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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1368880
審判番号 不服2019-10554  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-08 
確定日 2020-11-30 
事件の表示 特願2015- 73168「タッチパネルセンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月10日出願公開、特開2016-192188〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月31日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年10月16日付け:拒絶理由通知書
平成30年12月14日 :意見書の提出
令和 元年 5月 8日付け:拒絶査定
令和 元年 8月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和元年8月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年8月8日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「 タッチパネルセンサであって、
前記タッチパネルセンサは、タッチ位置を検出され得る領域に対応する矩形状のアクティブエリアと、前記アクティブエリアの周辺に位置する非アクティブエリアと、に少なくとも区画され、
前記矩形状のアクティブエリアの輪郭は、第1方向に延びる長辺と、第2方向に延びる短辺と、を含み、
前記タッチパネルセンサは、前記タッチパネルセンサの一方の側において前記アクティブエリア内に設けられ、前記第1方向に延びる複数の第1電極を備え、
前記第1電極は、遮光性および導電性を有する複数の第1導線を、各第1導線の間に四角形状の開口部が形成されるよう網目状に配置することによって構成されており、
前記四角形状の開口部は、前記第1導線が互いに交わることによって形成される4つの内角を含み、
前記4つの内角は、前記第1方向において対向する一対の第1内角と、前記第2方向において対向する一対の第2内角と、からなり、
前記一対の第1内角がいずれも鋭角になり、前記一対の第2内角がいずれも鈍角になるよう、前記複数の第1導線が配置されており、
前記第1導線の幅は1?10μmの範囲内であり、前記第1導線の厚みは0.1?0.5μmの範囲内である、タッチパネルセンサ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前(本件特許出願時)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

「 タッチパネルセンサであって、
前記タッチパネルセンサは、タッチ位置を検出され得る領域に対応する矩形状のアクティブエリアと、前記アクティブエリアの周辺に位置する非アクティブエリアと、に少なくとも区画され、
前記矩形状のアクティブエリアの輪郭は、第1方向に延びる長辺と、第2方向に延びる短辺と、を含み、
前記タッチパネルセンサは、前記タッチパネルセンサの一方の側において前記アクティブエリア内に設けられ、前記第1方向に延びる複数の第1電極を備え、
前記第1電極は、遮光性および導電性を有する複数の第1導線を、各第1導線の間に四角形状の開口部が形成されるよう網目状に配置することによって構成されており、
前記四角形状の開口部は、前記第1導線が互いに交わることによって形成される4つの内角を含み、
前記4つの内角は、前記第1方向において対向する一対の第1内角と、前記第2方向において対向する一対の第2内角と、からなり、
前記一対の第1内角がいずれも鋭角になり、前記一対の第2内角がいずれも鈍角になるよう、前記複数の第1導線が配置されている、タッチパネルセンサ。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1導線」について、上記のとおり「幅」と「厚み」に関する限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2012-164648号公報(平成24年8月30日出願公開。以下「引用文献」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は、強調のために当審が付与した。

(ア)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性フイルム及びそれを備えた表示装置に関する。」

(イ)
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した特許文献1?3とは異なった簡単な構成で、汎用の表示装置の表示パネルに取り付けてもモアレが発生しにくく、しかも、高歩留まりで生産することができる導電性フイルム及びそれを備えた表示装置を提供することを目的とする。」

(ウ)
「【0009】
本実施の形態に係る導電性フイルム10は、図1及び図2に示すように、透明基体12(図2参照)と、透明基体12の一方の主面に形成された導電部14とを有する。導電部14は、金属製の細線(以下、金属細線16と記す)と開口部18によるメッシュパターン20を有する。金属細線16は例えば金(Au)、銀(Ag)又は銅(Cu)で構成されている。 具体的には、導電部14は、第1方向(図1においてx方向)に延び、且つ、第2方向(図1においてy方向)にピッチPsで並ぶ複数の第1金属細線16aと、第2方向に延び、且つ、第1方向にピッチPsで並ぶ複数の第2金属細線16bとがそれぞれ交差して形成されたメッシュパターン20を有する。この場合、第1方向は基準方向(水平方向)に対して+30°以上+60°以下の角度で傾斜し、第2方向は基準方向に対して-30°以上-60°以下の角度で傾斜している。従って、メッシュパターン20の1つのメッシュ形状22、すなわち、1つの開口部18と、該1つの開口部18を囲む4つの金属細線16の組み合わせ形状は、頂角部が60°以上120°以下のひし形状となる。」

(エ)
「【0013】
次に、タッチパネルを有する表示装置、例えば投影型静電容量方式のタッチパネルを有する表示装置について図5?図12を参照しながら説明する。
先ず、タッチパネル50は、センサ本体52と図示しない制御回路(IC回路等で構成)とを有する。センサ本体52は、図5、図6及び図7Aに示すように、後述する第1導電性フイルム10Aと第2導電性フイルム10Bとを積層して構成された積層導電性フイルム54と、その上に積層された保護層56(図7Aでは保護層56の記述を省略している)とを有する。積層導電性フイルム54及び保護層56は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置30における表示パネル58上に配置されるようになっている。センサ本体52は、上面から見たときに、表示パネル58の表示画面58aに対応した領域に配されたセンサ部60と、表示パネル58の外周部分に対応する領域に配された端子配線部62(いわゆる額縁)とを有する。
【0014】
…(中略)…
各第1導電パターン64Aは、それぞれ2以上の小格子70が組み合わされて構成されている。図6及び図8の例では、各第1導電パターン64Aは、2以上の第1大格子68Aが第3方向に直列に接続されて構成され、各第1大格子68Aは、それぞれ2以上の小格子70が組み合わされて構成されている。また、第1大格子68Aの辺の周囲に、第1大格子68Aと非接続とされた上述の第1補助パターン66Aが形成されている。m方向は、例えば後述する投影型静電容量方式のタッチパネル50(図5参照)の水平方向(又は垂直方向)あるいはタッチパネル50を設置した表示パネル58の水平方向(又は垂直方向)を示す。
【0015】
…(中略)…
【0016】
小格子70は、ここでは一番小さいひし形とされ、上述した1つのメッシュ形状22(図1参照)と同じ形状あるいは相似形状とされている。小格子70は、図9に示すように、少なくとも1つの辺(第1辺70a?第4辺70d)と第1方向(m方向)とのなす角θは30°?60°に設定される。m方向がタッチパネル50が設置される表示装置30(図5参照)の画素の配列方向と同じであれば、上述のなす角θは30°?44°あるいは46°?60°に設定され、より好ましくは32°?39°あるいは51°?58°に設定される。
小格子70の線幅(金属細線16の線幅)は30μm以下から選択可能である。上述したように、タッチパネル50に使用される場合には、金属細線16の線幅は0.1μm以上15μm以下が好ましく、1μm以上9μm以下がより好ましく、2μm以上7μm以下がさらに好ましい。…(後略)」

(オ)
「【0019】
上述のように構成された第1導電性フイルム10Aは、図6に示すように、各第1導電パターン64Aの一方の端部側に存在する第1大格子68Aの開放端は、第1接続部72Aが存在しない形状となっている。各第1導電パターン64Aの他方の端部側に存在する第1大格子68Aの端部は、第1結線部84aを介して金属細線16による第1端子配線パターン86aに電気的に接続されている。
すなわち、タッチパネル50に適用した第1導電性フイルム10Aは、図5及び図6に示すように、センサ部60に対応した部分に、上述した多数の第1導電パターン64Aが配列され、端子配線部62には各第1結線部84aから導出された複数の第1端子配線パターン86aが配列されている。
図5の例では、第1導電性フイルム10Aの外形は、上面から見て長方形状を有し、センサ部60の外形も長方形状を有する。端子配線部62のうち、第1導電性フイルム10Aの一方の長辺側の周縁部には、その長さ方向中央部分に、複数の第1端子88aが前記一方の長辺の長さ方向に配列形成されている。また、センサ部60の一方の長辺(第1導電性フイルム10Aの一方の長辺に最も近い長辺:n方向)に沿って複数の第1結線部84aが直線状に配列されている。各第1結線部84aから導出された第1端子配線パターン86aは、第1導電性フイルム10Aの一方の長辺におけるほぼ中央部に向かって引き回され、それぞれ対応する第1端子88aに電気的に接続されている。」

(カ)
「【0020】
一方、第2導電性フイルム10Bは、図6、図7A及び図10に示すように、第2透明基体12B(図7A参照)の一主面上に形成された第2導電部14Bを有する。この第2導電部14Bは、それぞれ第4方向(n方向)に延在し、且つ、第3方向(m方向)に配列され、多数の格子にて構成された金属細線16による2以上の第2導電パターン64B(メッシュパターン)と、各第2導電パターン64Bの周辺に配列された金属細線16による第2補助パターン66Bとを有する。
各第2導電パターン64Bは、それぞれ2以上の小格子70が組み合わされて構成されている。図6及び図10の例では、第2導電パターン64Bは、2以上の第2大格子68Bが第4方向(n方向)に直列に接続されて構成され、各第2大格子68Bは、それぞれ2以上の小格子70が組み合わされて構成されている。また、第2大格子68Bの辺の周囲に、第2大格子68Bと非接続とされた上述の第2補助パターン66Bが形成されている。」

(キ)
「【0023】
…(中略)…
すなわち、タッチパネル50に適用した第2導電性フイルム10Bは、図6に示すように、センサ部60に対応した部分に、多数の第2導電パターン64Bが配列され、端子配線部62には各第2結線部84bから導出された複数の第2端子配線パターン86bが配列されている。」

(ク)
「【0024】
図5に示すように、端子配線部62のうち、第2導電性フイルム10Bの一方の長辺側の周縁部には、その長さ方向中央部分に、複数の第2端子88bが前記一方の長辺の長さ方向に配列形成されている。また、センサ部60の一方の短辺(第2導電性フイルム10Bの一方の短辺に最も近い短辺:m方向)に沿って複数の第2結線部84b(例えば奇数番目の第2結線部84b)が直線状に配列され、センサ部60の他方の短辺(第2導電性フイルム10Bの他方の短辺に最も近い短辺:m方向)に沿って複数の第2結線部84b(例えば偶数番目の第2結線部84b)が直線状に配列されている。…(後略)」

(ケ)
「【0028】
…(中略)…
タッチ位置の検出方式としては、自己容量方式や相互容量方式を好ましく採用することができる。すなわち、自己容量方式であれば、第1導電パターン64Aに対して順番にタッチ位置検出のための電圧信号を供給し、第2導電パターン64Bに対して順番にタッチ位置検出のための電圧信号を供給する。指先が保護層56の上面に接触又は近接させることで、タッチ位置に対向する第1導電パターン64A及び第2導電パターン64BとGND(グランド)間の容量が増加することから、当該第1導電パターン64A及び第2導電パターン64Bからの伝達信号の波形が他の導電パターンからの伝達信号の波形と異なった波形となる。従って、制御回路では、第1導電パターン64A及び第2導電パターン64Bから供給された伝達信号に基づいてタッチ位置を演算する。一方、相互容量方式の場合は、例えば第1導電パターン64Aに対して順番にタッチ位置検出のための電圧信号を供給し、第2導電パターン64Bに対して順番にセンシング(伝達信号の検出)を行う。指先が保護層56の上面に接触又は近接させることで、タッチ位置に対向する第1導電パターン64Aと第2導電パターン64B間の寄生容量に対して並列に指の浮遊容量が加わることから、当該第2導電パターン64Bからの伝達信号の波形が他の第2導電パターン64Bからの伝達信号の波形と異なった波形となる。従って、制御回路では、電圧信号を供給している第1導電パターン64Aの順番と、供給された第2導電パターン64Bからの伝達信号に基づいてタッチ位置を演算する。このような自己容量方式又は相互容量方式のタッチ位置の検出方法を採用することで、保護層56の上面に同時に2つの指先を接触又は近接させても、各タッチ位置を検出することが可能となる。…(後略)」

(コ)
「【0041】
次に、導電性フイルム10の作製方法の各工程について説明する。
[露光]
本実施の形態では、導電部14を印刷方式によって施す場合を含むが、印刷方式以外は、導電部14を露光と現像等によって形成する。すなわち、透明基体12上に設けられた銀塩含有層を有する感光材料又はフォトリソグラフィ用フォトポリマーを塗工した感光材料への露光を行う。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
[現像処理]
本実施の形態では、乳剤層を露光した後、さらに現像処理が行われる。
…(中略)…
【0044】
[物理現像及びめっき処理]
本実施の形態では、前記露光及び現像処理により形成された金属銀部の導電性を向上させる目的で、前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させるための物理現像及び/又はめっき処理を行ってもよい。本発明では物理現像又はめっき処理のいずれか一方のみで導電性金属粒子を金属銀部に担持させてもよく、物理現像とめっき処理とを組み合わせて導電性金属粒子を金属銀部に担持させてもよい。なお、金属銀部に物理現像及び/又はめっき処理を施したものを含めて「導電性金属部」と称する。」

(サ)
「【0046】
[導電性金属部]
本実施の形態の導電性金属部の線幅(金属細線16の線幅)は、30μm以下が選択可能であり、下限は0.1μm以上、1μm以上、3μm以上、4μm以上、もしくは5μm以上が好ましく、上限は30μm以下、15μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下が好ましい。…(後略)」

(シ)
「【0049】
導電性金属部の厚さは、タッチパネル50の用途としては、薄いほど表示パネル58の視野角が広がるため好ましく、視認性の向上の点でも薄膜化が要求される。このような観点から、導電性金属部に担持された導電性金属からなる層の厚さは、9μm未満であることが好ましく、0.1μm以上5μm未満であることがより好ましく、0.1μm以上3μm未満であることがさらに好ましい。」

(ス)
「【0069】
【表3】



(セ)
「【0070】
【表4】



(ソ)
「【0071】 表3及び表4から、比較例1?6はいずれも評価がDであり、モアレが顕在化していることがわかった。一方、実施例1?60は、実施例1、4、21、24、25、28?33、36、37、40、57、60において、モアレがやや顕在化しているが問題のないレベルであった。これ以外の実施例のうち、実施例2、3、5、8、9、12、13、16、17、20、22、23、26、27、34、35、38、39、41、44、45、48、49、52、53、56、58、59についてはほとんどモアレの発生がなく良好であった。特に、小格子70の第1辺70aと第1方向とのなす角θが32°?39°であって、小格子70の一辺の長さが220μm、240μmである実施例6、7、10、11、14、15、18、19、42、43、46、47、50、51、54、55についてはモアレの発生はなかった。」

(タ)
「【図1】



(チ)
「【図5】



(ツ)
「【図9】



(テ)
「【図10】



上記(ウ)の【0009】に記載の「導電性フイルム10」は、上記(エ)の【0013】等に記載の「導電性フィルム10A」及び「導電性フィルム10B」に共通する構成を記載したものと理解することができる。
よって、上記(カ)の【0020】の記載において、「第1導電性フイルム10B」に形成された「第2導電パターン64A(メッシュパターン)」の「メッシュパターン」は、上記(ウ)の【0009】に記載の「メッシュパターン20」と同一視できる。そうすると、上記(カ)の【0020】の記載において、「第2導電パターン64B」(メッシュパターン)を構成する「小格子70」は、上記(ウ)の【0009】に記載の「メッシュパターン20の1つのメッシュ形状22、すなわち、1つの開口部18と、該1つの開口部18を囲む4つの金属細線16の組み合わせ形状」と同一視できる。

また、上記(エ)の【0014】の記載「m方向は、例えば後述する投影型静電容量方式のタッチパネル50(図5参照)の水平方向(又は垂直方向)あるいはタッチパネル50を設置した表示パネル58の水平方向(又は垂直方向)を示す。」からすれば、「m方向」は、タッチパネル又は表示パネルの水平方向であっても垂直方向であってもよいことになる。
しかしながら、
・上記(オ)の【0019】の記載「図5の例では、第1導電性フイルム10Aの外形は、上面から見て長方形状を有し、センサ部60の外形も長方形状を有する。」及び「長辺:n方向」、
・上記(ク)の【0024】の記載「短辺:m方向」
・上記(チ)の【図5】の記載において、センサ部60の長辺の方向をn方向、短辺の方向をm方向としていること、
等からすれば、引用文献には、センサ部60の外形が長方形状であり、その長辺の方向をn方向とし、短辺の方向をm方向とする構成が具体的に開示されていると認められる。

また、上記(ウ)の【0009】の記載によれば、「金属細線16」は、「導電部14」のうち「開口部」を除いた、金属で構成される部分であり、また、上記(コ)の【0041】及び【0044】の記載によれば、当該金属で構成される部分は、露光及び現像処理により形成された金属銀部に物理現象及び/又はめっき処理を施した「導電性金属部」と同定できる。
よって、上記(サ)の【0046】の記載「導電性金属部の線幅(金属細線16の線幅)」からすれば、「導電性金属部の線幅」と「金属細線16の線幅」は同義であり、また、上記(シ)の「導電性金属部の厚さ」は、「金属細線16の厚さ」と同義である。

また、上記(イ)の【0004】の記載によれば、引用文献1に記載された発明の課題の一つはモアレの発生を抑制することである。
上記(ス)の【表3】及び上記(セ)の【表4】において、「小格子」の欄の「なす角」の項は、上記(エ)の【0016】に記載の「少なくとも1つの辺と第1方向(m方向)とのなす角θ」を意味するものと解され、また、前記【表3】及び【表4】において、「小格子」の欄の「線幅」の項は、「小格子70」を構成する「金属細線16」の線幅と理解することができる。そして、前記【表3】及び【表4】において「線幅」の項はすべて「6μm」である。
また、上記(ソ)の【0071】の記載によれば、前記【表3】及び【表4】の実施例1?60のうち、「モアレ評価」の欄が「A」とされている、実施例6、7、10、11、14、15、18、19、42、43、46、47、50、51、54及び55が、モアレの発生がなく、上記の課題の観点からすれば、最も好適な実施例とされている。そして、最も好適な実施例のうち、実施例42、43、46、47、50、51、54及び55の「なす角」は51°?58°である。
よって、小格子70の少なくとも1つの辺と第1方向とのなす角θが51°?58°であって、小格子70の一辺の長さが220μm又は240μmであり、金属細線16の線幅が6μmである実施例は、モアレの発生がない好適な実施例に含まれると理解することができる。

イ 引用発明
前記アから、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 簡単な構成で、汎用の表示装置の表示パネルに取り付けてもモアレが発生しにくく、しかも、高歩留まりで生産することができる導電性フイルム及びそれを備えるタッチパネルを有する表示装置であって、
タッチパネル50は、センサ本体52と制御回路とを有し、センサ本体52は、第1導電性フイルム10Aと第2導電性フイルム10Bとを積層して構成された積層導電性フイルム54とを有し、
センサ本体52は、上面から見たときに、表示パネル58の表示画面58aに対応した領域に配されたセンサ部60と、表示パネル58の外周部分に対応する領域に配された端子配線部62(いわゆる額縁)とを有し、
センサ部60の外形は長方形状を有し、その長辺の方向をn方向とし、短辺の方向をm方向とし、
第1導電性フィルム10A及び第2導電性フィルム10Bは、透明基体と、透明基体の一方の主面に形成された導電部14とを有し、導電部14は、金属製の細線(金属細線16)と開口部18とによるメッシュパターン20を有し、
導電部14は、第1方向に延び、且つ、第2方向にピッチPsで並ぶ複数の第1金属細線16aと、第2方向に延び、且つ、第1方向にピッチPsで並ぶ複数の第2金属細線16bとがそれぞれ交差して形成されたメッシュパターン20を有し、この場合、第1方向は基準方向(水平方向)に対して+30°以上+60°以下の角度で傾斜し、第2方向は基準方向に対して-30°以上-60°以下の角度で傾斜しており、従って、メッシュパターン20の1つのメッシュ形状22、すなわち、1つの開口部18と、該1つの開口部18を囲む4つの金属細線16の組み合わせ形状である小格子70は、頂角部が60°以上120°以下のひし形状となり、
第1導電性フイルム10Aは、センサ部60に対応した部分に、金属細線16からなる多数の第1導電パターン64Aが配列され、
第2導電性フイルム10Bは、センサ部60に対応した部分に、金属細線16からなる多数の第2導電パターン64Bが配列され、
制御回路は、第1導電パターン64A及び第2導電パターン64Bから供給された伝達信号に基づいてタッチ位置を演算することにより、または、電圧信号を供給している第1導電パターン64Aの順番と、供給された第2導電パターン64Bからの伝達信号に基づいてタッチ位置を演算することにより、タッチ位置を検出するものであり、
第2導電パターン64Bは、それぞれ第4方向(n方向)に延在し、且つ、第3方向(m方向)に配列され、それぞれ2以上の小格子70が組み合わされたメッシュパターン20であり、
小格子70は、ひし形とされ、少なくとも1つの辺とm方向とのなす角θは、30°?44°あるいは46°?60°に設定され、
金属細線16の線幅は、0.1μm以上15μm以下が好ましく、1μm以上9μm以下がより好ましく、2μm以上7μm以下がさらに好ましく、
金属細線16の厚さは、薄いほど好ましく、9μm未満であることが好ましく、0.1μm以上5μm未満であることがより好ましく、0.1μm以上3μm未満であることがさらに好ましく、
小格子70の少なくとも1つの辺と第1方向とのなす角θが51°?58°であって、小格子70の一辺の長さが220μm又は240μmであり、金属細線16の線幅が6μmである実施例は、モアレの発生がない好適な実施例に含まれる、
導電性フイルム及び表示装置。」

(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明において、「第1導電性フイルム10Aと第2導電性フイルム10Bとを積層して構成された積層導電性フイルム54」は、「タッチパネルを有する表示装置」の「タッチパネル50」の構成要素であり、また、「タッチパネル50」は、「制御回路は、第1導電パターン64A及び第2導電パターン64Bから供給された伝達信号に基づいてタッチ位置を演算することにより、または、電圧信号を供給している第1導電パターン64Aの順番と、供給された第2導電パターン64Bからの伝達信号に基づいてタッチ位置を演算することにより、タッチ位置を検出するもの」との構成を備えるから、「タッチパネル50」は、「積層導電性フイルム54」の「第1導電パターン64A」と「第2導電パターン64B」とにより検出された信号によりタッチ位置を検出(センス)するものであるから、「積層導電性フイルム54」は、タッチパネルのセンサとして機能しているといえる。
よって、引用発明の「積層導電性フイルム54」は、本件補正発明の「タッチパネルセンサ」に相当する。

イ 引用発明において、「タッチパネル50」の「センサ本体52」は、表示パネル58の表示画面58aに対応した領域に配された「センサ部60」と、表示パネル58の外周部分に対応する領域に配された「端子配線部62」(いわゆる額縁)とを有し、センサ部60の外形は長方形状を有し、また、「第1導電性フイルム10A」は、「センサ部60に対応した部分に、金属細線16からなる多数の第1導電パターン64Aが配列され、第2導電性フイルム10Bは、センサ部60に対応した部分に、金属細線16からなる多数の第2導電パターン64Bが配列され」るものであり、前記アで述べたように、引用発明においては、「積層導電性フイルム54」の「第1導電パターン64A」と「第2導電パターン64B」とにより検出された信号によりタッチ位置を検出するものである。
そうすると、引用発明において、「積層導電性フイルム54」(タッチパネルセンサ)のうち「第1導電パターン64A」と「第2導電パターン64B」とが配列された領域であって、長方形状を有する「センサ部60」に対応する領域は、本件補正発明の「タッチ位置を検出され得る領域に対応する矩形状のアクティブエリア」に相当し、また、引用発明において、「積層導電性フイルム54」のうち、「第1導電パターン64A」と「第2導電パターン64B」とが配列されている領域の周辺にあり、表示パネル58の外周部分に対応する領域に配された「端子配線部62」(いわゆる額縁)に対応する領域は、本件補正発明の「前記アクティブエリアの周辺に位置する非アクティブエリア」に相当する。
また、これを言い換えると、引用発明の「積層導電性フイルム54」は、「矩形状のアクティブエリア」と「非アクティブエリア」とに少なくとも区画されているといえる。
よって、引用発明は、本件補正発明の「前記タッチパネルセンサは、タッチ位置を検出され得る領域に対応する矩形状のアクティブエリアと、前記アクティブエリアの周辺に位置する非アクティブエリアと、に少なくとも区画され」の構成を備える。

ウ 引用発明は、「センサ部60の外形は長方形状を有し、その長辺の方向をn方向とし、短辺の方向をm方向とし」との構成を備え、「センサ部60」は、前記イより、「矩形状のアクティブエリア」に相当する領域であり、「長辺」及び「短辺」は、「矩形状のアクティブエリア」の「輪郭」を構成する要素である。また、「n方向」及び「m方向」はそれぞれ、「第1方向」及び「第2方向」と言い替えることは任意である。
よって、前記イを参酌すれば、引用発明は、本件補正発明の「前記矩形状のアクティブエリアの輪郭は、第1方向に延びる長辺と、第2方向に延びる短辺と、を含み」との構成を備える。

エ 引用発明において、「積層導電性フイルム54」は、「第1導電性フイルム10Aと第2導電性フイルム10Bとを積層して構成された」ものであるから、「第2導電性フィルム10B」は、「積層導電性フイルム54」を構成する「第1導電性フイルム10A」と「第2導電性フイルム10B」とのうちの「一方の側」といい得るものである。
また、前記イで述べたように、引用発明において、「第2導電パターン64B」は、「センサ」として機能し、「導電」性を有するものであるから、「電極」といい得るものであって、これを「第1電極」と称することは任意である。
また、引用発明は、「第2導電性フイルム10Bは、センサ部60に対応した部分に、金属細線16からなる多数の第2導電パターン64Bが配列され」との構成を備えるから、「多数の第2導電パターン64B」は、「複数の第1電極」といい得るものである。
また、前記イで述べたことから、引用発明の「多数の第2導電パターン64B」は、「アクティブエリア内に設けられ」たものである。
また、引用発明は、「第2導電パターン64Bは、それぞれ第4方向(n方向)に延在し、」との構成を備え、前記ウで述べたように、「n方向」は「第1方向」に相当するから、引用発明の「多数の第2導電パターン64B」は、「第1方向に延びる」ものといえる。
そうすると、引用発明は、本件補正発明の「前記タッチパネルセンサは、前記タッチパネルセンサの一方の側において前記アクティブエリア内に設けられ、前記第1方向に延びる複数の第1電極を備え」との構成を備える。

オ 引用発明は、「第2導電性フイルム10Bは、センサ部60に対応した部分に、金属細線16からなる多数の第2導電パターン64Bが配列され」、「第2導電パターン64Bは、それぞれ第4方向(n方向)に延在し、且つ、第3方向(m方向)に配列され、それぞれ2以上の小格子70が組み合わされたメッシュパターン20であり」及び「小格子70は、ひし形とされ」との構成を備えるものである。
ここで、「第2導電パターン64」を構成する「金属細線16」は、「金属」であることから、「遮光性および導電性を有する」「導線」といえる。また、この「導線」を「第1導線」と称することは任意である。
さらに、「第2導電パターン64B」において、「小格子70」が組み合わされた「メッシュパターン20」は、「第1金属細線16aと、第2方向に延び、且つ、第1方向にピッチPsで並ぶ複数の第2金属細線16bとがそれぞれ交差して形成された」ものであって、「小格子70」は、「1つの開口部18と、該1つの開口部18を囲む4つの金属細線16の組み合わせ形状」であるから、「第2導電パターン64B」は、「複数の第1導電」を「メッシュパターン」すなわち「網目状」に配置して構成されたものといえる。
また、「ひし形」である「小格子70」は、「1つの開口部18と、該1つの開口部18を囲む4つの金属細線16の組み合わせ形状」であって、「ひし形」は「四角形状」に含まれる概念である。よって、「メッシュパターン20」は、「金属細線16」(第1導線)の間に「四角形状」の「開口部」が形成されるように網目状に配置することによって形成されたものといえる。
そうすると、引用発明は、本件補正発明の「前記第1電極は、遮光性および導電性を有する複数の第1導線を、各第1導線の間に四角形状の開口部が形成されるよう網目状に配置することによって構成されており、」との構成を備える。

カ 前記オを参酌すれば、引用発明において、「小格子70」の形状である「ひし形」は、「第1金属細線16a」と「第2金属細線16b」が互いに交わることによって形成される「4つの内角」を含むものといえる。
そうすると、引用発明は、本件補正発明の「前記四角形状の開口部は、前記第1導線が互いに交わることによって形成される4つの内角を含み」との構成を備える。

キ 引用発明は、「導電部14は、第1方向に延び、且つ、第2方向にピッチPsで並ぶ複数の第1金属細線16aと、第2方向に延び、且つ、第1方向にピッチPsで並ぶ複数の第2金属細線16bとがそれぞれ交差して形成されたメッシュパターン20を有し、この場合、第1方向は基準方向(水平方向)に対して+30°以上+60°以下の角度で傾斜し、第2方向は基準方向に対して-30°以上-60°以下の角度で傾斜しており」との構成を備え、また、引用発明の「第2導電パターン64B」は、「第4方向(n方向)に延在し」、「第2導電パターン64B」を構成する「小格子70」は、「ひし形とされ、少なくとも1つの辺とm方向とのなす角θは、30°?44°あるいは46°?60°に設定され」るものであり、また、前記(2)アの(タ)(【図1】)、(ツ)(【図9】)及び(テ)(【図10】)からすれば、「第2導電パターン64B」を構成する個々の「小格子70」(「ひし形」)は、n方向(第1方向)とm方向(第2方向)のそれぞれに対して対称となるように配列されてなる「メッシュパターン20」を形成していると認められる。
そうすると、「小格子70」(「ひし形」)の4つの内角は、「n方向」(第1方向)において対向する一対の内角と、「m方向」(第2方向)において対向する一対の内角とからなるといえ、前者の内角を「第1内角」、後者の内角を「第2内角」と称することは任意である。
よって、引用発明は、本件補正発明の「前記4つの内角は、前記第1方向において対向する一対の第1内角と、前記第2方向において対向する一対の第2内角と、からなり」との構成を備える。

ク 前記キで述べたように、引用発明においては、「小格子70」(「ひし形」)は、n方向(第1方向)とm方向(第2方向)のそれぞれに対して対称となるように配列されていると認められるから、「m方向」(第2方向)に対向する一対の「第2内角」のそれぞれの角度は、少なくとも1つの辺と「m方向」(第2方向)とのなす角θの2倍となる。そして、角θは、「30°?44°あるいは46°?60°」であるから、「第2内角」の角度は、角θの2倍の「60°?88°あるいは92°?120°」となる。一方、「小格子70」の形状が「ひし形」であることから、「n方向」(第1方向)に対向する一対の「第1内角」のそれぞれの角度は、「第2内角」の角度が「60°?88°」である場合は120°?92°となり、「第2内角」の角度が「92°?120°」である場合は88°?60°となる。
また、「鋭角」とは、0°より大きく90°未満、「鈍角」とは、90°より大きく180°より小さい角度のことをいうことは技術常識である。
そうすると、角度「60°?88°」は鋭角、角度「120°?92°」は鈍角である。
また、引用発明は、「小格子70の少なくとも1つの辺と第1方向とのなす角θが51°?58°」を好適な実施例として含むものであり、この場合の「第1内角」は、78°?64°であり、鋭角であって、「第2内角」(角θの2倍である102°?116°)は鈍角となる。
よって、前記オ及びカを参酌すれば、引用発明は、本件補正発明の「前記一対の第1内角がいずれも鋭角となり、前記一対の第2内角がいずれも鈍角となるよう、前記複数の第1導線が配置されており」との構成を備える。

ケ 引用発明は、「金属細線16の線幅は、0.1μm以上15μm以下が好ましく、1μm以上9μm以下がより好ましく、2μm以上7μm以下がさらに好ましく」との構成を備え、加えて、好適な実施例として、「金属細線16の線幅が6μmである」ものを含んでいる。
よって、引用発明は、本件補正発明の「前記第1導線の幅は1?10μmの範囲内であり」との構成に相当する構成を備えるものである。

コ 引用発明は、「金属細線16の厚さは、薄いほど好ましく、9μm未満であることが好ましく、0.1μm以上5μm未満であることがより好ましく、0.1μm以上3μm未満であることがさらに好ましい」との構成を備えており、好適な範囲として、「0.1μm」を下限とする態様を含んでいる。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、少なくとも「前記第1導線の厚みは0.1μm以上である」との構成において共通する。

(4)一致点・相違点
前記(3)より、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「 タッチパネルセンサであって、
前記タッチパネルセンサは、タッチ位置を検出され得る領域に対応する矩形状のアクティブエリアと、前記アクティブエリアの周辺に位置する非アクティブエリアと、に少なくとも区画され、
前記矩形状のアクティブエリアの輪郭は、第1方向に延びる長辺と、第2方向に延びる短辺と、を含み、
前記タッチパネルセンサは、前記タッチパネルセンサの一方の側において前記アクティブエリア内に設けられ、前記第1方向に延びる複数の第1電極を備え、
前記第1電極は、遮光性および導電性を有する複数の第1導線を、各第1導線の間に四角形状の開口部が形成されるよう網目状に配置することによって構成されており、
前記四角形状の開口部は、前記第1導線が互いに交わることによって形成される4つの内角を含み、
前記4つの内角は、前記第1方向において対向する一対の第1内角と、前記第2方向において対向する一対の第2内角と、からなり、
前記一対の第1内角がいずれも鋭角になり、前記一対の第2内角がいずれも鈍角になるよう、前記複数の第1導線が配置されており、
前記第1導線の幅は1?10μmの範囲内であり、前記第1導線の厚みは0.1μm以上である、タッチパネルセンサ。」

<相違点>
「第1導線の厚み」に関して、本件補正発明は、その上限値を「0.5μm」とするのに対し、引用発明は、下限値を「0.1μm」とした場合の上限値が、「5μm」又は「3μm」とする点。

(5)相違点についての判断
引用発明は、、「金属細線16の厚さは、薄いほど好ましく、9μm未満であることが好ましく、0.1μm以上5μm未満であることがより好ましく、0.1μm以上3μm未満であることがさらに好ましい」との構成を備えており、この中で、「0.1μm以上5μm未満」及び「0.1μm以上3μm未満」はいずれも、本件補正発明の「0.1?0.5μm」の範囲を包含するものであるから、上記相違点は、実質的な差異ではない。
仮に、実質的な差異であるとしても、引用発明において「金属細線16の厚さ」は、「薄いほど好ましく」とあることからすれば、その厚さの上限値を「3μm」よりも小さい値とすることには動機付けがある。また、引用文献1の【0049】には、「本実施の形態では、上述した銀塩含有層の塗布厚みをコントロールすることにより所望の厚さの金属銀部を形成し、さらに物理現像及び/又はめっき処理により導電性金属粒子からなる層の厚みを自在にコントロールできるため、5μm未満、好ましくは3μm未満の厚みを有する導電性フイルムであっても容易に形成することができる。」と記載されているように、引用発明は、「金属細線16」(導電性金属部)を構成する金属銀部又は導電性金属粒子からなる層の厚みを自在にコントロールできることを想定していることからすれば、「金属細線16」(第1導線)の厚さの上限値を「0.5μm」に設定することは、当業者が適宜なし得ることにすぎず、そのことによる効果も当業者が容易に予測し得る範囲内のものである。
したがって、上記相違点は、実質的なものではないか、仮に実質的なものであるとしても、当業者が容易に想到し得たものである。

(6)請求人の主張
請求人は、請求の理由において、以下のように主張している。
「本願発明は、1?10μmの幅を有し、0.1?0.5μmの厚みを有する第1導線によって構成される開口部の4つの内角が、長辺方向である第1方向において対向する一対の鋭角の第1内角と、短辺方向である第2方向において対向する一対の鈍角の第2内角と、からなることを特徴としている。すなわち、本願発明は、第1導線の幅、第1導線の厚み、及び第1導線の平面視における形状の組み合わせを特徴としている。また、本願発明によれば、これらの特徴の組み合わせにより、アクティブエリアの長辺方向に延びている第1電極の抵抗値とアクティブエリアの短辺方向に延びている第2電極の抵抗値との差が大きくなることを抑制することができる。
一方、引用文献1には、小格子70の辺の幅、厚み及び平面視の形状を本願発明のように組み合わせる旨の記載はない。また、引用文献1には、表示画面58aの長辺方向に延びるメッシュパターンの電気抵抗値に関する課題の記載も示唆もない。従って、小格子70の辺の幅、厚み及び平面視の形状を当業者が本願発明のように組み合わせる動機はない。これらのことから、本願発明は、引用文献1に記載の発明と同一のものではなく、引用文献1に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものでもないと考える。」

しかしながら、引用文献には、金属細線16(導電性金属部)の「線幅」と、「厚さ」と、少なくとも1つの辺とm方向とのなす「角θ」との間の技術的な因果関係について特段の条件(制約)は記載されていないから、前記「線幅」、「厚さ」又は「角θ」のそれぞれが特定の値又は態様を選択した場合に、他の事項が特定の数値又は態様に制約されるものではなく、記載された範囲の中からそれぞれ独自に任意に選択ないし設定可能なものである。
加えて、引用発明は、金属細線16の線幅を6μmとし、小格子70のn方向に対向する内角(第1内角)を鋭角とし、m方向に対向する内角(第2内角)を鈍角とすることを組み合わせた好適な実施例を含むものであり、さらに、引用発明において、金属細線16の厚さは「薄いほど好ましく」である以上、前記の好適な実施例においても、その厚さの下限値である0.1μmないしその近辺の数値、すなわち、本件補正発明の「0.1?0.5μm」の範囲に含まれる数値を採用することは実質的に開示されているといえる。仮に、実質的に開示されているとまではいえないとしても、そのような数値を採用することは当業者にとって容易なことである。
また、引用文献には、請求人が主張する本願の課題「アクティブエリアの長辺方向に延びている第1電極の抵抗値とアクティブエリアの短辺方向に延びている第2電極の抵抗値との差が大きくなることを抑制すること」といった課題又は作用効果について記載されていないが、本件補正発明が引用発明である場合は、引用発明は、本件補正発明において具体的に特定されている構成に対応する限りにおいて本件補正発明と同等の作用・効果を奏するものであることは自明であり、また、本件補正発明が引用発明に基づいて容易に発明することができたものである場合は、当業者にとってそのことによる作用効果を予測することは容易なことである。
よって、前記「線幅」、「厚さ」又は「角θ」のそれぞれに関して、前記(2)イの「引用発明」のように引用発明を認定することに誤りはなく、本件補正発明は引用発明であるか、又は、本件補正発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

よって、上記請求人の主張は採用することができない。

(6)判断
そうすると、本件補正発明は、引用発明であるから、特許法29条1項3号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるか、又は、本件補正発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年8月8日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、出願時の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-164648号公報(引用文献1)に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記第1導線の幅は1?10μmの範囲内であり、前記第1導線の厚みは0.1?0.5μmの範囲内である」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)ないし(5)に記載したとおり、引用発明であるから、本願発明も、引用発明である。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-09-29 
結審通知日 2020-10-02 
審決日 2020-10-13 
出願番号 特願2015-73168(P2015-73168)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 113- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 滝谷 亮一  
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 林 毅
小田 浩
発明の名称 タッチパネルセンサ  
代理人 永井 浩之  
代理人 中村 行孝  
代理人 朝倉 悟  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 岡村 和郎  
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