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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01G |
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管理番号 | 1368636 |
審判番号 | 不服2019-2592 |
総通号数 | 253 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-02-26 |
確定日 | 2020-11-25 |
事件の表示 | 特願2017-544948「セラミック素子用の電気接続用接点、セラミック素子および素子システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 1日国際公開、WO2016/135255、平成30年 4月12日国内公表、特表2018-510507〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2016年2月25日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2015年2月27日 ドイツ(DE))を国際出願日とする出願であって、平成29年8月24日に手続補正がなされ、平成30年5月28日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年8月29日に手続補正がなされたが、同年10月23日に拒絶査定がなされ、これに対して、平成31年2月26日に拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされた。 その後、平成31年2月26日の手続補正について、令和2年2月19日付けで当審による補正の却下の決定がなされ、同日付けの拒絶理由通知に対する応答時、同年5月21日に手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1ないし12に係る発明は、令和2年5月21日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 電気接続用接点を有するセラミック素子であって、 前記電気接続用接点は、第1材料(M1)と、その上に配置された第2材料(M2)とを有し、前記第1材料(M1)は導電性が大きく、前記第2材料(M2)は熱膨張係数が小さく、 前記第1材料の前記導電性が少なくとも40m/Ωmm^(2)であり、前記第2材料の前記熱膨張係数が最大5ppm/Kであり、 前記セラミック素子は、前記電気接続用接点(5)が接点材料(8)により固定されている基体(4)を有し、前記接点材料(8)が焼結材料であり、前記接点材料が焼結銀である、セラミック素子。」 3.当審の拒絶の理由 当審が令和2年2月19日付けで通知した拒絶理由のうち、「理由A」の概要は次のとおりである。 本件出願の請求項1?14に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1?4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引 用 文 献 一 覧 1.特開2002-313667号公報 2.特開2000-223358号公報 3.特開平2-161711号公報 4.実願昭63-125337号(実開平2-45620号) のマイクロフィルム 4.当審の判断 (1)引用例 当審の拒絶の理由に引用された特開2002-313667号公報(以下、「引用例」という。)には、「セラミック電子部品」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 ア.「【請求項1】 外表面上に端子電極が形成され、かつセラミックをもって構成される、電子部品本体と、 前記端子電極に電気的に接続されるように接合される、導電性の金属板からなる端子部材とを備え、 前記端子部材を構成する金属板は、電気抵抗率が10μΩ・cm以下の第1および第2の金属からそれぞれなる第1および第2の外層と、前記第1および第2の外層間に位置しかつ熱膨張係数が前記第1および第2の金属よりも小さく1.0×10^(-5)/℃以下の第3の金属からなる内層とを含む、少なくとも3層構造を有する、セラミック電子部品。」 イ.「【0051】2つの電子部品本体22の各々の端子電極23に共通に電気的に接続されるように、導電性の金属板からなる端子部材29が接合される。端子部材29は、この実施形態では、全体として逆U字状に折り曲げられた形態をなしており、その外側の端部において、下の電子部品本体22の下方に向く側面に対向する方向へさらに折り曲げられ、ここに配線基板(図示せず。)への接続のための接続端子部30を形成している。この接続端子部30には、たとえば膨出加工することによって形成された凸部31が設けられることが好ましい。凸部31は、下の電子部品本体22の下方に向く側面に向かって突出し、接続端子部30と下の電子部品本体22の下方に向く側面との間に所定の間隔を確実に形成するように作用する。 【0052】端子部材29を構成する金属板は、図2に示すように、第1および第2の外層32および33と、第1および第2の外層32および33間に位置する内層34とを含む、少なくとも3層構造を有している。 【0053】この端子部材29を構成する金属は、クラッド材のように、外層32および33ならびに内層34の各々を与える、厚みがたとえば0.01?0.1mm程度の金属板材を互いに貼り合わせた構造を有していても、あるいは、内層34が金属板材から構成され、外層32および33が、この金属板材上に形成されるめっき膜をもって構成されてもよい。 【0054】第1および第2の外層32および33は、電気抵抗率が10μΩ・cm以下、より好ましくは、5μΩ・cm以下の第1および第2の金属からそれぞれ構成される。他方、内層34は、熱膨張係数が第1および第2の金属よりも小さく1.0×10^(-5)/℃以下、より好ましくは、5.0×10^(-6)/℃以下の第3の金属から構成される。」 ウ.「【0056】この実施形態では、端子部材29を構成する金属板は、前述したように、逆U字状に折り曲げられた形状を有し、その外側に向く面は、第1の外層32によって与えられ、その内側に向く面は、第2の外層33によって与えられている。また、このような端子部材29と電子部品本体22上の端子電極23とは、たとえば半田35によって接合される。すなわち、半田35は、端子部材29の第1の外層32に接触する状態で半田付けを達成している。」 エ.「【0076】(1)Al/インバー/Cu 表1に示すような電気抵抗率および線膨張係数をそれぞれ有する、Cuを第1の外層として用い、Alを第2の外層として用い、インバー(Ni32Fe)を内層として用いた。 【0077】 【表1】 」 ・上記引用例に記載の「セラミック電子部品」は、上記「ア.」、「イ.」の記載事項、及び図1によれば、外表面上に端子電極23が形成され、かつセラミックをもって構成される電子部品本体22と、端子電極23に電気的に接続されるように接合される導電性の金属板からなる端子部材29とを備えるセラミック電子部品に関するものである。 ・上記「ア.」、「イ.」の記載事項、及び図1、図2によれば、端子部材29を構成する金属板は、電気抵抗率が10μΩ・cm以下、より好ましくは5μΩ・cm以下の金属からなる第1および第2の外層32,33と、外層32,33間に位置しかつ熱膨張係数が前記金属よりも小さく1.0×10^(-5)/℃以下、より好ましくは5.0×10^(-6)/℃以下の金属からなる内層34とを含む、少なくとも3層構造を有するものである。より具体的には、上記「エ.」の記載事項によれば、端子部材29は、電気抵抗率が1.7μΩ・cmのCuからなる第1の外層と、線膨張係数が2×10^(-6)/℃のインバーからなる内層と、Alからなる第2の外層とを含む3層構造(Al/インバー/Cuの3層構造)である。 ・上記「ウ.」の記載事項、及び図1、図2によれば、端子部材29と電子部品本体22上の端子電極23とは、半田35によって接合されてなるものである。 したがって、特に端子部材が上記「エ.」の表1に示されるAl/インバー/Cuの3層構造からなる場合のものに着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「端子部材を有するセラミック電子部品であって、 前記端子部材は、電気抵抗率が1.7μΩ・cmのCuからなる第1の外層と、線膨張係数が2×10^(-6)/℃のインバーからなる内層と、Alからなる第2の外層とを含む3層構造であり、 前記端子部材は、半田によって外表面上に端子電極が形成された電子部品本体に接合されてなる、セラミック電子部品。」 (2)対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ア.引用発明における「端子部材を有するセラミック電子部品であって」によれば、「端子部材」、「セラミック電子部品」は、それぞれ本願発明でいう「電気的接続用接点」、「セラミック素子」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、「電気接続用接点を有するセラミック素子」である点で一致する。 イ.引用発明における「前記端子部材は、電気抵抗率が1.7μΩ・cmのCuからなる第1の外層と、線膨張係数が2×10^(-6)/℃のインバーからなる内層と、Alからなる第2の外層とを含む3層構造であり」によれば、 (a)端子部材を構成する「第1の外層」は、電気抵抗率が1.7μΩ・cmのCuからなるものであって、これを導電率として換算すると約59m/Ωmm^(2)であり、本願発明において電気接続用接点を構成する材料について特定する「導電性が少なくとも40m/Ωmm^(2)」を満たすものと認められることから、本願発明でいう導電性が大きい「第1材料(M1)」に相当するといえる。 (b)また、端子部材を構成する「内層」は、第1の外層の上に配置され、線膨張係数が2×10^(-6)/℃、すなちわ2ppm/Kのインバーからなるものであり、本願発明において電気接続用接点を構成する材料について特定する「熱膨張係数が最大5ppm/K」を満たすものであることから、本願発明でいう、第1材料(M1)上に配置された熱膨張係数が小さい「第2材料(M2)」に相当するものである。 したがって、本願発明と引用発明とは、「前記電気接続用接点は、第1材料(M1)と、その上に配置された第2材料(M2)とを有し、前記第1材料(M1)は導電性が大きく、前記第2材料(M2)は熱膨張係数が小さく、前記第1材料の前記導電性が少なくとも40m/Ωmm^(2)であり、前記第2材料の前記熱膨張係数が最大5ppm/K」である点で一致するということができる。 ウ.引用発明における「前記端子部材は、半田によって外表面上に端子電極が形成された電子部品本体に接合されてなる・・」によれば、外表面上に端子電極が形成された「電子部品本体」は、本願発明でいう「基体」に相当し、端子部材を電子部品本体に接合する「半田」が、本願発明でいう「接点材料(8)」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、「前記セラミック素子は、前記電気接続用接点(5)が接点材料(8)により固定されている基体(4)を有」するものである点で共通する。 ただし、接点材料が、本願発明では、「焼結材料」であり、「焼結銀」である旨特定するのに対し、引用発明では、半田である点で相違している。 よって、本願発明と引用発明とは、 「電気接続用接点を有するセラミック素子であって、 前記電気接続用接点は、第1材料(M1)と、その上に配置された第2材料(M2)とを有し、前記第1材料(M1)は導電性が大きく、前記第2材料(M2)は熱膨張係数が小さく、 前記第1材料の前記導電性が少なくとも40m/Ωmm^(2)であり、前記第2材料の前記熱膨張係数が最大5ppm/Kであり、 前記セラミック素子は、前記電気接続用接点(5)が接点材料(8)により固定されている基体(4)を有する、セラミック素子。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 接点材料が、本願発明では、「焼結材料」であり、「焼結銀」である旨特定するのに対し、引用発明では、半田である点。 (3)判断 上記[相違点]について検討する。 引用例の段落【0072】には「図示の実施形態では、端子部材29を端子電極23に接合するため、半田35が用いられたが、半田以外の導電性接合材、たとえば導電性接着剤が用いられてもよい。」とあり、引用例には、導電性接合材(接点材料)として「半田以外の導電性接合材」を用いてもよいことが記載されているところ、例えば当審の拒絶の理由に引用された特開2000-223358号公報の段落【0019】に記載のように、セラミック電子部品に外部端子を接合する方法としては、はんだや導電性接着剤を用いることの他に、金属ペーストを塗布して焼成する方法、すなわち焼結材料を用いることも周知の技術事項である。ここで、例えば特開平11-214260号公報(段落【0003】を参照)、特開昭60-137010号公報(4頁左上欄7?15行を参照)に記載のように、焼結材料により素子本体に端子を接合する際に用いられる金属ペーストとして、銀(Ag)ペーストは一般的なものである。したがって、引用発明においても導電性接合材として、半田に代えて銀(Ag)ペーストを焼成した焼結部材すなわち焼結銀を用いることは当業者であれば適宜なし得たことである。 この点について、請求人は令和2年5月21日付け意見書において、引用文献1(特開2002-313667号公報)は、半田に代えて導電性接着剤が用いられ得ることを記載しているのみであり、引用文献2(特開2000-223358号公報)の金属ペーストの焼成物を接点材料として用いることを当業者に動機付ける記載もなく示唆すらされていない旨主張している。 しかしながら、上述したように、引用例には、「半田以外の導電性接合材」を用いてもよいことが記載されており、導電性接着剤は、「半田以外の導電性接合材」の一例にすぎない。そして、この「半田以外の導電性接合材」として周知の金属ペーストの焼成物を排除する理由も見当たらないことから、当該焼成物も含まれ得るものである。 よって、引用例には金属ペーストの焼成物を接点材料として用いることを動機付ける示唆があるといえ、請求人の上記主張は採用できない。 よって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-06-19 |
結審通知日 | 2020-06-23 |
審決日 | 2020-07-07 |
出願番号 | 特願2017-544948(P2017-544948) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 多田 幸司 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
五十嵐 努 井上 信一 |
発明の名称 | セラミック素子用の電気接続用接点、セラミック素子および素子システム |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |