• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16L
管理番号 1368730
審判番号 不服2019-8314  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-24 
確定日 2020-11-27 
事件の表示 特願2014-166295「継手付ホース」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月31日出願公開、特開2016- 41960〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年8月19日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成30年4月26日付けで拒絶理由の通知
平成30年6月18日に意見書の提出
平成30年11月6日付けで拒絶理由の通知
平成30年12月26日に意見書及び手続補正書の提出
令和元年5月9日付けで拒絶査定
令和元年6月24日に拒絶査定不服審判の請求
令和2年5月1日付けで当審における拒絶理由の通知
令和2年5月20日に意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、令和2年5月20日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載によれば、特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ホースと、該ホースの少なくとも片端に取り付けられる継手とを有し、
該継手が、少なくとも上記ホースの端部内側に挿入されるノズルを有する継手付ホースにおいて、
上記ホースの最も内側が、ポリオレフィン系樹脂からなり、該ポリオレフィン系樹脂がポリエチレンを主体としたものからなり、
上記ノズルには、上記ホース内に挿入される部分の外周面にテーパ状環状突起が形成されているとともに、該テーパ状環状突起におけるエッジ部の角Rが0.03?0.1mmであることを特徴とする継手付ホース。」

第3 令和2年5月1日付けで通知した拒絶の理由
当審において、令和2年5月1日付けで通知した拒絶の理由のうち、本願の請求項1に係る発明についての理由は、概略以下のとおりである。
<理由1(進歩性)について>
本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に例証される周知技術に基いて、本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献一覧>
引用文献1:特開2001-65762号公報
引用文献2:特開平2-62495号公報
引用文献3:特開2002-174382号公報
引用文献4:特公平3-15066号公報

第4 引用文献
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の出願前に頒布された引用文献1には、「口金具を具えるホース」に関し、次の記載がある。
なお、「・・・」は記載の省略を示し、下線は当審において付したものである。
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、湯沸器、温水器等からの熱水および温水の給水に用いられる、口金具を具えるホースに関し、可撓性のホース全体の内面層と、そこに挿入されるニップルとの間の液密性を長期間にわたって維持するものである。
【0002】
【従来の技術】洗面台や流台等において、湯沸器や温水器等から供給される熱水や水道水用の給水配管、なかでもとくに、配管誤差等の影響が最も大きくあらわれる、蛇口等の給水機器と配管との最終連結部分には、銅パイプや、ステンレス製の蛇腹管が従来から広く一般に使用されている。しかるに、これらの管はいずれもそれ自体が可撓性に乏しく、このことが、洗面台や流台等の設置時の配管工事の施工性を悪くしている。
【0003】これがため、内面層をポリオレフィン系材料等からなる、可撓性にすぐれた熱可塑性エラストマーにて形成し、その外周をステンレス線等で補強した可撓性のホース本体に口金具を加締締結したホースが提案されるに至っており、かかるホースによれば、ホース本体のすぐれた可撓性の下で、配管施工を十分容易ならしめることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、口金具を具える従来のホースは、外周面に鋸歯状の又は、環状の突出部を設けたニップルを、ホース本体の内側へ挿入するとともに、そのホース本体の外周に配置したスリーブを加締機をもってホース本体に加締固定することで、ホース本体に圧縮変形をもたらし、これによってホース本体の内周面をニップル外周面に液密に接触させるものであるため、とくに、熱水温度が高すぎる場合、ホース本体内面層の耐熱性が低すぎる場合などに、ホースへの繰返しの通水により、熱可塑性エラストマーからなるホース本体内面層の圧縮応力が、熱水等の有する熱によって徐々に緩和されて、比較的早期の圧縮永久歪を生じ、その内面層の、ニップル外周面への緊密な接触状態を維持できなくなり、この結果として、それらの両者間から熱水等が洩出するうれいがあった。
【0005】この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題として検討した結果なされたものであり、この発明の目的は、ニップル上で圧縮変形された、可撓性のホース本体の内面層に応力の緩和が生じても、熱水その他の輸送流体の洩出のおそれを十分に取除くことができる、口金具を具えるホースを提供するにある。」

「【0008】
【発明の実施の形態】以下にこの発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明の実施形態を示す軸線方向断面図である。図中1は可撓性のホース本体を、2は、ホース本体1の端部分に取付けた口金具をそれぞれ示し、ここに例示するホース本体1は、ポリオレフィン系の熱可塑性エラストマーにて構成した内面層1aと、この内面層1aの周りに編組みしたステンレス線よりなる補強層1bとを具える。
【0009】また、口金具2は、ホース本体1の端部分内側に挿入したニップル3と、ホース本体1の外周側に配置されて、そのホース本体1をニップル外周面に押圧するスリーブ4とを具える。なお、ここに示すこの口金具2は、上述したところに加え、それ自身、ひいては、口金具を具えるホースを、他の配管部品、給水機器等に連結するためのナット5をも具える。
【0010】ここで、ニップル3は、それのホース本体1への挿入部分に、断面形状がほぼ鋸歯状をなす複数条の突出部6を有する。そしてここでは、かかるニップル3の、突出部6より挿入方向前方側で、その周面に二本の環状溝8を設け、それらの各環状溝8に、ゴム製のO-リング9を位置決め配置する。なおこのニップル3の、ホース本体1から突出する大径端部分には、前記ナット5を抜止め状態で取付ける。
【0011】以上のように構成してなる口金具2の、ホース本体1の端部分への取付けは、加締め前のスリーブ4を、そのホース本体上に配置した状態で、ホース本体1の内側へ、ゴム製O-リング9を予め配置したニップル3を挿入し、その後、スリーブ4に加締加工を施してそれを図示のような縮径状態とすることにより行うことができる。
【0012】ここで、口金具2の取付け初期には、ホース本体1の端部分は、ニップル外表面とスリーブ4とで圧縮されて、そのニップル外表面に十分大きな力で押圧され、併せて、各O-リング9もまた大きく圧縮変形されるので、ホース本体1による熱水等の輸送に当ってすぐれたシール機能を発揮することができる。なおこの取付け初期には、ゴム製O-リング9の作用を俟つまでもなく、ホース本体それのみにて所要のシール機能を十分にもたらすことできる。
・・・
【0016】
【発明の効果】かくして、この発明によれば、可撓性のホース本体の内面層に、圧縮永久歪の発生に起因する応力低下が生じることがあっても、耐圧縮永久歪にすぐれるゴム製のO-リングが、シール機能を長期間にわたって十分に発揮することができるので、ホース本体内面層とニップル表面との間からの輸送流体の洩出のおそれを効果的に除去することができる。」





(2)上記(1)記載から認められること
ア 上記(1)(特に、段落0001、0004、0005、0009及び図1の記載)によれば、引用文献1には、口金具を具えるホースが記載されていることが認められる。

イ 上記(1)(特に、段落0008、0011及び図1の記載)によれば、口金具を具えるホースは、ホース本体1と、該ホース本体1の端部分に取り付けられる口金具2とを有することが認められる。

ウ 上記(1)(特に、段落0009及び図1の記載)によれば、口金具2が、ホース本体1の端部分内側に挿入されるニップル3と、上記ホース本体1の外周側に配置されて、上記ホース本体1を上記ニップル3の外周面に押圧するスリーブ4とを有することが認められる。

エ 上記(1)(特に、段落0008及び図1の記載)によれば、ホース本体1は、ポリオレフィン系の熱可塑性エラストマーにて構成した内面層1aと、この内面層1aの周りに編組みしたステンレス線よりなる補強層1bとを具えることが認められる。

オ 上記(1)(特に、段落0010及び図1の記載)によれば、ニップル3は、上記ホース本体1への挿入部分の外周面に、断面形状がほぼ鋸歯状をなす複数条の突出部6を有することが認められる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献1には、次の事項からなる発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「ホース本体1と、該ホース本体1の端部分に取り付けられる口金具2とを有し、
該口金具2が、上記ホース本体1の端部分内側に挿入されるニップル3と、上記ホース本体1の外周側に配置されて、上記ホース本体1を上記ニップル3の外周面に押圧するスリーブ4とを有する口金具を具えるホースにおいて、
上記ホース本体1は、ポリオレフィン系の熱可塑性エラストマーにて構成した内面層1aと、この内面層1aの周りに編組みしたステンレス線よりなる補強層1bとを具え、
上記ニップル3は、上記ホース本体1への挿入部分の外周面に、断面形状がほぼ鋸歯状をなす複数条の突出部6を有する口金具を具えるホース。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2には、「ホース金具」に関し、次の記載がある。
「〔産業上の利用分野〕
この発明は、流体を輸送するゴムホースの先端に装着するホース金具の改良に関するものである。
〔従来の技術〕
従来、ゴムホース用のニップル金具のホース挿入側外周面には、流体の洩れ防止効果及びゴムホースの抜けを防止効果を狙って、鋸刃状の係止部や凹凸状の係止部を刻設するのが一般的である。
〔発明が解決しようとする問題点]
然しなから、上記のような係止部の山部エッジが鋭角であると、ホースの抜け防止効果は大きい反面、締付け金具を加締る際、加締中心から左右方向へのゴムの移動によりゴムホースの内面ゴム層に傷を付け、内部輸送流体の流出及びホース亀裂等を引き起こすと言う問題があった。このため、金具ニップルのホース挿入側外周面に形成する係止部の先端には、0.2mm以上のアール面(円弧面)を形成するのが一般的である。」(1頁右欄3行?2頁左上欄3行)

(2)引用文献2の技術事項
上記(1)によると、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2の技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「先端にニップル金具が装着された流体を輸送するゴムホースにおいて、前記ニップル金具のホース挿入側外周面には、流体の洩れ防止効果及びゴムホースの抜けを防止効果を狙って、鋸刃状の係止部や凹凸状の係止部を刻設するとともに、締付け金具を加締る際、ゴムホースの内面ゴム層に傷を付け、内部輸送流体の流出及びホース亀裂等を引き起こさないようにするため、前記係止部の先端には、0.2mm以上のアール面(円弧面)を形成すること。」

3 引用文献3について
(1)引用文献3の記載
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献3には、「ホース接続構造」に関し、図面と共に次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高温から低温の広い温度領域で使用されるホースにニップルとその同心軸に設けたソケットから構成された金具を固定したホース接続構造に関する。本発明の接続構造は、たとえば、パワーステアリングホース、油圧用高圧ホース、エアーブレーキホースなどのゴムホースおよび樹脂ホースの接続に利用できる。」

「【0016】実施の形態1
図1は、実施の形態1のホース接続構造を示す部分断面図である。図2は、図1のホース接続構造の金具とホース1の固定部の拡大断面図である。
【0017】本実施の形態では、図9および図11の従来の接続構造と同様にニップル2とソケット3とからなる口金具にホース1を挿入し、ソケット3の加締部6a、6bの2箇所で加締プレスを行ない、口金具とホース1を固定してホース1を接続する。
【0018】本発明においては、ホース挿入部分の外周面にリング状凹溝7を有するニップル2を使用する。リング状凹溝7を有するニップル2を使用することによって、高いシール性を得ることができる。
【0019】本発明において使用するニップル2のリング状凹溝7は、ホース1の行き止まりの位置、すなわち、ソケットつば内側5に接する位置に位置する。リング状凹溝7をホース1の行き止まりの位置に有するニップル2を使用することによって、ソケット3の加締め力を高くした場合でもホース1の内面ゴム1aの破壊を防止することができる。
【0020】前記リング状凹溝7はホース1の内面ゴム1aの移動量が大きいニップル2のホース側先端部より離れて位置し、かつ、ソケットつば内側5により行き止まりとなるので、ニップル2奥部方向に内面ゴム1aが移動しない。したがって、リング状凹溝7は内面ゴム1aの破壊を防止するように作用する。その結果、リング状凹溝7真上のソケット外径を縮小する加締部6aの加締め外径を小さくし、加締め力を高める方法、または、リング状凹溝7の肩部8aのアールまたはC面取りを小さくし、局部的に加締め力を高める方法(線シール)によって、内面ゴムを破壊することなく、高いシール性を得ることができる。
【0021】リング状凹溝7の溝幅xは、肩部8aがニップル2のホース側先端にあまり近づかない長さに形成することが好ましい。その条件を満たすためには、通常、リング状凹溝7の溝幅xを1?5mm、好ましくは2?3mmにする。ただし、好ましい溝幅xの長さは、ニップル2の長さや加締め形状により変化するので適宜に決定することができる。
【0022】本発明において使用するニップル2は、リング状凹溝7の肩部8aが、加締め力を局部的に高くする形状に形成され、アールが0.5R以下、好ましくは0.1?0.3R、または、C面が0.5C以下、好ましくは0.1?0.3Cである。
【0023】本実施の形態において使用するニップル2は、ホース挿入部分の長さ方向の中央部からソケットつば内側5のあいだに位置する場所に複数の溝凹部4を有する。溝凹部4を有することによってシール性を高めることができる。溝凹部4は、ニップル2のホース側先端部から極力離れたソケットつば内側5に近い位置に設けることが好ましい。
【0024】溝凹部4の肩部8cのアールまたはC面は、加締め力が局部的に大きくなりホース1の内面ゴム1aを破壊しないように、リング状凹溝7の肩部8aのアールまたはC面より大きくすることが好ましく、たとえば、アールは0.5R以上、C面は0.5C以上とすることが好ましい。ただし、好ましいアールおよびC面の大きさは、ホース1の内径やゴム材質などにより変化するので適宜に決定することができる。」





(2)引用文献3の技術事項
上記(1)によると、引用文献3には、次の事項(以下、「引用文献3の技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「端部にニップル2とソケット3とからなる口金具を固定したホース1において、前記ニップル2のホース挿入部分の外周面に、ソケットつば内側5に接する位置に位置する凹溝リング7及び前記ホース挿入部分の長さ方向の中央部から前記ソケットつば内側5のあいだに位置する複数の溝凹部4を有し、前記凹溝リング7の肩部8aが、内面ゴム1aを破壊することなく、高いシール性を得ることができるように、加締め力を局部的に高くする形状に形成され、アールが0.5R以下、好ましくは0.1?0.3Rとされ、また、前記溝凹部4の肩部8cのアールは、加締め力が局部的に大きくなり前記内面ゴム1aを破壊しないように、前記リング状凹溝7の前記肩部8aのアールより大きくすることが好ましく、たとえば、0.5R以上とすること。」

4 引用文献4について
(1)引用文献4の記載
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献4には、「中間継手金具付ブレーキホース」に関し、図面と共に次の記載がある。
「特許請求の範囲
1 他部材に係着できる係着部と該係着部の側方へ延び且つ外方より圧縮加締めすることができる筒部とから成りしかも内層及び外層がゴム材料から成るホース外周上に被嵌する外筒と、該外筒と同じ長さで且つ前記ホース内に挿入されるニツプルとから成る中間継手金具が前記筒部の圧縮加締めによりホースの中間部に締結されており、しかも該ホースの両端部にはそれぞれ端末金具が締結されて成る中間継手金具付ブレーキホースにおいて、前記筒部の圧縮加締め位置の直下に位置する前記ニツプルの外周には、深さが前記ホース内径の3?12%で且つコーナー部の面取角度が0.05?0.3Rの円周方向に刻まれた本溝と該本溝の両側に平行するように刻まれた補助溝とを設けて成ることを特徴とする中間継手金具付ブレーキホース。
発明の詳細な説明
[産業上の利用分野]
本発明は車輛、特に乗用車や小型トラツクのブレーキホースとして用いられる中間継手金具付ブレーキホースに関するものである。」(1欄1?22行)

「本発明において、ニツプル外周上に設ける本溝及び補助溝のコーナー部の面取角度を0.05?0.3Rと限定したのは、0.05R以下のニツプルではホースへの挿入作業性が極めて劣り、その結果ホース挿入作業時にホースの外傷やニツプルの曲がり等が多発するためである。また、0.3R以上ではニツプルの本溝及び補助溝に食い込んだホース内層がホース長手方向への力とホース自身の弾性により飛び出し易くなり、その結果ニツプルとホースとの固着力が急激に低下するようになるためである。」(5欄38行?6欄4行)

(2)引用文献4の技術事項
上記(1)によると、引用文献4には、次の事項(以下、「引用文献4の技術事項」という。)が記載されているものと認める。
「他部材に係着できる係着部と該係着部の側方へ延び且つ外方より圧縮加締めすることができる筒部とから成りしかも内層及び外層がゴム材料から成るホース外周上に被嵌する外筒と、該外筒と同じ長さで且つ前記ホース内に挿入されるニツプルとから成る中間継手金具が前記筒部の圧縮加締めによりホースの中間部に締結されており、しかも該ホースの両端部にはそれぞれ端末金具が締結されて成る中間継手金具付ブレーキホースにおいて、前記筒部の圧縮加締め位置の直下に位置する前記ニツプルの外周には、深さが前記ホース内径の3?12%で且つコーナー部の面取角度が0.05?0.3Rの円周方向に刻まれた本溝と該本溝の両側に平行するように刻まれた補助溝とを設けて成ることで、前記ホースへの挿入作業性が極めて劣り、その結果ホース挿入作業時に前記ホースの外傷や前記ニツプルの曲がり等が多発するのを防止するとともに、前記ニツプルの前記本溝及び前記補助溝に食い込んだ前記ホース内層がホース長手方向への力とホース自身の弾性により飛び出し易くなり、その結果前記ニツプルと前記ホースとの固着力が急激に低下するのを防止すること。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者における「ホース本体1」は、前者における「ホース」に相当し、同様に、「ニップル3」は「ノズル」に相当する。
また、後者の「口金具2」は、「ホース本体1の端部分内側に挿入されるニップル3と、上記ホース本体1の外周側に配置されて、上記ホース本体1を上記ニップル3の外周面に押圧するスリーブ4とを有する」ものであり、ホースの継手をなしているから、前者の「継手」に相当する。
そうすると、後者の「口金具を具えるホース」は、前者の「継手付ホース」に、相当する。

・後者の「該ホース本体1の端部分」は、前者の「該ホースの少なくとも片端」に相当する。
そして、後者の「ホース本体1と、該ホース本体1の端部分に取り付けられる口金具2とを有し」という態様は、前者の「ホースと、該ホースの少なくとも片端に取り付けられる継手とを有し」という態様に相当する。

・後者の「上記ホース本体1の端部分内側」は、前者の「上記ホースの端部内側」に相当する。
そして、後者の「該口金具2が、上記ホース本体1の端部分内側に挿入されるニップル3と、上記ホース本体1の外周側に配置されて、上記ホース本体1を上記ニップル3の外周面に押圧するスリーブ4とを有する」態様は、前者の「該継手が、少なくとも上記ホースの端部内側に挿入されるノズルを有する」態様に相当する。

・後者の「ポリオレフィン系の熱可塑性エラストマー」は、前者の「ポリオレフィン系樹脂」に相当する。
また、後者の「内面層1a」は、その配置からみて、ホース本体1の最も内側に位置するものといえる。
そして、後者の「上記ホース本体1は、ポリオレフィン系の熱可塑性エラストマーにて構成した内面層1aと、この内面層1aの周りに編組みしたステンレス線よりなる補強層1bとを具え」る態様は、前者の「上記ホースの最も内側が、ポリオレフィン系樹脂からなり、該ポリオレフィン系樹脂がポリエチレンを主体としたものからなり」という態様に、「上記ホースの最も内側が、ポリオレフィン系樹脂からな」るという限りにおいて一致する。

・後者の「上記ホース本体1への挿入部分の外周面」は、前者の「上記ホース内に挿入される部分の外周面」に相当する。
また、後者の「断面形状がほぼ鋸歯状をなす複数条の突出部6」は、断面形状がほぼ鋸歯状をなすことによってテーパ状となっており、環状に形成されるものであるから、前者の「テーパ状環状突起」に相当する。
そして、後者の「上記ニップル3は、上記ホース本体1への挿入部分の外周面に、断面形状がほぼ鋸歯状をなす複数条の突出部6を有する」態様は、前者の「上記ノズルには、上記ホース内に挿入される部分の外周面にテーパ状環状突起が形成されているとともに、該テーパ状環状突起におけるエッジ部の角Rが0.03?0.1mmである」態様に、「上記ノズルには、上記ホース内に挿入される部分の外周面にテーパ状環状突起が形成されている」という限りにおいて一致する。

したがって、両者の間に次の一致点及び相違点が認められる。
[一致点]
「ホースと、該ホースの少なくとも片端に取り付けられる継手とを有し、
該継手が、少なくとも上記ホースの端部内側に挿入されるノズルを有する継手付ホースにおいて、
上記ホースの最も内側が、ポリオレフィン系樹脂からなり、
上記ノズルには、上記ホース内に挿入される部分の外周面にテーパ状環状突起が形成されている継手付ホース。」

[相違点1]
「ポリオレフィン系樹脂」に関し、本願発明では、「ポリオレフィン系樹脂がポリエチレンを主体としたものからな」るのに対して、引用発明では、そのような特定はされていない点。

[相違点2]
「テーパ状環状突起」に関し、本願発明では、「テーパ状環状突起におけるエッジ部の角Rが0.03?0.1mmである」であるのに対して、引用発明では、そのような特定はされていない点。

第6 判断
1 相違点の検討
上記各相違点について検討する
(1)相違点1について
水道用配管や給水給湯用配管(冷温水輸送用の配管)等において、ホースの最も内側を、ポリエチレンを主体としたポリオレフィン系樹脂とすることは、本願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、特開2011-231899号公報(特に、段落0001、0012、0026及び図1)、特開2002-168378号公報(特に、段落0001、0014、0021及び図1)及び特許第4815039号(特に、段落0001、0020及び図1)を参照。)である。
そして、引用発明は、湯沸器、温水器等からの熱水及び温水の給水に用いられるものであるところ(引用文献1の段落0001)、周知技術1と引用発明は、水の輸送用配管という技術分野において共通するものであるから、引用用発明において、周知技術1を適用することにより、ホース本体1(ホース)の内面層1a(最も内側)を、ポリエチレンを主体としたポリオレフィン系樹脂で構成し、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
上記第4の2ないし4における(1)で摘記した引用文献2ないし4の各記載、並びに、引用文献2の技術事項、引用文献3の技術事項及び引用文献4の技術事項によれば、少なくとも片端に継手が取り付けられた樹脂製のホースにおいて、継手が有するノズルのホース内に挿入される部分の外周面に形成された突起のエッジ部を、ホースからノズルが抜けないようにするとともに、ホース内面を傷つけないようにするために、所定の寸法に設定された面取り部である角Rを設けることは、本願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術2」という。)である。
そして、引用発明と周知技術2とは、ホースと、該ホースの少なくとも片端に取り付けられる継手とを有する継手付きホースという技術分野において共通するものあるから、引用発明において、周知技術2を考慮し、複数条の突出部6(テーパ状環状突起)のエッジ部に、ホース本体1(ホース)からニップル3(ノズル)が抜けないようにするとともに、ホース本体1内面を傷つけないようにするために、所定の寸法に設定された角Rを設けることは、当業者にとって格別困難ではない。
ところで、本願発明の上記相違点2に係る構成の角Rの数値範囲は、低密度ポリエチレン樹脂とエチレン-オクテン共重合体を重量比90:10で混合した組成物を内層とし、低密度ポリエチレン樹脂とエチレン-オクテン共重合体を重量比90:10で混合しカーボンブラックを13重量部配合した組成物を外層とし、これら内層及び外層を同時押出成形した後、電子線照射架橋を行って得たホース1(本願明細書の段落0034)であって、本願明細書の段落0037の表1に実施例1ないし13として示される特定のホース内径、ホース外径、ホース肉厚、ホース内層密度、ホース内層融点を有するホース1を採用するとともに、本願の図2及び3に示すような形状を有し、ホース1内に挿入される部分の外周面にテーパ状環状突起3aと平坦部3bが形成されており、平坦部3bに連続して突当部3cが形成され、テーパ状環状突起3aは、最大外径となるエッジ部3eで段付となっており、エッジ部3eでの段付の角度αは90度、段付の高さhは0.45mm、テーパ角度βは5度であるノズル3(本願明細書の段落0034)であって、本願明細書の段落0037の表1に実施例1ないし13として示される特定のエッジ部外径、環状突起数、平坦部外径を有するノズル3を採用した場合において、ホース内面に傷が生じて耐久性が低下しないようにするとともに、継手抜けの発生や耐圧性の低下をきたさないようにする(本願明細書の段落0026)のに、実験的に好適とされた数値範囲を示したものである。
しかしながら、テーパ状環状突起におけるエッジ部の角Rについて、ホース内面に傷が生じて耐久性が低下しないようにするとともに、継手抜けの発生や耐圧性の低下をきたさないようにするのに好適な数値範囲は、ホース内径、ホース外径、ホース肉厚、ホース内層密度、ホース内層融点といった、ホースの各種寸法や最も内側の材質、及びノズルのエッジ部外径、環状突起数、テーパ状環状突起の形状等に応じて変化するものといえるから(例えば、ホースについて引用文献3の段落0024を参照。)、本願発明の上記相違点2に係る構成の角Rの数値範囲は、ホース内面に傷が生じて耐久性が低下しないようにするとともに、継手抜けの発生や耐圧性の低下をきたさないようにするのに好適な数値範囲として普遍的なものではなく、格別顕著な効果を奏するものとは認めることができない。
そうすると、引用発明において、周知技術2に基づいて突出部6のエッジ部に角Rを設けるに際し、その数値範囲を、ホース内径、ホース内面層1aの厚さや材質、突出部6の数や形状等の各種条件に応じて、ホースからノズルが抜けないようにするとともに、ホース内面を傷つけないように設定することにより、本願発明の数値範囲のものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。
よって、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、周知技術2に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

2 効果について
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明、周知技術1及び周知技術2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

3 請求人の主張について
請求人は、令和2年5月20日に提出された意見書において、「(3-3)考察
上記の通り、引用文献1は、ホース内面の材料が異なり、エッジ部の角Rの数値の記載もありません。本願発明は、この両者の組合せであるから成り立つものであり、ホース内面の材料が異なっていても、エッジ部の角Rの数値が異なっていても、特別の効果を得ることはできず、発明が成り立ちません。また、各引用文献をどのように組合せたとしても、このような本願発明の構成に到達することはできません。
審判官殿は、エッジ部の角Rの数値を設定することは単なる設計事項だとご指摘されましたが、エッジ部の角Rについて示唆している文献は、何れもホース内面がゴム系の材料であって、本願発明のようなポリエチレンを主体としたポリオレフィン系樹脂ではありません。そのこともあって、引用文献2には、『0.2mm以上のアール面(円弧面)を形成するのが一般的である』と、本願発明の数値から遠ざかる方向の記載がなされています。このような各引用文献の技術思考では、本願発明で規定する『テーパ状環状突起におけるエッジ部の角Rが0.03?0.1mm』という構成から遠ざかる一方となり、本願発明に到達することはできません。
・・・各引用文献には、エッジ部の角Rの数値は記載がほぼなく、記載があっても上記の通り、『0.2mm以上』と、本願発明の範囲から遠ざかるような記載になっています。これは即ち、本願発明におけるエッジ部の角Rの数値範囲について、当業者が全く予見できていなかったことを示しています。
この根拠として、本願発明の実施例(明細書の段落0037、表1)において、従来では一般的とされていた角R0.2mm以上の例について継手抜けが発生しており、不適とされています。この結果は、従来の常識とは反するものであり、本願発明におけるエッジ部の角Rの数値範囲について、当業者が全く予見できていなかったことを裏付けるとともに、本願発明における構成の特異性と特別な効果を示すものでもあります。」という主張をする。
しかしながら、上記(2)で述べたように、テーパ状環状突起におけるエッジ部の角Rについて、ホース内面に傷が生じて耐久性が低下しないようにするとともに、継手抜けの発生や耐圧性の低下をきたさないようにするには、ホース内径、ホース外径、ホース肉厚といった、ホースの各種寸法、及びノズルのエッジ部外径、環状突起数、テーパ状環状突起の形状等も考慮する必要があり、テーパ状環状突起におけるエッジ部の角Rとホースの最も内側の材質とを特定するのみでは十分とはいえないから、請求人の上記主張は採用することができない。

4 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-08-28 
結審通知日 2020-09-03 
審決日 2020-09-17 
出願番号 特願2014-166295(P2014-166295)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 弘  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 槙原 進
山崎 勝司
発明の名称 継手付ホース  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ