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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1368657 |
審判番号 | 不服2019-16606 |
総通号数 | 253 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-12-09 |
確定日 | 2020-11-26 |
事件の表示 | 特願2015-155202「ゲームシステム,制御方法,及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 9日出願公開,特開2017- 29577〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成27年8月5日に出願され,平成31年2月27日(発送日:同年3月1日)付けで拒絶の理由が通知され,同年4月8日に意見書及び手続補正書が提出されたが,令和1年9月17日付けで,平成31年2月27日付けの拒絶理由通知により通知された理由(以下,「原査定の理由」という。)による拒絶査定がなされ,その謄本は令和1年9月19日に請求人に送達された。 これに対し,同年12月9日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,それと同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 令和1年12月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和1年12月9日にされた手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。 [補正の却下の決定の結論] 1 本件補正の内容について (1)本件補正は,特許請求の範囲を補正するものであり,その補正の一部には,本件補正前の請求項1の記載を本件補正後の請求項1のとおりに補正する補正事項(以下,「本件補正事項」という。)を含むものである。 ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載 「【請求項1】 プレイヤの操作に基づいてゲーム空間内にあるオブジェクトを移動させるゲームシステムであって, プレイヤの指により行われるスライド操作によるタッチ位置を所定時間ごとに取得し,タッチ位置とタッチ時刻の組合せをタッチ情報として記憶するタッチ情報取得手段と, 前記タッチ情報取得手段から最新のタッチ位置を取得し,該最新のタッチ位置を示すタッチ指標の情報を取得するタッチ指標情報取得手段と, タッチ位置の到達目標位置を示す目標指標の情報を取得する目標指標取得手段と, 前記タッチ指標及び前記目標指標を表示する手段と, を備え,タッチ開始位置から到達目標位置までのスライド操作が行われているいずれのタイミングにおいても,前記タッチ指標の少なくとも一部及び目標指標の少なくとも一部はプレイヤの指により隠蔽されずにプレイヤから視認可能であることを特徴とするゲームシステム。」 イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載(下線は,当審で付した。他の箇所における下線も同じである。) 「【請求項1】 プレイヤの操作に基づいてゲーム空間内にあるオブジェクトを移動させるゲームシステムであって, プレイヤの指により行われるスライド操作によるタッチ位置を所定時間ごとに取得し,タッチ位置とタッチ時刻の組合せをタッチ情報として記憶するタッチ情報取得手段と, 前記タッチ情報取得手段から最新のタッチ位置を取得し,該最新のタッチ位置を示すタッチ指標の情報を取得するタッチ指標情報取得手段と, タッチ位置の到達目標位置を示す目標指標の情報を取得する目標指標取得手段と, 前記タッチ指標及び前記目標指標を表示する手段と, を備え,タッチ開始位置から到達目標位置までのスライド操作が行われているいずれのタイミングにおいても,前記タッチ指標の少なくとも一部及び目標指標の少なくとも一部はプレイヤの指により隠蔽されずに前記最新のタッチ位置を示すタッチ指標が表示され,プレイヤから視認可能であることを特徴とするゲームシステム。」 2 補正の適否 本件補正事項は,本件補正前の請求項1における発明特定事項において,「前記最新のタッチ位置を示すタッチ指標が表示され」を追加するものであるところ,当該発明特定事項により規定される「(前記)最新のタッチ位置を示すタッチ指標」が「表示され」ることについては,本件補正前において特定されていないことから,本件補正前の請求項1において記載されているいずれかの発明特定事項を限定するものに該当しないから,本件補正事項の目的は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものとはいえない。 また,当該補正事項が誤記の訂正や明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当しないことは明らかである。 してみると,本件補正事項による補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反してされたものというほかないから,同法第159条第1項において読み替えて適用される同法第53条の規定により却下すべきものである。 3 独立特許要件についての検討 上記のとおり,本件補正事項により追加された点は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当するものではないものの,念のため,本件補正事項の目的が同号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものと仮定して,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記1(1)イにおいて摘示したとおりの発明特定事項により特定されるものである。 (2)引用例 ア 引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由の引用文献1として引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である,特開2012-70960号公報(以下「引用文献1」という。)には,以下の事項が記載されている。 (ア)「【0047】 ゲーム装置10は,図1に示されるように,互いに回動可能に連結された上側ハウジング10Aおよび下側ハウジング10Bを備え,上側ハウジング10Aの正面には,裸眼3D表示に対応した立体LCD12,内側カメラ18a,3D調整スイッチ20,3Dランプ20A,ならびに左右のスピーカ22aおよび22bなどが設けられる。下側ハウジング10Bの正面には,タッチパネル16付きの下LCD14,A,B,X,Yボタン24a-24d,十字キー(ボタン)24g,ホーム,セレクト,スタートボタン24h-24j,電源ボタン24k,アナログパッド26,およびマイク30が設けられる。」 (イ)「【0058】 図4には,ゲーム装置10の電気的構成が示される。ゲーム装置10は,CPU,GPU,VRAMおよびDSPなどで構成されたSoC(System-on-a-Chip)44を含む。SoC44には,上述した立体LCD12,下LCD14,内側カメラ(Inカメラ)18a,左右の外側カメラ(OCAM-LおよびOCAM-R)18bおよび18c,A,B,X,Y,L,Rボタン24a-24f,十字ボタン24g,SDカードスロット34,ゲームカードスロット38,および赤外線受発光部(IR)40が接続される。SoC44にはまた,マイコン56を介して,上述した3D調整スイッチ(3DVol)20,3Dランプ20A,ホーム,セレクト,スタートボタン24h-24j,電源ボタン(Power)24k,無線スイッチ(WiFi)28,音量調整スイッチ(音量Vol)32,および電源,無線ランプ42a,42bが接続される。SoC44にはさらに,IF回路58を介して,上述したタッチパネル16,左右のスピーカ22aおよび22b,アナログパッド26,マイク(Mic)30およびヘッドホン端子36が接続される。 【0059】 また,SoC44には,上述した以外の要素として,無線モジュール46,NAND型フラッシュメモリ48およびメインメモリ50が接続される。無線モジュール46は,無線LANに接続する機能を有する。NAND型フラッシュメモリ48は,カメラ画像,マイク音声など保存用のデータを記憶する。メインメモリ50は,SoC44に作業領域を提供する。すなわち,メインメモリ50には,ゲームなどのアプリケーションで用いられる各種のデータやプログラムが記憶され,SoC44はメインメモリ50に記憶されたデータやプログラムを利用して作業を行う。」 (ウ)「【0070】 たとえば,電源ボタン24kがオンされ,ゲーム装置10の主電源がオンされると,ゲーム装置10が起動され,図示しないメインメニュー画面が下LCD14に表示される。メインメニュー画面では,ゲーム装置10で実行可能な仮想ゲームなどのアプリケーションの実行を指示することができる。この実施例の仮想ゲーム(ゴルフゲーム)の実行が指示されると,ゴルフゲームが開始され,図示しない初期画面において,プレイヤによって,プレイヤキャラクタが選択されたり,プレイするコースが選択されたりする。 【0071】 打撃操作を行う場合には,図11(A)に示すようなゲーム画面100が立体LCD12に表示されるとともに,図11(B)に示すような操作画面200が下LCD14に表示される。図11(A)に示すゲーム画面100には,プレイヤキャラクタ102が表示される。図11(A)から分かるように,プレイヤキャラクタ104はゴルフクラブ(以下,単に「クラブ」という)104を持っており,ゴルフボール(以下,単に「ボール」という)106を打撃する体勢に入った状態(アドレスの状態)で示される。また,ゲーム画面100には,予想されるボール106の軌道(移動軌跡)および着弾点を示す予想軌道110が表示される。この予想軌道110は,ボール106の飛び出し方向(ショット方向),クラブ104の種類(クラブ飛距離Lmax)およびショットの種類(ストレート,フェード,スライス,フック,ドロー)に応じて変化される。」 (エ)「【0076】 図11(B)に示す操作画面200には,プレイヤキャラクタ202が表示される。また,プレイヤキャラクタ202は,クラブ204を持っており,打撃操作が実行されるまでは,ゲーム画面100と同様に,プレイヤキャラクタ202はボール206(図12等を参照)を打撃するためのアドレスの状態で示される。詳細な説明は省略するが,ゲーム画面100に表示されるプレイヤキャラクタ102,クラブ104,ボール106と,操作画面200に表示されるプレイヤキャラクタ202,クラブ204,ボール206とは同一であり,それぞれ異なる画面に表示されているだけである。図33(B)に示すように,操作画面200にも背景が表示されるようにしてもよい。 【0077】 また,操作画面200には,プレイヤに打撃操作(スライド操作)を実行させるための軌跡(ガイド軌跡)210が表示される。ガイド軌跡210は,円の一部を消去した形状で示される。したがって,ガイド軌跡210は,2つの端点210a,210bを有している。また,ガイド軌跡210の最下端部に,スイングの開始判定およびインパクトの判定を行うための判定画像212が表示される。たとえば,判定画像212は,縦長の長方形で示される。 【0078】 この実施例では,判定画像212をタッチオンすることにより,スイング動作の指示を開始し,ガイド軌跡210をトレースするように,時計回りの方向にスライド操作を実行すると,プレイヤキャラクタ202にバックスイングさせることができる。そして,端点210aを超えない範囲で,スライド操作の方向を反転し,反時計回りの方向にスライド操作を実行すると,プレイヤキャラクタ202にダウンスイングさせることができる。さらに,インパクト位置すなわち判定画像212を超えて,反時計回りの方向にスライド操作を実行すると,プレイヤキャラクタ202にフォロースルーさせることができる。ただし,タッチオフした位置でスイング動作は終了されるが,タッチオフしなくても,端点210bまでスライド操作を実行すると,プレイヤキャラクタのスイング動作は終了される。」 (オ)「【0083】 この実施例では,プレイヤキャラクタ202のスイング動作と,プレイヤのスライド操作とは連動する。簡単に説明すると,操作画面200において,タッチペンや指などによって,ガイド軌跡210をトレースするようにスライド操作を実行すると,これに伴って,プレイヤキャラクタ202は,バックスイング,ダウンスイング,フォロースルーの動作をするように,そのアニメーションが表示される。」 (カ)「【0092】 また,分かり易く示すために,図12(A)に示す操作画面200(図12(B)-図15(A)も同様)では,タッチ位置を矢印の指示画像240で示してあるが,これは表示されなくてもよい。ただし,タッチパネル16以外のポインティングデバイスを使用する場合には,このような指示画像240が表示される必要がある。」 (キ)「【0148】 図24は図4に示したメインメモリ50のメモリマップ500の一例を示す図解図である。図24に示すように,メインメモリ50は,プログラム記憶領域502およびデータ記憶領域504を含む。プログラム記憶領域502には,この実施例のゴルフゲームのゲームプログラムが記憶される。このゲームプログラムは,SDカードスロット34やゲームカードスロット38に装着されたSDカードやゲームカードから読み込まれたり,NANDフラッシュメモリ48から読み込まれたりして,メインメモリ502に展開(ロード)される。後述する各種データやフラグについても同じである。 【0149】 ゲームプログラムは,メイン処理プログラム502a,画像生成プログラム502b,画像表示プログラム502c,ガイド軌跡太さ決定プログラム502d,ガイド軌跡変形プログラム502e,描画軌跡生成プログラム502f,パラメータ設定プログラム502g,インパクト判定プログラム502h,差分検出プログラム502iおよびオブジェクト移動プログラム502jなどによって構成される。」 (ク)「【0155】 オブジェクト移動プログラム502jは,インパクト判定プログラム502hの判定結果およびパラメータ設定プログラム502gによって設定された各パラメータに従って,仮想空間内において,ボール106(ボールオブジェクト)を移動させるためのプログラムである。」 (ケ)「【0164】 重みテーブル504gは,図22(A)に示した通常のショットの場合の重みテーブルおよび図22(B)に示したインテンショナルショットの場合の重みテーブルのデータである。現座標データ504hは,現在のゲームフレームのタッチ位置の座標についての座標データである。前座標データ504iは,現在のゲームフレームの1つ手前のタッチ位置の座標についての座標データである。」 (コ)「【0184】 ステップS23では,タッチオンかどうかを判断する。つまり,CPU44aは,タッチパネル16からの座標データが操作データバッファ504aに記憶されているかどうかを判断する。ステップS23で”NO”であれば,つまりタッチオフであれば,図31に示すステップS81に進む。ステップS23で”YES”であれば,つまりタッチオンであれば,ステップS25で,スイングの開始であるかどうかを判断する。つまり,CPU44aは,タッチオフの状態からタッチオンの状態に変化し,そのタッチ位置が判定画像212上であるかどうかを判断する。 【0185】 ステップS25で”NO”であれば,つまりスイングの開始でなければ,ステップS27で,スイング中フラグ504uがオンであるかどうかを判断する。つまり,スイングの動作を指示するためのスライド操作を開始しているかどうかを判断する。ステップS27で”NO”であれば,つまりスイング中フラグ504uがオフであれば,スイング動作を指示するためのスライド操作が開始されていないと判断して,図26に示したステップS1に戻る。一方,ステップS27で”YES”であれば,つまりスイング中フラグ504uがオンであれば,スイング動作を指示するためのスライド操作は開始されていると判断して,図28に示すステップS35に進む。 【0186】 一方,ステップS25で”YES”であれば,つまりスイングの開始であれば,ステップS29で,インパクトの状態のフレーム(第60フレーム)からアニメーションフレームを逆再生する。したがって,バックスイングの動作が開始される。続いて,ステップS31で,スイング中フラグ504uをオンし,ステップS33で,バックスイングフラグ504vをオンして,ステップS35に進む。 【0187】 図28に示すように,ステップS35では,現フレームのタッチ位置を記憶する。ここでは,CPU44aは,現座標データ504hのコピーを前座標データ504iとして記憶し,現フレームのタッチ位置についての座標データを操作データバッファ504aから読み出して,現座標データ504hとして記憶する。次のステップS37では,現フレームのタッチ位置がガイド軌跡上であるかどうかを判断する。つまり,CPU44aは,現座標データ504hと同じ座標データがガイド軌跡データ504eに含まれているかどうかを判断する。 【0188】 ステップS37で”YES”であれば,つまり現フレームのタッチ位置がガイド軌跡210上であれば,スライド操作が正確であると判断して,ステップS39で,コントロール成分を増加して,ステップS41に進む。つまり,ステップS39では,CPU44aは,インテンショナルショットフラグ504t,バックスイングフラグ504v,ダウンスイングフラグ504wおよびフォロースルーフラグ504xを参照し,ショットの種類およびスイング動作に応じて,重みテーブルが示す割合のポイントを加算する。つまり,正確さデータ504jが更新され,したがって,教示画像220の正確さの成分(C)の表示が更新される。後述するステップS49およびS53で,パラメータを更新(ポイントを加算)する場合について同様である。一方,ステップS37で”NO”であれば,つまり現フレームのタッチ位置がガイド軌跡210上でなければ,スライド操作が正確でないと判断して,そのままステップS41に進む。 【0189】 ステップS41では,前フレームのタッチ位置と現フレームのタッチ位置とを線で結ぶ。つまり,前座標データ504iが示す位置と現座標データ504hが示す位置とを線で結ぶことにより,プレイヤのスライド操作についての軌跡が描画される。つまり,描画軌跡230が表示(更新)される。次のステップS43では,現フレームの速度を算出する。具体的には,前座標データ504iが示す位置と現座標データ504hが示す位置との間の距離を算出し,算出した距離を1ゲームフレーム(1/60秒)で割ることにより,現フレームの速度が算出される。つまり,スライド操作の速さが算出される。現フレームの速度を算出すると,ステップS45で,その速度を時系列に従って,データ記憶領域504のバッファ領域(図示は省略)に記憶する。」 イ 引用発明1 引用文献1の記載事項(ア)?(コ)及び図面の図示内容を総合すると,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「上側ハウジング10Aおよび下側ハウジング10Bを備えるゲーム装置10であって,上側ハウジング10Aの正面には立体LCD12が,下側ハウジング10Bの正面には,タッチパネル16付きの下LCD14,A,B,X,Yボタン24a-24d,十字キー(ボタン)24g,ホーム,セレクト,スタートボタン24h-24j,電源ボタン24k,アナログパッド26,およびマイク30が設けられ, ゲーム装置10は,CPU,GPU,VRAMおよびDSPなどで構成されたSoC(System-on-a-Chip)44を含み,当該SoC44には,無線モジュール46,NAND型フラッシュメモリ48およびメインメモリ50が接続されているゲーム装置10であって, 仮想ゲーム(ゴルフゲーム)の実行が指示されると,ゴルフゲームが開始され,打撃操作を行う場合には,ゲーム画面100が立体LCD12に表示されるとともに,操作画面200が下LCD14に表示され, 該操作画面200には,クラブ204を持ったプレイヤキャラクタ202,ボール206,プレイヤに打撃操作(スライド操作)を実行させるための軌跡(ガイド軌跡)210,及びタッチ位置を示す矢印の指示画像240が表示され, 該ガイド軌跡210は,円の一部を消去した形状で示されており,2つの端点210a,210bを有するとともに,ガイド軌跡210の最下端部には,スイングの開始判定およびインパクトの判定を行うための判定画像212が表示され, 該判定画像212を指によってタッチオンすることにより,スイング動作の指示を開始し,ガイド軌跡210をトレースするように,時計回りの方向にスライド操作を実行すると,プレイヤキャラクタ202にバックスイングさせることができ,端点210aを超えない範囲で,スライド操作の方向を反転し,反時計回りの方向にスライド操作を実行すると,プレイヤキャラクタ202にダウンスイングさせることができるものであって, メインメモリ50は,プログラム記憶領域502およびデータ記憶領域504を含み,ゴルフゲームのゲームプログラムが記憶されるプログラム記憶領域502は,オブジェクト移動プログラム502jなどによって構成されており, 該オブジェクト移動プログラム502jは仮想空間内において,ボール106(ボールオブジェクト)を移動させるためのプログラムであり, CPU44aは,現フレームのタッチ位置を記憶し,現座標データ504hのコピーを前座標データ504iとして記憶し,現フレームのタッチ位置についての座標データを操作データバッファ504aから読み出して,現座標データ504hとして記憶して,現在のゲームフレームの1つ手前のタッチ位置の座標についての座標データである前座標データ504iが示す位置と現在のゲームフレームのタッチ位置の座標についての座標データである現座標データ504hが示す位置とを線で結ぶことにより,プレイヤのスライド操作についての軌跡が描画され,1ゲームフレームは1/60秒であるゲーム装置。」 ウ 引用文献2の記載 同じく原査定に引用された周知技術を示す文献であって,本願の出願日前に頒布された特開2011-67677号公報(以下「引用文献2」という。)には,以下の事項が記載されている。 (ア)「【0126】 <第1実施例> 図1を参照して,この発明の一実施例であるゲーム装置10は,第1の液晶表示器(LCD)12および第2のLCD14を含む。このLCD12およびLCD14は,所定の配置位置となるようにハウジング16に収納される。この実施例では,ハウジング16は,上側ハウジング16aと下側ハウジング16bとによって構成され,LCD12は上側ハウジング16aに収納され,LCD14は下側ハウジング16bに収納される。したがって,LCD12とLCD14とは縦(上下)に並ぶように近接して配置される。」 (イ)「【0134】 また,LCD14の上面には,タッチパネル22が装着される。タッチパネル22としては,たとえば,抵抗膜方式,光学式(赤外線方式)および静電容量結合式のいずれかの種類のものを用いることができる。また,タッチパネル22は,その上面(検出面)をスティック24ないしはペン(スタイラスペン)或いは指(以下,これらを「スティック24等」という場合がある。)で,押圧したり,撫でたり,触れたりすることにより操作すると,スティック24等の操作位置の座標を検出して,検出した座標(検出座標)に対応する座標データを出力する。」 (ウ)「【0152】 図3は,この第1実施例のゲーム装置10のLCD12およびLCD14に表示されるゲーム画面100およびゲーム画面120の例を示す図解図である。図3を参照して,LCD12に表示されるゲーム画面100には,その略中央にプレイヤキャラクタ102が表示され,ゴルフコースの一部が背景として表示される。つまり,プレイヤキャラクタ102の後方に仮想カメラ(図示せず)が設定され,プレイヤキャラクタおよび3次元ゲーム空間であるゴルフコースの一部が撮影され,撮影画像がゲーム画面100として表示される。また,ゲーム画面100では,プレイヤキャラクタ102はゴルフボール(以下,単に「ボール」という。)106を打つ体勢(アドレス)に入った状態を示してある。ゲーム画面100は,後述するゲーム画面120を用いたプレイヤの操作に応じて変化され,主として,プレイヤキャラクタ102がゴルフクラブ(以下,単に「クラブ」という。)104をスイングし,ボール106を打撃し,当該ボール106が移動(飛ぶ,転がる,カップに入る等)するアニメーションを表示したり,ボール106が移動するときに,ボール106に追随して仮想カメラを移動し,当該仮想カメラによってボール106およびゴルフコースを撮影した画像を表示したりする。」 (エ)「【0154】 ゲーム画面120は,プレイヤがプレイヤキャラクタ102にボール106を打撃(ショット)させるための操作をするための画面である。このゲーム画面120には,ボール106とは異なるボール(以下,説明の都合上,「ターゲットボール」と呼ぶことにする。)122が画面上部に表示される。具体的には,ターゲットボール122は,インパクトライン124上であり,図3に示す例では,当該インパクトライン124の中心に表示される。具体的には,ターゲットボール122は,インパクトライン124上であり,図3に示す例では,当該インパクトライン124の中心に表示される。このターゲットボール122は,スライド操作によって通過または打撃するための目標(所定領域)である。また,ゲーム画面120には,プレイヤキャラクタ102がボール106を打撃する時の力(打撃力)の最大値(100%)を示すフルショットライン126が表示される。また,ゲーム画面120には,スティック24でタッチオンした位置に,クラブヘッドの画像128が表示される。さらにまた,ターゲットボール122の上方には,ゲーム画面100におけるボール106の飛び方すなわち球筋(ストレート,フェードまたはドロー)を示す指示画像130が表示される。この第1実施例では,上述したように,プレイヤがゲーム画面120(タッチパネル22)上で,タッチ入力をすることにより,ゲーム画面100に表示されたプレイヤキャラクタ102にボール106を打撃させる。」 (オ)「【0164】 この第1実施例では,ショットパワー値を視認可能にしてある。ただし,簡単のため,ショットパワー値は一の位を切り捨てる(または,四捨五入する)ことにより,0?100%の間で,10%毎に表示するようにしてある。具体的には,図5(A)に示すように,フルショットライン126上をスティック24でタッチした場合には,ショットパワー値が100%に決定され,そのショットパワー値「100%」が表示されるとともに,ショットパワーライン127が表示される。なお,図5(A)に示す例では,フルショットライン126上にショットパワーライン127が表示される。また,図5(A)(図5(B)も同じ。)では,ショットパワーライン127を分かり易く示すために,斜線を設けてある。しかし,実際には,線の色彩や模様を変えることにより,ショットパワーライン127は,インパクトライン124やフルショットライン126と区別される。また,インパクトライン124とフルショットライン126との間をスティック24でタッチした場合には,上述した算出方法でショットパワー値が算出される。たとえば,図5(B)には,ショットパワー値が30%に決定された場合に,そのショットパワー値「30%」とショットパワーライン127とが表示される様子が示される。」 (カ)「【0291】 なお,横方向にスライド操作する場合に,図26?図28に示したゲーム画面120の向き等が変更できる点は,図24や図25に示したゴルフゲームの場合と同様である。 <第2実施例> 第2実施例のゲーム装置10は,ゴルフゲームにおける打撃処理をより詳しくしく説明するとともに,移動体としてのボール106の移動に関するパラメータの設定をより詳しく説明した以外は上述の第1実施例と同じであるため,重複した説明は省略する。ただし,この第2実施例では,ボール106の移動に関するパラメータの設定方法(設定の条件)が第1実施例とは異なる点があるが,スライド操作に応じて当該パラメータが設定される点は同じである。」 (キ)「【0308】 タッチ初期位置データ742は,プレイヤがタッチオンした位置(タッチ座標)の座標データである。このタッチ初期位置データ742が示すタッチ座標のY座標にショットパワーライン127が表示される。タッチ現在位置データ744は,現在(現フレーム)のタッチ座標の座標データである。このタッチ現在位置データ744は,スライド操作が開始されてから終了するまでの間,1フレーム毎に更新される。クラブヘッドの画像128は,このタッチ現在位置データ744が示す座標に,その中心が来るように表示される。ただし,このとき,クラブヘッドの画像128は,そのフェイスがターゲットボール122を向くように,その中心を回転させて表示される。したがって,タッチ現在位置座標データ744が更新されると,クラブヘッドの画像128の表示も更新される。タッチ直前位置データ746は,現在のタッチ座標の直前(1フレーム前)に検出されたタッチ座標の座標データである。したがって,タッチ現在位置データ744が更新されるときに,タッチ直前位置データ746も更新される。具体的には,現在位置データ744がタッチ直前位置データ746としてコピーされた後,現在位置データ744が更新される。タッチ現在位置データ744とタッチ直前位置データ746とを結ぶ直線が軌跡142の一部としてLCD14のゲーム画面120に表示される。つまり,ショットエリア(1)に軌跡142が描画される。 【0309】 ショットパワー値データ748は,ショットパワー値Pについての数値データであり,0?100%の間で設定される。ショットパワー値Pの決定方法は,第1実施例で説明したとおりである。このショットパワー値データ748は,飛距離Fの算出に用いられるのみならず,ショットパワー値Pをゲーム画面120に表示する際に参照される。ただし,第1実施例で説明したように,ショットパワー値は,一の位を切り捨てて,10%単位でショットパワーライン127の近傍に表示される。 【0310】 スタンス値データ750は,タッチ初期位置データ742が示すタッチ座標(タッチオン座標)とスタンス基準線140との水平距離についての数値データである。具体的には,タッチオン座標がスタンス基準線140の右側である場合には,水平距離の符号はプラスで示され,逆に,タッチオン座標がスタンス基準線140の左側である場合には,水平距離の符号はマイナスで示される。ただし,タッチ座標がスタンス基準線140上であれば,水平距離は±0である。このスタンス値データ748は,スタンスを設定したり,ボール106の球筋(打ち出し方向の補正,サイドスピンによるボール106の軌道の補正)を決定したりする場合のみならず,指示画像130の表示にも利用される。つまり,第1実施例で示したように,スタンス(スタンス値データ748)に応じて,指示画像130の表示が変化される(図7?図9参照)。」 (ク)上記(カ)及び(キ)で摘記した記載内容,【図7】ないし【図9】から以下の事項が看て取れる。 【図7】ないし【図9】には,スティック24を用いた場合の例ではあるが,クラブヘッドの画像128をターゲットボール122までスライド操作によって移動させるときに,クラブヘッドの画像128やターゲットボール122がスティック24によって隠蔽されず,少なくとも一部が視認可能なものが表示されていることが看て取れる。 ここで,ターゲットボール122はスライド動作の際の目標位置を表すものであり,クラブヘッドの画像128は現在のタッチ位置を表すものであることに照らせば,スライド操作の開始から終了までの間,これらの画像をスティック24によって隠蔽されず,少なくとも一部が視認可能となっていることは明らかである。 したがって,スティック24に代えて指でクラブヘッドの画像128操作したときであっても,クラブヘッドの画像128及びターゲットボール122は,スライド操作の開始から終了までの間,指に隠蔽されず,少なくとも一部が視認可能であると認められる。 エ 引用文献2の記載事項(ア)?(オ)及び図面の図示内容を総合すると,引用文献2には,次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「第1の液晶表示器(LCD)12および第2のLCD14を含むゲーム装置10であって,LCD14の上面には,タッチパネル22が装着され, タッチパネル22は,その上面(検出面)を指で,押圧したり,撫でたり,触れたりすることにより操作すると,スティック24等の操作位置の座標を検出して,検出した座標(検出座標)に対応する座標データを出力するものであって, LCD14に表示されるゲーム画面120は,プレイヤがプレイヤキャラクタ102に移動体としてのボール106を打撃(ショット)させるための操作をするための画面であり,該ゲーム画面120には,ボール106とは異なるボールであるターゲットボール122が画面上部のインパクトライン124上に表示され,該ターゲットボール122は,スライド操作によって通過または打撃するための目標(所定領域)となっており, フルショットライン126上を指でタッチした場合には,ショットパワーライン127が表示されるものであって, プレイヤがタッチオンした位置(タッチ座標)の座標データであるタッチ初期位置データ742が示すタッチ座標のY座標にショットパワーライン127が表示され, 現在(現フレーム)のタッチ座標の座標データであるタッチ現在位置データ744はスライド操作が開始されてから終了するまでの間,1フレーム毎に更新され,クラブヘッドの画像128は,このタッチ現在位置データ744が示す座標に,その中心が来るように表示され,タッチ現在位置座標データ744が更新されると,クラブヘッドの画像128の表示も更新され, 現在位置データ744がタッチ直前位置データ746としてコピーされた後,現在位置データ744が更新され,タッチ現在位置データ744とタッチ直前位置データ746とを結ぶ直線が軌跡142の一部としてLCD14のゲーム画面120に表示されることで軌跡142が描画され, 指でクラブヘッドの画像128操作したときに,クラブヘッドの画像128及びターゲットボール122は,スライド操作の開始から終了までの間,指に隠蔽されず,少なくとも一部が視認可能であるゲーム装置10。」 オ 引用文献3の記載 引用文献2と同じく周知技術を示す文献であって,本願の出願日前に頒布された特開2002-939号公報(以下「引用文献3」という。)には,以下の事項が記載されている。 (ア)「【0031】図1の電子ゲーム装置1は,WINDOWS(登録商標)等のパーソナルコンピュータをベースに構成したものであり,パソコン本体5と,CRT等のデイスプレイモニタ2とを有する。モニタ2の画面には,タッチパネル3が設けられている。モニタ2の上には,TVカメラ4が設けられている。タッチパネル3は,人の指のタッチした位置(座標)を検出する周知のタッチパネルで構成され,例えば,感圧式タッチパネル(ぺんてる社,商品名「PTM-1181-J10」)等で構成される。パソコン本体5には,利用者8のマイク付きヘッドフォン7が接続される。 【0032】図2に示すように,パソコン本体5は,CPU(プロセッサ)10と,ROM11と,RAM12と,ハードデイスク14と,画像処理ボード13と,LAN等のインタフェイス回路16と,タッチパネル3のシリアルポート15と,これらを接続するバス17とを有する。」 (イ)「【0054】1.ゴルフゲーム 図7は,ゴルフゲームの処理フロー図,図8乃至図12は,図7のゴルフゲームの画面の説明図であり,図7を基に,図8乃至図12を参照して,説明する。 【0055】(S10)図8は,ゴルフのスイング開始の画面を示す。ゴルファーのクラブの位置に”push”ボタンが表示されている。操作者は,指9を”push”ボタンに触れ,”push”ボタンを左にドラッグする。即ち,タッチパネル3のタッチデータから,”push”ボタンに触れ,”push”ボタンを左にドラッグしたことを検出する。図9に示すように,ドラッグに従い,ゴルファーのクラブのバックスイングが行われる。 【0056】(S11)タッチパネル3から手を離していないかを判定し,手を離していると,ミスショットとして,終了する。手を離していないと,タッチパネル3のタッチデータからドラッグの停止かを判定する。 【0057】(S12)図9のように,ドラッグを停止すると,バックスイング量から基本飛距離Aを以下の式(1)により計算する。 A=[クラブの飛距離]*[ドラッグ距離]/[最大ドラッグ距離] (1) 尚,ドラッグ距離は,ドラッグ開始位置とドラッグ停止位置との差により,計算する。 【0058】(S13)次に,図10に示すように,指9でpushボタンを右にドラッグすると,スイングが開始する。タッチパネル3のタッチデータの変化から右にドラッグしたことを検出する。 【0059】(S14)タッチパネル3から手を離していないかを判定し,手を離していると,ミスショットとして,終了する。手を離していないと,右にドラッグを開始してから4フレーム経過したかを判定する。 【0060】(S15)4フレーム経過後,スイング速度Bを以下の(2)式により,計算する。 B=[4フレーム後までのドラッグ距離]/[調整数値] (2) 4フレーム後までのドラッグ距離は,右にドラッグを開始した時のタッチデータのX座標と,4フレーム後のタッチデータのX座標との差から得る。即ち,タッチパネル3の指9の移動速度をタッチデータから計算して,スイング速度を得る。更に,飛距離Cを下記(3)により計算する。 C=基本飛距離A*スイング速度B (3) 更に,前述のドラッグ距離に応じて,チョロ(0?30),スライス(31?124),ナイスショット(125?187),フック(188?)の球筋を決定する。この飛距離と,球筋から,図11,図12のような,ショット画面,弾道表示画面を表示する。 【0061】このように,タッチパネル3を利用して,画面のクラブのポインタであるpushボタンを指でなぞることにより,ゴルフスイングのシュミレーションができる。又,画面を速くなぞると,クラブを強く振ることができ,画面を遅くなぞると,クラブを弱くふることができ,自分の感覚でクラブを振ることができる。」 (ウ)上記(イ)で摘記した記載内容,【図8】ないし【図10】から以下の事項が看て取れる。 【 図8】ないし【図10】には,操作者が”push”ボタンに指を置いて,画面下に表示される二つの三角形の印と,その二つの三角形の印の間にある複数の円形の印からなる列上を左右にドラッグするときに,”push”ボタン及び該列が指先によって隠蔽されず,少なくとも一部が視認可能なものが表示されていることが看て取れる ここで,”push”ボタンはドラッグの際の現在のタッチ位置を表すものであり,列はドラッグ動作の際の目標位置を表すものであることに照らせば,ドラッグ操作の開始から終了までの間,これらの画像を指によって隠蔽されず,少なくとも一部が視認可能となっていることは明らかである。 カ 引用文献3の記載事項(ア)?(ウ)及び図面の図示内容を総合すると,引用文献3には,次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。 「パソコン本体5と,CRT等のデイスプレイモニタ2とを有し,モニタ2の画面には,タッチパネル3が設けられている電子ゲーム装置1であって, パソコン本体5は,CPU(プロセッサ)10と,ROM11と,RAM12と,ハードデイスク14と,画像処理ボード13と,LAN等のインタフェイス回路16と,タッチパネル3のシリアルポート15と,これらを接続するバス17を有し, ゴルフゲームにおいて, 操作者は,指9を”push”ボタンに触れ,”push”ボタンを左にドラッグするとゴルファーのクラブのバックスイングが行われ, 操作者が,手を離していないと,タッチパネル3のタッチデータからドラッグの停止かを判定し,ドラッグを停止すると,バックスイング量から基本飛距離Aを計算し, 指9で”push”ボタンを右にドラッグすると,スイングが開始され,タッチパネル3を利用して,画面のクラブのポインタである”push”ボタンを指でなぞることにより,ゴルフスイングのシュミレーションができ, ”push”ボタンは,画面下に表示される二つの三角形の印と,その二つの三角形の印の間にある複数の円形の印からなる列上を左右にドラッグされるものであって, push”ボタン,及び列は,ドラッグ操作の開始から終了までの間,これらの画像を指によって隠蔽されず,少なくとも一部が視認可能となっている電子ゲーム装置1。」 (3)対比 ア 本件補正発明と引用発明1を対比する。 引用発明1の「プレイヤ」は,本件補正発明の「プレイヤ」に相当する。 引用発明1の「仮想空間」は,仮想ゲーム(ゴルフゲーム)が実行される空間であるから,本件補正発明の「ゲーム空間」に相当する。 引用発明1の「ボール106」は,ボールオブジェクトのことであり,本件補正発明の「オブジェクト」に相当する。 引用発明1の「タッチ位置」は,本件補正発明の「タッチ位置」に相当する。 引用発明1の「(ガイド軌跡210の)端点210a」は,時計回りの方向のスライド操作によってプレイヤキャラクタ202にバックスイングさせ,その後,スライド操作の方向を反転し,反時計回りの方向にスライド操作によって,プレイヤキャラクタ202にダウンスイングさせる際の時計回りの方向のスライド操作における「超えない範囲」を示すものであるから,本件補正発明の「タッチ位置の到達目標位置を示す目標指標」に相当する。 引用発明1の「指示画像240」は,タッチ位置を示すものであるから,本件補正発明の「タッチ指標」に相当する。 引用発明1の「CPU44a」は,「ゲームフレームの1つ手前のタッチ位置の座標についての座標データである前座標データ504iが示す位置と現在のゲームフレームのタッチ位置の座標についての座標データである現座標データ504hが示す位置とを線で結ぶことにより,プレイヤのスライド操作についての軌跡が描画し,1ゲームフレームは1/60秒」であるから,引用発明1の「CPU44a」と本件補正発明の「タッチ情報取得手段」は,「プレイヤの指により行われるスライド操作によるタッチ位置を所定時間ごとに取得し,タッチ位置とタッチ時刻の組合せをタッチ情報として記憶する」点で共通し,さらに,引用発明1の「現在のゲームフレームのタッチ位置の座標についての座標データである現座標データ504h」は,最新のタッチ位置であるといえるから,引用発明1と本件補正発明は「タッチ情報取得手段から最新のタッチ位置を取得し,該最新のタッチ位置を示すタッチ指標の情報を取得するタッチ指標情報取得手段」を有する点でも共通するといえる。 また,引用発明1は,本件補正発明の「タッチ指標」に相当する「指示画像240」を表示し,本件補正発明の「タッチ位置の到達目標位置を示す目標指標」に相当する「(ガイド軌跡210の)端点210a」を表示するものであるから,「指示画像240」及び「(ガイド軌跡210の)端点210a」の情報を取得する手段,表示する手段を有していることは自明である。 したがって,引用発明1と本件補正発明とは,「プレイヤの指により行われるスライド操作によるタッチ位置を所定時間ごとに取得し,タッチ位置とタッチ時刻の組合せをタッチ情報として記憶するタッチ情報取得手段と, 前記タッチ情報取得手段から最新のタッチ位置を取得し,該最新のタッチ位置を示すタッチ指標の情報を取得するタッチ指標情報取得手段と, タッチ位置の到達目標位置を示す目標指標の情報を取得する目標指標取得手段と, 前記タッチ指標及び前記目標指標を表示する手段と,を備える点で共通する。 本件補正発明において「ゲームシステム」は,「プレイヤの操作に基づいてゲーム空間内にあるオブジェクトを移動させる」ものであり,本願の段落【0018】を参酌するに,「システム1」は,「タッチ情報取得手段」,「タッチ指標情報取得手段」,「目標指標情報取得手段」,「指標表示手段」を具備するものである。 ここで,引用発明1に係るゲーム装置は,「仮想空間内において,ボール106(ボールオブジェクト)を移動させる」プログラムを有するものであり,上述のとおり「タッチ情報取得手段」,「タッチ指標情報取得手段」,「目標指標情報取得手段」,「指標表示手段」を具備する点で,本件補正発明と共通するものであるから,引用発明1も「ゲームシステム」であるといえる。 イ 一致点及び相違点 上記アの対比を踏まえると,本件補正発明と引用発明1とは,つぎの一致点において一致し,つぎの各相違点で相違する。 <一致点> 「プレイヤの操作に基づいてゲーム空間内にあるオブジェクトを移動させるゲームシステムであって, プレイヤの指により行われるスライド操作によるタッチ位置を所定時間ごとに取得し,タッチ位置とタッチ時刻の組合せをタッチ情報として記憶するタッチ情報取得手段と, 前記タッチ情報取得手段から最新のタッチ位置を取得し,該最新のタッチ位置を示すタッチ指標の情報を取得するタッチ指標情報取得手段と, タッチ位置の到達目標位置を示す目標指標の情報を取得する目標指標取得手段と, 前記タッチ指標及び前記目標指標を表示する手段と, を備えることを特徴とするゲームシステム。」 <相違点1> 本件補正発明は,「タッチ開始位置から到達目標位置までのスライド操作が行われているいずれのタイミングにおいても,前記タッチ指標の少なくとも一部及び目標指標の少なくとも一部はプレイヤの指により隠蔽されずに前記最新のタッチ位置を示すタッチ指標が表示され,プレイヤから視認可能である」のに対して,引用発明1は,指示画像240,端点210aが,タッチ開始位置から端点210aまでのスライド操作が行われているいずれのタイミングにおいても,少なくとも一部が視認可能であるか明確ではない点。 (4)判断 ア 相違点について 指でタッチパネルをタッチ操作するゲームにおいて,本願補正発明のタッチ指標及び目標指標に相当するオブジェクト(指標)を表示すること,ならびに,該オブジェクト(指標)を,タッチ操作中視認できるようにすることは,引用発明2及び3に示されるように周知技術(以下,「周知技術1」という。)である。 なお,引用発明2においては,「(プレイヤがタッチオンした位置(タッチ座標)に表示される)クラブヘッドの画像128」及び「ターゲットボール122」が,引用発明3においては,「”push”ボタン」及び「(三角形の印と円形の印からなる)列」が,本願補正発明の「タッチ指標」及び「目標指標」に相当する。 そして,引用発明1の指示画像240は,引用文献1の段落【0092】に「分かり易く示すために,…タッチ位置を矢印の指示画像240で示してある…タッチパネル16以外のポインティングデバイスを使用する場合には,このような指示画像240が表示される必要がある」と記載されているように,現在画面上でプレイヤが指定している位置をプレイヤに示すためのものであり,プレイヤから視認されないと指示画像240は意味をなさないことや,視認性を高めることは,タッチ操作によるゴルフゲームにおける操作感をよりよくすることであり,操作感をよくすることは,ゲームにおいては常に求められていることであることからすれば,引用発明1に上記周知技術を適用し,プレイヤの指によってスライド操作されているいずれのタイミングにおいても,指示画像240の少なくとも一部及び端点210aがプレイヤの指で隠蔽されず視認可能であるようにして相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易になし得たことである。 イ 効果について 本願発明の作用効果については,引用発明1及び周知技術1から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって,本願補正発明は,引用発明1及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 請求人の審判請求書における主張について (ア) 請求人は,審判請求書において「即ち,指示画像240はタッチパネル以外のポインティングデバイスを使用する場合に必要なものであり,タッチパネルを用いる場合には特に必要なものではない。以上のとおりであるから,引用文献1に記載された発明は,指をも用いたスライド操作の場合には,タッチ位置をプレイヤの指自体の位置で確認することを前提とするものであって,引用文献1には,タッチ位置をタッチ指標により表示するという技術思想の開示すらなく,況や,タッチ位置がプレイヤの指により隠蔽されることなど一切開示も示唆もされていない。」と主張する。 しかしながら,引用文献1の段落【0092】の「分かり易く示すために,…タッチ位置を矢印の指示画像240で示してある…タッチパネル16以外のポインティングデバイスを使用する場合には,このような指示画像240が表示される必要がある」という記載からすると,指示画像240は,現在プレイヤが指定している位置をプレイヤに視認させるために表示されるものであるといえる。そして,指示画像240が指でのタッチ位置を示す場合においてもこれは同様であると考えられ,そうであれば,指でタッチ操作する場合においても,引用発明2に示されるような周知技術を用い,指示画像240の少なくとも一部がプレイヤの指で隠蔽されず視認可能であるようにすることは,当業者が容易になしえたことであるというべきである。 (イ) 請求人は,審判請求書において「以上のとおり,図3,8,9等の記載内容を勘案すれば,ゲーム画面120におけるスティック24のタッチオン位置に拘わらず,符号128が付された「クラブヘッドの画像」は,スティック24がゲーム画面120にタッチオンされたときに表示されるものであり,タッチオンの操作に続くスティック24のスライド操作に伴って移動するものではないことは明らかである。そして,上述のように,「最新タッチ位置」は,タッチオン操作に続くスライド操作が行われる際のスライド操作の先端位置に相当するものと理解されるから,クラブヘッドの画像128は「最新タッチ位置」を示すものではない。したがって,引用文献2に「最新タッチ位置と目標指標とが指で隠蔽されないような表示態様」が開示されているとの審査官殿のご見解は妥当なものではない。」と主張している。 しかしながら,引用文献2の段落【0308】には「タッチ現在位置データ744は,現在(現フレーム)のタッチ座標の座標データである。このタッチ現在位置データ744は,スライド操作が開始されてから終了するまでの間,1フレーム毎に更新される。クラブヘッドの画像128は,このタッチ現在位置データ744が示す座標に,その中心が来るように表示される。ただし,このとき,クラブヘッドの画像128は,そのフェイスがターゲットボール122を向くように,その中心を回転させて表示される。したがって,タッチ現在位置座標データ744が更新されると,クラブヘッドの画像128の表示も更新される」と記載されており,スライド操作が開始されてから終了するまでの間,1フレームごとに更新される「タッチ現在位置データ744」が示す座標に「クラブヘッドの画像128」は表示されるのだから,「クラブヘッドの画像128」は,最新タッチ位置を示すものであると認められる。そして,4 オ で記載したとおり,クラブヘッドの画像128とターゲットボール122は,スライド操作中は隠蔽されずに表示されていると認められるから,「最新タッチ位置と目標指標とが指で隠蔽されないような表示態様」が引用文献2に開示されているという見解は妥当である。 したがって,請求人の上記主張は採用できない。 (5)独立特許要件の検討に関する小括 以上検討したように,本件補正発明は,引用発明1及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって,本件補正発明は,特許出願の際,独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。 4 補正の却下の決定のむすび 以上のとおり,本件補正は,上記1(2)において検討したように,本件補正事項の目的が特許法第17条の2第5項各号に規定するいずれにも該当しないことから,同項の規定に違反してされたものであり,また,仮に本件補正事項の目的が同項第2号に該当するとしても,本件補正発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから,本件補正は,同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和元年12月9日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成31年4月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される「第2 1 (1) ア」に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1-11に係る発明は,本願の出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない, というものである。 引用文献1.特開2012-70960号公報 引用文献2.特開2011-67677号公報(周知技術を示す文献) 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は「第2 3 (2)引用例」に記載したとおりである。 4 本願発明と引用発明との対比・判断 上記第2の2で検討した本件補正発明は,本願発明に「最新のタッチ位置を示すタッチ指標が表示され」るものであることを追加して特定するものである。 そして,本願発明において,タッチ指標が最新のタッチ位置を示すものであることが特定されていることに照らせば,本願発明の「タッチ開始位置から到達目標位置までのスライド操作が行われているいずれのタイミングにおいても,前記タッチ指標の少なくとも一部及び目標指標の少なくとも一部はプレイヤの指により隠蔽されずにプレイヤから視認可能である」という発明特定事項における「タッチ指標」は「最新のタッチ位置を示すタッチ指標」であることは文理上明らかであるから,当該箇所を「タッチ開始位置から到達目標位置までのスライド操作が行われているいずれのタイミングにおいても,前記タッチ指標の少なくとも一部及び目標指標の少なくとも一部はプレイヤの指により隠蔽されずに前記最新のタッチ位置を示すタッチ指標が表示され,プレイヤから視認可能である」とした本件補正発明と,本願発明との間に実質的な相違はなく,本願発明と引用発明1とは,「第2 2 (3) イ」において認定した相違点1において相違し,その余の点において一致するといえる。 そして,上記相違点1については,「第2 2 (4)」で検討したとおり,相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項は周知技術にすぎないものであるから,同様に,相違点1に係る本願発明の発明特定事項は周知技術にすぎないものである。 周知技術として,必要であれば,上記引用文献2のほかに,特開2002-939号公報(上記引用文献3)を参照されたい。 以上のことからすれば,本願発明は,引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。。 4 むすび 上記で検討したとおり,本願発明は,本件出願の出願日前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明(引用発明1)及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,他の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-09-28 |
結審通知日 | 2020-09-29 |
審決日 | 2020-10-12 |
出願番号 | 特願2015-155202(P2015-155202) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) P 1 8・ 57- Z (A63F) P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 比嘉 翔一 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
吉村 尚 藤田 年彦 |
発明の名称 | ゲームシステム、制御方法、及びプログラム |
代理人 | 宮前 徹 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 中西 基晴 |
代理人 | 上田 忠 |
代理人 | 山本 修 |