• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1368707
審判番号 不服2020-2871  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-02 
確定日 2020-12-15 
事件の表示 特願2016-144238「光学的情報読取装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月16日出願公開,特開2017- 54492,請求項の数(8)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成28年7月22日(優先権主張:平成27年9月7日)の出願であって,令和1年6月28日付けで拒絶理由通知がされ,令和1年8月30日付けで手続補正がされ,令和1年11月25日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和2年3月2日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,令和2年5月25日付けで前置報告がされたものである。

第2 原査定の概要

原査定(令和1年11月25日付け拒絶査定)の概要は次の通りである。

1.本願請求項2-3に係る発明は,以下の引用文献1に基づいて,本願請求項4に係る発明は,以下の引用文献1-2に基づいて,本願請求項5-8に係る発明は,以下の引用文献3-4に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2001-67432号公報
2.特開2009-42820号公報
3.特開2006-330987号公報
4.特開2013-61587号公報

第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

審判請求時の補正によって請求項2に「前記マーカ光照射部は、」「前記マーカ光が前記反射ミラーの周囲から当該反射ミラーの外縁に向かって近づくように配置され」という事項を追加する補正は,補正前の発明特定事項である「マーカ光照射部」の配置を限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,段落【0031】,【0032】,【0035】,【0042】-【0045】,第2-3,5-6図等に記載されているから,新規事項を追加するものではないといえる。

審判請求時の補正によって請求項5に「撮像コードを二次元的に撮像可能なエリアセンサとして構成される受光センサ」という事項を追加する補正は補正前の発明特定事項である「受光センサ」を限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,段落【0022】等に記載されているから,新規事項を追加するものではないといえる。

そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1-8に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明

本願請求項1-8に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は,令和2年3月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
情報コードを撮像可能な受光センサと、
読取口を介した前記情報コードからの反射光を前記受光センサに向けて反射する反射ミラーと、
前記反射ミラーにより反射された光を集光して前記受光センサに結像させる結像レンズと、
前記受光センサによる撮像範囲の中心を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射部と、
を備え、
前記マーカ光照射部は、前記読取口に対して前記反射ミラーよりも離れた位置に設けられて、前記マーカ光の光軸が前記受光センサによる撮像範囲の中心となる光軸に対して平行であって、前記マーカ光が前記反射ミラーの外縁に近づくように配置され、
前記反射ミラーは、反射面の全面が前記受光センサによる撮像範囲に一致するように形成されることを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
情報コードを撮像可能な受光センサと、
読取口を介した前記情報コードからの反射光を前記受光センサに向けて反射する反射ミラーと、
前記反射ミラーにより反射された光を集光して前記受光センサに結像させる結像レンズと、
前記受光センサによる撮像範囲の中心を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射部と、
を備え、
前記マーカ光照射部は、前記読取口に対して前記反射ミラーよりも離れた位置に設けられて、前記マーカ光の光軸が前記受光センサによる撮像範囲の中心となる光軸に対して平行であって、前記マーカ光が前記反射ミラーの周囲から当該反射ミラーの外縁に向かって近づくように配置され、
前記反射ミラーは、前記受光センサの直上に配置されることを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記マーカ光照射部は、前記マーカ光が前記反射ミラーの外縁のうち前記結像レンズに近い縁部に対して近づくように配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記マーカ光照射部は、前記受光センサと同じ基板に実装され、
前記マーカ光照射部から照射された前記マーカ光を、当該マーカ光の光軸が前記受光センサによる撮像範囲の中心となる光軸に対して平行であって前記反射ミラーの外縁に近づくように反射するマーカ光用反射ミラーを備えることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
情報コードを二次元的に撮像可能なエリアセンサとして構成される受光センサと、
前記情報コードからの反射光を集光して前記受光センサに結像させる結像レンズと、
前記受光センサによる撮像範囲の中心を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射部と、
前記マーカ光照射部から照射された前記マーカ光を前記受光センサによる撮像範囲に向けて反射する反射素子と、
を備え、
前記反射素子は、反射した前記マーカ光の光軸と前記受光センサによる撮像範囲の中心となる光軸とが平行となって近づくように、前記受光センサの撮像範囲外であって前記結像レンズに近づけられ、かつ、前記結像レンズよりも前記情報コードに近くなる位置に配置されることを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項6】
前記反射素子は、入射面および出射面と、前記入射面から入射した前記マーカ光をその光軸が前記撮像範囲の中心となる光軸に対して平行となるように前記出射面に向けて内部反射する反射面とを有し、前記入射面および前記出射面の少なくとも一方に設けられる曲率に応じて前記マーカ光を集光してコリメートするコリメートレンズとして構成されることを特徴とする請求項5に記載の光学的情報読取装置。
【請求項7】
前記反射素子は、前記出射面の曲率が前記入射面の曲率よりも大きくなるように形成されることを特徴とする請求項6に記載の光学的情報読取装置。
【請求項8】
前記反射素子は、入射面および出射面と、前記入射面から入射した前記マーカ光をその光軸が前記撮像範囲の中心となる光軸に対して平行となるように前記出射面に向けて内部反射する反射面とを有するレンズとして構成され、
前記出射面には、前記反射面にて内部反射された前記マーカ光を所定のパターンとなるように回折する回折光学素子が設けられることを特徴とする請求項5に記載の光学的情報読取装置。」

第5 引用文献,引用発明等

1.引用文献1について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0024】図1は実施例としてのバーコード読取装置1のヘッド部分の内部構造を示す概略説明図であり、図1(a)は一部省略して上面から見た図であり、図1(b)は側面から見た図である。また、図2はその制御系統のブロック図である。バーコード読取装置1の備えるケース12内の前方部には読取のための各種構成(以下、適宜「読取ユニット」と称す。)が配置されており、また、ケース12の後方部は操作者が手で握るための把持部(図示せず)を形成している。ケース12の前方下部には、左右(図1(b)では紙面に垂直方向)に長い、すなわち幅方向に長い読取口22が設けられている。そして、その読取口22の奥には、図示しない防塵プレートが配置されており、読取口22を閉塞している。このことによって、塵が読取口22からケース12内部に侵入するのを防止している。また、防塵プレートは、少なくとも下に述べる読取光及びガイド光は通過可能である。」

「【0027】LED発光駆動回路28によりLED26が発光すると、反射ミラー32で反射されたその光は防塵プレートを通過して、ケース12外部のバーコード8を照射する。そして、バーコード8によって反射された光は、再度、防塵プレートからケース12内に入り、反射ミラー32で反射されて、図示しない絞りを前面に備えた結像レンズ34に入射し、結像レンズ34を介し、さらにセンサ用ミラー35で反射されて、光学的センサ36にて結像される。光学的センサ36は、受光素子がリニアに1列に配列されており、その受光素子にバーコード8の像が、その各バーの配列方向(バーコード8の長さ方向)と受光素子の配列方向とが同じ方向で結像される。光学的センサ36は、このバーコード8からの反射光を受け、光の強弱を表す電気信号としてデータ処理出力ユニット側に出力する。このデータ処理出力ユニットの構成は後述する。」

「【0029】次に、データ処理出力ユニットの構成を説明する。ケース12内部のメイン基板58(図1参照)上には、図2に示すように、波形整形部40、メモリ42、マイクロコンピュータ44、およびレジスタやホストコンピュータ等の本体装置への出力回路46が備えられている。データ処理出力ユニットは、読取ユニットからバーコード8の読み取りデータを波形整形部40を介して入力すると、マイクロコンピュータ44の処理により、そのデータをデコード(解読)し、バーコード8が表している情報を得て、その情報をメモリ42に一旦記憶する。次に、このメモリ42内に記憶された情報を出力回路46により、所定タイミングで、光や電波による無線通信あるいは有線で本体装置へ送信する。」

「【0031】次に、ガイド光照射用レンズ50について説明する。ガイド光照射用レンズ50は、レーザダイオード30から照射され、レーザダイオード用ミラー52にて反射されたレーザ光を扇状に拡げ、読取可能範囲を示すライン状のガイド光をバーコード8上に照射させるためのレンズである。このガイド光照射用レンズ50は、透明な樹脂で一体成形された樹脂レンズであり、図1,図3などに示すごとく、ケース12の左右方向に細長い形状をなしている。」

「【0039】そこで、本実施例では、上述したレーザダイオード用ミラー52を用いることで、両光軸のずれを極力小さくしている。つまり、図6(a)に示すように、バーコード8からの反射光が光学的センサ36の受光面に結像するまでの光路を遮らないようにレーザダイオード30を配置すると共に、センサ光軸とガイド光光軸とを極力近接するよう、レーザダイオード30からの照射光の光路をレーザダイオード用ミラー52にて反射させるようにしたのである。このレーザダイオード用ミラー52を使用しない場合には、図10(a)に示すようにセンサ光軸を遮らないようにレーザダイオード30bを配置しなくてはならず、レーザダイオード30bの物理的大きさによって、センサ光軸と(ミラーを用いない場合の)ガイド光光軸を十分に近接させることができなくなる。そこで、レーザダイオード用ミラー52を用いてレーザダイオード30の物理的大きさによる影響を排除することで、両光軸を極力近づけることができるようにした。」

「【0046】なお、本実施例の場合には、バーコード読取装置1の全体形状として、いわゆる首曲がり構造を採用したため、バーコード8からの反射光の光路を変更させて結像レンズ34に入射させる必要がある。また、それ以外にも、LED26から照射された読取光やレーザダイオード30から照射されたガイド光の光路も同様に変更させる必要がある。そこで、1枚の反射ミラー32でこれら3つの光の光路を変更させるようにした。このようにすれば、構成の簡素化に有効である。」



【図1(b)】」

(2)したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「バーコード読取装置1であって、
ケース12の前方下部には読取口22が設けられており、
その読取口22の奥には、防塵プレートが配置されて、読取口22を閉塞しており、バーコード8によって反射された光は、防塵プレートからケース12内に入り、反射ミラー32で反射されて、絞りを前面に備えた結像レンズ34に入射し、結像レンズ34を介し、さらにセンサ用ミラー35で反射されて、光学的センサ36にて結像され、
光学的センサ36は、バーコード8からの反射光を受け、光の強弱を表す電気信号としてデータ処理出力ユニット側に出力するものであり、
データ処理出力ユニットは、読取ユニットからバーコード8の読み取りデータを波形整形部40を介して入力し、
ガイド光照射用レンズ50は、レーザダイオード30から照射され、レーザダイオード用ミラー52にて反射されたレーザ光を扇状に拡げ、読取可能範囲を示すライン状のガイド光をバーコード8上に照射させるためのレンズであり、
バーコード8からの反射光が光学的センサ36の受光面に結像するまでの光路を遮らないようにレーザダイオード30を配置すると共に、
センサ光軸とガイド光光軸とを極力近接するよう、レーザダイオード30からの照射光の光路をレーザダイオード用ミラー52にて反射させるようにしており、
バーコード8からの反射光の光路やLED26から照射された読取光やレーザダイオード30から照射されたガイド光の光路を1枚の反射ミラー32で変更させるようにしたバーコード読取装置1。」

2.引用文献2について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0041】このため、オフセット量f(=d×n/m)だけマーカ光源28から離れる方向にシフトした位置に、受光面24aの受光中心またはその周囲が位置するように受光センサ24を配置することによって、図3(B) に示すように、マーカ光源28の発光軸JMと受光センサ24の受光軸JSとが平行になるような位置関係でマーカ光源28および受光センサ24が光学系ユニット基板16に実装されていても、物像距離(m+n)において、結像レンズ23の主点Pを通る読取光学系21の光軸JZをマーカ光源28の発光軸JMと二次元コードQとの交点に合わせることができる。」



【図5】」

(2)したがって,上記引用文献2には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「マーカ光源28の発光軸JMと受光センサ24の受光軸JSとが平行になるような位置関係でマーカ光源28および受光センサ24が実装される光学系ユニット基板16。」

3.引用文献3について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0022】以下、本発明を具体化したいくつかの実施例について、図1ないし図15を参照しながら説明する。尚、以下に述べる各実施例は、本発明を、一次元コードとしてのバーコードを読取るハンディタイプのバーコードリーダ(バーコードハンディターミナル)に適用したものである。」

「【0024】詳しくは後述するが、前記読取機構は、図1に示すように、読取対象Rに向けて照明光を照射する照明手段としての照明光学系13、読取対象Rからの反射光を受光(撮像)してバーコードBを読取る受光手段としての受光光学系14、更には、読取対象Rに対して読取位置を示すマーカ光M(図3参照)を照射するマーカ光照射手段としてのマーカ光学系15を備えて構成される。」

「【0026】ここで、前記各光学系13、14、15について述べる。まず、前記受光光学系14は、図1に示すように、本体ケース12内の中央部に横長に配設された例えばCCDエリアセンサからなる受光センサ19と、その受光センサ19の前方に配置された結像光学素子20とを備えて構成されている。詳しく図示はしないが、前記結像光学素子20は、例えば鏡筒内に複数枚の結像レンズを配設して構成される。この受光光学系14の読取光軸Oは、前記読取口12aの中心を該読取口12a面に直交する状態で延びている。また、受光光学系14は、横長な読取視野(読取範囲)Fを有している。」

「【0031】本実施例では、前記マーカ光源24は、左側(図1で手前側)に2個が並んだLED21,21のやや後方(図1で左側)にそれらの間に対応して設けられ、レーザ光Lを、それらLED21,21間の隙間S1を通して射出する位置に配設されている。前記マーカ用レンズ部25(光学部材23)は、2個が並んだLED21,21のやや前方に設けられている。これにて、マーカ光源24から発せられたレーザ光Lが、マーカ用レンズ部25にて横長な帯状のマーカ光Mとされて読取口12aから前方に出射され、図3に示すように、読取対象Rに対してマーカ光Mが照射されるようになっている。」

「【0037】そこで、ユーザは、そのマーカ光Mが例えばバーコードBの上下方向のほぼ中心部を横切るように本体ケース12の位置合せを行い、トリガキー18のオン操作を行う。すると、マーカ光Mが消灯された上で、今度は照明光学系13により読取口12aを通してバーコードBに横長な帯状の照明光が照射され、バーコードBからの反射光が読取口12aを通して入射されて結像光学素子20を介して受光センサ19上に結像され、以てバーコードBが読取られる。」

「【0047】(3)第3、第4の実施例図6は、本発明の第3の実施例(請求項3に対応)を示しており、図7は、本発明の第4の実施例(請求項3に対応)を示している。これら第3、第4の実施例では、マーカ光学系41、42の構成が上記第1の実施例と異なっており、これらマーカ光学系41、42は、レーザダイオードからなるマーカ光源43から発せられたレーザ光Lを折曲げた後、上記隙間S1を通して光学部材23のマーカ用レンズ部25に入射させる光路折曲部材を備えて構成されている。」

「【0048】即ち、図6に示す第3の実施例のマーカ光学系41においては、マーカ光源43が、結像光学素子20の左側(図で手前側)に2個が並んだLED21,21のやや後方下側に、上向きにレーザ光Lを射出するように設けられている。そして、マーカ光源43の上方で、それらLED21,21のやや後方に、光路折曲部材としてのプリズム44が設けられている。このプリズム44は、傾斜面の内面側の反射面によって、マーカ光源43から上方に発せられたレーザ光Lを、前方に向けて直角に折曲げ、LED21,21間の隙間S1を通して光学部材23(マーカ用レンズ部25)に入射させるように設けられている。尚、これも図示はしないが、このプリズム44は、前後方向(矢印b方向)の位置が微調整可能に設けられている。」

「【0067】図15は、本発明の第12の実施例を示しており、上記第1の実施例等と異なる点は、読取位置を示すためのマーカ光M´の照射形態にある。即ち、ここでは、マーカ光学系により、読取対象Rに対し読取幅方向(バーコードBの延びる方向)に並ぶ複数個、例えば中央部と左右両端部とを示す3個の点状(スポット光状)のマーカ光M´が照射されるようになっている。このような形態としても、ユーザは、マーカ光M´によって読取時の位置合せを容易かつ確実に行うことができる。」



【図6】」

(2)したがって,上記引用文献3には,第12の実施例として,次の発明(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「一次元コードとしてのバーコードを読取るハンディタイプのバーコードリーダであって、
読取対象Rからの反射光を受光(撮像)してバーコードBを読取る受光手段としての受光光学系14と、
読取対象Rに対して読取位置を示すマーカ光Mを照射するマーカ光照射手段としてのマーカ光学系15を備え、
受光光学系14は、受光センサ19と、その受光センサ19の前方に配置された結像光学素子20とを備えて構成されており、前記結像光学素子20は、例えば鏡筒内に複数枚の結像レンズを配設して構成され、
マーカ光源24から発せられたレーザ光Lが、マーカ用レンズ部25にて横長な帯状のマーカ光Mとされて読取口12aから前方に出射され、読取対象Rに対してマーカ光Mが照射されるようになっており、
バーコードBからの反射光が読取口12aを通して入射されて結像光学素子20を介して受光センサ19上に結像され、以てバーコードBが読取られ、
マーカ光学系41は、レーザダイオードからなるマーカ光源43から発せられたレーザ光Lを折曲げた後、隙間S1を通して光学部材23のマーカ用レンズ部25に入射させる光路折曲部材を備えて構成されており、
マーカ光学系41においては、マーカ光源43が、結像光学素子20の左側に2個が並んだLED21,21のやや後方下側に、上向きにレーザ光Lを射出するように設けられており、マーカ光源43の上方で、それらLED21,21のやや後方に、光路折曲部材としてのプリズム44が設けられており、このプリズム44は、傾斜面の内面側の反射面によって、マーカ光源43から上方に発せられたレーザ光Lを、前方に向けて直角に折曲げ、LED21,21間の隙間S1を通して光学部材23(マーカ用レンズ部25)に入射させるように設けられており、
マーカ光学系により、読取対象Rに対し読取幅方向(バーコードBの延びる方向)に並ぶ複数個、例えば中央部と左右両端部とを示す3個の点状(スポット光状)のマーカ光M´が照射されるようになっているバーコードリーダ。」

4.引用文献4について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0037】なお、入射面13及び出射面14についても、同様に反射防止膜20を形成することも可能である。こうすれば、入射光Aが入射面13で反射されて光源側へと戻る光を防止することができる。また、反射光Bが出射面14で反射されてプリズム10の内部に戻る光が抑制される。」

「【0040】図6に示すように、本実施形態においては、入射面13の一部に光学機能面22が形成されている。本実施形態において光学機能面22は、発散光を平行光へと変換するコリメートレンズである。図6に示すように、半導体レーザ31からの発散光が入射光Aとして入射されて光学機能面22を透過すると、ビームスプリッタ2の内部では平行光となって進行する。平行光は反射面11で反射されて反射光Bとして外部へ出射され、平行光の一部は透過面12を透過して透過光Cとして分岐される。半導体レーザ31からの発散光が平行光に変換されずにビームスプリッタ2に入射すると、ビームスプリッタ2の内部における不要な反射が増大して、光損失が大きくなってしまう。本実施形態のビームスプリッタ2によれば、光学機能面22により発散光が平行光へと変換されるため、内部反射を抑制して光の損失を抑えることができる。また、入射光Aが平行光へと変換されて反射面11及び透過面12に進行することにより、分岐比を適切に設定して反射光Bと透過光Cとに分岐させることが可能となる。」



【図6】」

(2)上記図6および段落【0040】の「平行光は反射面11で反射されて反射光Bとして外部へ出射され」という記載を参照すれば,“反射光Bは「14」から外部へ出射している”ことが読み取れ,段落【0037】の「出射面14」という記載を参照すれば,「14」は,“出射面である”ことが読み取れる。
よって,図6には,「反射光Bが出射面14から外部へ出射する」ことが記載されている。

(3)したがって,上記引用文献4には,次の発明(以下,「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。

「入射面13の一部に光学機能面22が形成されており、発散光を平行光へと変換するコリメートレンズであって、半導体レーザ31からの発散光が入射光Aとして入射されて光学機能面22を透過すると、ビームスプリッタ2の内部では平行光となって進行し、平行光は反射面11で反射されて反射光Bとして反射光Bが出射面14から外部へ出射するコリメートレンズ。」

第6 対比・判断

1.本願発明2について
(1)対比
ア 本願発明2と引用発明1とを対比すると,次のことがいえる。

(ア)引用発明1の「バーコード読取装置1」は,本願発明2の「光学的情報読取装置」に対応する。
引用発明1の「バーコード8」は,数字(「情報」に相当)などのコードを表示したものであるから,本願発明2の「情報コード」に相当する。
引用発明1の「光学的センサ36」は,バーコード8からの反射光を受け,光の強弱を表す電気信号として出力するものである。ここで,本願明細書の段落【0022】の「受光センサ23は、例えば、C-MOSやCCD等の固体撮像素子である受光素子を二次元に配列したエリアセンサとして情報コードCを撮像可能に構成されるものであり、受光した情報コードの各セル(パターン)ごとに反射光Lrの強度に応じた電気信号を出力するように構成されている。」という「撮像」に関連する記載を参照すれば,「撮像」とは,「受光した情報コードの各セル(パターン)ごとに反射光Lrの強度に応じた電気信号を出力する」ことである。そうすると,引用発明1の「受光センサ36」は「撮像」しているといえるから,引用発明1の「バーコード8からの反射光を受け、光の強弱を表す電気信号として出力する」「光学的センサ36」は,本願発明2の「情報コードを撮像可能な受光センサ」に相当する。

(イ)引用発明1の「読取口22」は,本願発明2の「読取口」に相当する。
すでに検討したように,引用発明1の「バーコード8」は本願発明2の「情報コード」に相当するので,引用発明1の「バーコード8によって反射された光」は,本願発明2の「情報コードからの反射光」に相当する。
引用発明1の「反射ミラー32」は,バーコード8によって反射された光を反射している。引用発明1において,バーコード8によって反射された光は,防塵プレートからケース12内に入り,反射ミラー32で反射されている。また,引用発明1において,防塵プレートは読取口22の奥に配置され,読取口22を閉塞している。よって,バーコード8によって反射された光は,読取口22の奥に配置されている防塵プレートからケース12内に入って,反射ミラー32で反射されているので,防塵プレートの先にある「読取口22を介し」て反射ミラー32で反射されているといえる。
また,引用発明1において,反射ミラー32で反射された光は,結像レンズ34に入射し,結像レンズ34を介し,さらにセンサ用ミラー35で反射されて,光学的センサ36にて結像される。よって,反射ミラー32で反射された光は,結像レンズ34を介して,センサ用ミラー35で反射されているが,「光学的センサ36に向け」られているといえる。
従って,引用発明1の「読取口22の奥」の「防塵プレートからケース12内に入」った「バーコード8によって反射された光」を「反射」する「反射ミラー32」は,下記の点で相違するものの,本願発明2の“読取口を介した情報コードからの反射光を受光センサに向けて反射する反射ミラー”と共通する。

(ウ)引用発明1の「反射ミラー32で反射され」た「光」は,本願発明2の「反射ミラーにより反射された光」に相当する。
また,引用発明1の「結像レンズ34」は,結像させるためのレンズであるので,「集光」しているのは明らかである。
従って,引用発明1の「反射ミラー32で反射され」た「光」を「光学的センサ36にて結像」させる「結像レンズ34」は,本願発明2の「反射ミラーにより反射された光を集光して受光センサに結像させる結像レンズ」に相当する。

(エ)引用発明1の「ガイド光」は,読取可能範囲を示しているから,本願発明2の「マーカ光」に相当する。すでに検討したように,引用発明1は,「光学的センサ36」によって「撮像」している。そして,引用発明1の光学的センサ36は,「撮像」したデータをデータ処理出力ユニット側に出力している。そして,引用発明1では,このデータを「読み取り」データと呼んでいるから,「撮像」は「読み取り(読取)」を意味しているといえる。よって、引用発明1の「読取可能範囲」は本願発明2の「撮像範囲」に相当する。
従って,引用発明1の「読取可能範囲を示すライン状のガイド光」を「照射」する「レーザダイオード30」,「レーザダイオードミラー52」および「ガイド光照射用レンズ50」は,下記の点で相違するものの,本願発明2の“受光センサによる撮像範囲を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射部”と共通する。

イ 上記(ア)-(エ)の検討内容を踏まえると,本願発明2と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「情報コードを撮像可能な受光センサと、
読取口を介した前記情報コードからの反射光を前記受光センサに向けて反射する反射ミラーと、
前記反射ミラーにより反射された光を集光して前記受光センサに結像させる結像レンズと、
前記受光センサによる撮像範囲を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射部と、
を備えることを特徴とする光学的情報読取装置。」

(相違点)
(相違点1)
本願発明2は,マーカ光が,「撮像範囲の中心」を示すのに対して,引用発明1は,ガイド光が,読取可能範囲の中心を示していない点。

(相違点2)
本願発明2は,マーカ光照射部が,「読取口に対して」「反射ミラーよりも離れた位置に設けられて、」「マーカ光の光軸が」「受光センサによる撮像範囲の中心となる光軸に対して平行であって、前記マーカ光が前記反射ミラーの周囲から当該反射ミラーの外縁に向かって近づくように配置される」のに対して,引用発明1は,レーザダイオード30の,読取口22,反射ミラー32およびセンサ光軸に対しての配置が明確に記載されていない点。

(相違点3)
本願発明2は,反射ミラーが,「受光センサの直上に配置される」のに対して,引用発明1は,反射ミラー32の,受光センサ36に対しての配置が明確に記載されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 事案に鑑みて,まず相違点2について先に検討する。
本願発明2は,マーカ光照射部が,「マーカ光が反射ミラーの周囲から当該反射ミラーの外縁に向かって近づくように配置され」ている。
一方,引用発明1は,ガイド光を反射ミラー32で反射させている。そのため,もし,レーザダイオード30,レーザダイオードミラー52およびガイド光照射用レンズ50を,ガイド光が反射ミラー32の周囲から当該反射ミラー32の外縁に向かって近づくように配置すると,ガイド光が反射ミラー32に当たらず,ガイド光をバーコードBに照射させることができなくなってしまう。よって,引用発明1において,レーザダイオード30,レーザダイオードミラー52およびガイド光照射用レンズ50を,ガイド光が反射ミラー32の周囲から反射ミラー32の外縁に向かって近づくように構成するには阻害要因がある。
また,上記の点は,引用発明1に引用発明2を適用したとしても,上記相違点2に係る構成を見いだすことはできない。

イ したがって,上記その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明2は,当業者であっても,引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明3-4について
本願発明3-4は,本願発明2を直接・間接に引用するものであり,上記相違点3に係る構成と同一の構成を備えるものであるから,本願発明2と同じ理由により,当業者であっても,引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明5について
(1)対比
ア 本願発明5と引用発明3とを対比すると,次のことがいえる。

(ア)引用発明3の「バーコードリーダ」は,本願発明5の「光学的情報読取装置」に対応する。
また,上記1.(1)(ア)で既に検討したように,「バーコード」は「情報コード」といえるから,引用発明3の「バーコードB」は,本願発明5の「情報コード」に相当する。
従って,引用発明3の「一次元コードとしてのバーコード」を「撮像」「してバーコードBを読取る」「受光光学系14」の「受光センサ19」は,下記の点で相違するものの,本願発明5の“情報コードを撮像可能なセンサとして構成される受光センサ”と共通する。

(イ)上記1.(1)(ウ)で既に検討したように,結像レンズが集光しているのは明らかであるので,引用発明3の「バーコードBからの反射光」を「受光センサ19上に結像さ」せる「結像光学素子20」の「結像レンズ」は,本願発明5の「情報コードからの反射光を集光して受光センサに結像させる結像レンズ」に相当する。

(ウ)上記1.(1)(エ)で既に検討したように,センサによるバーコードの「読取」は「撮像」を意味するといえるから,引用発明3の「受光センサ19」による「読取幅」の「中央部」「を示す」「マーカ光M’」「を照射する」「マーカ光学系41」の「マーカ光源43」は,本願発明5の「受光センサによる撮像範囲の中心を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射部」に相当する。

(エ)引用発明3の「プリズム44」は,マーカ光源43から発せられたレーザ光Lを反射面によって「前方」に向けて直角に折曲げている。また,引用発明3のマーカ光は「前方」の「読取対象」に照射されるものであるところ,「読取」は「撮像」を意味する。
従って,引用発明3の「マーカ光源43から発せられたレーザ光L」を「反射面によって」「前方に向けて直角に折曲げ」る「プリズム44」は,下記の点で相違するものの,本願発明5の“マーカ光照射部から照射されたマーカ光を受光センサによる撮像範囲に向けて反射する反射素子”と共通する。

イ 上記(ア)-(エ)の検討内容を踏まえると,本願発明5と引用発明3との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「情報コードを撮像可能なセンサとして構成される受光センサと、
前記情報コードからの反射光を集光して前記受光センサに結像させる結像レンズと、
前記受光センサによる撮像範囲の中心を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射部と、
前記マーカ光照射部から照射された前記マーカ光を前記受光センサによる撮像範囲に向けて反射する反射素子と、
を備える光学的情報読取装置」

(相違点)
(相違点4)
受光センサに関して,本願発明5は,「情報コードを二次元的に撮像可能なエリアセンサとして構成される受光センサ」であるのに対して,引用発明3は,「一次元コードとしてのバーコードB」を「撮像」「してバーコードBを読取る」「受光光学系14」の「受光センサ19」である点。

(相違点5)
本願発明5は,「反射素子は、反射した」「マーカ光の光軸と」「受光センサによる撮像範囲の中心となる光軸とが近づくように、前記受光センサの撮像範囲外であって」「結像レンズに近づけられ、かつ、前記結像レンズよりも」「情報コードに近くなる位置に配置される」ものであるのに対して,引用発明3は,プリズム44のマーカ光M’の光軸,受光センサ19による撮像範囲の中心,結像レンズおよびバーコードBに対しての配置が明確でない点。

(2)相違点についての判断
ア 事案に鑑みて,まず相違点5について先に検討する。
引用発明3は,帯状のマーカ光Mにおけるプリズム44の配置について記載されている。しかし,点状のマーカM’におけるプリズム44の配置については記載されていないので,プリズム44の配置について,反射したマーカ光M’の光軸と受光センサ19による撮像範囲の中心となって近づくように,前記受光センサ19の撮像範囲外であって結像レンズに近づけられ,かつ,前記結像レンズよりもバーコードBに近くなる位置にすることは,当業者が容易に為し得たことではない。
また,上記の点は,引用発明3に引用発明4を適用したとしても,上記相違点5に係る構成を見いだすことはできない。

イ したがって,上記その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明5は,当業者であっても,引用発明3及び引用発明4に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4.本願発明6-8について
本願発明6-8は,本願発明5を直接・間接に引用するものであり,上記相違点5に係る構成と同一の構成を備えるものであるから,本願発明5と同じ理由により,当業者であっても,引用発明3及び引用発明4に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について

1.理由1(特許法第29条第2項)について
ア 本願発明2-4は「マーカ光照射部は」,「前記マーカ光の光軸が前記受光センサによる撮像範囲の中心となる光軸に対して平行であって、前記マーカ光が前記反射ミラーの周囲から当該反射ミラーの外縁に向かって近づくように配置され」という事項を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1及び引用文献2に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。

イ 本願発明5-8は「反射素子は」,「反射した前記マーカ光の光軸と前記受光センサによる撮像範囲の中心となる光軸とが平行となって近づくように、前記受光センサの撮像範囲外であって前記結像レンズに近づけられ、かつ、前記結像レンズよりも前記情報コードに近くなる位置に配置され」という事項を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献3及び引用文献4に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。

ウ したがって,原査定の理由1を維持することはできない。

第8 むすび
以上の通り,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論の通り審決する。



 
審決日 2020-11-25 
出願番号 特願2016-144238(P2016-144238)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 塚田 肇
須田 勝巳
発明の名称 光学的情報読取装置  
代理人 田下 明人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ