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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02M |
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管理番号 | 1368537 |
審判番号 | 不服2018-14974 |
総通号数 | 253 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-11-09 |
確定日 | 2020-11-18 |
事件の表示 | 特願2016-528654「自己再生式排出ガス後処理により超低PM排出量規制に適合させた,自然吸気型コモンレール・ディーゼルエンジン」拒絶査定不服審判事件〔平成27年1月29日国際公開、WO2015/011727、平成28年9月8日国内公表、特表2016-527435〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)7月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年7月23日(IN)インド共和国)を国際出願日とする出願であって、その手続は以下のとおりである。 平成28年1月25日:国内書面の提出 平成28年2月5日:翻訳文の提出 平成29年12月12日(発送日:同年12月19日):拒絶理由通知書 平成30年3月19日:意見書、手続補正書の提出 平成30年7月5日(発送日:同年7月10日):拒絶査定 平成30年11月9日:審判請求書、手続補正書の提出 令和元年9月25日(発送日:同年10月1日):拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由」という。) 令和2年1月14日:意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明は、令和2年1月14日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「自然吸気型内燃機関における排出ガスの排出量を制御するための制御システム(100)であって: 自己再生式フィルタを有するとともにエンジンの排気マニフォルド(106)に接続されたディーゼル酸化触媒(102)と; 吸気エルボ(104)に介挿されるとともに排出ガスを新鮮空気と均一に混合させる排気混合チューブ(114)と; EGRクーラの冷気側近傍に設けられるとともに前記EGRクーラに前記吸気エルボ(104)を介して接続された排気再循環(EGR)バルブ(110)を備え; 電子制御ユニット(ECU)が,少なくとも1つの信号を前記EGRバルブに送信することで前記EGRバルブを作動させるように構成されており, 前記ECUは,制御されたEGRの流れを前記吸気エルボに与えるオープンループ制御ロジックを含み, 前記排気混合チューブは,排出ガスを前記吸気エルボに前記吸気エルボ内の吸入空気を横切る方向に導入し, 前記EGRバルブは,前記排気混合チューブ及び前記吸気エルボの外部に設けられている,制御システム(100)。」 第3 当審における拒絶の理由 当審が通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。 理由1(明確性) 本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 理由2(進歩性) 本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ●理由2(進歩性)について ・請求項1ないし5に対して 引用文献1ないし4 引 用 文 献 等 一 覧 引用文献1:特開2003-201899号公報 引用文献2:特開2009-103133号公報 引用文献3:特開2012-167652号公報(周知技術を示す文献) 引用文献4:特表2011-516773号公報(周知技術を示す文献) 第4 理由2(特許法第29条第2項)の拒絶理由についての検討 1 引用文献1 (1)引用文献1の記載事項 当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(特開2003-201899号公報)には、「圧縮着火式内燃機関」に関して、図面(特に図1を参照。)とともに以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は圧縮着火式内燃機関に係り、特に、燃焼形態の改善により排ガスの清浄化を図ると共に、DPFとの両立を可能とした圧縮着火式内燃機関に関するものである。」 イ 「【0026】図1に本実施形態に係る圧縮着火式内燃機関を示す。ここでいう圧縮着火式内燃機関とは、筒内の燃焼室に噴射された燃料を筒内の圧縮により自己着火させる形式のエンジンをいい、代表的にはディーゼルエンジン、特に本実施形態ではコモンレール式燃料噴射装置を備えたコモンレール式ディーゼルエンジンである。図は便宜上単気筒で示すが、当然多気筒であってもよい。このエンジンは車両に搭載されるものである。 【0027】1がエンジン本体で、これはシリンダ(筒)2、シリンダヘッド3、ピストン4、吸気ポート5、排気ポート6、吸気弁7、排気弁8、及び燃料噴射弁としてのインジェクタ9を備えた燃料噴射装置等から構成される。シリンダ2内に燃焼室10が形成され、燃焼室10内にインジェクタ9から燃料が噴射される。ピストン4の頂部にキャビティ11が形成され、キャビティ11は燃焼室10の一部をなす。キャビティ11は底部中央が隆起したリエントラント型燃焼室の形態をなす。インジェクタ9から噴射される燃料は常にキャビティ11内に到達する。これは燃料がシリンダ2側壁等に付着すると未燃HC排出等の問題が生じるからである。 【0028】吸気ポート5は吸気管12に、排気ポート6は排気管13にそれぞれ接続される。またこのエンジンにはターボチャージャ14が設けられ、排気エネルギを利用して吸気を過給するようになっている。15がタービン、16がコンプレッサである。コンプレッサ16の上流側に吸気量を検出するための吸気量センサ17が設けられ、コンプレッサ16の下流側に吸気を冷却するためのインタクーラ18が設けられる。ただし、本発明はターボチャージャーのない自然吸気エンジンにも有効であることは勿論である、排気管(排気通路)13の下流側には、連続再生式DPF32が設けられている。この連続再生式DPFは、排気ガス中のNOをNO_(2) に酸化させる酸化触媒30と、排気中のPMを捕集するDPF31とからなり、エンジンの運転中に排気ガス中のPMをDPF31にて捕集すると共に、酸化触媒30から流入するNO_(2) によってこの捕集したPMを燃焼させてDPF31の再生を行うものである。 【0029】酸化触媒30は例えば、ハニカム状のコーディエライト、あるいは耐熱鋼からなる担体の表面に、活性アルミナ等をコートしてウォッシュコート層を形成し、このコート層に白金、パラジウム、あるいはロジウム等の貴金属からなる触媒活性成分を担持させたものが使用される。 【0030】DPF31は、例えば多孔質のコーディエライト、あるいは炭化珪素によって多数のセルが平行に形成され、セルの入口と出口が交互に閉鎖された、所謂ウォールフロー型と呼ばれるハニカムフィルタや、セラミック繊維をステンレス多孔管に何層にも巻き付けた繊維型フィルタが使用される。 【0031】このような連続再生式DPF32において、上述したようにDPF31に捕集されたPMを燃焼させてDPF31の再生を行うためには、排気ガスの温度が約250°以上である必要がある。このため、エンジンがアイドリング状態であるときや低負荷運転状態であるときなど排気ガスの温度が低い(250°以下)ときにはPMを燃焼させることができない。そこで、排気ガスの温度が低いときには、PMの捕集量が一定量に達したと思われる時期がきたら、運転状態を排気ガス温度を上昇させる運転状態に切り換えてPMの燃焼、DPFの再生を行うようにしている。 【0032】さらにこのエンジンはEGR装置19も具備している。EGR装置19は、吸気管12と排気管13とを結ぶEGR管20と、EGR量を調節するためのEGR弁21と、EGR弁21の上流側にてEGRガスを冷却するEGRクーラ22とを備える。吸気管12においては、EGR管20との接続部の上流側にて吸気を適宜絞るための吸気絞り弁23が設けられる。 【0033】インジェクタ9はコモンレール24に接続され、そのコモンレール24に貯留された噴射圧力相当の高圧燃料(20?200MPa)がインジェクタ9に常時供給されている。コモンレール24には高圧ポンプ25により加圧圧送された燃料が随時供給される。 【0034】このエンジンを電子制御するため電子制御ユニット(エンジン制御装置、以下ECUという)26が設けられる。ECU26は各種センサ類から実際のエンジン運転状態を検出し、このエンジン運転状態に基づきインジェクタ9、EGR弁21、吸気絞り弁23、及び高圧ポンプ25からの燃料圧送量を調節する調量弁(図示せず)等を制御する。前記センサ類としては前記吸気量センサ17の他、アクセル開度センサ、エンジン回転センサ、コモンレール圧センサ(いずれも図示せず)等が含まれ、実際の吸気量、アクセル開度、エンジン回転速度(回転数)、エンジンのクランク角、コモンレール圧等がECU26により検知されるようになっている。」 ウ 「【0101】なお、本実施形態では、DPFを酸化触媒を前段に配置したものとして説明したが、本発明が対象とするDPFはこれに限られるものでなく、例えば、PMを捕集するフィルターに白金族金属類及びアルカリ土類金属酸化物を直接担持させることによりPMを良好に燃焼させるようにしたもの等、排気温度が低い領域でその浄化率が低下してしまうDPFに好適である。」 エ 「【0102】 【発明の効果】以上要するに本発明によれば、低発熱率パイロット・メイン燃焼方式により排ガス中のスモークを防止でき、かつDPFと組み合わせて使用できるという、優れた効果を発揮するものである。」 オ 上記アないしエの記載から、引用文献1には、圧縮着火式内燃機関の排気ガス制御システムが記載されているといえる。また、段落【0028】の「本発明はターボチャージャーのない自然吸気エンジンにも有効であることは勿論である」という記載から、圧縮着火式内燃機関の排気ガス制御システムを自然吸気エンジンに適用するものも記載されているといえる。 カ 段落【0032】の「吸気管12においては、EGR管20との接続部の上流側にて吸気を適宜絞るための吸気絞り弁23が設けられる。」という記載及び図1の図示内容から、引用文献1に記載された圧縮着火式内燃機関の排気ガス制御システムは、吸気管12とEGR管20との接続部において、吸気管12内の吸気を横切る方向に、EGR管20からのEGRガスを導入することが分かる。(以下、吸気管12とEGR管20との接続部のEGR管20を「EGR管20の接続部」という。) キ 段落【0032】の「EGR装置19は、吸気管12と排気管13とを結ぶEGR管20と、EGR量を調節するためのEGR弁21と、EGR弁21の上流側にてEGRガスを冷却するEGRクーラ22とを備える。」という記載及び図1の図示内容から、引用文献1に記載された圧縮着火式内燃機関の排気ガス制御システムにおいて、EGR弁21は、EGR管20の接続部の外部、且つ吸気管12の外部(すなわち、EGR管20の接続部及び吸気管12の外部)に設けられているといえる。 (2)引用発明 上記アないしキの記載及び図示内容を総合すると、引用文献1には、次の事項(以下「引用発明」という。)が記載されている。 [引用発明] 「自然吸気エンジンにおける排出ガスの排出量を制御するための圧縮着火式内燃機関の排気ガス制御システムであって: 再生を行うDPF31を有するとともにエンジンの排気管13に接続された酸化触媒30と; 吸気管12に接続されるとともにEGRガスを吸気と混合させるEGR管20の接続部と; EGRクーラ22の冷気側に設けられるEGR弁21を備え; ECU26が,少なくとも1つの信号を送信することで前記EGR弁21を作動させるように構成されており, 前記ECU26は,制御されたEGRガスの流れを前記吸気管12に与える制御を含み, 前記EGR管20の接続部は、EGRガスを前記吸気管12に前記吸気管12内の吸気を横切る方向に導入し, 前記EGR弁21は,前記EGR管20の接続部及び吸気管12の外部に設けられている,圧縮着火式内燃機関の排気ガス制御システム。」 2 引用文献2 (1)引用文献2の記載事項 当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2(特開2009-103133号公報)には、図面(特に、図7を参照。)とともに次の記載がある。 ア 「【0006】 以下、内燃エンジンに結合された排気ガス再循環(EGR)システムを有する内燃エンジンを作動させる装置及び方法を説明する。後述するEGRシステムは、排気ガスと吸入空気を混合して混合物を生成するミキサを含むのが好ましい。この混合物は、複数のシリンダ内で燃焼によりエンジンによって消費される。 【0007】 乗物で取付けられた、EGRシステムを有するエンジン100のブロック図が、図1に示される。エンジン100は、タービン104及びコンプレッサ106を有するターボチャージャ102を含む。コンプレッサ106は、エアクリーナ即ちフィルタ110に接続された空気入口108、及びCAC-高温通路116を介して給気冷却器(CAC:charge air cooler)114に接続された給気空気出口112を有する。CAC114は、CAC-低温通路120を介して吸気スロットルバルブ(ITH:intake throttle valve)118に接続された出口を有する。ITH118は、エンジン100の吸気システムと流体連通する吸気導管122に接続される。吸気システム124の分岐管は、エンジン100のクランクケース128に含まれる複数のシリンダ126の各々に流体連通されている。 【0008】 エンジンの複数のシリンダ126の各々は、参照番号130で全体が示されている、排気システムに接続されている。エンジン100の排気システム130は、タービン104の入口131に接続されている。排気管132が、タービン104の出口に接続されている。マフラー、触媒、微粒子フィルタ等、の他の部品が、排気管132に接続されてもよく、単純化の目的のためここでは図示しない。 【0009】 エンジン100は、参照番号134で全体が示されている、EGRシステムを有する。EGRシステム134は、排気ガスを流すことができるように互いに直列に接続されたEGRクーラー136及びEGRバルブ138を含む。EGRクーラー136は、EGRガス供給通路142を介して排気システム130と流体連通している。EGRバルブ138は、冷却EGRガス通路148に配置され冷却EGRガス通路148は吸気導管122の一部である合流部146と流体連通している。ミキサ150は、合流部146に配置され、冷却EGRガス通路148と流体連通し、及び吸気導管122を冷却EGRガス通路148と接続している。 【0010】 エンジン100の作動中、空気は、フィルタ110で濾過され、及び入口108を通ってコンプレッサ106に入り圧縮される。圧縮、即ちチャージされた、空気は、出口112を通ってコンプレッサ106を出て、ITH118を通過する前にCAC114で冷却される。ITH118からの空気は、ミキサ150を通って合流部146で冷却EGRガス通路148からの排気ガスと混合されて混合物を生成する。混合物は、吸気パイプ122に続くミキサ150のあと吸気システム124を通り、シリンダ126に入る。シリンダ126内で、混合物は、燃料とさらに混合され、燃焼し、エンジン100に有用な仕事、熱、及び排気ガスを生成する。各シリンダ126からの排気ガスは、排気システム130に集められ、タービン104に送られる。タービン104を通り抜ける排気ガスは、コンプレッサ106によって消費される仕事を行う。 【0011】 排気システム130の排気ガスの一部は、タービン104を迂回し、EGRガス供給通路142に入る。通路142に入る排気ガスは、吸気システム124に再循環される排気ガスである。再循環排気ガスは、EGRクーラー136で冷却され、量がEGRバルブ138によって調整され、そしてこのガスは、ミキサ150でITH118から出てきた給気空気と混合するように連結点146に送られる。 【0012】 ミキサ200は、図2ないし図5で示されている。ミキサ200は、吸気導管(エルボウとして示される)202に挿入されミキサ組立体204を形成する。ミキサ組立体204は、エルボウ202に形成された空気入口開口部206、ミキサ200に形成されたEGRガス開口部208、及びエルボウ202に形成されたミキサ出口210を有する。ミキサ組立体204はミキサ200及びエルボウ202が一緒に、図1に示されるミキサ150と同種の機能を行う、即ち両者とも空気と排気ガスを混合する。ミキサ組立体204は、また、他のエンジン部品に流体連通するための機能上のインターフェースを提供できる。 【0013】 エルボウ202を含む組立体204が図示され、ミキサ200がエンジンの作動に最も有利になる形態を示している。エルボウ202は、均質混合物の形成を妨げ易い90度湾曲部を含む。ミキサ200を使用すると、EGRガス開口部208を通ってミキサ200に入る排気ガスと空気入口開口部206を通って組立体204に入る空気が出口210で均質に混合される。」 イ 「【0017】 吸気導管700に配置されミキサ組立体603を形成するミキサ600の第2実施形態が、図6ないし図7に示される。分割部602は中心部602を含む。分割部602は、"涙状"すなわち翼切断面形状をとる。分割部602は、外側パイプ604内に配置される。分割部602は、接触の直径方向反対側の2本の線606(1つだけ見える)に沿って外側パイプ604と接し、この結果、分割部602と外側パイプ604との間に第1通路608及び第2通路610を形成してもよい。第3通路612は分割部602内に存在する。この方法では、外側パイプ604の流れ領域は、第1通路608、第2通路610、及び第3通路612の3部分に分割されている。第1実施形態と同様に、第1通路608、第2通路610、及び第3通路612の出口の平均高さは、互いに異なる。即ち、第1通路608、第2通路610、及び第3通路612の出口608'、610'、及び612'は、高さがずらされている。 【0018】 外側パイプ604は、分割部602の部分が外側パイプ604の端614を越えて突出するように分割部602の長さより短い長さに切断される。外側パイプ604の端614は、第2通路610の第2エッジ618と異なる第1通路608の第1エッジ616を形成するように段がつけられる。第1エッジ616及び第2エッジ618の各々は、略半円形であり、外側パイプ604の長さに沿って、異なる長さ即ち換言すれば高さに沿って配置される。図示された実施形態では、第1エッジ616及び第2エッジ618の各々は、円形の外側パイプ604の円形切断面に対してある角度をなすように切断される。その上、ミキサ600は、外側パイプ604の壁622の部分620が、第1通路608を取り囲む領域に沿って内側に傾き、第1通路608を流れる流体流の一部を分割部602に向って方向づけるという、これを通る流れを方向づける指向特性を有している。 【0019】 内燃エンジンの吸気導管700に取付けられたミキサ部分600の部分断面図が、図7に示されている。吸気導管700は、半径r及び中心線cを持つ円断面を有するが他の形状でもよい。また、この図で示されるミキサ部分600は、EGRガス供給パイプ702を含む。EGRガス供給パイプ702は、例えば、EGRバルブ又はクーラーの出口ポート(どちらも図示せず)である、排気ガス源(図示せず)に接続されている。 【0020】 エンジンの作動中、空気は吸気導管700を通過する。吸気導管700内の空気の流れは、全体が参照符号704で示される点線矢印によって示される。空気流れ704は、入口断面706で吸気導管700の領域に入り、ミキサ600の上方及び周りを通過し、出口断面708で吸気導管700の領域を出る。作動中の時間に、排気ガスの流れは、EGRガス供給パイプ702を通ってミキサ600に達する。排気ガスの流れは、全体が参照符号710で示される破線矢印によって示される。EGRガス供給パイプ702内の排気流710は、第1通路608、第2通路610、及び第3通路612を通ってミキサ600を出る各分割流として、3分割流に分割されるのがのぞましい。3分割流は一緒に記述されるが、各々の流量は、第1通路608、第2通路610、及び第3通路612の各々の出口開口サイズに依存し、等しい量である必要はない。したがって、各流通路を出る各分割流は、他の流れと異なる流量を有することがある。」 ウ 上記イの記載及び図7の図示内容から、引用文献2に記載されたミキサ組立体603を形成するミキサ600において、吸気導管700内の空気の流れ704を横切る方向に、排気ガスの流れ710を導入することが分かる。 (2)引用文献2技術 上記(1)アないしウの記載及び図示内容を総合すると、引用文献2には、以下の技術(以下、「引用文献2技術」という。)が記載されている。 〔引用文献2技術〕 「吸気導管122、202、700に挿入され、冷却EGRガス通路148からの排気ガスと空気とが均一に混合されるミキサ150、200、600からなるミキサ組立体204、603の技術。」 3 対比・判断 (1)対比 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「自然吸気エンジン」は、その技術的意義からみて、前者の「自然吸気型内燃機関」に相当し、以下同様に、「排気ガス」及び「EGRガス」は「排出ガス」に、「圧縮着火式内燃機関の排気ガス制御システム」は「制御システム」に、「再生を行うDPF31」は「自己再生式フィルタ」に、「排気管13」は「排気マニフォルド」に、「酸化触媒30」は「ディーゼル酸化触媒」に、「吸気管12」は「吸気エルボ」に、「吸気」は「吸入空気」に、「EGRクーラ22」は「EGRクーラ」に、「EGR弁21」は「排気再循環(EGR)バルブ」及び「EGRバルブ」に、「ECU26」は「電子制御ユニット(ECU)」及び「ECU」に、それぞれ相当する。 また、後者の「EGR管20の接続部」は、EGR管20を流れるEGRガス(排気再循環ガス)を吸気管12を流れる吸気に混合するためのEGR管の接続部であるから、前者の「排気混合チューブ」に相当し、したがって、後者の「吸気管12に接続されるとともに排気ガスを吸気と混合させるEGR管20の接続部」は、前者の「吸気エルボに介挿されるとともに排出ガスを新鮮空気と均一に混合させる排気混合チューブ」と、「吸気エルボに接続されるとともに排出ガスを新鮮空気と混合させる排気混合チューブ」という限りにおいて一致する。 また、後者の「EGRクーラ22の冷気側に設けられるEGR弁21」は、前者の「EGRクーラの冷気側近傍に設けられるとともに前記EGRクーラに前記吸気エルボを介して接続された排気再循環(EGR)バルブ」と、「EGRクーラの冷気側に設けられる排気再循環(EGR)バルブ」という限りにおいて一致する。 また、後者の「前記ECU26は,制御されたEGRの流れを前記吸気管12に与える制御を含む」は、前者の「前記ECUは,制御されたEGRの流れを前記吸気エルボに与えるオープンループ制御ロジックを含む」と、「前記ECUは,制御されたEGRの流れを前記吸気エルボに与える制御を含む」という限りにおいて一致する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、次の一致点、相違点がある。 〔一致点〕 「自然吸気型内燃機関における排出ガスの排出量を制御するための制御システムであって: 自己再生式フィルタを有するとともにエンジンの排気マニフォルドに接続されたディーゼル酸化触媒と; 吸気パイプに接続されるとともに排出ガスを新鮮空気と混合させる排気混合チューブと; EGRクーラの冷気側に設けられるとともに前記EGRクーラに接続された排気再循環(EGR)バルブを備え; ECUが,少なくとも1つの信号を送信することで前記EGRバルブを作動させるように構成されており, 前記ECUは,制御されたEGRの流れを前記エンジンに与える制御を含み, 前記排気混合チューブは,排出ガスを前記吸気エルボに前記吸気エルボ内の吸入空気を横切る方向に導入し, 前記EGRバルブは,前記排気混合チューブ及び前記吸気エルボの外部に設けられている,制御システム。」 〔相違点1〕 本願発明においては「吸気パイプに介挿されるとともに排出ガスを新鮮空気と均一に混合させる排気混合チューブ」を備えるのに対し、引用発明においては「吸気管12に接続されるとともに排気ガスを吸気と混合させるEGR管20の接続部」を備える点。 〔相違点2〕 本願発明においては「EGRクーラの冷気側近傍に設けられるとともに前記EGRクーラに前記吸気エルボを介して接続された排気再循環(EGR)バルブ」を備えるのに対し、引用発明においては「EGRクーラ22の冷気側に設けられるEGR弁21」を備える点。 〔相違点3〕 本願発明においては「前記ECUは,制御されたEGRの流れを前記吸気エルボに与えるオープンループ制御ロジックを含む」のに対し、引用発明においては「前記ECU26は,制御されたEGRの流れを前記吸気管12に与える制御を含む」点。 (2)判断 上記相違点1ないし3について検討する。 ア 相違点1について 上記引用文献2には、「吸気導管122、202、700に挿入され、冷却EGRガス通路148からの排気ガスと空気とが均一に混合されるミキサ150、200、600からなるミキサ組立体204、603の技術。」(上記「引用文献2技術」)が記載されている。そして、引用発明と、引用文献2技術は、共に、内燃エンジンの技術分野において、排気ガス再循環(EGR)を行う技術に関するものである。 してみれば、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明において、引用文献2技術を適用することにより、当業者が容易に想到できたものである。 イ 相違点2について まず、本願発明における「前記EGRクーラに前記吸気エルボを介して接続された排気再循環(EGR)バルブ」という事項の技術的な意義について検討する。 仮に、EGRガスの流路に関してEGRクーラの下流に吸気エルボを設け、吸気エルボの下流に排気再循環(EGR)バルブを設けると、EGRガスと吸気が混合した後に排気再循環(EGR)バルブでEGRガスを制御することになり、EGRガスを適切に制御することができなくなる。 したがって、本願発明における「EGRクーラの冷気側近傍に設けられるとともに前記EGRクーラに前記吸気エルボを介して接続された排気再循環(EGR)バルブを備え」という事項は、EGRガスの流路に関して「EGRクーラ」、「吸気エルボ」及び「排気再循環(EGR)バルブ」の順序を記載したものではなく、「EGRクーラ」、「吸気エルボ」及び「排気再循環(EGR)バルブ」の物理的な配置について記載したものであると理解できる。 そして、本願の明細書を参照すると、段落【0016】に「EGRパイプ112により排気マニフォルド106をEGRクーラ115に接続し,EGRクーラ115を吸気エルボ104に接続する。EGRバルブ110を既知の態様で吸気エルボ104に対して作動的に配置して,EGRの流れを制御可能とする。」と記載されている。この記載から、EGRクーラ、吸気エルボ(吸気管12)及び排気再循環(EGR)バルブを本願発明のように配置することは「EGRの流れを制御可能とする」ためである。 一方、引用発明におけるEGR弁21は、「EGR量を調節するためのEGR弁21」(引用文献1の段落【0032】参照。)であり、本願発明におけるEGRバルブ110と同様の作用効果を奏するものである。 してみると、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項のようにEGRクーラ、吸気エルボ(吸気管12)及び排気再循環(EGR)バルブを配置することは、当業者が適宜なし得た設計的事項にすぎない。 ウ 相違点3について EGRガスの流れを制御するために、オープンループ制御ロジックを用いることは、当該技術分野における周知技術(例えば、引用文献3(特開2012-167652号公報)の段落【0102】、引用文献4(特表2011-516773号公報)の段落【0024】等の記載を参照。)である。 してみれば、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明において、上記周知技術を適用することにより、当業者が容易に想到できたものである。 エ 効果について 本願発明は、全体としてみても、引用発明、引用文献2技術及び周知技術から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。 オ 小括 したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 まとめ 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-06-18 |
結審通知日 | 2020-06-23 |
審決日 | 2020-07-06 |
出願番号 | 特願2016-528654(P2016-528654) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F02M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 齊藤 彬 |
特許庁審判長 |
渡邊 豊英 |
特許庁審判官 |
西中村 健一 金澤 俊郎 |
発明の名称 | 自己再生式排出ガス後処理により超低PM排出量規制に適合させた,自然吸気型コモンレール・ディーゼルエンジン |
代理人 | 杉村 光嗣 |
代理人 | 田中 達也 |
代理人 | 杉村 憲司 |