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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  H04N
管理番号 1368522
審判番号 無効2017-800123  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-09-11 
確定日 2020-11-27 
事件の表示 上記当事者間の特許第4695583号発明「表示装置、コメント表示方法、及びプログラム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 経緯
1 本件出願の経緯
本件特許第4695583号に係る出願は、平成18年12月11日の出願であって、平成23年3月4日に設定登録されたものであり、登録時の請求項の数は15である。

2 本件審判の経緯
本件無効審判における手続の経緯は、概要、以下のとおりである。

平成29年 9月11日 無効審判請求書(請求人)
(甲第1号証から甲第12号証添付)
平成29年12月15日 答弁書(被請求人)
平成30年 1月29日 審理事項通知書(合議体)
平成30年 2月15日 口頭審理陳述要領書(請求人)
(差出日) (甲第13号証から甲第19号証添付)
平成30年 3月 1日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
(乙第1号証及び乙第2号証添付)
平成30年 3月 8日 上申書(請求人)
平成30年 3月14日 上申書(請求人)
(甲第20号証から甲第22号証添付)
平成30年 3月14日 審理事項通知書(合議体)
平成30年 3月19日 証拠説明書(請求人)
平成30年 3月19日 口頭審理
平成30年 4月23日 上申書(被請求人)
平成30年 5月25日 上申書(請求人)

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし15に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明15」、あるいは、これらを総称して「本件特許発明」という。)。
なお、本件特許発明の各構成の符号は、審判請求書の記載を元に付与したものであり、以下、構成1A?構成3Lと称する。

[本件特許発明1](請求項1)
(1A)複数の端末装置から送信されるコメント情報を受信して各端末装置へ配信するコメント配信サーバと、前記コメント配信サーバに接続され動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置とを有するコメント表示システムにおける表示装置であって、
(1B)コメントと、前記コメントが付与された時点における、前記動画の最初を基準として動画の経過時間を表す動画再生時間をコメント付与時間として前記コメントに対応づけてコメント情報として記憶するコメント情報記憶部と、
(1C)前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信し、前記コメント情報記憶部に記憶する受信部と、
(1D)前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間が対応づけられたコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、読み出したコメントを動画上に表示するコメント表示部と、
(1E)前記コメント表示部によって表示されるコメントのうち、第1のコメントと第2のコメントとのうちいずれか一方または両方が移動表示されるコメントであり、前記第1のコメントを動画上に表示させる際の表示位置が、当該第1のコメントよりも先に前記動画上に表示される第2のコメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部と、
(1F)前記判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合に、前記第1のコメントと前記第2のコメント同士が重ならない位置に表示させる表示位置制御部と、
(1G)を有することを特徴する表示装置。

[本件特許発明2](請求項2)
(2H)前記表示位置制御部は、前記動画の表示領域のうち、コメントを表示する基準となる位置を表す基準位置に従って第2のコメントが表示された後に前記第1のコメントを表示する際に、前記判定部が前記コメントが重なると判定した場合に、前記第1のコメントの基準位置を前記第2のコメントの基準位置とは異なる位置に変更して表示する
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。

[本件特許発明3](請求項3)
(3J)前記第1のコメントと前記第2のコメントとの両方が所定の方向に移動表示するコメントであり、
(3K)前記コメント表示部は、前記コメントが前記表示領域内に現れてから表示領域外に移動して消えるまでの時間であるコメント表示時間と前記コメントの表示が開始される文字から表示が終了する文字までの前記所定の方向における文字列の幅とに基づいて決定される移動速度で前記コメントを移動させつつ、前記画面上に表示を行い、
(3L)前記判定部は、各コメントを前記移動速度で移動させて表示させた場合、前記第2のコメントが移動し終わるまでに前記第1のコメントが追いつく場合に、前記第1のコメントと前記第2のコメントとの表示位置が重なるものとして判定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。

[本件特許発明4](請求項4)
前記コメント表示部は、前記コメント表示時間を変更して前記コメントを表示させる機能を有し、
前記判定部は、前記コメント表示部によって変更された後のコメント表示時間に基づいて、コメントの表示位置が重なるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項3記載の表示装置。

[本件特許発明5](請求項5)
前記第1のコメントと第2のコメントは、いずれか一方が固定位置で表示されるコメントであり、他方が移動表示されるコメントであり、
前記判定部は、前記固定位置で表示されるコメントと前記移動表示されるコメントとの表示位置が重なるか否かを判定するものであって、前記移動表示されるコメントが、前記固定位置で表示されるコメントが固定表示をする間継続して表示位置が重なる場合に、重なっていると判定し、一部の期間で表示位置が重なっていても、表示位置が重なっていない期間がある場合には、重ならないとして判定する
ことを特徴とする請求項1または2記載の表示装置。

[本件特許発明6](請求項6)
前記コメント表示部は、前記コメントに含まれる文字の文字サイズを変更して表示させる文字サイズ変更部を有し、
前記判定部は、前記文字サイズ変更部によって変更された後の文字サイズのコメントの表示位置が重なるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれかに記載の表示装置。

[本件特許発明7](請求項7)
前記コメント表示部は、コメントを複数行で表示を行い、
前記判定部は、コメントの行方向と列方向のサイズに基づいて、コメントの表示位置が重なるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれかに記載の表示装置。

[本件特許発明8](請求項8)
複数の端末装置から送信されるコメント情報を受信して各端末装置へ配信するコメント配信サーバと、前記コメント配信サーバに接続され動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置とを有するコメント表示システムにおける表示装置における表示方法であって、
受信部が、前記コメント配信サーバが前記端末装置から、コメントと前記コメントが付与された時点における、前記動画の最初を基準として動画の経過時間を表す動画再生時間をコメント付与時間として前記コメントに対応づけてコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信し、コメント情報記憶部に記憶し、
コメント表示部が、前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間が対応づけられたコメントをコメント情報から読み出し、読み出したコメントを動画上に表示させ、
判定部が、前記コメント表示部によって表示されるコメントのうち、第1のコメントと第2のコメントとのうちいずれか一方または両方が移動表示されるコメントであり、前記第1のコメントを動画上に表示させる際の表示位置が、当該第1のコメントよりも先に前記動画上に表示される第2のコメントの表示位置と重なるか否かを判定し、
表示位置制御部が、前記判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合に、前記第1のコメントと前記第2のコメント同士が重ならない位置に表示させる
ことを特徴するコメント表示方法。

[本件特許発明9](請求項9)
複数の端末装置から送信されるコメント情報を受信して各端末装置へ配信するコメント配信サーバと、前記コメント配信サーバに接続され動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置とを有するコメント表示システムにおける表示装置であるコンピュータに、
前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信し、コメントと、前記コメントが付与された時点における、前記動画の最初を基準として動画の経過時間を表す動画再生時間をコメント付与時間として前記コメントに対応づけてコメント情報として記憶するコメント情報記憶部に記憶する受信手段、
前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間が対応づけられたコメントをコメント情報から読み出し、読み出したコメントを動画上に表示するコメント表示手段、
前記表示されるコメントのうち、第1のコメントと第2のコメントとのうちいずれか一方または両方が移動表示されるコメントであり、前記第1のコメントを動画上に表示させる際の表示位置が、当該第1のコメントよりも先に前記動画上に表示される第2のコメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定手段、
前記コメントの表示位置が重なると判定した場合に、前記第1のコメントと前記第2のコメント同士が重ならない位置に表示させる表示位置制御手段、
として機能させるプログラム。

[本件特許発明10](請求項10)
前記表示位置制御手段は、前記動画の表示領域のうち、コメントを表示する基準となる位置を表す基準位置に従って第2のコメントが表示された後に前記第1のコメントを表示する際に、前記判定手段が前記コメントが重なると判定した場合に、前記第1のコメントの基準位置を前記第2のコメントの基準位置とは異なる位置に変更して表示する
ことを特徴とする請求項9記載のプログラム。

[本件特許発明11](請求項11)
前記第1のコメントと前記第2のコメントとの両方が所定の方向に移動表示するコメントであり、
前記コメント表示手段は、前記コメントが前記表示領域内に現れてから表示領域外に移動して消えるまでの時間であるコメント表示時間と前記コメントの表示が開始される文字から表示が終了する文字までの前記所定の方向における文字列の幅とに基づいて決定される移動速度で前記コメントを移動させつつ、前記画面上に表示を行い、
前記判定手段は、各コメントを前記移動速度で移動させて表示させた場合、前記第2のコメントが移動し終わるまでに前記第1のコメントが追いつく場合に、前記第1のコメントと前記第2のコメントとの表示位置が重なるものとして判定する
ことを特徴とする請求項9または10記載のプログラム。

[本件特許発明12](請求項12)
前記コメント表示手段は、前記コメント表示時間を変更して前記コメントを表示させる機能を有し、
前記判定手段は、前記コメント表示部によって変更された後のコメント表示時間に基づいて、コメントの表示位置が重なるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項11記載のプログラム。

[本件特許発明13](請求項13)
前記第1のコメントと第2のコメントは、いずれか一方が固定位置で表示されるコメントであり、他方が移動表示されるコメントであり、
前記判定手段は、前記固定位置で表示されるコメントと前記移動表示されるコメントとの表示位置が重なるか否かを判定するものであって、前記移動表示されるコメントが、前記固定位置で表示されるコメントが固定表示をする間継続して表示位置が重なる場合に、重なっていると判定し、一部の期間で表示位置が重なっていても、表示位置が重なっていない期間がある場合には、重ならないとして判定する
ことを特徴とする請求項9または10記載のプログラム。

[本件特許発明14](請求項14)
前記コメント表示手段は、前記コメントに含まれる文字の文字サイズを変更して表示させる文字サイズ変更手段としての機能を有し、
前記判定手段は、前記文字サイズ変更部によって変更された後の文字サイズのコメントの表示位置が重なるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項9から請求項13のうちいずれかに記載のプログラム。

[本件特許発明15](請求項15)
前記コメント表示手段は、コメントを複数行で表示を行い、
前記判定手段は、コメントの行方向と列方向のサイズに基づいて、コメントの表示位置が重なるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項9から請求項14のうちいずれかに記載のプログラム。

第3 当事者の主張
1 請求人の主張
(1)請求の趣旨
特許第4695583号発明の特許請求の範囲の請求項1,2,3,9,10及び11に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。

(2)無効理由
審判請求書、平成30年2月15日差出しの口頭審理陳述要領書、平成30年3月14日付けの上申書及び平成30年5月25日付けの上申書によれば、請求人が主張する無効理由は、以下のとおりである。

ア 無効理由1(進歩性)
本件特許発明1?3、9?11は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第2号証に記載された技術事項または甲第2?4号証の記載から把握される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1?3、9?11は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

イ 無効理由2(進歩性)
本件特許発明3、11は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第5号証に記載された技術事項または甲第5、6号証の記載から把握される周知技術、並びに、甲第7?12号証の記載から把握される周知または公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明3、11は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

ウ 無効理由3(進歩性)
本件特許発明3、11は、甲第5号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第7?12号証の記載から把握される周知または公知技術、並びに、甲第1号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明3、11は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

エ 無効理由4(進歩性)
本件特許発明3、11は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第7号証に記載された技術事項、甲第15?16号証の記載から把握される周知技術、並びに、甲第17号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明3、11は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

オ 無効理由5(進歩性)
本件特許発明1?3、9?11は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、甲第15?16号証の記載から把握される周知技術、甲第17号証及び甲第20?22号証に記載された技術事項、並びに、甲第19号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1?3、9?11は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(3)証拠方法
甲第1号証:特開2004-15750号公報
甲第2号証:特開平8-107552号公報
甲第3号証:特開昭59-105788号公報
甲第4号証:特開平6-165139号公報
甲第5号証:特開2005-92734号公報
甲第6号証:特開平8-227097号公報
甲第7号証:特開2000-140419号公報
甲第8号証:特開平7-306632号公報
甲第9号証:不服2007-8023の審決
甲第10号証:特開平3-97485号公報
甲第11号証:特開2001-157782号公報
甲第12号証:特開2001-170360号公報
甲第13号証:安藤伸彌,『SMILで魅せるストリーミングコンテンツ作成ガイド』,第1版第1刷,エーアイ出版株式会社,2002年5月3日,p.ii-iii,14-27,58-61,102-113
甲第14号証:林岳里,『ストリーミングコンテンツデザインガイドSMIL BOOK』,初版第1刷,株式会社翔泳社,2002年3月26日,p.036-039,162-171
甲第15号証:大重美幸,『macromedia FLASH ActionScriptサンプル集』,初版第1刷,株式会社ソーテック社,2001年4月25日,p.72-77
甲第16号証:大重美幸,『FLASH ActionScriptスーパーサンプル集 1.0/2.0対応版』,初版第1刷,株式会社ソーテック社,2006年11月20日,p.112-119
甲第17号証:大河原浩一、笠原淳子,『Final Cut Pro 5 Hyper Handbook』,第1刷,株式会社ローカス,2005年12月15日,p.162-169
甲第18号証の1:公開特許公報5件(特開2005-109928号公報、特開2005-109929号公報、特開2005-131231号公報、特開2005-333279号公報、特開2006-5896号公報)の各フロントページ
甲第18号証の2:公開特許公報4件(特開2005-286670号公報、特開2005-332161号公報、特開2005-332187号公報、特開2005-333389号公報)の各フロントページ
甲第18号証の3:公開特許公報2件(特開2005-333399号公報、特開2007-229329号公報)の各フロントページ
甲第18号証の4:公開特許公報3件(特開2003-93745号公報、特開2005-333403号公報、特開2006-279814号公報)の各フロントページ
甲第19号証:ななきち,『Web製作演習 Flash MX 2004』,初版第1刷,(株)毎日コミュニケーションズ,2005年1月28日,p.180-189,228-235
甲第20号証:『アップル、Final Cut Studioを発表』,<URL:https://www.apple.com/jp/newsroom/2005/04/17Apple-Unveils-Final-Cut-Studio/>(平成30年2月27日作成)
甲第21号証の1:Internet Archiveにおける『Final Cut Studio Cut to the future.』の2006年7月25日のアーカイブ,<URL:https://web.archive.org/web/20060725200802/http://www.apple.com/finalcutstudio/download/>(平成30年2月27日作成)
甲第21号証の2:甲第21号証の1に日本語訳文を挿入したもの(平成30年3月3日作成)
甲第22号証:『動作確認報告書(Final Cut Pro)』(弁護士 濱田佳志により平成30年2月22日作成)

2 被請求人の主張
(1)答弁の趣旨
本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は,請求人の負担とするとの審決を求める。

(2)答弁の概要
答弁書、平成30年3月1日付け口頭審理陳述要領書及び平成30年4月23日付け上申書によれば、無効理由に対する被請求人の主張は、以下のとおりである。

ア 無効理由1について
本件特許発明1?3、9?11は、甲第1?4号証に基づく進歩性欠如はない。

イ 無効理由2について
本件特許発明3、11は、甲第1、5?12号証に基づく進歩性欠如はない。

ウ 無効理由3について
本件特許発明3、11は、甲第5、1、7?12号証に基づく進歩性欠如はない。

エ 無効理由4について
本件特許発明3、11は、甲第1、7、15?17号証に基づく進歩性欠如はない。

オ 無効理由5について
本件特許発明1?3、9?11は、甲第1、15?17、19?22号証に基づく進歩性欠如はない。

(3)証拠方法
乙第1号証:審判便覧51-16 「請求の理由」の要旨変更
乙第2号証:審判便覧51-15 請求人の弁駁後の審理

第4 甲第1号証ないし甲第22号証の記載事項
1 甲第1号証
(1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証(特開2004-15750号公報)には、「ライブ配信サーバ、及びライブ配信方法」(発明の名称)として、図面とともに、以下の記載がある(下線は当審が付与した。)

ア「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マルチメディアコンテンツをライブ配信するライブ配信サーバ、及びライブ配信方法に関し、特に、複数のライブ映像を一つの画面で同期表示し、また、ライブ映像とライブ閲覧者からのコミュニケーション情報(例えば、チャット)とを1つの画面でリアルタイムで同期表示し、さらに、同期表示させたライブ配信データを保存し、オンデマンドで閲覧する機能を有する、ライブ配信サーバ、及びライブ配信方法に関する。」

イ「【0004】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、複数のライブ映像を一つの画面で同期表示し、また、ライブ映像とライブ閲覧者からのコミュニケーション情報(例えば、チャット入力)とを1つの画面でリアルタイムで同期表示し、さらに、同期表示させたライブ配信データを保存し、オンデマンドで閲覧する機能を有する、ライブ配信サーバ、及びライブ配信方法を提供することにある。」

ウ「【0007】
また、本発明のライブ配信サーバは、前記コミュニケーション情報がテキスト文字のチャット情報を含むマルチメディアコンテンツであることを特徴とする。これにより、クライアントは、配信されるライブ映像を閲覧しながら、同じ画面上でチャット、動画、静止画、音声によりコミュニケーションを行うことができる。」

エ「【0014】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態例について図面を参照して説明する。
まず、本明細書で使用する用語について、ここで定義しておく。
・マルチメディアコンテンツとは、動画像、音声、テキスト、静止画像を指す。なお、本明細書では、マルチメディアコンテンツを単に「コンテンツ」ともいう。
・ライブ予約とは、コンテンツを配信するユーザが、コンテンツを通信ネットワーク上にライブ配信するライブ配信サーバに対して、配信時間枠を予約することを指す。
・エンコードとは、ネットワークの配信帯域にあわせて、コンテンツ(映像や音声データのファイル)をストリーミング形式に変換(ストリーミング再生用に圧縮する)ことを指す。
・同期マルチメディア言語とは、動画、静止画、音声、音楽、文字など様々な形式のデータの再生を制御して同期させるXMLベースのマークアップ言語である。再生するクリップを、どの位置(領域)に、どのタイミングで、どのくらいの時間表示するのか、といったことを制御することができる。例としてW3Cにより勧告された「SMIL(Synchronized Multimedia Integration Language)」などがある。」

オ「【0019】
[ライブ配信システムの構成と動作概要]
図1は、本発明のライブ配信サーバを使用したライブ配信システムの構成と動作概要を説明するための図であり、本例のライブ配信システムは、ライブ配信サーバ2が中核となり、ライブ配信サーバ2と、ライブ配信者端末3と、クライアント端末4(ライブ閲覧者)と、チャット参加者端末5とが通信ネットワーク1により接続されて構成される。
【0020】
図1に示すライブ配信システムでは、以下のように動作する。
(1)ライブ配信者端末3では、カメラ映像3aまたは動画ファイル3bから動画を取り込み(矢付線a)、ライブ配信サーバ2にライブ映像データを送信する(矢付線b)。
(2)ライブ配信サーバ2は、ライブ配信者端末3から受信したライブ映像データを、クライアント端末4およびチャット参加者端末5に配信する(矢付線c)。
(3)チャット参加者端末5からライブ配信サーバ2に、チャット参加者が入力したチャットのメッセージが送信される(矢付線d)。
(4)ライブ配信サーバ2では、チャット参加者端末5から受信したチャットデータをライブ映像データに付加して、クライアント端末4およびチャット参加者端末5に配信する(矢付線c)。
(5)また、ライブ配信サーバ2は、配信した内容(ライブ映像データとチャットデータ)を1つのコンテンツとして保存する(矢付線e)。
【0021】
なお、図1に示す例では、ライブ画像中にユーザ(チャット参加者)がリアルタイム送信するコミュニケーション情報として、チャット(テキスト文による情報)を入力する例を示しているが、ユーザは、ライブ画像中に動画、静止画などのマルチメディア情報を入力して表示することもできる。」

カ「【0022】
[ライブ配信システムの構成例]
また、図2は、本発明のライブ配信サーバを用いたライブ配信システムの構成例を示す図であり、本発明に直接関係する部分について示したものである。
【0023】
図2に例示するライブ配信システムは、ライブ配信サーバ100と、クライアントであるライブ配信者10のライブ配信者端末11と、クライアントであるライブ閲覧者20のライブ閲覧者端末21とが通信ネットワーク1を介して接続されて構成される。なお、ライブ配信者10及びライブ閲覧者20は予めライブ配信サーバ100に登録されたユーザであり、ユーザID(識別コード)やユーザ認証情報(パスワードなど)が発行されているユーザである。
【0024】
ライブ配信者10は、映像や音声などのマルチメディアコンテンツを作成し、ライブ配信サーバ100にライブ配信(ストリーミングによるリアルタイム配信)を予約し、ライブ予約で指定した時間にライブ配信を行うクライアントである。
ライブ配信者10のライブ配信者端末11には、以下の機能(又は装置)が備えられている。
・通信装置12は、ライブ配信者端末11を通信ネットワーク1と接続するための装置である。
・カメラ13は、ライブ配信するためのライブ映像を撮影する装置である。
・エンコード機能14は、カメラから取り込まれるライブ映像を圧縮してサーバ100側へ送信するための機能である。
・入力装置15は、キーボード、マウス等の入力装置である。
・表示装置16は、液晶やCRTなどのディスプレイ装置である。」

キ「【0025】
ライブ閲覧者20は、ライブ配信サーバ100から配信されるライブを閲覧し、チャットに参加するクライアントであり、ライブ閲覧者20のライブ閲覧者端末21には、以下の機能(又は装置)が備えられている。
・通信装置22は、ライブ閲覧者端末21を通信ネットワーク1と接続するための装置である。
・メディア再生プレイヤー23は、ライブ配信される映像や音声などを再生する処理部であり、専用のソフトウェアにより再生が行われる。例えば、RealPlayer(登録商標)などがある。
・チャット入力機能24は、メディア再生プレイヤー23によりマルチメディアコンテンツを再生中に、そのコンテンツに対して、チャットの情報を入力するための機能である。
・入力装置25は、キーボード、マウス等の入力装置である。
・表示装置26は、液晶やCRTなどのディスプレイ装置である。」

ク「【0026】
また、ライブ配信サーバ100には、以下の処理部(又は装置)が備えられている。
・通信装置101は、ライブ配信サーバ100を通信ネットワーク1と接続するための装置である。
・ライブ配信処理部102は、ライブ映像などのマルチメディアストリーミングデータをクライアント(ライブ閲覧者20)に配信する処理部である。
【0027】
・ライブ予約処理部103は、ライブ配信者の端末11から、ライブ配信の予約を受け付けるための処理部である。
【0028】
・コンテンツアクセス管理処理部104は、ライブ配信者10が予約指定したコンテンツに対する、ライブ配信者10自身が指定するアクセス権限(無制限、ユーザ数指定、ユーザ名指定等)情報を取得し、閲覧管理DB114に保存する処理部である。例えば、各レイアウトごとに閲覧できる人数(端末数)を制限する処理や、各レイアウトごとに閲覧者を選択指定するための処理部である。
【0029】
・チャット情報格納処理部105は、ライブ閲覧者20のライブ閲覧者端末21内のチャット入力機能24から送信されるチャット入力データを処理し、チャット情報DB113に格納するための処理部である。
【0030】
・レイアウト及び属性格納処理部106は、ライブ配信者端末11から送信される指定情報により、コンテンツのレイアウトを定義し、それぞれについての属性(ライブ映像、チャット部分、静止画等)を定義する処理部である。
【0031】
・ライブデータ格納処理部107は、チャット等を含めたコンテンツを保存するかどうかを選択し、保存する場合は、ライブデータDB111に格納する処理を行うための処理部である。
【0032】
・同期マルチメディア言語ファイル生成処理部108は、クライアント(ライブ閲覧者)のコンテンツ配信要求を受けてコンテンツアクセス管理処理部104などから情報を取得し、ライブ閲覧者端末21内のメディア再生プレイヤー23に対して同期マルチメディア言語ファイルを送信する処理部である。
【0033】
・ライブ配信データ発行処理部109は、クライアント(ライブ配信者10)からの要求に応じて、ライブ配信者10のライブ配信者端末11のエンコード機能14を実際に使用するための設定データを発行するための処理部である。」

ケ「【0034】
また、ライブ配信サーバ100内の各データベースには以下のデータが格納される。なお、図3に各データベースのデータ構成例を示す。
・ライブデータデータベース(ライブデータDB)111は、「ライブを保存する」を選択した場合にコンテンツを保存しておくデータベースである。格納データは、「ライブID」、「レイアウトID」、「コンテンツ情報(ライブデータファイル名、画像データファイル名、チャット情報ID)」などである。
【0035】
・レイアウトデータベース(レイアウトDB)112は、各ライブのレイアウトがどのような属性を持っているかを保持しておくデータベースである。格納データは、「ライブID」、「レイアウトID」、「属性ID」、「属性内容(チャット、静止画、ライブ動画)」等である。
【0036】
・チャット情報データベース(チャット情報DB)113は、ライブ閲覧者端末21のチャット入力機能24によって行われたチャット情報のログを記録しておくデータベースである。格納データは、「ライブID」、「発言者」、「発言時間(ライブ開始からの差分時間)」、「ライブ上での発言場所(レイアウトIDまたは、XY座標での表記)」、「発言及びその他の情報(色、スクロール方法等)」等である。
【0037】
・閲覧管理データベース114は、コンテンツの各レイアウトごとの配信制限情報を保持するデータベースである。格納データは、「ライブID」、「レイアウトID」、「属性ID」、「配信制限情報(配信制限人数、ユーザ指定情報、その他)」等である。
【0038】
なお、図2に示すシステムでは、ライブ画像中にユーザがリアルタイムで表示するコミュニケーション情報として、チャット(テキスト文による情報)を表示する例を想定しているが、ユーザは、ライブ画面中に動画、静止画、音声情報などを表示することもできる。」

コ「【0049】
▲6▼チャット情報が受け取られると、受信したチャット入力データをライブ映像データに付加して、ライブ閲覧者20の端末21にリアルタイムで配信する(ステップS35、S36)。
【0050】
また、図9は、チャット入力画面の例を示す図であり、チャットに参加するクライアント(例えば、ライブ閲覧者20)が、ライブ閲覧者端末21内のチャット入力機能24によりチャットを行う場合の例を示す図である。
▲1▼あるチャット参加者が、Webブラウザなどのチャット入力用のアプリケーション(AP)画面a中で、レイアウト(領域2)を指定して、チャット文「この人って誰?」を入力する。
▲2▼配信映像b中に、チャット文「この人って誰?」が表示される。
▲3▼別のチャット参加者がチャット入力用のアプリケーション(AP)画面c中で、レイアウト(領域4)を指定して、チャット文「松井じゃない?」を入力する。
▲4▼配信映像b中に、チャット文「松井じゃない?」が表示される。」

サ「【0060】
[放送したライブチャットの保存と検索]
ライブ放送とコミュニケーション情報(チャットなど)の動画配信は、リアルタイムでライブ放送として配信するほかに、コミュニケーション情報(チャットなど)の入力も含むオンデマンドのビデオクリップとして保存することが可能である。」

シ「【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のライブ配信サーバ、及びライブ配信方法においては、ライブ配信を行うクライアントの端末から、ライブ配信する画面内のレイアウトの指定情報と各レイアウトごとの属性情報を受信しデータベースに保存する。また、ライブ配信を行うクライアントの端末から送信されるライブ映像と、ライブを閲覧するクライアントの端末から送信されるコミュニケーション情報(例えば、チャット)とを同期させ、それぞれを同じ画面内の指定されたレイアウトにリアルタイムで表示させる。
これにより、配信されるライブ映像を閲覧しながら、チャットなどのコミュニケーション情報を同じ画面上でリアルタイムで表示できる。
【0069】
また、本発明のライブ配信サーバにおいては、ライブ映像とコミュニケーション情報を同期させて表示するために、各レイアウトの配信データを含む同期マルチメディア言語ファイルを生成する。
これにより、同期マルチメディア言語の機能を活用して、ライブ映像とコミュニケーション情報との同期制御が容易に行えるようになる。」

ス「【図1】



セ「【図9】



(2)甲第1号証に記載された発明
ア ライブ配信システムについて
上記(1)アによれば、「ライブ映像とライブ閲覧者からのコミュニケーション情報(例えば、チャット)とを1つの画面でリアルタイムで同期表示」する機能を有する「ライブ配信サーバ」が記載されている。
また、上記(1)ケによれば、リアルタイムで表示するコミュニケーション情報について、「チャット(テキスト文による情報)」であることが記載されている。
また、上記(1)カによれば、「ライブ配信システム」は、「ライブ配信サーバ100」と「クライアントであるライブ閲覧者20のライブ閲覧者端末21」とが「通信ネットワーク1を介して接続されて構成される」ことが記載されている。
また、上記(1)ウによれば、「クライアントは、配信されるライブ映像を閲覧しながら、同じ画面上でチャット、動画、静止画、音声によりコミュニケーションを行うことができる」と記載されている。
また、上記(1)スによれば、クライアント端末は複数であることが記載されている。
したがって、甲第1号証には、『ライブ映像とライブ閲覧者からのコミュニケーション情報(例えば、チャット(テキスト文による情報))とを1つの画面でリアルタイムで同期表示する機能を有するライブ配信サーバと、配信されるライブ映像を閲覧しながら、同じ画面上でチャット、動画、静止画、音声によりコミュニケーションを行うことができるクライアントであるライブ閲覧者の複数のライブ閲覧者端末とが通信ネットワークを介して接続されて構成されるライブ配信システムにおけるライブ閲覧者端末』の発明が記載されている。

イ ライブ配信サーバについて
(ア)通信装置について
上記(1)クによれば、「ライブ配信サーバ」は、「ライブ配信サーバ100を通信ネットワーク1と接続する」ための「通信装置101」を備えている。
したがって、甲第1号証には、「ライブ配信サーバ」が、『ライブ配信サーバを通信ネットワークと接続するための通信装置』を備えることが記載されている。

(イ)ライブ配信処理部について
上記(1)クによれば、「ライブ配信サーバ」は、「ライブ映像などのマルチメディアストリーミングデータをクライアント(ライブ閲覧者20)に配信する」「ライブ配信処理部102」を備えている。
したがって、甲第1号証には、「ライブ配信サーバ」が、『ライブ映像などのマルチメディアストリーミングデータをライブ閲覧者に配信するライブ配信処理部』を備えることが記載されている。

(ウ)同期マルチメディア言語ファイル生成処理部について
上記(1)クによれば、「ライブ配信サーバ」は、「クライアント(ライブ閲覧者)のコンテンツ配信要求を受けてコンテンツアクセス管理処理部104などから情報を取得し、ライブ閲覧者端末21内のメディア再生プレイヤー23に対して同期マルチメディア言語ファイルを送信する処理部である」「同期マルチメディア言語ファイル生成処理部」を備えている。
また、上記(1)エによれば、「同期マルチメディア言語とは、動画、静止画、音声、音楽、文字など様々な形式のデータの再生を制御して同期させるXMLベースのマークアップ言語である。再生するクリップを、どの位置(領域)に、どのタイミングで、どのくらいの時間表示するのか、といったことを制御することができる。例としてW3Cにより勧告された「SMIL(Synchronized Multimedia Integration Language)」などがある」と記載されている。
したがって、甲第1号証には、「ライブ配信サーバ」が、『ライブ閲覧者端末内のメディア再生プレイヤーに対して同期マルチメディア言語ファイルを送信する同期マルチメディア言語ファイル生成処理部であって、同期マルチメディア言語ファイルは、動画、静止画、音声、音楽、文字など様々な形式のデータの再生を制御して同期させるXMLベースのマークアップ言語であり、例としてW3Cにより勧告された「SMIL(Synchronized Multimedia Integration Language)」などがある同期マルチメディア言語ファイル生成処理部』を備えることが記載されている。

(エ)チャット情報データベースについて
上記(1)ケによれば、「ライブ配信サーバ」の「チャット情報データベース(チャット情報DB)113」は、「ライブ閲覧者端末21のチャット入力機能24によって行われたチャット情報のログを記録しておくデータベース」であり、「格納データは、「ライブID」、「発言者」、「発言時間(ライブ開始からの差分時間)」、「ライブ上での発言場所(レイアウトIDまたは、XY座標での表記)」、「発言及びその他の情報(色、スクロール方法等)」等である」ことが記載されている。
したがって、甲第1号証には、「ライブ配信サーバ」が、『ライブ閲覧者端末のチャット入力機能によって行われたチャット情報のログを記録しておくデータベースであって、ライブID、発言者、発言時間(ライブ開始からの差分時間)、ライブ上での発言場所(レイアウトIDまたは、XY座標での表記)、発言及びその他の情報(色、スクロール方法等)等を格納するチャット情報データベース』を備えることが記載されている。

(オ)チャット入力データの配信について
上記(1)コによれば、「チャット情報が受け取られると、受信したチャット入力データをライブ映像データに付加して、ライブ閲覧者20の端末21にリアルタイムで配信する」と記載されている。
したがって、甲第1号証には、「ライブ配信サーバ」が、『チャット情報が受け取られると、受信したチャット入力データをライブ映像データに付加して、ライブ閲覧者の端末にリアルタイムで配信する』ことが記載されている。

ウ ライブ閲覧者端末について
(ア)通信装置について
上記(1)キによれば、「ライブ閲覧者端末」は、「ライブ閲覧者端末21を通信ネットワーク1と接続する」ための「通信装置」を備えている。
したがって、甲第1号証には、「ライブ閲覧者端末」が、『ライブ閲覧者端末を通信ネットワークと接続するための通信装置』を備えることが記載されている。

(イ)メディア再生プレイヤーについて
上記(1)キによれば、「ライブ閲覧者端末」は、「ライブ配信される映像や音声などを再生する処理部」であり、「例えば、RealPlayer(登録商標)などがある」「メディア再生プレイヤー」を備えている。
したがって、甲第1号証には、「ライブ閲覧者端末」が、『ライブ配信される映像や音声などを再生するRealPlayer(登録商標)などのメディア再生プレイヤー』を備えることが記載されている。

(ウ)表示装置について
上記(1)キによれば、「ライブ閲覧者端末」は、「液晶やCRTなどのディスプレイ装置である」「表示装置」を備えている。
したがって、甲第1号証には、「ライブ閲覧者端末」が、『液晶やCRTなどのディスプレイ装置である表示装置』を備えることが記載されている。

(エ)チャット入力機能について
上記(1)キによれば、「ライブ閲覧者端末」は、「メディア再生プレイヤー23によりマルチメディアコンテンツを再生中に、そのコンテンツに対して、チャットの情報を入力する」ための「チャット入力機能」を備えている。
したがって、甲第1号証には、「ライブ閲覧者端末」が、『メディア再生プレイヤーによりマルチメディアコンテンツを再生中に、そのコンテンツに対して、チャットの情報を入力するためのチャット入力機能を備える』ことが記載されている。

(オ)チャット文の表示について
上記(1)コによれば、「▲1▼あるチャット参加者が、Webブラウザなどのチャット入力用のアプリケーション(AP)画面a中で、レイアウト(領域2)を指定して、チャット文「この人って誰?」を入力する。▲2▼配信映像b中に、チャット文「この人って誰?」が表示される。▲3▼別のチャット参加者がチャット入力用のアプリケーション(AP)画面c中で、レイアウト(領域4)を指定して、チャット文「松井じゃない?」を入力する。▲4▼配信映像b中に、チャット文「松井じゃない?」が表示される」と記載されている。
また、上記(1)セによれば、一つの画面に複数のチャット文が同時に表示されることが記載されている。
したがって、甲第1号証には、「ライブ閲覧者端末」において、『あるチャット参加者が、Webブラウザなどのチャット入力用アプリケーション画面中で、レイアウト(領域2)を指定してチャット文「この人って誰?」を入力すると、配信映像中にチャット文「この人って誰?」が表示され、別のチャット参加者が、Webブラウザなどのチャット入力用アプリケーション画面中で、レイアウト(領域4)を指定してチャット文「松井じゃない?」を入力すると、配信映像中にチャット文「松井じゃない?」が表示され、一つの画面に複数のチャット文が同時に表示される』ことが記載されている。

エ まとめ
以上によれば、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。甲1発明の各構成については、以下、構成1a?構成1cと称する。

(甲1発明)
(1a)ライブ映像とライブ閲覧者からのコミュニケーション情報(例えば、チャット(テキスト文による情報))とを1つの画面でリアルタイムで同期表示する機能を有するライブ配信サーバと、
(1b)配信されるライブ映像を閲覧しながら、同じ画面上でチャット、動画、静止画、音声によりコミュニケーションを行うことができるクライアントであるライブ閲覧者の複数のライブ閲覧者端末とが
(1c)通信ネットワークを介して接続されて構成されるライブ配信システムにおける
(1b)ライブ閲覧者端末であって、
(1a)ライブ配信サーバは、
(1a1)ライブ配信サーバを通信ネットワークと接続するための通信装置と、
(1a2)ライブ映像などのマルチメディアストリーミングデータをライブ閲覧者に配信するライブ配信処理部と、
(1a3)ライブ閲覧者端末内のメディア再生プレイヤーに対して同期マルチメディア言語ファイルを送信する同期マルチメディア言語ファイル生成処理部であって、同期マルチメディア言語ファイルは、動画、静止画、音声、音楽、文字など様々な形式のデータの再生を制御して同期させるXMLベースのマークアップ言語であり、例としてW3Cにより勧告された「SMIL(Synchronized Multimedia Integration Language)」などがある同期マルチメディア言語ファイル生成処理部と、
(1a4)ライブ閲覧者端末のチャット入力機能によって行われたチャット情報のログを記録しておくデータベースであって、ライブID、発言者、発言時間(ライブ開始からの差分時間)、ライブ上での発言場所(レイアウトIDまたは、XY座標での表記)、発言及びその他の情報(色、スクロール方法等)等を格納するチャット情報データベースを備え、
(1a5)チャット情報が受け取られると、受信したチャット入力データをライブ映像データに付加して、ライブ閲覧者の端末にリアルタイムで配信し、
(1b)ライブ閲覧者端末は、
(1b1)ライブ閲覧者端末を通信ネットワークと接続するための通信装置と、
(1b2)ライブ配信される映像や音声などを再生するRealPlayer(登録商標)などのメディア再生プレイヤーと、
(1b3)液晶やCRTなどのディスプレイ装置である表示装置と、
(1b4)メディア再生プレイヤーによりマルチメディアコンテンツを再生中に、そのコンテンツに対して、チャットの情報を入力するためのチャット入力機能を備え、
(1b5)あるチャット参加者が、Webブラウザなどのチャット入力用アプリケーション画面中で、レイアウト(領域2)を指定してチャット文「この人って誰?」を入力すると、配信映像中にチャット文「この人って誰?」が表示され、
別のチャット参加者が、Webブラウザなどのチャット入力用アプリケーション画面中で、レイアウト(領域4)を指定してチャット文「松井じゃない?」を入力すると、配信映像中にチャット文「松井じゃない?」が表示され、
一つの画面に複数のチャット文が同時に表示される
(1b)ライブ閲覧者端末。

2 甲第2号証
(1)甲第2号証の記載事項
甲第2号証(特開平8-107552号公報)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は当審が付与した。)。なお、丸付き数字は(1)のように括弧付き数字で代用した。

ア「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、文字放送特殊再生装置及びテレテキスト放送特殊再生装置に関し、より詳細には、TV(テレビジョン)映像信号の垂直帰線消去期間に文字,図形からなるデータを重畳して送信される文字放送データを受信・復調し、このデータをTV画面上に単独で表示する、スーパーインポーズ表示する、あるいはスクロール表示するなどの特殊な番組提示処理機能を有する文字放送特殊再生装置及びテレテキスト放送特殊再生装置に関する。」

イ「【0005】文字放送の伝送方式としては、文字や図形を画素単位に分解して伝送するパターン伝送方式と、文字やモザイク図形を符号化して伝送するコード伝送方式とがある。該コード伝送方式は、1画面当りの伝送速度は速いが、文字発生器を必要とする。一方、パターン伝送方式は、伝送速度は遅いが、任意の図形又は文字を送ることができる。現行の文字放送は、これらの優れた点を組合わせたもので、ハイブリッド方式と呼ばれている。」

ウ「【0009】文字放送の表示には、画面の全てが文字番組である単独表示と、テレビ画面の一部に文字番組を重ねて表示するスーパー表示の2種類がある。また、表示モードは、(1)全面固定表示(表示領域に静止した文字及び図形を表示する),(2)スーパー固定表示(テレビ放送の映像に重ねて静止した文字及び図形を表示する),(3)字幕表示(スーパー固定表示であって、同時に放送されるテレビ放送番組の内容と直接に関係のある文字及び図形を表示する),(4)一行横スクロール表示(テレビ放送の映像に重ねて右から左へ移動する横一行の文字及び図形を表示する),(5)全面縦スクロール(本文表示領域に下から上へ移動する文字及び図形を表示する),(6)多画面表示(本文表示領域を4つの象現に分け、各象現に画面を全面固定表示で同時に表示する)がある。」

エ「【0026】また、特開昭63-185173号公報のものは、横長のワイドディスプレイを用いるテレビジョン受信装置において、映画サイズの画像で、上下のブランクの所に字幕が挿入された場合、文字が見えなくなる時がありうるという問題点を解決するために、映画サイズの画面が入力され、上下のブランクの所に字幕があれば、それを映画映像の上に合成するようにしたものであり、現行標準テレビジョンのアスペクト比と異なるディスプレイを持ち、ブランク検出回路、字幕検出回路、字幕未合成回路を備え、映画サイズの画像で上下ブラングの所の字幕を検出し、それを合成して表示できるように構成したものである。
【0027】また、特開平2-305190号公報のものは、ブランキング期間に字幕のある映画ソフトに対しても、表示画面内に字幕が納まるように、字幕に処理を施すようにし、映像や字幕が欠けることのない表示を得るようにしたものである。
【0028】さらに、特開平3-127565号公報のものは、上下の欠けた映像をスクリーン一杯に拡大して投射するに際し、字幕が有効な映像信号の外(上下の欠けている部分)にあって、これを移動させて合成したとき、元の映像信号の影響を受けにくくするために、フィールドメモリで遅延させたデータと予め決められた値とを比較し、その比較信号出力により元の映像信号と遅延した映像信号の字幕部分とを切り替えると、比較する値をできるだけ黒レベルに近いところに置くと比較信号の幅が太くなり、元の映像信号の抜き取り部分が広くなり、また切り替えられる字幕スーパーの文字の立ち上がり立ち下がりは、帯領制限を受け鈍っており、結果的に合成された文字に縁が付いた形になり見やすくなるというものである。」

オ「【0055】また、ワイドアスペクトモニタにて視聴する場合、画面モードによっては、受信画像の一部がモニタの表示枠外に出てしまって、文字の一部が隠れてしまったり、また、字幕移動機能などにより字幕が文字放送受信による文字表示位置に重なってしまったりする欠点もあり、テレビ画面のテロップなどの表示と重なりあってしまう欠点もあった。また、前述した前記特開昭59-105788号公報では、操作者が横一行スクロールする位置を選択しなければならず、操作者が何もしなければテレビ画像と重なりあってしまうという欠点があった。」

カ「【0057】また、ワイドアスペクトモニタにて視聴する場合、画面モードによっては、受信画像の一部がモニタの表示枠外に出てしまって、文字の一部が隠れてしまったり、また、字幕移動機能などにより字幕が文字放送受信による文字表示位置に重なってしまったりする欠点もあり、テレビ画面のテロップなどの表示と重なりあってしまう欠点もあった。」

キ「【0066】
【実施例】実施例について、図面を参照して以下に説明する。図1は、本発明による文字放送特殊再生装置の一実施例(請求項1,11)を説明するための構成図で、図中、1は取込制御部、2はCPU(中央処理装置)、2aは特殊再生制御部、3はCG・ROM(キャラクタジェネレータ:Read Only Memory)、4はタイマ、5は信号検出部、6は表示制御部、7はメモリ、8はI/F(インタフェース)である。」

ク「【0070】すなわち、テレビ放送の垂直帰線消去期間に重畳された文字放送データを取込制御部1にて取り込む。文字放送データが取り込まれると、取込制御部1よりCPU2へ割り込みが掛かる。該CPU2は、その割り込みにより文字放送データの受信を知り、BEST(誤り訂正処理)を行う。その後、文字放送データの連続性を確認しながら文字放送データの送出単位の再生を行い、メモリ7の文字放送受信データ格納部7aへ格納する。操作者が番組を選択すると、その番組データをCPU2がメモリ7より読み出す。その後、後述する図13のフローチャートに示すような処理を行い、提示画面変換用テーブル7bを作成し、1ページ(一画面)の提示画面変換用テーブル7bを作成完了後、該テーブルの最初から1文字ずつスクロール表示する。特殊再生制御部2aは、該提示画面変換用テーブル7bを作成するとともに、該提示画面変換用テーブル7bに基づいて表示制御部6でスクロール表示をするためのものである。」

ケ「【0073】通常のTV信号処理に係る構成は、TV信号処理回路11と表示モード制御部12と字幕表示位置制御部13とから成る。また、通常の文字放送信号処理(従来)に係る構成は、文字放送取込制御部14と誤り訂正部15とデータ転送部16と文字コード・制御コード弁別部17と制御コード処理部18とCG・ROM読出制御部19と通常文字放送表示制御部20とメモリ7とTV・文字放送表示制御部32とキーボード33と入出力制御部(I/O)35とCG・ROM3とから成る。」

コ「【0075】以下、図2及び図3における各構成要素について説明する。表示モード制御部12は、リモコン信号に基づいて異なるアスペクト比を有する各表示画面モードを制御する。字幕表示位置制御部13は、リモコン信号に基づいて字幕表示位置を移動するよう制御する。取込制御部14は、入力映像信号より文字放送データを取込む。誤り訂正部15は、文字放送データに対して誤り訂正処理を行う。データ転送部16は、文字放送データを番組単位でメモリ7に対して書込み、読出しを行う。文字コード・制御コード弁別部17は、文字放送データの符号集合から文字コードと制御コードとに弁別する。制御コード処理部18は、制御コードに基づき、文字サイズ指定、表示色指定、表示座標指定属性設定等の処理を行う。」

サ「【0080】通常のTV放送を受信する際には、映像信号をTV信号処理回路11と表示モード制御部12と字幕表示位置制御部13を介して処理し、TV文字放送表示制御部32によって、TV放送受信モードに切換えて表示装置に送る。すなわち、通常のTV放送をワイド画面に変更して見る時には、リモコンより表示モード御御部12を制御して画面をワイド画面に切り替えればよい。また、映画等の字幕が見にくい位置になったときには、リモコンにより字幕表示位置制御部13を操作して表示位置を調整すれば良い。」

シ「【0084】次に、本発明に従って、全画面固定で送られてきた文字放送をスクロール表示する動作について説明する。文字放送取込制御部14に入力された映像信号は、誤り訂正部15により文字放送データに対し誤り訂正処理が行なわれたのち、データ転送部16に送られ、文字放送データを番組単位でメモリ7に対して書き込み、読み出しを行う、受信コードが文字コードであるかどうかを文字コード判別部22で判別され、特殊再生モードである場合に、文字放送データはゲート回路23を通過する。」

ス「【0087】一方、前記表示モード制御部12からの制御信号に基づいて、表示モード判別部29により表示モードが判別され、また、前記字幕表示位置制御部13からの制御信号に基づいて、字幕位置検出部30により字幕位置が検出される。さらに、スクロール表示させる表示位置の最適位置が信号検出部5により検出される。
【0088】前記特殊再生装置制御部31は、信号検出部5と表示モード判別部29と字幕位置検出部30とからの検出結果に基づいて、スクロール表示する表示位置を決定し、TV・文字放送表示制御部32に送られ、特殊再生表示画面のための映像信号が作成される。また、TV・文字放送表示制御部32は、前記通常文字放送表示制御部20による通常の文字放送表示に対し、子画面作成部21により作成された子画面を表示するための映像信号を作成する。」

セ「【0095】また、字幕移動機能などにより字幕がある場合には、字幕位置検出部30により字幕位置を検出し、特殊再生(スクロール)表示位置制御部31により、字幕位置を避けて最適位置にスクロール表示を行う(請求項6)。さらに、テレビ映像上の指定領域の平均輝度やピーク輝度を信号検出部5により検出し、輝度の少なく、写しやすく、テレビ映像の情報の邪魔にならない領域に提示位置を特殊再生(スクロール)表示位置制御部31により移動させてスクロール表示する(請求項7)。」

ソ「【0102】このように、本発明は、従来の構成に対して信号検出部5を付加している。該信号検出部5とは、本発明にてスクロール表示させる表示位置を視聴者が見やすい位置に表示するため、最適表示位置を探し出すための回路である。スクロール表示では、通常のテレビ画面にスーパーインポーズして表示するために、テレビ画面の映像内容によってはスクロール表示されている文字情報が見づらくなることが生じる。そこで、該信号検出部5においては、テレビ映像の内容を確認し、情報が見やすいところを探し出すことが可能である。従来は、本発明の信号検出部を持たないため、操作者が見やすい位置へ表示位置を移動していたか、もしくは移動できずにそのままの状態で見ていた。」

タ「【0120】図14(a)?(d)は、ワイドアスペクトモニタの各画面モードでの表示例を示す図で、図14(a)は通常画面モード(アスペクト比、縦3、横4)、図14(b)は画面モードA、図14(c)は画面モードB(アスペクト比、縦9、横16)、図14(d)は画面モードB′を各々示している。図中、51は通常のテレビ映像、52は本発明による番組データの表示領域である。
【0121】図14より各画面モードにおいて画面サイズが違うのが分かる。これでは、通常のスクロール表示をすると、図14(c)に示すように、スクロール部分が画面から外れてしまう(見えなくなってしまう)。また、字幕移動機能を使用したときなどは、字幕がスクロール表示をしている領域と重なってしまう。したがって、現在の画面モード,字幕移動機能が働いているかをインターフェース8よりCPU2が読み込み、それらのモードに応じて最適なスクロール表示位置にする。図9の「B」,「C」,「D」は、画面モードの切り換えキーである。」

チ「【0159】また、字幕移動機能などにより字幕がある場合には、字幕位置検出部30により字幕位置を検出し、特殊再生(スクロール)表示位置制御部31により、字幕位置を避けて最適位置にスクロール表示を行う(請求項20)。さらに、テレビ映像上の指定領域の平均輝度やピーク輝度を信号検出部5により検出し、輝度の少なく、写しやすく、テレビ映像の情報の邪魔にならない領域に提示位置を特殊再生(スクロール)表示位置制御部31により移動させてスクロール表示する(請求項21)。」

ツ「【0166】このように、本発明は、従来の構成に対して信号検出部5を付加している。該信号検出部5とは、本発明にてスクロール表示させる表示位置を視聴者が見やすい位置に表示するため、最適表示位置を探し出すための回路である。スクロール表示では、通常のテレビ画面にスーパーインポーズして表示するために、テレビ画面の映像内容によってはスクロール表示されている文字情報が見づらくなることが生じる。そこで、該信号検出部5においては、テレビ映像の内容を確認し、情報が見やすいところを探し出すことが可能である。従来は、本発明の信号検出部を持たないため、操作者が見やすい位置へ表示位置を移動していたか、もしくは移動できずにそのままの状態で見ていた。」

テ「【0184】図14(a)?(d)は、ワイドアスペクトモニタの各画面モードでの表示例を示す図で、図14(a)は通常画面モード(アスペクト比、縦3、横4)、図14(b)は画面モードA、図14(c)は画面モードB(アスペクト比、縦9、横16)、図14(d)は画面モードB′を各々示している。図中、51は通常のテレビ映像、52は本発明によるページデータの表示領域である。
【0185】図14より各画面モードにおいて画面サイズが違うのが分かる。これでは、通常のスクロール表示をすると、図14(c)に示すように、スクロール部分が画面から外れてしまう(見えなくなってしまう)。また、字幕移動機能を使用したときなどは、字幕がスクロール表示をしている領域と重なってしまう。したがって、現在の画面モード,字幕移動機能が働いているかをインターフェース8よりCPU2が読み込み、それらのモードに応じて最適なスクロール表示位置にする。図9の「B」,「C」,「D」は、画面モードの切り換えキーである。」

ト「【0195】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によると、以下のような効果がある。
(中略)
(2)請求項5,6に対応する効果:文字放送番組をワイドアスペクトモニタにて視聴する場合、提示位置を画面モードに応じて最適の位置に自動変換し、字幕移動機能などにより、字幕がある時もそこを避けて最適位置にスーパーインポーズし、スクロール表示で情報を得ることができる。すなわち、マイクロコンヒュータにより、ワイドアスペクトモニタにて視聴する場合の提示位置を、画面モード、また字幕移動機能などにより字幕があるかとを判断する機能を有し、そこを避けることにより、最適位置にスーパーインポーズ表示やスクロール表示で情報を得ることができる。
(中略)
(8)請求項19,20に対応する効果:テレテキスト放送ページをワイドアスペクトモニタにて視聴する場合、提示位置を画面モードに応じて最適の位置に自動変換し、字幕移動機能などにより、字幕がある時もそこを避けて最適位置にスーパーインポーズし、スクロール表示で情報を得ることができる。すなわち、マイクロコンヒュータにより、ワイドアスペクトモニタにて視聴する場合の提示位置を、画面モード、また字幕移動機能などにより字幕があるかとを判断する機能を有し、そこを避けることにより、最適位置にスーパーインポーズ表示やスクロール表示で情報を得ることができる。」

(2)甲第2号証に記載された技術
ア 字幕表示位置制御部について
上記(1)ケによれば、文字放送特殊再生装置の実施例について、「通常のTV信号処理に係る構成は、TV信号処理回路11と表示モード制御部12と字幕表示位置制御部13とから成る」と記載されている。
また、上記(1)コによれば、「字幕表示位置制御部13は、リモコン信号に基づいて字幕表示位置を移動するよう制御する」と記載されている。
また、上記(1)サによれば、「映画等の字幕が見にくい位置になったときには、リモコンにより字幕表示位置制御部13を操作して表示位置を調整すれば良い」と記載されている。
文字放送特殊再生装置の通常のTV信号処理に係る構成の「字幕表示位置制御部13」が行う字幕表示位置を移動する制御について確認すると、上記(1)エによれば、従来の技術の説明として、「映画サイズの画像で、上下のブランクの所に字幕が挿入された場合、文字が見えなくなる時がありうるという問題点を解決するために、映画サイズの画面が入力され、上下のブランクの所に字幕があれば、それを映画映像の上に合成する」、「映画サイズの画像で上下ブラングの所の字幕を検出し、それを合成して表示できる」、「ブランキング期間に字幕のある映画ソフトに対しても、表示画面内に字幕が納まるように、字幕に処理を施すようにし、映像や字幕が欠けることのない表示を得る」、「字幕が有効な映像信号の外(上下の欠けている部分)にあって、これを移動させて合成した」、「元の映像信号と遅延した映像信号の字幕部分とを切り替える」と記載されている。
そして、文字放送特殊再生装置の実施例における「字幕表示位置制御部13」が行う字幕表示位置を移動する制御は、従来の技術から何ら変わるものではないといえるから、文字放送特殊再生装置の実施例における「字幕表示位置制御部13」は、映像信号の上下のブランクの部分にある字幕を検出し、これを移動させて、映像信号に合成するものであるといえる。
以上によれば、甲第2号証には、「字幕表示位置制御部」は、『映画等の字幕が見にくい位置になったときには、リモコン信号に基づいて映像信号の上下のブランクの部分にある字幕を検出し、これを移動させて、映像信号に合成することにより、字幕表示位置を移動するよう制御する』ことが記載されているといえる。

イ まとめ
上記ア及び、(1)ア?トによれば、甲第2号証には、以下の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されている。甲2技術の各構成については、以下、構成2a?構成2gと称する。

(甲2技術)
(2a)テレビ放送の垂直帰線消去期間に重畳された文字放送データをスクロール表示させる文字放送特殊再生装置において、
(2b)字幕移動機能などにより字幕が文字放送受信による文字表示位置に重なってしまったりする欠点を解消するために、
(2c)通常のTV放送を受信する際には、映像信号をTV信号処理回路と表示モード制御部と字幕表示位置制御部を介して処理し、
(2d)字幕表示位置制御部は、映画等の字幕が見にくい位置になったときには、リモコン信号に基づいて映像信号の上下のブランクの部分にある字幕を検出し、これを移動させて、映像信号に合成することにより、字幕表示位置を移動するよう制御し、
(2e)全画面固定で送られてきた文字放送をスクロール表示する動作では、
(2f)前記字幕表示位置制御部からの制御信号に基づいて、字幕位置検出部により字幕位置が検出され、
(2g)特殊再生装置制御部は、字幕位置検出部からの検出結果に基づいて、スクロール表示する表示位置を決定することにより、字幕位置を避けて最適位置にスクロール表示を行う
(2a)文字放送特殊再生装置。

3 甲第3号証
(1)甲第3号証の記載事項
甲第3号証(特開昭59-105788号公報)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は当審が付与した。)。

ア「テレビ放送におけるブランキング期間に主番組とは別に送られてきたデータ信号を画像として再生するテレビ多重文字放送の受像機において、横スクロールモード時、全表示エリアについて水平走査に同期したラインアドレス信号によりアドレスしてデータ信号を読み出すと共に、そのラインアドレス信号を変更して横スクロール用のデータ信号が読み出される水平期間を変更し、かつ、上記水平期間を除いて上記読み出されたデータ信号のブランキングを行うようにしたテレビ多重文字放送の受像機。」(「特許請求の範囲」欄、第1頁左下欄第4?14行目)

イ「(iii)横スクロールモード
第3図に示すように、メインの放送画像に対して、文字放送の文章の1行を表示するが、これを横方向にスクロールする」(「背景技術とその問題点」欄、第1頁右下欄第12?15行目)

ウ「ところで、横スクロールモードでは、第3図にも示すように、メインの放送画像に対して文字放送による1行がスーパーインポーズにより表示されるので、この表示位置に、メインの放送による文字など、例えば野球の打者の名前などが表示されると、両方の表示が重なり、両方とも見づらくなってしまう。」(「背景技術とその問題点」欄、第4頁左上欄第2?8行目)

エ「そのため、この発明においては、縦スクロール用の機能を利用して横スクロールの位置を縦方向に変更できるようにしたものである。
従って、横スクロールの文字とメインの放送の文字とが重なることを避けることができ、両者を見ることができる。」(「発明の概要」欄、第4頁左上欄第14?19行目)

オ「そして、(200)が横スクロールモードのときに、その縦方向における表示位置を変更するために追加された回路である。」(第5頁右上欄第16?18行目)

カ「従つて、横スクロールの表示をブロックのN行に行うときには、例えば第1行(N=1)に行うときには、これをキーボート(41)から入力する。」(第6頁左上欄第1?3行目)

キ「横スクロールの表示位置を任意の行とすることができるので、横スクロールの表示文字とメインの放送画像の文字とが重なったりすることがなく、両者を見ることができる。」(「発明の効果」欄、第6頁右下欄第13?16行目)

(2)甲第3号証に記載された技術
上記(1)ア?キによれば、甲第3号証には、以下の技術(以下、「甲3技術」という。)が記載されている。甲3技術の各構成については、以下、構成3a?構成3fと称する。

(甲3技術)
(3a)テレビ多重文字放送の受像機において、
(3b)メインの放送画像に対して、文字放送の文章の1行を表示するが、これを横方向にスクロールし、
(3c)横スクロールモードでは、メイン放送画像に対して文字放送による1行がスーパーインポーズにより表示されるので、この表示位置に、メインの放送による文字など、例えば野球の打者の名前などが表示されると、両方の表示が重なり、両方とも見づらくなってしまうことを避けるために、
(3d)横スクロールモードのときに、その縦方向における表示位置を変更するための回路を設け、
(3e)横スクロールの表示をブロックのN行に行うときには、例えば第1行(N=1)に行うときには、これをキーボートから入力することにより、
(3f)横スクロールの表示位置を任意の行とすることができ、横スクロールの表示文字とメインの放送画像の文字とが重なったりすることがなく、両者を見ることができるようにする
(3a)テレビ多重文字放送の受像機。

4 甲第4号証
(1)甲第4号証の記載事項
甲第4号証(特開平6-165139号公報)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は当審が付与した。)。

ア「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、映像信号に重畳して伝送された文字信号を抽出して所定位置に文字情報を画面表示するクローズド・キャプションデコーダ及びこのクローズド・キャプションデコーダを備え、文字情報を映像とともに画面表示するテレビジョン受信機に関する。
【0002】
【従来の技術】米国では、ろうあ者,難聴者が健常者と同様にテレビジョン放送を楽しめるように、音声と同じ内容を文字情報にして映像信号の垂直帰線期間内の走査線信号に重畳して伝送するクローズド・キャプション(文字多重)システムが多くのテレビジョン番組,ビデオソフト等に採用されており、文字の符号化方法,伝送方法などは FCC(連邦通信委員会)規格に基づいて細かく規定されている。また、日本では、クローズド・キャプションシステムを語学教材に利用することが考えられている。」

イ「【0004】データスライサ回路1は映像信号からキャプション情報を抽出し、デコーダ回路2は、抽出されたキャプション情報の表示モード(キャプション,テキスト),表示スタイル(ペイントオン,ポップオン,ロールアップ),文字内容,文字種(表示色,イタリック),表示位置などを規格に基づいて解析する。画面表示制御部3はデコーダ回路2の解析結果に従って文字種,表示位置などを制御して文字を含む映像信号を出力し、図8に示すような文字情報が映像とともに表示される。」

ウ「【0007】また、日本語字幕とクローズド・キャプションの英語字幕とを比較しようとする場合に、日本語字幕にクローズド・キャプションの字幕が重なって読みにくくなっても受け手側で表示位置を変更できないという問題がある。」

エ「【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係るクローズド・キャプションデコーダは、映像信号の垂直帰線期間に重畳されている符号化された文字信号を抽出して復号化し、画面上の所定位置に文字情報を表示するクローズド・キャプションデコーダにおいて、画面上の文字情報の表示位置を指定する手段と、文字信号に含まれる文字情報の表示アドレスを、指定された表示位置に応じた表示アドレスに変換する回路と、変換した表示アドレスに文字情報を表示する手段とを備えたことを特徴とする。」

オ「【0021】以上の結果、従来のクローズド・キャプションデコーダでは図2(a) のようにしか表示できなかったキャプション情報の表示位置を、図2(c) に示すような表示位置に変更することができ、日本語字幕とキャプション情報である英語字幕との重なりが避けられて両者を比較し易くなる。」

カ「【0023】
【発明の効果】以上のように、本発明に係るクローズド・キャプションデコーダ及びこれを備えたテレビジョン受信機は、映像信号の送信側で決定されたクローズド・キャプションによる文字情報の表示アドレスを受信側で変更することができるので、例えば、一定の表示位置に固定することにより文字情報に神経が集中し易くなり、また、オープン・キャプションによる文字情報と重ならない位置に移動することにより両者を比較し易くなるという優れた効果を奏する。」

(2)甲第4号証に記載された技術
上記(1)ア?カによれば、甲第4号証には、以下の技術(以下、「甲4技術」という。)が記載されている。甲4技術の各構成については、以下、構成4a?構成4dと称する。

(甲4技術)
(4a)映像信号に重畳して伝送された文字信号を抽出して所定位置に文字情報を画面表示するクローズド・キャプションデコーダを備え、文字情報を映像とともに画面表示するクローズド・キャプション(文字多重)システムのテレビジョン受信機において、
(4b)オープン・キャプションによる文字情報である日本語字幕にクローズド・キャプションの字幕が重なって読みにくくなっても受け手側で表示位置を変更できないという問題を解決するために、
(4c)クローズド・キャプションデコーダが、画面上の文字情報の表示位置を指定する手段と、文字信号に含まれる文字情報の表示アドレスを、指定された表示位置に応じた表示アドレスに変換する回路を備え、
(4d)クローズド・キャプションデコーダで、キャプション情報の表示位置を変更することで、送信側で決定されたクローズド・キャプションによる文字情報の表示アドレスを、オープン・キャプションによる文字情報と重ならない位置に移動する
(4a)クローズド・キャプション(文字多重)システムのテレビジョン受信機。

5 甲第5号証
(1)甲第5号証の記載事項
甲第5号証(特開2005-92734号公報)には、「複数言語表示処理装置及び複数言語表示システム」(発明の名称)として、図面とともに、以下の記載がある(下線は当審が付与した。)

ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の言語による情報を表示する複数言語表示処理装置及び複数言語表示システムに関する。」

イ「【0028】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態の複数言語表示システムの構成について説明する。
【0029】
図1に示すように、本実施の形態の複数言語表示システム10は、日本語、英語、中国語及び韓国語の文字列による情報を表示処理する複数言語表示処理装置20と、表示処理された情報を表示制御する表示制御装置30と、情報を表示する大型情報表示装置40とを備えている。なお、各言語の文字列は、各言語の文字の他に記号、数字及び句読点を含んでいる。
【0030】
複数言語表示処理装置20は、日本語、英語、中国語及び韓国語の文字列による情報の処理部からそれぞれ出力された文字列画像を合成する画像合成手段25と、合成された文字列画像を表示する画像モニタ手段26とを備えている。
【0031】
日本語の情報の処理部は、日本語の文字列を入力する日本語文字列入力手段21aと、日本語の文字列をスクロール表示する速度を設定する表示速度設定手段22aと、日本語の文字列を文字列画像に変換する画像変換手段23aと、日本語の文字列画像を表示する表示位置を決定する表示位置決定手段24aとを備えている。
【0032】
英語の情報の処理部は、英語の文字列を入力する英語文字列入力手段21bと、英語の文字列をスクロール表示する速度を設定する表示速度設定手段22bと、英語の文字列を文字列画像に変換する画像変換手段23bと、英語の文字列画像を表示する表示位置を決定する表示位置決定手段24bとを備えている。
【0033】
中国語の情報の処理部は、中国語の文字列を入力する中国語文字列入力手段21cと、中国語の文字列をスクロール表示する速度を設定する表示速度設定手段22cと、中国語の文字列を文字列画像に変換する画像変換手段23cと、中国語の文字列画像を表示する表示位置を決定する表示位置決定手段24cとを備えている。
【0034】
韓国語の情報の処理部は、韓国語の文字列を入力する韓国語文字列入力手段21dと、韓国語の文字列をスクロール表示する速度を設定する表示速度設定手段22dと、韓国語の文字列を文字列画像に変換する画像変換手段23dと、韓国語の文字列画像を表示する表示位置を決定する表示位置決定手段24dとを備えている。
【0035】
複数言語表示処理装置20は、例えばパーソナルコンピュータによって構成されている。表示制御装置30は、マイクロプロセッサ、ビデオメモリ、スクリーンコントロールユニット、音声増幅回路等で構成されている。大型情報表示装置40は、マトリクス状に配置された発光素子を有する大型画面、音声を出力するスピーカ等によって構成されている。また、大型情報表示装置40のリフレッシュレートは、例えば60Hzに設定され、1秒間に60個のフレーム画像を表示するようになっている。さらに、大型情報表示装置40は、駅、空港等の公共施設の屋内、ビル壁面、スタジアム等の屋外に設置され、各言語の情報を多数人に伝達できるようになっている。」

ウ「【0036】
日本語文字列入力手段21a、英語文字列入力手段21b、中国語文字列入力手段21c及び韓国語文字列入力手段21d(以下、各言語の文字列入力手段と総称する。)は、例えばインターネットに接続する通信回路、メモリ等で構成されている。
【0037】
各言語の文字列入力手段21a?21dは、インターネットに接続された所定のウェブサーバが有するコンテンツデータから各言語の文字列を抽出し、メモリに記憶するようになっている。
【0038】
例えば、中国語文字列入力手段21cが天気予報の情報を入力する場合は、中国語の天気予報の情報を有する所定のウェブサーバに接続し、HTML(Hyper Text Markup Language)、XML(Extensible Markup Language)等のマークアップ言語で記述された天気予報のコンテンツデータから天気予報の情報に係る中国語の文字列を予め設定されたデータ位置から抽出するようになっている。
【0039】
なお、オペレータの操作によって、ウェブサーバが有するコンテンツデータやネットワークに接続されたパーソナルコンピュータが有するテキストファイル等から所望の文字列を抽出するように構成してもよい。また、キーボード、スキャナ等よって各言語の文字列入力手段を構成し、例えば道路交通情報に係る各言語の文字列を入力するように構成してもよい。」

エ「【0040】
表示速度設定手段22a?22dは、大型情報表示装置40の予め設定された表示範囲において各言語の文字列画像が文字列方向と平行に並べてスクロール表示される際に、文字列画像の最初の文字が表示範囲に表示されてから文字列画像の最後の文字が表示範囲から消えるまでのスクロール表示時間が言語間でほぼ一致するようスクロール表示速度を言語毎に設定するようになっている。」

オ「【0046】
表示速度設定手段22a?22dは、例えば日本語文字列画像41を基準とするとき、日本語文字列画像41の最初の文字「中」が画面の右端40aから現れてから日本語文字列画像41の最後の文字「。」が画面の左端40bから消えるまでのスクロール表示時間が、英語文字列画像42、中国語文字列画像43及び韓国語文字列画像44のそれぞれのスクロール表示時間とほぼ一致するようスクロール表示速度を言語毎に設定するようになっている。
【0047】
例えば、日本語文字列画像41のスクロール表示速度を予め設定しておき、日本語文字列画像41の文字列長に対する他の言語の文字列長の比から他の言語のスクロール表示速度を言語毎に算出すればよい。日本語文字列画像41のスクロール表示速度を1とすると、英語文字列画像42、中国語文字列画像43及び韓国語文字列画像44のスクロール表示速度は、それぞれ2、1.1及び1.2となる。この結果、図3(a)?図3(c)に示すように、スクロール表示が開始されてから時間が経過するに従って、日本語文字列画像41の文字列長と日本語以外の文字列長との差が仮想上小さくなり、ほぼ同時にスクロール表示が終了することになる。」

カ「【0048】
画像変換手段23a?23dは、入力された各言語の文字列を予め設定された画像フォーマットに準拠した文字列画像に変換するようになっている。例えば、JIS漢字コード、ASCII(American Standard Code for Information Interchange)コード等の文字コード体系に基づいて各言語の文字列を識別し、この文字列を例えばBMP(Basic Multilingual Plane)フォーマットの文字列画像に変換する。
【0049】
表示位置決定手段24a?24dは、大型情報表示装置40によって表示される各言語の文字列画像の表示位置を決定するようになっている。例えば、日本語文字列画像41は1行目、英語文字列画像42は2行目というように各言語の文字列画像の表示位置が決定される。
【0050】
画像合成手段25は、各言語の文字列画像を一つの合成画像にフレーム毎に合成し、画像モニタ手段26及び表示制御装置30にフレーム毎に出力するようになっている。」

(2)甲第5号証に記載された発明
ア 複数言語表示システムについて
上記(1)アによれば、甲第5号証には、『複数の言語による情報を表示する複数言語表示システム』が記載されている。

イ 複数言語表示処理装置について
上記(1)イによれば、「複数言語表示システム」が、『日本語、英語、中国語及び韓国語の文字列による情報を表示処理する複数言語表示処理装置』を備えることが記載されている。

ウ 表示制御装置について
上記(1)イによれば、甲第5号証には、「複数言語表示システム」が、『表示処理された情報を表示制御する表示制御装置』を備えることが記載されている。

エ 大型情報表示装置について
上記(1)イによれば、甲第5号証には、「複数言語表示システム」が、『情報を表示する大型情報表示装置』を備えることが記載されている。

オ 文字列入力手段について
上記(1)イによれば、「複数言語表示処理装置20」は、「日本語、英語、中国語及び韓国語の文字列による情報の処理部」を備えている。
また、上記(1)ウによれば、「日本語文字列入力手段21a、英語文字列入力手段21b、中国語文字列入力手段21c及び韓国語文字列入力手段21d(以下、各言語の文字列入力手段と総称する。)は、例えばインターネットに接続する通信回路、メモリ等で構成されている」と記載されている。
また、上記(1)ウによれば、「各言語の文字列入力手段21a?21dは、インターネットに接続された所定のウェブサーバが有するコンテンツデータから各言語の文字列を抽出し、メモリに記憶するようになっている」と記載されている。
したがって、甲第5号証には、「複数言語表示処理装置」が、『インターネットに接続された所定のウェブサーバが有するコンテンツデータから日本語、英語、中国語及び韓国語の各言語の文字列を抽出し、メモリに記憶する、各言語の文字列入力手段』を備えることが記載されている。

カ 表示速度設定手段について
上記(1)エによれば、「表示速度設定手段22a?22dは、大型情報表示装置40の予め設定された表示範囲において各言語の文字列画像が文字列方向と平行に並べてスクロール表示される際に、文字列画像の最初の文字が表示範囲に表示されてから文字列画像の最後の文字が表示範囲から消えるまでのスクロール表示時間が言語間でほぼ一致するようスクロール表示速度を言語毎に設定する」と記載されている。
また、上記(1)オによれば、「表示速度設定手段22a?22dは、例えば日本語文字列画像41を基準とするとき、日本語文字列画像41の最初の文字「中」が画面の右端40aから現れてから日本語文字列画像41の最後の文字「。」が画面の左端40bから消えるまでのスクロール表示時間が、英語文字列画像42、中国語文字列画像43及び韓国語文字列画像44のそれぞれのスクロール表示時間とほぼ一致するようスクロール表示速度を言語毎に設定する」と記載されている。
また、上記(1)オによれば、「日本語文字列画像41のスクロール表示速度を予め設定しておき、日本語文字列画像41の文字列長に対する他の言語の文字列長の比から他の言語のスクロール表示速度を言語毎に算出すればよい」と記載されている。
したがって、甲第5号証には、「複数言語表示処理装置」が、『大型情報表示装置の予め設定された表示範囲において各言語の文字列画像が文字列方向と平行に並べてスクロール表示される際に、文字列画像の最初の文字が表示範囲に表示されてから文字列画像の最後の文字が表示範囲から消えるまでのスクロール表示時間が言語間でほぼ一致するようスクロール表示速度を言語毎に設定する表示速度設定手段であって、日本語文字列画像のスクロール表示速度を予め設定しておき、日本語文字列画像の文字列長に対する他の言語の文字列長の比から他の言語のスクロール表示速度を言語毎に算出する表示速度設定手段』を備えることが記載されている。

キ 画像変換手段について
上記(1)カによれば、「画像変換手段23a?23dは、入力された各言語の文字列を予め設定された画像フォーマットに準拠した文字列画像に変換するようになっている」と記載されている。
したがって、甲第5号証には、「複数言語表示処理装置」が、『入力された各言語の文字列を予め設定された画像フォーマットに準拠した文字列画像に変換する画像変換手段』を備えることが記載されている。

ク 表示位置決定手段について
上記(1)カによれば、「表示位置決定手段24a?24dは、大型情報表示装置40によって表示される各言語の文字列画像の表示位置を決定するようになっている」と記載されている。
したがって、甲第5号証には、「複数言語表示処理装置」が、『大型情報表示装置によって表示される各言語の文字列画像の表示位置を決定する表示位置決定手段』を備えることが記載されている。

ケ 画像合成手段について
上記(1)カによれば、「画像合成手段25は、各言語の文字列画像を一つの合成画像にフレーム毎に合成し、画像モニタ手段26及び表示制御装置30にフレーム毎に出力する」と記載されている。
したがって、甲第5号証には、「複数言語表示処理装置」が、『各言語の文字列画像を一つの合成画像にフレーム毎に合成し、表示制御装置にフレーム毎に出力する画像合成手段』を備えることが記載されている。

コ まとめ
以上によれば、甲第5号証には、以下の発明が記載されている(以下、甲5発明」という。)甲5発明の各構成については、以下、構成5a?構成5dと称する。

(甲5発明)
(5a)日本語、英語、中国語及び韓国語の文字列による情報を表示処理する複数言語表示処理装置と、
(5b)表示処理された情報を表示制御する表示制御装置と、
(5c)情報を表示する大型情報表示装置とを備える、
(5d)複数の言語による情報を表示する複数言語表示システムであって、
(5a)前記複数言語表示処理装置は、
(5a1)インターネットに接続された所定のウェブサーバが有するコンテンツデータから日本語、英語、中国語及び韓国語の各言語の文字列を抽出し、メモリに記憶する、各言語の文字列入力手段と、
(5a2)大型情報表示装置の予め設定された表示範囲において各言語の文字列画像が文字列方向と平行に並べてスクロール表示される際に、文字列画像の最初の文字が表示範囲に表示されてから文字列画像の最後の文字が表示範囲から消えるまでのスクロール表示時間が言語間でほぼ一致するようスクロール表示速度を言語毎に設定する表示速度設定手段であって、日本語文字列画像のスクロール表示速度を予め設定しておき、日本語文字列画像の文字列長に対する他の言語の文字列長の比から他の言語のスクロール表示速度を言語毎に算出する表示速度設定手段と、
(5a3)入力された各言語の文字列を予め設定された画像フォーマットに準拠した文字列画像に変換する画像変換手段と、
(5a4)大型情報表示装置によって表示される各言語の文字列画像の表示位置を決定する表示位置決定手段と、
(5a5)各言語の文字列画像を一つの合成画像にフレーム毎に合成し、表示制御装置にフレーム毎に出力する画像合成手段を備える、
(5d)複数言語表示システム。

6 甲第6号証
(1)甲第6号証の記載事項
甲第6号証(特開平8-227097号公報)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は当審が付与した。)。

ア「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、外部入力装置とカメラ本体とで構成されたカメラ装置に関し、より詳細には、上記外部入力装置を用いて任意に設定した設定メッセージデータ、または、上記カメラ本体側に設けられたメッセージ群記憶部に格納された複数のメッセージデータのうちから任意に選択された選定メッセージデータに対応する文字をフィルム上もしくは該フィルムとは別の記録媒体に記録すると共に記録されるメッセージデータに対応する文字またはイメージをカメラ本体に表示するようにしたカメラ装置に関するものである。」

イ「【0012】また、本発明の上記表示手段は、写し込み記録したメッセージを所定の速度でスクロール表示し得るように構成したことを特徴とするものである。また、本発明の上記表示手段は、写し込み記録したメッセージを所定の時間ごとに1文字または数文字づつ順次表示し得るように構成したことを特徴とするものである。また、本発明の上記表示手段は、写し込み記録したメッセージを、その文字数が多くなる程速い速度でスクロール表示をし、または短い時間間隔で順次表示し得るように構成したことを特徴とするものである。」

ウ「【0031】また、外部表示器36の上部右部には、ドットマトリックス(例えば上下方向に7ドットで左右方向に14ドット)形式のマトリックス表示部52が設けられている。このマトリックス表示部52の下位には、電源電池の消耗状態を示すための表示部53とフィルム給送状態を示す表示部54が順に位置されている。さらに、外部表示器36の長辺の上部左側には測距状態を3つの山で示す表示部55が位置されている。」

エ「【0033】なお、マトリックス表示部52には、メッセージデータの表示が詳細は後述するように行われると共に、撮影駒数を2桁の数字で表示することも行われるようになっている。また、表示部51Gは、表示部51B,51Cの間に位置された補助表示部であり、表示部51B,51Cで時分を表す際にはこの表示部51Gが表示されることになる。」

オ「【0044】このときのタイマー経過時間tは、次の#33で監視され、タイマー設定時間t_(1) と等しくなったか否かが比較され、NOの場合にはt=t_(1) となるまで待機し、YESとなったときに次の#34に移行する。このタイマー設定時間t_(1) は、露光終了してからスクロール表示が開始されるまでの所定の設定時間である。そして、この設定時間が経過したときに次の#34に移行して
m=(n×5)+(n-1)+(p-1),
t_(2) =t_(w) /m
が実行される。
【0045】ここで、nは表示すべきメッセージデータの文字数であり、mはマトリックス表示部52(図2参照)の水平方向の全ライン数(スクロールライン数)であり、この例では14個である。マトリックス表示部52(図2参照)の1文字当たりの水平方向のドット数は、この例では5個である。t_(w) はフイルム給送時間としているが、次の撮影動作までの空き時間があるために、若干の時間αを加え、給送時間+αに設定する。t_(2) は水平方向の1画素当たりのスクロール時間である。
【0046】尚、スクロール表示時間t_(2) を、一定にせず、メッセージデータの文字数に応じて変化させるのは、次のような理由による。即ち、写し込み記録したメッセージデータを一定の速度(撮影者が読み易い速度)とするのが自然であると考えられるが、メッセージデータの文字数nが多い場合、一定速度(間隔)表示であるとフィルムの給送が終了しても、依然としてメッセージ表示を続けているため、次の撮影動作に入れないという不都合が生ずる。
【0047】このような不都合を回避するために、ステップ34に示す演算を実行し、スクロール表示時間t_(2) を変化させるようにしているのである。例えば、ある一定時間t_(w) (給送時間+α程度が妥当と考えられる)をスクロールライン数mまたは文字数nで割った値を、1スクロール表示時間t_(2) として設定するのである。具体的には、図3において(a)→(b)に変化する時間である。
【0048】スクロールライン数(マトリックス表示部52の水平方向のライン総数)mは、ステップ34のように、文字数nとドットマトリックス列数pとで決まる。上記式中の(n×5)は、メッセージデータを表示するのに必要なライン数、(n-1)は、文字と文字の間のために必要なライン数、(p-1)は、文字を最後までスクロールするのに必要なライン数、つまり、例えば「ホッカイドウ」というメッセージデータの「ウ」の字がマトリックス表示部52の右から左に流れて消えるためには、(p-1)が必要なのである。」

カ「【0102】また、写し込み記録したメッセージをその文字数が多くなる程、速いスクロール表示をし、または短い時間間隔で順次表示し得るようにも構成することができ、このように構成した場合には、フィルムの給送時間内にメッセージの表示が終了するようにでき、メッセージ表示を継続しているために次の撮影動作に入れない、というような不都合を解消し得るカメラ装置を提供することができる。」

(2)甲第6号証に記載された技術
上記(1)ア?カによれば、甲第6号証には、以下の技術(以下、「甲6技術」という。)が記載されている。

(甲6技術)
「カメラ装置において、
外部表示器のマトリックス表示部にメッセージデータの表示を行う際に、
ある一定時間(給送時間+α程度)と、表示すべきメッセージデータの文字数に基づいて、写し込み記録したメッセージを、その文字数が多くなる程速い速度でスクロール表示する技術。」

7 甲第7号証
(1)甲第7号証の記載事項
甲第7号証(特開2000-140419号公報)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は当審が付与した。)。

ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、仮想3D(3次元)空間上の走行路を移動する移動物体、たとえば、4輪車や2輪車などの移動状態を表示画面上に2次元的に表示する3Dシミュレーション装置および方法に関する。」

イ「【0008】以上、説明したように、従来の3Dシミュレーション装置では、自動走行させる車両の軌跡は予め決めておかなければならず、また、遊戯者が操作する車両の移動軌跡は、未来的なものについてはわからないという理由から、自動走行している車両側から追突、接触されるというゲーム展開が生じてしまっていた。
【0009】そこで、本発明の目的は、上述の点に鑑みて、仮想3D空間上を走行させている車両に起因する追突や接触を極力回避することができる3Dシミュレーション装置および方法を提供することにある。」

ウ「【0024】なお、追突の場合の要件は以下のとおりである。
【0025】a)遊戯者の車両の移動速度よりも自動走行の車両の移動速度が大きい。あるいはその逆。
【0026】b)遊戯者の車両の移動軌跡が自動走行の車両の移動軌跡と一致する。
【0027】c)2つの車両の現在位置の間の直線距離が所定範囲内となる。」

エ「【0029】本実施形態では後述するが、自動走行の車両(図5の符号2、3)が遊戯者の車両(図5の符号1)に対して追突、接触することが事前に3Dシミュレーション装置において予測された場合には、自動走行の車両が追突または接触を回避するための自動走行の車両の新たな走行軌跡(第2の軌跡)を設定する。追突、接触の危険がなくなった場合は、これまでの走行軌跡を解除して、予め定められた走行軌跡に自動走行の車両が復帰するための走行軌跡(第3の軌跡)を設定する。自動走行の車両が、予め定められた軌跡に復帰した場合には、以後、予め定められた軌跡(第1の軌跡)に沿って車両を自動走行させる。」

オ「【0039】一方、ステップS20で2つの車両の間の距離が閾値よりも小さい場合には、次に、自動走行の車両が現在、走行している走行路の形状が右カーブか左カーブのコース属性を求める。この走行路の領域を示す位置のデータと自動走行の現在位置とを比較することにより、自動走行の車両が走行路のどのカーブや直線部分に位置しているかが判別できるので、この判別結果に基づきコース属性を設定する(ステップS30)。」

カ「【0051】1)上述の実施形態では、遊戯者の車両と他の自動走行の車両の接触を予測したが、自動走行の車両同士の接触を予測して、回避動作を行うようにしてもよい。また、特定の車両については上記予測処理を行うわず、接触事故を偶発的に行うようにしてもよい。」

(2)甲第7号証に記載された技術
上記(1)ア?カによれば、甲第7号証には、以下の技術(以下、「甲7技術」という。)が記載されている。

(甲7技術)
「4輪車や2輪車などの移動状態を表示画面上に2次元的に表示する3Dシミュレーション装置において、
自動走行の車両が遊戯者の車両に対して追突、接触することが事前に3Dシミュレーション装置において予測された場合には、自動走行の車両が追突または接触を回避するための自動走行の車両の新たな走行軌道を設定する技術。」

8 甲第8号証
(1)甲第8号証の記載事項
甲第8号証(特開平7-306632号公報)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は当審が付与した。)。なお、丸付き数字は(1)のように括弧付き数字で代用した。

ア「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、操船を模擬訓練するための操船シミュレータに係り、特に、訓練に現実感があり、訓練シナリオの作成が容易な操船シミュレータに関するものである。」

イ「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の操船シミュレータにあっては、相手船は予定航路を自動航行するだけであるから、訓練船との衝突が起きそうになっても、そのまま予定航路を航行し続ける。実際の海上では、当然、相手船も避航を行うので、従来の操船シミュレータの相手船は現実的でなく、訓練に現実感がなくなる。訓練シナリオを作成するときに、訓練船の予定航路と対応させて相手船に避航航路を含めた予定航路を与えれば、見掛上、相手船も避航を行うようになる。しかし、このような複雑な訓練シナリオを作成することは煩わしい。また、訓練船は生徒が操船するので訓練シナリオ通りの予定航路を航行するとは限らず、訓練船が予定航路から外れて航行しているとき、相手船の訓練シナリオ通りの避航航路は現実と異なるものになる。」

ウ「【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、操船を模擬訓練するために、訓練船の模擬視界を表示する表示装置とその訓練船を操船する操舵装置とを備え、訓練船の予定航路と相手船の予定航路とを定めた訓練シナリオを有し、この訓練シナリオに従って相手船を自動航行させる操船シミュレータにおいて、相手船が相手船及び訓練船の位置、針路及び速度情報から判断して訓練船に対して避航を行うようにしたものである。
【0009】複数の相手船を航行させ、各相手船が訓練船及び他の相手船に対して避航を行ってもよい。」

エ「【0011】
【作用】上記構成により、相手船は、相手船自身の位置、針路及び速度情報と、訓練船の位置、針路及び速度情報とから将来の衝突を予測し、これを回避する避航航路を自身で判断し、訓練船に対して避航を行う。これにより実際の海上と同じように相手船も避航を行うようになり、訓練に現実感がもたらされる。また、訓練シナリオは予定航路を定めるだけでよいので作成が容易となる。
【0012】複数の相手船を航行させる場合、相手船が訓練船に対して避航を行うだけでなく、他の相手船に対して避航を行うようにすることにより、各相手船が互いに対して避航を行うようになり、訓練に現実感がもたらされる。また、訓練シナリオは予定航路を定めるだけでよいので作成が容易となる。」

オ「【0036】(2)の避航操船は、以下の条件のすべてが成立したとき行う。
【0037】条件1)避航対象船94とのTCPA(最接近時間)が正の値である。
【0038】条件2)避航対象船94が避航開始領域(相手船92を基準としたある領域;後述)内にある。
【0039】条件3)相手船92及び避航対象船94が現在の針路及び速度で航行すると仮定した場合、TCPA時間後、相手船92が避航対象船94の閉塞領域(避航対象船94を基準としたある領域;後述)内に侵入してしまう。」

(2)甲第8号証に記載された技術
上記(1)ア?オによれば、甲第8号証には、以下の技術(以下、「甲8技術」という。)が記載されている。

(甲8技術)
「操船を模擬訓練するための操船シミュレータにおいて、
相手船は、相手船自身の位置、針路及び速度情報と、訓練船の位置、針路及び速度情報とから将来の衝突を予測し、これを回避する避航航路を自身で判断し、訓練船に対して避航を行う技術。」

9 甲第9号証
甲第9号証(不服2007-8023の審決)は、平成10年11月11日の出願である特願平10-321089号についての審決であり、以下の記載がある。
なお、甲第9号証は、本件特許の出願日よりも後の、平成21年8月28日に発行されたものである。

(1)「シミュレーション装置の分野では、表示画面上に現れる(装置側制御による)自動操縦で動く移動体(車両、船舶など)の移動軌跡の設定制御方法として、
(1)当該自動操縦の移動体とプレーヤ操作の移動体(車両、船舶など)間の相対的な位置及び速度の関係が、予め定められた条件を充たす場合は両者が衝突するものと予測する予測手段と、
(2)当該衝突が予測される場合には衝突回避のため、前記自動操縦の移動体側に移動軌跡を変更する軌跡変更手段、
とを備えることは、記載事項オ、カ(引用例2)及び引用例2の図8の開示内容や、記載事項キ、ク(周知例)からみて、従来周知のものであると言える。」(「4.当審の判断」)

ここで、上記記載中の「引用例2」は、特開平3-97485号公報(甲第10号証)であり、「周知例」は、特開平7-306632号公報(甲第8号証)である。

10 甲第10号証
(1)甲第10号証の記載事項
甲第10号証(特開平3-97485号公報)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は当審が付与した。)。

ア「2.特許請求の範囲
(中略)
(2)表示装置とハンドルとを備え、プレーヤーのハンドル操作に応じて該表示装置の表示面においてプレーヤーの被操作物が操作されるビデオゲーム装置において、
クラクション装置を設けると共に、該クラクション装置の操作に応じて前記表示装置に表示されたプレーヤーの被操作物以外の物体の表示面における動きに、変化を生じさせることを特徴とするビデオゲーム装置。」(第1頁左下欄第4行目?右下欄第1行目)

イ「第8図はクラクション操作した場合に,プレーヤーの操作する以外の自動車がプレーヤーの自動車との事故を回避するように表示画面上で動きに変化を生じさせるための、ゲーム演算回路53の動作を示すフローチャートである。ステップ70?75によって、衝突を回避するように他の車は動く。
また、ゲーム状況に応じてゲーム演算回路53がプレーヤー台2を動かせるように制御する。」(第4頁左上欄第11?17行目)

(2)甲第10号証に記載された技術
上記(1)ア、イによれば、甲第10号証には、以下の技術(以下、「甲10技術」という。)が記載されている。

(甲10技術)
「プレーヤーのハンドル操作に応じて表示装置の表示面においてプレーヤーの自動車が操作されるビデオゲーム装置において、
クラクション操作した場合に,プレーヤーの操作する以外の自動車がプレーヤーの自動車との事故を回避するように表示画面上で動きに変化を生じさせる技術。」

11 甲第11号証
甲第11号証(特開2001-157782号公報)には、発明者として「川上量生」の記載があり、発明の名称として「対戦相手決定システム」と記載され、要約には、ネットワークゲームに関する記載がある。

12 甲第12号証
甲第12号証(特開2001-170360号公報)には、発明者として「川上量生」の記載があり、発明の名称として「対戦ゲーム観戦システム」と記載され、要約には、ネットワーク上で行われる対戦ゲームに関する記載がある。
また、段落0024には、「前記対戦ゲームは、例えば、カーレースゲーム」との記載がある。

13 甲第13、14号証
(1)甲第13号証の記載事項
甲第13号証(SMILで魅せるストリーミングコンテンツ作成ガイド)には、以下の事項が記載されている。

ア「RealSystemとSMILとの関係で特筆すべきは、RealSystem G2以降、以下のようなファイル形式をSMILで統合的に扱えることです。特に「RealText」と「RealPix」は、SMILの書式にしたがってRealNetworks社が独自に拡張した形式です。これにより、SMILコンテンツの制作の幅が広がりました。」(第59頁「対応ファイル形式」)

イ「テキストデータを、XMLベースの言語でストリーミング配信します。テキストの大きさや色、スクロールなどを設定できます。」(第60頁「対応ファイル形式」欄の「RealText(.rt)」)

ウ「RealOne Playerは、もともとRealPlayer、RealJukebox、ブラウザ機能等をひとつに統合したものなので、ストリーミング配信やダウンロード、Webの閲覧のほか、音楽の再生・管理、CDの作成、ニュースやスポーツ、エンターテイメント等のチャンネル提供など、さまざまな機能を実装しています。」(第61頁「RealOne Platformの特徴」欄)

エ「RealTextはRealSystem G2から登場した新しいデータタイプですが、これを使用することで、テキストのエフェクトやタイミングの指定等が可能になります。SMILと組み合わせて字幕表示などに重宝しますので、記述法はマスターしておきましょう。」(第103頁「RealTextの作成」欄冒頭)

オ「表示するウィンドウの形式を指定します。スクロールのない「generic」(デフォルト)の他、横方向にスクロールする「marquee」「tickertape」、縦方向にスクロールさせる「scrollingnews」、文字の表示に合わせて上方向にスクロールする「teleprompter」があります(後述)。」(第105頁「●type」)

カ「表示するプレゼンテーションの長さを指定します。」(第105頁「●duration(必須)」)

キ「表示内容をループするか指定します。」(第106頁「●loop(true/false)」)

ク「文字が水平方向へ1秒あたりに動くピクセル数を指定します。」(第106頁「●crawlrate」)

ケ「文字が上下方向へ1秒あたりに動くピクセル数を指定します。」(第106頁「●scrollrate」)

コ「横方向にスクロールするタイプです。」(第110頁「●marquee」)

サ「marqueeと同じく横方向にスクロールするタイプですが、こちらは上下2段に分けて表示することができます。」(第110頁「●tickertape」)

シ「縦方向にスクロールするタイプです。」(第111頁「●scrollingnews」)

(2)甲第14号証の記載事項
甲第14号証(ストリーミングコンテンツデザインガイドSMIL BOOK)には、以下の事項が記載されている。

ア「RealTextは、RealNetworks社によって1998年7月13日にRealSystem G2と同時に発表されました。XMLベースで策定された言語で、テキストファイルに専用のマークアップを使うことにより文字情報のストリーミング配信を行います。」(第036頁第7?10行目)

イ「動きのあるテキスト配信に加えて、自分でスクロールするタイプの解説やSMILコンテンツのリンクやメニューなどに使われています。」(第036頁第18?20行目)

ウ「RealTextには、テキスト表示の方法ごとに異なるウィンドウタイプが用意されています。種類は「generic」、「tickertape」、「marquee」、「scrollingnews」、「teleprompter」の5つ、デフォルトのウィンドウタイプはgenericです。ウィンドウタイプは、のtype="?"で指定します。」(第162頁第2?5行目)

エ「横方向にスクロールするテキストフィールド。(中略)後述するウィンドウタイプ「marquee」と異なりテキストフィールドの上端に文字をそろえます。使用するタグはmarqueeと同じです。」(第163頁「ウィンドウタイプ02 tickertape」欄)

オ「テキストが一秒間に横方向に移動する距離をピクセル数で設定。」(第164頁「crawlrate="?"」)

カ「この属性はtickertapeもしくはmarqueeで使う設定。再生しているRealTextが画像ウィンドウの外に移動して何も表示されなくなると、最初から再生する。」(第165頁「loop="?"」)

キ「横方向にスクロールするテキストフィールド。tickertapeと異なりテキストフィールドの中央にそろえます。使用するタグはtickertapeと同じです。」(第165頁「ウィンドウタイプ03 marquee」欄)

ク「常時縦方向にスクロールして、映画のエンドクレジットのような表示を行うテキストフィールド。スクロール速度は内の「scrollrate」で指定可能で、用途に応じて変えることができます。」(第167頁「ウィンドウタイプ04 scrollingnews」欄)

ケ「テキストが一秒間に縦方向に移動する距離をピクセル数で設定。」(第168頁「scrollrate="?"」)

(3)甲第13、14号証に記載された技術
上記(1)、(2)によれば、甲第13、14号証には、『RealPlayerにおいて、SMILの拡張であるRealTextによりテキストをスクロール表示する技術』が記載されている。

14 甲第15、16号証
(1)甲第15号証の記載事項
甲第15号証(macromedia FLASH ActionScriptサンプル集)には、以下の事項が記載されている。

ア「・テキストイメージが横に流れます。」(第72頁「ムービーのポイント」欄)

イ「・手前のムービークリップのほうが大きく、速く動きます。」(第72頁「ムービーのポイント」欄)

ウ「・流れるコースは乱数で決まります。」(第72頁「ムービーのポイント」欄)

エ「ムービーを再生すると、「ACTIONSCRIPT」が左方向へ、…流れます。」(第72頁「ムービーの内容」欄)

オ また、甲第15号証から、下記事項が看取できる。
(ア)大きさがそれぞれ異なる(つまり、相対的速さがそれぞれ異なる)複数のテキスト「ACTIONSCRIPT」が、背景画像上に時間的及び空間的に重なるように表示されている(第72頁の図)。

(2)甲第16号証の記載事項
甲第16号証(FLASH ActionScriptスーパーサンプル集 1.0/2.0対応版)には、以下の事項が記載されている。

ア「ムービーを再生すると、「ACTIONSCRIPT test」が左方向へ、(中略)と流れます。」(第112頁「ムービーの概要」欄)

イ「遠くほど小さく、手前ほど大きくする」(第116頁「スクリプトの解説」欄)

ウ「遠くほど遅く、手前ほど速く動かす」(第117頁「スクリプトの解説」欄)

エ また、甲第16号証から、下記事項が看取できる。
(ア)大きさがそれぞれ異なる(つまり、相対的速さがそれぞれ異なる)複数のテキスト「ACTIONSCRIPT test」が、背景画像上に時間的及び空間的に重なるように表示されている(第112頁の図)。

(3)甲第15、16号証に記載された技術
上記(1)、(2)によれば、甲第15、16号証には、『背景画像上に複数のテキストを横に流す際に、手前ほど速く動かす技術』が記載されている。

15 甲第17、20?22号証
(1)甲第17号証の記載事項
甲第17号証(Final Cut Pro 5 Hyper Handbook)には、以下の事項が記載されている。

ア「テキストが画面内を横に流れます。方向は「左へ」と「右へ」が選択可能です。スクロールの速さは、クリップの長さによって決定されます。」(第168頁「横スクロール」欄)

イ また、甲第17号証から下記事項が把握可能である。
(ア)タイトルクリップがタイムラインに対応付けられている時間が一定である(第164頁上から2番目の図,同上から4番目の図,第165頁上図)。

(2)甲第20号証の記載事項
甲第20号証(アップル、Final Cut Studioを発表)には、Final Cut Studioには、Final Cut Pro 5が含まれることが記載されている。

(3)甲第21号証の記載事項
甲第21号証の1及び2は、Internet Archiveにおける、2006年7月25日付けのウェブページであり、Final Cut Studio 5.1には、Final Cut Pro 5.1が含まれることが記載されている。

(4)甲第22号証の記載事項
甲第22号証(動作確認報告書(Final Cut Pro))には、Final Cut Pro 5.1において、テキストのスクロール速度がテキスト長によって決定されること、及び、複数のテキストが重なり得ることが記載されている。

(5)甲第17、20?22号証に記載された技術
上記(1)によれば、甲第17号証には、『動画編集ソフトであるFinal Cut Pro 5において、テキストのスクロールの速さを、クリップの長さによって決定する技術』が記載されている。
また、上記(2)?(4)によれば、甲第20?22号証には、『動画編集ソフトであるFinal Cut Pro 5.1において、テキストのスクロール速度がテキスト長によって決定され、複数のテキストが重なり得る技術』が記載されている。

16 甲第18号証
甲第18号証の1?4として提出された公開特許公報のフロントページ(全14件)には、それぞれ以下の記載がある。

(1)甲第18号証の1として、発明者「永松 貴臣」の記載があり、テーマコード「5C064」の記載があるものが4件(特開2005-109928号公報、特開2005-109929号公報、特特開2005-333279号公報、特開2006-5896号公報)、「2C001」の記載があるものが1件(特開2005-131231号公報)。

(2)甲第18号証の2として、発明者「久保 一人」の記載があり、テーマコード「5C064」の記載があるものが2件(特開2005-332161号公報、特開2005-333389号公報)、「2C001」の記載があるものが2件(特開2005-286670号公報、特開2005-332187号公報)。

(3)甲第18号証の3として、発明者「釣崎 宏」の記載があり、テーマコード「5C064」の記載があるものが1件(特開2005-333399号公報)、「2C001」の記載があるものが1件(特開2007-229329号公報)。

(4)甲第18号証の4として、発明者「戸田 淳」の記載があり、テーマコード「5C064」の記載があるものが1件(特開2005-333403号公報)、「2C001」の記載があるものが2件(特開2003-93745号公報、特開2006-279814号公報)。

17 甲第19号証
(1)甲第19号証の記載事項
甲第19号証(Web製作演習 Flash MX 2004)には、以下の事項が記載されている。

ア「重なり判定を行うためのオブジェクトをステージに配置する。」(第188頁)

イ「移動したポップアップウインドウをある一定の位置に移動させると、元の位置に戻るようにします。」(第188頁)

ウ「ここでは、ポップアップウィンドウが最初に配置されていたのと同じ座標位置に、別のインスタンスを配置しておきます。」(第188頁)

エ「ポップアップウィンドウとそのインスタンスが重なったとき、ポップアップウィンドウの座標にインスタンスの座標を代入します。こうすることで、ポップアップウィンドウが元の座標位置に戻ることになります。」(第188頁)

オ また、甲第19号証から、下記事項が把握可能である。
(ア)ポップアップウィンドウが横書きのテキストを含む(第189頁ステップ4,5の図等)。

(イ)ポップアップウィンドウとインスタンスの重なり判定が背景画像上で行われている(第189頁ステップ4,5の図等)。

(ウ)背景画像が表示されている領域に横書きのテキストが存在している(第189頁ステップ4,5の図等)。

(2)甲第19号証に記載された技術
上記(1)によれば、甲第19号証には、『移動したポップアップウインドウをある一定の位置に移動させると、元の位置に戻るようにする技術』が記載されている。

第5 当審の判断
1 無効理由1について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。

(ア)構成1Aについて
構成1aの「ライブ配信サーバ」は、構成1bの「複数のライブ閲覧者端末」からチャット情報を受け取り、ライブ閲覧者の端末にリアルタイムで配信する(構成1a4、構成1a5)から、構成1Aの「複数の端末装置から送信されるコメント情報を受信して各端末装置へ配信するコメント配信サーバ」に相当する。
構成1bの「ライブ閲覧者端末」は、「配信されるライブ映像を閲覧しながら、同じ画面上でチャット、動画、静止画、音声によりコミュニケーションを行うことができるクライアント」であり、構成1aの「ライブ配信サーバ」からチャット入力データが付加されたライブ映像データが配信され(構成1a5)、ライブ配信される映像を再生し(構成1b2)、配信映像中にチャット文が表示される(構成1b5)から、構成1Aの「前記コメント配信サーバに接続され動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置」に相当する。
構成1cの「ライブ配信システム」は、構成1Aの「コメント表示システム」に相当する。
したがって、本件特許発明1と甲1発明は、「複数の端末装置から送信されるコメント情報を受信して各端末装置へ配信するコメント配信サーバと、前記コメント配信サーバに接続され動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置とを有するコメント表示システムにおける表示装置」である点で一致する。

(イ)構成1Bについて
構成1bの「ライブ閲覧者端末」は、構成1aの「ライブ配信サーバ」から、チャット入力データが付加されたライブ映像データがリアルタイムで配信される(構成1a5)ものである。
また、構成1bの「ライブ閲覧者端末」は、構成1aの「ライブ配信サーバ」から、動画、静止画、音声、音楽、文字など様々な形式のデータの再生を制御して同期させる同期マルチメディア言語ファイルが送信される(構成1a3)ものである。
以上によれば、構成1bの「ライブ閲覧者端末」は、構成1aの「ライブ配信サーバ」から、動画、静止画、音声、音楽、文字など様々な形式のデータの再生を制御して同期させる同期マルチメディア言語ファイルが送信されることにより、チャット入力データが付加されたライブ映像データがリアルタイムで配信されるものと解するのが相当である。

また、構成1aの「ライブ配信サーバ」では、「発言」と「発言時間(ライブ開始からの差分時間)」が「ライブ閲覧者端末のチャット入力機能によって行われたチャット情報のログ」として「チャット情報データベース」に格納される(構成1a4)から、構成1bの「ライブ閲覧者端末」にリアルタイムで配信されるチャット入力データは、「発言」と「発言時間(ライブ開始からの差分時間)」が対応付けられたデータと解するのが相当である。

また、ライブ配信システムのライブ閲覧者端末において、ライブ配信サーバから配信されたデータをメモリ等の記憶部に記憶させることは極めて一般的に行われることである。
よって、構成1bの「ライブ閲覧者端末」は、ライブ配信サーバから配信されたチャット入力データである、「発言」と、「発言時間(ライブ開始からの差分時間)」が対応付けられたデータを記憶する記憶部を備えていると解するのが相当である。

そして、当該「発言」は、構成1Bの「コメント」に相当し、当該「発言時間(ライブ開始からの差分時間)」は、構成1Bの「コメントが付与された時点における、動画の最初を基準として動画の経過時間を表す動画再生時間」である「コメント付与時間」に相当する。
また、当該「チャット入力データ」は、「発言」と、「発言時間(ライブ開始からの差分時間)」が対応付けられたデータであるから、構成1Bの「コメント情報」に相当し、当該「記憶部」は、構成1Bの「コメント情報記憶部」に相当する。
したがって、本件特許発明1と甲1発明は、「コメントと、前記コメントが付与された時点における、前記動画の最初を基準として動画の経過時間を表す動画再生時間をコメント付与時間として前記コメントに対応づけてコメント情報として記憶するコメント情報記憶部」を有する点で一致する。

(ウ)構成1Cについて
構成1aの「ライブ配信サーバ」は、「チャット情報が受け取られると、受信したチャット入力データをライブ映像データに付加して、ライブ閲覧者の端末にリアルタイムで配信する」(構成1a5)から、構成1bの「ライブ閲覧者端末」は、ライブ配信サーバがライブ閲覧端末からチャット入力データを受け取る毎に当該ライブ配信サーバから送信されるチャット入力データを受信するといえる。
また、上記(イ)で述べたとおり、構成1bの「ライブ閲覧者端末」は、ライブ配信サーバから配信されたチャット入力データを記憶する記憶部を備えていると解するのが相当である。
したがって、本件特許発明1と甲1発明は、「前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信し、前記コメント情報記憶部に記憶する受信部」を有する点で一致する。

(エ)構成1Dについて
構成1b2の「メディア再生プレイヤー」は、「ライブ配信される映像や音声などを再生する」ものである。
また、構成1b2の「メディア再生プレイヤー」は、構成1aの「ライブ配信サーバ」から、動画、静止画、音声、音楽、文字など様々な形式のデータの再生を制御して同期させる同期マルチメディア言語ファイルが送信される(構成1a3)ものであり、構成1aの「ライブ配信サーバ」は、ライブ映像とライブ閲覧者からのコミュニケーション情報(例えば、チャット)とを1つの画面でリアルタイムで同期表示する機能を有するものである。
また、構成1bの「ライブ閲覧者端末」は、構成1aの「ライブ配信サーバ」から、チャット入力データが付加されたライブ映像データがリアルタイムで配信される(構成1a5)ものである。
また、構成1bの「ライブ閲覧者端末」では、配信映像中にチャット文が表示されている(構成1b5)。
以上によれば、構成1b2の「メディア再生プレイヤー」は、構成1aの「ライブ配信サーバ」から、ライブ映像とライブ閲覧者からのコミュニケーション情報(例えば、チャット)とを1つの画面でリアルタイムで同期表示するために、動画、静止画、音声、音楽、文字など様々な形式のデータの再生を制御して同期させる同期マルチメディア言語ファイルが送信されることにより、チャット入力データが付加されたライブ映像データがリアルタイムで配信され、配信映像中にチャット文が表示されるように、ライブ配信される映像や音声などを再生するものと解するのが相当である。

さらに、上記(イ)で述べたとおり、構成1bの「ライブ閲覧者端末」は、ライブ配信サーバから配信されたチャット入力データである、「発言」と、「発言時間(ライブ開始からの差分時間)」が対応付けられたデータを記憶する記憶部を備えていると解するのが相当である。
そして、構成1b2の「メディア再生プレイヤー」において、配信映像中にチャット文が表示されるようにライブ映像とチャットを同期表示するために、ライブ映像の再生時間に基づいて、記憶部に記憶されたチャット入力データのうち、前記再生時間に対応する発言時間が付与された発言を記憶部から読み出し、読み出した発言を配信映像中に表示する必要があることは、当業者にとって明らかである。
よって、構成1b2の「メディア再生プレイヤー」は、構成1Dの「前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間が対応づけられたコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、読み出したコメントを動画上に表示するコメント表示部」に相当する。
したがって、本件特許発明1と甲1発明は、「前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間が対応づけられたコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、読み出したコメントを動画上に表示するコメント表示部」を有する点で一致する。

(オ)構成1Eについて
上記(エ)で述べたとおり、構成1b2の「メディア再生プレイヤー」は、「コメント表示部」に相当するから、構成1b2の「メディア再生プレイヤー」によって表示される「チャット入力データ」の「発言」は、構成1Eの「前記コメント表示部によって表示されるコメント」に相当する。
また、構成1b5の「チャット文」は、構成1b2の「メディア再生プレイヤー」によって表示される「チャット入力データ」の「発言」と解されるから、構成1b5の「あるチャット参加者」の「チャット文」は、構成1Eの「第1のコメント」に相当し、構成1b5の「別のチャット参加者」の「チャット文」は、構成1Eの「第2のコメント」に相当する。

次に、構成1Eの「移動表示」について検討する。
構成1b2の「メディア再生プレイヤー」は、「ライブ配信される映像や音声などを再生するRealPlayer(登録商標)などのメディア再生プレイヤー」であり、構成1aの「ライブ配信サーバ」から、動画、静止画、音声、音楽、文字など様々な形式のデータの再生を制御して同期させる、SMIL(Synchronized Multimedia Integration Language)などの同期マルチメディア言語ファイルが送信される(構成1a3)ものである。
また、構成1aの「ライブ配信サーバ」では、「スクロール方法」が「ライブ閲覧者端末のチャット入力機能によって行われたチャット情報のログ」として「チャット情報データベース」に格納されている(構成1a4)。
また、上記第4の13(3)のとおり、甲第13、14号証には、「RealPlayerにおいて、SMILの拡張であるRealTextによりテキストをスクロール表示する技術」が記載されており、甲第1号証に触れた当業者であれば、構成1b2の「メディア再生プレイヤー」は、SMILの拡張であるRealText等によりテキストをスクロール表示するものであると解するといえる。
以上によれば、構成1b2の「メディア再生プレイヤー」は、動画、静止画、音声、音楽、文字など様々な形式のデータの再生を制御して同期させる、SMIL(Synchronized Multimedia Integration Language)などの同期マルチメディア言語ファイルが送信されることにより、「チャット入力データ」の「発言」である「チャット文」を、スクロール表示し得るものといえる。
そして、当該「スクロール表示」は、構成1Eの「移動表示」に相当する。

したがって、本件特許発明1と甲1発明は、「前記コメント表示部によって表示されるコメントのうち、第1のコメントと第2のコメントとのうちいずれか一方または両方が移動表示されるコメントである」点で共通する。
ただし、本件特許発明1は、「前記第1のコメントを動画上に表示させる際の表示位置が、当該第1のコメントよりも先に前記動画上に表示される第2のコメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部」を有するのに対し、甲1発明は、当該「判定部」を有していない点で、両発明は相違する。

(カ)構成1Fについて
甲1発明は、「前記判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合に、前記第1のコメントと前記第2のコメント同士が重ならない位置に表示させる表示位置制御部」は有していない。

(キ)構成1Gについて
構成1bの「ライブ閲覧者端末」は、構成1b3の「表示装置」を備えているから、「表示装置」であるといえる。

(ク)一致点・相違点
以上によれば、本件特許発明1と甲1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
(1A)複数の端末装置から送信されるコメント情報を受信して各端末装置へ配信するコメント配信サーバと、前記コメント配信サーバに接続され動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置とを有するコメント表示システムにおける表示装置であって、
(1B)コメントと、前記コメントが付与された時点における、前記動画の最初を基準として動画の経過時間を表す動画再生時間をコメント付与時間として前記コメントに対応づけてコメント情報として記憶するコメント情報記憶部と、
(1C)前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信し、前記コメント情報記憶部に記憶する受信部と、
(1D)前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間が対応づけられたコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、読み出したコメントを動画上に表示するコメント表示部と、を有し、
(1E’)前記コメント表示部によって表示されるコメントのうち、第1のコメントと第2のコメントとのうちいずれか一方または両方が移動表示されるコメントである、
(1G)ことを特徴する表示装置。

[相違点]
(相違点1-1)本件特許発明1は、「前記第1のコメントを動画上に表示させる際の表示位置が、当該第1のコメントよりも先に前記動画上に表示される第2のコメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部」(構成1E)を有するのに対し、甲1発明は、当該「判定部」を有していない点。

(相違点1-2)本件特許発明1は、「前記判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合に、前記第1のコメントと前記第2のコメント同士が重ならない位置に表示させる表示位置制御部」(構成1F)を有するのに対し、甲1発明は、当該「表示位置制御部」を有していない点。

イ 判断
以下、相違点1-1及び相違点1-2について検討する。

(ア)甲第2?4号証に記載された技術
上記第4の2(2)、3(2)、4(2)のとおり、甲第2?4号証に記載された技術を再掲すると、以下のとおりである。

(甲2技術)
(2a)テレビ放送の垂直帰線消去期間に重畳された文字放送データをスクロール表示させる文字放送特殊再生装置において、
(2b)字幕移動機能などにより字幕が文字放送受信による文字表示位置に重なってしまったりする欠点を解消するために、
(2c)通常のTV放送を受信する際には、映像信号をTV信号処理回路と表示モード制御部と字幕表示位置制御部を介して処理し、
(2d)字幕表示位置制御部は、映画等の字幕が見にくい位置になったときには、リモコン信号に基づいて映像信号の上下のブランクの部分にある字幕を検出し、これを移動させて、映像信号に合成することにより、字幕表示位置を移動するよう制御し、
(2e)全画面固定で送られてきた文字放送をスクロール表示する動作では、
(2f)前記字幕表示位置制御部からの制御信号に基づいて、字幕位置検出部により字幕位置が検出され、
(2g)特殊再生装置制御部は、字幕位置検出部からの検出結果に基づいて、スクロール表示する表示位置を決定することにより、字幕位置を避けて最適位置にスクロール表示を行う
(2a)文字放送特殊再生装置。

(甲3技術)
(3a)テレビ多重文字放送の受像機において、
(3b)メインの放送画像に対して、文字放送の文章の1行を表示するが、これを横方向にスクロールし、
(3c)横スクロールモードでは、メイン放送画像に対して文字放送による1行がスーパーインポーズにより表示されるので、この表示位置に、メインの放送による文字など、例えば野球の打者の名前などが表示されると、両方の表示が重なり、両方とも見づらくなってしまうことを避けるために、
(3d)横スクロールモードのときに、その縦方向における表示位置を変更するための回路を設け、
(3e)横スクロールの表示をブロックのN行に行うときには、例えば第1行(N=1)に行うときには、これをキーボートから入力することにより、
(3f)横スクロールの表示位置を任意の行とすることができ、横スクロールの表示文字とメインの放送画像の文字とが重なったりすることがなく、両者を見ることができるようにする
(3a)テレビ多重文字放送の受像機。

(甲4技術)
(4a)映像信号に重畳して伝送された文字信号を抽出して所定位置に文字情報を画面表示するクローズド・キャプションデコーダを備え、文字情報を映像とともに画面表示するクローズド・キャプション(文字多重)システムのテレビジョン受信機において、
(4b)オープン・キャプションによる文字情報である日本語字幕にクローズド・キャプションの字幕が重なって読みにくくなっても受け手側で表示位置を変更できないという問題を解決するために、
(4c)クローズド・キャプションデコーダが、画面上の文字情報の表示位置を指定する手段と、文字信号に含まれる文字情報の表示アドレスを、指定された表示位置に応じた表示アドレスに変換する回路を備え、
(4d)クローズド・キャプションデコーダで、キャプション情報の表示位置を変更することで、送信側で決定されたクローズド・キャプションによる文字情報の表示アドレスを、オープン・キャプションによる文字情報と重ならない位置に移動する
(4a)クローズド・キャプション(文字多重)システムのテレビジョン受信機。

(イ)技術分野について
まず、甲1発明と、甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術で、技術分野が共通するかについて検討する。

a 甲1発明について
甲1発明は、ライブ映像とライブ閲覧者からのコミュニケーション情報(例えば、チャット(テキスト文による情報))とを1つの画面でリアルタイムで同期表示する機能を有するライブ配信サーバ(構成1a)と、クライアントであるライブ閲覧者の複数のライブ閲覧者端末(構成1b)とが、通信ネットワークを介して接続されて構成されるライブ配信システム(構成1c)におけるライブ閲覧者端末の発明である。
甲1発明の前記ライブ閲覧者端末が再生するマルチメディアコンテンツは、「ライブ映像データ」であり(構成1a、構成1a5、構成1b4)、前記ライブ閲覧者端末が表示する複数のチャット文は、ライブ閲覧者が入力した「テキスト文による情報」(構成1a、構成1a5、構成1b5)である。

b 甲2技術について
甲2技術は、テレビ放送の垂直帰線消去期間に重畳された「文字放送データ」をスクロール表示させる文字放送特殊再生装置の技術である。
ここで、構成2dの字幕表示位置制御部は、通常のTV放送の映像信号を処理し、リモコン信号に基づいて映像信号の上下のブランクの部分にある字幕を検出し、これを移動させて、映像信号に合成することにより、字幕表示位置を移動するから、構成2dの「字幕」は、映像信号であるといえる。
一方、構成2aの「文字放送データ」は、テレビ放送の垂直帰線消去期間に重畳されたものであり、映像信号である字幕とは異なるものであるといえる。また、構成2eと構成2gのスクロール表示、及び、構成2bの「文字表示位置」への表示の表示対象は、「文字放送データ」であるといえる。
よって、甲2技術は、テレビ文字放送の再生装置の技術であって、テレビ放送に重畳された「文字放送データ」が映像信号の文字と重ならないように、当該「文字放送データ」の表示位置を変更する技術であるといえる。

c 甲3技術について
甲3技術は、テレビ多重文字放送における「文字放送の文章の1行」を横方向にスクロールして表示するテレビ多重文字放送の受像機の技術である。
ここで、構成3bと構成3fの「メインの放送画像」及び構成3cの「メイン放送画像」は、テレビ多重文字放送のメインの放送画像であるから、映像信号といえる。また、構成3cの「メインの放送による文字」及び構成3fの「メインの放送画像の文字」は、「野球の打者の名前など」であるから、構成3c及び構成3fの「文字」は、映像信号であるといえる。
一方、構成3fの「横スクロールの表示文字」は、構成3bの「文字放送の文章の1行」であるから、文字放送の文字データであり、メインの放送画像の映像信号の文字とは異なるものであるといえる。
よって、甲3技術は、テレビ文字放送の受信機の技術であって、テレビ多重文字放送における文字放送の文字データである「文字放送の文章の1行」が映像信号の文字と重ならないように、当該「文字放送の文章の1行」の表示位置を変更する技術であるといえる。

d 甲4技術について
甲4技術は、「クローズド・キャプションの字幕」を表示するクローズド・キャプション(文字多重)システムのテレビジョン受信機の技術である。
ここで、構成4bの「日本語字幕」は「オープン・キャプションによる文字情報」であり、「オープン・キャプション」とは、映像信号中の文字を表す用語であるから、構成4bの「オープン・キャプションによる文字情報である日本語字幕」は、映像信号であるといえる。
一方、構成4bの「クローズド・キャプションの字幕」は、文字多重のシステムのテレビジョン受信機において、「映像信号に重畳して伝送された文字信号を抽出」したものであるから、文字放送の文字データであり、映像信号であるオープン・キャプションによる文字情報とは異なるものであるといえる。
よって、甲4技術は、文字多重システムのテレビジョン受信機の技術において、文字放送の文字データである「クローズド・キャプションの字幕」が映像信号の文字と重ならないように、当該「クローズド・キャプションの字幕」の表示位置を変更する技術であるといえる。

e 甲2?4技術から把握される周知技術について
上記b?dによれば、甲2?4技術から把握される周知技術は、テレビ文字放送の受信機の技術において、テレビ文字放送に重畳された「文字放送データ」が映像信号の文字と重ならないように、当該「文字放送データ」の表示位置を変更する技術である。

f 判断
以上によれば、甲1発明は、ライブ配信サーバとライブ閲覧者端末とが通信ネットワークを介して接続されて構成されるライブ配信システムにおけるライブ閲覧者端末の発明であるのに対して、甲2技術、及び、甲2?4技術から把握される周知技術は、テレビ文字放送の受信機の技術であるから、両者は、そのシステム構成について技術分野が異なるといえる。また、表示位置の制御の対象をみても、甲1発明は、ライブ閲覧者が入力した「テキスト文による情報」であるのに対して、甲2技術、及び、甲2?4技術から把握される周知技術は、「テレビ文字放送に重畳された文字放送データ」であるから、両者の技術分野は異なるといえる。
したがって、甲1発明と、甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術で、技術分野が共通するとはいえない。

(ウ)解決しようとする課題について
次に、甲1発明と、甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術で、解決しようとする課題が共通するかについて検討する。

a 甲1発明の課題
甲1発明が解決しようとする課題は、上記第4の1(1)イのとおり、ライブ映像とライブ閲覧者からのコミュニケーション情報(例えば、チャット(テキスト文による情報))とを1つの画面でリアルタイムで同期表示することであるといえる。

b 甲2技術の課題
甲2技術が解決しようとする課題は、上記第4の2(1)オ及びカのとおり、テレビ放送の垂直帰線消去期間に重畳された「文字放送データ」をスクロール表示させる際に、映像信号の字幕の字幕位置に重なってしまったりする欠点を解消することであるといえる。

c 甲3技術の課題
甲3技術が解決しようとする課題は、上記第4の3(1)ウ及びエのとおり、テレビ多重文字放送の文字データである「文字放送の文章の1行」を横方向にスクロールして表示する際に、当該「文字放送の文章の1行」の表示位置に、映像信号であるメインの放送による文字が表示されると、両方の表示が重なり、両方とも見づらくなってしまうことを避けることであるといえる。

d 甲4技術の課題
甲4技術が解決しようとする課題は、上記第4の4(1)ウのとおり、クローズド・キャプション(文字多重)システムの受信機において、文字放送の文字データである「クローズド・キャプションの字幕」が、映像信号であるオープン・キャプションによる文字情報に重なって読みにくくなっても受け手側で表示位置を変更できないということであるといえる。

e 判断
以上によれば、甲1発明の課題は、ライブ映像とライブ閲覧者からのコミュニケーション情報(例えば、チャット(テキスト文による情報))とを1つの画面でリアルタイムで同期表示することであるのに対して、甲2?4技術の課題は、テレビ文字放送の受信機において、テレビ放送に重畳された「文字放送データ」の表示位置が、映像信号の文字の表示位置と重ならないようにするために、前記「文字放送データ」の表示位置を変更することといえる。
よって、両者の解決しようとする課題は異なるから、両者の解決しようとする課題は共通するとはいえない。

(エ)動機付けについて
次に、甲1発明に甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術を適用する動機付けがあったかどうかについて検討する。

上記(イ)及び(ウ)のとおり、甲1発明と甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術は、技術分野が共通するとはいえず、課題も共通するとはいえないから、甲1発明に甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術を適用する動機付けがあったとはいえない。
ここで、甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術が、「文字放送データ」の表示位置を変更する技術であることから、念のために、甲1発明のチャット文の表示位置に関して何らかの課題を有するか否かを検討する。

甲1発明は、チャット参加者が、レイアウト(領域2や領域4)を指定してチャット文を入力すると、指定したレイアウト(領域2や領域4)にチャット文が表示されるものであり、当該チャット参加者が指定可能な領域は、上記第4の1(1)セの図9a、cの1?6のように、チャット入力画面の予め定められた領域である。
甲第1号証には、あるチャット参加者が、レイアウト(領域2)を指定すること、別のチャット参加者がレイアウト(領域4)を指定することは記載されているが、あるチャット参加者のレイアウト指定と別のチャット参加者のレイアウト指定が同じレイアウト領域となった場合にどのように処理するかについては、何ら記載も示唆もされていない。また、甲第1号証には、チャット情報データベースに「その他の情報(スクロール方法等)を格納することは記載されているが、レイアウト領域でどのようにスクロール処理するのかについても何ら記載も示唆もされていない。
よって、甲第1号証には、指定したそれぞれのレイアウトが同じとなること、レイアウト領域内のスクロール方法について記載も示唆もないから、甲1発明の「ライブ閲覧者端末」において、配信されたチャット文の重なりの問題及びそれを解決しようとする課題を想定することができない。また、当該課題が、甲第1号証の記載から自明な課題であるともいえない。

以上のとおりであり、甲1発明と甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術では、技術分野及び解決しようとする課題が共通するとはいえないから、甲1発明に甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術を適用する動機付けがあったとはいえない。

(オ)予備的検討
さらに、仮に、甲1発明に、甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術を適用した場合に、相違点1-1及び相違点1-2に係る構成に至るかどうかについて検討する。

甲1発明の「ライブ閲覧者端末」が再生する「ライブ映像」は映像信号であり、表示する「チャット文」はテキスト文による情報であって映像信号とは異なるものといえる。
よって、甲1発明に、甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術を適用すると、映像信号の再生と映像信号とは異なるテキスト文による情報の表示に対して、甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術の映像信号と異なる「文字放送データ」の表示位置を変更する技術を適用することになるから、「ライブ閲覧者端末」において、チャット文の「テキスト文による情報」の表示位置が、映像信号である「ライブ映像」の文字の表示位置と重ならないようにするために、前記チャット文の「テキスト文による情報」の表示位置を変更するものとなる。
しかしながら、当該映像信号である「ライブ映像」の文字は、映像信号であるから「動画」に対応するものであって、複数の端末から送信されるコメントではないから、相違点1-1及び相違点1-2における「第1のコメント」または「第2のコメント」に対応するものとはいえない。
よって、甲1発明に、甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術を適用したとしても、相違点1-1に係る構成である「前記第1のコメントを動画上に表示させる際の表示位置が、当該第1のコメントよりも先に前記動画上に表示される第2のコメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部」、及び、相違点1-2に係る構成である「前記判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合に、前記第1のコメントと前記第2のコメント同士が重ならない位置に表示させる表示位置制御部」を備えるものとはならない。

したがって、仮に、甲1発明に、甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術を適用したとしても、相違点1-1及び相違点1-2に係る構成に至るとはいえない。

(カ)まとめ
以上によれば、相違点1-1及び相違点1-2は、甲1発明と甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術から、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

ウ 請求人の主張について
(ア)請求人の主張
請求人は、審判請求書において、甲1発明に甲2?4技術から把握される周知技術を組み合わせる動機付けについて、以下の主張を行っている。ここで、「甲1発明A」は、甲第1号証に記載されている発明、「公知技術C1」は、甲第2号証に記載されている技術、「周知技術C2」は、前記公知技術C1と甲第3号証、甲第4号証の記載による周知技術と主張している。

a「【甲1発明A】
1A 複数のライブ閲覧者端末21から送信されるチャットのメッセージを受信して各ライブ閲覧者端末21へ配信するライブ配信サーバ100と、ライブ配信サーバ100に接続され動画を再生するとともに、動画上にチャットのメッセージを表示するライブ閲覧者端末21とを有するライブ配信システムにおけるライブ閲覧者端末21であって、
1B 発言(チャットのメッセージ)と、前記発言がなされた時点におけるライブ開始からの差分時間を表す発言時間とを一時的に記憶するメモリと、
1C ライブ配信サーバ100がライブ閲覧者端末21からチャット入力情報を受信する毎にライブ配信サーバ100から送信されるチャット入力情報を受信し、メモリに記憶する通信装置22と、
1D,1E前段 再生される動画の動画再生時間に基づいて、メモリに記憶されたメッセージのうち、前記動画の動画再生時間に対応する発言時間が対応づけられたメッセージをメモリから読み出し、読み出したメッセージを動画上にスクロール表示するメディア専用プレイヤー23と、
1G を有することを特徴するライブ閲覧者端末21。」(審判請求書第17頁第7?22行目)

b「【公知技術C1】
字幕移動機能などにより字幕が文字放送受信による文字表示位置に重なってしまうと文字が見づらくなるという欠点を解消するため、字幕が文字表示領域に重なるか否かを判定し重なると判定した場合に文字について字幕位置を避けて最適位置にスクロール表示を行う。」(審判請求書第21頁第8?12行目)

c「【周知技術C2】
映像が再生表示される領域の前面に表示されている文字情報aに他の文字情報bが重なってしまうと文字が読みづらくなるという課題を解決するため、文字情報aに他の文字情報bが重なるか否かを判定し重なると判定した場合に文字情報aに重なる位置を避けて文字情報bをスクロール表示する。」(審判請求書第23頁第9?13行目)

d「まず、【甲1発明A】と【公知技術C1】と【周知技術C2】はいずれも、端末で映像が再生表示される領域の前面にテキスト等の文字情報を重畳的に表示させる技術の分野に属する。よって、主引用発明(【甲1発明A】)と副引用発明(【公知技術C1】又は【周知技術C2】)との間には、技術分野の関連性がある。
次に、【甲1発明A】では、複数のメッセージが動画上に同時期に表示されることが予定されている(図9のb)。また、【甲1発明A】では、各メッセージに個別にスクロール方法が設定される上に(【0036】)、メッセージを表示する領域が部分的に重なっているから(図9のa,c)、メッセージどうしが重なる必然性がある。さらに、画面上に複数のメッセージを同時期に表示させる場合においてメッセージどうしが重なると読みづらくなることは、本件特許出願の日よりかなり前から周知の課題であった(甲第2号証乃至甲第4号証)。具体的には、甲第2号証乃至甲第4号証のうち最も後に公開された甲第2号証の公開日(1996年4月23日)は、本件特許出願の日(2006年12月11日)より10年以上も前である。そして、【公知技術C1】及び【周知技術C2】の課題はいずれも、上記周知の課題と共通である。よって、主引用発明(【甲1発明A】)と副引用発明(【公知技術C1】又は【周知技術C2】)との間には、課題の共通性がある。
そうすると、画面上に複数のメッセージが同時期に表示される際に発生し得る不都合という周知の課題を解決するために、【甲1発明A】に対し【公知技術C1】又は【周知技術C2】を適用することには、技術分野の関連性及び課題の共通性に基づく動機付けがあるというべきである。
以上によれば、主引用発明(【甲1発明A】)に副引用発明(【公知技術C1】又は【周知技術C2】)を適用して当業者が本件特許発明1,2に導かれる動機付けがある。」(審判請求書第24頁第8行目?第25頁第4行目)

(イ)判断
しかしながら、上記イで判断したとおり、甲1発明に甲2技術または甲2?4技術から把握される周知技術を組み合わせる動機付けがあったとはいえないから、請求人の主張は採用することができない。

エ 被請求人の主張について
(ア)被請求人の主張
被請求人は、口頭審理陳述要領書において、以下の主張を行っている。

a「請求人は,別紙1において,甲第1号証には,「『チャット情報』は,発言の「スクロール方法」を含む」([0036])ことが記載されていると主張している(口頭審理陳述要領書別紙の3頁下から3行)。
ところで,甲第1号証の段落[0036]には,次の事項が記載されている。
「[0036]
・チャット情報データベース(チャット情報DB)113は,ライブ閲覧者端末21のチャット入力機能24によって行われたチャット情報のログを記録しておくデータベースである。格納データは,「ライブID」,「発言者」,「発言時間(ライブ開始からの差分時間)」,「ライブ上での発言場所(レイアウトIDまたは,XY座標での表記)」,「発言及びその他の情報(色,スクロール方法等)」等である。」
このように,甲第1号証の段落[0036]に記載されているのは,正確には,チャット情報データベース113が,「発言」,「スクロール方法」,「発言時間(ライブ開始からの差分時間)」を格納データとすること,及び,チャット情報データベース113は,チャット情報のログを記録しておくデータベースであること,である。チャット情報データベース113が格納データとする「ライブID」,「発言者」,「発言時間(ライブ開始からの差分時間)」,「ライブ上での発言場所(レイアウトIDまたは,XY座標での表記)」,「発言及びその他の情報(色,スクロール方法等)」の一部が,チャット情報に相当する可能性はあり得るかもしれないが,もしそうであるとしても,どの項目がチャット情報に相当するものかは,甲第1号証の記載からは到底把握することができない。そして,甲第1号証には,上記段落[0036]以外に「スクロール」について記載された箇所はない。
したがって,甲第1号証には,「『チャット情報』は,発言の「スクロール方法」を含む」ことは記載されておらず,ましてや,「メッセージが動画上でスクロール表示される」点が記載されているということはできない。
さらに,請求人は,甲第1号証で例示([0025])されている「RealPlayer」に言及するとともに(口頭審理陳述要領書別紙の6頁の下から4行),新たに甲第13号証,甲第14号証を提示し,本件特許の出願日より前の技術水準によれば,甲1発明A(B)における「スクロール表示」の表示態様は,横方向又は縦方向に少なくとも1回,適当な速さでスクロールされるものであると主張する(口頭審理陳述要領書別紙の7頁4行乃至6行)。
しかしながら,甲第1号証の段落[0025]には,RealPlayerの記載はあるものの,この記載からは,RealPlayerと「スクロール表示」あるいは「RealText」との関係を把握することができない。
そうすると,甲第13号証あるいは甲第14号証に記載されるような「RealText」というファイル形式を用いた時のスクロール表示が知られていたとしても,甲第1号証(段落[0036])に記載の「スクロール表示」が「RealText」に関連していることについて記載されているということはできない。
したがって,本件特許の出願日より前の技術水準を考慮したとしても,甲第1号証に「スクロール表示」の表示態様が記載されているということはできず,ましてや,「スクロール表示」の具体的態様として「横方向又は縦方向に少なくとも1回,適当な速さでスクロールされる」ことについては記載も示唆もない。」(口頭審理陳述要領書第2頁第10行目?第3頁第18行目)

(イ)判断
しかしながら、上記ア(オ)で述べたとおり、構成1b2の「メディア再生プレイヤー」は、動画、静止画、音声、音楽、文字など様々な形式のデータの再生を制御して同期させる、SMIL(Synchronized Multimedia Integration Language)などの同期マルチメディア言語ファイルが送信されることにより、「チャット入力データ」の「発言」である「チャット文」を、スクロール表示し得るものといえるから、被請求人の主張は採用することができない。

オ 小括
以上のとおり、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証に記載された技術事項または甲第2?4号証の記載から把握される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

(2)本件特許発明2、3、9?11について
本件特許発明2及び3は、本件特許発明1を引用する発明であるから、少なくとも、相違点1-1及び相違点1-2に係る構成を有している発明である。
したがって、本件特許発明2及び3は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証に記載された技術事項または甲第2?4号証の記載から把握される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

また、本件特許発明9?11は、本件特許発明1?3の装置に対応するプログラムの発明である。
したがって、本件特許発明9?11は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証に記載された技術事項または甲第2?4号証の記載から把握される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

2 無効理由2について
(1)本件特許発明3について
請求人は、審判請求書の第36頁第4?10行目において、構成2Hも含めて本件特許発明3と甲1発明の対比を行っているから、請求項2を引用する本件特許発明3について無効を主張していると解される。よって、以下、請求項2を引用する本件特許発明3について検討する。

ア 対比
請求項2を引用する本件特許発明3と甲1発明とを対比すると、両者は、上記1(1)ア(ク)で述べた相違点1-1及び相違点1-2のほか、以下の相違点1-3?相違点1-5でも相違している。

(相違点1-3)「前記表示位置制御部」が、本件特許発明3では、「前記動画の表示領域のうち、コメントを表示する基準となる位置を表す基準位置に従って第2のコメントが表示された後に前記第1のコメントを表示する際に、前記判定部が前記コメントが重なると判定した場合に、前記第1のコメントの基準位置を前記第2のコメントの基準位置とは異なる位置に変更して表示する」(構成2H)のに対し、甲1発明は、「前記表示位置制御部」は有していない点。

(相違点1-4)「前記コメント表示部」が、本件特許発明3では、「前記コメントが前記表示領域内に現れてから表示領域外に移動して消えるまでの時間であるコメント表示時間と前記コメントの表示が開始される文字から表示が終了する文字までの前記所定の方向における文字列の幅とに基づいて決定される移動速度で前記コメントを移動させつつ、前記画面上に表示を行う」(構成3K)のに対し、甲1発明では、当該表示を行っていない点。

(相違点1-5)「前記判定部」が、本件特許発明3では、「各コメントを前記移動速度で移動させて表示させた場合、前記第2のコメントが移動し終わるまでに前記第1のコメントが追いつく場合に、前記第1のコメントと前記第2のコメントとの表示位置が重なるものとして判定する」(構成3L)のに対し、甲1発明は、「前記判定部」は有していない点。

イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点1-1及び相違点1-2について検討する。

請求人は、審判請求書の第36頁第21?23行目において、構成1E及び構成3L、構成1F及び構成2Hを組み合わせた技術は、周知技術E1、公知技術E2及び周知技術E3のいずれとも同一又は実質同一と主張している。ここで、「周知技術E1」及び「公知技術E2」は、甲第7号証、甲第8号証、甲第9号証の記載による周知技術または公知技術、「周知技術E3」は、甲第9号証の記載による周知技術と主張しているから、以下、甲1発明と、甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術で、技術分野及び解決しようとする課題が共通するか否かについて検討する。

(ア)甲第7、8、10号証に記載された技術及び甲第9号証の記載
上記第4の7(2)、8(2)、10(2)のとおり、甲第7、8、10号証に記載された技術を再掲すると、以下のとおりである。

(甲7技術)
「4輪車や2輪車などの移動状態を表示画面上に2次元的に表示する3Dシミュレーション装置において、
自動走行の車両が遊戯者の車両に対して追突、接触することが事前に3Dシミュレーション装置において予測された場合には、自動走行の車両が追突または接触を回避するための自動走行の車両の新たな走行軌道を設定する技術。」

(甲8技術)
「操船を模擬訓練するための操船シミュレータにおいて、
相手船は、相手船自身の位置、針路及び速度情報と、訓練船の位置、針路及び速度情報とから将来の衝突を予測し、これを回避する避航航路を自身で判断し、訓練船に対して避航を行う技術。」

(甲10技術)
「プレーヤーのハンドル操作に応じて表示装置の表示面においてプレーヤーの自動車が操作されるビデオゲーム装置において、
クラクション操作した場合に,プレーヤーの操作する以外の自動車がプレーヤーの自動車との事故を回避するように表示画面上で動きに変化を生じさせる技術。」

また、第4の9のとおり、甲第9号証には、「シミュレーション装置の分野では、表示画面上に現れる(装置側制御による)自動操縦で動く移動体(車両、船舶など)の移動軌跡の設定制御方法として、
(1)当該自動操縦の移動体とプレーヤ操作の移動体(車両、船舶など)間の相対的な位置及び速度の関係が、予め定められた条件を充たす場合は両者が衝突するものと予測する予測手段と、
(2)当該衝突が予測される場合には衝突回避のため、前記自動操縦の移動体側に移動軌跡を変更する軌跡変更手段、
とを備えることは、記載事項オ、カ(引用例2)及び引用例2の図8の開示内容や、記載事項キ、ク(周知例)からみて、従来周知のものであると言える。」と記載されている。

(イ)技術分野について
まず、甲1発明と、甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術で、技術分野が共通するかについて検討する。

甲1発明は、ライブ配信サーバとライブ閲覧者端末とが通信ネットワークを介して接続されて構成されるライブ配信システムにおけるライブ閲覧者端末の発明である。これに対して、甲7技術は、「4輪車や2輪車などの移動状態を表示画面上に2次元的に表示する3Dシミュレーション装置」の技術であり、甲8技術は、「操船を模擬訓練するための操船シミュレータ」の技術であり、甲第9号証に記載されているのは、「シミュレーション装置」の技術であり、甲10技術は、「プレーヤーのハンドル操作に応じて表示装置の表示面においてプレーヤーの自動車が操作されるビデオゲーム装置」の技術であるから、甲7、8技術、甲第9号証に記載されている技術は、シミュレーション装置の技術であり、甲10技術は、ビデオゲーム装置の技術である。よって、両者の技術分野は異なるといえる。
したがって、甲1発明と甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術では、技術分野が共通するとはいえない。

(ウ)解決しようとする課題について
次に、甲1発明と、甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術で、解決しようとする課題が共通するか否かについて検討する。

甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術が解決しようとする課題は、車両、船舶などのシミュレータにおいて、操作者が操作する移動体と、装置が制御する移動体の接触を回避することであるといえる。

甲1発明の課題は、ライブ映像とライブ閲覧者からのコミュニケーション情報(例えば、チャット(テキスト文による情報))とを1つの画面でリアルタイムで同期表示することであるのに対して、甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術の課題は、車両、船舶などのシミュレータにおいて、操作者が操作する移動体と、装置が制御する移動体の接触を回避することである。
よって、両者の解決しようとする課題は異なるから、両者の解決しようとする課題は共通するとはいえない。

(エ)動機付けについて
次に、甲1発明に甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術を適用する動機付けがあったかどうかについて検討する。

上記(イ)及び(ウ)のとおり、甲1発明と甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術は、技術分野が共通するとはいえず、課題も共通するとはいえない。
また、甲1発明は、ライブ配信システムにおけるライブ閲覧者端末の発明であって、車両、船舶などのシミュレータではないから、甲1発明において、操作者が操作する移動体と、装置が制御する移動体の接触を回避するという課題は想定することができない。
さらに、上記1(1)イで述べたとおり、甲1発明の「ライブ閲覧者端末」において、配信されたチャット文の重なりの問題及びそれを解決しようとする課題を想定することができない。
よって、甲1発明に甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術を適用する動機付けがあったとはいえない。

(オ)まとめ
以上によれば、相違点1-1及び相違点1-2は、甲1発明と甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術から、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

ウ まとめ
したがって、本件特許発明3は、当業者が相違点1-1及び相違点1-2に係る構成を容易に導き出すことはできない。よって、相違点1-3?相違点1-5について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第5号証に記載された技術事項または甲第5、6号証の記載から把握される周知技術、並びに、甲第7?12号証の記載から把握される周知または公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 請求人の主張について
(ア)請求人の主張
請求人は、審判請求書において、以下の主張を行っている。ここで、「公知技術D1」は、甲第5号証に記載されている技術、「周知技術D2」は、甲第5号証、甲第6号証の記載による周知技術、「周知技術E1」及び「公知技術E2」は、甲第7号証、甲第8号証、甲第9号証の記載による周知技術または公知技術、「周知技術E3」は、甲第9号証の記載による周知技術と主張している。

a「【公知技術D1】
複数の文字列画像を文字列方向と平行にそれぞれスクロール表示させる仕組みにおいて、文字列画像の最初の文字が表示範囲に表示されてから文字列画像の最後の文字が表示範囲から消えるまでのスクロール表示時間が各文字列画像間で一致するようスクロール表示速度を文字列画像毎に設定する」(審判請求書第30頁第1?5行目)

b「【周知技術D2】
文字列を文字列方向と平行にスクロール表示させる仕組みにおいて、文字数が多い文字列(長い文字列)ほど動きが速くなるようにスクロール表示速度を設定する」(審判請求書第30頁第21?24行目)

c「【周知技術E1】
移動体aが移動体bに対して追突することが事前に予測された場合に、移動体aが移動体bに対する追突を回避するための移動体aの新たな移動軌跡を設定する」(審判請求書第35頁第5?8行目)

d「【公知技術E2】
移動体aが移動体bに対して追突することが事前に予測された場合に、移動体aが移動体bに対する追突を回避するための移動体aの新たな移動軌跡を設定する」(審判請求書第35頁第11?14行目)

e「【周知技術E3】
表示画面上に現れる(装置側制御による)自動操縦で動く移動体(車両、船舶など)の移動軌跡の設定制御方法として、(1)当該自動操縦の移動体とプレーヤ操作の移動体(車両、船舶など)間の相対的な位置及び速度の関係が、予め定められた条件を充たす場合は両者が衝突するものと予測する予測手段と、(2)当該衝突が予測される場合には衝突回避のため、前記自動操縦の移動体側に移動軌跡を変更する軌跡変更手段、とを備えること」(審判請求書第35頁第19行目?第36頁3行目)

f「まず、構成3Kは、【公知技術D1】及び【周知技術D2】のいずれとも実質的に同一である。」(審判請求書第36頁第14?15行目)

g「また、【甲1発明A】と【周知技術E1】と【公知技術E2】と【周知技術E3】はいずれも、空間内の平面上でオブジェクトを移動させる技術である。加えて、本件特許に係る発明者の1人である川上量生氏によるネットワークゲームに関する発明(職務発明)をそれぞれ対象とする複数の特許出願を、本件特許に係る特許権者である株式会社ドワンゴ(被請求人)が、本件特許出願の日より前に、現に行っている(例えば、特願平11-343805「対戦相手決定システム」(甲第11号証),特願平11-356624「対戦ゲーム観戦システム」(甲第12号証))。特に、特願平11-356624「対戦ゲーム観戦システム」における「対戦ゲーム」の例として「カーレースゲーム」が記載されている(甲第12号証の【0024】)。これらの事実は、画面上で文字列を文字列方向にスクロ一ル表示(移動表示)させる技術(【甲1発明A】)の分野と、仮想空間内の移動面上で複数の移動体をそれぞれ自動的に移動させる技術(【周知技術E1】、【公知技術E2】、【周知技術E3】)の分野との間に密接な関連性があることを示している。よって、主引用発明(【甲1発明A】)と副引用発明(【周知技術E1】、【公知技術E2】又は【周知技術E3】)との間には、技術分野の関連性がある。」(審判請求書第37頁第10?24行目)

(イ)判断
a 上記(ア)gについて、本件特許の発明者が対戦ゲームに関する特許出願を行っていることをもって、甲1発明と甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術の技術分野が共通しているとはいえない。
よって、甲1発明と甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術では、技術分野が共通するとはいえない。

b また、上記(ア)a?fについて、上記イで述べたとおり、本件特許発明3は、当業者が相違点1-1及び相違点1-2に係る構成を容易に導き出すことはできない。よって、相違点1-3?相違点1-5について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第5号証に記載された技術事項または甲第5、6号証の記載から把握される周知技術、並びに、甲第7?12号証の記載から把握される周知または公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、請求人の主張は採用することができない。

オ 小括
以上のとおり、本件特許発明3は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第5号証に記載された技術事項または甲第5、6号証の記載から把握される周知技術、並びに、甲第7?12号証の記載から把握される周知または公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

(2)本件特許発明11について
本件特許発明11は、本件特許発明3の装置に対応するプログラムの発明である。
したがって、本件特許発明11は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第5号証に記載された技術事項または甲第5、6号証の記載から把握される周知技術、並びに、甲第7?12号証の記載から把握される周知または公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

3 無効理由3について
(1)本件特許発明3について
請求人は、審判請求書の第38頁第25行目?第39頁第7行目において、構成2Hも含めて本件特許発明3と甲5発明の対比を行っているから、請求項2を引用する本件特許発明3について無効を主張していると解される。よって、以下、請求項2を引用する本件特許発明3について検討する。

ア 対比
請求項2を引用する本件特許発明3と甲5発明を対比する。

(ア)構成1A、構成1Gについて
構成5a1の「ウェブサーバ」は、「日本語、英語、中国語及び韓国語の各言語の文字列」を含む「コンテンツデータ」を配信するものといえるから、「文字列情報を配信するサーバ」といえる。
また、構成5dの「複数言語表示システム」は、構成5a1の「ウェブサーバ」が有する「コンテンツデータ」から「日本語、英語、中国語及び韓国語の各言語の文字列」を抽出し、構成5aの「日本語、英語、中国語及び韓国語の文字列による情報を表示処理する複数言語表示処理装置」を備えるから、「サーバに接続され、文字列を表示する表示装置」といえる。
そして、構成5a1の「ウェブサーバ」と構成5dの「複数言語表示システム」からなる構成は、「文字列表示システム」といえる。
したがって、本件特許発明3と甲5発明は、「文字列情報を配信するサーバと、前記サーバに接続され、文字列を表示する表示装置とを有する文字列表示システムにおける表示装置」である点で共通する。
ただし、「文字列」が、本件特許発明3では、「複数の端末装置から送信されるコメント」であるのに対し、甲5発明では、「複数の端末装置から送信されるコメント」ではない点で、両発明は相違する。
また、「サーバ」が、本件特許発明3では、「複数の端末装置から送信されるコメント情報を受信して各端末装置へ配信するコメント配信サーバ」であるのに対し、甲5発明では、当該「サーバ」ではない点で、両発明は相違する。
また、「表示装置」が、本件特許発明3では、「前記コメント配信サーバに接続され動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する」のに対し、甲5発明では、当該表示をしていない点で、両発明は相違する。

(イ)構成1Bについて
構成5a1の「メモリ」は、「コンテンツデータ」から抽出された「日本語、英語、中国語及び韓国語の各言語の文字列」を記憶するから、「文字列を記憶する文字列情報記憶部」といえる。
したがって、本件特許発明3と甲5発明は、「文字列を記憶する文字列情報記憶部」を有する点で共通する。
ただし、「文字列」が、本件特許発明3では「コメント」であるのに対し、甲5発明では「コメント」ではない点で、両発明は相違する。
また、「文字列情報記憶部」が、本件特許発明3では、「前記コメントが付与された時点における、前記動画の最初を基準として動画の経過時間を表す動画再生時間をコメント付与時間として前記コメントに対応づけてコメント情報として記憶する」のに対し、甲5発明では、当該「コメント情報」を記憶していない点で、両発明は相違する。

(ウ)構成1Cについて
構成5a1の「文字列入力手段」は、「インターネットに接続された所定のウェブサーバが有するコンテンツデータから日本語、英語、中国語及び韓国語の各言語の文字列を抽出し、メモリに記憶する」ものであるから、「サーバから送信される文字列情報を受信し、文字列情報記憶部に記憶する受信部」といえる。
したがって、本件特許発明3と甲5発明は、「前記サーバから送信される文字列情報を受信し、前記文字列情報記憶部に記憶する受信部」を有する点で共通する。
ただし、「文字列」が、本件特許発明3では「コメント」であるのに対し、甲5発明では「コメント」ではない点で、両発明は相違する。
また、「文字列情報」の「受信」が、本件特許発明3では、「前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメント情報を受信する毎」に受信するのに対し、甲5発明では、当該受信ではない点で、両発明は相違する。

(エ)構成1Dについて
構成5aの「複数言語表示処理装置」は、構成5a1の「メモリ」に記憶された各言語の文字列を構成5a3の「画像変換手段」で文字列画像に変換し、構成5a4の「画像合成手段」で、各言語の文字列画像を一つの合成画像にフレーム毎に合成して出力することにより、「日本語、英語、中国語及び韓国語の文字列による情報を表示処理する」ものであり、構成5bの「表示制御装置」は、表示処理された情報を表示制御するものである。
よって、構成5aの「複数言語表示処理装置」及び構成5bの「表示制御装置」は、「文字列情報記憶部に記憶された文字列情報を前記文字列情報記憶部から読み出し、読み出した文字列を表示する文字列表示部」といえる。
したがって、本件特許発明3と甲5発明は、「前記文字列情報記憶部に記憶された文字列情報を前記文字列情報記憶部から読み出し、読み出した文字列を表示する文字列表示部」を有する点で共通する。
ただし、「文字列」が、本件特許発明3では「コメント」であるのに対し、甲5発明では「コメント」ではない点で、両発明は相違する。
また、「文字列情報」の読み出しが、本件特許発明3では、「前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間が対応づけられたコメントを前記コメント情報記憶部から読み出す」ことであるのに対し、甲5発明では、当該読み出しではない点で、両発明は相違する。

(オ)構成1Eについて
構成5a2の「日本語文字列」は「第1の文字列」といえ、構成5a2の「他の言語の文字列」は、「第2の文字列」といえる。
そして、構成5a2の「表示速度設定手段」は、「日本語文字列画像のスクロール表示速度」と「他の言語のスクロール表示速度」を設定するから、「日本語文字列」と「他の言語の文字列」はスクロール表示、すなわち、移動表示される文字列であるといえる。
したがって、本件特許発明3と甲5発明は、「前記文字列表示部によって表示される文字列のうち、第1の文字列と第2の文字列とのうちいずれか一方または両方が移動表示される文字列である」点で共通する。
ただし、「文字列」が、本件特許発明3では「コメント」であるのに対し、甲5発明では「コメント」ではない点で、両発明は相違する。
また、本件特許発明3は、「前記第1のコメントを動画上に表示させる際の表示位置が、当該第1のコメントよりも先に前記動画上に表示される第2のコメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部」を有するのに対し、甲5発明は、当該「判定部」を有していない点で、両発明は相違する。

(カ)構成1Fについて
構成5a2は「各言語の文字列画像が文字列方向と平行に並べてスクロール表示される」ようにするものであるから、「日本語文字列」と「他の言語の文字列」同士は重ならない位置に表示されるといえる。
したがって、本件特許発明3と甲5発明は、「前記第1の文字列と前記第2の文字列同士が重ならない位置に表示させる表示位置制御部」を有する点で共通する。
ただし、「文字列」が、本件特許発明3では「コメント」であるのに対し、甲5発明では「コメント」ではない点で、両発明は相違する。
また、「前記第1の文字列と前記第2の文字列同士が重ならない位置に表示させる」のが、本件特許発明3では、「前記判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合」であるのに対し、甲5発明では、「前記判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合」ではない点で、両発明は相違する。

(キ)構成2Hについて
上記(オ)で述べたとおり、甲5発明は、「判定部」を有していない。
したがって、「前記表示位置制御部」が、本件特許発明3では、「前記動画の表示領域のうち、コメントを表示する基準となる位置を表す基準位置に従って第2のコメントが表示された後に前記第1のコメントを表示する際に、前記判定部が前記コメントが重なると判定した場合に、前記第1のコメントの基準位置を前記第2のコメントの基準位置とは異なる位置に変更して表示する」のに対し、甲5発明では、当該表示をしていない点で、両発明は相違する。

(ク)構成3Jについて
上記(オ)で述べたとおり、構成5a2の「日本語文字列」と「他の言語の文字列」はスクロール表示、すなわち、移動表示される文字列であるといえる。
したがって、本件特許発明3と甲5発明は、「前記第1の文字列と前記第2の文字列との両方が所定の方向に移動表示する文字列である」点で共通する。
ただし、「文字列」が、本件特許発明3では「コメント」であるのに対し、甲5発明では「コメント」ではない点で、両発明は相違する。

(ケ)構成3Kについて
構成5a2の、「文字列画像の最初の文字が表示範囲に表示されてから文字列画像の最後の文字が表示範囲から消えるまでのスクロール表示時間」は、「文字列が表示領域内に現れてから表示領域外に移動して消えるまでの時間である文字列表示時間」といえる。
また、構成5a2の「日本語文字列画像の文字列長」及び「他の言語の文字列長」は、「文字列の表示が開始される文字から表示が終了する文字までの所定の方向における文字列の幅」といえる。
また、構成5a2の「文字列画像の最初の文字が表示範囲に表示されてから文字列画像の最後の文字が表示範囲から消えるまでのスクロール表示時間が言語間でほぼ一致するようスクロール表示速度を言語毎に設定する」こと、及び、「日本語文字列画像のスクロール表示速度を予め設定しておき、日本語文字列画像の文字列長に対する他の言語の文字列長の比から他の言語のスクロール表示速度を言語毎に算出する」ことにより設定された「スクロール表示速度」は、「文字列表示時間」と「文字列の幅」とに基づいて決定される「移動速度」といえる。
したがって、本件特許発明3と甲5発明の「前記文字列表示部」は、「前記文字列が表示領域内に現れてから表示領域外に移動して消えるまでの時間である文字列表示時間と前記文字列の表示が開始される文字から表示が終了する文字までの前記所定の方向における文字列の幅とに基づいて決定される移動速度で前記文字列を移動させつつ、前記画面上に表示を行う」点で共通する。
ただし、「文字列」が、本件特許発明3では「コメント」であるのに対し、甲5発明では「コメント」ではない点で、両発明は相違する。
また、「表示領域」が、本件特許発明3では、「前記表示領域」、すなわち、「前記動画の表示領域」であるのに対し、甲5発明では、「前記表示領域」、すなわち、「前記動画の表示領域」ではない点で、両発明は相違する。

(コ)構成3Lについて
上記(オ)で述べたとおり、甲5発明は、「判定部」を有していない。
したがって、「前記判定部」が、本件特許発明3では、「各コメントを前記移動速度で移動させて表示させた場合、前記第2のコメントが移動し終わるまでに前記第1のコメントが追いつく場合に、前記第1のコメントと前記第2のコメントとの表示位置が重なるものとして判定する」のに対し、甲5発明では、「前記判定部」を有していない点で、両発明は相違する。

(サ)一致点・相違点
以上によれば、本件特許発明3と甲5発明の一致点・相違点は次のとおりである。

[一致点]
(1A’)文字列情報を配信するサーバと、前記サーバに接続され、文字列を表示する表示装置とを有する文字列表示システムにおける表示装置であって、
(1B’)文字列を記憶する文字列情報記憶部と、
(1C’)前記サーバから送信される文字列情報を受信し、前記文字列情報記憶部に記憶する受信部と、
(1D’)前記文字列情報記憶部に記憶された文字列情報を前記文字列情報記憶部から読み出し、読み出した文字列を表示する文字列表示部と、
(1E’)前記文字列表示部によって表示される文字列のうち、第1の文字列と第2の文字列とのうちいずれか一方または両方が移動表示される文字列であり、
(1F’)前記第1の文字列と前記第2の文字列同士が重ならない位置に表示させる表示位置制御部と、
を有し、
(3J’)前記第1の文字列と前記第2の文字列との両方が所定の方向に移動表示する文字列であり、
(3K’)前記文字列表示部は、前記文字列が表示領域内に現れてから表示領域外に移動して消えるまでの時間である文字列表示時間と前記文字列の表示が開始される文字から表示が終了する文字までの前記所定の方向における文字列の幅とに基づいて決定される移動速度で前記文字列を移動させつつ、前記画面上に表示を行う、
ことを特徴する表示装置。

[相違点]
(相違点5-1)「文字列」が、本件特許発明3では、「複数の端末装置から送信されるコメント」であるのに対し、甲5発明では、「複数の端末装置から送信されるコメント」ではない点。

(相違点5-2)「サーバ」が、本件特許発明3では、「複数の端末装置から送信されるコメント情報を受信して各端末装置へ配信するコメント配信サーバ」であるのに対し、甲5発明では、当該「サーバ」ではない点。

(相違点5-3)「表示装置」が、本件特許発明3では、「前記コメント配信サーバに接続され動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する」のに対し、甲5発明では、当該表示をしていない点。

(相違点5-4)「文字列情報記憶部」が、本件特許発明3では、「前記コメントが付与された時点における、前記動画の最初を基準として動画の経過時間を表す動画再生時間をコメント付与時間として前記コメントに対応づけてコメント情報として記憶する」のに対し、甲5発明では、当該「コメント情報」を記憶していない点。

(相違点5-5)「文字列情報」の「受信」が、本件特許発明3では、「前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメント情報を受信する毎」に受信するのに対し、甲5発明では、当該受信ではない点。

(相違点5-6)「文字列情報」の読み出しが、本件特許発明3では、「前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間が対応づけられたコメントを前記コメント情報記憶部から読み出す」ことであるのに対し、甲5発明では、当該読み出しではない点。

(相違点5-7)本件特許発明3は、「前記第1のコメントを動画上に表示させる際の表示位置が、当該第1のコメントよりも先に前記動画上に表示される第2のコメントの表示位置と重なるか否かを判定する判定部」(構成1E)を有するのに対し、甲5発明は、当該「判定部」を有していない点。

(相違点5-8)「前記第1の文字列と前記第2の文字列同士が重ならない位置に表示させる」のが、本件特許発明3では、「前記判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合」(構成1F)であるのに対し、甲5発明では、「前記判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合」ではない点。

(相違点5-9)「前記表示位置制御部」が、本件特許発明3では、「前記動画の表示領域のうち、コメントを表示する基準となる位置を表す基準位置に従って第2のコメントが表示された後に前記第1のコメントを表示する際に、前記判定部が前記コメントが重なると判定した場合に、前記第1のコメントの基準位置を前記第2のコメントの基準位置とは異なる位置に変更して表示する」(構成2H)のに対し、甲5発明では、当該表示をしていない点。

(相違点5-10)「表示領域」が、本件特許発明3では、「前記表示領域」、すなわち、「前記動画の表示領域」であるのに対し、甲5発明では、「前記表示領域」、すなわち、「前記動画の表示領域」ではない点。

(相違点5-11)「前記判定部」が、本件特許発明3では、「各コメントを前記移動速度で移動させて表示させた場合、前記第2のコメントが移動し終わるまでに前記第1のコメントが追いつく場合に、前記第1のコメントと前記第2のコメントとの表示位置が重なるものとして判定する」(構成3L)のに対し、甲5発明では、「前記判定部」を有していない点。

イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点5-7?相違点5-9、相違点5-11について検討する。

請求人は、審判請求書の第39頁第17?19行目において、構成1E及び構成3L、構成1F及び構成2Hを組み合わせた技術は、甲5発明D3に、周知技術E1、公知技術E2、周知技術E3を組み合わせた発明と同一又は実質的に同一であると主張している。ここで、「甲5発明D3」は甲第5号証に記載された発明、「周知技術E1」及び「公知技術E2」は、甲第7号証、甲第8号証、甲第9号証の記載による周知技術または公知技術、「周知技術E3」は、甲第9号証の記載による周知技術と主張しているから、以下、甲5発明と、甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術で、技術分野及び解決しようとする課題が共通するか否かについて検討する。

(ア)技術分野について
まず、甲5発明と、甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術で、技術分野が共通するかについて検討する。

甲5発明は、「複数の言語による情報を表示する複数言語表示システム」の発明である。これに対して、甲7技術は、「4輪車や2輪車などの移動状態を表示画面上に2次元的に表示する3Dシミュレーション装置」の技術であり、甲8技術は、「操船を模擬訓練するための操船シミュレータ」の技術であり、甲第9号証に記載されているのは、「シミュレーション装置」の技術であり、甲10技術は、「プレーヤーのハンドル操作に応じて表示装置の表示面においてプレーヤーの自動車が操作されるビデオゲーム装置」の技術であるから、甲7、8技術、甲第9号証に記載されている技術は、シミュレーション装置の技術であり、甲10技術は、ビデオゲーム装置の技術である。よって、両者の技術分野は異なるといえる。
したがって、甲5発明と甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術では、技術分野が共通するとはいえない。

(イ)解決しようとする課題について
次に、甲5発明と、甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術で、解決しようとする課題が共通するか否かについて検討する。

甲5発明が解決しようとする課題は、複数の言語による情報を表示する複数言語表示システムにおいて、各言語の文字列画像が文字列方向と平行に並べてスクロール表示される際に、文字列画像の最初の文字が表示範囲に表示されてから文字列画像の最後の文字が表示範囲から消えるまでのスクロール表示時間が言語間でほぼ一致するようスクロール表示速度を言語毎に設定することであるといえる。
これに対して、上記2(1)イ(ウ)のとおり、甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術の課題は、車両、船舶などのシミュレータにおいて、操作者が操作する移動体と、装置が制御する移動体の接触を回避することである。
よって、両者の解決しようとする課題は異なるから、両者の解決しようとする課題は共通するとはいえない。

(ウ)動機付けについて
次に、甲5発明に甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術を適用する動機付けがあったかどうかについて検討する。

上記(ア)及び(イ)のとおり、甲5発明と甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術は、技術分野が共通するとはいえず、課題も共通するとはいえない。
また、甲5発明は、「複数の言語による情報を表示する複数言語表示システム」の発明であって、車両、船舶などのシミュレータではないから、甲5発明において、操作者が操作する移動体と、装置が制御する移動体の接触を回避するという課題は想定することができない。
さらに、甲5発明は、「大型情報表示装置の予め設定された表示範囲において各言語の文字列画像が文字列方向と平行に並べてスクロール表示される」(構成5a2)ようにするものである。
そうすると、甲5発明においては、各言語の文字列が重なるという事態はそもそも発生し得ないものである。
したがって、甲5発明において、各言語の文字列の重なりを回避するという課題は、甲第5号証の記載からは想定することができない。
よって、甲5発明に甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術を適用する動機付けがあったとはいえない。

(エ)まとめ
以上によれば、相違点5-7?相違点5-9、相違点5-11は、甲5発明と甲7、8、10技術及び甲第9号証の記載から把握される公知技術または周知技術から、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

ウ まとめ
したがって、本件特許発明3は、当業者が相違点5-7?相違点5-9、相違点5-11に係る構成を容易に導き出すことはできない。よって、相違点5-1?相違点5-6、相違点5-10について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲第5号証に記載された発明、及び、甲第7?12号証の記載から把握される周知または公知技術、並びに、甲第1号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 小括
以上のとおり、本件特許発明3は、甲第5号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第7?12号証の記載から把握される周知または公知技術、並びに、甲第1号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

(2)本件特許発明11について
本件特許発明11は、本件特許発明3の装置に対応するプログラムの発明である。
したがって、本件特許発明11は、甲第5号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第7?12号証の記載から把握される周知または公知技術、並びに、甲第1号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

4 無効理由4について
(1)本件特許発明3について
請求人は、口頭審理陳述要領書の別紙3の第15頁第3?7行目において、構成2Hを含めずに本件特許発明3と甲1発明の対比を行っているから、請求項1を引用する本件特許発明3について無効を主張していると解される。よって、以下、請求項1を引用する本件特許発明3について検討する。

ア 対比
請求項1を引用する本件特許発明3と甲1発明とを対比すると、両者は、上記1(1)ア(ク)で述べた相違点1-1及び相違点1-2と、上記2(1)アで述べた相違点1-4及び相違点1-5の点で相違している。

イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点1-1及び相違点1-2について検討する。

請求人は、口頭審理陳述要領書の別紙3の第16頁第9?11行目において、構成1E、構成1Fに係る相違点について、甲1発明Aに、公知技術E2改を組み合わせた発明と同一であると主張している。ここで、「甲1発明A」は甲第1号証に記載された発明、「公知技術E2改」は、甲第7号証の記載による公知技術と主張しているから、以下、甲1発明と甲7技術で、技術分野及び解決しようとする課題が共通するか否かについて検討する。

(ア)技術分野について
まず、甲1発明と甲7技術で、技術分野が共通するかについて検討する。

甲1発明は、ライブ配信サーバとライブ閲覧者端末とが通信ネットワークを介して接続されて構成されるライブ配信システムにおけるライブ閲覧者端末の発明である。これに対して、甲7技術は、「4輪車や2輪車などの移動状態を表示画面上に2次元的に表示する3Dシミュレーション装置」の技術である。よって、両者の技術分野は異なるといえる。
したがって、甲1発明と甲7技術では、技術分野が共通するとはいえない。

(イ)解決しようとする課題について
次に、甲1発明と甲7技術で、解決しようとする課題が共通するか否かについて検討する。

甲1発明の課題は、ライブ映像とライブ閲覧者からのコミュニケーション情報(例えば、チャット(テキスト文による情報))とを1つの画面でリアルタイムで同期表示することである。
これに対して、甲7技術の課題は、4輪車や2輪車などの移動状態を表示画面上に2次元的に表示する3Dシミュレーション装置において、自動走行の車両が遊戯者の車両に対して追突、接触することを回避することであるといえる。
よって、両者の解決しようとする課題は異なるから、両者の解決しようとする課題は共通するとはいえない。

(ウ)動機付けについて
次に、甲1発明に甲7技術を適用する動機付けがあったかどうかについて検討する。

上記(ア)及び(イ)のとおり、甲1発明と甲7技術は、技術分野が共通するとはいえず、課題も共通するとはいえない。
また、甲1発明は、ライブ配信システムにおけるライブ閲覧者端末の発明であって、4輪車や2輪車などの移動状態を表示画面上に2次元的に表示する3Dシミュレーション装置ではないから、甲1発明において、自動走行の車両が遊戯者の車両に対して追突、接触することを回避するという課題は想定することができない。
さらに、上記1(1)イで述べたとおり、甲1発明の「ライブ閲覧者端末」において、配信されたチャット文の重なりの問題及びそれを解決しようとする課題を想定することができない。
よって、甲1発明に甲7技術を適用する動機付けがあったとはいえない。

(エ)まとめ
以上によれば、相違点1-1及び相違点1-2は、甲1発明と甲7技術から、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

ウ まとめ
したがって、本件特許発明3は、当業者が相違点1-1及び相違点1-2に係る構成を容易に導き出すことはできない。よって、相違点1-4及び相違点1-5について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第7号証に記載された技術事項、甲第15?16号証の記載から把握される周知技術、並びに、甲第17号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 小括
以上のとおり、本件特許発明3は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第7号証に記載された技術事項、甲第15?16号証の記載から把握される周知技術、並びに、甲第17号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

(2)本件特許発明11について
本件特許発明11は、本件特許発明3の装置に対応するプログラムの発明である。
したがって、本件特許発明11は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第7号証に記載された技術事項、甲第15?16号証の記載から把握される周知技術、並びに、甲第17号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

5 無効理由5について
請求人は、口頭審理陳述要領書の別紙5において、本件特許発明3、11は進歩性を有しないと主張した後に、本件特許発明1、2、9、10は進歩性を有しないと主張しているから、まず、本件特許発明3について検討する。

(1)本件特許発明3について
請求人は、口頭審理陳述要領書の別紙3の第15頁第3?7行目において、構成2Hを含めずに本件特許発明3と甲1発明の対比を行っているから、請求項1を引用する本件特許発明3について無効を主張していると解される。よって、以下、請求項1を引用する本件特許発明3について検討する。

ア 対比
請求項1を引用する本件特許発明3と甲1発明とを対比すると、両者は、上記1(1)ア(ク)で述べた相違点1-1及び相違点1-2と、上記2(1)アで述べた相違点1-4及び相違点1-5の点で相違している。

イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点1-1及び相違点1-2について検討する。

請求人は、口頭審理陳述要領書の別紙5の第22頁第9行目?第23頁第9行目において、構成1E、構成1Fを含む相違点について、甲1発明A、公知技術E4から、当業者が容易に想到可能な発明であると主張している。ここで、「甲1発明A」は甲第1号証に記載された発明、「公知技術E4」は、甲第19号証の記載による公知技術と主張しているから、以下、甲1発明と、甲第19号証に記載された技術で、技術分野及び解決しようとする課題が共通するか否かについて検討する。

(ア)技術分野について
まず、甲1発明と、甲第19号証に記載された技術で、技術分野が共通するかについて検討する。

甲1発明は、ライブ配信サーバとライブ閲覧者端末とが通信ネットワークを介して接続されて構成されるライブ配信システムにおけるライブ閲覧者端末の発明である。これに対して、甲第19号証に記載された技術は、「移動したポップアップウインドウをある一定の位置に移動させると、元の位置に戻るようにする技術」である。よって、両者の技術分野とは異なるといえる。
したがって、甲1発明と甲第19号証に記載された技術では、技術分野が共通するとはいえない。

(イ)解決しようとする課題について
次に、甲1発明と、甲第19号証に記載された技術で、解決しようとする課題が共通するか否かについて検討する。

甲1発明の課題は、ライブ映像とライブ閲覧者からのコミュニケーション情報(例えば、チャット(テキスト文による情報))とを1つの画面でリアルタイムで同期表示することである。
これに対して、甲第19号証に記載された技術の課題は、移動したポップアップウインドウを元の位置に戻るようにさせることであるといえる。
よって、両者の解決しようとする課題は異なるから、両者の解決しようとする課題は共通するとはいえない。

(ウ)動機付けについて
次に、甲1発明に甲第19号証に記載された技術を適用する動機付けがあったかどうかについて検討する。

上記(ア)及び(イ)のとおり、甲1発明と甲第19号証に記載された技術は、技術分野が共通するとはいえず、課題も共通するとはいえない。
また、甲1発明は、ライブ配信システムにおけるライブ閲覧者端末の発明であって、ポップアップウインドウを移動させる装置ではないから、甲1発明において、移動したポップアップウインドウを元の位置に戻るようにさせるという課題は想定することができない。
さらに、上記1(1)イで述べたとおり、甲1発明の「ライブ閲覧者端末」において、配信されたチャット文の重なりの問題及びそれを解決しようとする課題を想定することができない。
よって、甲1発明に甲第19号証に記載された技術を適用する動機付けがあったとはいえない。

(エ)まとめ
以上によれば、相違点1-1及び相違点1-2は、甲1発明と甲第19号証に記載された技術から、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

ウ まとめ
したがって、本件特許発明3は、当業者が相違点1-1及び相違点1-2に係る構成を容易に導き出すことはできない。よって、相違点1-4及び相違点1-5について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明、甲第15?16号証の記載から把握される周知技術、甲第17号証及び甲第20?22号証に記載された技術事項、並びに、甲第19号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 小括
以上のとおり、本件特許発明3は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、甲第15?16号証の記載から把握される周知技術、甲第17号証及び甲第20?22号証に記載された技術事項、並びに、甲第19号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

(2)本件特許発明1、2、9?11について
本件特許発明1及び2と甲1発明を対比すると、本件特許発明1及び2は、少なくとも上記相違点1-1及び相違点1-2に係る構成を有している発明である。
したがって、本件特許発明1及び2は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、甲第15?16号証の記載から把握される周知技術、甲第17号証及び甲第20?22号証に記載された技術事項、並びに、甲第19号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

また、本件特許発明9?11は、本件特許発明1?3の装置に対応するプログラムの発明である。
したがって、本件特許発明9?11は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、甲第15?16号証の記載から把握される周知技術、甲第17号証及び甲第20?22号証に記載された技術事項、並びに、甲第19号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

6 まとめ
(1)無効理由1について
本件特許発明1?3、9?11は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第2号証に記載された技術事項または甲第2?4号証の記載から把握される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1?3、9?11は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであるとの請求人の主張は成立しない。

(2)無効理由2について
本件特許発明3、11は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第5号証に記載された技術事項または甲第5、6号証の記載から把握される周知技術、並びに、甲第7?12号証の記載から把握される周知または公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明3、11は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであるとの請求人の主張は成立しない。

(3)無効理由3について
本件特許発明3、11は、甲第5号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第7?12号証の記載から把握される周知または公知技術、並びに、甲第1号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明3、11は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであるとの請求人の主張は成立しない。

(4)無効理由4について
本件特許発明3、11は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、及び、甲第7号証に記載された技術事項、甲第15?16号証の記載から把握される周知技術、並びに、甲第17号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明3、11は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであるとの請求人の主張は成立しない。

(5)無効理由5について
本件特許発明1?3、9?11は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、甲第15?16号証の記載から把握される周知技術、甲第17号証及び甲第20?22号証に記載された技術事項、並びに、甲第19号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1?3、9?11は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであるとの請求人の主張は成立しない。

第6 むすび
以上のとおり、請求人が申し立てる無効理由1ないし5は、いずれも理由がなく、特許第4695583号発明の特許請求の範囲の請求項1,2,3,9,10及び11に記載された発明についての特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-12-28 
結審通知日 2019-01-07 
審決日 2019-01-18 
出願番号 特願2006-333851(P2006-333851)
審決分類 P 1 123・ 121- Y (H04N)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 坂東 大五郎
清水 正一
登録日 2011-03-04 
登録番号 特許第4695583号(P4695583)
発明の名称 表示装置、コメント表示方法、及びプログラム  
代理人 峰 隆司  
復代理人 朝倉 傑  
代理人 中山 俊彦  
代理人 井上 正  
代理人 陳野 裕  
代理人 野河 信久  
代理人 蔵田 昌俊  

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