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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B62M
管理番号 1368602
審判番号 不服2020-4167  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-30 
確定日 2020-12-08 
事件の表示 特願2015-234610号「電動補助自転車」拒絶査定不服審判事件〔平成29年6月8日出願公開、特開2017-100541号、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月1日の出願であって、平成31年4月26日付けで拒絶理由が通知され、令和1年7月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月26日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)され、これに対して、令和2年3月30日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1、3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物1、2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、請求項2、5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物1?3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、請求項4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物1、2、4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[刊行物等]
1.特開平9-263290号公報
2.特開2004-306818号公報
3.特開2000-59481号公報
4.特開2001-297646号公報
以下それぞれ「引用文献1ないし4」という。

第3 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、令和2年3月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
押し歩きの際に車輪に押し歩き補助トルクを付与可能な電動モータを有する電動補助自転車であって、
前記電動モータが前記車輪にトルクを付与しない第一モードと、前記電動モータが前記車輪に前記電動補助自転車をその場に留まらせるステイ補助トルクを付与する第二モードと、前記電動モータが前記車輪に押し歩き補助トルクを付与する第三モードと、を実行可能な制御部を備え、
運転者の手指によって操作可能な操作部により、前記第一モード、前記第二モード、前記第三モードが選択可能に構成されている、電動補助自転車。
【請求項2】
前記操作部は、第一操作部と、前記第一操作部とは異なる第二操作部と、を有し、
前記制御部は、前記第一操作部および前記第二操作部が操作されていないときに、前記第一モードを実行し、
前記制御部は、前記第一操作部または前記第二操作部が操作された状態で前記第二モードを実行し、
前記制御部は、前記第一操作部および前記第二操作部が操作された状態で前記第三モードを実行する、請求項1に記載の電動補助自転車。
【請求項3】
前記操作部は、ステイ操作部と、押し歩き操作部と、を有し、
前記制御部は、前記ステイ操作部および前記押し歩き操作部が操作されていないときに、前記第一モードを実行し、
前記制御部は、前記押し歩き操作部が操作されておらず、かつ、前記ステイ操作部が操作されているときに、前記第二モードを実行し、
前記制御部は、前記ステイ操作部の操作にかかわらず、前記押し歩き操作部が操作されているときに、前記第三モードを実行する、請求項1に記載の電動補助自転車。
【請求項4】
単一の前記操作部の操作により、前記第一モード、前記第二モード、前記第三モードの順に遷移、または、前記第一モード、前記第三モード、前記第二モードの順に遷移する、請求項1に記載の電動補助自転車。
【請求項5】
押し歩きの際に車輪に押し歩き補助トルクを付与可能な電動モータを有する電動補助自転車であって、
前記電動モータが前記車輪にトルクを付与しない第一モードと、前記電動モータが前記車輪に前記電動補助自転車をその場に留まらせるステイ補助トルクを付与する第二モードと、前記電動モータが前記車輪に押し歩き補助トルクを付与する第三モードと、を実行可能な制御部を備え、
運転者が操作可能な操作部により、前記第一モード、前記第二モード、前記第三モードが選択可能に構成されており、
前記操作部は、第一操作部と、前記第一操作部とは異なる第二操作部と、を有し、
前記制御部は、前記第一操作部および前記第二操作部が操作されていないときに、前記第一モードを実行し、
前記制御部は、前記第一モードを実行中に前記第一操作部と前記第二操作部の一方が操作された状態で前記第二モードを実行し、
前記制御部は、前記第二モードを実行中に前記第一操作部と前記第二操作部の一方に加えて前記第一操作部と前記第二操作部の他方も操作された状態でのみ前記第三モードを実行する、電動補助自転車。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審が付した。以下同様である。)。
(1a)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、補助駆動系の動力源としてモータを用いた電動自転車に関し、特に、自転車を手押しにより移動させる場合にも、所定のモータ補助力が得られるようにして、取扱容易性の向上を可能にしたものである。」
(1b)
「【0043】以下に、本発明の手押し補助モードを備えた電動自転車を、図1及び図3に示す第1具体例に基づいて説明する。本具体例の電動自転車は、運転者の切換えスイッチ操作により、走行用モータの駆動を低速に制御する手押し補助モードを開始し、この手押し補助モードにおいて、車両の人力による移動時に、走行用モータの低速動作による安全なパワーアシストを得られるようにしたものである。
【0044】すなわち、図1及び図3に示すように、この電動自転車には、手押し補助モードを起動するスイッチ31と、このスイッチ31に接続された手押し補助回路が追加され、この手押し補助回路32は、モータMの出力を制御するモータ駆動回路20に接続されている。
【0045】このスイッチ31は、ハンドル6bの一方又は両方のグリップ付近に設けられ、自動復帰式の接点スイッチ31Aが用いられている。また、このスイッチ31Aの出力端子は、手押し補助回路32に接続され、スイッチ31Aがオン操作された場合に、手押し補助モードを開始するスイッチ信号を手押し補助回路32に入力するようにしている。従って、このスイッチ31Aを運転者がオン操作し続けた場合にのみ、手押し補助回路32による手押し補助モードが維持され、スイッチ31Aから運転者の手が離れた場合に、スイッチ信号がオフとなり、即座に手押し補助モードが解除されるようになっている。
・・・
【0055】まず、運手者がスイッチをオン操作すると、手押し補助モードが開始され、即座に、自転車が一定速度で自走する。すなわち、このスイッチ信号に基づき、手押し補助回路32から所定のモータ出力指令値が、モータ駆動回路20に出力され、モータ駆動回路20により一定の低速回転にモータが動作し、電動自転車1が、一定の速度により自走を開始する。【0056】そして、運手者がスイッチをオフ操作すると、即座に、手押し補助モードが解除される。すなわち、手押し補助回路32からの指令出力が停止され、モータ駆動回路20及びモータの作動が停止する。」
(1c)
「【0063】次に、本発明の電動自転車を、図4乃至図5に示す第2具体例に基づいて説明する。
【0064】本具体例の電動自転車は、手押し補助モードにおいて、モータによる自走速度を、法規速度(時速5キロメートル)以下で、運転者の任意による所望の速度に調節できるように構成したものである。
【0065】すなわち、図4及び図5に示すように、上述したスイッチに加えて、或いは該スイッチに組み込んで、手押し補助専用のアクセル・スイッチ33Aをハンドル6bに設け、このアクセル・スイッチ33Aの操作量に応じて、手押し補助回路32から出力されるモータ指令値が変更される構成に設けている。
【0066】このアクセル・スイッチ33Aには、例えば、レバー式スイッチが用いられており、該スイッチ33Aの操作量に応じて、抵抗値を変化させる可変抵抗器が内蔵されている。すなわち、この可変抵抗器は、アクセル開度が増加するのに応じて、抵抗値を減少させる抵抗器であり、アクセル開度の増加に応じて、スイッチ信号の電圧値が増大するように設けられている。そして、この可変抵抗器の出力端子は、手押し補助回路32に接続され、運転者によるアクセル開度に応じたスイッチ電圧信号が、手押し補助回路32に入力されている。
【0067】尚、上述した第1具体例と同様に、このスイッチ33Aを設置する箇所を、乗車中はスイッチ操作が困難で、自転車を手押し移動する場合に、手が接触する箇所にし、このスイッチ33Aに手押し状態の判別機能を付加してもよい。これは、後述する第3具体例も同様である。
【0068】また、この手押し補助回路32は、このスイッチ電圧信号に応じて、法規速度まで、モータ出力が増大するモータ指令値を生成するように構成されている。
【0069】尚、このスイッチ33Aの構成を、スイッチ操作量に応じて、自走速度が連続的に変化するアクセル方式の構成としたが、これに限らず、スイッチ操作入力が行われ続ける限り、自走速度の上限(時速5キロメートル)まで、所定の増速率で速度を上昇させ、予め備えられているブレーキに連動した解除スイッチを設けた構成としてもよい。また、この増速率も、一定ではなく、例えば、急激なものから徐々に緩やかなものに変化するなどのように、使用者の好みや路面等の走行状況に応じて、任意のパターンを選択できるように構成してよい。
【0070】また、自走速度が段階的に変化する多段階方式に構成してもよい。また、この多段階方式に用いるスイッチとしても、複数のスイッチを設けて、これらを択一的に選択操作するようにしたり、単一のスイッチを設け、このスイッチの操作回数により選択操作するようにしたり、複数の選択ポジションを有する単一の選択スイッチを用いたり、適宜、適切なものを採択できる。
【0071】以上説明したように、本具体例によれば、上述した具体例と同様な効果を奏するのみならず、アクセル・スイッチを追加し、このスイッチにより手押し補助速度を調節できるように構成したので、押し歩きの状況に応じて、運転者により最適な補助速度に調節でき、状況に応じた良好なアシスト感を得ることができる。」

(2)引用文献1に記載された発明
摘記(1b)の段落【0055】の「スイッチ」は、段落【0045】の記載から、「ハンドル6bのグリップ付近に設けられたスイッチ31」であることが明らかである。
また、摘記(1b)の段落【0055】の「運手者」(2箇所)は、「運転者」の誤記であることが、明らかである。
これらのことと、摘記(1b)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「運転者がハンドル6bのグリップ付近に設けられたスイッチ31をオン操作すると、このスイッチ信号に基づき、手押し補助回路32から所定のモータ出力指令値が、モータ駆動回路20に出力され、モータ駆動回路20により一定の低速回転にモータが動作し、手押し補助モードが開始され、電動自転車1が、一定の速度により自走を開始し、
運転者がハンドル6bのグリップ付近に設けられたスイッチ31をオフ操作すると、手押し補助回路32からの指令出力が停止され、モータ駆動回路20及びモータの作動が停止し、手押し補助モードが解除される、
電動自転車1。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2a)
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例の構成は走行中のアシスト動作に関するものであり、停止状態ではアシスト動作を行っていない。
一方、坂道等の傾斜斜上で自転車を停止する場合には、自転車や乗車者の自重によって下り方向の力が加わるため、自転車を静止させておくためには、ブレーキをかけたり、足を接地させて踏ん張る必要があり、これを怠れば、自転車が不用意に前進または後退して危険な場合がある。
【0005】
そこで本発明の目的は、傾斜面で停止した際にアシスト駆動機能を用いて安定的な静止状態を得ることができ、安全性や快適性に優れた電動アシスト自転車及びその制御方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するため、車輪駆動軸にアシストトルクを付与することによってペダル踏力を軽減するアシスト駆動手段と、少なくとも自転車の前後方向の傾斜角度を検出する傾斜角度検出手段と、前記傾斜角度検出手段によって検出された傾斜角度に基づいて自転車の停車時に付与する定常的なトルク量を算出するトルク量算出手段と、前記トルク量算出手段によって算出された定常的なトルク量を自転車の停止時に前記アシスト駆動手段によって付与する制御手段とを有することを特徴とする。」
(2b)
「【0011】
また、ハンドル6には、LCD等による表示部、キー入力用の操作部、及びそれらを制御する表示部コントローラが設けられ、ユーザに各種表示を提供するとともに、キー入力による各種モード設定や選択等を行えるようになっている。
また、ヘッドパイプ12には電池ユニット14の電源オン、オフを切り替えるキースイッチが設けられている。
また、前輪部2には、アシスト駆動用のモータと、このモータの駆動を制御するモータドライバと、このモータドライバを制御するモータコントローラが設けられている。
また、後輪部3には、自動変速ユニットが設けられている。
・・・
【0019】
また、マイコン311は、XY2軸加速度センサ314からの検出信号を用いて自転車のX軸方向(前後方向)とY軸方向(左右方向)の加速度を検出し、その検出値から自転車の前後方向と左右方向の傾斜を算出する。
例えば、X軸方向(前後方向)の加速度値をローパスフィルタ処理して積分演算等を行うことにより、自転車の走行に伴う速度変動分の加速度を除去することにより、自転車が走行している道路の傾斜角度を算出することが可能である。
そして、本例では、この傾斜角度検出機能を用いて傾斜面上で停止した自転車に生じる下り方向の力を相殺する定常的なトルクをアシストモータ51に付加し、自転車を容易に停止できるように制御する。すなわち、自転車を止めた道路が坂道等の傾斜面である場合、自転車と乗車者の自重が傾斜面を下る方向に作用し、自転車が自然に移動してしまうため、これをユーザが足を踏ん張って支えたり、ブレーキをかける必要が生じる。そこで、この傾斜面上での自転車と乗車者の自重による下り方向の力を打ち消す方向に定常的にトルクを与え、ユーザの支える力を軽減し、ユーザの快適性を向上するものである。
なお、この定常的に与えるトルクは、傾斜面上での自転車の走行中にも有効であり、この定常的なトルク値に上乗せする方法でアシストトルクを与えることにより、走行時の快適性を向上できる。」
(2c)
「【0022】
次に、マイコン311はトルクセンサ35の検出値を読み込み(ステップS4)、その検出値に基づいてアシスト量を計算する(ステップS5)。そして、このアシスト量に対応するトルク値に、上述した定常的に与えるトルク値を加算し(ステップS6)、この加算値をモータコントローラ53に発生トルク値として送信する(ステップS7)。
具体例として、XY2軸加速度センサ314は予め水平状態で0Gが出力されるような位置に設定されており、通常走行時に加速度センサ314の値から計算された傾斜角によって図5に示すようにアシスト量をアップさせる。
これにより、モータコントローラ53がモータドライバ52を通してアシストモータ51を駆動し、アシスト動作を行う(ステップS8)。
ここで、自転車が停止している状態では、ステップS5で計算するアシスト量は零となり、定常的なトルク値だけがモータ51に与えられ、自転車停止時の静止状態を補助することになる。
以上のような制御動作を定期的に行い、自転車の傾斜角度を随時検出して走行場所に応じた最適なアシスト制御を行うようにする。」
(2d)
「【0027】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の電動アシスト自転車及びその制御方法では、自転車の前後方向の傾斜角度を検出し、この検出した傾斜角度に基づいて自転車の停車時に付与する定常的なトルク量を算出するとともに、この定常的なトルク量を自転車の停止時にアシスト駆動機能によって付与することから、自転車が傾斜面で停止した際にアシスト駆動機能を用いて安定的な静止状態を得ることができ、電動アシスト自転車の安全性や快適性を向上できる効果がある。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。
(3a)
「【請求項5】複数のデータを格納するメモリと、
携帯可能な筐体の一面に互いに隣接して配置された、少なくとも2つのスイッチと、
前記データを可視的に画面に表示する表示器と、
前記2つのスイッチの出力の組合せに応じて前記データの表示の態様を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記2つのスイッチのいずれか一方のみが操作されたときに第1の表示態様の指令と解し、所定時間内に、前記2つのスイッチのうちのいずれか一方が操作された後に他方のスイッチが続いて操作されたときに、第2の表示態様の指令と解し、前記2つのスイッチが同時に操作されたときに第3の表示態様の指令と解する、
ことを特徴とする携帯電話装置。」
(3b)
「【0016】本発明の携帯電話装置は、複数のデータを格納するメモリと、携帯可能な筐体の一面に互いに隣接して配置された、少なくとも2つのスイッチと、上記データを可視的に表示する表示器と、上記2つのスイッチの出力の組合せに応じて上記データの表示の態様を制御する制御部と、を備え、上記制御部は、上記2つのスイッチのいずれか一方のみが操作されたときに第1の表示態様の指令と解し、所定時間内に、上記2つのスイッチのうちのいずれか一方が操作された後に他方のスイッチが続いて操作されたときに、第2の表示態様の指令と解し、上記2つのスイッチが同時に操作されたときに第3の表示態様の指令と解する、ことを特徴とする。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、次の事項が記載されている。
(4a)
「【0039】ステップS14で第2スイッチ22のオンイベントがあれば、ステップS102で第1スイッチ21がオン状態であるか否かを判定し、第1スイッチ21がオン状態でなければ、ステップS103で効果の種別の切り換え、対応するインジケータ23の点灯および消灯を切り換えてメインルーチンに復帰する。第1スイッチ21がオン状態であればステップS104で保持モードをオンにするとともに選択されている効果に対応するインジケータ23を速い点滅に切り換え、メインルーチンに復帰する。このように、ステップS102の処理により、第2スイッチ22のみの操作で効果を順次切り換える動作が行われる。また、ステップS104の処理により、第1スイッチ21をオンにして、かつ第2スイッチ22をオンにしたときの保持モードオンの動作が行われる。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

引用発明は、「モータ」が、「モータ駆動回路20により一定の低速回転に」「動作し」、「手押し補助モードが開始され、電動自転車1が、一定の速度により自走を開始」するから、引用発明の「モータ」は、手押しの際に、電動自転車1の車輪に、押し歩き補助トルクを付与していることが明らかであり、本願発明1の「押し歩きの際に車輪に押し歩き補助トルクを付与可能な電動モータ」に相当する。

引用発明の「電動自転車1」は、上記アの「モータ」を有していることが明らかであるから、本願発明1の「押し歩きの際に車輪に押し歩き補助トルクを付与可能な電動モータを有する電動補助自転車」及び「電動補助自転車」のいずれにも相当する。

引用発明は、「モータ駆動回路20及びモータの作動が停止し、手押し補助モードが解除される」から、引用発明の「手押し補助モードが解除され」た場合は、上記アを踏まえると、「モータ」が車輪にトルクを付与しない状態となっていることが明らかであり、本願発明1の「前記電動モータが前記車輪にトルクを付与しない第一モード」に相当する。

引用発明は、「モータ駆動回路20により一定の低速回転にモータが動作し、手押し補助モードが開始され、電動自転車1が、一定の速度により自走を開始」するところ、引用発明の「手押し補助モード」では、「モータ」が、電動自転車1の車輪に、押し歩き補助トルクを付与しているといえるから(上記ア)、引用発明の「手押し補助モード」は、本願発明1の「前記電動モータが前記車輪に押し歩き補助トルクを付与する第三モード」に相当する。

引用発明は、「一定の低速回転にモータが動作」すること、すなわち、モータが作動することで第三モードとなり(上記エ)、「モータの作動が停止」することで第一モードとなる(上記ウ)から、モータの作動停止と作動とにより、第一モードと第三モードとを実行可能であるといえる。
そして、引用発明は、「手押し補助回路32から所定のモータ出力指令値が、モータ駆動回路20に出力され、モータ駆動回路20により一定の低速回転にモータが動作し、手押し補助モードが開始され」、「手押し補助回路32からの指令出力が停止され、モータ駆動回路20及びモータの作動が停止し、手押し補助モードが解除される」ことから、引用発明は、「手押し補助回路32」が、「モータ駆動回路20」を制御することで、実質的に、モータの作動停止と作動とを制御しているといえる。
このように、引用発明は、「手押し補助回路32」が、モータの作動停止と作動とを制御しているから、引用発明の「手押し補助回路32」と、本願発明1の「前記電動モータが前記車輪にトルクを付与しない第一モードと、前記電動モータが前記車輪に前記電動補助自転車をその場に留まらせるステイ補助トルクを付与する第二モードと、前記電動モータが前記車輪に押し歩き補助トルクを付与する第三モードと、を実行可能な制御部」とは、「前記電動モータが前記車輪にトルクを付与しない第一モードと、前記電動モータが前記車輪に押し歩き補助トルクを付与する第三モードと、を実行可能な制御部」において共通している。

引用発明の「ハンドル6bのグリップ付近に設けられたスイッチ31」は、「ハンドル6bのグリップ付近に設けられ」、「運転者が」「オン操作する」ないし「オフ操作する」から、運転者の手指によって操作可能であることが明らかであり、本願発明1の「運転者の手指によって操作可能な操作部」に相当する。
また、上記オを踏まえると、引用発明において、「運転者がハンドル6bのグリップ付近に設けられたスイッチ31をオフ操作すると」、「手押し補助回路32」及び「モータ駆動回路20」により、モータが停止し、第一モードとなり、「運転者がハンドル6bのグリップ付近に設けられたスイッチをオン操作すると」、「手押し補助回路32」及び「モータ駆動回路20」により、モータが作動し、第三モードとなるから、引用発明の「運転者がハンドル6bのグリップ付近に設けられたスイッチ31」を「オン」「オフ」「操作する」ことに係る構成と、本願発明1の「運転者の手指によって操作可能な操作部により、前記第一モード、前記第二モード、前記第三モードが選択可能に構成されている」構成とは、「運転者の手指によって操作可能な操作部により、前記第一モード、前記第三モードが選択可能に構成されている」という構成において共通している。

以上から、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点1>
「押し歩きの際に車輪に押し歩き補助トルクを付与可能な電動モータを有する電動補助自転車であって、
前記電動モータが前記車輪にトルクを付与しない第一モードと、前記電動モータが前記車輪に押し歩き補助トルクを付与する第三モードと、を実行可能な制御部を備え、
運転者の手指によって操作可能な操作部により、前記第一モード、前記第三モードが選択可能に構成されている、電動補助自転車。」
<相違点1>
「制御部」及び「操作部」に関して、本願発明1は、「前記電動モータが前記車輪に前記電動補助自転車をその場に留まらせるステイ補助トルクを付与する第二モード」を実行可能な制御部であり、操作部により、「前記第二モード」が選択可能に構成されているのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。

(2)相違点についての判断
相違点1について、以下検討する。

引用文献2の記載(特に、摘記(2a)?(2d)を参照)を総合すると、引用文献2には、傾斜面で走行中の自転車を停止させた場合に、下り方向の力を打ち消す方向に、定常的なトルクが、自動的に付加され、ユーザの支える力を軽減できる、という技術が記載されていると解され、この定常的なトルクは、ユーザの支える力を軽減できるもので、静止状態を補助し、安定的な静止状態を得ることができるものであるが、自転車をその場に留まらせるトルクにまで限定されているものではないし、また、自転車を押した場合においても、その場に留まらせるトルクが付加されるといえる根拠もない。
さらに、引用文献2には、傾斜面を検出することで、定常的なトルクが、走行中モードにおいて自動的に付加されることは示唆されていても、操作部により、その場に留まらせるトルクを付加するモードを選択できることは、記載も示唆もされていない。
要するに、引用文献2には、操作部により、「電動モータが車輪に電動補助自転車をその場に留まらせるステイ補助トルクを付与する」「第二モード」が選択可能に構成されているという、上記相違点1に係る本願発明1の構成は、記載も示唆もされていない。
また、引用文献3及び引用文献4は、電動補助自転車に関するものではないので、トルクを付加する電動モータ自体が記載されておらず、上記相違点1に係る本願発明1の構成は、記載も示唆もされていない。

引用文献1(摘記(1c)など)には、「アクセル・スイッチ」に関する技術も記載されているが、この「アクセル・スイッチ」は、「手押し補助速度を調節できるように」したものであり、「手押し補助モード」(本願発明1の「第三モード」に相当。)においてのみ動作するものであって、この「手押し補助モード」は、第二モードのような別のモードになり得るものではない(引用文献1には、「第二モード」は、記載も示唆もされていない。)。

そうすると、引用文献1には、に「第二モード」についての記載も示唆も無く(上記イ)、引用文献2ないし4には、スイッチなどの操作部により、「第二モード」が選択可能なことは記載されてないから(上記ア)、引用発明に引用文献1ないし4に記載の技術事項を適用したとしても、上記相違点1に係る本願発明1の構成には至らない。

したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献1ないし4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2?4について
本願発明2?4は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本願発明1と同様に、引用発明及び引用文献1ないし4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明5について
(1)対比
本願発明5と引用発明とを対比する。

本願発明5と引用発明との対比については、上記1(1)ア?オと同様のことがいえる。

引用発明の「ハンドル6bのグリップ付近に設けられたスイッチ31」は、「運転者が」「オン操作する」ないし「オフ操作する」から、本願発明5の「運転者が操作可能な操作部」に相当する。
また、上記ア及び上記1(1)オを踏まえると、引用発明において、「運転者がハンドル6bのグリップ付近に設けられたスイッチ31をオフ操作すると」、「手押し補助回路32」及び「モータ駆動回路20」により、モータが停止し、第一モードとなり、「運転者がハンドル6bのグリップ付近に設けられたスイッチをオン操作すると」、「手押し補助回路32」及び「モータ駆動回路20」により、モータが作動し、第三モードとなるから、引用発明の「運転者がハンドル6bのグリップ付近に設けられたスイッチ31」を「オン」「オフ」「操作する」ことに係る構成と、本願発明5の「運転者が操作可能な操作部により、前記第一モード、前記第二モード、前記第三モードが選択可能に構成されている」構成とは、「運転者が操作可能な操作部により、第一モード、第三モードが選択可能に構成されている」という構成において共通している。

以上から、本願発明5と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点5>
「押し歩きの際に車輪に押し歩き補助トルクを付与可能な電動モータを有する電動補助自転車であって、
前記電動モータが前記車輪にトルクを付与しない第一モードと、前記電動モータが前記車輪に押し歩き補助トルクを付与する第三モードと、を実行可能な制御部を備え、
運転者が操作可能な操作部により、前記第一モード、前記第三モードが選択可能に構成されている、電動補助自転車。」
<相違点5-1>
「制御部」及び「操作部」に関して、本願発明5は、「前記電動モータが前記車輪に前記電動補助自転車をその場に留まらせるステイ補助トルクを付与する第二モード」を実行可能な制御部であり、操作部により、「前記第二モード」が選択可能に構成されているのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点5-2>
本願発明5は、
「前記操作部は、第一操作部と、前記第一操作部とは異なる第二操作部と、を有し、
前記制御部は、前記第一操作部および前記第二操作部が操作されていないときに、前記第一モードを実行し、
前記制御部は、前記第一モードを実行中に前記第一操作部と前記第二操作部の一方が操作された状態で前記第二モードを実行し、
前記制御部は、前記第二モードを実行中に前記第一操作部と前記第二操作部の一方に加えて前記第一操作部と前記第二操作部の他方も操作された状態でのみ前記第三モードを実行する」のに対して、
引用発明は、そのように特定されていない点。

(2)相違点についての判断
相違点について、以下検討する。

相違点5-1について検討する。
相違点5-1は、上記相違点1と実質的に同様であるから、上記1(2)ア?ウで述べたのと同様に、引用文献1には、「第二モード」についての記載も示唆も無く、引用文献2ないし4には、スイッチなどの操作部により、「第二モード」が選択可能なことは記載されてないから、引用発明に引用文献1ないし4に記載の技術事項を適用したとしても、上記相違点5-1に係る本願発明5の構成には至らない。

したがって、上記相違点5-2について検討するまでもなく、本願発明5は、引用発明及び引用文献1ないし4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 小括
よって、本願発明1?5は、引用発明及び引用文献1ないし4に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
令和2年3月30日付けの手続補正により、本願発明1?4は、少なくとも上記相違点1に係る本願発明1の構成を有するものとなった。
また、本願発明5は、少なくとも上記相違点5-1に係る本願発明5の構成を有するものであって、上記相違点5-1は実質的に上記相違点1と同様である。
そして、上記第5で述べたとおり、本件発明1?5は、拒絶査定において引用された引用発明及び引用文献1ないし4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-11-19 
出願番号 特願2015-234610(P2015-234610)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B62M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中島 昭浩  
特許庁審判長 佐々木 一浩
特許庁審判官 出口 昌哉
一ノ瀬 覚
発明の名称 電動補助自転車  
代理人 特許業務法人 信栄特許事務所  
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