• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1368916
審判番号 不服2020-4904  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-10 
確定日 2020-12-07 
事件の表示 特願2017-242302「静電チャック」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月15日出願公開、特開2018-182290〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成29年12月19日(優先権主張:平成29年4月18日)の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年12月19日 :手続補正書の提出
平成29年12月22日 :手続補正書の提出
平成31年 4月 3日 :手続補正書の提出
令和 元年12月 9日付け:拒絶理由通知書
令和 元年12月20日 :意見書,手続補正書の提出
令和 2年 1月 8日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 1月14日 :意見書,手続補正書の提出
令和 2年 3月23日付け:拒絶査定
令和 2年 4月10日 :審判請求書,手続補正書の提出

第2 令和2年4月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年4月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)
「ウエハ支持面を有する静電チャックで,
ウエハが昇温されることで前記ウエハ支持面にウエハから放出されてウエハと前記ウエハ支持面との間に滞留するガスを外部に排出するための複数の溝が形成されていて,
前記ウエハが支持される場所で全ての溝が連通し,溝の連通箇所の全てで三叉路が形成されているとともに,
前記ウエハ支持面に前記三叉路が複数形成されている静電チャック。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,令和2年1月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「ウエハ支持面を有する静電チャックで,
前記ウエハ支持面にウエハから放出されてウエハと前記ウエハ支持面との間に滞留するガスを外部に排出するための複数の溝が形成されていて,
前記ウエハが支持される場所で全ての溝が連通し,溝の連通箇所の全てで三叉路が形成されている静電チャック。」

2 補正の適否
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項について,上記のとおり限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2006-179693号公報(以下「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は,当審で付した。)
「【請求項1】
ヒータ付き静電チャックであって,両表面に絶縁体層を有し,一方の表面に静電チャック機能を有し,かつもう一方の面にヒータ機能を有すると共に,両表面もしくは片方の表面に外周縁にまで連通したガス抜き用溝を設けたことを特徴とするヒータ付き静電チャック。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は,半導体製造用成膜装置などに用いられるヒータ付き静電チャックであって,急速昇温が可能でかつ昇温中においてヒータ全域を一定の温度に加熱することができる円盤状ヒータ付き静電チャックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造過程で,主として半導体ウェハの表面に微細配線を形成するために用いられるプラズマCVD,減圧CVD,光CVD,PVDなどの成膜装置や,プラズマエッチング装置においては,半導体ウェハは,反応室内にてヒータ付き静電チャック表面に載置支持される。この時,半導体ウェハ面内での成膜あるいはエッチングの均一性を維持するために,円盤状ヒータに載置された半導体ウェハは均一に加熱されていることが重要となる。
【0003】
従来,この種の円盤状ヒータでは,アルミナや窒化アルミニウム等のセラミックス等の円盤状の絶縁性基板の上面をウェハ載置面とし,その内部に,ウェハ載置面側に静電チャック電極を,他側にニクロム,タングステン等の高融点金属からなる帯状の発熱抵抗体を埋設したヒータ付き静電チャックが用いられている。この帯状の発熱抵抗体のパターンとしては,通常,略同心円状または渦巻き状に形成したものが用いられている(特許文献1参照)。
【0004】
静電チャックの吸着力は,被吸着体と静電チャックの静電チャック電極間に静電吸着力を発生させて被吸着体を静電チャックに吸着させるものである。静電吸着力は,クーロン力と,いわゆるジョンセン・ラーベック(Johnsen-Rahbek)力の2種類よりなる。
【0005】
どちらの力も,静電チャック電極と被吸着体であるウェハとの間の距離の2乗に反比例するとされている。このため,被吸着体と静電チャック表面との距離は,吸着力を管理する上で重要な要素となり,被吸着体(被処理物)の位置によって吸着力に差があると,被処理物たる半導体ウェハ表面の温度分布が大きくなることに繋がると考えられる。」

「【0007】
従来このようなヒータ付き静電チャックでは,温度の均一性を企図して,表面が平坦に仕上げ加工されたものが一般的であった。
ウェハへの微細配線形成工程では,ヒータ付き静電チャックの表面温度を350℃から500℃に維持しており,ゲートバルブを通して反応室に投入されたウェハはヒータ付き静電チャックを貫通して上下にスライド可能に設置されたリフトピン等に載置され,ゆっくりと前記静電チャック表面に降ろされる。
【0008】
そして,静電チャックの電極に所定の電圧を印加することで,ウェハが静電気力により吸着固定され,発熱抵抗体に通電して加熱昇温される。
ゲートバルブを通して反応室に投入されたウェハは,表面に水分やガスを吸着していることが多い。これを急激に加熱昇温すると,ウェハの裏面に吸着されていたガスや水分が急激に加熱昇温されてウェハから離脱し,前記ヒータ付き静電チャックとウェハの間に滞留し,ウェハの密着性を阻害させることがあり,このことによりウェハの温度分布が部分的に大きく異なることになることがある。
従って,ゲートバルブを通して反応室に投入されたウェハは,直ちに加熱昇温させることができず,時間を掛けて十分にデガスする必要があった。
また,ウェハ処理装置の立ち上げ時には,ヒータ付き静電チャックそのものも吸湿・ガス吸着している可能性があり,ウェハ処理装置の立ち上げ時にも,予熱によってデガスを行う時間をとるのが通常であり,操業開始に準備時間が必要で,操業効率が悪いという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は,上記問題点に鑑み,ウェハ載置面において早急に装置の稼働を可能とし,また,ウェハに均一な温度分布を早急に形成し得るヒータ付き静電チャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のヒータ付き静電チャックは,両面もしくは片面に外周縁にまで連通したガス抜き用溝を設けたことを特徴とする。本発明のヒータ付き静電チャックの静電チャック機能は,熱伝導基材上にCVD法で,第一の絶縁体層と,第二の導電パタ-ン層と,第3の絶縁体層が積層されて構成される。前記第三の絶縁層の表面形状が,平坦面から前記ガス抜き用溝に向かって,緩やかな落ち込み形状を有していること,前記ガス抜き用溝が,幅1?3mm,深さ0.03mm?0.2mmで,且つ溝間の距離が5?15mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば,前工程や休止中でのガス環境により吸着したガスや湿分が,加熱昇温に伴う熱膨張・気化・離脱によって,ウェハの静電チャックへの密着性を阻害することがないように通常行われるウェハ処理装置の立ち上げ時やウェハのセッティング時にデガス措置に余分な時間を掛けることなく,早急にウェハの加熱操作を開始することができ,静電チャックからウェハに均一に熱を伝えることが出来るようになり,ヒータ付き静電チャックに載置されたウェハ表面の温度分布を均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者は,静電チャックを用いた半導体ウェハの処理の操業の迅速化・効率化全般について,また,特にウェハ載置面の温度分布を均一化する方法について,種々検討を重ねた結果,ウェハを載置する面,および発熱抵抗体側の装置フレームないしヒートシンクに接する面に外周縁にまで連通する小さな溝を形成し,この部分の溝を通じてウェハないし静電チャックに吸着されていたガスないし湿分が加熱に伴って離脱した結果生じた圧力を逃がすことにより,デガスのための時間を格別設けなくとも直ちに加熱操作を開始することができ,ウェハの均熱性の向上を図ることが可能であることを見いだし,本発明に至った。
即ち,本発明のヒータ付き静電チャックは,表面に設けた溝を外周縁にまで連通させることにより,ウェハと静電チャック面間ないし静電チャックと装置フレームないしヒートシンク間で発生したデガスによる圧力上昇を,最表面層である絶縁層に形成された溝を通じて圧力を逃がすことを特徴とするものである。
【0013】
以下,本発明のヒータ付き静電チャックについて,図面をもとに説明する。
図1は,本発明のヒータ付き静電チャックの表面に形成される溝パターンの一実施の形態を示す図である。図2は,本発明のヒータ付き静電チャックの表面に形成される溝パターンの一実施の形態を示す図である。図3は,本発明の静電チャックの表面に形成される溝形状の断面を模式的に示した図である。図4は,溝の縁近傍の形状の詳細を示した図である。図5は,本発明で対象とする半導体製造装置の概略説明図である。」

「【0015】
図4に示されるように,ガス抜き用溝6に向かって,第三の絶縁体層5の表面7は,ほぼ0.5?1mm(l_(2))に亘って,最大で2?10μm(l_(1))の深さに緩やかな落ち込み形状が形成され,その先は0.5?3mmのアールが形成される。緩やかな落ち込みとすることによって,ガス抜き用溝6近傍の半導体ウェハに対する固着力の低下を最小限にされている。
ガス抜き用溝6のパターンとしては,適宜に設定できるが,図1,図2に示されるようにすることが例示され得る。図1においては,第三の絶縁体層5の表面7の中心から適宜本数(図示の場合では4本)の直線状のガス抜き用溝6が外周縁にまで連通するように形成され,ガス抜き用溝6の間隔が5?15mmとなるように,短い直線上のガス抜き用溝がその間を埋めている。
【0016】
図2においては,図1の直線状と異なり,螺旋状のガス抜き用溝となっている。
ガス抜き用溝を設けたことにより,半導体ウェハに吸着されていたガス・湿分が加熱に伴って離脱・膨張しても,半導体ウェハと静電チャックとの界面にとどまって圧力上昇を来すことなく系外に排出が可能となるので,この静電チャック1が半導体ウェハ処理装置に組み付けられることにより,半導体ウェハに製膜・エッチング等の処理を行うに際して,半導体ウェハのセッティングの際にデガスのための準備期間を採ることなく直ちに所定温度への加熱操作を開始することができる。」





(イ)上記記載から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 引用文献1に記載された技術は,半導体製造用成膜装置などに用いられるヒータ付き静電チャックであって,急速昇温が可能でかつ昇温中においてヒータ全域を一定の温度に加熱することができる円盤状ヒータ付き静電チャックに関するものであること。(【0001】)

b 半導体素子の製造過程で,半導体ウェハは,反応室内にてヒータ付き静電チャック表面に載置支持され,この時,半導体ウェハ面内での成膜あるいはエッチングの均一性を維持するために,円盤状ヒータに載置された半導体ウェハは均一に加熱されていることが重要となること。(【0002】)

c 静電チャックの吸着力は,静電チャック電極と被吸着体であるウェハとの間の距離の2乗に反比例することから,被吸着体と静電チャック表面との距離は,吸着力を管理する上で重要な要素となり,被吸着体(被処理物)の位置によって吸着力に差があると,被処理物たる半導体ウェハ表面の温度分布が大きくなること。(【0004】,【0005】)

d ゲートバルブを通して反応室に投入されたウェハは,表面に水分やガスを吸着していることが多く,これを急激に加熱昇温すると,ウェハの裏面に吸着されていたガスや水分が急激に加熱昇温されてウェハから離脱し,前記ヒータ付き静電チャックとウェハの間に滞留し,ウェハの密着性を阻害させることがあり,このことによりウェハの温度分布が部分的に大きく異なることになることがあること。(【0008】)

e ウェハを載置する面に外周縁にまで連通する小さな溝を形成し,この部分の溝を通じてウェハないし静電チャックに吸着されていたガスないし湿分が加熱に伴って離脱した結果生じた圧力を逃がすことにより,デガスのための時間を格別設けなくとも直ちに加熱操作を開始することができ,ウェハの均熱性の向上を図ることが可能であることを見いだし,引用文献1に記載された発明に至ったこと。(【0012】)

f 引用文献1の請求項1には,「ヒータ付き静電チャックであって,両表面に絶縁体層を有し,一方の表面に静電チャック機能を有し,かつもう一方の面にヒータ機能を有すると共に,両表面もしくは片方の表面に外周縁にまで連通したガス抜き用溝を設けたことを特徴とするヒータ付き静電チャック。」という発明が記載されていること。(【請求項1】)

g ガス抜き用溝は,幅1?3mm,深さ0.03mm?0.2mmで,且つ溝間の距離が5?15mmであることが好ましく,ガス抜き用溝6のパターンとしては,適宜に設定できるが,図1,図2に示されるようにすることが例示され得ること。(【0010】,【0016】)

h 図1においては,第三の絶縁体層5の表面7の中心から適宜本数(図示の場合では4本)の直線状のガス抜き用溝6が外周縁にまで連通するように形成され,ガス抜き用溝6の間隔が5?15mmとなるように,短い直線上のガス抜き用溝がその間を埋めていること。(【0016】)

i ガス抜き用溝を設けたことにより,半導体ウェハに吸着されていたガス・湿分が加熱に伴って離脱・膨張しても,半導体ウェハと静電チャックとの界面にとどまって圧力上昇を来すことなく系外に排出が可能となるので,この静電チャック1が半導体ウェハ処理装置に組み付けられることにより,半導体ウェハに製膜・エッチング等の処理を行うに際して,半導体ウェハのセッティングの際にデガスのための準備期間を採ることなく直ちに所定温度への加熱操作を開始することができること。(【0016】)

(ウ)上記(ア),(イ)から,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「両表面に絶縁体層を有し,一方の表面に静電チャック機能を有し,かつもう一方の面にヒータ機能を有すると共に,前記一方の表面に外周縁にまで連通したガス抜き用溝を設けた,半導体素子の製造過程で,半導体ウェハを,反応室内にて,その表面に載置支持する,ヒータ付き静電チャックであって,
前記一方の表面の中心から4本の直線状のガス抜き用溝が外周縁にまで連通するように形成され,ガス抜き用溝の間隔が5?15mmとなるように,短い直線上のガス抜き用溝がその間を埋めており,
この部分の溝を通じてウェハないし静電チャックに吸着されていたガスないし湿分が加熱に伴って離脱した結果生じた圧力を逃がすことを特徴とするヒータ付き静電チャック。」

イ 引用文献2
(ア)同じく原査定に引用され,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった実願平01-097840号(実開平03-038357号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には,次の記載がある。


」(第1ページ4-15行)



」(第2ページ3-6行)



」(第2ページ11-20行)



」(第3ページ1-20行)



」(第4ページ1-14行)





(イ)上記記載から,引用文献2には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 表面の中心から3本の直線状のガス抜き用溝が外周縁にまで連通する構造。

b 全ての溝が連通した構造,及び,溝の連通箇所で三叉路が形成される構造が記載されていること。

ウ 引用文献3
(ア)同じく原査定に引用され,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2002-057209号公報(以下「引用文献3」という。)には,次の記載がある。
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,前記処理装置においては,ウエハを載置台上に載置するときや処理容器内を減圧するときなどにウエハの下面と載置台の上面との間に存在する気層ないし気体によってウエハが一時的に浮遊状態となり,ウエハが載置台上で位置ズレないし横滑りを生じる問題があった。例えば,所定の処理後に処理容器内の処理ガスを空にするために,真空引きにより処理容器内を処理圧力から一気に減圧する場合などに,ウエハの下面と載置台の上面との間に存在している気体が膨張し,その気体の圧力でウエハが一時的に浮き上がり,浮遊状態となって横滑りする場合がある。」

「【0006】本発明は,以上のような問題点を解決すべく創案されたものである。本発明の目的は,載置台上の被処理体の位置ズレないし横滑りを抑制ないし防止することができる枚葉式処理装置および処理方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のうち,請求項1の発明は,処理容器内に被処理体を載置する載置台を備えた枚葉式処理装置において,前記載置台の上面に複数の溝を形成すると共に,その溝と連通して載置台を貫通する複数の通気孔を設けてなることを特徴とする。
【0008】請求項2の発明は,請求項1記載の枚葉式処理装置において,前記溝が前記載置台の上面に略同じ面積の複数の島を形成するようなパターンに形成されていると共に,前記通気孔が各島の上面と被処理体の下面との間に存在する気体を均等に逃すように配置されていることを特徴とする。
【0009】請求項3の発明は,請求項1記載の枚葉式処理装置において,前記溝が前記載置台の上面にその半径方向の任意の線に対して斜めに交差するように略渦巻き状に形成されていることを特徴とする。」

「【0014】
【発明の実施の形態】以下に,本発明の実施の形態を添付図面に基いて詳述する。図1は本発明の実施の形態を示す枚葉式処理装置の断面図,図2は同処理装置の概略的構成を示す図,図3は載置台の上面を示す平面図,図4はウエハが浮く原理を説明する図,図5は従来装置と本発明装置でウエハの着地時間を比較するグラフ,図6は従来装置と本発明装置でウエハの浮き量を比較するグラフである。」

「【0016】この処理容器2内には,ウエハwを載置する載置台(サセプタ)3が設けられている。この載置台3は,耐熱性,電気絶縁性およびウエハに対して非汚染性の材料例えば焼結された窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックにより円板状に形成されている。この載置台3の内部には,抵抗発熱体4が面状に配置されて密封状態に設けられている。すなわち,載置台3は,ウエハwに対して金属汚染のないクリーンな,いわゆるセラミックヒータを有する構造になっており,載置台3の上面に載置されたウエハを所定の温度に加熱制御可能に構成されている。」

「【0022】ところで,ウエハwが載置台3上で横滑りを生じる大きな原因は,ウエハwが載置台3上で一時的に浮遊状態になることである。このウエハwの浮遊状態は,前記リフトピン22の降下によりウエハwを載置台3上に載置するときや処理容器2内を減圧するときなどに,ウエハwの下面と載置台3の上面との間(以下,単にウエハと載置台との間ともいう。)に存在する気体ないし気層によりウエハwが一時的に浮き上がることにより生じる。
【0023】リフトピン22の降下によりウエハwを載置台3上に載置するときには,ウエハwと載置台3との間に存在する気体がウエハwの周縁部から逃げるため,ウエハwが載置台3上に完全に着地するまでに10秒程度かかる(図5参照)。処理容器2内を減圧するとき,例えば所定の処理圧力例えば3999?9332Pa[30?70Torr]程度から真空パージのために例えば20Pa[150mTorr]程度に一気に減圧する場合,ウエハwと載置台3との間に存在する気体が膨張し,その圧力でウエハwが浮き上がり,ウエハwと載置台3との間に存在する気体がウエハwの周縁部から逃げるため,ウエハwが浮き始めてから載置台3上に再び完全に着地するまでに10秒程度かかる(図6参照)。
【0024】そこで,このような載置台3上におけるウエハの浮遊状態を抑制あるいは浮遊時間を短縮するために,前記載置台3の上面には,図2ないし図3に示すように,複数の溝30が形成されていると共に,その溝30と連通して載置台3を貫通する複数図示例では6つの通気孔31が設けられている。これらの溝30および通気孔31により,ウエハwと載置台3との間に存在する気体を迅速に逃して,載置台3上のウエハwの位置ズレないし横滑りを抑制ないし防止するように構成されている。
【0025】この場合,前記溝30は前記載置台3の上面に略同じ面積の複数の島32を形成するようなパターンに形成されていると共に,前記通気孔31は各島32の上面とウエハwの下面との間に存在する気体を均等に逃すことができるように所定の間隔で配置されていることが好ましい。図示例の場合,溝30は同心円状および放射状に形成されている。即ち,載置台3の上面には,同心円状の溝30aと放射状の溝30bとを形成することにより,これらの溝30a,30bで区画された複数の島32が形成されている。また,前記リフトピン22のピン孔23も,溝30に位置されている。」

「【0027】前記各島32は,最外側の島32aを除いて,周囲が溝30で囲まれており,最外側の島32aは,ウエハwの周縁部から気体を直接逃すことができるため,ウエハwの周縁部と対応する箇所を除く三方が溝30で囲まれている。これらの各島32(32aを含む)の面積ないし各島32の中心から周囲までの距離を略同じくすることにより,各島32の上面とウエハwの下面との間に存在する気体を略同時に迅速且つ面内均一に逃すことができるようになっている。溝30の幅は3mm程度,溝30の深さは0.2?1mm程度が好ましい。通気孔31の直径は2.5?3mm程度が好ましい。」

「【0044】図7は載置台の上面に形成される溝の他のパターンを示す平面図である。図7の実施の形態において,図3の実施の形態と同一部分は同一参照符号を付して説明を省略し,異なる部分について説明を加える。図7に示すように,載置台3の上面には,その半径方向の任意の線40に対して斜めに交差するように略渦巻き状に複数の溝30が形成されている。
【0045】前記溝30は,長さの短い溝30cと,長さの長い溝30d,30eとからなり,これらの溝30c,30d,30eが円周方向に適宜間隔で交互に配設されている。これらの溝30c,30d,30eの一端(外方端)は載置台3上に載置されるウエハwよりも大きい円上に配置されている。また,これらの溝30c,30d,30eは,加工が容易な直線状に形成されていることが好ましい。なお,長さの長い溝30d,30eのうちの一方の溝30eは,その他端(内方端)が載置台3の中心近くまで湾曲状に延長して形成されており,これにより載置台3とウエハwとの間における中心側に滞留する気体を逃すことができるようになっている。」

「【0049】以上,本発明の実施の形態を図面により詳述してきたが,本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく,本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の設計変更等が可能である。本発明は,酸化処理以外に,例えば成膜処理,エッチング処理,拡散処理,アニール処理,プラズマを用いた処理等を行う処理装置にも適用可能である。載置台としては,内部に抵抗発熱体を備えたものに限定されず,裏面から抵抗発熱体もしくは加熱ランプにより加熱するようにしたもの,あるいは加熱手段を有しないものであってもよい。また,被処理体としては,半導体ウエハ以外に,例えばガラス基板,LCD基板等も適用可能である。」









(イ)上記記載から,引用文献3には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 周囲が溝30で囲まれた各島32の面積ないし各島32の中心から周囲までの距離を略同じくすることにより,各島32の上面とウエハwの下面との間に存在する気体を略同時に迅速且つ面内均一に逃すことができること。

b 全ての溝が連通した構造,及び,溝の連通箇所で三叉路が形成される構造が記載されていること。

エ 引用文献4
(ア)同じく原査定に引用され,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平11-006069号公報(以下「引用文献4」という。)には,次の記載がある。
「【請求項1】 処理室内を減圧し,処理室内の載置台に被処理体を載置して被処理体に所定の処理を施す処理装置であって,
前記載置台表面の被処理体載置部分に,載置台外部に連通した凹溝が形成されていることを特徴とする処理装置。
【請求項2】 前記凹溝は,載置台の径方向に沿って放射状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。」

「【0012】本発明者らは,処理室内の圧力変動時における載置台上の被処理体の位置ずれの原因について検討した結果,被処理体と載置台との間の隙間に残留している微量のガスが減圧時に膨張し,この膨張したガスが被処理体を押し上げるためであるとの結論を得た。本発明では,このような検討結果に基づき,載置台表面の被処理体載置部分に,載置台外部に連通した凹溝を設け,このようなガスによる被処理体の押し上げを防止している。すなわち,本発明では,被処理体の下側で載置台の表面に載置台外部に連通した凹溝を形成しているため,処理室内の圧力の変動時,例えば,真空ポンプにより処理室内を減圧する際,被処理体と載置台との間の隙間に残留している微量のガスが膨張したとしても,この膨張したガスは,載置台表面の凹溝を介して載置台外部に放出される。したがって,圧力変動時であっても,被処理体が載置台上で位置ずれすることがない。」

「【0022】図2および図3に示すように,載置台5の外周端の若干内側には,環状の突条部40が形成されており,この環状の突条部40の内側には,突条部40より若干低くなるように段落ちして平坦な段落ち部41が形成されており,この段落ち部41に,ウエハWを載置するようになっている。この段落ち部41の外周部には,リフトピン6を通挿して案内するための3個の案内孔42が載置台5を貫通して形成されている。さらに,段落ち部41には,中心部から径方向に延出した6個の凹溝43が形成されており,この6個のうち3個の凹溝43は,その径方向外端で案内孔42に連通されている。」

「【0030】さらに,上記実施の形態では,凹溝を放射状に設けたが,ガスの放出が可能な形状であれば凹溝の形状は特に限定されるものではなく,例えば,格子状に形成することもできる。」





(イ)上記記載から,引用文献4には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 上記実施の形態では,凹溝を放射状に設けたが,ガスの放出が可能な形状であれば凹溝の形状は特に限定されるものではなく,例えば,格子状に形成することもできる。

b 全ての溝が連通した構造,及び,溝の連通箇所で三叉路が形成される構造が記載されていること。

オ 引用文献5
(ア)同じく原査定に引用され,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-088573号公報(以下「引用文献5」という。)には,次の記載がある。
「【請求項1】
真空容器内部に配置された処理室内に配置されその面上で被処理体のウエハを保持する載置台を備えて前記処理室内に形成したプラズマを用いて前記ウエハを処理するプラズマ処理装置において,
前記載置台の前記ウエハがその上で保持される面の中央部から外周端まで延在し当該外周端に開口を有する溝を備え,前記ウエハが前記載置台の上面で所定の高さに保持されて前記処理が施されるプラズマ処理装置。」

「【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のプラズマ処理装置において,
前記載置台は前記面上に互いに平行に配置された複数の前記溝を備えたプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載のプラズマ処理装置において,
前記溝が前記載置台の前記面上においてその中央部から少なくとも3つの方向に延在するプラズマ処理装置。」

「【0010】
また,ウエハの裏面にも膜が形成されたウエハでは,熱エネルギーによってウエハ裏面から脱ガスを起こし,ホバリングの要因となると考えられる。このようにウエハの位置ずれの原因となるウエハの凸状の反りに起因する裏面側のガスの圧力の上昇の低減またはホバリングの抑制について,上記の従来技術では考慮されていなかった。このため,ウエハの位置ずれに起因した異物が生起する,あるいは搬送用のロボットのアーム上に載せてウエハを載置台から持ち上げて搬送する際にウエハがアームから脱落したり搬送中に処理装置内部の部材と衝突したりしてウエハの損傷が生じることにより,処理の歩留まりや効率が損なわれていた。」

「【0030】
次に,本実施例のウエハ載置台12の表面に配置された溝の構成とその加工の工程について説明する。ウエハ20の温度の上昇に伴って生じる裏面と載置台の上面との間の空間内でのガス圧の上昇を抑制してウエハ20の位置ずれを低減する為に,本実施例のウエハ載置台12の表面には所定の形状の複数の溝14を形成している。」

「【0032】
また,本実施例のウエハ載置台12の溝14配置は,ウエハ載置台12中心部から外周側に向けて放射状に伸びる配置としている。しかし,溝14がウエハ載置台12中央部に集中して配置されて単位面積当たりの溝の面積の占める割合が外周側部分と比べて特定の値より大きくなると,ウエハ載置台12からウエハ20に伝達される熱量は外周側部分より中央側部分の方が相対的に小さくなり,ウエハ20表面方向についての温度の分布は中央部で低くなりアッシングレートは均一性が損なわれる虞が有る。
【0033】
このような課題を考慮して,発明者らが検討した結果,本実施例においては溝14の幅を4mm,深さを0.5mmの形状とすることで,アッシングレートのウエハ20の面方向の分布に悪影響を及さすことを抑制することができることが判った。また,溝14の配置は,溝14で区切られたウエハ載置台12の面積が,周方向について,ほぼ同じ値となるなるように配置することで,ウエハ載置台12表面の温度の分布の不均一性を低減できるという知見を得られた。」

「【0037】
一方,ウエハ20裏面に熱反応が起こしやすいカーボン膜などを形成している場合,急激な熱反応によってウエハ20の裏面側の膜から脱ガスが発生し,その脱ガスによって裏面側の空間21内の圧力が上がることでホバリング状態となりウエハ位置ずれが発生することも考えられる。尚,発明者らの検討によれば,ウエハの位置ずれが発生するタイミングは,アッシング処理条件の放電開始前の昇温ステップや放電中でも発生するという知見を得ている。
【0038】
そこで,発明者らは,本実施例のウエハ載置台12と従来技術によるウエハ載置台19を用いてウエハ位置ずれの要因の検証を行った。ウエハ20には,熱反応に顕著で膜応力を起こしやすいカーボン膜をウエハ表裏面および表面のみ形成したサンプルを作成し,アッシング処理を行いウエハの位置ずれ試験を実施した。
【0039】
処理条件は,脱ガスや副生成物が大量に発生しやすいと想定された図5(a)に示す条件を用いた。このような検証の結果,従来技術によるウエハ載置台19では,ウエハ表裏面及び表面のみに形成したサンプルのいずれもウエハ位置ずれが発生したが,本発明の溝加工したウエハ載置台12では,どちらのサンプルもウエハ位置ずれが発生しなかった。」





(イ)上記記載から,引用文献5には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 溝14がウエハ載置台12中央部に集中して配置されて単位面積当たりの溝の面積の占める割合が外周側部分と比べて特定の値より大きくなると,ウエハ載置台12からウエハ20に伝達される熱量は外周側部分より中央側部分の方が相対的に小さくなり,ウエハ20表面方向についての温度の分布は中央部で低くなりアッシングレートは均一性が損なわれる虞が有ること。

b 溝14の配置は,溝14で区切られたウエハ載置台12の面積が,周方向について,ほぼ同じ値となるなるように配置することで,ウエハ載置台12表面の温度の分布の不均一性を低減できるという知見を得られたこと。

c 全ての溝が連通した構造,及び,溝の連通箇所で三叉路が形成される構造が記載されていること。

カ 引用文献6
同じく原査定に引用され,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2006-066857号公報(以下「引用文献6」という。)には,次の記載がある。
「【0015】
図1に構成例を示す。ここで図1(a)は上面図を示し,同(b)はA-A′の断面を示す。基盤1はアルミニウム製で厚さは20mm。この基盤1の上面に絶縁層2を溶射により形成している。絶縁層2の材質は酸化アルミのセラミックで厚さは100μmである。絶縁層2の上部には第一電極3と第二電極4がくし歯状に形成される。これら電極は二酸化チタンを溶射によりマスクを解して吹きつけることで形成する。第一電極3と第二電極4の膜厚は100μmである。後,シリコン材により全域に封抗処理をおこなう。第一電極3と第二電極4ともに電極の幅は1mmで,電極間の隙間距離も1mmである。くし歯の長さXは任意で被吸着基板5の大きさ,あるいはその他条件で1000mm程度まで大きくすることができる。電極には電源6が接続される。図1では第一電極3にマイナス,そして第二電極4にプラスの電位を供給し,その中間電位は大地に接続されているようすを示している。電位の極性はこの逆でも,吸着力に変化はない。第一電極3と第二電極4の上には被吸着基板5が設置されている。第一電極3と第二電極4に困れた部分には真空排気孔7が設けられている。第一電極3と第二電極4に囲まれた領域の真空排気を促進するためである。この真空排気孔7の断面のようすを図2に示す。第一電極3と第二電極4の間に挟まれた領域の気体は真空排気孔7を通って真空排気孔の真空容器側ガス出口7aに排気される。孔を設ける代わりに同じ目的のために溝を設けることが考えられる。C-C′の断面のようすを図3に示す。ここではあらかじめ絶縁層2に溝を加工し,その上に第二電極4を前記とおなじく溶射により吹き付け,真空排気溝8を形成する。尚,この溝の形成は基盤1に行っても良い。これら真空排気孔7または真空排気溝8は図中では一箇所であるが,その数に制限はなく,より早い真空排気を行うために複数設置する。」





キ 引用文献7
同じく原査定に引用され,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平06-349938号公報(以下「引用文献7」という。)には,次の記載がある。
「【0012】また,前記サセプタ9の上部には図2に示すように前記半導体ウエハ5を静電気力にて吸着保持する静電チャック機構16の静電チャックシート17が貼設され,この静電チャックシート17は,導電材質よりなる電解箔銅18を両側から絶縁膜,例えばポリイミド樹脂よりなるポリイミドフィルム19でポリイミド系の接着剤でおのおの接着されサンドイッチ構造に構成されている。さらに,前記電解箔銅18には,この電解箔銅18に高電圧,例えば200V?3KVの電圧を給電するための給電棒20が接続され,この給電棒20は,前記処理室1の底面に気密かつ絶縁状態で貫通され,高圧電源21に切替え手段,例えば電磁スイッチ22を介して接続されている。また,この電磁スイッチ22は制御手段23の制御信号によりONまたはOFFされるよう構成されている。
【0013】また,前記サセプタ9,前記サセプタ支持台12には,前記冷媒溜13の温度を前記半導体ウエハ5に伝熱する伝熱媒体,例えば不活性ガスのHeガスを伝熱ガス供給源24より供給するための伝熱ガス供給路25が穿設されており,この伝熱ガス供給路25は,前記サセプタ9内部に設けられた伝熱ガス溜め室26に接続され,この伝熱ガス溜め室26の底面は,前記半導体ウエハ5の裏面に伝熱ガスの流量を均一に伝熱ガス27を伝熱ガス吹出孔28より吹き出すために,伝熱ガスの吹き出し量のコンダクダンスを変化させるよう湾曲構造に形成されている。さらに,前記伝熱ガス吹出孔28は,図3に示すように前記静電チャックシート17の上面に複数の径で同心円状に設けられた溝部29に複数の径で同心円状かつ放射状に穿設されており,また,前記複数の溝部29は各々伝熱ガス27を流動させるための流動溝部30で連通され,前記静電チャックシート17と前記半導体ウエハ5との間で伝熱ガス27を分散させるガス分散溝部31が構成されている。」





ク 引用文献8
同じく原査定に引用され,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2007-201404号公報(以下「引用文献8」という。)には,次の記載がある。
「【0028】
次に,図3を用いてトレイの好適な一実施形態であるトレイ15Aについて説明する。図3(a)はトレイ15Aの上面図である。トレイ15Aは,基板14を載置する側の表面に溝21を設けたものである。この例では,溝21を蜂の巣(ハニカム)状に,トレイ15の端部22にまで延びるように形成した。
【0029】
このように溝21を設けることにより,図3(b)の縦断面図に示すように,発泡剥離性シート16を用いてトレイ15A上に基板14を接着する際に,基板14からトレイ15Aに圧力を加えるにより発泡剥離性シート16から押し出される気体を溝21から端部22を通過して外部に逃がすことができる。そのため,接着後にトレイ15Aと基板14の間に気体が残留することを防ぐことができ,溝21がない場合よりもトレイ15Aと基板14の接着性が向上する。そのため,プラズマCVD装置10により基板14上に成膜が行われる際に基板14の熱をより確実にトレイ15Aに逃がすことができ,基板14が所定温度以上に上昇することを防ぐことができる。なお,図3(b)では説明の都合上,溝21は図3(a)に示した蜂の巣状のものとは異なる形状で示した。」





ケ 引用文献9
同じく原査定に引用され,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-043928号公報(以下「引用文献9」という。)には,次の記載がある。
「【0027】
次に,図4を用いてトレイの好適な一実施形態であるトレイ15Aについて説明する。図4(a)はトレイ15Aの上面図である。トレイ15Aは,基板14を載置する側の表面に溝21を設けたものである。この例では,溝21を蜂の巣(ハニカム)状に,トレイ15の端部22にまで延びるように形成した。」





(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明は,「半導体素子の製造過程で,半導体ウェハを,反応室内にて,その表面に載置支持する,ヒータ付き静電チャック」であるから,引用発明の「ヒータ付き静電チャック」が,「ウエハ支持面を有する」ことは自明である。
したがって,引用発明の「ヒータ付き静電チャック」と,本件補正発明の「静電チャック」とは,いずれも「ウエハ支持面を有する」点で一致する。

(イ)引用発明の「静電チャック機能を有」する「一方の表面に」設けられた「外周縁にまで連通した」「前記一方の表面の中心から4本の直線状のガス抜き用溝が外周縁にまで連通するように形成され,ガス抜き用溝の間隔が5?15mmとなるように,短い直線上のガス抜き用溝がその間を埋めて」いる「ガス抜き用溝」は,「この部分の溝を通じてウェハないし静電チャックに吸着されていたガスないし湿分が加熱に伴って離脱した結果生じた圧力を逃がす」という機能を果たすものであるから,本件補正発明の「ウエハが昇温されることで前記ウエハ支持面にウエハから放出されてウエハと前記ウエハ支持面との間に滞留するガスを外部に排出するための複数の溝」に相当する。

(ウ)引用発明の「ヒータ付き静電チャック」と,本件補正発明の「静電チャック」とは,以下の相違点を除き,「静電チャック」である点で一致する。

イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
【一致点】
「ウエハ支持面を有する静電チャックで,
ウエハが昇温されることで前記ウエハ支持面にウエハから放出されてウエハと前記ウエハ支持面との間に滞留するガスを外部に排出するための複数の溝が形成されている,
静電チャック。」

【相違点】
溝について,本件補正発明は,「前記ウエハが支持される場所で全ての溝が連通し,溝の連通箇所の全てで三叉路が形成されているとともに,前記ウエハ支持面に前記三叉路が複数形成されている」ものであるのに対し,引用発明は,「一方の表面の中心から4本の直線状のガス抜き用溝が外周縁にまで連通するように形成され,ガス抜き用溝の間隔が5?15mmとなるように,短い直線上のガス抜き用溝がその間を埋めて」いるものである点。

(4)判断
ア 以下,相違点について検討する。
上記(2)ア(イ)iのとおり,引用発明は,ガス抜き用溝を設けることにより,半導体ウェハに吸着されていたガス・湿分が加熱に伴って離脱・膨張しても,半導体ウェハと静電チャックとの界面にとどまって圧力上昇を来すことなく系外に排出が可能となるので,この静電チャック1が半導体ウェハ処理装置に組み付けられることにより,半導体ウェハに製膜・エッチング等の処理を行うに際して,半導体ウェハのセッティングの際にデガスのための準備期間を採ることなく直ちに所定温度への加熱操作を開始することができるようにした発明であって,上記(2)ア(イ)gのとおり,引用文献1には,ガス抜き用溝6のパターンとしては,適宜に設定できることが記載されており,さらに,上記(2)ア(イ)hのとおり,引用文献1には,引用発明の,表面7の中心から外周縁にまで連通するように形成された直線状のガス抜き用溝の「4本」という本数について,「図1においては,第三の絶縁体層5の表面7の中心から適宜本数(図示の場合では4本)の直線状のガス抜き用溝6が外周縁にまで連通するように形成され」ること,すなわち,「適宜本数」でよいことが記載されている。
一方,引用文献2ないし5,8,9,及び,以下の周知文献1ないし6には,全ての溝が連通した構造,及び,溝の連通箇所で三叉路が形成される構造が記載されており,これらの構造が,いずれも周知であることが理解される。
さらに,上記(2)ウ(イ)aのとおり,引用文献3には,周囲が溝で囲まれた各島の面積ないし各島の中心から周囲までの距離を略同じくすることにより,各島の上面とウエハの下面との間に存在する気体を略同時に迅速且つ面内均一に逃すことができることが記載されているのであるから,引用発明において,半導体ウェハに吸着されていたガス・湿分の加熱に伴う離脱・膨張を系外に排出を可能とするようにガス抜き用溝のパターンを形成するにあたり,ウエハの下面に存在する気体を迅速且つ面内均一に逃すために,前記ガス抜き用溝を周方向の溝で連結することで周囲が溝で囲まれた島を形成し,各島の面積ないし各島の中心から周囲までの距離を略同じくすることには動機が存在するといえる。
しかも,上記(2)エ(イ)aのとおり,引用文献4には,放射状の凹溝を設けることに替えて,格子状に形成することもできるとする技術的事項が示されている。
してみれば,ガス抜き用溝のパターンを適宜に設定できることが明記されている引用発明において,ガス抜き用溝のパターンとして,半導体ウェハに吸着されていたガス・湿分の加熱に伴う離脱・膨張を系外に排出を可能とするように前記周知の構造を採用して,「前記ウエハが支持される場所で全ての溝が連通し,溝の連通箇所の全てで三叉路が形成されているとともに,前記ウエハ支持面に前記三叉路が複数形成されている」ものとすること,すなわち,相違点について,本件補正発明の構成を採用することは当業者が適宜なし得たことである。また,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用文献2ないし5,8,9に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

イ 請求人は,審判請求書において,「効果2.溝の交点を三叉路とすることで,四叉路以上で溝が交差する構成に比べて溝幅の広がりを抑えられるため,溝の交点でのウエハの支持が安定するとともに排出されるべきガスが溝の交点に溜まることがない。」及び「引用文献1の溝は中心で交差しているものの,四叉路であることからウエハ支持面の中心でウエハの支持が不安定となり,ガスの溜まりが形成されてしまい,上述した本願発明の効果を得ることはできない。」と主張する
しかしながら,上記アのとおり,引用発明において「4本」とされている,中心から外周縁にまで連通するように形成された直線状のガス抜き用溝の本数は,引用文献1においては,「図1においては,第三の絶縁体層5の表面7の中心から適宜本数(図示の場合では4本)の直線状のガス抜き用溝6が外周縁にまで連通するように形成され」と記載されるように「適宜本数」でよいとされており,しかも,引用文献2にも記載されているように,表面の中心から3本の直線状のガス抜き用溝が外周縁にまで連通する構造が知られているのであるから,引用発明において,中心における溝の交点を三叉路とすることは当業者が適宜なし得たことといえる。
さらに,溝の交点を三叉路とするによって,四叉路で溝が交差する構成に比べて溝幅の広がりを抑えられるとは認めることができないから,請求人の主張する前記効果を斟酌することもできない。
すなわち,交点における溝幅の大小が,当該交点を構成するそれぞれの溝の幅の大きさの影響を受けることは明白であるから,三叉路を構成する溝の幅,及び,四叉路を構成する溝の幅をそれぞれ特定することなく,単に,溝の交点を三叉路とすることで,四叉路で溝が交差する構成に比べて溝幅の広がりが抑えられるということはできない。
さらに,三叉路を構成する溝と,四叉路を構成する溝の幅が等しい場合であっても,隣合う溝を,溝の延伸方向になだらかな曲率をもつ壁によって接続するように設計した三叉路の交点の溝幅は,隣合う溝をシャープな角によって接続するように設計した四叉路の交点の溝幅よりも大きくなることは明らかであるから,溝の接続部の形状・構造を特定することなく,単に,溝の交点を三叉路とすることで,四叉路で溝が交差する構成に比べて溝幅の広がりが抑えられるということはできない。
さらに,三叉路を構成する溝と,四叉路を構成する溝の幅が等しく,隣合う溝をシャープな角によって接続するように設計したとしても,例えば,1本の溝の途中に,他の溝が極浅い角度で接続することで構成された三叉路の交点の溝幅は,2本の溝が直交することによって構成された四叉路の交点の溝幅よりも大きなものとなることは明らかであるから,単に,溝の交点を三叉路とすることで,四叉路で溝が交差する構成に比べて溝幅の広がりが抑えられるということはできない。
なお,請求人が,審判請求書において主張する,溝の交点を三叉路とすることで,四叉路以上で溝が交差する構成に比べて,排出されるべきガスが溝の交点に溜まることがないとする効果は,明細書に記載された効果ではないから採用することはできない。
したがって,請求人の前記主張は採用することはできない。

ウ さらに,請求人は,審判請求書において,「また,引用文献1で本願発明のように複数の溝を連通させる場合,引用文献1では中心部から外縁に向けて溝を形成するようにしていることから,素直に考えれば引用文献1の図1,図2に描かれている各溝を中心に向けて延ばすことになる。」と主張するので,この点について検討する。
(ア)引用文献1の記載から,上記(2)ア(イ)bのとおり,半導体素子の製造過程では,半導体ウェハは均一に加熱されていることが重要であって,上記(2)ア(イ)aのとおり,引用文献1に記載された技術は,ヒータ全域を一定の温度に加熱することができる円盤状ヒータ付き静電チャックに関するものであるところ,上記(2)ア(イ)cのとおり,静電チャックの吸着力は,静電チャック電極と被吸着体であるウェハとの間の距離の2乗に反比例することから,被吸着体と静電チャック表面との距離は,吸着力を管理する上で重要な要素となり,被吸着体(被処理物)の位置によって吸着力に差があると,被処理物たる半導体ウェハ表面の温度分布が大きくなることから,上記(2)ア(イ)gのとおり,ガス抜き用溝は,幅1?3mm,深さ0.03mm?0.2mmで,且つ溝間の距離が5?15mmであることが好ましいとされていることが理解される。
一方,請求人の主張するように,引用文献1の図1に描かれている32本の溝を中心に向けて延ばすことによってウエハ支持面の中心でこれらの溝をすべて連通した場合には,ウエハ支持面の前記中心に,これら32本の溝の幅を一辺とする32角形の凹部が形成されることとなり,それぞれの溝の幅が例えば1mmであった場合には,前記凹部の直径は略1cmとなる。
しかしながら,上記のとおり,半導体ウェハを均一に加熱するために,溝の幅は1?3mmであることが好ましいとされているのであるから,当業者であれば,引用文献1の図1,図2に描かれている各溝を中心で連通させて直径が略1cmとなる凹部を形成することが,半導体ウェハを均一に加熱するうえで望ましくないことを直ちに理解するといえる。
すなわち,引用文献1で本件補正発明のように複数の溝を連通させる場合に,当業者であれば,引用文献1の図1,図2に描かれている各溝を中心に向けて延ばすことを選択することはありえないから,「素直に考えれば引用文献1の図1,図2に描かれている各溝を中心に向けて延ばすことになる」とする請求人の前記主張は採用することはできない。
(イ)さらに,上記(2)ウ(イ)aのとおり,引用文献3には,周囲が溝で囲まれた各島の面積ないし各島の中心から周囲までの距離を略同じくすることにより,各島の上面とウエハの下面との間に存在する気体を略同時に迅速且つ面内均一に逃すことができることが記載されているのであるから,引用発明において,半導体ウェハに吸着されていたガス・湿分の加熱に伴う離脱・膨張を系外に排出を可能とするようにガス抜き用溝のパターンを形成するにあたり,引用文献1の図1,図2に描かれている各溝を中心に向けて延ばして連結することで,細長い楔形の島を形成するのではなく,図1,図2に描かれている各溝を周方向の溝で連結することによって,周囲が溝で囲まれた各島の中心から周囲までの距離を略同じくして,各島の上面とウエハの下面との間に存在する気体を略同時に迅速且つ面内均一に逃すようにすることには動機が存在するといえる。
したがって,引用文献1で本件補正発明のように複数の溝を連通させる場合に,当業者であれば,前記各溝を周方向の溝で連結することを選択するものと認められるから,「素直に考えれば引用文献1の図1,図2に描かれている各溝を中心に向けて延ばすことになる」とする請求人の前記主張は採用することはできない。

・周知文献1:特開2001-102435号公報
「【請求項1】 被処理体を載置面側へ吸着するための吸着手段と前記被処理体を加熱するための加熱ヒータ手段とを有する載置台本体と,この載置台本体の下部に設けられて伝熱ガスを拡散するための拡散室と,前記拡散室と前記載置台本体の載置面側とを連通するように前記載置台本体を貫通して設けられた複数の伝熱ガス通路とを備えたことを特徴とする載置台構造。
【請求項2】 前記載置台本体には,前記吸着手段と前記加熱ヒータ手段とが埋め込まれていることを特徴とする請求項1記載の載置台構造。
【請求項3】 前記載置台本体には,この載置台本体を必要に応じて冷却するための冷却ブロックが接合されることを特徴とする請求項2記載の載置台構造。
【請求項4】 前記載置台本体には,高周波電圧を印加するための高周波電極が埋め込まれていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の載置台構造。
【請求項5】 前記吸着手段は,前記高周波電極と兼用されることを特徴とする請求項4記載の載置台構造。
【請求項6】 前記載置台本体の載置面には,前記伝熱ガスを流すための溝部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の載置台構造。」

「【0004】
この載置台構造4は,絶縁部材14,15を介して容器底部を貫通して支持され,バイアス高周波電源18等が接続される。そして,上記載置台構造4内を上下に貫通して静電チャック10の上面まで届く複数のガス通路16が設けられており,このガス通路16を介してArやHeガス等の伝熱ガスをウエハWの裏面と静電チャック10との接合空間に供給して両者間の伝熱効率の向上を図っている。この場合,静電チャック10の表面には,ウエハ裏面全面への伝熱ガスの拡散を行なうために,図示しない溝部や凹凸部が設けられている。
この載置台構造に対向させて,容器天井部には,加熱ヒータ20を内蔵した上部電極22が設けられており,この上部電極22に,プラズマ発生用高周波電源24を接続している。」

「【0018】
一方,上記上段拡散室48Aと上記載置面52側とを連絡するように,この載置台本体44には,これを上下方向へ貫通するように複数本の伝熱ガス通路82が形成されており,伝熱ガス通路82の上端のガス噴出口83より伝熱ガスをウエハWの裏面側へ供給するようになっている。
また図3に示すように,載置台本体44の上面の載置面52には,同心円状に,図示例では3つの溝部84A,84B,84Cが形成されると共に,各溝部84A,84B,84Cは,半径方向に延びる連結溝部86により連通されている。そして,上記各ガス噴出口83は,上記各溝部84A,84B,84C内に略均等に散在するように位置付けして設けられており,各溝部を介してウエハWの裏面へ略均等に伝熱ガスを拡散させるようになっている。この場合,ウエハWの中心側へ行く程,供給する熱伝導ガス量を多くするため,中心側に位置する程,ガス噴出口83の開口面積或いは通路面積を大きくするのが好ましい。」





・周知文献2:特開2008-166509号公報
「【0029】
図3は,図2に示す静電チャックの平面図である。
【0030】
図2及び図3を参照するに,セラミック板18は,平面視円形状とされており,溝部25と,複数のガス供給用穴26と,複数のリフトアップピンホール27とを有する。溝部25は,リング状溝31,32と,溝33とを有する。リング状溝31,32及び溝33は,基板載置面18Aに対応する部分のセラミック板18に設けられている。リング状溝31は,基板載置面18Aの中央部に配置されている。リング状溝32は,リング状溝31を囲むように,リング状溝31の形成位置よりも外側に位置する部分の基板載置面18Aに配置されている。溝33は,リング状溝31とリング状溝32との間に位置する部分のセラミック板18に設けられている。溝33は,一方の端部がリング状溝31と接続されており,他方の端部がリング状溝32と接続されている。」





・周知文献3:特表2014-529197号公報
「【請求項12】
前記セラミック板の前記基板支持表面内に形成された複数の溝をさらに備え,前記複数の溝が,前記セラミック板の中心軸の周りに同心円状に配置された1つまたは複数の円形の溝と,前記1つまたは複数の同心円状の円形の溝に流動的に結合された1つまたは複数の放射状の溝と,前記1つまたは複数の同心円状の円形の溝に流動的に結合された1つまたは複数の放射状でないオフセット溝とを含む,請求項1から3までおよび請求項5から7までのいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項13】
前記1つまたは複数の同心円状の円形の溝が,前記1つまたは複数の放射状でないオフセット溝を介して互いに流動的に結合された複数の同心円状の円形の溝を含む,請求項12に記載の静電チャック。
【請求項14】
前記複数の同心円状の円形の溝が,最も内側の円形の溝および最も外側の円形の溝を含み,前記1つまたは複数の放射状でないオフセット溝が,互いから均一に隔置された4つの放射状でないオフセット溝を含み,それぞれの放射状でないオフセット溝が,前記最も内側の円形の溝を前記最も外側の円形の溝に流動的に結合する,請求項13に記載の静電チャック。
【請求項15】
前記1つまたは複数の放射状の溝が,複数の放射状の溝を含み,前記複数の放射状の溝の少なくとも1つが,最も内側の円形の溝の内側半径に流動的に結合され,前記セラミック板の中心の方へ延び,前記複数の放射状の溝の少なくとも1つが,最も外側の円形の溝の外側半径に流動的に結合され,前記セラミック板の周縁部の方へ延びる,請求項14に記載の静電チャック。」

「【0005】
理解を容易にするために,可能な場合,複数の図に共通の同一の要素を指すのに同一の参照番号を使用した。これらの図は,原寸に比例して描かれたものではなく,見やすいように簡略化されることもある。一実施形態の要素および特徴は,さらなる記述がなくても,他の実施形態内に有益に組み込むことができることが企図される。
本明細書では,静電チャックの実施形態が提供される。本発明の装置は,たとえばプラズマと基板支持体の要素との間のアークの発生を制限すること,および/または静電チャック上に配置された基板領域に静電チャックによって提供されるチャッキング力の量を制御可能に調整することなどによって,改善された基板処理を有利に提供することができる。さらに,静電チャックは,取外し可能および/または交換可能に取り付けることができる。いくつかの実施形態では,基板支持体は,低温,たとえば摂氏約-40?約250度の範囲で利用することができる。いくつかの実施形態では,基板支持体は,約400ミリメートルより大きい直径を有する基板とともに利用することができる。他のさらなる利点について,以下で論じる。」

「【0017】
いくつかの実施形態では,複数の溝124は,図3に示すように,複数の円形の溝302,複数の放射状の溝304,および複数のオフセット溝306を含むことができる。いくつかの実施形態では,オフセット溝306は放射状でないオフセット溝である。本明細書では,放射状でないオフセット溝は,セラミック板120の中心から放射状に延びるラインをたどらない溝である。たとえば,いくつかの実施形態では,複数の円形の溝302は,同心円状とすることができ,複数のオフセット溝306を介して流動的に結合することができる。複数の放射状の溝304は,流動的に結合することができ,最も内側の円形の溝の内部および最も外側の円形の溝の外部に配置することができる。しかし,この設計は単なる例示であり,他の構成も可能である。たとえば,いくつかの実施形態では,放射状の溝は,セラミック板120の内部からセラミック板120の周縁部まで連続して延びない。いくつかの実施形態では,放射状の溝は,1組の円形の溝間を越えて延びず,または溝124内のプラズマによるアークの発生を制限するのに適した任意の長さより長く延びない。たとえば,アークの発生は,長い連続する放射状の溝の中で,高い電力または高い周波数で生じることがある。したがって,いくつかの実施形態では,複数のオフセット溝306は,放射状の溝304の長さを制限するために導入される。たとえば,アークの発生は,長い連続する放射状の溝が使用される場合,高い電力および/または高い周波数で溝を通って流れるガス内で生じることがある。いくつかの実施形態では,放射状の溝304および/またはオフセット溝306の長さは,約2?約5センチメートルの範囲とすることができる。しかし,他の長さを利用することもできる。」





・周知文献4:特開2015-138807号公報
「【請求項1】
プラズマ処理室を備えたハウジングと,該ハウジングの該プラズマ処理室内に配設された保持面に被加工物を静電吸着により保持するチャックテーブルを備える静電チャックテーブル機構と,該チャックテーブルに保持された被加工物にプラズマ発生用の処理ガスを噴射する処理ガス噴射手段と,該プラズマ処理室内を減圧する減圧手段と,を備えるプラズマエッチング装置であって,
該静電チャックテーブル機構は,被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと,該チャックテーブルの内部に配設され電圧が印加されることにより電荷が発生する電極と,該電極に電圧を印加する電圧印加手段と,該チャックテーブルを表面に配設し内部に該チャックテーブルを冷却する冷却手段を備えたテーブル基台と,を備え,
該チャックテーブルの該保持面には,全面に渡って正六角形が平面充填したハニカム形状で連通して形成された溝と,ハニカム形状の正六角形の該保持面に突出して形成された複数の凸部とを備え,
該溝には噴射孔が複数形成され,該噴射孔に連通し該溝内に冷却媒体ガスを供給する冷却媒体ガス供給源を備え,
各該凸部の該保持面から突出している高さは,被加工物の表面に貼着される保護テープが複数の該凸部に当接して載置された際に,該保護テープの裏面が該保持面に当接する高さに形成され,
被加工物の該保持面に当接する面に該保護テープが貼着された際には,該保護テープが複数の該凸部及び該保持面に当接して載置され,該保護テープの裏面と該チャックテーブルの該保持面とが当接し該冷却手段への熱伝導により且つ該溝から供給された冷却媒体ガスによる熱伝達により該保護テープ全体が冷却され,
被加工物の該保持面に当接する面に剛性基板が貼着された際には,該剛性基板が複数の該凸部に当接して載置され,該剛性基板の裏面と該チャックテーブルの保持面とは僅かな隙間が生じ,該溝から供給された冷却媒体ガスが該隙間に行き渡り熱伝達により該剛性基板全体が冷却されること,
を特徴とするプラズマエッチング装置。」

「【0022】
チャックテーブル22の保持面21には,図3及び図4に示すように,全面に渡って正六角形が平面充填したハニカム形状で連通して形成された溝40と,ハニカム形状の正六角形の保持面21に突出して形成された複数の凸部41(図4に示す)とを備えている。溝40は,保持面21から凹に形成されている。溝40は,図4に示すように,平面視において,内側に囲む保持面21(以下,符号21aで示す)が正六角形となるようにハニカム形状に形成されており,隣り合う正六角形の保持面21a間に一本のみ設けられている。なお,本実施形態では,溝40は,内側に囲む正六角形の保持面21aの一辺の長さLが2.89mmとなるようにハニカム形状に形成され,溝40の幅Hが0.5mmに形成されている。また,溝40の保持面21aからの深さD(図5及び図6に示す)は,5?10μmに形成されている。このように,チャックテーブル22には,多数の正六角形の保持面21aを備えている。なお,本発明では,溝40が内側に囲む保持面21aが正六角形に限らずに種々の図形(円,多角形)となるように,溝40がハニカム形状に形成されてもよい。」





・周知文献5:特開平9-246238号公報
「【0021】この実施例では,基体部30の載置面には,図2の平面図によく示されるようなパターンにて溝31が形成されている。また,基体部30には,図1の断面図によく示されるように,凹溝31の底部に通ずる貫通孔32が形成されている。基体部30の半導体ウエハ5の載置面および側面には,ポリカルボシランを焼成してなるSiC被膜層33が付与され,静電チャックの誘電体層として作用するものとされている。このSiC被膜層33は,図1によく示されるように,基体部30の溝31および貫通孔32の内壁面に沿うようにして形成されていて,半導体ウエハ5を載置面から引き離す作用をするフレオンガスの如き流体を通すための溝34およびガス導入通路35を作り出している。」





・周知文献6:特開2005-136104号公報
「【0016】
本発明の第1の実施の形態を図1?図3に基いて詳細に説明する。図1は,本発明に係る静電チャックの平面図であり,図2はそのA部拡大図及びその部分のさらなる拡大図であり,図3は図1の静電チャックのB-B線断面図及びその部分拡大図であり,図4は図3のC-C線断面図である。図中1は,静電チャックであって,本例では,アルミナ(Al_(2)O_(3))を主成分とするセラミック製で一定厚さ(5mm)の積層(例えば10層)構造をなし,直径300mmの円形の平板状を呈している。ただし,吸着面3側のうち,外周面4に連なる所定幅部位5は吸着面3より一段低くされている。なお,このような静電チャック1は,通常,図3中,2点鎖線で示したように,円板(又は円錐台)形状のベース部材(例えば,アルミニウム合金製)50の上部の平面51に,シリコン樹脂等で接着されて固定される。
【0017】
このような,静電チャック1は,その上面が被吸着部材(被吸着体)である半導体ウエハ101を吸着,保持する吸着面3とされている。そして,この吸着面3は,高度の平坦度,面粗度にて平面に仕上げられ,その平面に対し,微小幅(例えば,1?3mmの範囲で設定される)で,微小深さ(例えば,5?20μmの範囲で設定される)の断面略矩形をなすガス溝11が形成されている。このガス溝11は,本形態では,静電チャック1に関して同心円状に配置された複数の環状ガス溝13と,内外に隣接する環状ガス溝13相互間を連結する多数の連結ガス溝14からなっている。本例では環状ガス溝13は円環状とされ,環状ガス溝13相互の半径方向における間隔(ピッチ)は略一定とされている。ただし,最外周の環状ガス溝13は厳密には一部が直線状に形成されている。
【0018】
また,連結ガス溝14は静電チャック1の中心から放射状に配置されている。そして,この連結ガス溝14(放射状ガス溝ともいう)は,静電チャック1の中心寄り部位にあるものより,外周寄り部位にあるものの方が,小さい放射状角度間隔で配置されており,1つの環状ガス溝13を挟んで基本的に互い違いとなる配置とされている。なお,最外周と,その隣(内周側)に配置された連結ガス溝14は同じ放射状角度間隔とされている。こうして,本形態におけるガス溝11は,静電チャック1の吸着面3の全域にわたって,配置,形成されており,それぞれ,環状ガス溝13と連結ガス溝14との連結点(交差点)において連なるように形成されている。
【0019】
このような静電チャック1は,吸着面3のうち,ガス溝11を除く部位が,同一の高さの平面とされてウエハ101を載置させる載置面16とされている。この載置面16は,環状ガス溝13と連結ガス溝14とで仕切られた多数の載置面16からなっており,台形に近い扇形を呈している。ただし,一番内周寄りの環状ガス溝13よりも内側には,この環状ガス溝13と連通するように,90度間隔で放射状にガス溝(放射状ガス溝)15が設けられて仕切られており,ここでの各載置面18は,1/4円弧の扇形を呈している。
【0020】
このような平面配置をなすガス溝11は,放射状ガス溝14の内外周寄り端の略全部が,それぞれ連なっている環状ガス溝13に突き当たる形態で連結され,その連結点(交点)がT字状の交差点(三叉路)となっている。本形態では,このような連結点のうち,放射状ガス溝14の外周寄り端をなす全ての連結点において,ガス流出口21が開口されている。また,中心における放射状ガス溝15の連結点(交差点)においてもガス流出口21が開口されている。なお,これらのガス流出口21は,図3に示したように,静電チャック1自身の内部に設けられたガス流路22に連なるように次のように形成されている。」









エ したがって,本件補正発明は,引用発明,引用文献2ないし5,8,9に記載された技術及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年4月10日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,令和2年1月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1ないし4に係る発明は,本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし9に記載された事項に基づいて,その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

1.特開2006-179693号公報
2.実願平01-097840号(実開平03-038357号)のマイクロフィルム
3.特開2002-057209号公報
4.特開平11-006069号公報
5.特開2015-088573号公報
6.特開2006-066857号公報
7.特開平06-349938号公報
8.特開2007-201404号公報
9.特開2012-043928号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし9及びその記載事項は,前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]2(3),(4)に記載したとおり,引用発明及び引用文献2ないし5,8,9に記載された技術及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明及び引用文献2ないし5,8,9に記載された技術及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-10-07 
結審通知日 2020-10-08 
審決日 2020-10-21 
出願番号 特願2017-242302(P2017-242302)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杢 哲次  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 ▲吉▼澤 雅博
加藤 浩一
発明の名称 静電チャック  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ