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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1368718
審判番号 不服2020-5362  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-21 
確定日 2020-12-15 
事件の表示 特願2016-20286「実装装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月10日出願公開、特開2017-139388、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年2月4日の出願であって、令和1年6月24日付けで拒絶理由通知がされ、令和1年8月27日に手続補正がされ、令和2年1月22日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和2年4月21日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願の請求項1、2、4及び5に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるか、当業者が、引用文献1に記載された発明及び引用文献3、4に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号または同条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、請求項3及び6に係る発明は、当業者が、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、あるいは、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献
引用文献1:特開2015-119134号公報
引用文献2:特開2013-26537号公報
引用文献3:特開2015-126216号公報
引用文献4:特開2015-211187号公報

第3 本願発明
本願の請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明6」という。)は、令和1年8月27日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりの発明である。
[本願発明1]
「発光体を有する発光部品を基板上に実装する発光部品の実装方法であって、
撮像手段により前記発光部品における少なくとも前記発光体の一部を含む領域を撮像して発光部品画像を取得する撮像工程と、
前記発光部品画像に基づき前記発光体の位置を検出する発光体位置検出工程と、
前記発光体位置検出工程にて検出した前記発光体の位置に基づき、部品保持手段と前記発光体とが実装情報で指定された所定の位置関係となるように前記部品保持手段を前記発光部品に位置合わせするとともに前記部品保持手段により前記発光部品を保持する部品保持工程と、
前記実装情報で指定された前記所定の位置関係の情報に基づき、前記発光部品を保持した前記部品保持手段を前記基板に対して位置決めして前記発光部品を基板上に実装する実装工程と、
を含む発光部品の実装方法。」
[本願発明2]
「発光体を有する発光部品を基板上に実装する発光部品の実装方法であって、
撮像手段により前記発光部品における少なくとも前記発光体の一部を含む領域を撮像して発光部品画像を取得する撮像工程と、
前記発光部品画像に基づき前記発光体の位置を検出する発光体位置検出工程と、
部品保持手段を実装情報で指定された所定の保持位置に位置決めするとともに、前記部品保持手段により前記発光部品を保持する部品保持工程と、
前記発光体位置検出工程にて検出した前記発光体の位置および前記実装情報で指定された前記所定の保持位置の情報に基づき、前記保持手段に保持される前記発光部品における、前記保持手段と前記発光体との位置関係を算出する工程と、
前記位置関係に基づき、前記発光部品を保持した前記部品保持手段を前記基板上の実装位置に位置決めして前記発光部品を基板上に実装する実装工程と、
を含む発光部品の実装方法。」
[本願発明3]
「さらに、少なくとも前記撮像工程において前記発光部品が撮像されてから前記部品保持工程において前記保持手段に前記発光部品が保持される迄の間は、前記発光部品を載置台に保持する載置保持工程を含む、請求項1または請求項2に記載の発光部品の実装方法。」
[本願発明4]
「発光体を有する発光部品を基板上に実装する実装装置であって、前記発光部品を保持可能な部品保持手段と、
前記部品保持手段を移動させる移動手段と、
前記発光部品における少なくとも前記発光体の一部を含む領域を撮像して発光部品画像を取得する撮像手段と、
前記発光部品画像に基づいて前記発光体の位置を検出する発光体位置検出手段と、
前記部品保持手段および前記移動手段の動作を制御して前記発光部品の保持および基板上への実装を制御する保持実装制御手段と、
を備え、
前記保持実装制御手段は、前記部品保持手段が前記発光部品を保持する際には、前記発光体位置検出手段によって検出した前記発光体の位置に基づき前記部品保持手段と前記発光体とが実装情報で指定された所定の位置関係となるように部品保持手段を前記発光部品に位置決めし、前記部品保持手段が保持した前記発光部品を基板上に実装する際には、前記実装情報で指定された前記所定の位置関係の情報に基づき、前記部品保持手段を前記基板に対して位置決めする実装装置。」
[本願発明5]
「発光体を有する発光部品を基板上に実装する実装装置であって、
前記発光部品を保持可能な部品保持手段と、
前記部品保持手段を移動させる移動手段と、
前記発光部品における少なくとも前記発光体の一部を含む領域を撮像して発光部品画像を取得する撮像手段と、
前記発光部品画像に基づいて前記発光体の位置を検出する発光体位置検出手段と、
前記部品保持手段および前記移動手段の動作を制御して前記発光部品の保持および基板上への実装を制御する保持実装制御手段と、
を備え、
前記保持実装制御手段は、前記部品保持手段が前記発光部品を保持する際には、前記部品保持手段を実装情報で指定された所定の保持位置に位置決めし、前記部品保持手段が保持した前記発光部品を基板上に実装する際には、前記発光体の位置および前記実装情報で指定された前記所定の保持位置の情報から算出される、前記保持手段に保持された前記発光部品における前記保持手段と前記発光体との位置関係に基づき前記発光部品を保持した前記部品保持手段を前記基板上の実装位置に位置決めして前記発光部品を基板上に実装する実装装置。」
[本願発明6]
「さらに、前記撮像手段によって前記発光部品を撮像する際に前記発光部品を載置する載置台と、
前記載置台に設けられ、少なくとも前記撮像手段によって前記発光部品が撮像されてから前記保持手段によって前記発光部品が保持される迄の間は、前記発光部品を前記載置台に保持する載置保持手段と、
を備えた請求項4または請求項5に記載の実装装置。」

第4 引用文献に記載の事項等
1 引用文献1
(1)引用文献1に記載の事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
「【0001】
本発明は、電子部品としての発光素子をはんだ接合により基板に実装する電子部品実装システムおよび電子部品実装方法ならびにこの電子部品実装システムに用いられる電子部品実装装置に関するものである。」
「【0007】
そこで本発明は、電子部品としての発光素子を高い位置合わせ精度で基板にはんだ接合により実装することができる電子部品実装システムおよび電子部品実装方法ならびに電子部品実装装置を提供することを目的とする。」
「【0026】
基板搬送機構2Cと部品供給部14との間には部品認識カメラ13が配設されている。X軸移動機構5Cには発光素子20を吸着保持する吸着ノズルを複数備えた部品装着ヘッド11が装着されており、X軸移動機構5Cの下面には部品装着ヘッド11と一体的に移動する基板認識カメラ12が設けられている。Y軸移動機構4CとX軸移動機構5Cは部品装着ヘッド11を移動させる装着ヘッド移動機構16を構成し、装着ヘッド移動機構16を駆動することにより、部品装着ヘッド11は基板認識カメラ12とともに部品供給部14、基板3の上方の任意位置に移動自在となっている。
【0027】
部品装着ヘッド11が基板3の上方へ移動することにより、基板認識カメラ12によって基板3の上面に設定された基板認識マーク3c(図6(b)参照)などの認識対象が撮像される。また部品装着ヘッド11が部品供給部14の上方へ移動することによりテープフィーダ15から発光素子20を取り出すことができ、これにより、発光素子20を基板搬送機構2Cに位置決め保持された基板3に移送搭載する部品搭載動作が実行される。
【0028】
部品装着ヘッド11の部品供給部14から基板3への移動過程において、部品装着ヘッド11は部品認識カメラ13の上方へ移動し、ここで部品認識カメラ13は部品装着ヘッド11に保持された状態の発光素子20を下方から撮像する。部品装着ヘッド11による発光素子20の基板3への搭載動作においては、基板認識カメラ12による基板3の撮像結果と部品認識カメラ13による発光素子20の撮像結果とを認識処理した認識結果に基づいて、発光素子20と基板3との位置合わせが行われる。
【0029】
ここで発光素子20と基板3との位置合わせの詳細について、図4?図6を参照して説明する。まず図4は、電子部品としての発光素子20が設計指示通りに精度よく製造され、各部の位置ずれなどの寸法誤差がない理想部品の状態を示している。図4(a)に示すように、発光素子20は機能面である上面に発光部21が形成された矩形形状の本体部20aを主体としており、本体部20aの長手方向の両端には、はんだ接合用の端子20bが形成されている。発光部21は発光源であるLEDの上面を蛍光体で覆った構成となっている。設計指示では、発光素子20において発光部21は本体部20aの中心点に対して対称配置されており、発光素子20の中心位置を示す部品中心PCと発光部21の中心位置を示す発光部位置FCとは一致するようになっている。」
「【0033】
このような不具合を解消するため、本実施の形態の電子部品実装システム1では、図6に示すように、発光素子20の基板3への搭載前に実際の発光素子20における発光部位置FCと部品中心PCとの位置ズレ(ΔW、ΔL)を画像認識により検出し、検出された位置ズレ(ΔW、ΔL)に基づいて発光素子20の基板3への搭載位置を補正して、搭載状態における発光部位置FCの位置ずれの発生を防止するようにしている。
【0034】
図6(a)は、搭載前の発光素子20を示しており、この状態の発光素子20が位置ズレ(ΔW、ΔL)の検出対象となる。本実施の形態では、部品装着ヘッド11によって部品供給部14から発光素子20を取り出す際に、基板認識カメラ12によって図6(a)に示す状態の発光素子20の上面を個々に撮像するようにしている。これにより、発光素子20の中心位置としての部品中心PCの位置および発光部21の中心位置としての発光部位置FCの位置を認識し、これらの認識結果より、図5に示す位置ズレ(ΔW、ΔL)を各発光素子20毎に検出する。
【0035】
これらの発光素子20が実装される基板3においては、基板3に形成された基板認識マーク3cを基板認識カメラ12によって認識することにより、各対のランド3aについて実装座標点3bの位置を検出する。そして発光素子20を基板3に実装する搭載動作では、図6(c)に示すように、発光部位置FCが実装座標点3bに一致するように、部品装着ヘッド11による部品搭載位置を補正する。すなわち、部品中心PCを実装座標点3bに位置合わせする位置合わせにおいて、位置ズレ(ΔW、ΔL)だけ搭載位置を補正した上で、発光素子20をランド3aに着地させる。」
「【0038】
基板認識処理部32は、基板3に形成された基板認識マーク3c(図6(b)参照)を基板認識カメラ12によって撮像した撮像結果を認識処理することにより、基板3における発光素子20の実装座標点3b(図4(b)、図6(b)参照)の位置を検出する。部品上面認識処理部33は、部品装着ヘッド11による取り出し動作において基板認識カメラ12によって発光素子20の上面を撮像した撮像結果を認識処理することにより、発光素子20の部品中心PCおよび発光素子20の上面に形成された発光部21の発光部位置FCの位置を認識し、位置ズレ(ΔW、ΔL)(図5参照)を検出する。したがって基板認識カメラ12および部品上面認識処理部33は、発光素子20の上面における発光部21の位置ズレを検出する発光部検出部となっている。
【0039】
部品位置認識処理部34は、部品装着ヘッド11の吸着ノズルによって保持された発光素子20の裏面側を部品認識カメラ13によって撮像した撮像結果を認識処理することにより、吸着ノズルによって保持された状態における発光素子20の位置を認識する。したがって、部品認識カメラ13および部品位置認識処理部34は、発光素子20の上面を電子部品実装装置M4の吸着ノズルで吸着保持し、当該吸着ノズルに保持された発光素子20の裏面側の画像に基づいて当該発光素子20の位置を検出する発光素子位置検出部となっている。
【0040】
部品搭載座標演算部35は、基板認識処理部32、部品上面認識処理部33、部品位置認識処理部34による認識処理結果に基づき、部品装着ヘッド11に保持された発光素子20の発光部位置FCを基板3の実装座標点3bに位置合わせするための部品搭載座標を演算する処理を行う。そして演算された部品搭載座標に基づいて、部品搭載処理部31が装着ヘッド移動機構16を制御することにより、発光素子20を保持した部品装着ヘッド11の吸着ノズルを基板3に対して相対的に移動させて、発光部21を基板3の所定の位置である実装座標点3bに位置させる。このとき、部品位置認識処理部34によって認識された発光素子20の位置に対して、発光素子20を図6に示す位置ズレ(ΔW、ΔL)分だけずらして基板3に位置合わせする。
【0041】
上記構成において、装着ヘッド移動機構16、部品搭載処理部31、部品搭載座標演算部35は、発光部検出部にて検出した位置ズレ(ΔW、ΔL)と発光素子位置検出部にて検出した発光素子20の位置を利用して、当該発光部21を基板3の所定の位置に位置させるために、基板3と部品装着ヘッド11の吸着ノズルを相対的に移動させて当該発光素子20を位置ズレ(ΔW、ΔL)分だけずらして基板3に位置合せする発光素子位置合せ部を構成する。
【0042】
そしてこのようにして基板3に対して位置合わせされた発光素子20を保持した吸着ノズルを基板3に対して下降させることにより、発光素子20の端子20bはランド3aに配置されたはんだペーストSに接触する。これとともに発光素子20の本体部20aは、基板3に配置された接着剤Aに接触する(図7に示す(ST4)参照)。したがって、部品搭載処理部31および部品装着ヘッド11は、吸着ノズルを基板3へ下降させて発光素子20の端子20bをランド3aに配置されたはんだペーストSに接触させるとともに、発光素子20の本体部20aを基板3に配置された接着剤Aに接触させる発光素子搭載部となっている。」

(2) 引用文献1に記載の発明
(1)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
[引用発明1]
「発光部21が形成された発光素子20をはんだ接合により基板3に実装する発光素子20の実装方法であって、
発光部検出部により、部品装着ヘッド11によって部品供給部14から発光素子20を取り出す際に、基板認識カメラ12によって発光素子20の上面を個々に撮像し、発光素子20の中心位置としての部品中心PCの位置および発光部21の中心位置としての発光部位置FCの位置を認識し、
発光素子位置検出部により、部品装着ヘッド11の吸着ノズルによって保持された発光素子20の裏面側を部品認識カメラ13によって撮像し、吸着ノズルによって保持された状態における発光素子20の位置を認識し、
発光部検出部により検出した部品中心PCの位置および発光部位置FCの位置と、発光素子位置検出部により検出した発光素子20の位置を利用して、当該発光部21を基板3の所定の位置に位置させるために、基板3と部品装着ヘッド11の吸着ノズルを相対的に移動させて当該発光素子20をずらせて基板3に位置合わせし、実装する実装方法。」

2 引用文献3
(1)引用文献3に記載の事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
「【0001】
本発明は、装着ヘッドにより発光部を有するLED素子を基板に装着する部品装着装置に関する。」
「【0004】
しかし、LED素子の外形を認識する場合、LED素子の発光部の位置が外形に対してばらつくと基板に装着されたLED素子の発光部の位置は基板に対してばらついてしまう。LED素子の発光部の位置の外形に対するばらつきが大きいと、例えば、複数のLED素子の発光部を一直線上に並べたい等というように、発光部を基板の定められた位置に位置決めして装着することが難しかった。
【0005】
そこで、本発明はLED素子の発光部を装着対象物の装着すべき位置に正確に位置決めして装着できるようにすることを目的とする。」
「【0006】
このため第1の発明は、装着ヘッドにより発光部を有するLED素子を基板に装着する部品装着装置において、前記装着ヘッドが供給部に載置されたLED素子を取出す前にその素子の発光部を有する面を撮像する発光部撮像カメラと、前記発光部撮像カメラの撮像した画像に基づきLED素子の外形に対する前記発光部の位置を認識する発光部認識手段と、前記装着ヘッドに保持されたLED素子を下方から撮像する部品認識カメラによって撮像された画像に基づきLED素子の外形の位置を認識する部品外形認識手段と、前記発光部認識手段に認識された前記発光部の外形に対する位置及び前記部品外形認識手段に認識されたLED素子の外形の位置に基づき前記発光部が基板の所定の位置に位置して前記LED素子を基板に装着させるよう前記装着ヘッドの駆動源を制御する制御手段とを設けたことを特徴とする。」
「【0018】
12は部品認識カメラで、各種部品が吸着ノズル11に対してどれだけ位置ずれして吸着保持されているかXY方向及び回転角度につき、位置認識するために前記吸着ノズル11に吸着保持された部品を撮像する。19は前記装着ヘッド6に設けられた基板認識カメラで、プリント基板Pに付された位置決めマーク等を撮像する。そして、各前記カメラ12、19により撮像された画像は、図示しない認識処理装置により認識処理される。」
「【0025】
部品(LED素子21を含む電子部品)の吸着及び装着動作について説明する。前記プリント基板Pが上流装置より供給コンベアを介して位置決め部8に搬送されて位置決め固定され、装着順毎の装着データに従い、装着ヘッド6が移動して、電子部品の部品種に対応した吸着ノズル11が装着すべき電子部品を所定の部品供給ユニット5から吸着して取出す。
図1の部品供給装置3A、3B、3C、3Dに並設されている部品供給ユニット5は前記スプロケットの周囲に放射状に突出した歯(嵌合ピン)がLED素子21等の電子部品が所定間隔で収納された収納テープ30の送り孔29に嵌合してこの収納テープ30を送る。LED素子21を取出す前に前記スプロケットがLED素子21の収納間隔で間欠回転することによりLED素子21が収納されている収納部31は、LED素子21が取出される取出し位置に図3(a)に示すように位置決め停止される。
次に、収納部31に収納されたLED素子21の外形の撮像及びその位置認識が行われる。即ち、基板認識カメラ19の下の鏡筒の周りに環状に備えられた図示しない光源から赤色等の照明光が収納部31内のLED素子21全体に照射される。この照射光は前記フィルタ24にカットされずに透過する波長の光である。この光源は照明灯20の近傍に基板認識カメラ19の光軸を中心として環状に設けられていてもよいし、この光軸の両側に一対もしくは列状に設けられていても良い。尚、外形の撮像時にフィルタにカットされないかカットされても一部透過するような近紫外光の照明を用いてもよい。
LED素子21は図4に示すように収納部31内に載置されているが、図3(b)に示すように赤色等の照明によりその外形の輪郭(エッジ)が収納部31の輪郭(エッジ)とは区別されて撮像される。この画像からLED素子21の中心等の外形基準位置32がLED素子21の外形の位置として図示しない発光部認識手段としての制御部に認識される。LED素子21の外形の位置として認識される外形基準位置32はLED素子21の重心であってもよいし、外形から認識して特定できる所定の基準点の位置であってもよい(例えば、矩形であれば辺あるいは角部等から所定の距離角度等で位置が特定できる位置)。
次に装着ヘッド6を移動させず、また部品供給ユニット5内での収納テープ30の送りも停止したまま、蛍光体21AのLED素子21の外形に対する位置を検出する。即ち、図3(b)に示す位置で赤色等の照明を切り、青色光を照射する照明灯20を点灯させ収納部31及びLED素子21に照明を照射してカメラ19で撮像すると、図4の蛍光体21Aのみが明るく映り、その周りのモールド部等からの青色光はフィルタ21でカットされ暗い状態の画像が撮像される。この画像から蛍光体21Aの中心等の蛍光体基準位置33が蛍光体21Aの位置として発光部認識手段としての制御部に認識・検出される。蛍光体21Aの位置としては中心位置でなく重心位置もしくは蛍光体21Aの画像から認識できる所定の基準点の位置であってもよい(例えば、認識可能な特定の辺あるいは角部等から所定の距離角度等で位置が特定できる点の位置)。
上述のようにLED素子21の外形の位置に対する蛍光体21Aの位置との関係が把握されることから、LED素子21の外形に対する蛍光体21Aの位置が認識・検出される。電子部品装着装置1の図示しない制御部にはLED素子21の外形に対して蛍光体21Aの位置すべき所定位置が記憶されており(上述の外形中心位置等の該駅基準位置32を原点として蛍光体基準位置33がX,Y方向に変位している座標位置として等)、この所定位置に対する蛍光体21Aの位置ずれが認識(算出)される。
次に、装着ヘッド6が部品取出し位置に移動する。この場合、吸着ノズル11がLED素子21の略中心位置を吸着できるように前述の認識結果に基づいて装着ヘッド6の水平方向への移動を制御することが好ましい。または、蛍光体21Aの位置も認識しているので、蛍光体21Aを吸着ノズル11が避けるほうが良い場合には避けた位置を吸着するように装着ヘッド6を移動させてもよい。このようにして装着ヘッド6の水平方向の位置決めをすると共に装着ヘッド6は図3(c)に示すように下降してLED素子21を吸着して取出す。
次に、装着ヘッド6は吸着したLED素子21を吸着ノズル11に保持して部品認識カメラ12上に移動して、部品認識カメラ12の周囲からLED素子21に照射される光がLED素子21下面で反射された反射像の撮像を図3(d)に示すように行う。この撮像画面は図5に示すように暗い背景にその背景よりは明るいLED素子21の下面が映り下面の中のリード端子35が明るく映る画面となっており、装着ヘッド6に対するLED素子21の外形の位置の認識が可能である。従って、この外形の位置に対する蛍光体21Aの位置が前述のLED素子21を取出す前の認識により分かっているため、装着ヘッド6に対しての蛍光体21Aの位置が計算により部品外形認識手段としての図示しない制御部により認識できる。図5には撮像されない蛍光体21Aの形成位置を参考のため点線で示しており、この基準位置である星印の位置33がLED素子21の中心32から認識される。
次に、装着ヘッド6はプリント基板P上に移動して図示しない装着データで示されたプリント基板Pの装着すべき位置に図示しない制御部の制御によりLED素子21を図3(e)のように装着する。
この時、蛍光体21Aの中心位置(基準位置)をこの装着データで示す装着位置に位置決めしたい場合には、認識された蛍光体21Aの中心位置(基準位置)が装着データで示される装着位置に位置するように装着ヘッド6の水平方向の移動が制御され位置決めされ、吸着ノズル11の下降により装着動作が実行される。
次に、収納テープ30が部品供給ユニット5内で送られ次の収納部31に収納されたLED素子21が部品取出し位置に図3(a)に示されるように位置すると前述と同様にして図3(b)に示されるLED素子21の上面(発光面)の撮像及び蛍光体21AのLED素子21の外形に対する位置認識が行われ、装着データが示す次の装着位置に蛍光体21Aの位置が合わせて装着される。
このようにして、プリント基板P上に複数のLED素子21がその蛍光体21Aの位置を装着すべき位置に位置決めされて装着される。1直線上に複数の装着位置が並ぶ場合であれば、蛍光体21Aがその1直線上に並んで装着される。
・・・中略・・・
また、第3の実施形態として基板認識カメラ19以外のカメラを装着ヘッド6に設け装着ヘッド6がLED素子21を吸着できる水平方向の位置に位置している場合に、LED素子21の上面(発光面)の撮像ができるようにしてもよい。
即ち、図7に示すように基板認識カメラ19より吸着ノズル11側に発光部撮像カメラとしての吸着位置認識カメラ40を設け、装着ヘッド6に対して昇降する吸着ノズル11が下降して部品を吸着する収納部31の全体を1画面で撮像できるようにする。吸着位置認識カメラ40の光軸は図7に1点鎖線で示すように斜め下方を向く。照明灯41がカメラ40の撮像画像の光を取り込む窓部の上側に設けられ、この照明灯41がLED素子21の外形を撮像する場合には赤色光を照射し、蛍光体21Aを撮像する場合には青色光を照射する。カメラ40の撮像素子と前記窓部との間に青色光をカットするフィルタが設けられる。また、カメラ40に取り込まれる画像の光が撮像素子まで至る前に通過するレンズは画像の大きさを変えないテレセントリックレンズが好ましい。
このようにしておけば、吸着位置認識カメラ40で蛍光体21Aを撮像して装着ヘッド6を水平移動させずに直ちにノズル11の下降を行うことができ、吸着動作の時間が短縮できる。または、撮像画像を認識処理してから認識された蛍光体21Aの水平位置ずれを補正移動しながら吸着ノズル11の下降をさせることもできる。または、撮像画像を認識処理してから認識された水平位置ずれがLED素子21の吸着には問題ない範囲と判断したならば、水平方向へ補正移動しないで吸着ノズル11の下降をさせることもできる。さらには、今回の認識された水平位置ずれを次回の吸着のときに補正して吸着ノズル11の下降をさせてもよい。この場合装着ヘッドを位置決め停止させてから吸着位置認識カメラ40で撮像し、許容範囲内であることを確認してから吸着ノズル11を下降させることができる。吸着位置認識カメラ40は収納部31に収納されたLED素子21を撮像するのみでなく、プリント基板Pに装着されたLED素子21を前述と同様に青色と赤色の照明で撮像して蛍光体21Aの位置を認識することもできる。
または、LED素子21の外形を撮像するのは基板認識カメラ19が実行し、その後装着ヘッド6が吸着ノズル11による取出し位置に移動した後に吸着位置認識カメラで蛍光体21Aを青色光で撮像するようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、LED素子21は収納テープ30に収納された状態で撮像されたが、平板状のトレイに水平のXY方向に所定間隔で載置されているLED素子21を基板認識カメラ19で上述と同様に撮像して蛍光体21Aの位置認識をしてもよい。」

(2)引用文献3に記載の技術的事項
(1)より、引用文献3には、次の技術的事項(以下、「引用文献3の技術的事項」という。)が記載されているといえる。

「吸着ノズル11が設けられた装着ヘッド6により蛍光体21Aを有するLED素子21を基板Pに装着する、LED素子21の装着方法であって、
吸着位置認識カメラ40が設けられた装着ヘッド6を、LED素子21を吸着できる水平方向の位置に位置させ、
発光部撮像カメラとしての吸着位置認識カメラ40によって、装着ヘッドが供給部に載置されたLED素子を取出す前に、そのLED素子21の発光部を有する面を撮像し、LED素子21の外形の位置に対する蛍光体21Aの位置を認識し、
装着ヘッド6を水平移動させずに吸着ノズル11によりLED素子21の略中心位置を吸着し、
装着ヘッド6は吸着したLED素子21を吸着ノズル11に保持して部品認識カメラ12上に移動し、LED素子21を下方から撮像し、LED素子21の外形の位置を認識し、
発光部撮像カメラとしての吸着位置認識カメラ40によって認識された発光体21Aの位置及び部品認識カメラ12によって認識されたLED素子21の外形の位置に基づき発光体21Aが基板の所定の位置となるようLED素子21を装着させるよう装着ヘッド6の駆動を制御し、LED素子21を基板に装着する装着方法。」

第5 当審の判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
a 引用発明1の「発光部21」は、本願発明1の「発光体」に相当する。
同様に、「発光素子20」は、「発光部品」に、「基板3」は、「基板」に、「形成」することは、「有する」ことに、「実装する」ことは、「実装する」ことに、「実装方法」は、「実装方法」に、それぞれ相当する。
したがって、引用発明1の「発光部21が形成された発光素子20をはんだ接合により基板3に実装する発光素子20の実装方法」は、本願発明1の「発光体を有する発光部品を基板上に実装する発光部品の実装方法」に相当する。
b 引用発明1の「基板認識カメラ12」及び「発光素子20の上面」は、本願発明1の「撮像手段」及び「発光体の一部を含む領域」に相当する。 また、引用発明1の「発光素子20の中心位置としての部品中心PCの位置および発光部21の中心位置としての発光部位置FCの位置を認識」することは、本願発明1の「前記発光体の位置を検出する」ことに相当する。
したがって、引用発明1の「発光部検出部により、部品装着ヘッド11によって部品供給部14から発光素子20を取り出す際に、基板認識カメラ12によって発光素子20の上面を個々に撮像し、発光素子20の中心位置としての部品中心PCの位置および発光部21の中心位置としての発光部位置FCの位置を認識」することは、本願発明1の「撮像手段により前記発光部品における少なくとも前記発光体の一部を含む領域を撮像して発光部品画像を取得する撮像工程と、前記発光部品画像に基づき前記発光体の位置を検出する発光体位置検出工程と」「を含む」ことに相当する。
c 引用発明1の「部品装着ヘッド11」は、本願発明1の「部品保持手段」に相当するから、引用発明1の「部品装着ヘッド11によって部品供給部14から発光素子20を取り出す」ことは、本願発明1の「前記発光体位置検出工程にて検出した前記発光体の位置に基づき、部品保持手段と前記発光体とが実装情報で指定された所定の位置関係となるように前記部品保持手段を前記発光部品に位置合わせするとともに前記部品保持手段により前記発光部品を保持する部品保持工程と」「を含む」こととの対比において、「部品保持手段により前記発光部品を保持する部品保持工程と」「を含む」との限度で一致する。
また、引用発明1の「発光部検出部により検出した部品中心PCの位置および発光部位置FCの位置と、発光素子位置検出部により検出した発光素子20の位置を利用して、当該発光部21を基板3の所定の位置に位置させるために、基板3と部品装着ヘッド11の吸着ノズルを相対的に移動させて当該発光素子20をずらせて基板3に位置合わせし、実装する」ことは、本願発明1の「前記実装情報で指定された前記所定の位置関係の情報に基づき、前記発光部品を保持した前記部品保持手段を前記基板に対して位置決めして前記発光部品を基板上に実装する実装工程と」「を含む」こととの対比において、「前記発光部品を保持した前記部品保持手段を前記基板に対して位置決めして前記発光部品を基板上に実装する実装工程と」「を含む」との限度で一致する。
d 以上のとおりであるから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
[一致点1]
「発光体を有する発光部品を基板上に実装する発光部品の実装方法であって、
撮像手段により前記発光部品における少なくとも前記発光体の一部を含む領域を撮像して発光部品画像を取得する撮像工程と、
前記発光部品画像に基づき前記発光体の位置を検出する発光体位置検出工程と、
部品保持手段により前記発光部品を保持する部品保持工程と、
前記発光部品を保持した前記部品保持手段を前記基板に対して位置決めして前記発光部品を基板上に実装する実装工程と、
を含む発光部品の実装方法。」
[相違点1]
部品保持工程に関し、本願発明1は、「前記発光体位置検出工程にて検出した前記発光体の位置に基づき、部品保持手段と前記発光体とが実装情報で指定された所定の位置関係となるように前記部品保持手段を前記発光部品に位置合わせするとともに前記部品保持手段により前記発光部品を保持する」ものである、すなわち、発光体の位置を検出した後、部品保持手段と発光体とが実装情報で指定された所定の位置関係となるように部品保持手段を発光部品に位置合わせするとともに部品保持手段により発光部品を保持するものであるのに対し、引用発明1は、「部品装着ヘッド11によって部品供給部14から発光素子20を取り出す際に、基板認識カメラ12によって発光素子20の上面を個々に撮像し、発光素子20の中心位置としての部品中心PCの位置および発光部21の中心位置としての発光部位置FCの位置を認識」するものである、すなわち、部品装着ヘッド11は、発光部21が実装情報で指定された所定の位置関係となるような位置合わせを行うことなく、発光素子20を吸着し取り出すものである点。
[相違点2]
実装工程に関し、本願発明1は、「前記実装情報で指定された前記所定の位置関係の情報に基づき、前記発光部品を保持した前記部品保持手段を前記基板に対して位置決めして前記発光部品を基板上に実装する」ものであるのに対し、引用発明1は、「発光部検出部により検出した部品中心PCの位置および発光部位置FCの位置と、発光素子位置検出部により検出した発光素子20の位置を利用して、当該発光部21を基板3の所定の位置に位置させるために、基板3と部品装着ヘッド11の吸着ノズルを相対的に移動させて当該発光素子20をずらせて基板3に位置合わせし、実装する」ものである点。

(2)判断
相違点1及び2は密接に関連しているので同時に検討する。
本願発明1は、発光部品における発光体の位置関係にばらつきがあるのを補正して、発光部品の発光体の位置を基板上に正しく位置決めするために、従来技術においては、発光部品が部品保持手段に保持されていない状態および発光部品が部品保持手段に保持されている状態での各々において発光部品の撮像が必要であったのを、相違点1及び2にかかる構成、すなわち、「前記発光体位置検出工程にて検出した前記発光体の位置に基づき、部品保持手段と前記発光体とが実装情報で指定された所定の位置関係となるように前記部品保持手段を前記発光部品に位置合わせするとともに前記部品保持手段により前記発光部品を保持する部品保持工程」と、「前記実装情報で指定された前記所定の位置関係の情報に基づき、前記発光部品を保持した前記部品保持手段を前記基板に対して位置決めして前記発光部品を基板上に実装する実装工程と」「を含む」ことにより、発光部品が部品保持手段に保持されている状態での発光部品の撮像を行わなくてもすむようにしたものであるといえる(本願明細書段落【0002】、【0004】及び【0013】を参照。)。
これに対し、引用発明1は、「部品装着ヘッド11によって部品供給部14から発光素子20を取り出す際に、基板認識カメラ12によって発光素子20の上面を個々に撮像し、発光素子20の中心位置としての部品中心PCの位置および発光部21の中心位置としての発光部位置FCの位置を認識」するという工程だけでは、必ずしも、部品装着ヘッド11が発光素子20における実装情報で指定されたとおりの正しい位置を吸着するとは限らず、このため、発光素子20を基板3に実装する際に、発光部21の基板3上での位置を正しく位置合わせすることができなかったので、これを解決する手段として、「発光部検出部により検出した部品中心PCの位置および発光部位置FCの位置」に加え、「発光素子位置検出部により、部品装着ヘッド11の吸着ノズルによって保持された発光素子20の裏面側を部品認識カメラ13によって撮像し、吸着ノズルによって保持された状態における発光素子20の位置を認識し」、「発光素子位置検出部により検出した発光素子20の位置を利用して、当該発光部21を基板3の所定の位置に位置させるために、基板3と部品装着ヘッド11の吸着ノズルを相対的に移動させて当該発光素子20をずらせて基板3に位置合わせ」する工程を含むものであるといえる。このように、引用発明1は、発光部21の基板3上での位置を正しく位置合わせするために、発光部検出部と発光素子位置検出部とでの複数回(2回)の発光素子20の撮像する工程が必須なものであるといえる。
そして、引用文献1には、上記2回の撮像工程のうち、どちらか一方、特に、発光素子位置検出部での撮像工程を省略できることについては記載もないし、示唆もされていない。
また、引用文献2及び4にも一度の撮像工程のみで、発光部品の発光体の位置を基板上で正しく位置決めする技術的事項について記載も示唆もない。
さらに、上記「第4 2(2)」で摘示した引用文献3の技術的事項も、「発光部撮像カメラとしての吸着位置認識カメラ40によって、装着ヘッドが供給部に載置されたLED素子を取出す前に、そのLED素子21の発光部を有する面を撮像し、LED素子21の外形の位置に対する蛍光体21Aの位置を認識し」、「装着ヘッド6は吸着したLED素子21を吸着ノズル11に保持して部品認識カメラ12上に移動し、LED素子21を下方から撮像し、LED素子21の外形の位置を認識し、発光部撮像カメラとしての吸着位置認識カメラ40によって認識された発光体21Aの位置及び部品認識カメラ12によって認識されたLED素子21の外形の位置に基づき発光体21Aが基板の所定の位置となるようLED素子21を装着させるよう装着ヘッド6の駆動を制御」し、LED素子21の発光部(発光体21A)を装着対象物である基板Pの装着すべき位置に正確に位置決めして装着できるようにしたものであり、発光部撮像カメラとしての吸着位置認識カメラ40によるLED素子21の発光部を有する面を撮像することと、部品認識カメラ12によるLED素子21を下方から撮像することという、複数回(2回)の撮像工程が必須なものであるといえる。
そして、引用文献3には、上記2回の撮像工程のうち、どちらか一方、特に、部品認識カメラ12によるLED素子21を下方から撮像することを省略できることについては記載もないし、示唆もされていない。
したがって、引用発明1において相違点1及び2に係る本願発明1の構成となすことは、当業者であっても容易にはなし得ない。
以上のとおり、本願発明1と引用発明1との間には実質的な相違点1及び2が存在するので、本願発明1は、引用発明1(引用文献1に記載された発明)とはいえない。
また、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明1とを対比する。
a 上記1(1)a及びbは、本願発明2と引用発明1との対比においても同様である。
b 引用発明1の「部品装着ヘッド11」は、本願発明2の「部品保持手段」に相当し、また、部品供給部14から発光素子20を取り出す前に、所定の保持位置に位置決めされるものといえるから、引用発明1の「部品装着ヘッド11によって部品供給部14から発光素子20を取り出す」ことは、本願発明2の「部品保持手段を実装情報で指定された所定の保持位置に位置決めするとともに、前記部品保持手段により前記発光部品を保持する保持工程と」「を含む」こととの対比において、「部品保持手段を所定の保持位置に位置決めするとともに、前記部品保持手段により前記発光部品を保持する保持工程と」「を含む」ことの限度で一致する。
c 引用発明1の、「発光部検出部により検出した部品中心PCの位置および発光部位置FCの位置と、発光素子位置検出部により検出した発光素子20の位置を利用して、当該発光部21を基板3の所定の位置に位置させるために、基板3と部品装着ヘッド11の吸着ノズルを相対的に移動させて当該発光素子20をずらせて基板3に位置合わせし、実装する」ことは、これにより、発光素子20に対する発光部位置FCおよび吸着ノズルによって保持された状態における発光素子20の位置の両者の位置関係に基づき、発光素子20を保持した部品装着ヘッド11を基板3の所定の実装位置に位置決めして発光素子20を基板3上に実装するものといえるから、本願発明2の「前記位置関係に基づき、前記発光部品と保持した前記部品保持手段を前記基板上の実装位置に位置決めして前記発光部品を基板上に実装する実装工程と、を含む」ことに相当する。
そして、引用発明1は、発光素子20の実装に先立ち、部品装着ヘッド11に保持される発光素子20における部品装着ヘッド11と発光素子20との位置関係を算出する工程を含んでいるといえる。
したがって、引用発明1は、本願発明2の「前記発光体位置検出工程にて検出した前記発光体の位置および前記実装情報で指定された前記所定の保持位置の情報に基づき、前記保持手段に保持される前記発光部品における、前記保持手段と前記発光体との位置関係を算出する工程と」「を含む」こととの対比において、「前記発光体位置検出工程にて検出した前記発光体の位置の情報等に基づき、前記保持手段に保持される前記発光部品における、前記保持手段と前記発光体との位置関係を算出する工程と」「を含む」との限度で一致する構成を含むものであるといえる。
d 以上のとおりであるから、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
[一致点2]
「発光体を有する発光部品を基板上に実装する発光部品の実装方法であって、
撮像手段により前記発光部品における少なくとも前記発光体の一部を含む領域を撮像して発光部品画像を取得する撮像工程と、
前記発光部品画像に基づき前記発光体の位置を検出する発光体位置検出工程と、
部品保持手段を所定の保持位置に位置決めするとともに、前記部品保持手段により前記発光部品を保持する部品保持工程と、
前記発光体位置検出工程にて検出した前記発光体の位置の情報等に基づき、前記保持手段に保持される前記発光部品における、前記保持手段と前記発光体との位置関係を算出する工程と、
前記位置関係に基づき、前記発光部品を保持した前記部品保持手段を前記基板上の実装位置に位置決めして前記発光部品を基板上に実装する工程と、
を含む発光部品の実装方法。」
[相違点3]
本願発明2は、「前記部品保持手段により前記発光部品を保持する」前に、「部品保持手段を実装情報で指定された所定の保持位置に位置決めする」ものであるのに対し、引用発明1は、「部品装着ヘッド11によって部品供給部14から発光素子20を取り出す際に」、部品装着ヘッド11を、実装情報で指定された位置に位置決めするものとはされていない点。
[相違点4]
位置関係を算出する工程に関し、本願発明2は、「前記発光体位置検出工程にて検出した前記発光体の位置および前記実装情報で指定された前記所定の保持位置の情報に基づ」くものであるの対し、引用発明1は、「発光部検出部により検出した部品中心PCの位置および発光部位置FCの位置と、発光素子位置検出部により検出した発光素子20の位置を利用」するものである点。

(2)判断
事案に鑑み、相違点4について検討する。
本願発明2は本願発明1と同様に、発光部品における発光体の位置関係にばらつきがあるのを補正して、発光部品の発光体の位置を基板上に正しく位置決めするために、従来技術においては、発光部品が部品保持手段に保持されていない状態および発光部品が部品保持手段に保持されている状態での各々において発光部品の撮像が必要であったのを、「前記実装情報で指定された前記所定の保持位置の情報」を利用することにより、発光部品が部品保持手段に保持されている状態での発光部品の撮像を行わなくてもすむようにしたものであるといえる(本願明細書段落【0002】、【0004】及び【0013】を参照。)。
これに対し、引用発明1は、「発光素子位置検出部により、部品装着ヘッド11の吸着ノズルによって保持された発光素子20の裏面側を部品認識カメラ13によって撮像し、吸着ノズルによって保持された状態における発光素子20の位置を認識」し、「発光素子位置検出部により検出した発光素子20の位置を利用」するものであり、発光部品が部品保持手段に保持されている状態での発光部品の撮像を行うことが必須となっているといえる。
そして、引用文献1には、発光素子位置検出部での撮像工程を省略できることについては記載もないし、示唆もされていない。
また、引用文献2及び4にも一度の撮像工程のみで、発光部品の発光体の位置を基板上で正しく位置決めする技術的事項について記載も示唆もない。
さらに、上記「第4 2(2)」で摘示した引用文献3の技術的事項も、「発光部撮像カメラとしての吸着位置認識カメラ40によって、装着ヘッドが供給部に載置されたLED素子を取出す前に、そのLED素子21の発光部を有する面を撮像し、LED素子21の外形の位置に対する蛍光体21Aの位置を認識し」、「装着ヘッド6は吸着したLED素子21を吸着ノズル11に保持して部品認識カメラ12上に移動し、LED素子21を下方から撮像し、LED素子21の外形の位置を認識し、発光部撮像カメラとしての吸着位置認識カメラ40によって認識された発光体21Aの位置及び部品認識カメラ12によって認識されたLED素子21の外形の位置に基づき発光体21Aが基板の所定の位置となるようLED素子21を装着させるよう装着ヘッド6の駆動を制御」し、LED素子21の発光部(発光体21A)を装着対象物である基板Pの装着すべき位置に正確に位置決めして装着できるようにしたものであり、発光部撮像カメラとしての吸着位置認識カメラ40によるLED素子21の発光部を有する面を撮像することと、部品認識カメラ12によるLED素子21を下方から撮像することという、複数回(2回)の撮像工程が必須なものであるといえる。
そして、引用文献3には、上記2回の撮像工程のうち、どちらか一方、特に、部品認識カメラ12によるLED素子21を下方から撮像することを省略できることについては記載もないし、示唆もされていない。
したがって、引用発明1において相違点4に係る本願発明2の構成となすことは、当業者であっても容易にはなし得ない。
以上のとおり、本願発明2と引用発明1との間には、少なくとも相違点4が存在するので、本願発明2は、引用発明1(引用文献1に記載された発明)とはいえない。
また、本願発明2は、引用発明1及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明3について
本願発明3は、本願発明1の発明特定事項を全て含み更に限定するもの、または、本願発明2の発明特定事項を全て含み更に限定するものである。
本願発明1及び2が、引用発明1とはいえないし、引用発明1及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本願発明3も、引用発明1とはいえないし、引用発明1及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 本願発明4?6について
本願発明4?6は、それぞれ本願発明1?3に記載された発光部品の実装方法を具体化する装置の発明であるといえ、本願発明4?6と本願発明1?3はカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
したがって、本願発明4?6は、1?3と同様の理由により、引用発明1とはいえないし、引用発明1及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?6は、引用文献1に記載された発明とはいえないし、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-11-25 
出願番号 特願2016-20286(P2016-20286)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H05K)
P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 板澤 敏明  
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 尾崎 和寛
内田 博之
発明の名称 実装装置  
代理人 片岡 友希  

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