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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B29C
管理番号 1368510
審判番号 不服2019-7954  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-14 
確定日 2020-11-16 
事件の表示 特願2014-261352「複合容器およびその製造方法,複合プリフォームならびにプラスチック製部材」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月 7日出願公開,特開2016-120641〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年12月24日に出願された特願2014-261352号であり,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成30年10月 1日付け:拒絶理由通知
平成30年12月 3日 :意見書及び手続補正書の提出
平成31年 3月15日付け:拒絶査定
令和 1年 6月14日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和 2年 5月 1日付け:拒絶理由通知
令和 2年 6月29日 :意見書及び手続補正書の提出(以下,この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)

第2 本願発明
(1)本願発明1
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下,「本願発明1」という。)は,以下のとおりである。
「複合容器において,
プラスチック材料製の容器本体と,
前記容器本体の外面に緑色プラスチック製部材と,を備え,
前記緑色プラスチック製部材は,単層からなる収縮チューブであり,
前記緑色プラスチック製部材は,樹脂材料および着色剤を含んでなり,
前記容器本体および/または前記緑色プラスチック製部材に,ラベルが取り付けられており,
前記プラスチック製部材が,前記容器本体から剥離除去可能であり,
前記プラスチック製部材が,ポリエステル樹脂,ポリオレフィン樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリアミド樹脂またはこれらの共重合体から構成され,
前記容器本体は,胴部と,底部とを有し,
前記底部は,中央に位置する凹部と,この凹部周囲に設けられた接地部とを含み,
前記緑色プラスチック製部材は,前記胴部と,前記底部のうちの少なくとも前記接地部とを覆っていることを特徴とする複合容器。」

(2)本願発明7
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項7に係る発明(以下,「本願発明7」という。)は,以下のとおりである。
「複合プリフォームにおいて,
プラスチック材料製のプリフォームと,
前記プリフォームの外側を取り囲むように設けられた緑色プラスチック製部材とを備え,
前記緑色プラスチック製部材が,前記プリフォームの外側に密着され,
前記緑色プラスチック製部材は,単層からなる収縮チューブであり,樹脂材料および着色剤を含んでなり,
前記プラスチック製部材が,前記プリフォームから剥離除去可能であり,
前記プラスチック製部材が,ポリエステル樹脂,ポリオレフィン樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリアミド樹脂またはこれらの共重合体から構成され,
前記プリフォームは,胴部と,底部とを有し,
前記緑色プラスチック製部材は,前記胴部と,前記底部の全域とを覆っていることを特徴とする複合プリフォーム。」

第3 拒絶の理由
令和 2年 5月 1日付けで当審が通知した拒絶理由は,次のとおりのものである。
「1)本件出願の請求項1-10に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・・・
よって,本件発明7は,引用文献3発明Cと,引用文献2の記載事項及び周知技術によって,当業者が容易に発明をすることができたものである。
・・・
よって,本件発明1は,引用文献2発明A,引用文献3の記載事項,引用文献5の記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
・・・
<引用文献等一覧>
3.特表2004-532147号公報
2.特開2002-68202号公報
5.特開2001-130520号公報(周知技術を示す文献)」

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
引用文献2には以下の記載がある。下線については当審において付与している部分がある。
「【請求項1】 口部,胴部及び底部を備えたボトル基体と,該ボトル基体の胴部の外面に被覆された熱収縮性の紫外線遮断フィルム層と,該ボトル基体の底部の外面に施された剥離性の紫外線遮断インキ層とから成ることを特徴とする紫外線遮断性ボトル。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,外面に紫外線遮断層を有するボトルに関し,より詳細には,優れた外観特性,紫外線遮断性能及びリサイクル性にも優れたボトルに関する。
【0002】
【従来の技術】従来,ビール,ワイン,日本酒,炭酸飲料等の流通には,茶色や褐色,緑色等に着色されたガラス或いはプラスチック製のボトルが広く使用されている。即ち,これらの飲料では,紫外線により変色を生じたり,香味成分が分解乃至変質して風味が低下する傾向があるが,前記着色ボトルでは器壁を通しての紫外線透過を抑制し,風味の維持を行うものである。」
「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば,口部,胴部及び底部を備えたボトル基体と,該ボトル基体の胴部の外面に被覆された熱収縮性の紫外線遮断フィルム層と,該ボトル基体の底部の外面に施された剥離性の紫外線遮断インキ層とから成ることを特徴とする紫外線遮断性ボトルが提供される。本発明は,任意の材料からなるボトルに適用できるが,ボトル基体が少なくとも胴部が二軸延伸されたポリエステルボトルであることが好ましい。本発明において,紫外線遮断フィルム層と紫外線遮断インキ層との位置関係は,ボトルの胴部及び底部の全面がこれらにより被覆されている限り,任意の位置関係にあってよいが,紫外線遮断インキ層の周縁部の上に紫外線遮断フィルム層が重なる位置関係でボトル基体上に両層が設けられていることが最も好ましい。
【0008】
【発明の実施形態】[作用]本発明では,ボトル基体の胴部に対しては熱収縮性の紫外線遮断フィルム層の被覆,及びボトル基体の底部に対しては剥離性の紫外線遮断インキ層のコーティングという,施用分離型の2種類の被覆を設けたことが特徴であり,これにより,ボトルの胴部及び底部の全面にわたって紫外線遮断層を形成して,ボトルの紫外線遮断性を向上させることができると共に,ボトルの胴部及び底部の全面にわたって紫外線遮断層を滑らかに形成できるので,ボトルの自立性を損なわずにその外観特性を向上させることができ,また,使用済みボトルの回収及び再利用に際して,紫外線遮断層の剥離によるボトルからの分離が容易に行われ,しかもボトル自体が着色されていないため,他の回収透明ボトルとの混合使用が可能となり,ボトルのリサイクル性にも優れているという利点が達成される。」
「【0010】更に,ボトルの底部に設けられた紫外線遮断インキ層は,剥離性であるので弱アルカリ性液などでの洗浄に際して,ボトル底部から容易に剥離でき,またボトルの胴部に設けられた紫外線遮断フィルム層はその収縮力で胴部に密着しているので,このフィルム層に切れ目或いは裂け目を入れることにより,容易に胴部から分離することができ,使用済みボトルのリサイクルが容易に行われることになる。
【0011】本発明に用いるボトル基体の一例を示す図1の右半面の断面図において,ボトル基体10は,胴部11及び底部12を有しており,胴部11の上部には肩部13を介して口頸部14に接続されている。底部12は胴部との接続コーナー部15,周状の接地部16及び上方に突出したドーム部17を備えている。口頸部14にはキャップ(図示せず)との密封用口部18があり,その下方外周には,キャップ巻締用のネジ19及びサポートリング19aが設けられている。
【0012】本発明の紫外線遮断性ボトルの外面を示す図1の左半面において,この紫外線遮断性ボトル20は,底部12の外表面全面を覆うように施された紫外線遮断インキ層22及び胴部11の外表面全面を覆うように施された熱収縮性の紫外線遮断フィルム層21からなっている。
【0013】このボトルにおけるインキ層22及びフィルム層21の周辺部を拡大して示す図2において,底部コーナー部15にはインキ層22が設けられており,このインキ層22の上に重なる関係でフィルム層21が設けられている。図2に示したインキ層22とフィルム層21との配置では,インキ層及びフィルム層の配置に誤差がある場合にも,ボトルの胴部及び底部の全面に隙間を生じることなしに紫外線遮断層を形成できると共に,熱収縮によるフィルム層のボトル胴部への密着が,コーナー部を巻き込む形で行われるので,フィルムの胴部への密着固定が確実なものとなるという利点も得られる。
【0014】[ボトル基体]本発明は,プラスチック或いはガラスから形成された任意のボトルに適用することができるが,特にリサイクルが要求されているプラスチック材料からなるボトルに有利に適用することができる。ボトルを構成する樹脂は,延伸ブロー成形可能なプラスチック材料であれば,任意のものを使用し得るが,熱可塑性ポリエステル,特にエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルが有利に使用される。勿論,ポリカーボネートやアリレート樹脂等を用いることもできる。」
「【0020】[熱収縮性の紫外線遮断フィルム層]紫外線遮断フィルム層は,熱収縮性の合成樹脂フィルムからなり,紫外線遮断効果を付与するために,顔料,染料等の着色剤,紫外線吸収剤等の紫外線遮断剤等が含有されている。
(1)フィルム材料
フィルムを構成する合成樹脂としては,一般に熱収縮性フィルムに使用される樹脂を使用することができる。例えば,ポリ塩化ビニル樹脂,ポリ塩化ビニリデン樹脂等の塩素含有樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン,ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂などを挙げることができる。耐引裂強度,耐傷性の観点から,ポリエステル樹脂からなる熱収縮性フィルムが好ましく,特に二軸延伸されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが最も好ましい。」
「【0027】(2)紫外線遮断剤
上記熱収縮性フィルムには,紫外線遮断性を付与するため,顔料,染料等の着色剤,紫外線吸収剤等の紫外線遮断剤を配合する。着色剤としては,顔料,染料,加飾剤などが挙げられ,これには,酸化チタン,炭酸カルシウム,酸化亜鉛,タルク,べんがら,硫酸バリウム,酸化鉄,群青,カーボンブラック等の無機顔料;アゾ系,イソインドリノン系,アントラキノン系,ペリノン系,ペリレン系,キナクリドン系,フタロシアニン系,チオインジゴ系,ジオキサジン系,複素環系等の有機顔料;ペリノン系,チオインジゴ系等の染料,メタル粉,雲母,貝殻,蛍光体等の加飾剤などが含まれる。
【0028】染料や顔料をその色別に分類すると次の通りである。
(中略)
緑色染顔料
クロムグリーン,酸化クロム,ピグメントグリーンB,マラカイトグリーンレーキ,ファナルイエローグリーンG。」
「【0031】(3)熱収縮性フィルムの製造方法
合成樹脂フィルムは,例えば以下の方法によって熱収縮性を付与される。先ず合成樹脂材料を乾燥させた後,溶融し,ダイから溶融押出し,キャスト法またはカレンダー法等で原反フィルムを形成する。次いで,この原反フィルムを該合成樹脂のガラス転移温度(Tg)より3℃以上高い温度,好ましくは5℃以上高い温度で縦方向あるいは横方向に1.5?5.0倍,好ましくは1.0?4.8倍に延伸し,高い収縮率をフィルムに付与する。さらに,必要に応じて前記延伸方向と直角方向に1.0?1.8倍,好ましくは1.0?1.5倍に延伸する。これは,フィルムの引張強度を向上させ,前記延伸方向の収縮を必要以上に収縮させないために有効である。
【0032】フィルムの延伸は,同時二軸延伸,逐次二軸延伸,一軸延伸等の方法により行われ,縦方向の延伸と横方向の延伸はどちらを先に延伸してもよい。延伸された熱収縮性フィルムは,そのまま製品として使用することも可能であるが,寸法安定性などの点から50?150℃の温度で,数秒から数十秒の熱処理を行ってもよい。このような熱処理を行うことにより,フィルムの収縮方向の収縮率の調整,未収縮フィルムの保存時の経時収縮の減少,収縮斑の減少などの好ましい性質を発現させることができる。熱収縮性フィルムの厚さは特に限定されるものではないが,1?600μm,特に10?300μm,特に20?70μmの範囲のものが実用的には使われる。」
「【0052】[紫外線遮断性ボトルの製造方法]本発明の紫外線遮断性ボトルは,該ボトル基体の胴部の外面には熱収縮性の紫外線遮断フィルム層が被覆されており,該ボトル基体の底部の外面には剥離性の紫外線遮断インキ層が施されている。本発明では,フィルム層とインキ層とを別個にボトル基体に施すこともできるし,フィルム層とインキ層とがボトル胴部と底部との境界部で重なり合うように設けることもできる。特に,インキ層の周縁部の上に紫外線遮断フィルム層が重なる位置関係でボトル基体上に両層が設けられていることが好ましい。
【0053】フィルム層は,前述した熱収縮性のフィルムをボトル胴部に巻き付けるか或いは筒状に成形されたフィルムでボトル胴部を覆い,熱収縮温度に加熱することにより設けることができる。熱収縮温度は,通常,50乃至200℃であるが,プラスチックボトルの場合,ボトルが軟化しないように温度と時間を調節して収縮させる。一方,インキ層は,前述したインキ組成物を底部外面に塗布し,硬化乃至乾燥することにより施すことができる。硬化乃至乾燥の温度は,通常,50乃至150℃であるが,この場合もボトルが軟化しないように温度と時間を調節して行う。 本発明では,インキ層は底部外面にのみ施すので,例えば,ボトル基体を浅いインキ溜めに浸漬するという極めて簡単な塗布方法を採用できる利点がある。しかも,塗布面積が底部外面のみであるから狭く,続く硬化乃至乾燥工程が短時間で行うことができる。」
「【0058】[紫外線遮断性被覆の剥離方法(ボトルの再生方法)]フィルム層は,切れ目或いは裂け目を入れることにより,容易に剥離できる。或いは,前述した熱収縮性のフィルムに予め弱化線を設けておき,この弱化線に沿ってフィルムを引き裂くことにより,フィルム層とボトル基材とを容易に分離することができる。一方,インキ層は,インキ層を,加熱,処理液に浸漬,等の剥離処理を施すことにより,底部から剥離することができる。」
「【図1】



(2)引用文献2に記載された発明
上記(1)の記載からみて,引用文献2には請求項1に係る発明の一態様として下記の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認める。
「紫外線遮断性ボトルにおいて,
プラスチック材料からなるボトル基体と,
前記ボトル基体の外面に被覆された熱収縮性の合成樹脂フィルムよりなる紫外線遮断フィルム層と,前記ボトル基体の底部の外面に被覆された剥離性の紫外線遮断インキ層と,を備え,
前記紫外線遮断フィルム層は,樹脂に緑色染顔料が配合されたものであり,
前記紫外線遮断フィルム層はボトル基体と容易に剥離分離可能であり,
前記紫外線遮断フィルム層はポリスチレン樹脂,ポリエチレン又はオレフィン系樹脂からなり,
前記ボトル基体は,胴部と,底部とを有し,
前記底部は,中央に位置する上方に突出したドーム部と,このドーム部周囲に設けられた接地部とを含み,
前記紫外線遮断フィルム層は,前記胴部を覆っている,
紫外線遮断性ボトル。」

2 引用文献3について
(1)引用文献3の記載事項
「【請求項22】
容器の製造のためにブロー成形法に有用なプレフォーム;及びプレフォームの外面の少なくとも一部の上にフィットしたラベルスリーブを含んでなる,ラベル付き容器の製造に使用できるスリーブ付きプレフォーム。」
「【0004】
別のより最近の進展は,シュリンクフィット又は「輪郭(contour)」ラベルの使用である。これらのラベルは,配向(又は延伸)(oriented)フィルム原料上に印刷することによって作られる。フィルムはチューブ状にされ(代表的には一方の縁を溶剤接着することによって),容器を覆うように配位され,ボトルの周囲で「熱収縮」させられる。熱収縮は通常,配向されたラベルを容器の周囲で収縮させることができる充分に高い温度の加熱トンネル中で行われる。加熱トンネルの通過時に,配向フィルム/ラベルは,容器の形状にぴったりとフィットするように収縮する。フィルムは,容器に「ぴったりとフィットする(form-fitting)」ことによって容器の形を取る。ラベルは通常,ゆがみ印刷法(distortion printing process)を用いて印刷される。この方法は,フィルム及びインクパターンの寸法の最終変化を有効に補正する。
【0005】
この熱収縮,輪郭フィット法(contour-fitting process)は,フィルムが適切に配向されれば,種々の異なるポリマーを用いて行うことができる。これらのポリマーとしては,ポリエステル及びコポリエステル,ポリ塩化ビニル(PVC),ポリオレフィン(ポリエチレン,ポリプロピレンなど),ポリアミド及びポリスチレンが挙げられるが,これらに限定されない。しかし,フィルムの収縮に使用する温度は,通常,ボトルのガラス転移温度(「Tg」)のちょうど低い温度(just below)であるが,ボトルが収縮トンネルと通過するときに変形しない程度に低いことが重要である。」
「【0010】
本発明の更に別の目的は,ストレッチブロー成形プロセスを用いてラベル付き容器を製造するのに有用なスリーブ付きプレフォームを提供することにある。」
「【0016】
更に別の側面において,本発明は,容器を製造するためにブロー成形法において使用できるプレフォーム及び前記プレフォームの外面の少なくとも一部の上にフィットしたラベルスリーブから製造されるスリーブ付きプレフォームを提供する。スリーブ付きプレフォームは,本発明の方法に従って製造されるラベル付き容器の製造に有用である。
【0017】
本発明において有用な好ましいラベルスリーブは,容器を製造するためのプレフォームのブロー成形前にプレフォームの上にフィットするように作られたゆがみ印刷ラベルスリーブである。このラベルスリーブは,インフレート用プレフォームと共に膨張する配向又は非配向(unoriented)ポリマーフィルム原料から製造する。スリーブは非配向フィルム素材から製造するのが好ましいが,これは得られるスリーブは,ブロー成形プロセスの間にプレフォームと共に延伸されることになるからである。ラベルスリーブに非配向ポリマーフィルム原料すると,フィルムの配向に必要な追加の幅出機又はダブル-バブル工程を排除することによって,フィルム原料製造プロセスが単純化される。また,配向工程は実施に費用がかかり,容器の収縮フィルムラベリングプロセスのコストを増す。別の実施態様においては,スリーブは二軸配向又は一軸配向フィルム素材から製造する。」
「【0019】
ラベルフィルム原料は,ブロー成形プロセスの間に必要な延伸条件に耐えられる任意のポリマーから製造する。一般には,このために必要なのは,ポリマーが,選択ブロー温度よりも低いガラス転移温度(「Tg」)を有するか(多くのソーダボトルに使用されるPETは77℃のTgを有する),ラベルスリーブがブロー成形の直前に適当に加熱されることである。本発明では,約23?約110℃の温度において裂けずにかなり変形できる任意のポリマーが機能するであろう。多くのこのようなポリマーが当業者には知られている。適当なポリマーとしては,ポリエステル,コポリエステル,ポリオレフィン,ポリアミド,エチルビニルアルコール(「EVOH」),エラストマーブレンド,エラストマーブレンドのコポリマー及びそれらの混合物が挙げられるが,これらに限定されない。ポリエステル,コポリエステル並びにポリエチレン及びポリプロピレンのようなポリオレフィンが好ましい。ポリ(エチレンテレフタレート)(「PET」)のようなポリエステル及びコポリエステルは,容器と類似した配向特性を有するので,延伸プロセスはインフレート用プレフォームによりよく適合する。ポリプロピレンは,低コストであり且つその密度が水よりも低いために再循還流において浮遊によって容易に分離されることから,現在のところ当業界において最適のラベル材料であるので好ましい。
【0020】
この方法で使用するラベルスリーブには,当業者によく知られた方法を用いて所望のラベルデザインを印刷しなければならない。好ましくは,ブロー成形プロセスの間にフィルムが受けるであろう膨張を補正するゆがみ印刷を使用する。膨張は場所によって異なる,即ち,容器のネックは側壁よりも膨張が少ないので,ゆがみ印刷パターンはそれに応じて変化させなければならないであろう。印刷は通常,フラットフィルム上で行い,スリーブチューブを作るにはフラットフィルムの両縁をつなぎ合わせなければならない。しかし,インフレート法を用いてフィルムを形成する場合には,スリッチング(slitting)及び再接着プロセスを経ずに直接チューブに印刷することが可能である。特定用途のための最も望ましいラベルスリーブ印刷法は,所望のパターン及び容器の製造に使用できる装置の型によって異なるであろう。更に,インフレートフィルムは,印刷の必要はなく,機能添加剤が望ましい用途に適している。例えば,着色剤又は顔料をポリマーに添加して,着色ラベルスリーブを作成できる。同様に,UV遮断コンセントレート,バリヤー層又は他の機能添加剤を,ラベルスリーブの作成に使用するポリマーに取り入れることができる。同様に,顔料添加チューブをプレフォームの周囲にフィットさせて,容器の色全体を変化させ,次いで,顔料添加チューブの上部を覆うように従来の貼り付けラベルを適用することができる。」
「【0025】
ラベルスリーブは,プレフォームの上に配置させることができるように,少なくとも一端は開いていなければなならない。場合によっては,スリーブは一端で閉じてチューブを形成してもよいし,側壁となる部分の一部のようなプレフォームの小部分を被覆してもよいし,あるいはプレフォームベースのネジ山のすぐ下から底までプレフォーム全体をほとんど被覆してもよい。
【0027】
本発明において使用するプレフォームは,ポリエステル,ポリオレフィン及びポリカーボネートのような従来の成形用ポリマーから形成する。ポリマーは単層又は多層であることができる。他のポリマーを使用して,多層容器の一部の層を形成することもできる。このようなポリマーは当業界で公知であり,リサイクルポリマー,例えばポリエステル,機能性ポリマー(performance polymers),例えばEVOH及びポリアミド,全芳香族ポリエステル,ポリエーテル,ブレンド並びにそれらのコポリマーを含む。」
「【0036】
ラベルは種々のポリマーから作ることができるので,現位置輪郭フィットラベルの使用はまた,他の機能的可能性を追加する。例えばラベルは容器の透過性の低下を促進するためにEVOH又はメタジレンジアミン(「MXD6」)のような高バリヤーポリマーから作ることができる(単層又は共押出により多層として)。ボトルとラベルとの密着度もまた,樹脂の選択によって左右され得る。PETボトルにPETラベルを用いた試験はかなりの密着を生じたが,ポリプロピレンラベルはPETボトルには貼り付こうとしなかった。密着が必要か否かは通常,リサイクルのための剥離が課題であるか否かによって決まる。」
「【0039】
例1
PETスリーブを用いた2リットルボトル用輪郭ラベリング
インフレート法を用いて,わずかに配向されたPET 12822フィルムのスリーブを作った。これらのスリーブは,直径が1.44インチであり,呼称厚さが4milであった。ラベリングをシミュレートするために,マジックインキを用いて試験前のスリーブにグリッドパターンを描いた。使用したプレフォームは,外径1.15インチの2リットルボトル用プレフォームである。スリーブは,プレフォームよりもかなり大きかったが,これは試験時に使用できる唯一のスリーブ直径であった。」
【0043】
例3
IR加熱前にスリーブを加える,PETを用いた1.5リットルの詰め替え可能ボトル用輪郭ラベリング
例1に使用したPETスリーブを,呼称外径1.25インチの1.5リットル用プレフォームに適用した。しかし,このプレフォーム及び金型の組み合わせは異なる再加熱ブロー成形機に取り付けたので,方法は少し変更しなければならなかった。実験時には,加熱とブロー成形の間に,プレフォームスリーブを取り付けるのに充分な時間,機械を停止させる方法がなかった。従って,プレフォームスリーブは,赤外線加熱工程を始開始し且つスリーブが加熱及びブロー成形プロセス全体を経る前にプレフォームの上に配置した。スリーブにはまた,黒のマジックインキでグリットを描いた。加熱工程の間に,スリーブはプレフォームの周囲で下に向かってわずかに収縮し,それによってスリーブとプレフォームとの密着が増したことが観察された。ブロー成形工程の間に,スリーブはうまく延伸し,グリッドは均一にゆがみ,見栄えがする形態にフィットするラベルを形成した。しかし,ボトルへの密着は,スリーブを加熱後に加えた例1の場合よりも強かった。これは,ラベルとボトルとをより長い時間一緒にする追加の加熱によるものであったとするのが最も可能性が高い。」

(2)引用文献3に記載された発明
上記(1)の記載からみて,引用文献3には請求項22に係る発明の一態様として下記の発明(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認める。
「ラベルスリーブ付きプレフォームにおいて,
成形用ポリマーから形成されるプレフォームと,
前記ラベルスリーブは前記プレフォームの外面の少なくとも一部の上にフィットしたラベルスリーブであり,
前記ラベルスリーブは,配向ポリマーフィルム原料から製造されたものであって,着色剤又は顔料をポリマーに添加した着色ラベルスリーブであり,
前記ラベルスリーブ原料は,ポリエステル,ポリオレフィン又はポリアミドから構成され,
前記プレフォームは,側壁と,底とを有する,
ラベルスリーブ付きプレフォーム。」

3 引用文献5について
引用文献5の記載事項
引用文献5には以下の記載がある。下線については,当審において付与している部分がある。
「【請求項2】 製造者ラベルが取り付けられている未使用の樹脂製ボトル,金属缶,ガラス瓶からなる容器を用いて,ラベル付き容器とするもので,
透明な熱収縮性のフィルムからなる筒形状の後付けラベルを宣伝広告用ラベルとして用意し,
上記容器の胴部の空き領域に,上記後付けラベルを被せた後に,所要温度の温水に浸けて,あるいは温風や蒸気を吹き付けて密着させ,製造者ラベルと共に後付けラベルを取り付けるラベル付き容器の作成方法。」
「【0002】
【従来の技術】近時,飲料水の容器として,PET(ポリエチレンテレフタレート)製の容器からなるペットボトルが急増している。これは,ペットボトルでは飲み口の蓋をネジ締めで開閉出来るため,一旦,飲み口をあけた後も蓋を締めると飲料水がこぼれず,よって,携帯可能であり,かつ,飲みたい時に飲みたいだけ飲める手軽さがあることによる。また,製造者側にとっても,ペットボトルは樹脂成形であるため,従来の飲料水用の金属缶がガラス瓶と異なり,容器の胴部や底部に凹凸を設けて独自のデザインを付与することが容易にできると共に,容器に表示する商品名や製造者記号は,熱収縮性フィルムからなるラベルに印刷を施しておき,このラベルを胴部に被せて加熱すれば,ラベルが熱収縮して容器表面に密着し,よって,簡単に所要の表示が行える利点がある。」
「【0008】また,廃棄される容器の再利用のみに限定されず,上記第2の発明に記載したように,製造者ラベルが取り付けられている未使用の容器を用いて,後付けラベルを宣伝広告用ラベルとして用意し,該後付けラベルを貼り付けることにより,企業広告媒体用の容器とすることができる。このように,ボトラー(飲料メーカー)が,その販売容器に他社の広告を取り付けることにより,ゴミ問題対策費をコストに組み込むことができ,お互いに利益を享受することができる。即ち,ボトラー,広告提供会社はもとよりゴミ対策が確実になされることにより国民全体も利益を受けることができる。」
「【0018】ペットボトル1への後付けラベル3の取り付けは,ユーザー自身で行い,図1に示すように,既存のラベル2を取り除いた部分に後付けラベル3を被せる。なお,既存のラベル2を取り付けた状態のままで,既存のラベル2の表面に後付けラベル3を被せてもよい。
【0019】後付けラベル3を胴部1bに巻き付けた後に,70℃?100℃の温水に浸し,あるいは,ドライヤーで温風や蒸気を吹き付けて後付けラベル3の熱収縮性のフィルム5を収縮させて,胴部1bの外周面に密着させて取り付ける。其の際,胴部1bに凹凸形状があってもフィルム5は印刷層6に表示されたデザインに歪みを発生させることなく凹凸形状に沿って密着させることができる。」

第5 対比・判断
1 本願発明1と引用発明2の対比・判断
本願発明1と引用発明2を対比する。
引用発明2の「紫外線遮断性ボトル」,「プラスチック材料からなるボトル基体」,「樹脂」及び「中央に位置する上方に突出したドーム部」は,それぞれ本願発明1の「複合容器」,「プラスチック材料製の容器本体」,「樹脂材料」及び「中央に位置する凹部」に相当する。
引用発明2の「紫外線遮断フィルム層」は「緑色染顔料が配合され」るものであるから「緑色」である。また,引用文献2の【0031】ないし【0032】に記載される製造方法から「単層」と認められる。
したがって,引用発明2の「前記ボトル基体の外面に被覆された熱収縮性の合成樹脂フィルムよりなる紫外線遮断フィルム層と,を備え,前記紫外線遮断フィルム層は,樹脂材料に緑色染顔料が配合されたものであり」なる事項は,本願発明1の「前記容器本体の外面に緑色プラスチック製部材と,を備え」,「前記緑色プラスチック製部材は,単層からなる収縮チューブであり」及び「前記緑色プラスチック製部材は,樹脂材料および着色剤を含んでなり」に相当する。
また,引用発明2の「前記紫外線遮断フィルム層はボトル基体と容易に剥離分離可能であり」なる事項は,本願発明1の「前記プラスチック製部材が,前記容器本体から剥離除去可能であり」に相当する。
そうすると,本願発明1と引用発明2とは,
「複合容器において,
プラスチック材料製の容器本体と,
前記容器本体の外面に緑色プラスチック製部材と,を備え,
前記緑色プラスチック製部材は,単層からなる収縮チューブであり,
前記緑色プラスチック製部材は,樹脂材料および着色剤を含んでなり,
前記プラスチック製部材が,前記容器本体から剥離除去可能であり,
前記プラスチック製部材が,ポリエステル樹脂,ポリオレフィン樹脂又はポリスチレン樹脂から構成され,
前記容器本体は,胴部と,底部とを有し,
前記底部は,中央に位置する凹部と,この凹部周囲に設けられた接地部とを含み,
前記紫外線遮断フィルム層は,前記胴部を覆っている,複合容器。」
の点で一致し,下記の相違点で相違する。

<相違点1-1>
本願発明1は,「前記容器本体および/または前記緑色プラスチック製部材に,ラベルが取り付けられており,」という特定がなされているが,引用発明2はそのような特定がなされていない点。

<相違点1-2>
容器本体の胴部を覆う緑色プラスチック製部材について,本願発明1はさらに「前記底部のうちの少なくとも前記接地部とを覆っている」という特定がなされているが,引用発明2はそのような特定がなされていない点。

以下,相違点について検討する。
相違点1-1について
上記第4の3の引用文献5の記載事項で示されるように,熱収縮性フィルムよりなるラベル,すなわち収縮性のプラスチック製部材,を胴部に被せた容器において,空き領域またはラベルの上から熱収縮性のフィルムからなる別のラベルを後付けで設けることは本願出願時における周知技術(以下,「周知技術1」という。)である。
そして,引用発明2は,容器本体の外面に収縮チューブである緑色プラスチック製部材を備えたものであるから,熱収縮性フィルムよりなるプラスチック製部材を胴部に被せた容器における周知技術1を採用し,容器本体または緑色プラスチック製部材にラベルが取り付けられた容器とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

相違点1-2について
引用発明2の紫外線遮断フィルム層の位置について,引用文献2の【0007】には,「本発明において,紫外線遮断フィルム層と紫外線遮断インキ層との位置関係は,ボトルの胴部及び底部の全面がこれらにより被覆されている限り,任意の位置関係にあってよい」と記載されている。
ここで,遮光性のシュリンクラベルとそれ以外の遮光性の被覆部材とを用いてボトルに遮光性を付与する際の遮光性のシュリンクラベルと遮光性の被覆部材との位置関係について,遮光性のシュリンクラベルがボトルの胴部及び接地部までを覆うようにすることは例えば特開2006-82854号公報の図1に示されるように本願出願時における周知技術である(以下,「周知技術2」という。)。
してみると,引用発明2における,紫外線遮断フィルム層と紫外線遮断インキ層との位置関係を定める際に,紫外線遮断フィルム層を胴部のみならず接地部までを被覆するものとすることは周知技術2に基いて当業者が容易になし得たものである。

また,これらの相違点に係る発明特定事項を総合的に判断しても,これらの相違点に係る発明特定事項から当業者が想到し得ないほどの格別の効果が奏されるものであるとも解されない。

したがって,本願発明1は,引用発明2,引用文献5に記載された事項並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 本願発明7と引用発明3の対比・判断
本願発明7と引用発明3を対比する。
引用発明3の「ラベルスリーブ付きプレフォーム」,「成形用ポリマーから形成されたプレフォーム」,「ラベルスリーブ」,「側壁」及び「底」は,それぞれ本願発明7の「複合プリフォーム」,「プラスチック材料製のプリフォーム」,「プラスチック製部材」,「胴部」及び「底部」に相当する。
引用発明3の「前記ラベルスリーブは前記プレフォームの外面の少なくとも一部の上にフィットしたラベルスリーブであり」なる事項は,本願発明7の「前記プリフォームの外側を取り囲むように設けられた」「プラスチック製部材」と「プラスチック製部材がプリフォームの外側に密着され」なる事項に相当する。
引用発明3の「着色剤又は顔料をポリマーに添加した着色ラベルスリーブ」なる事項は,本願発明7の「前記プラスチック製部材」が「樹脂および着色剤を含んでなり」なる事項に相当する。
引用発明3の「前記ラベルスリーブを配向ポリマーフィルム原料から製造されたものであって」について,引用文献3の【0004】,【0017】,【0039】及び【0043】の記載,すなわち配向フィルム原料によって熱収縮が引き起こされること,わずかに配向したフィルム原料からなるラベルスリーブが実際に熱収縮を引き起こすものであること,から引用発明3において「ラベルスリーブ」を配向ポリマーフィルム原料から製造されたものとすることは,「プラスチック製部材」を「収縮チューブ」とするものであると認められる。
してみると,本願発明7と,引用発明3とを対比すると,両者は,
「複合プリフォームにおいて,
プラスチック材料製のプリフォームと,
前記プリフォームの外側を取り囲むように設けられたプラスチック製部材とを備え,
前記プラスチック製部材が,前記プリフォームの外側に密着され,
前記プラスチック製部材は,収縮チューブであって,樹脂材料および着色剤を含んでなり,
前記プラスチック製部材が,ポリエステル樹脂,ポリオレフィン樹脂又はポリアミド樹脂から構成され,
前記プリフォームは,胴部と,底部とを有し,
前記プラスチック製部材は,前記胴部を覆っている複合プリフォーム。」
の点で一致し,以下の点で相違している。

<相違点7-1>
プラスチック製部材の着色に関し,本願発明7は「緑色」と特定するのに対し,引用発明3はそのように特定しない点。

<相違点7-2>
収縮チューブであるプラスチック製部材について,本願発明7は,「単層」と特定するのに対し,引用発明3はそのように特定しない点。

<相違点7-3>
プラスチック製部材について,本願発明7は,「前記プリフォームから剥離除去可能であり」と特定するのに対し,引用発明3はそのように特定しない点。

<相違点7-4>
プラスチック製部材について,本願発明7は,「前記緑色プラスチック製部材は,前記胴部と,前記底部の全域とを覆っている」と特定するのに対し,引用発明3はそのように特定しない点。

上記相違点について検討する。
相違点7-1について
引用発明3のラベル付きプリフォームにおける,着色ラベルスリーブの作成に関しては,引用文献3の【0020】に「同様に,UV遮断コンセントレート,バリヤー層又は他の機能添加剤を,ラベルスリーブの製造に使用するポリマーに取り入れることができる」と記載されている。そして,引用文献2の【0002】,【0020】,【0028】によれば,容器あるいは容器の外周に設けたフィルム層に着色を施して紫外線の遮断を行うこと,この着色にあたって緑色染顔料を用いることが出願時に周知であったと言える。さらに,着色の際に緑色の着色剤を用いることも周知慣用技術である。
してみると,引用発明3におけるラベルスリーブに,紫外線の遮断の効果を意図する,あるいは外観の向上を意図する等の理由に基づいて,着色を緑色とすることは引用文献2に記載の事項や周知慣用技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

相違点7-2について
引用発明3のラベルスリーブについて,引用文献3の【0036】にはラベルを単層とすることも選択肢として示されており,引用発明3において,ラベルスリーブを単層とすることは当業者が適宜に選択してなし得たものであり格別のことでもない。

相違点7-3について
引用文献3の【0036】には,ボトルとラベルとの密着度を樹脂の選択によって左右すること,密着が必要か否かをリサイクルのための剥離が課題であるか否かによって決めること,リサイクルの間に容易に剥がすことができるものとすることが示されている。そして,このような樹脂の選択を行った場合において,ブロー成形後のボトルとラベルの剥離容易性よりもブロー成形前のプレフォームとラベルスリーブの剥離容易性がより高くなることが常識的に明らかであり,引用発明3において,ラベルスリーブをプリフォームから剥離除去可能なものとすることは当業者が容易に想到し得たことである。

相違点7-4について
引用文献3の【0025】には,「プレフォームベースのネジ山のすぐ下から底までプレフォーム全体をほとんど被覆してもよい」とすることが記載されている。
ここで,装飾的なラベルである外装材をプリフォームの外側に設ける際に,胴部と底部の全域とを覆うものとすることは例えば特開2006-239885号公報の【0012】ないし【0013】,図2及び4に示されるように周知技術である(以下,「周知技術3」という。)。
してみると,引用発明3のラベルスリーブで,ネジ山のすぐ下から底までを被覆する際に底についてはその全域を覆うものとすること,すなわち,プリフォームの「胴部」と「底部の全域」とを覆う構成とすることは周知技術3に基いて当業者が容易に想到し得ることである。

また,これらの相違点に係る発明特定事項を総合的に判断しても,これらの相違点に係る発明特定事項から当業者が想到し得ないほどの格別の効果が奏されるものであるとも解されない。

したがって,本願発明7は,引用発明3,引用文献2に記載された事項並びに周知技術3及び周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明1は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2に記載された発明,引用文献5に記載された事項並びに周知技術1及び2に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
また,本願発明7は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献3に記載された発明,引用文献2に記載された事項並びに周知技術3及び周知慣用技術に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,本願は,その余の請求項に係る発明について判断するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-09-07 
結審通知日 2020-09-08 
審決日 2020-10-02 
出願番号 特願2014-261352(P2014-261352)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 辰己 雅夫  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 大島 祥吾
神田 和輝
発明の名称 複合容器およびその製造方法、複合プリフォームならびにプラスチック製部材  
代理人 末盛 崇明  
代理人 中村 行孝  
代理人 浅野 真理  
代理人 朝倉 悟  
代理人 永井 浩之  

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