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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B29C
管理番号 1368646
審判番号 不服2019-3775  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-20 
確定日 2020-11-26 
事件の表示 特願2014-228256「複合容器の製造方法、複合プリフォーム、および複合容器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月23日出願公開、特開2016- 88028〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年11月10日に出願された特願2014-228256号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成30年 6月18日付け:拒絶理由通知
平成30年 8月17日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年12月20日付け:拒絶査定
平成31年 3月20日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 4月21日 :上申書の提出
令和 2年 6月12日付け:拒絶理由通知
令和 2年 7月29日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、令和2年7月29日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項3】
複合容器において、
ねじ部とフランジ部とを有する口部を有する、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂製の容器本体と、
前記容器本体のうち前記口部以外の全域又は一部領域の外側に剥離除去可能に密着して設けられたポリエステル系樹脂製の熱収縮性のプラスチック製部材とを備え、
前記容器本体および前記プラスチック製部材は、ブロー成形により一体として膨張されており、
前記プラスチック製部材には印刷が施され、
前記プラスチック製部材は着色され、
前記プラスチック製部材に、前記プラスチック製部材を剥離するための切断線が設けられていることを特徴とする複合容器。」

第3 拒絶の理由
令和2年6月12日付けで通知した拒絶理由の理由1は、次のとおりの理由を含むものである。
本願の請求項3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献2に記載された発明及び引用文献1及び3に記載の技術事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献:
1.実願昭51-107182号(実開昭53-25856号)のマイクロフィルム(原審の拒絶理由通知の引用文献1)
2.特表2004-532147号公報(原審の拒絶理由通知の引用文献2)
3.特開平5-228988号公報(原審の拒絶理由通知の引用文献3)

第3 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、「延伸ブロー成形法を用いたラベル付き容器の製造方法」に関して、おおむね次の記載がある。
なお、下線は引用文献2に記載されていたもの及び当審で付したものである。

(1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレフォームの外面の少なくとも一部の上にラベルスリーブを配置してスリーブ付きプレフォームを製造せしめ;
そして前記スリーブ付きプレフォームをブロー成形してラベル付き容器を製造することを含んでなる、ブロー成形プロセスを用いてラベル付き容器を製造する方法。
・・・
【請求項7】
前記ラベルスリーブがポリエステル、コポリエステル、ポリオレフィン及びそれらの混合物からなる群から選ばれたポリマーから作られる請求項1に記載の方法。
・・・
【請求項20】
請求項1に記載の方法に従って製造されたラベル付き容器。
【請求項21】
前記ラベルスリーブが容器の少なくとも一部の周囲にぴったりとフィットしている請求項20に記載のラベル付き容器。
【請求項22】
容器の製造のためにブロー成形法に有用なプレフォーム;及びプレフォームの外面の少なくとも一部の上にフィットしたラベルスリーブを含んでなる、ラベル付き容器の製造に使用できるスリーブ付きプレフォーム。」

(2) 「【課題を解決するための手段】
【0012】
これら及びその他の目的は、ラベルスリーブをプレフォームの外面の少なくとも一部の上に配置してスリーブ付きプレフォームを形成し、前記スリーブ付きプレフォームをストレッチブロー成形してぴったりとフィットしたラベルを有するラベル付き容器を形成する、ストレッチブロー成形プロセスを用いたラベル付き容器の新規な製造方法を用いて達成される。この方法は、先行技術の方法によって必要とされる収縮トンネル及びフィルム配向工程を排除することによって、ブロー成形ラベル容器を製造するためのコストを削減し且つ方法の簡便性を増す。」

(3) 「【0017】
本発明において有用な好ましいラベルスリーブは、容器を製造するためのプレフォームのブロー成形前にプレフォームの上にフィットするように作られたゆがみ印刷ラベルスリーブである。このラベルスリーブは、インフレート用プレフォームと共に膨張する配向又は非配向(unoriented)ポリマーフィルム原料から製造する。スリーブは非配向フィルム素材から製造するのが好ましいが、これは得られるスリーブは、ブロー成形プロセスの間にプレフォームと共に延伸されることになるからである。ラベルスリーブに非配向ポリマーフィルム原料すると、フィルムの配向に必要な追加の幅出機又はダブル-バブル工程を排除することによって、フィルム原料製造プロセスが単純化される。また、配向工程は実施に費用がかかり、容器の収縮フィルムラベリングプロセスのコストを増す。別の実施態様においては、スリーブは二軸配向又は一軸配向フィルム素材から製造する。
・・・(略)・・・
【0019】
ラベルフィルム原料は、ブロー成形プロセスの間に必要な延伸条件に耐えられる任意のポリマーから製造する。一般には、このために必要なのは、ポリマーが、選択ブロー温度よりも低いガラス転移温度(「Tg」)を有するか(多くのソーダボトルに使用されるPETは77℃のTgを有する)、ラベルスリーブがブロー成形の直前に適当に加熱されることである。本発明では、約23?約110℃の温度において裂けずにかなり変形できる任意のポリマーが機能するであろう。多くのこのようなポリマーが当業者には知られている。適当なポリマーとしては、ポリエステル、コポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エチルビニルアルコール(「EVOH」)、エラストマーブレンド、エラストマーブレンドのコポリマー及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエステル、コポリエステル並びにポリエチレン及びポリプロピレンのようなポリオレフィンが好ましい。ポリ(エチレンテレフタレート)(「PET」)のようなポリエステル及びコポリエステルは、容器と類似した配向特性を有するので、延伸プロセスはインフレート用プレフォームによりよく適合する。ポリプロピレンは、低コストであり且つその密度が水よりも低いために再循還流において浮遊によって容易に分離されることから、現在のところ当業界において最適のラベル材料であるので好ましい。
【0020】
この方法で使用するラベルスリーブには、当業者によく知られた方法を用いて所望のラベルデザインを印刷しなければならない。好ましくは、ブロー成形プロセスの間にフィルムが受けるであろう膨張を補正するゆがみ印刷を使用する。膨張は場所によって異なる、即ち、容器のネックは側壁よりも膨張が少ないので、ゆがみ印刷パターンはそれに応じて変化させなければならないであろう。印刷は通常、フラットフィルム上で行い、スリーブチューブを作るにはフラットフィルムの両縁をつなぎ合わせなければならない。しかし、インフレート法を用いてフィルムを形成する場合には、スリッチング(slitting)及び再接着プロセスを経ずに直接チューブに印刷することが可能である。特定用途のための最も望ましいラベルスリーブ印刷法は、所望のパターン及び容器の製造に使用できる装置の型によって異なるであろう。更に、インフレートフィルムは、印刷の必要はなく、機能添加剤が望ましい用途に適している。例えば、着色剤又は顔料をポリマーに添加して、着色ラベルスリーブを作成できる。同様に、UV遮断コンセントレート、バリヤー層又は他の機能添加剤を、ラベルスリーブの作成に使用するポリマーに取り入れることができる。同様に、顔料添加チューブをプレフォームの周囲にフィットさせて、容器の色全体を変化させ、次いで、顔料添加チューブの上部を覆うように従来の貼り付けラベルを適用することができる。
・・・(略)・・・
【0025】
ラベルスリーブは、プレフォームの上に配置させることができるように、少なくとも一端は開いていなければなならない。場合によっては、スリーブは一端で閉じてチューブを形成してもよいし、側壁となる部分の一部のようなプレフォームの小部分を被覆してもよいし、あるいはプレフォームベースのネジ山のすぐ下から底までプレフォーム全体をほとんど被覆してもよい。」

(4) 「【0027】
本発明において使用するプレフォームは、ポリエステル、ポリオレフィン及びポリカーボネートのような従来の成形用ポリマーから形成する。ポリマーは単層又は多層であることができる。他のポリマーを使用して、多層容器の一部の層を形成することもできる。このようなポリマーは当業界で公知であり、リサイクルポリマー、例えばポリエステル、機能性ポリマー(performancepolymers)、例えばEVOH及びポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリエーテル、ブレンド並びにそれらのコポリマーを含む。
・・・(略)・・・
【0033】
プレフォームは、当業界で公知の方法によって、例えば射出成形によって又はまにはパイプ押出もしくはスエージングによって形成する。プレフォームはまず、Sidel(商標)型の機械のような赤外線ランプのバンクを用いて、所望のブロー温度(PETプレフォームの場合には通常は約100℃前後)に再加熱する。赤外線加熱後、次に熱プレフォームを直接、ブローホイールへと運搬し、ブローホイールにおいて金型中にインフレートする。しかし、本発明の場合には、別の工程を加えなければならない。ここで、プレフォームが成形ホイールに入る直前の任意の時点で、プレフォームスリーブをプレフォームを覆うようにスライドさせる。スリーブは、最終ボトル上に要求される輪郭ラベル被覆範囲の程度に応じて、適当な長さにカットしなければならない。これは、スリーブをプレフォーム上に配置するときに現位置で行ってもよいし、あるいはスリーブを個々の単位に予めカットしてもよい。いずれにせよ、スリーブをプレフォーム上に迅速に配置するには、適当なウェブ/フィルム取り扱い設備が必要である。当業界において通常の金型内ラベリングに一般に使用される設備を、このスリーブの取り扱いのために改良することができる。
【0034】
ブロー成形法においては、プレフォーム及びスリーブはブロー金型に入り、容器の最終形状にインフレートされる。プレフォームの余熱はスリーブの加熱に役立つので、スリーブは充分に柔軟になり延伸可能であろう。あるいは、プレフォーム及びスリーブの全体に熱風又は輻射熱を吹き込む/又は適用することもできる。スリーブ及びプレフォームは比較的高温においても粘着性であるので、プレフォームを逆さにする(一部のブロー成形機の場合にはそうである)ときにスリーブが滑り落ちる可能性は少ない。必要な場合には、スリーブをプレフォームに関して正しい位置に保持するために割送り又は位置あわせ装置を使用できる。プレフォームが空気圧及び延伸ロッドによって膨張するにつれて、ラベルスリーブも膨張する。ラベルは金型壁にぶつかるまで延伸するので、最終的にはラベルは製品の最終形状を取るであろう。従って、二軸延伸フィルム又は収縮トンネルを必要とせずに、タイトフィットする輪郭ラベルが作られる。」

(5) 「【0036】
ラベルは種々のポリマーから作ることができるので、現位置輪郭フィットラベルの使用はまた、他の機能的可能性を追加する。例えばラベルは容器の透過性の低下を促進するためにEVOH又はメタジレンジアミン(「MXD6」)のような高バリヤーポリマーから作ることができる(単層又は共押出により多層として)。ボトルとラベルとの密着度もまた、樹脂の選択によって左右され得る。PETボトルにPETラベルを用いた試験はかなりの密着を生じたが、ポリプロピレンラベルはPETボトルには貼り付こうとしなかった。密着が必要か否かは通常、リサイクルのための剥離が課題であるか否かによって決まる。」

(6) 「【0037】
他の可能な用途は本発明の一部である。例えば角度によって色が変わって見えるボディラベルのような着色した且つ/又は装飾的なフィルムを容器に加えることができる。」

(7) 「【0043】
例3
IR加熱前にスリーブを加える、PETを用いた1.5リットルの詰め替え可能ボトル用輪郭ラベリング
例1に使用したPETスリーブを、呼称外径1.25インチの1.5リットル用プレフォームに適用した。しかし、このプレフォーム及び金型の組み合わせは異なる再加熱ブロー成形機に取り付けたので、方法は少し変更しなければならなかった。実験時には、加熱とブロー成形の間に、プレフォームスリーブを取り付けるのに充分な時間、機械を停止させる方法がなかった。従って、プレフォームスリーブは、赤外線加熱工程を始開始し且つスリーブが加熱及びブロー成形プロセス全体を経る前にプレフォームの上に配置した。スリーブにはまた、黒のマジックインキでグリットを描いた。加熱工程の間に、スリーブはプレフォームの周囲で下に向かってわずかに収縮し、それによってスリーブとプレフォームとの密着が増したことが観察された。ブロー成形工程の間に、スリーブはうまく延伸し、グリッドは均一にゆがみ、見栄えがする形態にフィットするラベルを形成した。しかし、ボトルへの密着は、スリーブを加熱後に加えた例1の場合よりも強かった。これは、ラベルとボトルとをより長い時間一緒にする追加の加熱によるものであったとするのが最も可能性が高い。」

(8) 「【図2】



2 引用文献2に記載された発明
引用文献2には、【請求項21】に記載されたラベル付き容器の一態様として、次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「プレフォームの外面の少なくとも一部の上にラベルスリーブを配置してスリーブ付きプレフォームを製造せしめ、前記スリーブ付きプレフォームをブロー成形して製造されたラベル付き容器であって、
前記ラベルスリーブが、ラベル付き容器の少なくとも一部の周囲にぴったりとフィットしており、
前記プレフォームは、ポリオレフィンから形成され、
前記ラベルスリーブは、ポリエステルから形成され、所望のラベルデザインが印刷されている、ラベル付き容器。」

3 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、「2層2軸延伸成形壜体」に関して、次の記載がある。

(1) 「2.実用新案登録請求の範囲
外層(A)と内層(B)とによつて2層壁構造となつた2軸延伸成形された壜体であつて,外層(A)または内層(B)のいづれか一方をポリエチレンテレフタレート樹脂で成形し,他方をポリプロピレン樹脂で成形した2層2軸延伸成形壜体。」(第1ページ第4?9行)

(2) 「すなわち,外層Aをポリエチレンテレフタレー卜樹脂で成形し,内層Bをポリプロピレン樹脂で成形した場合,ポリエチレンテレフタレート樹脂が外側に位置するので本体1の外観が良く,また内容液が直接接触するのは,内側のポリプロピレン樹脂であるので,内容液を殺菌のため等の目的に従つて高温度充填が可能となる。
すなわち,外層Aをポリエチレンテレフタレート樹脂で成形し,内層Bをポリプロピレン樹脂で成形したものは,外観が良く,かつ内容液を高温度充填ができるので,日常使用されるシヨウ油とかソースとかの壜体に最適である。」(第4ページ第20行?第5ページ第11行)

4 引用文献3に記載された事項
引用文献3には、「多層延伸ブロー容器及びその製造方法」に関して、次の記載がある。

(1) 「【0008】図面を用いて詳細に説明する。図1は、重ね合わせる前の二種類のプリフォーム1、2の断面図を示すものである。図2は、図1のプリフォームを重ね合わせ1個の多重プリフォーム3とした断面説明図である。この時、二つのプリフォームの間に、酸素吸収材,脱臭剤等の薬剤、装飾用の物質、エアー等を一種あるいは数種組み合わせて設けることができる。図2は、酸素吸収剤を間に施した場合を示している。図3は、図2の多層パリソンを用いて延伸ブロー成形を行い、製造した容器4の断面説明図である。
【0009】プリフォームの間には、酸素吸収剤,脱臭剤等の薬剤の他、装飾用の物質、例えばプリフォームと同じ材質の薄いフィルムに印刷を施したもの等を設けることができる。また、プリフォーム間にエアー等が入る空間ができるようなプリフォームの組み合わせにすることにより、保温性のある容器等が得られる。」

(2) 「【図3】



第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「ラベル付き容器」及び「ラベルスリーブ」は、本願発明の「複合容器」及び「プラスチック製部材」にそれぞれ相当し、引用発明において、「プレフォーム」から「ブロー成形プロセスを用いて製造されたもの」である「容器」は、本願発明の「容器本体」に相当する。
また、引用発明におけるラベルスリーブは、「ラベル付き容器の少なくとも一部の周囲にぴったりとフィットして」いることから、本願発明の「容器本体のうち」、「一部領域の外側に」プラスチック製部材が設けられた状態に相当する。
そして、引用発明におけるラベル(スリーブ)は、ポリエステル樹脂製である一方、プレフォームから得られた容器は、ポリオレフィンから形成されており、接着や溶着ではなく、ラベルスリーブの熱収縮とスリーブ付きプレフォームの延伸ブロー成形によって引用発明のラベル付き容器は成形されていることから、引用発明の「容器にぴったりとフィットしたラベル」は、当然に容器から剥離除去可能に密着した状態といえる。

したがって、本願発明と引用発明は、
「複合容器において、
樹脂製の容器本体と、
前記容器本体のうち前記口部以外の全域又は一部領域の外側に剥離除去可能に密着して設けられたポリエステル系樹脂製の熱収縮性のプラスチック製部材とを備え、
前記容器本体および前記プラスチック製部材は、ブロー成形により一体として膨張されており、
前記プラスチック製部材には印刷が施されている複合容器。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明における「容器本体」は、「ねじ部とフランジ部とを有する口部を有する」のに対し、引用発明における容器は、そのような特定がなされない点。

<相違点2>
本願発明における「容器本体」は、「ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂製」であるのに対し、引用発明における容器は、「ポリオレフィンから形成される」点。

<相違点3>
本願発明における「プラスチック製部材」は着色されているのに対し、引用発明におけるラベル(スリーブ)には、そのような特定がなされない点。

<相違点4>
本願発明における「プラスチック製部材」は、「剥離するための切断線が設けられている」のに対し、引用発明は、そのような特定がなされていない点

第5 判断
そこで、上記相違点について、以下に検討する。
1 相違点1について
延伸ブロー成形によりプリフォームから成形される樹脂製容器において、口部にねじ部を有するとともにフランジ部を備えたものは、周知技術であって(要すれば、引用文献2の【図2】VI.や、引用文献3の【図3】等を参照。以下、「周知技術1」という。)、かかる周知技術1を引用発明に適用して、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が適宜採用し得た設計的事項にすぎない。

2 相違点2について
ブロー成形で製造される樹脂製容器の材料として、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂は、当業者にとって周知のものであって、引用発明における容器本体の材料であるポリオレフィンとして、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂を採用して、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、容器の内容物の影響やリサイクル性等に応じて当業者が適宜なし得た事項である。

3 相違点3について
ブロー成形で製造される樹脂製ボトルのラベルは、自明な課題である識別性の観点から、印刷によるものも含め、着色を施すことはごく当たり前のことであり、このことは、例えば引用文献2の段落【0020】や【0037】に記載される周知技術である(以下、「周知技術2」という。)。
そこで、引用発明におけるラベルスリーブとして、着色されたものを採用して、相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、上記周知技術2から当業者が適宜なし得た事項である。

4 相違点4について
ポリエチレンテレフタレートボトルなどのプラスチック製容器の分別回収は、本願の出願時において普通に行われていることであり、そのためにラベルに切断線を設けることも周知技術である(例えば、以下に摘記した特開2010-173694号公報の【請求項1】や、特開2004-352325号公報の段落【0020】の記載を参照。以下、「周知技術3」という。)。
一方、引用文献2の段落【0036】には、「ポリプロピレンラベルはPETボトルには貼り付こうとしなかった。密着が必要か否かは通常、リサイクルのための剥離が課題であるか否かによって決まる。」と記載されている。そうすると、ポリオレフィンから形成された容器本体と、ポリエステルから作られたラベルスリーブを配置する引用発明において、ラベルスリーブの剥離は、意図されていることは明らかであるから、ラベルスリーブに剥離除去のための切断線を設けて、相違点4に係る本願発明の発明特定事項とすることは、周知技術3から当業者が適宜なし得た事項である。

(1)特開2010-173694号公報の記載
本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2010-173694号公報には、「シュリンクラベル、シュリンクラベル用原反、シュリンクラベル付き容器、及びシュリンクラベル用原反の製造方法」に関して、次の記載がある。

「【請求項1】
容器等に巻装されるシュリンクラベルであって、
少なくとも2本のラベル剥離用の切り取り線を有し、
前記切り取り線の線上であって、かつラベルの上下端部の位置に、
幅1mm以上の縁を有して、
直径2?10mmの半円状、または円弧の部分が直径2?10mmの略U字状の切り込みが形成されていることを特徴とする、シュリンクラベル。」

(2)特開2004-352325号公報の記載
本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2004-352325号公報には、「遮光容器、及び遮光容器の製造方法」に関して、次の記載がある。

「【0020】 容器2に装着する前(熱収縮前)の筒状ラベル3は、図3及び図4に示すように、容器2の胴部21に挿入脱可能な内径で、且つ熱収縮後に少なくとも容器2の胴部21及び底面22を被覆可能な長さのラベル基材5の両端部5a,5aを、センターシールし、且つこのセンターシール部4の近傍に易開裂手段としてミシン目6が形成された筒状体からなる。」

5 効果について
引用発明に相違点1ないし4に係る構成を適用した際に奏せられる効果は、周知技術1ないし3それぞれにおける自明な効果の寄せ集めに過ぎず、格別顕著なものとはいえない。

6 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和2年7月29日に意見書を提出し、引用文献2には、「ラベルスリーブ」に、「ラベルスリーブ」を剥離するための切断線が設けられている旨の記載や示唆は存在せず、この点で本願発明と構成が相違し、これにより、プラスチック製部材を容器本体から分離除去し、容器本体をリサイクルすることが可能となる効果を奏する旨を主張している。
しかしながら、ラベルスリーブに切断線を設けることについては、上記4で相違点4として述べたとおり、引用文献2に記載される「リサイクルのための剥離」の課題に照らし、当業者が適宜付加できる周知技術であるし、係る特定事項によって奏せられる効果は格別顕著なものではない。
よって、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

7 むすび
したがって、本願発明は、引用発明、すなわち引用文献2に記載された発明及び周知技術1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 結語
上記第5のとおり、本願発明、すなわち請求項3に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-09-28 
結審通知日 2020-09-29 
審決日 2020-10-12 
出願番号 特願2014-228256(P2014-228256)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 雄一  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 大島 祥吾
大畑 通隆
発明の名称 複合容器の製造方法、複合プリフォーム、および複合容器  
代理人 村田 卓久  
代理人 永井 浩之  
代理人 朝倉 悟  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 中村 行孝  

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