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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1368747
審判番号 不服2019-3153  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-06 
確定日 2020-12-15 
事件の表示 特願2017-523427「物質の弾性変形によるユーザ入力」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月19日国際公開、WO2016/077178、平成29年11月24日国内公表、特表2017-534988、請求項の数(26)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)11月6日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2014年11月11日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 5月23日付け 拒絶理由通知書
平成30年 8月27日 意見書、手続補正書の提出
平成30年11月 2日付け 拒絶査定(以下、「原査定」という。)
平成31年 3月 6日 審判請求書の提出
令和 2年 6月23日付け 拒絶理由通知書
令和 2年 9月29日 意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成30年11月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-26に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2008-27252号公報

第3 当審拒絶理由の概要
令和2年6月23日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-26に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
A.特開2006-133932号公報(当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願請求項1-26に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明26」という。)は、令和2年9月29日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-26に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-26は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
物質の弾性変形による入力のためのデバイスであって、
第1の形態サンプル及び第2の形態サンプルを含む弾性物質の形態を観測するセンサと、
少なくとも1つのプローブによる前記弾性物質への作用により生じる変化を確かめるよう前記第1の形態サンプル及び前記第2の形態サンプルを互いに比較するコンパレータと、
モデルを前記変化へ適用することによって出力を生成するフィルタと、
前記出力をユーザ入力パラメータに変換するアダプタと、
前記ユーザ入力パラメータに対応する当該デバイスのアクションを引き起こすユーザインターフェイスと
を有し、
前記センサ又は前記フィルタのうちの少なくとも1つは、前記弾性物質の複数の領域を識別するよう構成され、前記複数の領域の夫々での前記弾性物質の形態の変化から、各々の対応するユーザ入力パラメータが導出される、デバイス。
【請求項2】
前記物質は皮膚である、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記モデルは、前記変化が比較されるパターンを含み、
前記出力は、前記変化が前記パターンと閾範囲内で一致するかどうかに依存する、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記モデルは、前記パターンを含む複数のパターンを含み、
前記出力は、前記変化が前記複数のパターンのうちのどれと対応する閾範囲内で一致するかに更に依存する、
請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記センサ、前記コンパレータ、又は前記フィルタのうちの少なくとも1つは、意図的でない変形に対応する前記弾性物質の形態変化を無視するよう較正される、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
可撓性材料を有し、
前記センサは、前記弾性物質の形態変化が前記可撓性材料において反映されるように前記弾性物質に取り付けられた前記可撓性材料に組み込まれる、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
コンテキスト信号を受信するコンテキストセンサを有する
請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記センサは、前記コンテキスト信号が第1の状態にある場合に有効にされ、そうでない場合に無効にされる、
請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記コンテキスト信号は、他のデバイスについての近接測定である、
請求項7に記載のデバイス。
【請求項10】
物質の弾性変形による入力のための方法であって、
第1の形態サンプル及び第2の形態サンプルを含む弾性物質の形態をセンサにより観測することと、
少なくとも1つのプローブによる前記弾性物質への作用により生じる変化を確かめるようコンパレータにより前記第1の形態サンプル及び前記第2の形態サンプルを互いに比較することと、
モデルを前記変化へ適用することによって出力を生成するよう前記変化にフィルタをかけることと、
アダプタにより前記出力をユーザ入力パラメータに変換することと、
前記ユーザ入力パラメータに対応するデバイスのアクションを引き起こすことと
を有し、
前記弾性物質の複数の領域が、前記センサ又は前記フィルタのうちの少なくとも1つにより識別され、前記複数の領域の夫々での前記弾性物質の形態の変化から、各々の対応するユーザ入力パラメータが導出される、方法。
【請求項11】
前記物質は皮膚である、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記モデルは、前記変化が比較されるパターンを含み、
前記出力は、前記変化が前記パターンと閾範囲内で一致するかどうかに依存する、
請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記モデルは、前記パターンを含む複数のパターンを含み、
前記出力は、前記変化が前記複数のパターンのうちのどれと対応する閾範囲内で一致するかに更に依存する、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記センサ、前記コンパレータ、又は前記フィルタのうちの少なくとも1つは、意図的でない変形に対応する前記弾性物質の形態変化を無視するよう較正される、
請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記センサは、前記弾性物質の形態変化が可撓性材料において反映されるように前記弾性物質に取り付けられた前記可撓性材料に組み込まれる、
請求項10に記載の方法。
【請求項16】
コンテキスト信号を受信することを更に有し、
前記センサは、前記コンテキスト信号が第1の状態にある場合に有効にされ、そうでない場合に無効にされる、
請求項10乃至15のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記コンテキスト信号は、他のデバイスについての近接測定である、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
マシンによって実行される場合に、該マシンに、
第1の形態サンプル及び第2の形態サンプルを含む弾性物質の形態をセンサにより観測することと、
少なくとも1つのプローブによる前記弾性物質への作用により生じる変化を確かめるようコンパレータにより前記第1の形態サンプル及び前記第2の形態サンプルを互いに比較することと、
モデルを前記変化へ適用することによって出力を生成するよう前記変化にフィルタをかけることと、
アダプタにより前記出力をユーザ入力パラメータに変換することと、
前記ユーザ入力パラメータに対応するデバイスのアクションを引き起こすことと
を有し、
前記弾性物質の複数の領域が、前記センサ又は前記フィルタのうちの少なくとも1つにより識別され、前記複数の領域の夫々での前記弾性物質の形態の変化から、各々の対応するユーザ入力パラメータが導出される、動作を実施させる命令を含むプログラム。
【請求項19】
前記物質は皮膚である、
請求項18に記載のプログラム。
【請求項20】
前記モデルは、前記変化が比較されるパターンを含み、
前記出力は、前記変化が前記パターンと閾範囲内で一致するかどうかに依存する、
請求項18に記載のプログラム。
【請求項21】
前記モデルは、前記パターンを含む複数のパターンを含み、
前記出力は、前記変化が前記複数のパターンのうちのどれと対応する閾範囲内で一致するかに更に依存する、
請求項20に記載のプログラム。
【請求項22】
前記センサ、前記コンパレータ、又は前記フィルタのうちの少なくとも1つは、意図的でない変形に対応する前記弾性物質の形態変化を無視するよう較正される、
請求項18に記載のプログラム。
【請求項23】
前記センサは、前記弾性物質の形態変化が可撓性材料において反映されるように前記弾性物質に取り付けられた前記可撓性材料に組み込まれる、
請求項18に記載のプログラム。
【請求項24】
前記動作は、コンテキスト信号を受信することを更に有し、
前記センサは、前記コンテキスト信号が第1の状態にある場合に有効にされ、そうでない場合に無効にされる、
請求項18乃至23のうちいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項25】
前記コンテキスト信号は、他のデバイスについての近接測定である、
請求項24に記載のプログラム。
【請求項26】
請求項18乃至25のうちいずれか一項に記載のプログラムを記憶しているマシン読出可能な媒体。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献Aについて
引用文献Aには、図面とともに次の事項が記載されている。

「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置に関するものであり、特に指示器により入力を行う入力装置に関するものである。」

「【0023】
[構造説明:図1?図9]
まず、本発明の入力装置の構成を図1から図9を用いて説明する。
図1において、1は皮膚張力検出手段、2は処理手段である。
【0024】
図2において、3は腕時計、4は指示器である。図2に示す使用形態は、本発明の入力装置を腕時計に搭載した場合を例にしている。腕時計3は左手の手首に装着している。指示器4は右手である。図2においては、指示器4を右手として記載しているが、これに限定するものではない。指示器とは、指やスタイラスや指示棒などを含む包括的な概念であり、皮膚を指示することができるものならば何でもかまわない。
【0025】
図3において、5は歪み検出素子、18は弾性層である。歪み検出素子5は歪みゲージを用いることができる。弾性層18は、例えば、ゴムである。弾性層18は、適度な弾性を持ち、皮膚の伸縮に伴い変形する。したがって、その材質はゴムに限定されず、弾性力を有する材質であれば何でもかまわない。
【0026】
図4において、6はブリッジ抵抗、7は電源、19は参照抵抗、20は増幅器、21はA/D変換器、22はホイートストンブリッジ出力信号である。
【0027】
図5において、8は反響枠である。
【0028】
図6において、9は超音波発射手段、10は超音波受信手段である。81は反響枠8を構成する高さの低い面である。
【0029】
図7において、11は超音波発射波形、12は第1の超音波受信波形、13は第2の超音波受信波形である。
【0030】
図8において、14は音波発射手段、15は振動検出手段である。
【0031】
図9において、16はパーソナルコンピュータ、17は照明装置である。
【0032】
なお、図1から図9において同一の構成には同一の番号を付与している。
【0033】
[原理説明:図1、図2]
まずはじめに、本発明の入力装置の情報入力と検出との基本原理を図1、図2を用いて説明する。
本発明の入力装置は、指示器により人体の皮膚を伸縮させたときの皮膚の張力を検出し、これに基づきさまざまな情報を入力するものである。
【0034】
図1に示すように、本発明の入力装置は、皮膚張力検出手段1を有し、これにより、X方向とY方向とのうちの少なくとも1つの方向の皮膚の張力を検出する。処理手段2は、皮膚張力検出手段1の出力より必要な情報を算出する。
X方向の張力をFx、Y方向の張力をFyとすれば、指示器により皮膚を引張られた方向はtan^(-1)(Fy/Fx)、皮膚を引張られた強さは(Fx^2+Fy^2)^(1/2)と計算することができる。また、処理手段2は、メモリなどの記憶手段を内蔵し、皮膚張力のパターンと特定の処理をテーブル形式で記憶しておき、検出された皮膚張力に対応した処理を実行してもよい。
【0035】
さらに、本発明の入力装置を利用する使用者の皮膚の状態を予め登録しておくこともできる。つまり、皮膚を伸縮しないときの初期の皮膚の状態を記憶しておくのである。情報を入力するために皮膚を伸縮した際に、記憶した初期の皮膚の状態と比較することによって、情報の入力の際の誤入力を低減することができる。これによって、使用者の皮膚の状態、例えば、皮膚の傷や皺や体毛などの人体特徴に関わる誤入力を排除することができる。
【0036】
図2は、本発明の入力装置の使用形態の一例を示す模式図である。図2は、腕時計3に本発明の入力装置を搭載した場合である。腕時計3を装着した左手の甲の皮膚を、指示器4である右手の指で伸縮させることによって、この皮膚の張力を検出し、情報を入力することができる。指示器4が指であるため、自然な動作で容易に入力を行うことができる。
指示器4である指によって左手の甲の皮膚を伸縮させる方向は、どのような方向であってもかまわない。一方向に皮膚を伸ばしても、他方向に縮めてもかまわない。必要なことは、左手の甲の皮膚を伸縮するか凹凸を付けるかして、通常とは異なる皮膚表面の状態を作り出せばよいのである。
【0037】
[動作説明:図3、図4]
次に、本発明の入力装置の皮膚張力検出手段の第1の実施例を図3、図4を用いて説明する。図2に示すように、本発明の入力装置を腕時計3に搭載した場合を用いて説明する。
【0038】
図3は本発明の入力装置の皮膚張力検出手段の第1の実施例を示す図であり、腕時計3の裏側(人体への装着面)を示したものである。弾性層18は、適度な弾性を持ち、皮膚の伸縮に伴い変形する。歪み検出素子5はX方向、Y方向に配置され、各方向の歪みを検出する。歪み検出素子5には歪みに応じて抵抗値が変化する歪みゲージが使用され、歪みゲージの抵抗値は、図4に示す抵抗値検出回路30によって検出される。
【0039】
図4に示すように、抵抗値検出回路30は、検出すべき歪み検出素子5の抵抗と2つのブリッジ抵抗6と参照抵抗19とで、一般にホイートストンブリッジ回路として知られている回路を形成し、さらに、そのホイートストンブリッジ回路に増幅器20を組み入れた構成となっている。
【0040】
今、検出すべき歪み検出素子5の抵抗をR1、ブリッジ抵抗6をR、参照抵抗19をRref、電源7の電圧をEとする。増幅器20は反転増幅回路になっており、2つのブリッジ抵抗6は抵抗値が等しいため、増幅器20は電源7の電圧をマイナス1倍した電圧を出力する。したがって、R1とRrefとの直列回路に2Eの電圧が印加されることになり、ホイートストンブリッジ出力信号22は次の式で表される電圧となる。
E(Rref-R1)/(Rref+R1) (式1)
式1においてEとRrefとは既知であるため、R1は計算により求めることができる。最終的に、ホイートストンブリッジ出力信号22は、A/D変換器21によってディジタル化され、抵抗値検出回路30の出力となる。
【0041】
上述の説明は、図3に示すX方向用とY方向用の歪み検出素子5のどちらかの抵抗R1を求める方法である。図4には図示しないが、ホイートストンブリッジ回路を構成するR1を、X方向用の歪み検出素子5の抵抗とするかY方向用の歪み検出素子5の抵抗とするかを切り換える切換手段を設けている。もちろん、X方向とY方向との抵抗R1を求めるために、この切換手段を用いることなく、X方向用の抵抗値検出回路30とY方向用の抵抗値検出回路30とを独立して設けてもかまわない。
以上の説明のように、歪み検出素子5の抵抗値より、皮膚の張力を検出することができる。」

「【0050】
[動作説明:図2、図9]
次に、本発明の入力装置の応用形態を図2、図9を用いて説明する。
図2に示すように、腕時計3に本発明の入力装置を応用した場合、腕時計3を装着した手の甲の皮膚を、他方の手の指である指示器で伸縮させるという自然な動作で容易に情報の入力を行うことができる。特に近年の時計の多機能化に対応したさまざまな入力、例えば、メニュー選択、ストップウォッチ機能の起動や停止などに対して効果的である。
【0051】
また、処理手段2に通信機能を搭載することもできる。これによって、図9(a)に示すように、パーソナルコンピュータ16に対し情報の入力を行うことができる。特に無線の通信機能を使うことによって、離れた所から自由な姿勢で、あるいは歩き回りながら入力することができる。また、図9(b)のように、高い場所に設置してある照明装置17のオン、オフあるいは明るさの調節などを離れた所から制御できる。
【0052】
本発明の実施の形態では、本発明の入力装置を手首に装着する腕時計型のものを例にして説明したが、もちろん、これに限定されるものではない。
本発明の入力装置を携帯電話やPDA(Personal Data Assistance)などに代表される小型の携帯機器に用いることができる。本発明の入力装置は、皮膚が伸縮する方向を選ばないため、皮膚表面にさまざまな凹凸を作ることも、皮膚を強く張ることも情報の入力に用いることができる。このため、皮膚を伸縮させることにより直接文字情報を入力させることもできる。この場合、予め皮膚張力のパターンと特定の文字情報とをテーブル形式で記憶しておき、検出された皮膚張力に対応した文字を入力することができる。これによって、キーボードを打ち込んで文字を入力するなどの手間が省けるという効果がある。」

したがって、上記引用文献Aには次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「腕時計3を装着した左手の甲の皮膚を、指示器4である右手の指で伸縮させることによって、この皮膚の張力を検出し、情報を入力する腕時計3であって、
皮膚の状態を検出するために、適度な弾性を持ち、皮膚の伸縮により変形する弾性層18と、弾性層18のX方向、Y方向に配置され、各方向の歪みを検出する歪み検出素子5を備え、
皮膚を伸縮しないときの初期の皮膚の状態を記憶しておき、
情報を入力するために、皮膚を伸縮し、皮膚表面にさまざまな凹凸を作り、または皮膚を強く張った際に検出した皮膚の状態と、記憶した初期の皮膚の状態を比較することにより、皮膚の張力を検出し、
検出した皮膚の張力により、メニュー選択、ストップウォッチ機能の起動や停止などを行う、
腕時計3。」

2 引用文献1について
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者が所定の部位に装着して動かすことで対応する操作信号を操作対象に対して出力できる操作信号出力装置及び操作システムに関する。」

「【0061】
図1は、本実施形態による操作信号出力装置を含む操作システムの全体構成を表す説明図である。
【0062】
図1において、このシステムは、操作者Mの身体の所定の装着部位(この例では手首2)に装着して用いられる操作信号出力装置100と、この例では操作者Mの腰3にベルト4を介し保持され、例えばCPU等の演算装置を備えた制御装置200と、眼鏡のように操作者Mの耳5から鼻6にかけて装着される表示装置300(ヘッドマウントディスプレイ)とを有している。
【0063】
図2は、上記操作信号出力装置100の詳細構造を表す斜視図であり、図3は、図2中A方向から見た矢視図である。
【0064】
これら図2及び図3において、操作信号出力装置100は、略円環状の形状を備え、操作者Mの手首2に(後述するように回転可能に多少の間隙を空けて)装着されるリング本体105(装着手段)を有している。このリング本体105(この例では径方向内周側)には、所定の照射光を発光する少なくとも1つ(この例では4個)のLED(発光手段)101,102,103,104と、これに対応した少なくとも1組(この例では4組)の受光素子(受光手段。例えばフォトダイオード、フォトトランジスタ、CCD、CMOSセンサ等)106a?d,107a?d,108a?d,109a?dとが設けられ、さらにリング本体105(この例では径方向外周側)には上記LED101?104及び受光素子106?109を制御するとともに所定の検出処理(詳細は後述)を行う、例えばCPU等の演算装置で構成される検出コントローラ110と、操作者Mの体格差による手首2の太さの違いに対応するために例えば伸縮構造としたサイズ調整部111とが設けられている。
【0065】
LED101,102,103,104からの照射光としては、例えば、波長が可視光帯域より近赤外光帯域までに含まれる光を発光するようにすることができる。近赤外光は、生体組織に対して比較的高い透過性をもつ一方、生体組織内のヘモグロビンは近赤外光域で特徴的な吸収スペクトルを有している。したがって、LED101?104から近赤外光域の照射光を発光することにより、操作者Mの操作部位の動作に伴う装着部位の組織(例えば指の動きに伴う手首部分)での散乱の変化や血流分布の変化を受光素子106a?d,107a?d,108a?d,109a?dでの近赤外光の受光挙動により検出することができる。
【0066】
また、近赤外光から離れた可視光のうち緑や青色の波長は、皮膚で反射・散乱する性質を備えていることから、LED101?104から緑や青色波長の照射光を発光することにより、操作者Mの動作に伴う操作部位の皮膚表面の形状変化を受光素子106a?d,107a?d,108a?d,109a?dでのそれら可視光の受光挙動(受光感度変化)により検出することができる。
【0067】
またこのときのLED101?104の発光挙動としては、各LEDで、近赤外光帯域に含まれる同一の照射光をそれぞれ発光するようにしてもよい。この場合、単一波長の照射光を用いることにより、LEDを複数種類用意する必要が無くなり、製造コストの低減や制御の簡素化を図ることができる。あるいは、それらLED101?104のうち少なくとも1つを近赤外光帯域に含まれる波長としつつ、それら全体としては複数波長の照射光を発光するようにしてもよい。このように複数波長の照射光を用いることにより、主として生体組織の透過性を利用した検出や、主として皮膚での反射・散乱を利用した検出を併せて用いることができるので、さらに精度の高い受光検出を行うことができる。
【0068】
また、複数の波長を発光するLED、すなわち、近赤外光発光LEDと可視光発光LEDを一つのLEDパッケージに納めたLEDを複数用いても良い。また、LEDに代えて、レーザーダイオード(LD)を用いても良い。
【0069】
リング本体105は、上記4個のLED101?104を周方向に(この例では等間隔に)配設しており、これによってそれらLED101?104から発光された照射光を操作者Mの人体の一部(この例では手首2)に照射するように、装着される。このとき、受光素子106a?d,107a?d,108a?d,109a?dは上記LED101,102,103,104の配置に対応して設けられ、操作者Mの人体の一部(この例では手首2)に対しLED101?104から照射された照射光の照射部位における散乱光(あるいは透過光。詳細は後述)を受光するようになっている。これらの結果、LED101?104及び受光素子106a?d,107a?d,108a?d,109a?dは、リング本体105に対し略円環状に配置されている。またこのとき、発光側LEDと対応する受光素子とからなる発光・受光手段グループ、すなわち、LED101及び受光素子106a?dと、LED102及び受光素子107a?dと、LED103及び受光素子108a?dと、LED104及び109a?dとは、各グループ同士、互いに回転対称位置となるように配置されている。
【0070】
図4(a)及び図4(b)はこのような照射光の受光挙動の一例を表す図である。図4(a)に示す例では、LED101から照射された照射光の手首2における透過散乱光が、当該LED101に対し手首2を挟んで対向するように配置される受光素子106a?d,109a?d等で受光される様子を表している(主として手首2の血管の動きを検出)。図4(b)に示す例では、LED103から照射された照射光の手首2における反射散乱光が、当該LED103の周方向近傍部分に配置される受光素子106a,106b,109d,109c等で受光される様子を表している(主として手首2の皮膚表面の動きを検出)。
【0071】
上記図4(a)及び図4(b)に例を示したように、本実施形態では、LED101,102,103,104の少なくとも1つから照射された照射光の手首2における透過散乱光又は反射散乱光を対応する受光素子106a?d,107a?d,108a?d,109a?dで受光し、その受光結果のパターンによって操作者Mの手の姿勢やその姿勢の変化を検出するものである。
【0072】
図5は、上記手の姿勢変化の検出手法を概念的に表した図であり、横軸に時間、縦軸に概念的な検出受光強度をとって表している。図5において、この例では、理解の容易化のために、操作者Mが手でジャンケンの「グー」「チョキ」「パー」の3つの姿勢をとったときの受光挙動を概念的に表している。
【0073】
すなわち、図中「O」の時間においては操作者Mは特に何の操作もしていない自然な状態を表しており、図中「A」の時間においては5指をすべて伸長させたいわゆる「パー」の状態を表しており、図中「B」の時間においては上記「パー」の状態から親指、薬指、小指を手のひら側に折り畳んだいわゆる「チョキ」の状態を表しており、図中「C」の時間においては上記「チョキ」の状態からさらに人差し指、中指も手のひら側に折り畳んだいわゆる「グー」の状態を表している。このような各指の動きにより操作者Mの手首2の筋肉や血管等の位置や状態が連動して変化することで、前述した透過散乱光や反射散乱光の挙動が変化し、この結果、受光素子ア?エ(受光素子106a?d,107a?d,108a?d,109a?dのいずれか)における各受光強度が図示のように時間的に変化し、この変化パターンを所定の手法で解析することにより、上記操作者Mの手の姿勢又はその変化を検出することができる。なお、上記受光強度の大きさを見る代わりに、例えばパルス光を照射してその減衰値を検出するようにしてもよい。」

「【0077】
図7は、検出制御部120が実行する制御手順の一例を表すフローチャートである。図7において、まず、ステップS5で、タイマTMのカウントを開始する。
【0078】
その後、ステップS10に移り、複数個(この例では4個)のLED及びこれに対応した複数組(この例では4組)の受光素子の発光・受光順序を規定するための変数i=1に初期化しその最大値をこの例ではimax=4とするとともに、モードフラグ(操作モードであるか装着位置検出モードであるかを表すフラグ。詳細は後述)FP=0に初期化し、また操作フラグ(操作モードにおいて操作入力中であるか操作開始指示待ちであるかを表すフラグ。詳細は後述)FI=0に初期化する
【0079】
その後、ステップS15に移り、i番目のLED101?104に対応するLED駆動回路121,125,128,131に制御信号を出力し、当該LED101?104を発光開始させる。このとき、この例では先の図6に示したように、各LED101?104は互いに波長が異なるもの2個(前述の例では可視光LEDと近赤外光LED)が1組として、第1及び第2LED101a(図6中「LED1A」で表す),101b(図6中「LED1B」で表す)、第1及び第2LED102a(図6中「LED2A」で表す),102b(図6中「LED2B」で表す)、第1及び第2LED103a(図6中「LED3A」で表す),103b(図6中「LED3B」で表す)、第1及び第2LED104a(図6中「LED4A」で表す),104b(図6中「LED4B」で表す)が備えられている。このステップS15では、そのうちi番目の第1LED101a,102a,103a,104aのうち対応するもの(最初はi=1であるからLED101a)を発光させる。
【0080】
その後、ステップS20に移り、上記ステップS15の第1LED101a,102a,103a,104aの発光による各受光素子106a?d,107a?d,108a?d,109a?dでの受光結果信号SposiAを取り込む(そして適宜の記憶手段に一時的に保存する)。すなわち、切り換えスイッチ123を切り替えながら受光素子106a,106b,106c,106dにおける受光信号をA/D変換器122を介し順次取り込み、切り換えスイッチ126を切り替えながら受光素子107a,107b,107c,107dにおける受光信号をA/D変換器125を介し順次取り込み、切り換えスイッチ129を切り替えながら受光素子108a,108b,108c,108dにおける受光信号をA/D変換器128を介し順次取り込み、切り換えスイッチ132を切り替えながら受光素子109a,109b,109c,109dにおける受光信号をA/D変換器131を介し順次取り込む(したがってこの例では1つの第1LED101a,102a,103a,104aの発光に対し16個の受光信号を取り込むこととなる)。
【0081】
その後、ステップS25に移り、上記ステップS15で発光開始させたi番目のLED101?104に対応するLED駆動回路121,125,128,131に制御信号を出力し、当該第1LED101a,102a,103a,104aの発光を停止させる。
【0082】
その後、ステップS30に移り、上記ステップS15と同様、LED駆動回路121,125,128,131に制御信号を出力し、i番目の第2LED101b,102b,103b,104bのうち対応するもの(最初はi=1であるからLED101b)を発光開始させる。
【0083】
そして、ステップS35において、上記ステップS20と同様、上記ステップS30の第2LED101a,102a,103a,104aの発光による各受光素子106a?d,107a?d,108a?d,109a?dでの受光結果信号SposiBを、切り換えスイッチ123,126,129,132を順次切り替えながらA/D変換器122,125,128,131を介し順次取り込む(前述と同様1つの第2LED101b,102b,103b,104bの発光に対し16個の受光信号を取り込み、適宜の記憶手段に一時的に保存する)。
【0084】
その後、ステップS40に移り、上記ステップS30で発光開始させたi番目のLED101?104に対応するLED駆動回路121,125,128,131に制御信号を出力し、当該第2LED101b,102b,103b,104bの発光を停止させる。
【0085】
そして、ステップS45において、iの値がimax(この例ではi=4)になったかどうかを判定する。i<imaxである場合はこの判定が満たされず、ステップS50でiの値に1を足して(言い換えればLEDの順番を次のものに変えて)、ステップS15へ戻り、ステップS15?ステップS45において同様の第1LED101a,102a,103a,104a及び第2LED101b,102b,103b,104bの発光及び受光素子106a?d,107a?d,108a?d,109a?dでの受光を繰り返す。
【0086】
上記のように発光及び受光を繰り返し、i=4である第1LED104a及び第2LED104bの発光及び受光素子106a?d,107a?d,108a?d,109a?dでの受光が終了したら、ステップS45における判定が満たされ、ステップS55に移る。なおこのとき、ステップS45からステップS50を経てステップS15に戻るとき、所定の時間間隔をおいてループ毎に順次時間差発光するようにしてもよい(時間差発光制御手段)。このように同一発光を行わず時間差をもって順次発光させることにより、受光素子106a?d,107a?d,108a?d,109a?dで受光した照射光の分離処理等が不要となり、処理・制御の簡素化や製造コストの低減等を図ることができる。
【0087】
ステップS55では、上記モードフラグFP=0であるかどうかを判定する。最初は上記ステップS10においてFP=0となっているから判定が満たされ、ステップS200に移る。
【0088】
ステップS200では、上記のようにしてステップS15?ステップS40を(この例では)4回繰り返すことで取り込んだ受光パターンと、上記装着位置パターンメモリ140に記憶されたパターンとの照合に基づき(詳細は後述)、手首2に装着されたリング本体105の相対位置(手首2まわりの回転方向位置)を検出する装着位置検出処理を実行し、回転方向における装着位置(装着角度)θko(詳細は後述)を決定する。
【0089】
ステップS200でリング本体105の装着位置の検出処理が完了したら、ステップS60でモードフラグFPを操作モードであるFP=1にし、ステップS15へ戻る。そして、前述と同様にして再びステップS15?ステップS40を4回繰り返すことで受光結果を取り込んだ後、FP=1であるからステップS55での判定が満たされなくなり、ステップS65に移る。
【0090】
ステップS65では、上記操作フラグFI=0であるかどうかを判定する。最初は先のステップS10で初期化された状態のままFI=0であるから判定が満たされ、ステップS300へ移る。
【0091】
ステップS300では、上記のようにしてステップS15?ステップS40を(この例では)4回繰り返すことで取り込んだ受光パターンと、上記開始パターンメモリ150に記憶されたパターンとの照合に基づき(詳細は後述)、操作者Mによる(この例では指の)操作が、操作開始を意図するものであるかどうかを検出する操作開始指示検出処理を実行する。
【0092】
その後、ステップS70に移り、指示の認識・未認識を表すフラグGが1であるかどうかを判定する。ステップS300において操作開始指示を認識していればG=1となっている(後述の図10のステップS330参照)ことから判定が満たされ、ステップS75で操作フラグFIを操作入力中であることを表す1とし、ステップS105へ移る。ステップS300において操作開始指示が未認識であればG=0となっている(後述の図10のステップS325参照)ことから判定が満たされず、そのままステップS105へ移る。このように、操作開始を意図するものであるか検出することにより、通常の指の動きを検知して、意図しない操作入力指示を出して、対象を誤動作させたりする危険がなくなる。また、所定の操作を検出したときのみ操作入力が可能となるので、必要なときのみ操作入力を行い、その他のときに、意図しない操作をするのを未然に防ぐことができる。
【0093】
ステップS105では、上記ステップS5でのタイマTMでの計時開始後、予め定められた所定時間(例えばこの時間が経過したらそれまでのすべての受光結果をリセットして装着位置の検出からやり直すべきものとする時間)を経過したかどうかを判定する。当該時間が経過するまでは判定が満たされず、ステップS15に戻って同様の手順を繰り返す。ステップS300における操作開始指示が未認識でありG=0のままである場合、このステップS105→ステップS15?ステップS40の4回繰り返し→ステップS55→ステップS65を経てステップS330において再び操作開始指示の検出を行い、上記所定の時間が経過しない間は操作開始指示が認識されG=1となるまでこれらの手順を繰り返す。
【0094】
操作開始指示の認識によりG=1となった場合はステップS75でFI=1となっていることから、上記のようにしてステップS15に戻りステップS15?ステップS40の4回繰り返し→ステップS55を経てステップS65の判定が満たされず、ステップS400に移る。
【0095】
ステップS400では、上記のようにしてステップS15?ステップS40を(この例では)4回繰り返すことで取り込んだ受光パターンと、上記停止パターンメモリ160に記憶されたパターンとの照合に基づき(詳細は後述)、操作者Mによる(この例では指の)操作が、操作停止を意図するものであるかどうかを検出する操作停止指示検出処理を実行する。
【0096】
その後、ステップS80に移り、指示の認識・未認識を表すフラグGが1であるかどうかを判定する。ステップS400において操作停止指示が未認識であればG=0となっている(後述の図11のステップS425参照)ことから判定が満たされず、ステップS90へ移る。
【0097】
ステップS90では、操作開始指示後操作停止指示前に上記ステップS15?ステップS40の4回繰り返しによってi=1?imax(この例では4)について取得した受光結果信号SposiA及びSposiBを、操作者Mの操作意図に対応した本来の操作動作であるとみなして、上記ステップS200で検出した装着角度θkoだけ回転させるように補正し、受光補正信号を生成する。
【0098】
その後、ステップS95において、無線通信制御部190に制御信号を出力し、上記ステップS90で生成した受光補正信号を無線通信により制御装置200へと送信し、ステップS105へと移る。
【0099】
一方、前述のステップS80において、ステップS400で操作停止指示を認識していればG=1となっている(後述の図11のステップS430参照)ことから判定が満たされ、ステップS85で操作フラグFIを操作開始指示待ちであることを表す0に戻し、ステップS105へ移る。このように、操作停止指示を出すことにより、入力以外のことを指の動きで行いたい場合など、同時に誤った操作を入力してしまう(意図しない受光補正信号を制御装置へ送ることによる、意図しない操作信号を出してしまう)恐れがなくなる。
【0100】
ステップS105では、前述の所定の時間が経過するまでは判定が満たされず、ステップS15に戻って同様の手順を繰り返す。そして、ステップS105→ステップS15?ステップS40の4回繰り返し→ステップS55を経て、ステップS65の判定が満たされてステップS330において再び操作開始指示の検出を行い、上記所定の時間が経過しない間は再び操作開始指示が認識されるまでこれらの手順を繰り返す。
【0101】
なお、以上のようなステップS15?ステップS105の手順を繰り返すうち、タイマTMによる前述の計時が上記所定の時間となったら、ステップS105の判定が満たされ(=タイムオーバー)、ステップS110に移ってタイマTMへ制御信号を出力して計時をリセット(初期化)した後、装着位置の検出からやり直すためにステップS115でモードフラグFP=に戻し、ステップS15に戻って同様の手順を繰り返す。こうすれは、操作動作に伴い、操作信号出力装置が装着部位の周りで回転する等、装着位置が変化していくので、定期的に装着位置を検出することにより、装着部位に密着固定させることによる装着者に不快感を与えることなく、精度の高い操作動作検出を行うことができる。
【0102】
次に、上記ステップS200における装着位置検出処理について説明する。本実施形態では、操作者Mの手首2の所定の状態(例えば手のひらの力を抜いて最も自然にしたときの状態)においてLED101?104からの照射光の受光素子106a?d,107a?d,108a?d,109a?dでの受光信号の分布(受光パターン)を1つの指標とし、手首2まわりのリング本体105の回転により上記受光信号分布がどれだけ回転した状態にあるかを、装着位置パターンメモリ140に記憶した受光パターンテーブルと照合して検出する。」

「【0128】
図13は、制御装置200全体が実行する制御手順の一例を表すフローチャートである。図13において、まず、ステップS505において、入力信号生成制御部210で、無線通信制御部240を介し、操作信号出力装置100に備えられた無線通信制御部190からの無線信号データの伝送があったかどうかを判定する。データ伝送があった場合には判定が満たされ、ステップS510に移る。
【0129】
ステップS510では、入力信号生成制御部210で、操作者Mの操作意図に対応した、操作開始指示後操作停止指示前に前述のステップS15?ステップS40の4回繰り返しによって取得され(=SposiA及びSposiB)さらに装着角度θko補正を施された受光補正信号を、上記ステップS505で受信した操作信号出力装置100からの無線信号データの中から抽出取得し、適宜のメモリに格納蓄積する。
【0130】
その後ステップS515に移り、入力信号生成制御部210で、上記ステップS510で取得したデータが所定数(例えば操作者Mの手による1操作態様を構成するのに十分な手の姿勢の数)だけ蓄積されたかどうかを判定する。蓄積データ数が当該所定数未満である場合には判定が満たされず、ステップS505に戻って同様の手順を繰り返す。蓄積データが所定数に達した場合にはステップS515の判定が満たされ、ステップS520へ移る。
【0131】
ステップS520では、受光パターン解析部230で、操作者の手の姿勢を特定するための上記受光パターンメモリ220に格納された受光パターン(基準姿勢受光パターン)を参照しつつ、その基準姿勢受光パターンと、操作信号出力装置100から入力した操作信号に基づく受光パターンとを比較することにより、操作者Mの手の姿勢(例えば「グー」、「チョキ」、「パー」のいずれかである等)を解析する。さらに、その操作者Mの手の姿勢の複数の解析結果を用いて、その連続性に基づき、操作者Mの操作態様(操作意図「グー→チョキ→パー」等)を解析する。
【0132】
その後、ステップS525に移り、入力信号生成制御部210で、上記ステップS520で解析した操作者Mの操作態様を元に、対応する操作信号(例えば「ファイル開く」「次ページ表示」等)を生成する。
【0133】
そして、ステップS530において、外部入出力インターフェイス250で、上記ステップS525で生成した操作信号を表示装置300(ヘッドマウントディスプレイ)へ無線通信により出力し、ステップS505へ戻って同様の手順を繰り返す。」

「【0163】
(4)姿勢解析も操作信号出力装置100側で行う場合
以上においては、操作信号出力装置100側では、操作開始指示及び操作停止指示の検出と受光信号の回転位置補正のみを行い、操作者Mの操作意図に対応した手首2における透過散乱光や反射散乱光の挙動を反映した受光信号に基づく、操作者Mの手指の姿勢解析は制御装置200側で行うようにした。しかしながら、このような姿勢解析機能その他についても、制御装置200側でなく操作信号出力装置100で行うようにしても良い。
【0164】
図19は、この変形例における制御系を表す機能ブロック図であり、上述の図6や図12に対応する図である。図6及び図12と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。図19に示す検出コントローラ110には、上記実施形態において制御装置200側に備えられていた、各操作態様における操作者Mの操作部位(手指等)の姿勢に対応した基準姿勢受光パターンを格納保持した上記受光パターンメモリ220と、操作者の操作態様(意図)を解析する受光パターン解析部230(学習処理部231は図示省略)と、操作信号出力装置100以外の外部機器(表示装置300等)へ無線通信を行うための上記外部入出力インターフェイス(I/F)250とが設けられている。
【0165】
本変形例では、制御装置200の入力信号生成制御部210の機能を兼ねる検出コントローラ110の検出制御部120及びその他各部が、図13に示すフローチャートと同等の制御手順を実行する。すなわち、ステップS505と同等の手順(以下、単にステップS505のように示す)において、検出制御部120で受光信号データの入力(又は蓄積)があったかどうかを判定する。データ入力又は蓄積があった場合には判定が満たされ、ステップS510で、検出制御部120で、操作者Mの操作意図に対応した、操作開始指示後操作停止指示前に前述のステップS15?ステップS40の4回繰り返しによって取得され(=SposiA及びSposiB)さらに装着角度θko補正を施された受光補正信号を、上記ステップS505で識別した信号データの中から抽出取得し、適宜のメモリに格納蓄積する。
【0166】
その後ステップS515に移り、検出制御部120で、上記ステップS510で取得したデータが所定数(例えば操作者Mの手による1操作態様を構成するのに十分な手の姿勢の数)だけ蓄積されたかどうかを判定し、蓄積データが所定数に達した場合にはステップS520へ移り、受光パターン解析部230で、操作者の手の姿勢を特定するための上記受光パターンメモリ220に格納された受光パターン(基準姿勢受光パターン)を参照しつつ、その基準姿勢受光パターンと、上記蓄積された操作信号に基づく受光パターンとを比較することにより、操作者Mの手の姿勢(例えば「グー」、「チョキ」、「パー」のいずれかである等)を解析する。さらに、その操作者Mの手の姿勢の複数の解析結果を用いて、その連続性に基づき、操作者Mの操作態様(操作意図「グー→チョキ→パー」等)を解析する。
【0167】
その後、ステップS525に移り、検出制御部120で、上記ステップS520で解析した操作者Mの操作態様を元に、対応する操作信号(例えば「ファイル開く」「次ページ表示」等)を生成し、ステップS530において、外部入出力インターフェイス250で、上記ステップS525で生成した操作信号を表示装置300(ヘッドマウントディスプレイ)へ無線通信により出力し、ステップS505へ戻って同様の手順を繰り返す。
【0168】
以上において、検出制御部120が実行する図13のフローのステップS525が、補正手段で補正された受光パターンに基づき、操作者の操作部位の姿勢又はその姿勢の変化態様を算出する姿勢算出手段を構成する。また、ステップS520が、操作者の操作部位の所定の基準姿勢に対応した生体情報分布に応じて設定された基準姿勢受光パターンと、補正手段で補正された受光パターンとを比較する姿勢検出用比較手段を構成する。
【0169】
本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得る。また、制御装置200の機能を操作信号出力装置100側に兼ね備えることにより、制御装置200が不要となり、操作者Mの装着負担や操作労力を低減することができる。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 引用発明は「腕時計3を装着した左手の甲の皮膚を、指示器4である右手の指で伸縮させることによって、この皮膚の張力を検出」するから、引用発明の「腕時計3を装着した左手の甲の皮膚」は、本願発明1の「物質」に相当する。そして、引用発明の「腕時計3を装着した左手の甲の皮膚」は「指示器4である右手の指で伸縮させることによって」弾性変形するといえる。そうすると、引用発明の「腕時計3を装着した左手の甲の皮膚を、指示器4である右手の指で伸縮させることによって、この皮膚の張力を検出し、情報を入力する腕時計3」は、本願発明1の「物質の弾性変形による入力のためのデバイス」に相当する。

イ 引用発明の「皮膚を伸縮しないときの初期の皮膚の状態」及び「情報を入力するために、皮膚を伸縮し、皮膚表面にさまざまな凹凸を作り、または皮膚を強く張った際に検出した皮膚の状態」は、本願発明1の「第1の形態サンプル」及び「第2の形態サンプル」に相当する。

ウ 引用発明の「歪み検出素子5」は、本願発明1の「弾性物質の形態を観測するセンサ」に相当する。

エ 引用発明の「指示器4である右手の指」は、本願発明1の「少なくとも1つのプローブ」に相当する。

オ 引用発明は、「情報を入力するために、皮膚を伸縮し、皮膚表面にさまざまな凹凸を作り、または皮膚を強く張った際に検出した皮膚の状態と、記憶した初期の皮膚の状態を比較」しているから、このことは、本願発明1の「少なくとも1つのプローブによる前記弾性物質への作用により生じる変化を確かめるよう前記第1の形態サンプル及び前記第2の形態サンプルを互いに比較する」ことに相当する。また、この「比較」のために、引用発明も、本願発明1の「コンパレータ」と同様の構成を備えていると認められる。

カ 引用発明が「検出した皮膚の張力により、メニュー選択、ストップウォッチ機能の起動や停止などを行う」ためには、「検出した皮膚の張力」に対応するデータ(パラメータ)を用いる必要があることは明らかであるから、引用発明も、本願発明1の「前記ユーザ入力パラメータに対応する当該デバイスのアクションを引き起こす」ことと同様の動作を行うと認められる。
また、この「前記ユーザ入力パラメータに対応する当該デバイスのアクションを引き起こす」ために、引用発明も「当該デバイスのアクションを引き起こす」インターフェースを、当然備えていると認められる。

キ そうすると、本願発明1と引用発明は、以下の点で一致し、また相違する。

[一致点]
「物質の弾性変形による入力のためのデバイスであって、
第1の形態サンプル及び第2の形態サンプルを含む弾性物質の形態を観測するセンサと、
少なくとも1つのプローブによる前記弾性物質への作用により生じる変化を確かめるよう前記第1の形態サンプル及び前記第2の形態サンプルを互いに比較するコンパレータと、
前記ユーザ入力パラメータに対応する当該デバイスのアクションを引き起こすユーザインターフェイスと
を有するデバイス。」

[相違点1]
本願発明1は、「モデルを前記変化へ適用することによって出力を生成するフィルタと、前記出力をユーザ入力パラメータに変換するアダプタ」を備えているのに対して、引用発明は、対応する構成の明示がない点。

[相違点2]
本願発明1は、「前記センサ又は前記フィルタのうちの少なくとも1つは、前記弾性物質の複数の領域を識別するよう構成され、前記複数の領域の夫々での前記弾性物質の形態の変化から、各々の対応するユーザ入力パラメータが導出される」のに対して、引用発明は、皮膚の張力を検出するものであり、皮膚の複数の領域を識別するようには構成されておらず、そのため対応するパラメータの導出を行っていない点

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点2について先に検討すると、相違点2に係る本願発明1の「前記センサ又は前記フィルタのうちの少なくとも1つは、前記弾性物質の複数の領域を識別するよう構成され、前記複数の領域の夫々での前記弾性物質の形態の変化から、各々の対応するユーザ入力パラメータが導出される」点は、上記引用文献A及び1には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献1に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし9について
本願発明2ないし9も、本願発明1の「前記センサ又は前記フィルタのうちの少なくとも1つは、前記弾性物質の複数の領域を識別するよう構成され、前記複数の領域の夫々での前記弾性物質の形態の変化から、各々の対応するユーザ入力パラメータが導出される」と同様の構成を備えているものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明10ないし17、18ないし25について
本願発明10ないし17は、それぞれ本願発明1ないし6及び8、9に対応する、方法の発明であり、また、本願発明18ないし25は、それぞれ本願発明1ないし6及び8、9に対応する、プログラムの発明でり、本願発明1の「前記センサ又は前記フィルタのうちの少なくとも1つは、前記弾性物質の複数の領域を識別するよう構成され、前記複数の領域の夫々での前記弾性物質の形態の変化から、各々の対応するユーザ入力パラメータが導出される」点と同様の構成を備えているものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4 本願発明26について
本願発明26は、本願発明18ないし25のプログラムを記憶しているマシン読出可能な媒体であり、本願発明1の「前記センサ又は前記フィルタのうちの少なくとも1つは、前記弾性物質の複数の領域を識別するよう構成され、前記複数の領域の夫々での前記弾性物質の形態の変化から、各々の対応するユーザ入力パラメータが導出される」点と同様の構成を備えているものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献1に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定についての判断
令和2年9月29日付けの補正により補正後の請求項1ないし9は、「前記センサ又は前記フィルタのうちの少なくとも1つは、前記弾性物質の複数の領域を識別するよう構成され、前記複数の領域の夫々での前記弾性物質の形態の変化から、各々の対応するユーザ入力パラメータが導出される」という技術的事項を有し、また、補正後の請求項10ないし17及び18ないし26は、「前記弾性物質の複数の領域が、前記センサ又は前記フィルタのうちの少なくとも1つにより識別され、前記複数の領域の夫々での前記弾性物質の形態の変化から、各々の対応するユーザ入力パラメータが導出される」という技術的事項を有するものとなった。当該、「前記センサ又は前記フィルタのうちの少なくとも1つは、前記弾性物質の複数の領域を識別するよう構成され、前記複数の領域の夫々での前記弾性物質の形態の変化から、各々の対応するユーザ入力パラメータが導出される」点又は「前記弾性物質の複数の領域が、前記センサ又は前記フィルタのうちの少なくとも1つにより識別され、前記複数の領域の夫々での前記弾性物質の形態の変化から、各々の対応するユーザ入力パラメータが導出される」点は、原査定における引用文献1には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし26は、当業者であっても、原査定における引用文献1に基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
したがって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-11-30 
出願番号 特願2017-523427(P2017-523427)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 滝谷 亮一萩島 豪  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 小田 浩
稲葉 和生
発明の名称 物質の弾性変形によるユーザ入力  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
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