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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1368487
審判番号 不服2019-16974  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-16 
確定日 2020-11-19 
事件の表示 特願2016- 66388「フォトレジスト用保護フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日出願公開、特開2017-181673〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成28年3月29日の出願であって、平成30年9月12日付けで拒絶理由が通知され、同年11月16日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされ、平成31年3月1日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年4月15日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、令和元年9月5日付けで、平成31年4月15日になされた手続補正について補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年12月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 本件発明
本願の請求項1?5に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりの発明であって、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は次のとおりである。
「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離型層を有し、当該離型層が離型剤と数平均分子量が1000?500000の帯電防止剤とを含有し、当該離型層がメラミン化合物を用いて形成されたものであり、当該メラミン化合物が、エーテル化したアルキロール基がエーテル化していないアルキロール基に対して0.5?5当量の範囲であるアルキロール化メラミン誘導体であることを特徴とするフォトレジスト用保護フィルム。」

3 原査定の拒絶理由の概要
原査定で通知した拒絶理由の概要は、本願の請求項1?5に係る発明は、その出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
なお、原査定において引用された引用文献3は、次のものである。

引用文献3:特開2015-139925号公報

4 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
(1)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前の平成27年8月3日に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された特開2015-139925号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の記載事項がある。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、長鎖アルキル基含有化合物および帯電防止剤と、アクリル樹脂またはポリビニルアルコールとを含有する塗布液から形成された塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムとして好適なポリエステルフィルムに関するものであり、例えば、成形同時転写等の転写用、フレキシブルプリント配線板の製造用、プラスチックシート製造用の工程紙用等、各種工程中で用いられる工程用フィルムや、カバーテープなどの保護フィルムとして用いられ、特に工程中や剥離による静電気の発生を抑え、チリや小さなゴミの付着を抑えられる、透明な離型ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れた特性を有し、コストパフォーマンスに優れるため、各種用途に使用されている。ポリエステルフィルムを離型フィルムとして使用する場合、種々の樹脂や粘着剤に対する離型性が不足するため、実用性に乏しいという欠点を有している。このため、従来からポリエステルフィルム表面に、離型性塗膜を積層する方法が検討されてきた。

(中略)

【0003】
ポリエステルフィルムは、加工工程や製品の使用時の接触摩擦や剥離によって静電気が発生しやすく、チリや小さなゴミが付着しやすい。そのため、工程内の汚染や異物の混入の危険がある。また加工時には二枚取りや滑り不良など、フィルム供給や排出適性が悪化する問題もある。

(中略)

【0004】
離型性塗膜と帯電防止性塗膜は別の塗膜として加工される場合もあるが、製造工程の増加の観点から、同一の塗膜にて離型性と帯電防止性を付与することが好ましい。しかし、これらを同一の塗膜として加工した場合、離型性や帯電防止性が上手く得られなかったり、塗膜の外観が悪化したりする問題を抱えている。外観の悪化したフィルムは、塗膜のムラに起因して離型性や帯電防止性にムラがある場合があり、性能の安定性に欠ける。また、離型フィルムを通して見る製品の視認性を悪化させてしまい、工程検査で製品の欠陥を見落とす可能性を生じる。

(中略)

【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、成形同時転写等の転写用、フレキシブルプリント配線板の製造用、プラスチックシート製造用の工程紙用等、各種工程中で用いられる工程用フィルムや、カバーテープなどの保護フィルムとして、静電気の発生を抑え、好適な離型性を有する、透明性に優れた離型ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなる積層ポリエステルフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、長鎖アルキル基含有化合物および帯電防止剤と、アクリル樹脂またはポリビニルアルコールとを含有する塗布液から形成された塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層ポリエステルフィルムによれば、成形同時転写などの転写用等の各種の工程用フィルムとして用いた際に、離型性や透明性に優れ、帯電の少ない離型ポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。」

ウ 「【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。

(中略)

【0022】
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。より好ましくはインラインコーティングにより形成されるものである。

(中略)

【0024】
本発明においては、長鎖アルキル基含有化合物および帯電防止剤と、アクリル樹脂またはポリビニルアルコールとを含有する塗布液から形成された塗布層を有することを必須の要件とするものである。
【0025】
塗膜に離型性と帯電防止性とをともに付与するために、離型剤と帯電防止剤を併用する検討をしたところ、透明性が悪化する場合が散見された。本発明者らが各種検討した結果、アクリル樹脂またはポリビニルアルコールの少なくとも1種を加えることで、透明性が向上し、保護フィルムなどにより適応性の高いフィルムを初めて作り出せることが判明した。
【0026】
本発明における塗布層は、例えば成形同時転写等の転写用、フレキシブルプリント配線板の製造用、プラスチックシート製造用の工程紙用等、各種工程中で用いられる工程用フィルムやカバーテープなどの保護フィルムとして好適な離型性能を向上させ、帯電を防止させるために設けられるものである。
【0027】
本発明のフィルムの塗布層の形成に使用する長鎖アルキル基含有化合物は、フィルムの離型性を向上させるために用いる。
【0028】
長鎖アルキル化合物とは、炭素数が通常6以上、好ましくは8以上、さらに好ましくは12以上の直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物のことである。

(中略)

【0033】
塗布層の形成に使用する帯電防止剤とは、アンモニウム基含有化合物、ポリエーテル化合物、スルホン酸化合物、ベタイン化合物等のイオン導電性の高分子化合物や、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリイソチアナフテン、ポリチオフェンなどのπ電子共役系の高分子化合物が挙げられる。これらはフィルムに帯電防止性を付与するために用いられる。これらの中でもイオン導電性の高分子化合物が好ましく、アンモニウム基含有化合物が特に好ましい。π共役系導電性高分子、たとえばポリチオフェンやポリアニリン含有の塗布液から形成される塗布層は一般に強く着色するため、透明性が求められる光学用途には好適でない場合がある。またπ共役系導電性高分子塗料はイオン導電性塗料に比べ一般に高価になるため、製造コストの観点からもイオン導電性の帯電防止剤が好適に用いられる。
【0034】
アンモニウム基含有化合物とは、分子内にアンモニウム基を有する化合物を指し、アンモニウム基を有する高分子化合物であることが好ましい。例えば、アンモニウム基と不飽和性二重結合を有する単量体を成分として含む重合体を用いることができる。

(中略)

【0049】
また、アンモニウム基含有化合物の数平均分子量は、通常1000?500000、好ましくは2000?350000、さらに好ましくは5000?200000である。分子量が1000未満の場合は塗膜の強度が弱かったり、耐熱安定性に劣ったりする場合がある。また分子量が500000を超える場合は、塗布液の粘度が高くなり、取扱い性や塗布性が悪化する場合がある。
【0050】
塗布層の形成にはアクリル樹脂またはポリビニルアルコールの少なくとも1種を用いるが、これはフィルムの透明性を向上させるために用いる。

(中略)

【0055】
本発明のフィルムの塗布層の形成には、アクリル樹脂やポリビニルアルコール以外の各種のポリマーや架橋剤を併用することも可能である。
【0056】
ポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。

(中略)

【0066】
架橋剤の具体例としては、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。これら架橋剤の中でも架橋密度の高さの観点において、特にメラミン化合物を使用することが好ましい。また、これらの架橋剤は2種以上を併用しても良い。
【0067】
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。

(中略)

【0070】
なお、架橋剤は、乾燥過程や、製膜過程において、反応させて塗布層の性能を向上させる設計で用いている。できあがった塗布層中には、これら架橋剤の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。

(中略)

【0077】
インラインコーティングによって塗布層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1?50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。」

エ 「【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
【0087】
(1)ポリエステルの極限粘度の測定方法
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0088】
(2)平均粒径の測定方法
TEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H-7650、加速電圧100V)を使用して塗布層を観察し、粒子10個の粒径の平均値を平均粒径とした。
【0089】
(3)塗布層の膜厚測定方法
塗布層の表面をRuO_(4)で染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuO_(4)で染色し、塗布層断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H-7650、加速電圧100V)を用いて測定した。
【0090】
(4)離型フィルムの剥離力の評価
試料フィルムの離型層表面に粘着テープ(日東電工株式会社製「No.31B」)を2kgゴムローラーにて1往復圧着し、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は、株式会社島津製作所製「Ezgraph」を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
【0091】
(5)フィルムヘーズの測定
試料フィルムをJIS-K-7136に準じ、株式会社村上色彩技術研究所製ヘーズメーター「HM-150」により、フィルムヘーズを測定した。
【0092】
(6)帯電防止性の評価方法
日本ヒューレット・パッカード株式会社製高抵抗測定器:HP4339Bおよび測定電極:HP16008Bを使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後、表面抵抗値を測定した。
【0093】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加した後、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A)の極限粘度は0.63であった。
【0094】
<ポリエステル(B)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加後、平均粒子径2μmのシリカ粒子を0.2重量部、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、極限粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(B)を得た。得られたポリエステル(B)は、極限粘度0.65であった。
【0095】
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・離型剤(長鎖アルキル化合物):(IA)
4つ口フラスコにキシレン200部、オクタデシルイソシアネート600部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、平均重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコール100部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた。ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行い、反応を終了した。反応混合物を約80℃まで冷却してから、メタノール中に加えたところ、反応生成物が白色沈殿として析出したので、この沈殿を濾別し、キシレン140部を加え、加熱して完全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、沈殿をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕して得た。
【0096】
・帯電防止剤:IIA
下記式3-1の構成単位と、下記式3-2の構成単位とを重量比率で95/5の重量比率で共重合した、数平均分子量30000の高分子化合物
【0097】
【化3】

【0098】
【化4】

【0099】
・帯電防止剤:IIB
式3-1の構成単位を共重合した、数平均分子量30000の高分子化合物
【0100】
・帯電防止剤:IIC
対イオンがメチルスルホネートである、2-(トリメチルアミノ)エチルメタクリレート/エチルメタクリレート/ブチルメタクリレート/ポリエチレングリコール含有モノアクリレートが、重量比で75/12/15/30 である共重合ポリマー。数平均分子量が40000。
・帯電防止剤:IID
下記式4の構成単位からなる、数平均分子量50000の帯電防止剤
【0101】
【化5】

【0102】
・アクリル樹脂:(IIIA)下記組成で重合したアクリル樹脂の水分散体
エチルアクリレート/n-ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N-メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)。水酸基価11mgKOH/g。
【0103】
・アクリル樹脂:(IIIB)下記組成で重合したアクリル樹脂の水分散体
エチルアクリレート/メチルアクリレート/2-ヒドロキシエチルメタクリレート/N-メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/28/3/2/2(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)。水酸基価24mgKOH/g。
【0104】
・ポリビニルアルコール:(IIIC)
ケン化度88モル%、重合度500のポリビニルアルコール
・ヘキサメトキシメチロールメラミン:(IV)
【0105】
実施例1:
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)のみを中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:8:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、下記表1に示す塗布液1を塗布し、テンターに導き、横方向に110℃で4.3倍延伸し、235℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、膜厚(乾燥後)が0.03μmの離型層を有する厚さ50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0106】
得られたポリエステルフィルムを評価したところ、剥離力や帯電防止性、透明性が良好であった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
【0107】
実施例2?18:
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表2に示すとおりであり、離型性、帯電防止性、透明性が良好であった。

(中略)

【0110】
【表1】

【0111】
【表2】



オ 「【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の離型フィルムは、例えば、成形同時転写等の転写用、フレキシブルプリント配線板の製造用、プラスチックシート製造用の工程紙用等、各種工程中で用いられる工程用フィルムや、キャリアテープカバーテープなどの保護フィルムとして、特に剥離性、帯電防止性、および透明性を要求される用途において好適に利用することができる。」

(2)引用文献3に記載された発明
引用文献3の記載事項アに基づけば、引用文献3には、請求項1に係る発明として次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、長鎖アルキル基含有化合物および帯電防止剤と、アクリル樹脂またはポリビニルアルコールとを含有する塗布液から形成された塗布層を有する積層ポリエステルフィルム。」

5 対比
本件発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「ポリエステルフィルム」は、本件発明の「ポリエステルフィルム」に相当する。

(2)引用発明の「塗布層」は、「ポリエステルフィルムの少なくとも片面」に形成された層である。そうすると、引用発明の「塗布層」と本件発明の「離型層」とは、「ポリエステルフィルムの少なくとも片面」に設けられた「層」である点で一致する。

(3)引用発明の「塗布層」は、「長鎖アルキル基含有化合物および帯電防止剤と、アクリル樹脂またはポリビニルアルコールとを含有する塗布液から形成」されるものである。そうすると、引用発明の「塗布層」は、「帯電防止剤」を含有するといえる。
したがって、引用発明の「塗布層」は、本件発明の「帯電防止剤」を含有するという要件を満たしている。

(4)引用発明及び本件発明の全体構成からみて、引用発明の「積層ポリエステルフィルム」と本件発明の「フォトレジスト用保護フィルム」とは、「フィルム」の点で共通する。

(5)一致点及び相違点
以上より、本件発明と引用発明とは、
「ポリエステルフィルムの少なくとも片面に層を有し、当該層が帯電防止剤を含有するフィルム。」である点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
[相違点1]ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられた「層」が、本件発明は「離型剤」を含有する「離型」層であるのに対し、引用発明の「塗布層」は離型剤を含有する離型層であるか一応明らかでない点。
[相違点2]帯電防止剤の「数平均分子量」が、本件発明は「1000?500000」であるのに対し、引用発明は数平均分子量を特定していない点。
[相違点3]ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられた「層」が、本件発明は、「メラミン化合物を用いて形成されたものであり、当該メラミン化合物が、エーテル化したアルキロール基がエーテル化していないアルキロール基に対して0.5?5当量の範囲であるアルキロール化メラミン誘導体である」のに対し、引用発明は、そのように特定していない点。
[相違点4]「フィルム」が、本件発明は「フォトレジスト用保護」フィルムであるのに対し、引用発明は、その用途を特定していない点。

6 判断
(1)[相違点1]について
引用文献3の記載事項ウには、「本発明のフィルムの塗布層の形成に使用する長鎖アルキル基含有化合物は、フィルムの離型性を向上させるために用いる。」(段落【0027】)と記載されている。当該記載に基づけば、引用発明の「長鎖アルキル基含有化合物」は、離型剤であるといえる。そして、引用発明の「塗布層」は、離型性を向上させた層であるから、離型層であるといえる。
したがって、上記[相違点1]は、実質的な相違点ではない。

(2)[相違点2]について
引用文献3の記載事項ウには、「塗布層の形成に使用する帯電防止剤とは、アンモニウム基含有化合物、・・・等のイオン導電性の高分子化合物や、・・・などのπ電子共役系の高分子化合物が挙げられる。これらはフィルムに帯電防止性を付与するために用いられる。これらの中でもイオン導電性の高分子化合物が好ましく、アンモニウム基含有化合物が特に好ましい。」(段落【0033】)及び「アンモニウム基含有化合物の数平均分子量は、通常1000?500000、好ましくは2000?350000、さらに好ましくは5000?200000である。分子量が1000未満の場合は塗膜の強度が弱かったり、耐熱安定性に劣ったりする場合がある。また分子量が500000を超える場合は、塗布液の粘度が高くなり、取扱い性や塗布性が悪化する場合がある。」(段落【0049】)と記載されている。また、引用文献3の実施例(記載事項エ)において用いられた帯電防止剤は、いずれも数平均分子量が1000?500000の範囲内である。これらの記載に基づけば、引用文献3には、数平均分子量が1000?500000の帯電防止剤を採用することが示唆されていたといえる。
したがって、引用発明における帯電防止剤として、上記示唆に基づいて、数平均分子量が1000?500000の帯電防止剤を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(3)[相違点3]について
引用文献3の記載事項ウには、「本発明のフィルムの塗布層の形成には、アクリル樹脂やポリビニルアルコール以外の各種のポリマーや架橋剤を併用することも可能である。」(段落【0055】)、「架橋剤の具体例としては、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。これら架橋剤の中でも架橋密度の高さの観点において、特にメラミン化合物を使用することが好ましい。」(段落【0066】)及び「メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。」(段落【0067】)と記載されている。これらの記載に基づけば、引用文献3には、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられた「層」を、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物を架橋剤として含む塗布液から形成することが示唆されていたといえる。
そうすると、引用発明の塗布層を、「メラミン化合物を用いて形成されたもの」とすること、そのメラミン化合物を、「エーテル化したアルキロール基」と「エーテル化していないアルキロール基」を有する部分的にエーテル化したアルキロール化メラミン誘導体とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。そして、部分的にエーテル化したアルキロール化メラミン誘導体を用いるに際し、そのアルキロール基がエーテル化していないアルキロール基に対してエーテル化したアルキロール機の割合を0.5?5当量の範囲とすることは、架橋剤としての反応性や溶媒への溶解性に鑑みて、当業者が最適化し得る範囲内の事項である。また、本願の明細書の記載を参酌しても、その割合を0.5?5当量の範囲としたことにより、格別な効果の差異が生じるということもできない。
したがって、引用発明の塗布層を、「メラミン化合物を用いて形成されたものであり、当該メラミン化合物が、エーテル化したアルキロール基がエーテル化していないアルキロール基に対して0.5?5当量の範囲であるアルキロール化メラミン誘導体」とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(4)[相違点4]について
引用文献3の記載事項イには、「本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、成形同時転写等の転写用、フレキシブルプリント配線板の製造用、プラスチックシート製造用の工程紙用等、各種工程中で用いられる工程用フィルムや、カバーテープなどの保護フィルムとして、静電気の発生を抑え、好適な離型性を有する、透明性に優れた離型ポリエステルフィルムを提供することにある。」(段落【0006】)と記載されている。また、引用文献3の記載事項オにも、「本発明の離型フィルムは、例えば、成形同時転写等の転写用、フレキシブルプリント配線板の製造用、プラスチックシート製造用の工程紙用等、各種工程中で用いられる工程用フィルムや、キャリアテープカバーテープなどの保護フィルムとして、特に剥離性、帯電防止性、および透明性を要求される用途において好適に利用することができる。」と記載されている。これらの記載に基づけば、引用発明の「積層ポリエステルフィルム」は、剥離性を要求される「保護フィルム」として好適に利用できるものであって、フレキシブルプリント基板の製造工程を含む、様々な用途に用いることができるという要件を備えたものである。
そして、「保護フィルム」を「フォトレジスト用」とした場合に、「ポリエステルフィルム」を採用することや、剥離性、帯電防止性及び透明性が優れること等、特許請求の範囲に記載された発明特定事項に加えて、物としての別の構成(例:別の特性)を具備することを限定していると理解することもできない。
したがって、上記[相違点4]は文言上相違するものであって、実質的な相違点ということができない。

(5)効果について
本願の明細書の段落【0013】の記載に基づけば、本件発明の効果は、「フォトレジスト層に対する離型性が優れ、静電気の帯電を抑えることが可能な離型フィルムを提供すること」であると認められる。
一方、引用文献3には、記載事項イに、「各種の工程用フィルムとして用いた際に、離型性や透明性に優れ、帯電の少ない離型ポリエステルフィルムを提供することができ」(段落【0009】)ると記載されている。そうすると、本件発明の効果は、引用文献3の記載から、当業者が予測できる範囲内のものであるといえる。

7 請求人の主張
審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、「引用文献3の記載にあたった当事者が、フォトレジストの保護フィルム用途ならではの課題である、「離型層が接触するフォトレジスト層への離型成分の移行を抑制し、保護フィルムを剥がした後、フォトレジスト層を銅箔や絶縁基板に貼り合わせた際の密着力が低下し、不良を引き起こすといった不具合の抑制」に着目し、エーテル化したアルキロール基がエーテル化していないアルキロール基に対して0.5?5当量の範囲であるアルキロール化メラミン誘導体を用いて離型層を形成することを容易に想到し、また当該構成により、上記課題を解決できることを当然に予想できるとは考えられません。」と主張している。
しかしながら、保護フィルムを構成する成分が保護対象へ浸透して不良を引き起こさないようにすることは、フォトレジストの保護フィルムに限られず、いずれの保護フィルムであっても、保護フィルムとして通常要求されることにすぎない。また、本願の明細書の記載を参酌しても、エーテル化したアルキロール基がエーテル化していないアルキロール基に対して0.5?5当量の範囲であるアルキロール化メラミン誘導体を用いたことによる効果が、当業者が予想できないとする根拠を見出せない。
以上のとおりであるから、審判請求人の主張は採用できない。

8 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-09-09 
結審通知日 2020-09-15 
審決日 2020-09-29 
出願番号 特願2016-66388(P2016-66388)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 純平  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 神尾 寧
宮澤 浩
発明の名称 フォトレジスト用保護フィルム  
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