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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 E04B 審判 全部申し立て 2項進歩性 E04B |
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管理番号 | 1368152 |
異議申立番号 | 異議2020-700698 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-09-14 |
確定日 | 2020-12-01 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6669697号発明「間仕切パネル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6669697号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6669697号の請求項1に係る特許についての出願は、平成27年6月11日に出願された特願2015-118181号の一部を、平成29年7月25日に新たな特許出願としたものであり、令和2年3月2日にその特許権の設定登録がされ、令和2年3月18日に特許掲載公報が発行された。その後、令和2年9月14日に特許異議申立人 江川 勝(以下「申立人」という。)より、請求項1に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 特許第6669697号の請求項1の特許に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 間隔をおいて対向配置される一対の透光性パネル板と、前記一対の透光性パネル板の上下端縁部のそれぞれを連結する一対の上横枠と下横枠と、を備える間仕切パネルであって、 前記下横枠の上面部は、異物落下用の略丸形状の孔が長手方向および短手方向に多数形成された多孔板によって構成されており、 前記孔は前記下横枠の上面部の下方の空間に連通するものであり、前記下横枠の上面部に落下してきた異物は、前記孔を通って前記空間に落下することを特徴とする間仕切パネル。」 第3 申立理由の概要 申立人が申立書において主張する申立理由の要旨は、次のとおりである。 1(進歩性) 本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明、あるいは甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1に係る発明に対する特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである(申立書第4頁下から4行-第17頁第12行、及び第19頁第16行-第22行)。 2(明確性) 本件特許の請求項1に係る発明は、「略丸形状の孔」、及び「孔が長手方向および短手方向に多数形成された多孔板」なる記載によって、発明の範囲が不明確となっているから、本件特許の請求項1に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、その発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである(申立書第17頁第13行-第19頁第14行、及び同頁第23行-最終行)。 第4 証拠について 1 証拠一覧 申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。 甲第1号証: 特許第5315245号公報 (平成25年10月16日発行、申立書に添えて提出) 甲第2号証: 実願昭54-173718号(実開昭56-89878 号)のマイクロフィルム(申立書に添えて提出) 甲第2号証の1:実開昭56-89878号公報 (昭和56年7月17日公開、申立書に添えて提出) 甲第3号証: 実願平5-25397号(実開平6-78581号)の CD-ROM(平成6年11月4日公開、申立書に添え て提出) 甲第4号証: 特開2000-73667号公報 (平成12年3月7日公開、申立書に添えて提出) 甲第5号証: 特開2012-207458号公報 (平成24年10月25日公開、申立書に添えて提出) 甲第6号証: 実公昭59-38413号公報 (昭和59年10月26日公告、申立書に添えて提出) 甲第7号証: 特開2004-210553号公報 (平成16年7月29日公開、申立書に添えて提出) 2 各証拠の記載 (1)甲第1号証 ア 記載事項 甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。以下、同様。)。 (ア)段落【0001】-【0008】 「【技術分野】 【0001】 本発明は、シート材料、特に建築構造で使用するための透明パネル又は半透明パネル用の組立体(assembly)に関する。 【背景技術】 【0002】 シート材料を含み、支持フレームを使用するパネル構造が、多くの場合、特に建築構造で使用されている。例えば、パネル構造は、窓、カーテンウォール及びパーティションウォールを含む内壁/外壁、及びドアの形成で使用される。これらの構造は、ガラス及び/又は堅固な金属/ポリマーシートの任意の組み合わせを使用する。 【0003】 このような構造の製造プロセスは、代表的には、材料を大きなシートの状態で提供する工程と、これらのシートを所与の大きさの支持フレームに嵌まる特定の大きさに合わせて切断する工程とを含む。次いで、フレームの構造で決まる様々な方法を使用してシートを支持フレームに装着する。 【0004】 一枚のシート材料を受け入れる多くのフレームが知られている。一枚のシート材料がフレームによって支持されたパネル構造を、代表的には、「単パネル」構造と呼ぶ。更に最近では、フレームは、更に、一枚以上のシート材料を受け入れるように設計されてきている。その結果、現在、全体に平行な二枚のシート材料がフレームによって支持されたパネル構造が広く知られており、これを「二重パネル」構造と呼ぶ。同様に、「三重パネル」構造があるが、全体に平行な三枚又はそれ以上のシート材料がフレームによって支持された構造は、実際には、あまり見られない。フレームで支持された材料がガラスである場合には、構造は、一般的に、「単ガラス」、「二重ガラス」、又は「三重ガラス」構造と呼ばれる。 【0005】 単パネル構造及び二重パネル構造の両方について、代表的な設置方法は、一般的には押し出し物品の形態のフレーム部材にシート材料を装着する工程を含む。フレーム部材は、シート材料の縁部に装着される。結果的に得られたパネル-フレーム構造を、次いで、壁等の対応する受け入れ構造又はフレームワークに取り付ける。 【0006】 二重パネル構造、特に二重ガラス窓について、シート間に正しい隙間を確保するため、及び二枚のシートを互いにシールして断熱又は遮音障壁(即ち密封ユニット(sealed unit) )を形成するため、二枚のシート材料間にスペーサバーを設けることが知られている。このようなスペーサバーには、更に、シート間の空間に露滴が生じないようにするため、乾燥剤を収容した穴が設けられている。 【0007】 このようなパネル構造の製造及び設置と関連した方法工程、例えば切断、取り扱い、縁部処理、搬送、固定、及び設置には、このような構造の性能を長期に亘って保持することに加え、多くの困難が伴う。詳細には、脆性や重量といった代表的なパネル構造の物理的属性のため、多くの問題が生じる。これらの問題点は、例えば品質、強度、丈夫さ、及び気密性/水密性において欠陥をもたらす場合がある。こうした欠陥を最少にするため、製造/設置上の複雑さ及び費用が上昇する。 【0008】 更に、建築構造で使用されるパネル構造(及びその構成要素であるシート)には、かなりの大きさの衝撃力がいきなり加わる場合があり、又はシート材料を支持フレームワークから取り外そうとする望ましからぬ試みが加わる場合がある。」 (イ)段落【0009】-【0010】 「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 従って、製造/設置上の複雑さ及び費用を低減するシート材料用支持フレーム組立体を提供するのが望ましい。更に、強度レベル及び衝撃力(例えば爆風)及び/又はシート材料を取り外そうとする望ましからぬ試みに対する抵抗のレベルを向上したフレーム組立体を提供するのが望ましい。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明の第1の特徴によれば、シート材料用フレーム組立体において、 シート材料を受け入れるための少なくとも一つの凹所を有し、これにより、シート材料の周縁部の少なくとも一部の周りに装着できる複数の内フレーム部材と、 内フレーム部材が装着されたシート材料を受け入れるための第1外フレームと、 内フレーム部材が装着されたシート材料に適用される第2外フレームと、 第1外フレームと第2外フレームとを互いに連結するための手段とを含み、 第1外フレーム及び第2外フレームは、内フレーム部材を受け入れるための空間を一緒に形成し、これにより、第1及び第2の外フレームは、内フレーム部材が装着されたシート材料を捕捉し、 内フレーム部材を空間内に保持するための保持手段が設けられている、フレーム組立体が提供される。」 (ウ)段落【0032】 「【0032】 本発明によって、窓フレーム組立体又はドアフレーム組立体を提供できる。かくして、このような組立体では、シート材料は、ガラス、透明体、不透明体、半透明体、等であってもよい。シート材料は、一つの材料でできたパネルであってもよいし、一つのフレーム内で任意の組み合わせで側部と側部とを向き合わせて、又は上下に配置された異なる材料でできたパネルであってもよい。別の態様では、フレーム組立体はブラインドを含んでいてもよい。」 (エ)段落【0074】-【0080】 「【0074】 図5a、図5b、及び図6を参照すると、本発明の変形例による内フレーム部材50、55、及び60は、各々、複数の凹所を含む。 【0075】 図5aの内フレーム部材50は、押し出しによって形成した細長い部材であり、シート材料12a及び12bを受け入れるための第1及び第2の平行な凹所51及び52が形成されている。第1及び第2の平行な凹所51及び52の断面形状は実質的に三角形である。シート材料12a及び12bは、同じ材料で形成されていてもよいし、別の材料で形成されていてもよい。 【0076】 乾燥剤用のチャンバ54が、内フレーム部材50及び第1及び第2の凹所51及び52の長さ方向軸線と平行に一体に、必要な場所に設けられている。チャンバ54の上面には、連通を可能にするため、一連の穴56が長さ方向長さに沿って設けられている。勿論、空気をチャンバ54と連通できる他の手段を使用してもよい。例えば、少なくとも一つのスリットをチャンバ54の長さ方向長さに沿って設けてもよい。 【0077】 図5aの内フレーム部材に対する変形例を図5bに示す。変形例の内フレーム部材55には、シート材料12a及び12bを受け入れるための第1及び第2の平行な凹所57及び58が形成されている。第1及び第2の平行な凹所57及び58の断面形状は、実質的にU字形状である。上文中に説明したのと同様に、乾燥剤用のチャンバ54が、内フレーム部材55及び第1及び第2の凹所57及び58の長さ方向軸線と平行に一体に設けられている。更に、チャンバ54の上面の長さ方向長さに沿って設けられた一連の穴56により、空気の連通を可能にする。 【0078】 図6に示すように、本発明による内フレーム部材には、シート材料を受け入れるための二つよりも多くの凹所が設けられていてもよい。図6の内フレーム部材60は、押し出しによって形成された、長さ方向で細長い部材であり、シート材料12a、12b、及び12cを受け入れるための第1、第2、及び第3の平行な凹所61、62、及び63が形成されている。 【0079】 図5a及び図5bの実施形態と同様に、内フレーム部材の各凹所間には有孔チャンバが形成されている。かくして、乾燥剤用の第1及び第2のチャンバ64a及び64bが、内フレーム部材60の長さ方向軸線と平行に、第1、第2、及び第3の凹所61、62、及び63間に、必要な場所に設けられている。この場合も、各チャンバには、空気連通を可能にする一連の穴66が、その長さ方向長さに沿って設けられている。 【0080】 従って、本発明の実施形態は、シート材料を受け入れるための複数の凹所を備えた内フレーム部材を提供する。各凹所間には、水分吸収手段が設けられている。このような水分吸収手段は、有孔チャンバに設けられていてもよいし、内フレーム部材に形成された空気チャンネルに設けられていてもよい。」 (オ)段落【0103】 「【0103】 図9bでは、第1外フレーム部材95は、図5bの内フレーム部材が装着されたシート材料12を受け入れるように構成されている。同様に、第2外フレーム部材97は、この場合、内フレーム部材55及び第1外フレーム部材95に適用されるように構成されており、第1及び第2の外フレーム部材95及び97は、適当な連結手段を使用して互いに連結される。図9bの実施形態では、第1及び第2の外フレーム部材95及97は、図9aと同様のナット-ボルト構成を使用して互いに連結されており、ボルト90及びナット92は、シート材料12の平面に対して実質的に垂直に装着される。更に、第1及び第2の外フレーム部材95及97は、フレーム組立体が取り付けられるべき構造の部分である周囲物にねじ止めされるように構成されている。ねじ94は、シート材料12の平面とほぼ平行に装着される。」 (カ)図5(b)には、次の図示がある。 (キ)図9(b)には、次の図示がある。 イ 甲第1号証に記載された発明 上記アより、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「シート材料を含み、全体に平行な二枚のシート材料を用いる、パーティションウォールで使用されるパネル構造であり、 シート材料の周縁部に装着できる複数の内フレーム部材と、内フレーム部材が装着されたシート材料を捕捉する第1及び第2の外フレームとを有し、 シート材料は透明体とし、 内フレーム部材として、2枚のシート材料12a及び12bを受け入れるための第1及び第2の平行な凹所57及び58が形成されている内フレーム部材55を用い、 内フレーム部材55には、平行な凹所57及び58間に乾燥剤用のチャンバ54が、内フレーム部材55の長さ方向軸線と平行に一体に設けられ、チャンバ54の上面の長さ方向に沿って設けられた一連の穴56により、空気の連通を可能としており、 第1及び第2の外フレーム部材95及び97は、内フレーム部材55が装着された2枚のシート材料12a及び12bを受け入れ、周囲物にねじ止めされるように構成されている、 パーティションウォールで使用されるパネル構造。」 (2)甲第2号証 ア 記載事項 甲第2号証には、次の事項が記載されている。 (ア)明細書第1頁第10行-第11行 「本案は、複数のガラスを対設した窓に関するものである。」 (イ)明細書第2頁第13行-第4頁第4行 「さて、本案を図示した実施例に即して説明すると、第1図乃至第3図に示す実施例は、嵌殺窓の下枠に乾燥剤容器を収納したものであり、(A)は室内側と室外側に空隙部(1)を設けてガラス(2)(3)を嵌込んだ嵌殺窓であり、これらのガラス(2)(3)を支持固定するサッシ枠(4)は、押出形成された室内枠部(イ)と室外枠部(ロ)とを断熱材で連結した上枠(5)、下枠(6)、及び左右竪枠(7)(8)を枠組み形成したものであり、このサッシ枠(4)には、室内枠部(イ)と室外枠部(ロ)に夫々ガラス嵌合溝(9)(10)が形成され、しかも両ガラス嵌合溝(9)(10)の間に開口部が夫々対向する凹溝部(11)が形成される。この凹溝部(11)の開口部には互いに対向して係止凹部(12)(13)が形成され、この両係止凹部(12)(13)に多数の連通孔(14)を形成した穴明プレート(15)が装着される。又、室内側壁(16)の中央部に切欠開口部(17)が形成され、この切欠開口部(17)は下枠(6)の凹溝部(11a)と通じている。又、乾燥剤容器(18)は上方に開口する箱状収納部(19)と当該収納部(19)の側壁に連結されて上下左右に張出する係止板部(20)とから成り、この乾燥剤容器(18)は、収納部(19)を下枠(6)の切欠開口部(17)から凹溝部(11a)内に挿入するとともに、係止板部(20)をパッキング(21)を介して室内側壁(16)にビス(32)止めすることによって、着脱自在且つ切欠開口部(17)を密閉して下枠(6)に取付けられる。 又、上記収納部(19)に収納される乾燥剤(22)は、炭酸カルシウムやシリカゲル等のものであり、この乾燥剤(22)は上記穴明プレート(15)の連通孔(14)を通して、2枚のガラス(2)(3)間の空隙部(1)内の湿気を吸収するのである。」 (ウ)明細書第4頁最終行-第5頁第5行 「尚、上記実施例において、サッシ枠(4)又は框(30)に設けられた凹溝部(11)(11a)(11b)内には、グラスウール等の騒音吸収剤(23)が装着されており、しかも凹溝部(11)(11a)(11b)に装着された騒音吸収性の穴明プレート(15)(15)によって上記空隙部(1)と騒音吸収剤(23)とが仕切られている。」 (エ)明細書第5頁第10行-第17行 「尚、本案に係る乾燥剤容器は、上記実施例においては、下枠もしくは下框の一部に取付けられたが、本案はこれに限定されるものではなく、乾燥剤容器をサッシ枠もしくは框の長手方向全体に渡って取付けてもよく、又、乾燥剤容器は下枠もしくは下框だけでなく、上枠もしくは上框、更には竪枠もしくは竪框にも取付けることができるものである。」 (オ)第1図及び第2図 第1図及び第2図には、縦断面図及び横断面図として、次の図示がある。 上記第1図及び第2図より、穴明プレート(15)は、少なくとも下枠(6)及び左右竪枠(7)(8)に設けられた様子が、看て取れる。また上記第2図より、穴明プレート(15)の連通孔(14)は、穴明プレート(15)の短手方向及び長手方向に、多数形成されている様子が、看て取れる。 イ 甲第2号証に記載された発明 上記アより、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「室内側と室外側に空隙部(1)を設けてガラス(2)(3)を嵌込んだ嵌殺窓であり、 ガラス(2)(3)を支持固定するサッシ枠(4)は、押出形成された室内枠部(イ)と室外枠部(ロ)とを断熱材で連結した上枠(5)、下枠(6)、及び左右竪枠(7)(8)を枠組み形成したものであり、 サッシ枠(4)には、室内枠部(イ)と室外枠部(ロ)に夫々ガラス嵌合溝(9)(10)が形成され、両ガラス嵌合溝(9)(10)の間に開口部が夫々対向する凹溝部(11)が形成され、この凹溝部(11)の開口部には互いに対向して係止凹部(12)(13)が形成され、この両係止凹部(12)(13)に多数の連通孔(14)を形成した穴明プレート(15)が装着され、 穴明プレート(15)は、少なくとも下枠(6)及び左右竪枠(7)(8)に設けられ、穴明プレート(15)の連通孔(14)は、穴明プレート(15)の短手方向及び長手方向に、多数形成されており、 下枠(6)の凹溝部(11a)内に、乾燥剤容器(18)が取り付けられ、乾燥剤(22)は、上記穴明プレート(15)の連通孔(14)を通して、2枚のガラス(2)(3)間の空隙部(1)内の湿気を吸収し、 サッシ枠(4)に設けられた凹溝部(11)(11a)内には、グラスウール等の騒音吸収剤(23)が装着され、凹溝部(11)(11a)に装着された騒音吸収性の穴明プレート(15)(15)によって上記空隙部(1)と騒音吸収剤(23)とが仕切られており、 乾燥剤容器(18)は、下枠(6)だけでなく、上枠(5)もしくは竪枠(7)(8)にも取付けることができる、 嵌殺窓。」 (3)甲第3号証 甲第3号証には、次の事項が記載されている。 ア 段落【0013】-【0014】 「【0013】 本考案を適用して形成される複層ガラス51は、図2に例示するように、二枚の板ガラス52,52がその相互間に空気層53を形成するために配設されるスペーサ本体11を介して隔置されており、このスペーサ本体11とそれぞれの板ガラス52との間には一次封着剤57が、隔置された板ガラス52,52の周縁部52a,52a相互とスペーサ本体11とにより画成される空隙部59には二次封着剤58がそれぞれ充填され、かつ、スペーサ本体11内には乾燥剤55が収納されて形成されており、この場合におけるスペーサ本体11は、相互の係合離脱が自在な一側スペーサ部片12と他側スペーサ部片32とで分割形成されており、これら一側スペーサ部片12と他側スペーサ部片32とを一体的に係合させて配置した際に前記空気層53との接触面となる表出面に複数の通孔13を配設することでその全体が形成されている。 【0014】 図1は、本考案の一実施例を示す部分斜視図であり、この場合、前記スペーサ本体11を前記通孔13を備える蓋状の一側スペーサ部片12と、この一側スペーサ部片12により着脱自在に施蓋される断面略コ字状となった内部空間23を有する他側スペーサ部片32とに分割形成してあり、乾燥剤は他側スペーサ部片32の内部空間23内にその収納が可能となっている。」 イ 段落【0028】 「【0028】 また、図4の(イ),(ロ)に示すように他側スペーサ部片32の内部に隔壁部47又は48を配設してその内部空間33を区画してある場合には、種類を異にする乾燥剤55を区画された内部空間33内に各別に収納したり、いずれか一方のみに乾燥剤55を収納してその収納量を調節したりすることもできる。」 ウ 図1、図2、図4には、次の図示がある。 (4)甲第4号証 甲第4号証には、次の事項が記載されている。 ア 段落【0011】-【0016】 「【0011】 【発明の実施の形態】本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る複層ガラスの全体構造を示す一部破断の斜視図である。図2は、乾燥剤の充填または排出用の小孔を示す一部破断の部分的な斜視図である。図3は、小孔の封止構造を示す複層ガラスの部分的な縦断面図である。図4は、乾燥剤の交換方法における小孔の位置を示す正面図である。 【0012】本発明の複層ガラスは、図1及び図2に示す様に、外観的には従来の複層ガラスと略同様の形態を備えており、方形に枠組みされた周縁のスぺーサー(1)と、当該スぺーサーを介在させることによって平行に配置された複数枚の板ガラス(2)と、これら板ガラス(2)の間に形成された気密空間(3)と、当該気密空間の乾燥状態を保持するためにスぺーサー(1)の内部に充填された乾燥剤(4)とから構成される。 【0013】スぺーサー(1)は、板ガラス(2)の間を一定の間隔に保持し且つ上記の気密空間(3)を形成するために設けられる。スぺーサー(1)は、周知の通り、通常はアルミニウム合金、ステンレス又は樹脂を使用し、ロールフォーミング法やプレス法によって薄肉に形成された中空パイプ状の部材を方形に組み合わせたものであり、図3に示す様に、スぺーサー(1)を構成する各パイプ状部材の長手方向に直交する断面は、板ガラス(2)から受ける挟持力、枠材としての変形強度および乾燥剤(4)の充填効率を考慮した適宜の形状に形成される。 【0014】また、スぺーサー(1)の枠構造の内周面には、スぺーサー(1)内部に充填される乾燥剤(4)によって上記の気密空間(3)の水分を吸着するため、乾燥剤(4)が通過しない程度の大きさの微小な通気穴(5c)が適当なピッチで設けられる。各板ガラス(2)の厚さは、通常、3?5mmであり、気密空間(3)は、これら板ガラス(2)をスぺーサー(1)の両側に密着させることによって形成される。 【0015】具体的には、2枚の板ガラス(2)は、スぺーサー(1)の両側面に対し、ブチルゴム等の合成ゴムやポリオレフィンと合成ゴムの共重合体から成るシール材(5)によって気密に接合される。板ガラス(2)間の離間距離、すなわち、スぺーサー(1)の厚さは、8?12mm程度である。そして、板ガラス(2)の間に形成された気密空間(3)には、乾燥した空気、窒素、炭酸ガス、フロンガス、六弗化硫黄、各種希ガス等が封入される。 【0016】乾燥剤(4)としては、シリカゲル、モレキュラーシーブを含むゼオライト等の乾燥剤が使用される。本発明においては、板ガラス(2)とスぺーサー(1)の上記の様な密着構造を破壊することなく、スぺーサー(1)内部の乾燥剤(4)を交換するため、スぺーサー(1)内部において流動性を発揮し得る様な形態の乾燥剤(4)が使用される。すなわち、本発明の複層ガラスにおける乾燥剤(4)は、粒径が0.1?3.0mmの粒状の乾燥剤であることが重要である。」 イ 図3には、次の図示がある。 (5)甲第5号証 甲第5号証には、次の事項が記載されている。 ア 段落【0029】 「【発明を実施するための形態】 【0029】 以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の複層ガラス20の第1実施形態を示している。本複層ガラス20は、2枚のガラス1a,1bと、ガラス1a,1bの四周の縁部のガラス1a,1b間に配置したスペーサー9と、ガラス1a,1bの四周の縁部のスペーサー9の外周側に配置した縁部材2とを備え、ガラス1a,1b間に密閉された空気層21を形成してある。一方のガラス1aは、網22入りのガラスとなっている。 スペーサー9は、薄いアルミの板をロールフォーミングにより筒状に形成したものであり、内部に乾燥剤8が入れてあり、内周側の壁に通気孔39が設けてあり、外周側に継ぎ目23を有している。スペーサー9は、各ガラス1a,1bの内側面6,6に一次シール材10,10により接着してある。なおスペーサー9は、従来の複層ガラスに用いられているものをそのまま利用することができる。 縁部材2は、ステンレスの板をロールフォーミングで成形したものであり、各ガラス1a,1bの小口5,5に面する基部3,3と、ガラス1a,1b間の隙間に延出する台形状の延出部4とを有している。延出部4の頂部には、長手方向の少なくとも一箇所にガス抜き孔24が設けてあり、ガス抜き孔24は火災時には熱で溶ける性質の樹脂やロウ等で形成した蓋25で塞いである。ガラス1a,1bの小口5,5と基部3,3との隙間と、ガラス1a,1bの内側面6,6と延出部4との隙間には、二次シール材7が充填されている。」 イ 段落【0046】 「【0046】 本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。縁部材2の材質、断面形状は、適宜変更することができる。縁部材2を、ステンレスや耐火性樹脂材等の耐火性の材料で形成したときには、耐火性をさらに向上することができる。縁部材2のガス抜き部は、スリット状に形成したものでもよい。乾燥剤8は、ガラス1a,1b,1cの四辺のうち少なくとも何れか一辺に設けてあればよい。ガラス1a,1b,1cは、矩形に限らず円形や台形であってもよい。複層ガラス20を框13に保持させる形態は任意である。シール材7,10,11は、一般的に複層ガラスに使用されているものを適宜使用することができる。本発明の複層ガラス20は、第1?9実施形態の特徴を適宜組合わせて実施することができ、例えば図7に示す第4実施形態の複層ガラスの縁部材2にガス抜き孔24を設けたり、図9に示す第5実施形態の複層ガラスの縁部材2をグレチャン28と一体に形成したりすることができる。本発明の障子18は、スライド開閉する障子に限らず、回動ないしすべり出して開く障子や、サッシ枠に固定した嵌め殺し障子等、あらゆる障子に適用することができる。本発明のサッシは、引違いサッシに限らず、回転窓やすべり出し窓、嵌め殺し窓等、あらゆる窓種に適用することができる。また本発明の複層ガラスは、ドアやカーテンウォール等に組み込むこともできる。」 (6)甲第6号証 甲第6号証には、次の事項が記載されている。 ア 第3欄第26行-第43行 「このような耐熱性無機接着剤9でスペーサ4とガラス板2,3とを接合一体化、更に気密性を高めるためにスペーサ4の外壁4bの両側部を内周方向へテーパーを付して全周に2条の凹条4d,4dを形成し、これに有機室シーラント10、例えばポリサルフアイドシーラント或いはブチルシーラントを充填し、中間層8の気密性を確保する。 一方、ガラス板2,3間のスペーサ4の上下の部分は第2図に示される如くで、図は下部を示しているが上部でも同様である。上・下の部材4Cは他の部分と同素材で同じ断面に形成され、中間層8に臨む内壁4eには複数の通孔11を備え、外壁4fには通孔を備えないで全面的に盲状に閉塞され、内部の空間12には吸湿剤13が充填されている。このスペーサをなす各部材4Cは既述と同様に耐熱性無機接着剤9でガラス板2,3の上下周辺寄り部分を接着し、更に同様に外周側に有機室シーラント10を充填し、気密性を高める。」 イ 第4欄第13行-第17行 「以上のガラス板2,3間の密封中間層8内には空気が封入され、乾燥剤13で吸湿し結露を防止するが、乾燥空気を封入した場合には乾燥剤を除去しても良い。又空気に代えて伝熱性の低い不活性ガスを封入しても良い。」 (7)甲第7号証 甲第7号証には、段落【0020】-【0027】に、次の事項が記載されている。 「【0020】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。 図1は本発明に係る複層ガラスの部分断面図、図2は共鳴用棒材の部分上面図である。 【0021】 複層ガラス1は、2枚の板ガラス2、2をスペーサ3によって、板ガラス2とスペーサ3との間に一次シール8を介して所定の間隔に保持し、板ガラス2の周縁部内部とスペーサ3の外周面とで形成された凹部に二次シール9を配して周縁部をシールしたものである。このようにして形成された複層ガラス1は、セッティングブロック11及び固定材13を介して額縁12に取付けられる。なお、固定材13の代わりに、シリコーン.シーラントのようなコーキング材等を使って額縁42に取付けてもよい。 【0022】 板ガラス2としては、建築用に一般的に使用されるソーダライムシリカガラス(例えば、旭硝子社製、商品名:AS)が代表的であるが、これに限られずその他の組成の板ガラスも使用できる。同様に通常のソーダライムシリカガラス以外にも、強化ガラスや網入り板ガラス、合わせガラスが使用でき、片側の板ガラス2を合わせガラスとし、他方を通常のソーダライムシリカガラスとする等種類や厚さの異なる板ガラスを組み合わせて使用することもできる。また、無機質の板ガラスのみならず有機質の板状体、例えばポリカーボネート、アクリル樹脂等も使用できる。 【0023】 スペーサ3は、板ガラス2、2の相互の間隔が所定値に確保できれば材質、形状は限定されないが、図示のような断面矩形状が好ましい。このスペーサ3は押出し成型又はプレス成型等を用いて製造される。スペーサ3の中空部分には乾燥剤14が充填され、スペーサ3の中空層側には貫通孔15が所定間隔で複数個設けられる。 【0024】 一次シール8としては主に耐透湿性及び粘着力を発揮できる材質が好ましく、たとえば、ポリイソブチレンが好適に使用できる。二次シール9としては主に接着力を発揮できる材質が好ましく、たとえば、ポリスルフィド、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂が好適に使用できる。 【0025】 なお、複層ガラス1としては、2枚の板ガラス2、2をその間に設けたスペーサ3で所定間隔を隔てて重ね合わせ、単一の中空層4を有する構成に限られるものではなく、3枚以上の板ガラス2、・・・、2を隣り合う板ガラス2、2間にスペーサ3を設けて所定間隔を隔てて重ね合わせ、複数の中空層4を有する構成であってもよい。 【0026】 中空層4内にはスペーサ3に平行にスペーサ3と所定距離Hの間隔を隔てて棒状の共鳴用棒材5が配設される。共鳴用棒材5の幅は、板ガラス2、2の相互の間隔Wと略等しく、片側ないしは両側縁に断面L字状の連結部材10を共鳴用棒材5の全長に亘って連続的あるいは断続的に有し、スペーサ3上に接着剤等を用いて固定され一体化される。共鳴用棒材5、スペーサ3および2枚の板ガラス2あるいは共鳴用棒材5に備わる連結部材10で空洞部7が形成される。共鳴用棒材5は矩形断面の角材又は板材である。この例では共鳴用棒材5と連結部材10は押出し成型加工により一体成形されている。また、共鳴用棒材5は板ガラス2の4辺全周に沿って設けてもよいし1辺にのみ沿って設けてもよい。 【0027】 共鳴用棒材5には中空層4と空洞部7とを連通する直径d、長さLの複数個の筒状部材6が所定ピッチ間隔P毎に空洞部7に突出して設けられる(図2参照)。共鳴用棒材5、筒状部材6及び連結部材10は、額縁12の固定材13よりも板ガラス2の開口面の中央部側に露出する場合、窓ガラスとしての透視性を妨げないために外観上透明材料で形成することが好ましい。」 第5 当審の判断 1 進歩性について (1)対比 本件発明と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「パーティションウォールで使用されるパネル構造」は、本件発明における「間仕切りパネル」に相当する。 甲1発明において、「透明体」とした「シート材料」である「2枚のシート材料12a及び12b」は、本件発明における「一対の透光性パネル板」に相当する。 甲1発明において、「2枚のシート材料12a及び12b」が、「内フレーム部材55」の「第1及び第2の平行な凹所57及び58」に受け入れられ、「全体に平行な二枚のシート材料」として用いられ、かつ「2枚のシート材料12a及び12bの間の空間」が形成されている構成は、本件発明において、「一対の透光性パネル板」が「間隔をおいて対向配置され」た構成に相当する。 甲1発明において、「シート材料の周縁部に装着できる複数の内フレーム部材」として用いられる「内フレーム部材55」と、本件発明における「一対の透光性パネル板の上下端縁部のそれぞれを連結する一対の上横枠と下横枠」とは、「一対の透光性パネル板の端縁部を連結する枠」という点で、共通する。 甲1発明において、「内フレーム部材55」が、「乾燥剤用のチャンバ54」と「2枚のシート材料12a及び12bの間の空間とで、空気の連通を可能」とする「一連の穴56」を有する構成と、本件発明において、「下横枠の上面部は、異物落下用の略丸形状の孔が長手方向および短手方向に多数形成された多孔板によって構成されて」いる構成とは、「枠には、孔が形成され」ているという点で、共通する。 整理すると、甲1発明と本件発明とは、 「間隔をおいて対向配置される一対の透光性パネル板と、前記一対の透光性パネル板の端縁部を連結する枠と、を備える間仕切パネルであって、 枠には、孔が形成されている、 間仕切パネル。」 の点で一致し、両者は次の点で相違する。 <相違点> 枠、及び枠に形成される孔に関し、 本件発明においては、 「一対の透光性パネル板の上下端縁部のそれぞれを連結する一対の上横枠と下横枠」とを有したうえで、「下横枠」について、その「上面部は、異物落下用の略丸形状の孔が長手方向および短手方向に多数形成された多孔板によって構成されており、前記孔は前記下横枠の上面部の下方の空間に連通するものであり、前記下横枠の上面部に落下してきた異物は、前記孔を通って前記空間に落下する」と特定されているのに対し、 甲1発明においては、「シート材料の周縁部に装着できる複数の内フレーム部材」に用いられる「内フレーム部材55」が、「チャンバ54の上面の長さ方向に沿って設けられた一連の穴56」を有するものの、当該「内フレーム部材55」を「下横枠」とし、「下横枠の上面部」を「異物落下用の略丸形状の孔が長手方向および短手方向に多数形成された多孔板によって構成」すること、及び、「前記孔は前記下横枠の上面部の下方の空間に連通するものであり、前記下横枠の上面部に落下してきた異物は、前記孔を通って前記空間に落下する」ことは、特定されていない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について判断する。 甲1発明において、「内フレーム部材55」が有する、「空気の連通を可能」とする「穴56」は、「乾燥剤用のチャンバ54」に収納された乾燥剤が機能するように、「空気の連通を可能」とすれば足りるものであるから、落下する異物との関係における構造的及び機能的な構成である、上記相違点に係る本件発明の構成に相当する構成を、実質的に有しているということはできない。 そのため、上記相違点に係る本件発明の構成は、実質的な相違点であり、単なる形式上の相違点ということはできない。 次に、甲1発明における「内フレーム部材55」が有する、「空気の連通を可能」とする「穴56」は、上述したとおり、「乾燥剤用のチャンバ54」に収納された乾燥剤が機能するように、「空気の連通を可能」とすれば足り、空気及び空気中の水蒸気を通過させることを意図したものであるから、「落下」する「異物」を通過させることを意図したものとも、いうことができない。 そして、甲1発明における「内フレーム部材55」は、「シート材料の周縁部に装着できる複数の内フレーム部材」として用いられるものであり、甲第1号証中のその余の記載を検討しても、特にシート材料の下端周縁部に配置する内フレーム部材として、他の周縁部に配置する内フレーム部材と異なる構造を持たせるべき記載は見いだせない。甲1発明における「内フレーム部材55」中における「穴56」の位置に関する、「チャンバ54の上面」という表現についても、「内フレーム部材55」の実際の配置状態において、必ず「穴56」の位置が「チャンバ54」に対して重力方向における「上」側となる前提であることを示しているとまで、いうことはできない。 そのため、甲1発明において、「内フレーム部材55」が、「シート材料の周縁部に装着」される際に、「2枚のシート材料12a及び12b」の下方の周縁部に配置されることはあり得るとしても、甲1発明における「内フレーム部材55」が有する「穴56」について、「内フレーム部材55」が「2枚のシート材料12a及び12b」の下方に配置されることを前提として、「空気の連通を可能」とする機能とは別に、「落下してきた異物」との関係に着目した構成を持たせる動機や示唆があるということはできない。 したがって、甲1発明において、「内フレーム部材55」が有する「空気の連通を可能」とする「穴56」について、「異物落下用の略丸形状の孔が長手方向および短手方向に多数形成」されたものとし、「落下してきた異物は、前記孔を通って」落下するようにすることは、甲第1号証中に動機や示唆があるものではなく、単なる設計事項ということはできない。 ここで、甲第2号証には、上記第4の2(2)イに示した甲2発明が記載されており、甲2発明は、「穴明プレート(15)の連通孔(14)は、穴明プレート(15)の短手方向及び長手方向に多数形成され」ている「穴明プレート(15)」を備え、「下枠(6)の凹溝部(11a)内に、乾燥剤容器(18)が取り付けられ、乾燥剤(22)は、上記穴明プレート(15)の連通孔(14)を通して、2枚のガラス(2)(3)間の空隙部(1)内の湿気を吸収」する、という構成を有している。 しかしながら、甲2発明における「穴明プレート(15)」は、「室内枠部(イ)と室外枠部(ロ)」の「互いに対向」する「係止凹部(12)(13)」に「装着」されるものであるから、装着の前提となる構造が甲2発明における「サッシ枠(4)」と甲1発明における「内フレーム部材55」とでは異なり、甲1発明に適用する動機付けはない。 さらに、甲2発明における「穴明プレート(15)」自体についてみても、「乾燥剤(22)」との関係としては、「連通孔(14)」を通して「乾燥剤(22)」が「湿気を吸収」できれば足りるものである。また甲2発明において、「穴明プレート(15)」は、「下枠(6)」のみでなく「左右竪枠(7)(8)」にも設けられており、「乾燥剤容器(18)」も、「下枠(6)だけでなく、上枠(5)もしくは竪枠(7)(8)にも取付け」てよいものであるから、甲2発明における「穴明プレート(15)」の「連通孔(14)」について、「異物落下用の略丸形状の」ものであり、「落下してきた異物は、前記孔を通って」落下するという、甲1発明との上記相違点に係る本件発明の構成に相当する構成を有するものということはできない。 そのため、甲1発明において、甲2発明における「穴明プレート(15)」を採用する動機付けはなく、また仮に甲1発明に甲2発明を適用しても、上記相違点に係る本件発明の構成に至るということはできない。 したがって、甲1発明において、甲2発明に基いて、上記相違点に係る本件発明の構成を当業者が容易に想到できたものではない。 また、甲第3号証ないし甲第7号証には、それぞれ上記第4の2(3)ないし(7)に摘記した事項が記載されているが、いずれも乾燥剤が機能するように空気を連通させる構成に関する事項であり、甲1発明において上記相違点に係る本件発明の構成に至ることを示唆するものではない。 よって、本件発明は、甲1発明及び甲2発明に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 (3)申立人の主張について 申立人は申立書において、上記相違点に関し、孔の機能として、異物が通過するのであれば空気も通過することが明らかであり、また逆もしかりであるから、本件発明の「孔」と甲1発明の「穴56」とは、落下する異物を通す構成として、実質的に同一であり、孔の形状や多孔板の採用については設計事項である旨を主張している(申立書第11頁第7行-第16頁第3行)。 しかしながら、上記(2)で判断したとおり、甲1発明の「内フレーム部材55」が有する「穴56」は、「乾燥剤用のチャンバ54」と「2枚のシート材料12a及び12bの間の空間」とで「空気の連通を可能」とすれば足りるものであるところ、乾燥剤が機能するように空気の連通を可能とする穴であれば、落下する異物を通すように好適化されているということはできないから、甲1発明の「内フレーム部材55」が有する「穴56」が本件発明の「孔」と実質的に同一である旨の申立人の主張は、採用することができない。また、上記(2)で判断したとおり、甲1発明における「内フレーム部材55」は、「シート材料の周縁部に装着できる複数の内フレーム部材」として用いられるものであり、特にシート材料の下端周縁部に配置することを前提として、「空気の連通を可能」とすれば足りる「穴56」の構造、及び「穴56」に関連する「内フレーム部材55」の構造を、落下する異物との関係から、改変するような動機付けがあるということはできない。そのため、甲1発明の「内フレーム部材55」及び「内フレーム部材55」が有する「穴56」を、本件発明の「下横枠」及び「下横枠」が有する「孔」に相当する構成とすることが、設計事項である旨をいう申立人の主張も、採用することができない。 また、申立人は申立書において、上記相違点に関し、甲2発明の「穴明プレート(15)」及び「穴明プレート(15)」が有する「連通孔(14)」は、本件発明における「多孔板」及び「多孔板」が有する「異物落下用の略丸形状の孔」が備える機能及び構造に相当する機能及び構造を備えており、甲2発明の「穴明プレート(15)」を甲1発明の「内フレーム部材55」に適用して、上記相違点に係る本件発明の構成に至ることは容易である旨も主張している(申立書第16頁第4行-第17頁第12行)。 しかしながら、上記(2)で判断したとおり、甲2発明の「穴明プレート(15)」も、「乾燥剤(22)」との関係としては、「連通孔(14)」を通して「乾燥剤(22)」が「湿気を吸収」できれば足りるものであり、「穴明プレート(15)」の配置箇所も、「下枠(6)」だけに特化して当該「穴明プレート(15)」の構造を調整するものではなく、「左右竪枠(7)(8)」にも設けられるものであるから、落下する異物との関係において本件発明における「多孔板」が有する構成に相当する構成を備えているということはできない。また、甲2発明における「穴明プレート(15)」は、上記(2)で指摘したとおり、甲2発明における「サッシ枠(4)」の構造を前提として、「室内枠部(イ)と室外枠部(ロ)」の「互いに対向」する「係止凹部(12)(13)」に「装着」されるものであるから、甲2発明における「サッシ枠(4)」とは構造が異なる甲1発明における「内フレーム部材55」に、適用する動機付けもない。そのため、甲1発明及び甲2発明に基いて、上記相違点に係る本件発明の構成に相当する構成に至ることが容易である旨をいう申立人の主張も、採用することができない。 よって、申立人の主張を検討しても、本件発明の進歩性について、上記(2)と異なる判断をすべき事情を見いだすことはできない。 2 明確性について (1)申立人の主張 申立人は申立書において、本件発明における「略丸形状の孔」は、孔の形状の特定が曖昧であり、また本件発明における「孔が長手方向および短手方向に多数形成された多孔板」は、多孔板がどの程度の範囲にどの程度の数の孔を有するのか明確に特定していないから、本件発明は不明確である旨を主張している(申立書第17頁第13行-第19頁第14行)。 (2)「略丸形状の孔」について 上記申立人の主張のうち、「略丸形状の孔」に関する主張について、検討する。 ア 請求項1の記載 本件発明を特定する請求項1の記載のうち、申立人が言及する事項に関する記載は、「前記下横枠の上面部は、異物落下用の略丸形状の孔が長手方向および短手方向に多数形成された多孔板によって構成されており、前記孔は前記下横枠の上面部の下方の空間に連通するものであり、前記下横枠の上面部に落下してきた異物は、前記孔を通って前記空間に落下する」というものである。 イ 明細書及び図面の記載 また、本件明細書の段落【0004】、【0006】、【0037】、【0039】及び【図6】には、次の記載及び図示がある。 (ア)段落【0004】 「【0004】 ところで、組立て作業時に間仕切パネルを構成する部材には、組立て場所において浮遊している塵埃物質等の微小な異物が付着することがある。この付着した異物は、間仕切パネルの組立前に完全に除去することは難しく、間仕切パネルを起立させて設置場所に設置した後、時間の経過とともに、または複数枚の間仕切パネルの連結時の接触による衝撃により落下して、上記の内部空間において、特に間仕切パネルの下横枠の上面部に堆積しやすい。堆積した異物は、間仕切パネルの外部から視認できる位置に存在するため、使用時に、間仕切パネル、ひいては移動間仕切装置全体の美観を損なう場合があった。間仕切パネルの内部空間に堆積した異物を除去するための従来の手段としては、間仕切パネルを設置場所から取り外して解体した上で除去するしかなく、このような除去作業は、作業効率が悪いため、特に大型の間仕切パネルの場合に行なうことは現実的ではない。」 (イ)段落【0006】 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明の目的は、解体せずに、内部空間に存在するごみや埃等の異物を、透光性パネル板から見えない位置に簡便に移動させることができる間仕切パネルを提供することにある。」 (ウ)段落【0037】 「【0037】 図6に示す実施形態においては、枠体16が具える、異物を透光性パネル板14から見えない位置に移動可能にする特定部分が、内部空間15を区画する下横枠21の上面部52に形成された第2開口部54であることが好ましい。これにより、上面部52に堆積した異物は自然に透光性パネル板14から見えない下横枠21A内に落下するので、内部空間15からの異物除去の作業負担を軽減することができる。」 (エ)段落【0039】 「【0039】 多孔板60に落下してきた異物は、孔54、54、・・を通って、形材58と多孔板60との間の空間59に落下するので、パネル板14から視認されることはない。異物が、孔54、54、・・の間において多孔板60上に載った場合には、例えば隣接する間仕切パネル12同士を連結する際の衝撃等の振動を利用して、孔54、54、・・を通して空間59内に異物を落下させることができる。」 (オ)【図6】 ウ 判断 上記アに摘記した特許請求の範囲の記載からすると、本件発明における「略丸形状の孔」とは、「下横枠の上面部」に形成される「孔」であり、「下横枠の上面部に落下してきた異物」が、当該「孔」を通って「下方の空間に落下する」という「孔」について、「略丸形状の」という特定を付したものと、当業者であれば理解することができる。 また、上記イに摘記した明細書の段落【0004】、【0006】、【0037】及び【0039】の記載を参照すると、本件発明における「異物」としては、間仕切パネルの組立て場所において浮遊している塵埃物質等の微小な異物が付着したものが想定されていると、当業者は理解することができる。そして、本件発明における「孔」としては、かような異物がパネル内部空間において多孔板に落下してきた際に、異物が通り抜けて多孔板より下に落下することできる大きさを有する「孔」が想定されていると、当業者は理解することができる。そのうえで、本件発明における「略丸形状の孔」とは、塵埃物質や塵埃物質が付着して生じたパネル内部空間内の異物が、落下する際に通り抜けることができる大きさの「孔」について、当該「孔」の形状が「略丸形状」であることを併せて特定したものと、当業者は理解することができる。 これらのことをふまえると、本件発明において、「孔」の形状が幾何学的に厳密に特定されておらず、「略丸形状」という特定にとどまっているとしても、本件発明における「異物落下用の略丸形状の孔」は、「前記孔は前記下横枠の上面部の下方の空間に連通するものであり、前記下横枠の上面部に落下してきた異物は、前記孔を通って前記空間に落下する」という機能を有する程度に「丸形状」に近い形状であると、当業者は理解することができる。 したがって、本件発明における「略丸形状の孔」について、孔の形状の特定が曖昧であるから、本件発明が不明確となっており、本件発明が特許法第36条第6項第2号の規定に違反する旨をいう申立人の主張は、採用することができない。 (3)「孔が長手方向および短手方向に多数形成された多孔板」について 上記申立人の主張のうち、「孔が長手方向および短手方向に多数形成された多孔板」に関する主張について、検討する。 本件発明を特定する請求項1には、上記(2)アに示した記載があり、本件明細書及び図面には、上記(2)イに示した記載及び図示がある。 そうすると、本件発明における「異物」としては、上記(2)ウに説示したとおり、塵埃物質や塵埃物質が付着して生じたパネル内部空間内の異物が想定されていると、当業者は理解することができる。そのうえで、本件発明における「孔が長手方向および短手方向に多数形成された多孔板」の孔の数と配置については、請求項1及び明細書の段落【0039】に記載されるように、「落下してきた異物」について「孔」を通って「落下」させることができ、また明細書の段落【0039】に記載されるように、「異物」が「孔」の間において多孔板の上に載った場合にも、例えば振動を利用して、「孔」を通して「異物」を落下させることができる機能を有する程度の、孔の数及び配置であると、当業者であれば理解することができる。 したがって、本件発明における「孔が長手方向および短手方向に多数形成された多孔板」について、孔の配置の範囲と数とが曖昧であるから、本件発明が不明確となっており、本件発明が特許法第36条第6項第2号の規定に違反する旨をいう申立人の主張は、採用することができない。 (4)明確性の小括 よって、本件発明は、申立人が申立てる点で発明が不明確なものではなく、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2020-11-19 |
出願番号 | 特願2017-143858(P2017-143858) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
Y
(E04B)
P 1 651・ 121- Y (E04B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 土屋 保光 |
特許庁審判長 |
森次 顕 |
特許庁審判官 |
有家 秀郎 袴田 知弘 |
登録日 | 2020-03-02 |
登録番号 | 特許第6669697号(P6669697) |
権利者 | 株式会社オカムラ |
発明の名称 | 間仕切パネル |
代理人 | 重信 和男 |
代理人 | 秋庭 英樹 |
代理人 | 石川 好文 |
代理人 | 林 道広 |
代理人 | 溝渕 良一 |
代理人 | 堅田 多恵子 |