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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1368481
審判番号 不服2019-14087  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-23 
確定日 2020-11-19 
事件の表示 特願2015-80150号「エアゾール製品」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 1日出願公開、特開2016-199288号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年4月9日の出願であって、令和元年8月14日付けで拒絶査定がされた。これに対し、令和元年10月23日に拒絶査定不服審判が請求され、令和2年5月13日付けで拒絶理由が通知され、令和2年7月15日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明について
1 本願発明
特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明は令和2年7月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち、請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものであると認める。

「界面活性剤と水とを含む水性原液と、液化ガスとが乳化したエアゾール組成物がエアゾール容器に充填されたエアゾール製品であり、
前記液化ガスを前記エアゾール組成物中に65?80容量%含み、
前記エアゾール容器は、前記エアゾール組成物と接触する内面がポリオレフィン製であり、
前記エアゾール組成物は、さらに、水溶性高分子を含み、
前記液化ガスは、ハイドロフルオロオレフィンを含まないか、または、エアゾール組成物中、50容量%以下となるよう含む、エアゾール製品。」

2 引用例
(1) 引用例1
令和2年5月13日付けで通知した拒絶理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2012-1465号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
水性原液5?50重量%と、
液化ガス50?95重量%とからなるエアゾール組成物を充填したエアゾール製品であり、
前記水性原液と前記液化ガスとが乳化してなり、
前記エアゾール組成物の噴射物の噴射角度が、前記エアゾール製品の噴射孔を原点として18?60度であり、
前記エアゾール組成物中の液化ガスの単位時間および単位面積当たりの噴射量が、0.009?0.130g/秒・cm^(2)であるエアゾール製品。」

(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール製品および該エアゾール製品の噴射方法に関する。さらに詳しくは、噴射物が広範囲に広がり平面状に氷結するエアゾール製品および該エアゾール製品の噴射方法に関する。」

(ウ)「【0013】
前記水性原液は、乳化剤を含む。また、必要に応じて水溶性高分子、有効成分、アルコール類、油分などを配合することができる。水性原液はエアゾール容器内では後述する液化ガスと乳化しており、エアゾール容器から外部に噴射されると水性原液は液化ガスの気化熱により効率よく冷却されて氷結物になる。
【0014】
乳化剤としては、たとえば、POE・POPセチルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテルなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー;モノヤシ油脂肪酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;モノステアリン酸POEグリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;POE硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEイソセチルエーテル、POEイソステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;モノステアリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸ペンタグリセリル、モノミリスチン酸ペンタグリセリル、モノオレイン酸ペンタグリセリル、モノステアリン酸ペンタグリセリル、モノラウリン酸デカグルセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル;モノオレイン酸POEグリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;モノパルミチン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノイソステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸POEソルビット、テトラステアリン酸POEソルビット、テトラオレイン酸POEソルビットなどのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;などのHLBが10?19、好ましくは11?18である非イオン系界面活性剤、などがあげられる。HLBが10よりも小さい場合は、液化ガスが連続相になりやすい傾向があり、HLBが19よりも大きい場合は液化ガスを乳化しにくくなる傾向がある。
【0015】
前記乳化剤の配合量は、水性原液中0.1?10重量%、さらには0.2?8重量%であることが好ましい。界面活性剤の配合量が0.1重量%よりも少ない場合は、水性原液と液化ガスとの乳化安定性が悪くなり、10重量%よりも多い場合は塗布面上で残りやすく使用感が悪くなる。
【0016】
水性原液の主溶媒は水であり、乳化剤により液化ガスと乳化する。該水としては、たとえば、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水などがあげられる。
【0017】
前記水の配合量は、水性原液中50?99.9重量%、さらには60?99.5重量%であることが好ましい。水の配合量が50重量%よりも少ない場合は液化ガスと乳化しにくくなる。99.9重量%よりも多い場合は液化ガスと乳化させるための乳化剤を必要量配合しにくくなる。」

(エ)「【0018】
前記水溶性高分子は水性原液の粘度を調整して噴射物を氷結しやすくする、氷結物の固さなどの状態を調整する、などの作用がある。
【0019】
前記水溶性高分子としては、たとえば、キサンタンガム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガム、ローカストビーンガムなどのガム質;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ニトロセルロース、結晶セルロースなどのセルロース系高分子;デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、デンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、アルギン酸ナトリウム、変性ポテトスターチ、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーなどがあげられる。水性原液に液化ガスの保持力を高くし、噴射物を平面状に氷結しやすくなる効果が得られやすい点から、セルロース系高分子、特にヒドロキシエチルセルロースが好ましい。
【0020】
前記水溶性高分子を配合する場合の配合量は、水性原液中0.01?5重量%、さらには0.05?3重量%であることが好ましい。水溶性高分子の含有量が0.01重量%よりも少ない場合は前述の効果が得られにくく、5重量%を超える場合は水性原液の粘度が高くなりすぎ、液化ガスとの乳化を阻害する。」

(オ)「【0036】
前記液化ガスとしては、たとえば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエ ル、フロン類、およびこれらの混合物などが挙げられる。また液化ガス中にノルマルペンタン、イソペンタンを配合してもよい。なお、液化ガスとして、液化石油ガスとジメチルエーテルの混合液化ガスを用いると、噴射孔で氷結物が付着してスプレーパターンを乱すことを防止できる。」

(カ)「【実施例】
【0052】
実施例1、2および比較例1
下記の水性原液1を調製し、水性原液1を25g(25重量%)、アルミニウム製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを取り付け、液化ガスとして液化石油ガス(*1)を75g(75重量%)充填した。次いでエアゾール容器を上下に振り、水性原液と液化ガスを乳化させてエアゾール組成物を製造した。なお水性原液1の液密度は1.00g/mLであった。噴射部材の種類、孔径および噴射孔の長さは、表1に示すものを使用した。評価結果を表2に示す。また、図1として、単位時間および単位面積当たりの液化ガスの噴射量を横軸に、噴射角を縦軸にプロットする。黒丸は実施例を表し、参照符号1を付す。なお、後述する比較例は、白抜きの三角で表し、参照符号2を付す。
<水性原液1>
POE(20)POP(8)セチルエーテル(*2) 0.5
タルク(*3) 0.5
精製水 99.0
合 計 100.0(重量%)
*1:25℃での圧力が0.2MPa
*2:NIKKOL PBC-44(商品名)、日光ケミカルズ社製
*3:クラウンタルクPP(商品名)、松村産業社製
・・・
【0056】
実施例10
水性原液2を40重量%、液化石油ガス(*1)を60重量%用いたこと以外は実施例7と同様にしてエアゾール製品を製造した。噴射部材の種類、孔径および噴射孔の長さは、表1に示すものを使用した。評価結果を表2および図1に示す。
・・・
【0066】
【表1】

LPG:液化石油ガス
DME:ジメチルエーテル
ST:ストレート形状の噴射孔
MB:メカニカルブレークアップ機構付き
【0067】
【表2】



(2)引用例1に記載された発明
引用例1には、実施例10に着目すると(【0052】?【0067】)、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「水性原液と、液化ガスとからなるエアゾール組成物を充填したエアゾール製品であって、
POE(20)POP(8)セチルエーテル(*2)0.5(重量%)、タルク(*3)0.5(重量%)、ヒドロキシエチルセルロース(*6)0.1(重量%)、精製水98.9(重量%)の水性原液1を40重量%、アルミニウム製耐圧容器に充填し、耐圧容器にエアゾールバルブを取り付け、液化ガスとして液化石油ガス(*1)を60重量%充填し、次いでエアゾール容器を上下に振り、水性原液と液化ガスを乳化させて製造したエアゾール組成物を含むエアゾール製品。」

(3)引用例2
令和2年5月13日付けで通知した拒絶理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2011-251753号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0002】
プラスチック容器は、成形が容易であり、安価に製造できることなどから、各種の用途に広く使用されている。特に、容器壁の内面が低密度ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂で形成され且つダイレクトブロー成形で成形されたオレフィン系樹脂ボトルは、内容物を絞り出し易いという観点から、マヨネーズやケチャップなどの粘稠なスラリー状或いはペースト状の内容物を収容するためのボトルとして好適に使用されている。
【0003】
また、粘稠な内容物を収容するボトルでは、該内容物を速やかに排出するため、或いはボトル内に残存させることなくきれいに最後まで使いきるために、ボトルを倒立状態で保存しておかれる場合が多い。従って、ボトルを倒立させたときには、粘稠な内容物がボトル内壁面に付着残存せずに、速やかに落下するという特性が望まれている。
【0004】
このような要求を満足するボトルとして、例えば、特許文献1には、最内層が、MFR(メルトフローレート)が10g/10min以上のポリオレフィンからなる多層構造のボトルが提案されている。
この多層構造ボトルは、特にマヨネーズのような油脂分を含有する油性内容物を収容するために使用されるものであり、最内層が油性内容物に対する濡れ性に優れており、この結果、ボトルを倒立させたり、或いは傾斜させたりすると、マヨネーズ等の油性内容物は、最内層表面に沿って広がりながら落下していき、ボトル内壁面(最内層表面)に付着残存することなく、綺麗に排出することができるというものである。
【0005】
また、ケチャップのような植物繊維が水に分散されている粘稠な非油性内容物用のボトルについては、特許文献2或いは特許文献3に、最内層に有機滑剤として飽和或いは不飽和の脂肪族アミドが配合されたポリオレフィン系樹脂ボトルが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-284066号公報
【特許文献2】特開2008-222291号公報
【特許文献3】特開2009-214914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献に開示されているポリオレフィン系樹脂ボトルは、ボトル壁の内面を形成する樹脂層の材質の面から、ボトルを倒立状態に保持したときの内容物の滑落性を向上させたものであり、何れのボトルにおいても、程度の差はあるが、ボトルの胴部壁を速い滑落速度で粘稠な内容物が滑り落ちるため、倒立保存により、粘稠な内容物を胴部の内壁面に付着することなく、下方(ボトル口部側)に落下せしめ、該内容物を綺麗に且つ速やかに排出することができるというものである。
【0008】
しかしながら、粘稠な内容物用に用いられる従来公知のポリオレフィン系樹脂ボトルにおいては、ボトルの底部に内容物が付着し、この底部に付着している内容物を効果的に排出するのが困難であり、このため、使用済みのボトル内には排出されずに残存する内容物の量が多く、資源の無駄という問題や、廃棄に際してのボトルの洗浄が面倒であるなどの不都合があり、その改善が求められている。
【0009】
また、本出願人は、先に、内容物の滑落性を高めるためには、マヨネーズに代表される油性内容物用のオレフィン系樹脂ボトルでは、最内層のオレフィン系樹脂層を滑剤フリーの層とするのがよく(特願2009-38197号)、ケチャップに代表される非油性内容物用のオレフィン系樹脂ボトルでは、最内層のオレフィン系樹脂層に、有機系滑剤として飽和脂肪族アミドを含有せしめることがよいこと(特願2009-67223号)を提案したが、このような場合においても、ボトルの底部に内容物が付着残存してしまい、その排出が困難となるという問題は依然として残っている。
【0010】
本発明の目的は、マヨネーズ等の粘稠な油性内容物に対して、底部内面での滑落性が向上したダイレクトブロー成形オレフィン系樹脂ボトルを提供することにある。」

(4)引用例3
令和2年5月13日付けで通知した拒絶理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特公平5-77510号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「本発明は、内部に油脂を含有する粘度が30000cP以上のマヨネーズ、半固体状ドレツシング等の粘稠性の高い食品のプラスチツク製容器に関するものであり、さらに詳しくは容器内に付着した粘稠性の高い上記の食品の落下が速やかに行われるプラスチツク製容器に関するものである。」(1頁左欄11?16行)
(イ)「本発明の疎水性のプラスチツクとは、ポリプロピレン、ポリスチレン、高密度あるいは中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、カーボネート、アクリロニトリル-スチレンブタジエン共重合体、ポリフエニレンオキサイド及びそれらの変性体であり、さらに上記したプラスチツクの複数を適宜混合したものあるいはこれらに炭酸カルシウム、タルク、マイカ等の充填材を適宜混入してもよい。」(1頁右欄下から3行?2頁左欄7行)
(ウ)「一般に疎水性のプラスチツクからなる容器内でのマヨネーズの滑り性の悪さはこのサラダ油が原因しているといえる。」(2頁左欄26?28行)
(エ)「実施例
第一押出機(60mm押出機)にて低密度ポリエチレン(住友化学製『スミカセンF108』)と400ppmの四弗化エチレン-エチレン樹脂を混合したブレンド物、第二押出機(25mm押出機)にてエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物をそれぞれ加熱溶融し押出ダイへおくり、押出ダイにて第一押出機のブレンド物を外層11と内層13に、第二押出機のエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物を中間層12に配置して外径がΦ18mmの管状のパリソンを押出垂下し、第1図に示す容器の形状を賦形したキヤビテイを有する金型にて吹込み成形してプラスチツク製食品容器1を得た、このプラスチツク製食品容器1は、胴部2、底部3および肩部4より構成される。このプラスチツク製食品容器1は底部3から肩部4までの高さ(T)が200mm、内容量が500ccである。
実施例2?実施例7、比較例1?比較例4
内層のブレンド物の四弗化エチレン-エチレン樹脂の混合する量を第1表に示すようにした以外は実施例1と同様である。」(2頁右欄6?26行)

(5)引用例4
令和2年5月13日付けで通知した拒絶理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平11-33444号公報(以下「引用例4」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0036】内筒1は、ガス透過性を有する材料によって作製されている。内筒1は、酸やアルカリに対する耐薬品性とガス透過性に優れたオレフィン系樹脂のうち、とくに安価なポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)などによって作製されるのが好ましい。」

(6)引用例5
令和2年5月13日付けで通知した拒絶理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2002-308358号公報(以下「引用例5」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0012】また、前記内部容器2は、たとえばブロー成形法によって成形された容器であってもよく、また射出成形法によって成形された容器であってもよい。またはこの内部容器2は、インナーバックなどであり、ガス透過性にすぐれていれば前記ガス透過性樹脂は、とくに限定されるものではないが、たとえばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ナイロン(NY)などのポリアミドなどの単層物や、エチレンビニルアルコール(EvOH)の両面に低密度のポリエチレン(PE)を積層した積層物などがあげられる。」

3 本願発明と引用発明の対比・判断
(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「POE(20)POP(8)セチルエーテル」は、引用例1の【0014】を参照すると、界面活性剤であるから、本願発明の「界面活性剤」に相当する。また、引用発明の「精製水」は、本願発明の「水」に相当し、同様に「エアゾールバルブを取り付け」る「耐圧容器」は「エアゾール容器」に相当する。

(イ)引用発明の「水性原液と、液化ガスとからなるエアゾール組成物を充填したエアゾール製品」は、エアゾール組成物が「水性原液と液化ガスを乳化させて製造した」ものであって、「耐圧容器」に充填するから、本願発明の「水性原液と、液化ガスとが乳化したエアゾール組成物がエアゾール容器に充填されたエアゾール製品」に相当する。

(ウ)引用発明の「水性原液1を40重量%」充填し、「液化ガスとして液化石油ガス(*1)を60重量%充填」する態様は、水性原液1が精製水98.9(重量%)であること、引用例1の【0036】を参照すると、液化石油ガスの液比重が0.5?0.6程度であるといえることから算出すると、液化ガスは71?75容積%である。したがって、引用発明の当該態様は、本願発明の「前記液化ガスを前記エアゾール組成物中に65?80容量%含」む態様に相当する。

(エ)引用発明の「液化石油ガス(*1)」は、引用例1の【0036】を参照すると、ハイドロフルオロオレフィンを含まないことは明らかであるから、本願発明の「前記液化ガスは、ハイドロフルオロオレフィンを含まないか、または、エアゾール組成物中、50容量%以下となるよう含む」ことに相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「界面活性剤と水とを含む水性原液と、液化ガスとが乳化したエアゾール組成物がエアゾール容器に充填されたエアゾール製品であり、
前記液化ガスを前記エアゾール組成物中に65?80容量%含み、
前記液化ガスは、ハイドロフルオロオレフィンを含まないか、または、エアゾール組成物中、50容量%以下となるよう含む、エアゾール製品。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明は、「前記エアゾール容器は、前記エアゾール組成物と接触する内面がポリオレフィン製であ」るのに対して、引用発明は、アルミニウム製耐圧容器の内面が不明である点。
<相違点2>
本願発明は、「前記エアゾール組成物は、さらに、水溶性高分子を含む」のに対して、引用発明は、水溶性高分子を含んでいない点。

(2) 当審の判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
引用例2(【0002】?【0010】等)及び引用例3(1頁左欄11?16行、2頁左欄26?28行等)には、乳化した粘稠の内容物(マヨネーズ)に対して滑り性の観点からポリオレフィン樹脂が適していることが記載されている。
そして、引用発明は内容物を乳化して用いるものであって、容器と内容物との高い滑り性が求められることは当然の課題であるから、上記周知の事項を適用して容器の少なくとも内容物と接する部材をポリオレフィン製とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用例4(【0036】)及び引用例5(【0012】)にも記載されているように、ポリオレフィンからなる内筒(内部容器)を用いたエアゾール容器は周知であるから、引用発明において当該周知のエアゾール容器を用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
引用例1の【0013】には、必要に応じて水溶性高分子を含むことが記載されており、【0018】?【0020】には、具体的に水溶性高分子があげられており、当該示唆に従い、引用発明において、水溶性高分子を含ませることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<本願発明の奏する効果について>
本願発明の奏する効果は、引用発明、引用例2、3記載事項及び周知の技術的事項から、当業者が想到し得る範囲のものであって、格別なものでない。

<請求の主張について>
請求人は、令和2年7月15日の意見書で、「補正後の請求項1に記載の発明は、単に液化ガスの含有量を限定しただけでなく(構成要件B)、その中におけるハイドロフルオロオレフィンの含有量にも着目し、ハイドロフルオロオレフィンが液化ガス中に含まれないか、50容量%以下となるよう含まれる場合に限り(構成要件E)、上記効果を奏することを見出した点に特徴を有」する旨主張する。
しかし、上記のとおり、本願発明の液化ガスの含有量と、その中におけるハイドロフルオロオレフィンの含有量にも着目し、ハイドロフルオロオレフィンが液化ガス中に含まれないか、50容量%以下となるよう含まれることは引用発明との相違点ではなく、さらに、乳化した粘稠の内容物(マヨネーズ)に対してポリオレフィン樹脂を用いると滑り性が良好であることは知られているから、請求人の主張は採用できない。

4 むすび
したがって、本願発明は、引用発明、引用例2、3記載事項及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


第3 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-09-11 
結審通知日 2020-09-15 
審決日 2020-09-29 
出願番号 特願2015-80150(P2015-80150)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 智宏  
特許庁審判長 森藤 淳志
特許庁審判官 横溝 顕範
佐々木 正章
発明の名称 エアゾール製品  
代理人 特許業務法人朝日奈特許事務所  

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