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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1368769
審判番号 不服2019-3245  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-07 
確定日 2020-11-24 
事件の表示 特願2014-248140「ブロー成形方法、複合プリフォーム、複合容器、内側ラベル部材およびプラスチック製部材」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月20日出願公開、特開2016-107541〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年12月8日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。

平成30年 8月20日付け:拒絶理由通知
平成30年10月19日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年12月 3日付け:拒絶査定
平成31年 3月 7日 :審判請求書及び手続補正書の提出

第2 平成31年 3月 7日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成31年 3月 7日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項9の記載
本件補正における特許請求の範囲の補正は、請求項9についての次の補正事項を含む。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項9】
複合容器において、
プラスチック材料製の容器本体と、
前記容器本体の外側に、剥離除去可能に密着して設けられたプラスチック製部材とを備え、
前記プラスチック製部材が、少なくともナイロンと、ポリオレフィンおよび/またはポリエステルとを含むブレンド樹脂材料からなる層を少なくとも1以上備え、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体に対して収縮する作用を有しており、 前記容器本体が、口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを有し、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体の胴部と、底部の少なくとも一部とを覆うように設けられており、
前記容器本体が、多層構造を有し、中間層が、ガスバリア性樹脂を含むことを特徴とする複合容器。」

(2) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項9の記載
本件補正前の、平成30年10月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲のうち、請求項9の記載は次のとおりである。
「【請求項9】
複合容器において、
プラスチック材料製の容器本体と、
前記容器本体の外側に、剥離除去可能に密着して設けられたプラスチック製部材とを備え、
前記プラスチック製部材が、少なくともナイロンと、ポリオレフィンおよび/またはポリエステルとを含むブレンド樹脂材料からなる層を少なくとも1以上備え、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体に対して収縮する作用を有しており、
前記容器本体が、口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを有し、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体の胴部と、底部の少なくとも一部とを覆うように設けられていることを特徴とする複合容器。」

2 補正の適否
本件補正の内、請求項9についての補正は、本件補正前の請求項9に記載された発明を特定するために必要な事項である「容器本体」について、「多層構造を有し、中間層が、ガスバリア性樹脂を含む」との限定を付加するものであって、本件補正前の請求項9に記載された発明と本件補正後の請求項9に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項9に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1) 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2) 引用文献の記載事項等
ア 引用文献5の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献5として引用された本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開昭59-91038号公報(以下、「引用文献5」という。)には、図面とともに次の記載がある。

「2.特許請求の範囲
(1) ポリエチレンテレフタレートよりなる有底パリソンの少なくとも胴壁部外面に、ガスバリヤー性プラスチックフィルムを装着した後、加熱、2軸延伸-吹込成形を行うことを特徴とする、少なくとも肩部および胴部外面に該ガスバリヤー性プラスチックフィルムが被着したポリエチレンテレフタレートボトルの製造方法。」(第1頁左下欄第4ないし11行)

「本発明はボトルの製造方法に関し、さらに詳しくは外面にガスバリヤー性プラスチックフィルムが被着した延伸-吹込成形ポリエチレンテレフタレートボトルの製造方法に関する。
有底パリソンより2軸延伸-吹込成形により形成されたポリエチレンテレフタレートボトル(本明細書においては、エチレンテレフタレートを主成分とするエチレンテレフタレート共重合体、およびポリエチレンテレフタレートを主成分とするブレンドを含めてポリエチレンテレフタレートと呼ぶ)は、ガスバリヤー性、透明性、耐衝撃性等の容器特性に優れており、最近各種の内容物の収納用に実用化されつつある。しかしビールや炭酸飲料等の加圧炭酸ガスを含有する内容物を充填、密封した場合、経時につれて炭酸ガスが、若干であるが薄肉の肩部や胴部の壁部を透過して失われ、一方酸素が、僅かであるが上記壁部を透過して侵入して、内容物のフレーバが損ぜられ易い。」(第1頁左下欄第13行ないし同頁右下欄第10行)

「第1図において1はポリエチレンテレフタレートよりなる有底パリソンであって、通常射出成形によって形成される。2はガスバリヤー性プラスチックフィルム(例えば厚さ10?50μmのポリ塩化ビニリデン系フィルム;単位厚さの炭酸ガス、酸素ガス等に対するバリヤー性がポリエチレンテレフタレートの夫より大きいプラスチックのフィルム)よりなるチューブであって、例えばインフレーション法によって形成された継目無しの長尺チューブを、パリソン1の胴壁部1aの高さにほぼ等しい長さに切断したものである。その内径は胴壁部1aの外径より若干大きい。
第1図はチューブ2を倒立したパリソン1の胴壁部1aの外面側に緩挿し、ネックリング1b上に載置した状態を示す。次にこのパリソン1を延伸-吹込成形のため約80?100℃の範囲内の所定温度に、赤外線照射あるいはオーブン通過等によって加熱する。このさいチューブ2は熱収縮して、第2図に示すように、パリソン1の胴壁部1aの外面に密着する。次いで常法により、このチューブ2が密着したパリソン1を2軸延伸-吹込成形を行なって、第3図に示すようなボトル3を形成する。」(第2頁左上欄第14行ないし同頁右上欄第16行)



」(第1図、第2図、第3図)

イ 引用文献5に記載された発明
引用文献5の上記記載、特に、第3図から、ポリエチレンテレフタレートボトルが、口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを有すること、及び、ガスバリヤー性プラスチックフィルムは、ボトルの底部の一部まで延在していることが看取されることを踏まえると、引用文献5には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを有する、ポリエチレンテレフタレートボトルと、
前記ポリエチレンテレフタレートボトルの外面に密着したガスバリヤー性プラスチックフィルムとを備え、
前記ガスバリヤー性プラスチックフィルムが、前記ポリエチレンテレフタレートボトルに対して熱収縮するものであり、
前記ガスバリヤー性プラスチックフィルムが、前記ポリエチレンテレフタレートボトルの少なくとも肩部、胴部及び底部の一部の外面に設けられているボトル。」

ウ 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2012-101546号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある。

「【請求項1】
(a)(i)希釈剤ポリエステル、(ii)ポリアミド材料、及び(iii)脱酸素材料、を含むプレブレンドを調製すること、
(b)ベースポリエステルを供給すること、
(c)ステップ(a)のプレブレンド及びステップ(b)のベースポリエステルを成形装置に導入して、前記プレブレンド及び前記ベースポリエステルを溶融し混合することを可能とすること、
(d)ステップ(c)の混合物を前記装置内で射出成形又は押出を行って予備成型物を提供し、及び
(e)ステップ(d)の予備成型物を延伸してバリア層を有するプラスチック容器を提供する、方法。」

「【0011】
特に、ポリマー即ちプラスチックの容器に関する問題を解決しようとする試みは、パッケージ材料において、酸素バリア性及び/又は水蒸気バリア性を広範囲に使用することになる。典型的な水蒸気バリアにはポリエチレン及びポリプロピレンが含まれる。酸素バリアには、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVOH)、ナイロン、及びこれらの混合物が含まれる。ビニリデンクロライド/ビニルクロライド共重合体及びビニリデンクロライド/メチルメタクリレート共重合体は、水蒸気及び酸素バリアの両方として使用されている。
【0012】
バリア性の材料だけから商業的に有用なプラスチック容器を製造することは、それらの高いコスト、不安定な構造特性及び他の欠点により、困難である。例えば、EVOHは優れた酸素バリア特性を有しているが、そのポリマー条の多数の水酸基のために、水蒸気の問題に苦しめられる。他のバリア性の材料は、そのような材料のみで製造された容器が手が出せないほどの値段となり、十分に高価である。従って、多層構造体を製造することが常識となっており、これにより、高価又は敏感なバリア性の材料の量を薄い層に減少させ、高価でないポリマーがそのバリア層の一方又は両側に構造層として配置されている。
【0013】
バリア層を含む多層構造体はさほど高価ではなく、バリア性の材料の単層より構造的に強いけれども、このような容器は、単層の容器より製造するのは、より複雑となる。加えて、多層構造体におけるバリア層の厚さを減少させることは、しばしば容器のバリア特性を減少させる。従って、バリア層を有する多層容器に加えて、高いバリア性と構造特性とを有し、しかしバリア性の材料単独で作製される容器に対する高いコストなしに、単層の容器に対するこの分野での受容が存在している。
【0014】
パッケージ応用分野で一般に使用されている一つの材料は、ポリエチレンテレフタレート樹脂であり、以後PETと称する。PETは、パッケージ応用分野での使用に多くの有利な特性を有しているが、多くの適用分野で要求されるガスバリア性は有していない。例えば、PETは炭酸入りのジュースに対しては良好な酸素バリア特性を有しているが、PETは、例えばボトル内への酸素移動によるフレーバが急速に失われるビール、柑橘製品、トマトベースの製品及び無菌パックされた肉等の他の製品に対しては、パッケージ材料として有用ではない。PETと同様の物理特性を有するパッケージ材料は、ポリエチレンナフタレート(PEN)である。PENはPETよりバリア性が大きいけれども、PENはPETよりかなり高価である。
【0015】
エチレン及びビニルアルコールの、ビニリデンクロライド及びビニルクロライドの、並びにm-キシリレンジアミン及びアジピン酸(即ち、MXD6)のコポリマー等の極端な不浸透性のポリマーが存在する。しかし、実際上の又はコスト的な理由により、これらのコポリマーは、PET層の上若しくは間の薄層として、又はMXD6の場合はPETとブレンドして、少ない百分率の量で典型的に使用され、些細なガス透過性を達成している。また、キシリレン基含有ポリアミド樹脂を30重量%を超える量でPETと共に使用することは、積層されたホイル構造となり、これは容器のホイル層の間の剥離が生ずる可能性がある。」

「【0048】
ポリアミド材料の好ましい種類は、MXナイロンである。MXナイロンは、m-キシリレンジアミン単独、又はm-キシリレンジアミン及びp-キシリレンジアミンを全体の30%より少ない量で含有し6?10の炭素原子を有するα,ω脂肪族ジカルボン酸を含有するキシリレンジアミン混合物から得られる構造ユニットを、少なくとも70モル%で含有するポリマーである。」

「【0065】
多くの多層の予備成型物及び容器の構造が存在し、そのそれぞれは、特定の製品及び/又は製造プロセスに対して適合している。幾つかの代表例を以下に示す。
【0066】
3層構造物は、内側及び外側の層の間に配されたバリア層を有している。例えば、容器の3層側壁構造は、内側及び外側のPET及びコアのバリア層を有している。
【0067】
5層構造は、透明性を失わずに高い酸素バリア特性を提供するために、比較的薄い内側及び外側の中間層を有している。比較的厚いPETの内側及び外側の層は、必要な強度と透明性を提供する。上述のものと比較して薄いバリア層、必要なバリア効果を提供する。」

エ 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2008-120076号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

「【請求項1】
ジアミン構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位の70モル%以上が炭素数4?20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸とイソフタル酸のモル比率が30:70?100:0であるジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂(A)10?70重量%、変性ポリオレフィン(B)90?30重量%、およびポリオレフィン(C)0?50重量%からなるバリア性樹脂組成物層を少なくとも一層有する多層射出成形体。」

「【背景技術】
【0002】
射出成形は、複雑な形状を有する成形体を作製でき、生産性も高いため、機械部品、自動車部品、電気・電子部品、食品・医薬等容器などに広く普及している。特に、飲料等の容器については、蓋を十分に締めることができるように口栓のネジ形状が優れる射出成形体が多用される。
射出成形に用いる材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどからなるポリオレフィンやポリエステル、ポリスチレンなど汎用性樹脂などが用いられるが、中でも成形時の流動性や耐熱性に優れ、軽量性、低吸湿性であり、かつ安価であることから、ポリプロピレン等のポリオレフィンが容器などの各種用途に広く用いられている。
しかしながら、ポリオレフィンは酸素などのガスバリア性に劣るため、酸素などの影響を受けやすい内容物の保存や、高温等の環境下での保存性が要求される食品・医薬等の容器に対しては、不十分であった。そこで、ポリオレフィンにポリアミドなどのバリア材をブレンドして、バリア性を向上させる方法が開示されている(特許文献1、2参照)。
これらの方法によって、バリア性は改善できるものの、バリア材の特殊な分散状態が必要となるため、バリア性の改善が不十分であったり、また、表面付近にポリアミドが偏在することで外観不良等の問題を生じる等の課題を有している。すなわち、特許文献1では、二軸延伸にブロー成形よる成形加工方法が必要であり、二軸延伸ブローを行わない場合は、バリア性が低い。また、特許文献2には、ポリオレフィン中に無定形ポリアミドが複数存在する複合成形品が記載されているが、結晶性を有するポリアミドやメタキシリレン骨格を有するポリアミドについては記載されていない。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、射出成形から得られる容器における以上のような課題を解決し、バリア性、外観、耐剥離性及び耐熱性等に優れた多層射出成形体を提供しようとするものである。」

(3) 対比・判断
ア 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ポリエチレンテレフタレートボトル」、「ガスバリヤー性プラスチックフィルム」はそれぞれ、本件補正発明の「プラスチック材料製の容器本体」及び「容器本体」、「プラスチック製部材」に相当する。また、引用発明の「ガスバリヤー性プラスチックフィルム」は熱収縮するものであるから、引用発明は、本件補正発明における「プラスチック製部材が、容器本体に対して収縮する作用を有している」との構成要件を満たす。
さらに、引用発明の「ボトル」は、「ポリエチレンテレフタレートボトル」と「ガスバリヤー性プラスチックフィルム」からなるものであるから、本件補正発明の「複合容器」に相当することは明らかである。

してみると、本件補正発明と引用発明は、
「複合容器において、
プラスチック材料製の容器本体と、
前記容器本体の外側に、密着して設けられたプラスチック製部材とを備え、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体に対して収縮する作用を有しており、
前記容器本体が、口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを有し、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体の胴部と少なくとも底部の一部を覆うように設けられている、
複合容器。」
で一致し、次の3点で相違又は一応相違する。

<相違点1>
プラスチック製部材(ガスバリヤー性プラスチックフィルム)に関し、本件補正発明は、「少なくともナイロンと、ポリオレフィンおよび/またはポリエステルとを含むブレンド樹脂材料からなる層を少なくとも1以上備え」と特定するのに対し、引用発明は、この点を特定しない点。
<相違点2>
プラスチック製部材に関し、本件補正発明は、「剥離除去可能」と特定するのに対し、引用発明は、この点を特定しない点。
<相違点3>
容器本体に関し、本件補正発明は、「多層構造を有し、中間層が、ガスバリア性樹脂を含む」と特定するのに対し、引用発明は、この点を特定しない点。

イ 相違点についての判断
上記相違点について順次検討する。
・相違点1について
引用文献5の第2頁左上欄第16行ないし同頁右上欄第1行には、引用発明のガスバリヤー性プラスチックフィルムは、単位厚さの炭酸ガス、酸素ガス等に対するバリヤー性がポリエチレンテレフタレートより大きいプラスチックフィルムよりなる旨が記載されているところ、少なくともナイロンと、ポリエステルおよび/又はポリオレフィンとを含むブレンド樹脂が、ポリエチレンテレフタレートに比較してガスバリア性がよいことは、当業者において周知な技術であったこと(例えば、引用文献1、引用文献2、特開2007-270141号公報、特開2003-321029号公報参照。以下、「周知技術1」という。)を踏まえれば、引用発明のガスバリヤー性プラスチックフィルムを形成する樹脂として、当該組成のものを用いることは、当業者が周知技術1に基づいて容易に想到し得たことである。
・相違点2について
引用発明におけるガスバリヤー性プラスチックフィルムは、有底パリソンと接着されることなく密着されたものであって、2軸延伸-吹込成形後においても、ブロー成形がパリソンを溶融させることなく成形するものであることから、ガスバリヤー性プラスチックフィルムはポリエチレンテレフタレートボトルと接着されることなく密着して設けられているといえ、相違点2は実質的な相違点でない。
仮に、実質的な相違点であったとしても、リサイクルのために、シュリンクフィルムを剥離除去可能とすることは周知技術(例えば、特表2004-532147号公報の段落【0036】参照。以下、「周知技術2」という。)であるから、引用発明において、熱収縮する、すなわちシュリンクするフィルムであるガスバリヤー性プラスチックフィルムを剥離除去可能とすることは、当該周知技術2に基づいて当業者が容易になし得たことである。
・相違点3について
引用文献1には、プラスチック容器のガスバリア性をより向上させるために、ガスバリア性樹脂の中間層をもつ3層構造の容器本体が記載されている。
引用発明は、ビールや炭酸飲料等を充填時にも対応可能なガスバリア性の優れた容器を得ることを目的としているものであるから、よりガスバリア性が向上するように、引用発明のポリエチレンテレフタレートボトル(容器本体)について、引用文献1に記載の技術を適用して、ガスバリア性樹脂の中間層を持つ3層構造の容器本体とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 審判請求書における審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、引用文献5には、補正後の本発明の構成に変更しようとする動機となり得る記載がない旨、また、引用文献5の発明が解決しようとする課題は、ガスバリア性に優れるポリエチレンテレフタレートボトルの提供であり、容器本体は、ポリエチレンテレフタレートボトルに限定されている旨主張する。
しかしながら、引用発明は、PETボトルに、ガスバリヤー性、透明性、耐衝撃性に優れているが薄肉の肩部や胴部の壁部から透過侵入の問題があり、それを解決するために、少なくとも肩部および胴部の外周にガスバリヤー性プラスチックフィルムを設けるようにしたものであって、あくまでも容器自体のガスバリヤー性の向上を目的としたものであるから、よりガスバリヤー性を向上させるべく、周知の3層構造の容器本体を採用する動機付けはある。
また、3層構造としたとしても、主な2層はポリエチレンテレフタレート樹脂であっても良いのであるから、そのような容器本体は、ポリエチレンテレフタレートボトルの範疇といえ、引用発明の容器本体をそのような3層構造のものとすることに阻害要因はない。
したがって、審判請求人の当該主張は採用できない。

エ 小括
上記アないしウのとおり、本件補正発明は、引用発明、すなわち引用文献5に記載された発明、周知技術1及び2並びに引用文献1に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4) 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明
平成31年 3月 7日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし21に係る発明は、平成30年10月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項9に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
この出願の請求項9に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献5に記載された発明、引用文献1及び2に記載の技術事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、との理由を含むものである。

引用文献5:特開昭59-91038号公報
引用文献1:特開2012-101546号公報
引用文献2:特開2008-120076号公報

3 引用文献5、1、2の記載等
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献5、1、2の記載事項等は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記容器本体が、多層構造を有し、ガスバリア性樹脂を含む中間層を備えること」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記限定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)に記載したとおり、引用文献5に記載された発明、周知技術1及び2並びに引用文献1に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定事項が付加されていない本願発明は、同様に、引用文献5に記載された発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用文献5に記載された発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2020-09-18 
結審通知日 2020-09-25 
審決日 2020-10-09 
出願番号 特願2014-248140(P2014-248140)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B29C)
P 1 8・ 121- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 一宮 里枝浅野 昭  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 神田 和輝
大島 祥吾
発明の名称 ブロー成形方法、複合プリフォーム、複合容器、内側ラベル部材およびプラスチック製部材  
代理人 中村 行孝  
代理人 末盛 崇明  
代理人 朝倉 悟  
代理人 浅野 真理  
代理人 永井 浩之  

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