークシーケンス図である。
【0046】先ず,RI薬品が納入されると,ユーザーは,RI薬品管理情報を入力する装置(端末)14を用いて,RI管理薬品情報(管理情報)を入力する。そして,入力された当該RI薬品管理情報は,サーバー20に対して送信される(ステップ,以下「S」101)。前記RI薬品管理情報は,サーバーにて受信されると(S102),データベース(DB)に格納され,当該RI薬品管理情報の登録処理を行うこととなる(S103)。例えば,病院に新しい薬品が入った場合には,RI薬品管理情報を入力する装置14を用いて,当該新たな薬品を薬品管理情報として入力することとなる。
【0047】一方,ユーザーは,RI検査予約情報を入力する装置(端末)12を用いて,検査予約情報を入力すると,当該検査予約情報をサーバーに対して送信する(S104)。検査予約情報とは,RI検査を何月何日の何時に行うという予約情報である。
【0048】前記検査予約情報がサーバーにて受信されると(S105),サーバーは,メーカー毎の各医薬品情報に基づいて,メーカー毎のRI検査に用いられる医薬品の半減期,使用量を算出処理を行い(S106),当該算出結果をデータベース(DB)に対して登録する処理を行う(S107)。なお,サーバーは,S106において,データベース(DB)に対して当該検索予約情報(当審注:「検索予約情報」は「検査予約情報」の誤記と認める。)の登録処理をも行うこととなる。
【0049】このように,入力した段階で,RI検査に用いられる薬品の半減期,使用量等をメーカー(発注先)毎に算出し導き出す。これは,殆ど必ず毎日やる場合が多い。つまり,端末14にて入庫情報が入力されるとともに,検査実施情報に基づき出庫情報を更新するので,RI薬品の在庫量を算出することができる。このようにして,在庫量と半減期に基づいて発注が必要な(有効期限が切れる)薬品を抽出する。
【0050】在庫管理に関しては,ある人に対する検査を行う場合に,その人に対する医薬品名,医薬品使用量等の入力を行う。医薬品が使用されると実施登録となる。
【0051】この結果,前記データベース(DB)に登録,格納されるRI薬品管理情報としては,例えば,検査実施情報,検査予約情報,メーカー毎の医薬品情報,医薬品に対応する半減期情報等が格納されることとなる。
【0052】このような前処理とも呼ぶべき前提処理がなされた状態において,ユーザーがRI薬品発注端末10を用いて,RI薬品を新たに発注する旨の操作を行うと,発注要求が当該RI薬品発注端末10からサーバーに対して送信されることとなる(S108)。
【0053】サーバーは,前記発注要求を受領すると(S109),前記データベース(DB)を参照しながら,半減期等を鑑み,この時間において発注するべき発注薬品のリスト(発注薬品リスト)を抽出する処理を行う(S110)。そして,この抽出された発注薬品リストに基づき,RI薬品発注端末10に対して当該リストに関する情報を送信する処理を行うこととなる(S111)。
【0054】前記発注薬品リストに関する情報がRI薬品発注端末にて受信されると(S112),当該リストは,RI薬品発注端末上の表示画面に表示されることとなる。
【0055】これにより,RI薬品発注端末10にて,例えば,翌日のRI検査に必要な一覧を表示して,発注を促すことができる。
【0056】この時,(必要な期限管理された)発注しなければならない薬品の一覧を抽出(検索)し,当該RI薬品発注端末10に情報が表示される。
【0057】この際の演算ならびに抽出(検索)は,自動的になされ,注文と関係なく明日使えるものが全てリストアップされる。なお,各薬品メーカー毎の薬品情報等は,予め端末14を用いて入力(手動で登録)をしておく必要がある。このようにして,予約情報,管理情報の入力等を行い,薬品の発注端末から指定した検査日を入力すると,自動的に薬品の発注リストが生成,抽出される。
【0058】この際,表示画面上には,当該リストが一覧表示されており,発注する薬品として何があるのかを確認することができる。その際,リストに不適切なRI薬品が抽出されていた場合には,適宜選択することにより,リストを変更する処理を行えばよい。」

上記記載からみて,甲1には,「放射線部門側のシステム2は,RI薬品の予約ないしは発注を希望する希望者(ユーザー)側の一又は複数のRI薬品発注端末10と,RISの端末であってRI検査予約情報を操作入力するための一又は複数の(RI検査予約情報を入力する装置)端末12と,RI薬品管理情報を操作入力するための一又は複数の(RI薬品管理情報を入力する装置)端末14と,これら端末10,12,14,とネットワークN1などの通信網を介して無線,有線等により各々データ通信可能に形成されて薬品発注の管理を行うサーバー20と,を含んで構成されて」(【0016】,【0019】)いるところ,そのうち「サーバー20」について,次の発明(以下「甲1発明」という)が記載されていると認められる。なお,同じ意味である「サーバー」及び「サーバー20」を「サーバー」に統一し,同様に「RI検査予約情報」及び「検査予約情報」は「RI検査予約情報」に統一する。
(甲1発明)
「病院内の医薬品(RI薬品)の発注に関し,放射線部門で使用されるシステム(【0001】)が備えるサーバーであって(【0019】),
サーバーは,端末10,12,14との間で例えばRI薬品情報などの各種データの送受信を行う送受信手段を含み(【0029】),ユーザーがRI検査予約情報を入力する装置12を用いて入力したRI検査予約情報を受信して,データベースに対して当該RI検査予約情報の登録処理を行い(【0047】-【0048】),
RI検査予約情報とは,RI検査を何月何日の何時に行うという予約情報であり(【0047】),
登録されるRI検査予約情報は,予約日,放射性医薬品名,数量を含み(【0033】),
サーバーは,ユーザー側に発注画面等の各種画面が表示されるように促すプログラム等により形成された表示処理手段を含み(【0029】),
端末10に,放射性医薬品使用予定一覧の表示画面が表示され(【0040】),表示画面40には,放射性医薬品名を表示するための放射性医薬品名表示部41,当該医薬品の量を表示する薬品量表示部42,注射予定日を表示した注射予定日表示部43及び患者氏名を表示した患者氏名表示部44bが表示され(【0041】),
ユーザーがRI薬品発注端末10を用いて,RI薬品を新たに発注する旨の操作を行うと,当該RI薬品発注端末10からサーバーに対して送信される発注要求を受領すると,前記データベースを参照しながら,半減期等を鑑み,この時間において発注するべき発注薬品のリスト(発注薬品リスト)を抽出する処理を行い,この抽出された発注薬品リストに基づき,RI薬品発注端末10に対して当該リストに関する情報を送信する処理を行い(【0052】,【0053】),
当該リストを,RI薬品発注端末上の表示画面に表示し(【0054】),
表示画面には,各薬品メーカー,例えば,A社,B社,C社等の各々に対する薬品発注リストを表示した各表示欄51,52,53が設けられ(【0042】),
表示欄は,さらに,発注すべき放射性薬品名を表示した放射性医薬品名表示部51a並びに当該医薬品の発注される量を表示した薬品量表示部51bが形成されて(【0043】)おり,
これにより,RI薬品発注端末10にて,例えば,翌日のRI検査に必要な一覧を表示して,発注を促す(【0055】)ものであり,
この際,表示画面上には,当該リストが一覧表示されており,発注する薬品として何があるのかを確認することができる(【0058】)
サーバー。」

2 甲2の記載
甲2には,以下の事項が記載されている。
「【0033】
図7は,情報格納部40に格納される製品情報テーブルの例を示す図である。
製品情報テーブルは,図7に示されるように,検査設備ID及び検査種の組合せごとに,その組合せに必要となる放射性医薬品の製品コード,製品名,及び発注期限のデータ項目を含むデータレコードを格納する。放射性医薬品は上述したとおり有効期限が短いため,製造施設FC5への放射性医薬品の発注には期限が設けられる。
情報格納部40は,更に,被検者テーブル,依頼元テーブル(図示せず)などを格納する。被検者テーブルは,被検者ごとに,被検者ID,氏名,生年月日,性別,メールアドレスなどのデータ項目を含むデータレコードを格納する。依頼元テーブルは,依頼元となる検査依頼機関FC1ごとに,依頼元ID,名称,住所,メールアドレスなどのデータ項目を含むデータレコードを格納する。
なお,情報格納部40は,上述のテーブル以外のテーブルを格納することもできる。」
「【0037】
更に,表示処理部30は,製品情報テーブルに格納される放射性医薬品の発注期限の情報に基づいて,検査予約状況表示で示される検査枠ごとの予約可否を変更することもできる。具体的には,表示処理部30は,検査予約状況表示において,どの種の放射性医薬品も発注期限を徒過している検査枠を予約不可状態に変更することができる。このようにすれば,既に発注期限が過ぎてしまっている放射性医薬品を用いる検査予約が登録されるといった不具合をなくすことができる。」

第5 当審の判断
1 請求項1に係る発明(本件発明1)について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。

ア 甲1発明の「病院」,「放射線部門で使用されるシステム」,「RI検査」及び「被検者」は,それぞれ本件発明1の「対象となる検査施設」,「検査施設システム」,「核医学検査」及び「患者」に相当する。また,甲1発明の「RI薬品」及び「放射性医薬品」は,いずれも本件発明1の「放射性医薬品」に相当する。
そうすると,甲1発明の「病院内の医薬品(RI薬品)の発注に関し,放射線部門で使用されるシステムが備えるサーバー」は,本件発明1の「放射性医薬品の発注支援装置」といえる。

イ 甲1発明のRI検査予約情報のうち「RI検査を何月何日の何時に行うという予約情報」及び「RI薬品名,数量」は,それぞれ本件発明1の「核医学検査に関する」「検査日時情報」及び「放射性医薬品情報」に相当し,それぞれ各「患者」,すなわち各「被検者」に対応したものであり,サーバーがRI検査予約情報を入力する装置12から「受信」,すなわち「取得」したものであり,さらに,甲1発明のRI検査予約情報を受信する「送受信手段」は,本件発明1の「情報取得部」に相当する。
そうすると,甲1発明と本件発明1は,「検査施設における核医学検査」を行う「各被検者の検査に関する検査日時情報及び放射性医薬品情報をそれぞれ取得する情報取得部」を備える点で共通する。

ウ 甲1発明で表示する「放射性医薬品使用予定一覧」は,表示する項目に「放射性医薬品名」,「当該医薬品の量」及び「注射予定日」を含むことから本件発明1の「予約リスト」に対応するところ,上記ア,イも考慮すると,両者は「検査ごとの検査日時情報及び放射性医薬品情報に基づいて」いる点,及び,「前記検査施設における核医学検査の」リストである点で共通する一方,甲1発明の「放射性医薬品使用予定一覧」が「所定期間内の」リストである点は特定されていない。また,甲1発明で表示する「放射性医薬品名」及び「当該医薬品の量」は,検査を受ける「患者氏名」とともに表示されるから,本件発明1の「検査ごとの放射性医薬品情報」に相当する。
また,甲1発明の「RI薬品発注端末10」及び「表示処理手段」は,それぞれ本件発明1の「前記検査施設における検査施設端末」及び「表示処理部」に相当する。
そうすると,甲1発明と本件発明1は,「検査日時情報及び放射性医薬品情報に基づいて,前記検査施設における核医学検査の予約リストと共に検査ごとの放射性医薬品情報を前記検査施設の検査施設端末に表示する表示処理部」を備える点で共通する。

エ 甲1発明のサーバーは,「発注薬品リスト」を抽出するための抽出手段を備えることが明らかであるところ,「発注薬品リスト」は,その表示画面で示されるとおり,各薬品メーカーそれぞれに対する放射性薬品名と当該医薬品の発注される量からなる薬品発注リストを含むものであるから,本件発明1の「放射性医薬品の一括発注情報を発注先ごとに区分けして生成」したものに相当し,前記「抽出手段」は,本件発明1の「情報生成部」に相当する。
さらに,甲1発明のサーバーが,RI検査予約情報が登録された「データベースを参照しながら」,「発注薬品リストを抽出する」ことは,「データベース」に登録された検査ごとのRI検査予約情報に基づくものといえ,上記アないしウも考慮すると,甲1発明と本件発明1は,「検査ごとの放射性医薬品情報に基づいて,該予約リストに含まれる複数の検査で必要となる放射性医薬品の一括発注情報を発注先ごとに区分けして生成する情報生成部」を備える点で共通する。

上記アないしエを総合すると,本件発明1と甲1発明とは,以下の点で一致し,また相違する。

<一致点>
検査施設における核医学検査を行う各被検者の検査に関する検査日時情報及び放射性医薬品情報をそれぞれ取得する情報取得部と,
検査ごとの検査日時情報及び放射性医薬品情報に基づいて,前記検査施設における核医学検査の予約リストと共に検査ごとの放射性医薬品情報を前記検査施設の検査施設端末に表示する表示処理部と,
検査ごとの放射性医薬品情報に基づいて,該予約リストに含まれる複数の検査で必要となる放射性医薬品の一括発注情報を発注先ごとに区分けして生成する情報生成部と,
を備える放射性医薬品の発注支援装置。

(相違点1)
「情報取得部」で取得する「検査日時情報」及び「放射性医薬品情報」について,本件発明1では,「対象となる検査施設の検査施設システムで生成された,該検査施設における核医学検査が予約されている各被検者の予約済み検査に関する」ものであるのに対し,甲1発明では,「ユーザーがRI検査予約情報を入力する装置12を用いて入力」したもの,すなわち,予約前のものである点。

(相違点2)
上記相違点1に関連して,「表示処理部」の構成において,本件発明1では「前記取得された予約済み検査ごとの検査日時情報及び放射性医薬品情報に基づいて」とされている事項について,甲1発明では「前記取得された予約済み検査ごと」であることの特定がない点。

(相違点3)
「表示処理部」により表示する「予約リスト」について,本件発明1では「所定期間内の核医学検査の予約リスト」であるのに対し,甲1発明では「所定期間内の」との特定がない点。

(相違点4)
上記相違点1に関連して,「表示処理部」により表示する「検査ごとの放射性医薬品情報」について,本件発明1では,「予約済み検査ごとの放射性医薬品情報」であるのに対し,甲1発明では「予約済み検査ごと」であることの特定がない点。

(相違点5)
「情報生成手段」が「一括発注情報を生成する」条件について,本件発明1では,「前記予約リストの表示に対する発注操作が受け付けられた場合」であるのに対し,甲1発明ではこの特定がない点。

(相違点6)
上記相違点1に関連して,「情報生成部」の構成において,本件発明1では「前記取得された予約済み検査ごとの放射性医薬品情報に基づいて」とされている事項について,甲1発明では「前記取得された予約済み検査ごと」であることの特定がない点。

(相違点7)
上記相違点1に関連して,「放射性医薬品の一括発注情報」は,本件発明1では「該予約リストに含まれる複数の予約済み検査で必要となる」ものであるのに対し,甲1発明では「予約済み検査で必要になる」ことの特定がない点。

(2)判断
事案に鑑み,まず相違点3と相違点5についてまとめて検討する。
本件発明1は,相違点3と相違点5に係る構成により,「前記検査施設における所定期間内の核医学検査の予約リストと共に予約済み検査ごとの放射性医薬品情報を前記検査施設の検査施設端末に表示」し,この「予約リストの表示に対する発注操作が受け付けられた場合に,」「該予約リストに含まれる複数の予約済み検査で必要となる放射性医薬品の一括発注情報を発注先ごとに区分けして生成する」ものといえる。そして,本件発明1は,このように構成することで,「発注担当者は,検査施設端末に表示される予約リストを確認して発注操作を行うことで,所定期間内で予約されている核医学検査で必要とされる放射性医薬品を漏れなく的確に発注することができる。即ち,本実施形態によれば,核医学検査の検査施設FC1における放射性医薬品の発注業務にかかる労力を低減することができる。」(【0026】)という効果を奏するものである。
一方,甲1発明は,「ユーザーがRI薬品発注端末10を用いて,RI薬品を新たに発注する旨の操作を行うと,当該RI薬品発注端末10からサーバーに対して送信される発注要求を受領すると,前記データベースを参照しながら,」「この時間において発注するべき発注薬品のリスト(発注薬品リスト)を抽出する処理を行」うものであって,この時間において発注すべき発注薬品をサーバーが抽出するものである。そうすると,甲1発明の「放射性医薬品使用予定一覧」として表示されるのは,サーバーが抽出を行う前のものであり,この時間において発注すべき発注薬品だけでなく,他にも予約されたRI検査で必要となる発注薬品が併せて表示されるものと解されるから,ユーザーが発注する旨の操作の前に放射性医薬品使用予定一覧を確認しても,この時間において発注すべき発注薬品のみを漏れなく的確に把握することは容易とはいえない。そのため,甲1発明は,発注薬品リストを,RI薬品発注端末上の表示画面に表示し,これにより,RI薬品発注端末10にて,例えば,翌日のRI検査に必要な一覧を表示して,発注を促すものであり,この際,表示画面上には,当該リストが一覧表示されており,発注する薬品として何があるのかを確認することができるものである。
そうすると,甲1発明において,放射性医薬品使用予定一覧は,「所定期間内の核医学検査の」一覧であることまでは想定されておらず,放射性医薬品使用予定一覧の表示に対してユーザーが発注する旨の操作を行うようにすることの動機付けはなく,当業者が容易になし得たものではない。

(3)異議申立人の主張について
異議申立人は,申立ての理由において,本件発明1と甲1発明との相違点2として,「甲第1号証は,構成要件Cに関して,発注操作が予約リストの表示に対する発注操作であることを明記していない点」を挙げ,この点について以下のとおり主張している。
「甲第1号証では,検査施設端末に対応する端末10に予約リストに対応する放射性医薬品使用予定一覧が表示され,発注担当者は端末10を用いて発注操作に対応するRI薬品を新たに発注する旨の操作を行うため,甲第1号証の発注システムにおいても,予約されている核医学検査で必要とされる放射性医薬品を漏れなく的確に発注することができる。また,放射性医薬品使用予定一覧の表示が発注操作の前に確認できるよう表示することが甲第1号証に明記されていないとしても,予約されている核医学検査で必要とされる放射性医薬品を漏れなく的確に発注することは,当業者にとって当然の課題であるから,その放射性医薬品使用予定一覧を確認してから発注操作を行うことができるように,放射性医薬品使用予定一覧と共に操作ボタンを付けたり,放射性医薬品使用予定一覧の表示中又は表示後に音声による操作やジェスチャ操作による発注操作を可能とすることは,当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎない。」

この主張について検討すると,甲1発明において,「予約されている核医学検査で必要とされる放射性医薬品を漏れなく的確に発注することは,当業者にとって当然の課題である」としても,上記(2)で説示したとおり,放射性医薬品使用予定一覧は,「この時間において発注すべき発注薬品だけでなく,他にも予約されたRI検査で必要となる発注薬品が併せて表示されるもの」であると解され,そのような放射性医薬品使用予定一覧の表示に対してユーザーが発注する旨の操作を行うようにすることの動機付けはないから,上記主張には理由がない。

(4)小括
よって,他の相違点について検討するまでもなく,本件発明1は,甲1に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

2 請求項8に係る発明(本件発明8)について
本件発明8は,本件発明1に対して,さらに
「前記表示処理部は,前記予約リストに含まれる或る予約済み検査に対するキャンセル操作が行われた場合に,該予約済み検査を前記予約リストから消去し,又は,前記予約リストにおける該予約済み検査の表示態様を変更し,
前記情報生成部は,前記キャンセル操作の対象とされた予約済み検査を除く前記予約リストに含まれる複数の予約済み検査で必要となる放射性医薬品の一括発注情報を発注先ごとに区分けして生成する」
という技術的事項を追加したものである。
よって,上記1に示した理由と同様の理由により,本件発明8は,甲1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

3 請求項9に係る発明(本件発明9)について
本件発明9は,本件発明1に対して,さらに
「放射性医薬品の発注期限情報を保持する期限保持部,
を更に備え,
前記表示処理部は,前記予約リスト内に前記発注期限情報で示される発注期限が徒過している放射性医薬品を使用する予約済み検査が存在しているか否かをチェックし,
前記予約リスト内に発注期限が徒過している放射性医薬品を使用する予約済み検査が含まれている場合には,前記発注操作が受け付け不可能な状態とされる,又は,前記発注操作に伴い警告表示が表示される」
という技術的事項を追加したものである。
よって,上記1に示した理由と同様の理由により,本件発明9は,甲1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

さらに,本件発明9と甲1発明との相違点である,上記1(1)の相違点3及び相違点5に係る構成は,甲2の記載から充足することはできないから,本件発明9は,甲1発明と甲2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものではない。

4 請求項10に係る発明(本件発明10)について
本件発明10は,本件発明1とカテゴリーの異なる発明であって,本件発明1と甲1発明との相違点である上記1(1)の相違点3及び相違点5に係る構成と同様の構成を備えるから,本件発明1と同様の理由により,甲1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。

第6 むすび
したがって,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては,請求項1,8-10に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1,8-10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-11-11 
出願番号 特願2019-63170(P2019-63170)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (G06Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 樋口 龍弥  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 速水 雄太
中野 浩昌
登録日 2020-01-17 
登録番号 特許第6648328号(P6648328)
権利者 日本メジフィジックス株式会社
発明の名称 放射性医薬品の発注支援装置及び発注支援方法  
代理人 田中 俊夫  
代理人 右田 俊介  

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