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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24H
管理番号 1368771
審判番号 不服2019-8345  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-24 
確定日 2020-11-24 
事件の表示 特願2016-573945号「ヒーターおよび熱交換器設備」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月23日国際公開、WO2015/193023、平成29年7月13日国内公表、特表2017-519179号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)5月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年6月17日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年10月26日:拒絶理由通知書
平成30年1月17日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年6月19日 :拒絶理由通知書(最後)
平成30年9月25日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年2月21日 :補正の却下の決定
平成31年2月21日 :拒絶査定
令和1年6月24日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和1年6月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年6月24日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。

「【請求項1】
ヒーターであって、
加熱される媒体のための入口(1)と、
前記媒体のための出口(2)と、
少なくとも二つのカセット(5)であって、各カセット(5)は、第1の主面(8)を備える第1のプレート(6)と、第2の主面(9)を備える第2のプレート(7)と、を備え、前記第1のプレート(6)および前記第2のプレート(7)は互いに永久的に接合されると共に前記第1および第2のプレート(6,7)間の前記媒体のためのそれぞれの流路(10)を取り囲み、前記カセット(5)は、前記カセット(5)間の空間(23)を伴って互いに並んで配置される、少なくとも二つのカセット(5)と、
前記カセット(5)間の前記空間(23)内に設けられた電気加熱要素(31)であって、前記電気加熱要素(31)は前記カセット(5)の一方の前記第1の主面(8)および隣接するカセット(5)の前記第2の主面(9)に当接する電気加熱要素(31)と、
を備え、
前記ヒーターは、前記一方のカセット(5)と前記隣接するカセット(5)との間に延在する二つの離隔部材(19)を備え、前記離隔部材(19)が前記空間(23)を形成しており、
接続部材が、各カセット(5)の前記流路(10)内に設けられ、かつ、前記第1の主面(8)を前記第2の主面(9)に対して接続しており、
前記接続部材は、前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間の前記流路に配置された波形シートを備え、
前記波形シートは、前記波形シートの山部および谷部が前記流路(10)に平行な方向に沿って交互に並ぶように配置され、
各離隔部材(19)は、前記一方のカセット(5)の前記第2の主面(9)から、かつ/または前記隣接するカセット(5)の前記第1の主面(8)から延びる少なくとも一つの突起(21,22)を備え、各突起(21,22)は、平坦接合領域(24)を備え、互いに隣接した前記カセット(5)は、前記平坦接合領域(24)を接合することによって互いに接続されていることを特徴とするヒーター。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の平成30年1月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
ヒーターであって、
加熱される媒体のための入口(1)と、
前記媒体のための出口(2)と、
少なくとも二つのカセット(5)であって、各カセット(5)は、第1の主面(8)を備える第1のプレート(6)と、第2の主面(9)を備える第2のプレート(7)と、を備え、前記第1のプレート(6)および前記第2のプレート(7)は互いに永久的に接合されると共に前記第1および第2のプレート(6,7)間の前記媒体のためのそれぞれの流路(10)を取り囲み、前記カセット(5)は、前記カセット(5)間の空間(23)を伴って互いに並んで配置される、少なくとも二つのカセット(5)と、
前記カセット(5)間の前記空間(23)内に設けられた電気加熱要素(31)であって、前記電気加熱要素(31)は前記カセット(5)の一方の前記第1の主面(8)および隣接するカセット(5)の前記第2の主面(9)に当接する電気加熱要素(31)と、
を備え、
前記ヒーターは、前記一方のカセット(5)と前記隣接するカセット(5)との間に延在する二つの離隔部材(19)を備え、前記離隔部材(19)が前記空間(23)を形成しており、
接続部材が、各カセット(5)の前記流路(10)内に設けられ、かつ、前記第1の主面(8)を前記第2の主面(9)に対して接続しており、
前記接続部材は、前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間の前記流路に配置された波形シートを備え、
前記波形シートは、前記波形シートの山部および谷部が前記流路(10)に平行な方向に沿って交互に並ぶように配置されることを特徴とするヒーター。」

なお、平成30年9月25日の手続補正は、上記第1のとおり平成31年2月21日付けの補正却下の決定により却下された。

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「二つの隔離部材(19)」について「各離隔部材(19)は、前記一方のカセット(5)の前記第2の主面(9)から、かつ/または前記隣接するカセット(5)の前記第1の主面(8)から延びる少なくとも一つの突起(21,22)を備え、各突起(21,22)は、平坦接合領域(24)を備え、互いに隣接した前記カセット(5)は、前記平坦接合領域(24)を接合することによって互いに接続されている」ことの限定を付加する補正であって、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許請求の範囲の請求項1に関する本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減宿を目的とするものである。そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

そこで、本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
原査定の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2012-141096号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がある(なお、下線は、理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)。

(ア)引用例1の記載
1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金材料からなる複数のチューブ構成部材がロウ付けされてヒータ接触面を有する熱媒流通チューブが形成され、この熱媒流通チューブが複数平行に配置されて各熱媒流通チューブの間が相互に熱媒流通可能に接合されてヒータ本体が形成され、これら複数の熱媒流通チューブの間にヒータ部材が介装されて該ヒータ部材が前記ヒータ接触面に密着することにより前記熱媒流通チューブ内を流れる熱媒が加熱されるように構成された温水ヒータの製造方法であって、
前記チューブ構成部材をロウ付けして前記熱媒流通チューブを形成する熱媒流通チューブ形成工程と、
前記熱媒流通チューブを複数平行に配列し、これらの熱媒流通チューブの間に前記ヒータ部材を配置し、前記熱媒流通チューブと前記ヒータ部材とを位置決めしながら、前記ヒータ部材が前記熱媒流通チューブのヒータ接触面に密着するように、その積層方向に加圧する位置決め加圧工程と、
前記位置決め加圧工程にて位置決めされた状態で前記熱媒流通チューブ同士を接合するチューブ接合工程と、
を備えることを特徴とする温水ヒータの製造方法。」

1b)「【0014】
また、本発明に係る温水ヒータの製造方法の第2の態様は、前記第1の態様に記載の温水ヒータの製造方法における前記位置決め加圧工程において、前記熱媒流通チューブの積層方向に貫通形成された熱媒流通孔が整合するように各熱媒流通チューブを積層して位置決めし、前記チューブ接合工程において、前記熱媒流通孔の内周に加熱手段を挿入して前記熱媒流通孔の内周部を加熱することにより前記熱媒流通孔の周部同士をロウ付けして接合することを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、位置決め加圧工程において各熱媒流通チューブに貫通形成された熱媒流通孔が整合するように各熱媒流通チューブを積層して位置決めし、チューブ接合工程において熱媒流通孔の内周部に熱ゴテ等の加熱手段を挿入すれば熱媒流通孔の周部同士をロウ付けできるため、各熱媒流通チューブの位置決めおよび接合作業が簡易かつ容易になる。」

1c)「【0027】
以下に、本発明に係る温水ヒータの製造方法の複数の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る製造方法を適用し得る温水ヒータ1の一例を示す斜視図であり、図2は図1に示す温水ヒータ1のII-II線に沿う縦断面図である。この温水ヒータ1は、例えばハイブリッド車両に装備される一般的な構造のものであり、エンジンが電動モータと共働することによりエンジン冷却水の温度が上昇しにくく、暖房能力が不足しがちなハイブリッド車両において、ヒータコアによる暖房を補完するべくエンジン冷却水を追加熱するものである。
【0028】
温水ヒータ1は、例えば上中下3段の偏平な熱媒流通チューブ2が所定の空隙を介して平行に積層された構成のヒータ本体3と、各熱媒流通チューブ2間の空隙に挟装された2枚の平板状のヒータ部材4とを備えて構成されている。熱媒流通チューブ2は、平面視で例えば六角形状をなすフィン状のチューブであり、図2に示すように、アルミニウムや真鍮等の板金材料からなる上下一対のチューブ構成部材6が最中合わせにされてロウ付けされることにより接合されている。
【0029】
熱媒流通チューブ2の上下面は平坦なヒータ接触面7となっており、この面にヒータ部材4が密着することによって熱媒流通チューブ2内を流れる熱媒としてのエンジン冷却水が加熱される。ヒータ部材4としては、例えばPTCヒータが用いられ、2枚のヒータ部材4からはそれぞれ2枚の電源入力用の端子8が延出している。2枚のヒータ部材4は、要求される加熱量に応じて両方もしくは片方のみが発熱作動する。
【0030】
熱媒流通チューブ2の両端には、上方または下方に凸となるタンク凸部11が膨出成形され、各タンク凸部11の上下面に円孔状の熱媒流通孔12が貫通形成されている。そして、各熱媒流通チューブ2の熱媒流通孔12が互いに整合するように重ね合わせられてロウ付け等により液密に接合されることにより、3段の熱媒流通チューブ2が平行かつ所定の間隔を開けて固定されるとともに、片側6つのタンク凸部11が上下方向に積層されて略円柱状の分配タンク13が形成される。分配タンク13の最下部の熱媒流通孔12にはホース接続用のユニオン14が固着され、分配タンク13の最上部の熱媒流通孔12は蓋部材15で閉塞される。
【0031】
2つのユニオン14には図示しないインレットホースとアウトレットホースが接続され、エンジン側から供給されるエンジン冷却水がインレットホースから一方の分配タンク13に流入し、3枚の熱媒流通チューブ2内を均等に通ってヒータ部材4により加熱されながら他方の分配タンク13側に流れ、アウトレットホースからヒータコア側に供給される。このように、温水ヒータ1の内部ではエンジン冷却水が分配タンク13を経て3段の熱媒流通チューブ2の間を相互に流通することができる。」

1d)「



1e)「【0032】
[第1実施形態]
次に、本発明に係る温水ヒータの製造方法の第1実施形態について、図3と図4を参照して説明する。この温水ヒータの製造方法は、熱媒流通チューブ形成工程Aと、位置決め加圧工程Bと、チューブ接合工程Cとを備えている。
A.熱媒流通チューブ形成工程
図3(a)?(c)は熱媒流通チューブ2を形成する熱媒流通チューブ形成工程Aを示している。図3(a)に示すように、熱媒流通チューブ2を構成するのは上下一対のチューブ構成部材6であり、チューブ構成部材6は、前述の通りアルミニウムや真鍮等の板金材料からプレス成形されており、その両端部にタンク凸部11が膨出成形され、周囲全周に亘って接合代17が形成されている。
【0033】
これら一対のチューブ構成部材6は、図3(b)に示すように対向した状態で仮固定され、重ね合わされた接合代17がロウ付けにより接合される。符号18はロウ材を示す。ロウ材18は熱で溶融し、図3(c)に示すように、毛細管現象により、接合代17の内側に形成される合わせ溝の長手方向に沿って流れ、これにより上下のチューブ構成部材6が一体的に固着して熱媒流通チューブ2が完成する。」

1f)「【0035】C.チューブ接合工程
次に、図4(c)に示すように、位置決めされて加圧された熱媒流通チューブ2同士を接合する(チューブ接合工程C)。ここでの接合も、ロウ付けによることが望ましいが、必要に応じて接着やカシメといった手法で接合してもよい。
【0036】
ロウ付けを行うための加熱方法として、本実施形態では、熱媒流通孔12の内周に熱ゴテ(加熱手段)20を挿入し、熱媒流通孔12の内周部を加熱している。そして、熱媒流通孔12の外周側からロウ材21を供給して熱媒流通孔12の周部同士をロウ付けして接合する。熱ゴテ20により熱媒流通孔12の付近が加熱されると、熱媒流通孔12の外周側にあてがわれたロウ材21が溶融し、図4(d)に示すように、毛細管現象により、ロウ材21が熱媒流通孔12の合わせ面に形成される合わせ溝に沿って熱媒流通孔12の周囲を一周するように流れ、これにより上下の熱媒流通チューブ2同士が一体的に固着されてヒータ本体3が完成する。」

1g)「




1h)図2及び上記1c)段落【0031】の記載からみて、熱媒流通チューブ2を構成する上下一対のチューブ形成部材6は、内部にエンジン冷却水のための流路を形成する。

1i)図4及び上記1c)の記載からみて、ヒータ部材4は、一方の熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7および空隙を挟んで対向する他方の熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7に密着する。

1j)図4の記載からみて、タンク凸部11は、隣接する熱媒流通チューブ2間に空隙を形成する。

1k)図1及び図2の記載から、タンク凸部11は、熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7から上方または下方に凸となることが看取できる。

(イ)引用発明
上記(ア)及び図面の記載からみて、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「温水ヒータであって、
エンジン冷却水がエンジン側から供給されるインレットホースが接続されるユニオン14と、
エンジン冷却水をヒータコア側に供給するためのアウトレットホースが接続されるユニオン14と、
3段の熱媒流通チューブ2であって、各熱媒流通チューブ2は、それぞれヒータ接触面7を有する上下一対のチューブ構成部材6を備え、上下一対のチューブ構成部材6は、接合代17によりロウ付けされると共に内部にエンジン冷却水のための流路を形成し、熱媒流通チューブ2は、空隙を介して平行に積層される、3段の熱媒流通チューブ2と、
熱媒流通チューブ2の間の空隙に挟装された平板状のヒータ部材4であって、一方の熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7および空隙を挟んで対向する他方の熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7に密着するヒータ部材4と、
を備え、
温水ヒータは、熱媒流通チューブ2の両端に、上方または下方に凸となるタンク凸部11を備え、タンク凸部11が空隙を形成しており、
タンク凸部11は、熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7から、かつ空隙を挟んで対向する熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7から上方または下方に凸となるものであり、各タンク凸部11の上下面に円孔状の熱媒流通孔12が貫通形成され、熱媒流通孔12が整合するように重ね合わせて熱媒流通孔12の周部同士をロウ付けすることにより、熱媒流通チューブ2同士を一体的に固着する、温水ヒータ。」

イ 引用例2
原査定の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2002-283835号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

(ア)引用例2の記載
2a)「【0021】図1?20は、請求項1?5及び請求項7に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。先ず、図1?3は、本発明の暖房用熱交換器1aの全体構造を示している。即ち、この暖房用加熱器1aは、合成樹脂製のケース8の内側に、本体部分9を保持して成る。この本体部分9は、内側に被加熱流体である、冷却水が流れる扁平な流路10、10(図4、5、7等)を有する複数の伝熱管素子11、11と、それぞれが通電により発熱する複数の電熱ヒータ12、12とを備えたコア部13を有する。そして、上記複数の伝熱管素子11、11を、隣り合う伝熱管素子11、11の長さ方向中間部同士の間に上記各電熱ヒータ12、12を設けた状態で、互いに重ね合わせている。
【0022】上記各伝熱管素子11は、図4?7に詳示する様に、それぞれがアルミニウム合金等の金属板製である、第一金属板14と第二金属板15とを最中状に重ね合わせて成る。これら各第一、第二金属板14、15は、全体を長円形状に形成すると共に、それぞれの本体部分の外周縁部に折り立て部16a、16bを、この本体部分に対し直角に延びる状態で全周に亙り設けている。又、上記第一金属板14の本体部分の長さ方向(図4、5、7の左右方向、図6の裏表方向)及び幅方向(図4、7の裏表方向、図5の上下方向、図6の左右方向)に関する寸法を、上記第二金属板15の本体部分の長さ方向(図7の左右方向)及び幅方向(図7の裏表方向)に関する寸法よりも大きくしている。又、上記第一金属板14の長さ方向両端部に、上記各電熱ヒータ12を挿入するスペースを設ける為に突部24、24を形成している。これら各突部24、24には、第一通孔18、18を形成している。又、前記コア部13を構成した状態で最下端に位置する1個の伝熱管素子11を構成する第二金属板15を除いて、各第二金属板15、15の両端部で、上記各第一通孔18、18と整合する位置にこれら各第一通孔18、18と同じ大きさを有する第二通孔19を、それぞれ形成している。」

2b)「【0023】そして、上記各伝熱管素子11、11の内側の中間部に、上記冷却水を流す為の扁平な流路10を設けると共に、同じく内側の両端部に、この流路10と通じる1対のタンク空間20、20を設けている。又、上記各伝熱管素子11、11の内側に、アルミニウム合金等の金属板により、一部に切れ目を形成しつつ曲げ加工して、図9?10に示す形状に造ったインナーフィン21を設けている。このインナーフィン21の形状は、従来から周知である為、簡単に説明する。このインナーフィン21は、上記流路10内を流れる冷却水の流れ方向(図8、9の左右方向)に関する形状を波形とすると共に、この波形の位相が1/4ピッチ分ずつずれた部分を、幅方向に関して交互に配置して、幅方向に隣り合う部分同士の境界部に多数の開口22、22を形成したものである。上記冷却水は、これら各開口22、22を蛇行しつつ流れる。又、上記インナーフィン21の両端部で、上記第一、第二通孔とほぼ整合する位置に、1対の通孔75、75を形成している。」

2c)「【0024】上述の様なインナーフィン21を内側に設けた各伝熱管素子11、11は、各第一金属板14、14を上側に設けた状態で複数個互いに上下に重ね合わせると共に、隣り合う伝熱管素子11、11同士で、互いに対向する第一金属板14に設けた第一通孔18、18と、第二金属板15、15に設けた第二通孔19、19とを整合させている。又、上記コア部13の最上端に位置する1枚の第一金属板14の上側面の両端部に、流体送り込み管26と流体取り出し管27との端部を接続している。【0025】前記暖房用加熱器1aを構成する本体部分9を造る場合には、先ず、上記第一、第二金属板14、15と、インナーフィン21と、上記流体送り込み管26及び流体取り出し管27とを組み合わせ、加熱炉中で加熱して、これら各部材14、15、21、26、27を一体的にろう付け接合する。この為に、本例の場合には、上記各第一、第二金属板14、15の内側面とインナーフィン21の上下両側面との間、及び上記各伝熱管素子11、11の両端部同士の間にろう箔等のシート状のろう材77、77(図7)を挟み込んでいる。上記加熱炉中で上記各部材を加熱した場合には、このろう材77、77により、上記インナーフィン21及び第一、第二金属板14、15と、この第一金属板14の突部24、24の一部と上記第二金属板15の第二通孔19の外周縁部とが、それぞれ接合される。又、上記流体送り込み管26及び流体取り出し管27の端部と、上記コア部13の最上端に位置する1枚の第一金属板14とは、別の図示しないろう材により接合される。」

2d)「



2e)「【0039】更に、本例の場合には、上記各伝熱管素子11、11に設けた流路10、10の内側にインナーフィン21を設けている為、各電熱ヒータ12、12で発生した熱を冷却水に、効率良く伝達できる。又、上記各電熱ヒータ12、12は、各抵抗体29、29の周囲を絶縁板28及び絶縁層32により覆って、絶縁している為、本発明の暖房用加熱器1aを、水が掛かる可能性がある状況で使用する場合でも、上記各抵抗体29、29でショートする事を防止できて、安全性を十分に確保できる。」

(イ)引用例2技術
上記(ア)及び図面の記載からみて、引用例2には以下の技術(以下、「引用例2技術」という。)が記載されている。
「伝熱管素子11の間に電熱ヒータ12を重ね合わせて設けた暖房用熱交換器において、各伝熱管素子11の内部に、第一金属板14及び第二金属板15に接合しており冷却水の流れ方向に関する形状を波形形状とするインナーフィン21を設けることにより、電熱ヒータ12で発生した熱を冷却水に効率良く伝達する技術。」

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「温水ヒータ」は、本願補正発明における「ヒーター」に相当し、以下同様に、「エンジン冷却水がエンジン側から供給されるインレットホースが接続されるユニオン14」は「加熱される媒体のための入口」に、「エンジン冷却水をヒータコア側に供給するためのアウトレットホースが接続されるユニオン14」は「加熱される媒体のための出口」に、「3段の」、「熱媒流通チューブ2」は「少なくとも二つの」、「カセット(5)」に、「それぞれヒータ接触面7を有する上下一対のチューブ構成部材6」は「第1の主面(8)を備える第1のプレート(6)と第2の主面(9)を備える第2のプレート(7)」に、「上下一対のチューブ構成部材6」は「第1のプレート(6)及び第2のプレート(7)」に、「接合代17によりロウ付けされると共に内部にエンジン冷却水のための流路を形成」するは、「互いに永久的に接合されると共に第1及び第2のプレート(6,7)間のそれぞれの流路(10)を取り囲」むに、「空隙」は「空間(23)」に、「空隙を介して」は「空間(23)を伴って」に、「平行に積層される」は「互いに並んで配置される」に、「熱媒流通チューブ2の間の空隙」は「カセット(5)間の空間(23)」に、「挟装された」は「設けられた」に、それぞれ相当する。

イ 引用発明における「ヒータ部材4」は、上記(2)ア 1c)段落【0029】にPTCヒータが例示されていることからみて、本願補正発明における「電気加熱要素(31)」に相当し、引用発明における「熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7」は、本願補正発明における「カセット(5)の一方の第1主面(8)」に相当し、以下同様に、「空隙を挟んで対向する」、「熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7」は「隣接する」、「カセット(5)の第2主面(9)」に、「密着する」は「当接する」に、それぞれ相当する。

ウ 引用発明における「温水ヒータ」が「熱媒流通チューブ2の両端」に備える「タンク凸部11」、または、「熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7から、かつ空隙を挟んで対向する熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7から上方または下方に凸となる」、「タンク凸部11」は、本願補正発明における「一方のカセット(5)と隣接するカセット(5)との間に延在する二つの隔離部材(19)」に相当する。
さらに、引用発明における「タンク凸部11」は、熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7から、かつ空隙を挟んで対向する熱媒流通チューブ2のヒータ接触面7から上方または下方に凸となるものであるから、本願補正発明における「突起(21,22)」にも相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
「ヒーターであって、
加熱される媒体のための入口(1)と、
前記媒体のための出口(2)と、
少なくとも二つのカセット(5)であって、各カセット(5)は、第1の主面(8)を備える第1のプレート(6)と、第2の主面(9)を備える第2のプレート(7)と、を備え、前記第1のプレート(6)および前記第2のプレート(7)は互いに永久的に接合されると共に前記第1および第2のプレート(6,7)間の前記媒体のためのそれぞれの流路(10)を取り囲み、前記カセット(5)は、前記カセット(5)間の空間(23)を伴って互いに並んで配置される、少なくとも二つのカセット(5)と、
前記カセット(5)間の前記空間(23)内に設けられた電気加熱要素(31)であって、前記電気加熱要素(31)は前記カセット(5)の一方の前記第1の主面(8)および隣接するカセット(5)の前記第2の主面(9)に当接する電気加熱要素(31)と、
を備え、
前記ヒーターは、前記一方のカセット(5)と前記隣接するカセット(5)との間に延在する二つの離隔部材(19)を備え、前記離隔部材(19)が前記空間(23)を形成しており、
各離隔部材(19)は、前記一方のカセット(5)の前記第2の主面(9)から、かつ前記隣接するカセット(5)の前記第1の主面(8)から延びる少なくとも一つの突起(21,22)を備える、ヒーター。」

[相違点1]
本願補正発明においては、「接続部材が、各カセット(5)の前記流路(10)内に設けられ、かつ、前記第1の主面(8)を前記第2の主面(9)に対して接続しており、前記接続部材は、前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間の前記流路に配置された波形シートを備え、前記波形シートは、前記波形シートの山部および谷部が前記流路(10)に平行な方向に沿って交互に並ぶように配置され」るのに対して、
引用発明においては、熱媒流通チューブ2の上下一対のチューブ構成部材6が形成する流路内において、そのような接続部材が設けられるか不明である点。

[相違点2]
本願補正発明においては、「各突起(21,22)は、平坦接合領域(24)を備え、互いに隣接した前記カセット(5)は、前記平坦接合領域(24)を接合することによって互いに接続されている」のに対して、
引用発明においては、「各タンク凸部11の上下面に円孔状の熱媒流通孔12が貫通形成され、熱媒流通孔12が整合するように重ね合わせて熱媒流通孔12の周部同士をロウ付けすることにより、熱媒流通チューブ2同士を一体的に固着する」ものであるが、タンク凸部11が互いに隣接した熱媒流通チューブ2同士を接合する平坦接合領域までを有するか不明な点。

以下、相違点について検討する。

[相違点1について]
引用例2技術は、「伝熱管素子11の間に電熱ヒータ12を重ね合わせて設けた暖房用熱交換器において、各伝熱管素子11の内部に、第一金属板14及び第二金属板15に接合しており冷却水の流れ方向に関する形状を波形形状とするインナーフィン21を設けることにより、電熱ヒータ12で発生した熱を冷却水に効率良く伝達する技術」であって、引用発明においても、エンジン冷却水を加熱するための温水ヒータである以上、熱媒流通チューブ2の間の空隙に挟装された平板状のヒータ部材4において発生した熱を流路においてエンジン冷却水に効率よく伝達するという課題を内在すると認められる。
よって、引用発明において、エンジン冷却水にヒータ部材4において発生した熱を熱媒流通チューブ2において効率よく伝達するために引用例2技術を適用して、熱媒流通チューブ2が備えるヒータ接触面7を有する上下一対のチューブ構成部材6が形成する流路内において、上下一対のチューブ構成部材6に接合しており、冷却水の流れ方向に関する形状を波形形状とする部材を設けることにより、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

[相違点2について]
複数のチューブを積層することにより構成した熱交換器において、複数のチューブから突出するタンク凸部の連通口を囲むように平坦部を設け、平坦部同士を接合することにより複数のチューブを接合することは周知技術(例えば、特開2004-125189号公報の段落【0019】及び【0020】及び図3の記載、及び特開2012?112562号公報の段落【0002】及び【0016】、図2及び図5の記載等参照。以下、「周知技術」という。)である。
そうすると、引用発明における熱媒流通孔12が貫通形成されたタンク凸部11において、複数のチューブを積層することにより構成した熱交換器の技術分野において共通する周知技術を適用して、タンク凸部11の熱媒流通孔12を囲むように平坦部を設け、平坦部同士を接合することにより熱媒流通チューブ2同士を一体的に固着することにより上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

そして、本願補正発明の効果は、全体としてみても引用発明、引用例2技術及び周知技術から予測される範囲内であって格別顕著なものではない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2技術及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成30年1月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15により特定されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1(2)に記載したとおりのものである。

1 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、平成31年2月21日付け拒絶査定に記載されたとおり、平成30年6月19日付け拒絶理由通知書に記載された理由2による次のとおりのものである

本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記引用例1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用例一覧>
1.特開2012?141096号公報
2.特開2002-283835号公報

2 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及び引用例2の記載事項は、前記第2 2(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記第2 2で検討した本願補正発明から「隔離部材」についての「各離隔部材(19)は、前記一方のカセット(5)の前記第2の主面(9)から、かつ/または前記隣接するカセット(5)の前記第1の主面(8)から延びる少なくとも一つの突起(21,22)を備え、各突起(21,22)は、平坦接合領域(24)を備え、互いに隣接した前記カセット(5)は、前記平坦接合領域(24)を接合することによって互いに接続されている」ことの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明との対比において、上記第2 2(3)で検討した相違点は、上記限定を省いたことにより[相違点1]のみとなるから、上記第2 2(3)における[相違点1について]の判断によると、本願発明は、引用発明及び引用例2技術に基いて当業者が容易になし得たものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-06-25 
結審通知日 2020-06-29 
審決日 2020-07-10 
出願番号 特願2016-573945(P2016-573945)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F24H)
P 1 8・ 121- Z (F24H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 恭司吉澤 伸幸嶌田 康平  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 山田 裕介
松下 聡
発明の名称 ヒーターおよび熱交換器設備  
代理人 阿部 達彦  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  

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