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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29B |
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管理番号 | 1368683 |
審判番号 | 不服2019-3713 |
総通号数 | 253 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-03-19 |
確定日 | 2020-12-02 |
事件の表示 | 特願2017-144570「超臨界流体と高分子原料融液の混合機構」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月27日出願公開,特開2018-202847〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2017(平成29)年 7月26日(パリ条約の例による優先権主張2017年 6月5日(TW)台湾)の出願であって,その出願後の手続経緯は以下のとおりである。 平成30年 7月 3日付:拒絶理由通知書 平成30年10月10日 :手続補正書及び意見書の提出 平成30年11月15日付:拒絶査定 平成31年 3月19日 :審判請求書及び手続補正書(以下,当該手続補正書でなされた補正を「本件補正」という。)の提出 令和 1年 9月24日 :上申書の提出 第2 平成31年 3月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成31年 3月19日にされた手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は,特許請求の範囲の請求項1について下記(2)から(1)へ補正する補正を含むものである(下線部は,補正箇所である。)。 (1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「超臨界流体と高分子原料融液の混合機構であって,溶融手段と,混合手段と,超臨界流体供給手段とを備え, 前記溶融手段は,中空の押出筒を有し,前記押出筒の中空の内部と前記押出筒の外部空間を連通させる第1の供給路と第1の排出路が,それぞれ,前記押出筒の両端に設けられ,押し部が前記押出筒中に設けられ,前記第1の供給路と前記第1の排出路との間に介在させるとともに,前記第1の供給路から前記押出筒の中空の内部に進入した高分子原料を前記第1の排出路へプッシュさせ, 前記混合手段は,中空の混合筒を有し,第2の供給路と第2の排出路が,それぞれ,前記混合筒の両端に設けられ,前記第2の供給路と前記第1の排出路が連通され,前記第1の排出路から排出された高分子原料を,前記第2の供給路を介して前記混合筒の中空の内部に進入させ,混合回転部が前記第2の供給路と前記第2の排出路の間に介在し前記混合筒中に設けられ前記混合筒中に回転できることによって,前記混合筒中に収容された高分子原料を混合させ, 前記超臨界流体供給手段は,前記溶融手段と離間して前記混合手段の上に設けられ,外部の超臨界流体を前記混合筒の中空の内部に導入させ,前記混合筒中の高分子原料とともに前記混合回転部で均一の単相溶液に混合させ, 前記混合回転部は,回転可能に前記混合筒中に設けられる柱本体を備え,前記柱本体には,第1の溝部と第2の溝部とが設けられ,前記第1の溝部と前記第2の溝部は互いに弧度が異なる弧形である,超臨界流体と高分子原料融液の混合機構。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「中空の押出筒を有し,前記押出筒の中空の内部と前記押出筒の外部空間を連通させる第1の供給路と第1の排出路がそれぞれ前記押出筒の両端に設けられ,押し部が前記押出筒中に設けられるとともに,前記第1の供給路と前記第1の排出路との間に介在させるとともに,前記第1の供給路から前記押出筒の中空の内部に進入した高分子原料を,前記第1の排出路へプッシュさせる溶融手段と, 中空の混合筒を有し,第2の供給路と第2の排出路がそれぞれ前記混合筒の両端に設けられ,前記第2の供給路と前記第1の排出路が連通され,前記第1の排出路から排出された高分子原料を,前記第2の供給路を介して前記混合筒の中空の内部に進入させ,混合回転部が前記第2の供給路と前記第2の排出路の間に介在し前記混合筒中に設けられ前記混合筒中に回転できることによって,前記混合筒中に収容された高分子原料を混合させる混合手段と, 前記溶融手段と離間して前記混合手段の上に設けられ,外部の超臨界流体を前記混合筒の中空の内部に導入させ,前記混合筒中の高分子原料とともに前記混合回転部で均一の単相溶液に混合させる超臨界流体供給手段と,を備える超臨界流体と高分子原料融液の混合機構。」 2 補正の適否 本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「混合回転部」について,「前記混合回転部は,回転可能に前記混合筒中に設けられる柱本体を備え,前記柱本体には,第1の溝部と第2の溝部とが設けられ,前記第1の溝部と前記第2の溝部は互いに弧度が異なる弧形である」とする限定を付加する補正を含んでおり,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。 (1)本件補正発明について 本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に日本国内において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2(特開2007-276321号公報)には,次のことが記載されている(下線については当審において付与したものである。)。 ア「【請求項1】 ポリマーアロイ,ポリマーブレンド,ポリマーとフィラーとの混合物のうちのいずれかである複合成形材料からなる発泡体を超臨界流体の不活性ガスを発泡剤に用いて製造する方法において, 第1押出機に前記複合成形材料の主原料および副原料を供給して混練し,溶融後に添加剤を添加して溶融した前記複合成形材料を製造する複合成形材料製造工程と, 前記複合成形材料製造工程に続いて,溶融した前記複合成形材料をポリマー配管を介して第2押出機に導入して発泡に適した温度範囲まで冷却する途中で,前記超臨界流体の不活性ガスを注入して前記不活性ガスを含浸させたのち,ダイより押し出して急激な圧力開放を行う発泡成形工程と,を有することを特徴とするタンデム型押出発泡成形方法。」 イ「【0017】 先ず,一実施の形態によるタンデム型発泡押出成形方法の実施に用いる装置について説明する。 【0018】 タンデム型発泡押出成形装置は,図1に示すように,ポリマーアロイ,ポリマーブレンドまたはポリマーとフィラーとの混合物のうちのいずれか(以下,「複合成形材料」という。)を製造するための第1押出機E_(1)と,ギヤポンプ7を介在させたポリマー配管8により第1押出機E_(1)の下流側に接続された,超臨界流体の不活性ガスを発泡剤とする発泡体を製造するための第2押出機E_(2)を備えている。 【0019】 第1押出機E_(1)は,図示しない外部加熱手段によって加熱されるシリンダ1と,シリンダ1内に回転自在に配設された2本のスクリュ2と,2本のスクリュ2を同方向または逆方向に回転させる回転駆動機構(不図示)を備えている。 【0020】 2本のスクリュ2は,上流側のフルフライトスクリュ部2aと下流側のフルフライトスクリュ部2bと両者の間に介在されたニーディングディスク部3とを備えている。これに対し,シリンダ1は上流端側に配設されたホッパ5と,スクリュ2のニーディングディスク部3に対応する部位に配設された添加剤を供給するためのサイドフィーダ6と,下流端側に設けられた吐出口4とを有している。 【0021】 第2押出機E_(2)は,図示しない冷却ジャケット等の外部冷却手段を有するシリンダ11と,シリンダ11内に回転自在に配設されたスクリュ12と,スクリュ12を回転させる回転駆動機構16と,シリンダ11の下流端に配設されたダイ14とを有している。 【0022】 シリンダ11は,軸方向中央部に周方向へ互いに間隔をおいて設けられた複数の注入口15を備え,各注入口15内には多数のノズル孔15aを有するインジェクションキッド(図2に示す)が配設されている。 【0023】 図2は,インジェクションキッドの部分を拡大して示す模式部分断面図である。インジェクションキッドは,シリンダ11の内壁面に開口する多数のノズル孔15aを有し,多数のノズル孔15aを介してシリンダ11内に超臨界流体の不活性ガスを分散して注入できるように構成されている。 【0024】 スクリュ12は,多条フライト部13と,多条フライト部13の上流側に隣接して配設されたシールリング17と,シールリング17の上流側のフルフライト部12bとからなる。多条フライト部13は,インジェクションキッドが配設された注入口15に対応する部位の多条フルフライト部13aと,多条フルフライト部13aの下流側の多条切り欠きフライト部13bとからなる。多条フルフライト部13aは連続して形成され,シリンダ内壁とのクリアランスを小さくし,インジェクションキッドからの注入不活性ガスを細かく分断し,溶融樹脂中に良好に混合させている。 【0025】 インジェクションキッドが配設された各注入口15には,流量調整弁24,開閉弁23,流量計22等が介在された供給管路25を介して超臨界流体発生装置20が接続されている。 【0026】 そして,第1押出機E_(1)の吐出口4がポリマー配管8の上流端に接続されている。 【0027】 超臨界流体発生装置20は,ボンベ21に貯留された二酸化炭素や窒素等の不活性ガスを臨界圧力以上および臨界温度以上にして超臨界流体を生成することができるものであれば,その種類は問わない。因みに,二酸化酸素(CO_(2) )では,臨界温度31.1℃,臨界圧力7.38MPa以上で超臨界流体となる。窒素(N_(2) )では,臨界温度-147℃,臨界圧力3.4MPa以上で超臨界流体となる。 【0028】 フルフライト部12bのスクリュ径は,第1押出機E_(1)のフルフライト部のスクリュ径の1.3?3.5倍の範囲以内に設定する。また,第2押出機E_(2)のスクリュ回転数を,第1押出機E_(1) のスクリュ回転数の1/5?1/20の範囲以内に設定する。これにより,溶融複合成形材料が深溝のスクリュフライト間を低回転でゆっくり移送され,せん断発熱を極力押えた状態で滞留時間を長くして,外部冷却手段により発泡に適した温度範囲に冷却される。 【0029】 第1押出機E_(1)において,ホッパ5より投入されたポリマーアロイ,ポリマーブレンドまたはポリマーとフィラーの混合物用の主原料および副原料は,上流側のフルフライトスクリュ部2aにより下流側へ移送される間に,外部加熱手段による外部加熱とせん断発熱とによって混練・溶融され,サイドフィーダ6によって添加された核剤や増粘剤等の添加物とニーディングディスク部3によってさらに混練・混合されたのち,下流側のフルフライトスクリュ部2bによって吐出口4へ移送されてポリマー配管8へ吐出される。」 ウ「【図1】 」 エ「【図2】 」 (3)引用発明2について 上記(2)アないしエより,引用文献2には,次のとおりの発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「第1押出機と,第2押出機と,超臨界流体発生装置とを備え, 前記第1押出機は,シリンダを有し,ホッパが配設された箇所及び吐出口が設けられた箇所が,それぞれ,シリンダの上流側端及び下流側端に設けられ,スクリュが前記シリンダ内に回転自在に配設され,ホッパより投入されたポリマーアロイ,ポリマーブレンドまたはポリマーとフィラーとの混合物用の主原料および副原料は,スクリュにより下流側に移送される間に混練・溶融されて複合成形材料となり,吐出口へ移送されて前記第2押出機のポリマー配管へ吐出されるものであり, 前記第2押出機は,シリンダを有し,溶融した複合成形材料を導入する前記ポリマー配管と,下流側に配設されたダイと,が設けられ,前記ポリマー配管と前記吐出口が連通され,前記吐出口から吐出された溶融した複合成形材料を,前記ポリマー配管を介して導入し,スクリュがシリンダ内に回転自在に配設されることによって,前記シリンダ内に導入された複合成形材料を混合させ, 前記超臨界発生装置は,超臨界流体を生成して前記第2押出機のシリンダ内に注入し,前記シリンダ内の溶融樹脂と良好に混合させる, 装置。」 (4)対比・判断 本件補正発明と引用発明2とを対比する。 引用発明2の「ポリマーアロイ,ポリマーブレンドまたはポリマーとフィラーとの混合物用の主原料及び副原料」は,本件補正発明の「高分子原料」に相当する。 引用発明2の「第1押出機」は,本件補正発明の「溶融手段」に対応し, 引用発明2の「第1押出機」の「シリンダ」及び「スクリュ」は,本件補正発明の「溶融手段」の「中空の押出筒」及び「押し部」に相当する。 引用発明2の「ホッパが配設された箇所」は,本願明細書の【0020】の「上記押出筒(21)の一端に固設させ上記の第1の供給路(22)を介して上記押出筒内部空間(211)に連通する受入ホッパー」なる記載に照らして,本件補正発明の「第1の供給路」に相当する。 引用発明2の「吐出口が設けられた箇所」は,本願明細書の【0020】の「上記押出筒(21)の他端に設けられ上記の第1の排出路(23)を介して上記押出筒内部空間(211)に連通する排出末端部(26)」なる記載に照らして,本件補正発明の「第1の排出路」に相当する。 そして,引用発明2の「第1押出機」において複合成形材料が吐出されることは,本件補正発明の「溶融手段」において高分子原料が「プッシュ」されることに相当する。 引用発明2の「第2押出機」は,本件補正発明の「混合手段」に対応し,引用発明2の「第2押出機」の「シリンダ」及び「スクリュ」は,本件補正発明の「混合手段」の「中空の押出筒」及び「混合回転部」に相当する。 引用発明2の「ポリマー配管」,及びシリンダとダイとを連通する部分は,上記(2)ウより,第2押出機のシリンダの両端にそれぞれ設けられているものであるから,本件補正発明の「第2の供給路」及び「第2の排出路」にそれぞれ相当するものである。 引用発明2の「超臨界流体発生装置」は,超臨界流体を生成して第2押出機のシリンダ内に注入し,シリンダ内の溶融樹脂と良好に混合させるものであって,これによって均一の単相溶液となるものと認められるから,引用発明2の「超臨界発生装置」は,本件補正発明の「超臨界流体供給手段」に相当する。 引用発明2の「超臨界流体発生装置」は,「第1押出機」と別の装置であるから,「第1押出機」と離間して「第2押出機」に設けられるものといえる。 そして,引用発明2の「装置」は,上記のとおり,「溶融手段」と「混合手段」と「超臨界流体供給手段」に相当する事項を備え,「超臨界流体」と高分子原料が溶融されてなる溶融樹脂とを良好に混合するものであるから,本件補正発明の「超臨界流体と高分子原料融液の混合機構」に相当する。 そうすると,本件補正発明と引用発明2は,以下の点で一致する。 「超臨界流体と高分子原料融液の混合機構であって,溶融手段と,混合手段と,超臨界流体供給手段とを備え, 前記溶融手段は,中空の押出筒を有し,前記押出筒の中空の内部と前記押出筒の外部空間を連通させる第1の供給路と第1の排出路が,それぞれ,前記押出筒の両端に設けられ,押し部が前記押出筒中に設けられ,前記第1の供給路と前記第1の排出路との間に介在させるとともに,前記第1の供給路から前記押出筒の中空の内部に進入した高分子原料を前記第1の排出路へプッシュさせ, 前記混合手段は,中空の混合筒を有し,第2の供給路と第2の排出路が,それぞれ,前記混合筒の両端に設けられ,前記第2の供給路と前記第1の排出路が連通され,前記第1の排出路から排出された高分子原料を,前記第2の供給路を介して前記混合筒の中空の内部に進入させ,混合回転部が前記第2の供給路と前記第2の排出路の間に介在し前記混合筒中に設けられ前記混合筒中に回転できることによって,前記混合筒中に収容された高分子原料を混合させ, 前記超臨界流体供給手段は,前記溶融手段と離間して前記混合手段に設けられ,外部の超臨界流体を前記混合筒の中空の内部に導入させ,前記混合筒中の高分子原料とともに前記混合回転部で均一の単相溶液に混合させる, 超臨界流体と高分子原料融液の混合機構。」 そして,本件補正発明と引用発明2とでは以下の点で相違又は一応相違する。 <相違点1> 「超臨界流体供給手段」の設ける位置について,本件補正発明では「前記混合手段の上に設けられ」とされているのに対し,引用発明2においてはこのような特定がない点。 <相違点2> 「混合回転部」について,本件補正発明では「前記混合回転部は,回転可能に前記混合筒中に設けられる柱本体を備え,前記柱本体には,第1の溝部と第2の溝部とが設けられ,前記第1の溝部と前記第2の溝部は互いに弧度が異なる弧形である」とされているのに対し,引用発明2においてはこのような特定がない点。 上記相違点1及び2について検討する。 ・相違点1について 引用発明2における,第2押出機と超臨界流体発生装置は供給管路を介して接続されるものであって,第2押出機と超臨界流体発生装置との相互の位置関係は適宜設計するものであり,超臨界流体発生装置を第2押出機の上に設けることは取り付け性や作業性等を考慮して当業者が適宜なし得ることである。 したがって,引用発明2の超臨界流体発生装置を第2押出機の上に設け,本件補正発明の「前記混合手段の上に設けられ」の配置とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 ・相違点2について 引用文献2には,上記(2)のウ及びエのとおり,スクリュの溝部の角度(弧形の弧度)が異なる部位を有することが記載されている(図1の12b,13b及び13並びに図2のシールリング17の左側と右側)。 したがって,上記相違点2は実質的な相違点ではない。 また,上記相違点2が実質的な相違点であったとしても,スクリュを用いる混練装置において,混練される対象物の性状によってスクリュの溝部の角度(弧度)を異なるものとして良好に混合するように設計することは当業者が適宜になし得ることであるから,溶融樹脂を混合する部分,溶融樹脂と超臨界流体が合流する部分,溶融樹脂と超臨界流体とを混合する部分等の混練される対象物の性状が明らかに異なる部分を有する引用発明2のスクリュにおいて「互いに弧度が異なる弧形である」となる「第1の溝部」及び「第2の溝部」とを設けることは当業者が適宜設計してなし得ることである。 そして,引用発明2に相違点1及び2を適用したことによる「良い混合効果を得る」なる効果についても格別顕著なものでもない。 以上より,本件補正発明は,引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお,審判請求人は審判請求書の 「■(係る特定事項の開示,教示又は示唆がない)」 「■(適宜の設計変更とは言えない)」 の欄においてそれぞれ審判請求時に限定された,第1の溝部及び第2の溝部に関する主張を行っているが,引用発明2のスクリュにおいて「弧度が異なる弧形である」となる「第1の溝部」及び「第2の溝部」が記載されていること,又はこれらを設けることが当業者が適宜設計してなし得たものであることは,上記「相違点2について」で検討したとおりである。 3 まとめ よって,本件補正は,上記2のとおり特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するものであるので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 したがって,上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成31年 3月19日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし9に係る発明は,平成30年10月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2の1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1に係る発明は,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2に記載された発明に基いて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由を含むものである。 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2及びその記載事項は,前記第2の2(2)及び(3)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は,実質的には,本件補正発明から,「混合回転部」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の2に記載したとおり,引用発明2に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明2に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-07-06 |
結審通知日 | 2020-07-07 |
審決日 | 2020-07-20 |
出願番号 | 特願2017-144570(P2017-144570) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B29B)
P 1 8・ 575- Z (B29B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中山 基志 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
神田 和輝 大畑 通隆 |
発明の名称 | 超臨界流体と高分子原料融液の混合機構 |
代理人 | 奥野 彰彦 |
代理人 | SK特許業務法人 |
代理人 | 伊藤 寛之 |