• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61J
管理番号 1368937
審判番号 不服2018-15099  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-13 
確定日 2020-12-02 
事件の表示 特願2016-528134「コネクタを有する流体閉鎖移送システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月14日国際公開、WO2015/069654、平成28年11月17日国内公表、特表2016-535636〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)11月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年(平成25年)11月6日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成29年12月19日付けで拒絶理由が通知され、平成30年3月9日に意見書が提出されたが、平成30年7月18日付けで拒絶査定がされ、平成30年11月13日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正がされた。その後、当審において令和元年11月27日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、令和2年3月3日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?13に係る発明は、令和2年3月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
システムであって、
第1の端部と第2の端部とを有する注射器アダプタであって、前記注射器アダプタの前記第1の端部は第1の容器に接続されるように構成され、前記注射器アダプタの前記第2の端部は開放位置および閉鎖位置を有する係止部材を備えるとともに、本体部および前記本体部内に位置決めされたシール装置を備え、前記シール装置は、少なくとも1つの膜を有し、前記注射器アダプタの前記本体部内で、前記注射器アダプタの前記第1の端部から離隔して移動するように構成されている注射器アダプタと、
第1の端部と第2の端部とを有するバイアルアダプタであって、前記バイアルアダプタの前記第2の端部は第2の容器に接続されるように構成され、前記バイアルアダプタの前記第1の端部は係止表面を有し、前記注射器アダプタは前記係止部材が前記開放位置にあるときに前記バイアルアダプタと嵌合するように構成され、前記注射器アダプタは前記係止部材が前記閉鎖位置にあり、前記係止表面に隣接する位置にあるときに前記バイアルアダプタに係止されるように構成され、前記係止部材は、前記係止部材の対向する側に位置決めされ、径方向外向きに延在する一対の突出部を備え、前記注射器アダプタは前記係止部材の前記一対の突出部と係合して前記係止部材を前記注射器アダプタに保持するために構成された一対の対応する突出部を有し、前記係止部材が前記閉鎖位置にある状態で、前記注射器アダプタが前記バイアルアダプタに係止されると、前記バイアルアダプタは、前記注射器アダプタに対して回転可能である、バイアルアダプタとを備えることを特徴とするシステム。」

第3 拒絶の理由
当審が通知した拒絶理由は、次の理由を含むものである。
本願発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2の記載事項及び引用文献3に例示される周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.国際公開第2009/133755号
引用文献2.国際公開第2011/052481号
引用文献3.米国特許第5104158号明細書

第4 引用文献、引用発明及び周知の技術
1 引用文献1の記載事項
(1-1)上記引用文献1には、次の記載がある(下線は、当審が付与したものである。以下同様。)。
ア.「[0049]
<第1実施形態> 図1は、本発明のコネクタ組立体(第1実施形態)の分解側面図、図2?図4は、それぞれ、本発明のコネクタ組立体における第1のコネクタと第2のコネクタとを組立状態(装着状態)とするまでの過程を示す縦断面図、図5?図7は、図4に示す(組立状態の)コネクタ組立体を分解状態とするまでの過程を示す縦断面図、図8は、本発明のコネクタ組立体(第1実施形態)における第1のコネクタを示す縦断面図、図9は、本発明のコネクタ組立体(第1実施形態)における第2のコネクタを示す縦断面図、図18は、図8に示す第1のコネクタに装着されるシリンジを示す部分縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1?図9中(図10、図12?図17も同様)の上側を「先端」、下側を「基端」と言い、図18中の上側を「基端」、下側を「先端」と言う。
[0050]
図1?図7に示すように、コネクタ組立体1は、着脱自在な第1のコネクタ(メスコネクタ)2と第2のコネクタ(オスコネクタ)3とを有するものである。図8に示すように、第1のコネクタ2は、予めシリンジ(液体収納容器)20に装着されて(接続されて)いる。図9に示すように、第2のコネクタ3は、バッグ(液体収納容器)50に装着されている。このコネクタ組立体1は、第1のコネクタ2にその先端側から第2のコネクタ3を挿入して、これらのコネクタ同士を組み立てた組立状態(図4に示す状態)で、第1のコネクタ2側から第2のコネクタ3側へまたはその反対方向へ、液体を移送するのに用いられる。」
イ.「[0068]
図8(図2?図7も同様)に示すように、第1のコネクタ2は、円筒状をなす第1のコネクタ本体4と、第1のコネクタ本体4の内側に支持された中空針5と、第1のコネクタ本体4の内側にその軸方向に沿って移動可能に設置された第1の封止部材6と、第1の封止部材6とともに移動する内筒7と、第1の封止部材6を先端方向に向かって付勢する付勢部材としてのコイルバネ8と、第1のコネクタ本体4にその径方向に移動可能に設置されたリング状部材9とを有している。」
ウ.「[0072]
図2?図7に示すように、リング状部材9は、第1のコネクタ本体4の径方向(軸に対して垂直な方向(図中左右方向))に移動することができる。すなわち、リング状部材9は、その軸が第1のコネクタ本体4の軸とほぼ一致する(同軸となる)位置(図5?図7参照)と、軸同士がズレる(偏心する)位置(図2?図4参照)とに移動することができる。
[0073]
図4に示すように、組立状態では、リング状部材9は、第1のコネクタ本体4に対して偏心した位置にあり、縁部の一部である第1の係合部91が、後述する第2のコネクタ3の第2の係合部105に係合する。これにより、第1のコネクタ2と第2のコネクタ3とが連結され、第1のコネクタ2から第2のコネクタ3が不本意に離脱するのが防止される。このように、コネクタ組立体1では、第1のコネクタ2に配された第1の係合部91と、第2のコネクタ3に配された第2の係合部105とは、組立状態で第1のコネクタと第2のコネクタとを連結するロック手段として機能している。」
エ.「[0083]
図8に示すように、第1のコネクタ本体4の内側には、第1の封止部材6が設置されている。第1の封止部材6は、第1のコネクタ本体4の軸方向に沿って移動して、中空針5の先端側で第1の流路52を封止する封止位置(図2、図7、図8参照)と、封止位置から基端側に退避し、中空針5で刺通される退避位置(図3?図6参照)とに変位することができる。この第1の封止部材6は、弾性材料で構成されており、その材料としては、特に限定されず、例えば、シリンジ20のガスケット204についての説明で挙げたような材料を用いることができる。
[0084]
第1の封止部材6は、板状をなすヘッド部(第1の刺通部)61と、ヘッド部61の基端側に一体的に形成された脚部62とを有している。」
オ.「[0087]
脚部62は、管状をなす部位である。脚部62の基端部は、第1のコネクタ本体4のハブ部42に支持されている。脚部62は、その長手方向に伸縮することができ、ヘッド部61(第1の封止部材6)が退避位置にあるとき収縮し、ヘッド部61が封止位置にあるとき当該ヘッド部61自身の弾性力により伸長する。このように、脚部62は、第1の封止部材6を退避位置から封止位置に変位する方向(先端方向)に向かって付勢する付勢手段の一部を担っていると言うことができる。また、脚部62は、ヘッド部61が封止位置にあるとき、その内側に中空針5を収納することができる。」
カ.「[0095]
第2のコネクタ3を第1のコネクタ2に挿入して組立状態とする際、第2のコネクタ本体10が円筒状をなすものであるため、第1のコネクタ2に対して第2のコネクタ3をその軸周りの複数の回転角度で挿入することができる。また、そのいずれの回転角度で第2のコネクタ3を第1のコネクタ2に挿入したとしても、第2のコネクタ3の第2の係合部105が第1のコネクタ2のリング状部材9の第1の係合部91に確実に係合する(図4参照)。」
キ.「[0103]
・・・この嵌合部材12は、第2のコネクタ3が第1のコネクタ2に対して挿入されてから組立状態を経て抜去されるまでの過程で、第1のコネクタ本体4の内周部47にその内側に向かって圧縮される。これにより、嵌合部材12は、第1のコネクタ本体4の内周部47に確実に嵌合する。また、コネクタ組立体1では、第1のコネクタ2から第2のコネクタ3が抜去される際の、嵌合部材12の外周部121と第1のコネクタ本体4の内周部47との摺動抵抗が、コイルバネ8の付勢力よりも大きくなるように設定されている。・・・」
ク.「[0117]
また、このとき、第1のコネクタ2のコイルバネ8は、その付勢力により第1の封止部材6を介して第2の封止部材11を押圧し、第2のコネクタ3を先端方向に押し出そうとするが、前述したように嵌合部材12の外周部121と第1のコネクタ本体4の内周部47との摺動抵抗がコイルバネ8の付勢力よりも大きいため、コイルバネ8の付勢力により、第2のコネクタ3が不本意に押し出される(第1のコネクタ2から飛び出す)のが確実に防止される。これにより、第1の封止部材6と第2の封止部材11との密着が維持される。」
ケ.「


コ.「


サ.「



(1-2)上記(1-1)ア.?サ.の記載事項から、引用文献1には、コネクタ組立体に関し、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

a 第1のコネクタ2は、予めシリンジ20に装着され、第2のコネクタ3は、バッグ50に装着され、第1のコネクタ2にその先端側から第2のコネクタ3を挿入して、これらのコネクタ同士を組み立てた組立状態で、第1のコネクタ2側から第2のコネクタ3側へまたはその反対方向へ、液体を移送するのに用いられるコネクタ組立体である。(ア.[0050])

b 第1のコネクタ2は、第1のコネクタ本体4の内側に支持された中空針5と、第1のコネクタ本体4の内側にその軸方向に沿って移動可能に設置された第1の封止部材6と、第1の封止部材6とともに移動する内筒7と、第1のコネクタ本体4にその径方向に移動可能に設置されたリング状部材9とを有している。(イ.[0068])

c リング状部材9は、その軸が第1のコネクタ本体4の軸とほぼ一致する位置と、軸同士がズレる位置とに移動することができるものであり、その軸が第1のコネクタ本体4の軸と、軸同士がズレた位置で、第1の係合部91が第2のコネクタ3の第2の係合部105と係合し、これにより、第1のコネクタ2と第2のコネクタ3とが連結される。(ウ.[0072]-[0073])

d 第1の封止部材6は、板状をなすヘッド部61と、ヘッド部61の基端側に一体的に形成されるとともにその基端部が第1のコネクタ本体4のハブ部42に支持された脚部62とを有し、ヘッド部61は、第1のコネクタ本体4の軸方向に沿って移動して、中空針5の先端側で第1の流路52を封止する封止位置と、封止位置から基端側に退避し、中空針5で刺通される退避位置とに変位することができ、脚部62は、ヘッド部61が封止位置にあるとき、その内側に中空針5を収納することができる。(エ.[0083]-[0084]、オ.[0087])

e ア.[0049]の「先端」、「基端」の定義によれば、図1、8、9より、第1のコネクタ2と第2のコネクタ3は、それぞれ基端部及び先端部を有し、第1のコネクタ2はその基端部においてシリンジ20に装着され、第2のコネクタ3はその先端部においてバッグ50に装着される点、第1のコネクタ本体4の先端部はリング状部材9を備え、第2のコネクタ3の基端部は第2の係合部105を備える点が看取される。

(1-3)上記(1-1)、(1-2)を踏まえると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「それぞれ基端部及び先端部を有する第1のコネクタ2と第2のコネクタ3とを備え、
第1のコネクタ2は、その基端部において予めシリンジ20に装着され、第2のコネクタ3は、その先端部においてバッグ50に装着され、
第1のコネクタ2にその先端側から第2のコネクタ3を挿入して、これらのコネクタ同士を組み立てた組立状態で、第1のコネクタ2側から第2のコネクタ3側へまたはその反対方向へ、液体を移送するのに用いられるコネクタ組立体であって、
第1のコネクタ2は、第1のコネクタ本体4の内側に支持された中空針5と、第1のコネクタ本体4の内側にその軸方向に沿って移動可能に設置された第1の封止部材6と、第1の封止部材6とともに移動する内筒7と、第1のコネクタ本体4の先端部にその径方向に移動可能に設置されたリング状部材9とを有し、
リング状部材9は、その軸が第1のコネクタ本体4の軸とほぼ一致する位置と、軸同士がズレる位置とに移動することができるものであり、その軸が第1のコネクタ本体4の軸と、軸同士がズレた位置で、第1の係合部91が第2のコネクタ3の基端部の第2の係合部105と係合し、これにより、第1のコネクタ2と第2のコネクタ3とが連結され、
第1の封止部材6は、板状をなすヘッド部61と、ヘッド部61の基端側に一体的に形成されるとともにその基端部が第1のコネクタ本体4のハブ部42に支持された脚部62とを有し、ヘッド部61は、第1のコネクタ本体4の軸方向に沿って移動して、中空針5の先端側で第1の流路52を封止する封止位置と、封止位置から基端側に退避し、中空針5で刺通される退避位置とに変位することができ、脚部62は、ヘッド部61が封止位置にあるとき、その内側に中空針5を収納することができる
コネクタ組立体。」

2 引用文献2の記載事項
上記引用文献2には、次の記載がある。
シ.「[0027]
次に、コネクタ組立体1について説明する。前述したように、コネクタ組立体1は、第1のコネクタ2と第2のコネクタ3とを有している。
[0028]
図2?図5に示すように、第1のコネクタ2は、円筒状をなす外筒4および内筒7で構成された第1のコネクタ本体と、外筒4に支持された中空針5と、内筒7に支持された第1の封止部材6と、第1の封止部材6を先端方向に向かって付勢する付勢部材としてのコイルバネ8と、外筒4に設置された挟圧部材9とを有している。」
ス.「[0042]
図2(図3?図5についても同様)に示すように、外筒4の内側には、内筒7が配置されて(支持されて)いる。この内筒7は、外筒4に対し変位可能、すなわち、外筒4の軸回りに回動可能であるとともに、外筒4の軸方向に沿って移動可能なものである。」
セ.「[0044]
また、内筒7は、当該内筒7が変位する際に中空針5を摺動する摺動部材74と、摺動部材74を固定する固定部75とを有している。摺動部材74は、筒状をなし、その内径が縮径した縮径部741を有する弾性材料で構成された部材である。摺動部材74の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の弾性材料が挙げられる。内筒7が変位する際には、縮径部741が中空針5の外周部54に当接して摺動する。固定部75は、板状部732から一体的に下方に向かって突出形成された筒状をなす部分である。」
ソ.「[0063]
図2に示すように、内筒7の内側には、第1の封止部材6が設置されている。この第1の封止部材6は、内筒7の内腔部を封止するものであり、円板状をなし、その厚さ方向が内筒7の軸方向に一致するように配置されている。これにより、第1の封止部材6は、中空針5の軸方向に沿って基端側に向かって移動する際に、中空針5の針先51によって容易かつ確実に刺通される。」
タ.「


図2より、内筒7は、第1のコネクタ本体内で、第1のコネクタ2の底部41から離隔している点が看取される。

そうすると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2の記載事項」という。)が記載されているといえる。

「コネクタ組立体1において、第1のコネクタ2は、円筒状をなす外筒4および内筒7で構成された第1のコネクタ本体と、外筒4に支持された中空針5と、内筒7に支持されて内筒7の内腔部を封止する第1の封止部材6とを有し、内筒7は摺動部材74を有し、内筒7は、外筒4の軸方向に沿って、第1のコネクタ本体内で、第1のコネクタ2の底部41から離隔して移動するように移動可能であり、摺動部材74は、内筒7が変位する際に中空針5を摺動し、第1の封止部材6は、中空針5の軸方向に沿って基端側に向かって移動する際に、中空針5の針先51によって容易かつ確実に刺通される。」

3 引用文献3の記載事項
本願の優先日前における流路を相互接続する管継手の技術分野での周知技術の例として示す上記引用文献3には、図面とともに次の記載がある(『』内の日本語は、対応する特表平4-506555号公報を参照した当審による和訳。)。
チ.「The coupling 20 includes a male coupling member 22 and a female coupling member 24, the male coupling member 22 including a back end portion 22a and a front end portion 22b and the female coupling member 24 including a back end 24a and a front end 24b. A locking collar, herein referred to as a quick connecting/disconnecting clip member 26, is used to quickly disconnect and connect the male and female coupling members 22, 24. In the environmental illustration of FIG.1, the quick connecting/disconnecting coupling 20 is illustrated as being interconnected to two pieces of tubing 28, 30. The tubing 28, 30 is attached to barbed ends 29, 31 of the male and female coupling members 22, 24, respectively. It will be appreciated, however, that the quick connecting/disconnecting coupling 20 of the present invention has numerous uses other than connecting two pieces of tubing together.」(第4欄第9-26行)(『管継手20は、雄接続具22と雌接続具24とからなり、雄接続具22は後端22aと前端22bを、また、雌接続具24は後端24aと前端24bとを有している。以後、迅速接続・分離用クリップ部材26と称するロック用カラーは、雄及び雌接続具22、24を迅速に連結したり、分離したりするのに用いられる。第1図では、迅速接続・分離式管継手20は、2本のチューブ28、30を互いに接続するのに使われている状態で示されている。これらのチューブ28、30は、雄接続具22と雌接続具24のそれぞれの掛かり付きニップル29、31に取り付けられている。尚、本発明の迅速接続・分離式管継手20は、2本のチューブを互いに接続する他にも種々利用できるものである。』)

ツ.「The side surfaces 60 of the female coupling member 24 which define the slot 50 include shoulder portions 62 at the intersection of the wide portion of the slot 58 with the narrow portion of the slot 58. The plate portion 52 of the clip member 26 in turn includes barbed projections 64 along its side edges 66. The barbed projection 64 includes a substantially flat portion 68 for engaging the shoulder portion 62 of the female coupling member 24 so as to prevent the clip member 20 from being inadvertently removed from the female coupling member 24 after it has been inserted. This assures that the clip member 26 will remain with the female coupling member 24 at all times in typical use.」(第5欄第16-28行)(『スロット58を形成する雌接続具24の側面60には、比較的幅広の底部58aとそれよりも幅の狭い上部58aとの境界に肩部62が形成されている。他方、クリップ部材26の板部52の側縁には、逆刺突起64が形成されている。この逆刺突起64にはほぼ平坦な部分、即ち、平坦部68があって、クリップ部材20とスロット58に一旦差し込むと、差し込んだクリップ部材20が不意に外れるようなことがないように、雌接続具24の肩部62がその平坦部68と係合するようになっている。これにより、通常の用途にあっては、クリップ部材26は常時雌接続具24に確実に差し込まれたままにすることができる。』)
テ.「



ト.「


上記の記載を踏まえると、雄接続具と雌接続具とクリップ部材とを備え、流路を相互接続する管継手において、雌接続具の側面に一対の肩部を形成するとともに、クリップ部材の板部の側縁に平坦部を有する一対の逆刺突起を形成し、雌接続具の肩部をその平坦部と係合させて、雌接続具に差し込んだクリップ部材が不意に外れることがないように保持させる構造とすることは、優先日時点において周知の技術といえる。

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「基端部及び先端部を有する」「第1のコネクタ2」、「基端部及び先端部を有する」「第2のコネクタ3」は、その機能または構造からみて、本願発明の「第1の端部と第2の端部とを有する注射器アダプタ」、「第1の端部と第2の端部とを有するバイアルアダプタ」にそれぞれ相当する。そして、引用発明の「第1のコネクタ2」と「第2のコネクタ3」とを備える「コネクタ組立体」は、本願発明の「注射器アダプタ」と「バイアルアダプタ」とを備える「システム」に相当する。
引用発明の「第1のコネクタ2は、その基端部において予めシリンジ20に装着され、第2のコネクタ3は、その先端部においてバッグ50に装着され」る点は、本願発明の「注射器アダプタの前記第1の端部は第1の容器に接続されるように構成され」、「バイアルアダプタの前記第2の端部は第2の容器に接続されるように構成され」る点に相当する。
引用発明の「第1のコネクタ本体4」、「第1の封止部材6」及び「ヘッド部61」は、その機能または構造からみて、本願発明の「本体部」、「シール装置」及び「膜」にそれぞれ相当する。同様に、引用発明の「第1のコネクタ本体4の先端部に」「設置されたリング状部材9」及び「第2のコネクタ3の基端部の第2の係合部105」は、本願発明の「注射器アダプタの前記第2の端部」が備える「係止部材」及び「バイアルアダプタの前記第1の端部」が有する「係止表面」にそれぞれ相当する。
上記「係止部材」及び「係止表面」に関して、引用発明の「リング状部材9」は、「第1のコネクタ本体4の先端部にその径方向に移動可能に設置され」、「その軸が第1のコネクタ本体4の軸とほぼ一致する位置と、軸同士がズレる位置とに移動することができる」構成である。そして、当該構成のもと、
(a)引用発明において、「その軸が第1のコネクタ本体4の軸とほぼ一致する位置で、」「第1のコネクタ2と第2のコネクタ3とが連結され」る点は、本願発明において、「注射器アダプタは前記係止部材が前記閉鎖位置にあ」「るときに前記バイアルアダプタに係止されるように構成され」る点に相当すること、
(b)引用発明において、「第1の係合部91が第2のコネクタ3の基端部の第2の係合部105と係合」するとの構成は、本願発明において「係止部材が」「係止表面に隣接する位置にある」との構成に相当するといえること、及び、
(c)引用発明において、リング状部材9が、「その軸が第1のコネクタ本体4の軸とほぼ一致する位置」に移動して第1のコネクタ2と第2のコネクタ3とが連結される前の、「軸同士がズレる位置」にあるときに、第1のコネクタ2は第2のコネクタ3に対して、両者の連結された状態に向けて嵌め込まれることとなる点は、本願発明において、「注射器アダプタは前記係止部材が前記開放位置にあるときに前記バイアルアダプタと嵌合するように構成され」る点に相当すること、
を踏まえると、引用発明の「その軸が第1のコネクタ本体4の軸とほぼ一致する位置」及び「軸同士がズレる位置」は、本願発明の「閉鎖位置」及び「開放位置」に相当するといえ、そうすると、引用発明において、「第1のコネクタ2は、」「第1のコネクタ本体4の先端部にその径方向に移動可能に設置されたリング状部材9」「を有し、リング状部材9は、その軸が第1のコネクタ本体4の軸とほぼ一致する位置と、軸同士がズレる位置とに移動することができるものであり、その軸が第1のコネクタ本体4の軸とほぼ一致する位置で、第1の係合部91が第2のコネクタ3の基端部の第2の係合部105と係合」する点は、本願発明の「注射器アダプタの前記第2の端部は開放位置および閉鎖位置を有する係止部材を備えるとともに、」「バイアルアダプタの前記第1の端部は係止表面を有し、前記注射器アダプタは前記係止部材が前記開放位置にあるときに前記バイアルアダプタと嵌合するように構成され、前記注射器アダプタは前記係止部材が前記閉鎖位置にあり、前記係止表面に隣接する位置にあるときに前記バイアルアダプタに係止されるように構成され」る点に相当するといえる。
また、引用発明の「第1の封止部材6」が「第1のコネクタ本体4の内側に」「設置され」ている点は、本願発明の「本体部内に位置決めされたシール装置」との構成に相当する。そして、引用発明の「第1の封止部材6」が「ヘッド部61」を有する点は、本願発明の「シール装置は、少なくとも1つの膜を有」する点に相当する。

そうすると、両者は、
「システムであって、
第1の端部と第2の端部とを有する注射器アダプタであって、前記注射器アダプタの前記第1の端部は第1の容器に接続されるように構成され、前記注射器アダプタの前記第2の端部は開放位置および閉鎖位置を有する係止部材を備えるとともに、本体部および前記本体部内に位置決めされたシール装置を備え、前記シール装置は、少なくとも1つの膜を有する注射器アダプタと、
第1の端部と第2の端部とを有するバイアルアダプタであって、前記バイアルアダプタの前記第2の端部は第2の容器に接続されるように構成され、前記バイアルアダプタの前記第1の端部は係止表面を有し、前記注射器アダプタは前記係止部材が前記開放位置にあるときに前記バイアルアダプタと嵌合するように構成され、前記注射器アダプタは前記係止部材が前記閉鎖位置にあり、前記係止表面に隣接する位置にあるときに前記バイアルアダプタに係止されるように構成されるバイアルアダプタとを備えるシステム。」
である点で一致し、次の各点で相違する。

(相違点1)
本願発明では、シール装置は、前記注射器アダプタの前記本体部内で、前記注射器アダプタの前記第1の端部から離隔して移動するように構成されているのに対して、引用発明では、第1の封止部材6は、第1のコネクタ本体4内で移動するものの、第1のコネクタ2の基端部から離隔して移動するように構成されていない点。

(相違点2)
本願発明では、係止部材は、前記係止部材の対向する側に位置決めされ、径方向外向きに延在する一対の突出部を備え、前記注射器アダプタは前記係止部材の前記一対の突出部と係合して前記係止部材を前記注射器アダプタに保持するために構成された一対の対応する突出部を有するのに対して、引用発明では、そのような構成を有しない点。

(相違点3)
本願発明では、係止部材が前記閉鎖位置にある状態で、前記注射器アダプタが前記バイアルアダプタに係止されると、前記バイアルアダプタは、前記注射器アダプタに対して回転可能であるのに対して、引用発明では、そのような構成を有するか否か明らかでない点。

第6 判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用発明では、「内筒7」とともに移動する「第1の封止部材6」は、「ヘッド部61」と「脚部62」を有する構成であり、該第1の封止部材6は、ヘッド部61は第1のコネクタ本体4の内側においてその軸方向に沿って移動可能であるものの、脚部62はその基端部が第1のコネクタ本体4の基端部のハブ部42に支持されていることから、「第1の封止部材6」全体としてみると、第1のコネクタ2の基端部から離隔する構造であるとはいえない。一方、上記第4の2において示した引用文献2の記載事項によれば、引用文献2では、「内筒7」は「第1の封止部材6」と「摺動部材74」とを有し、該内筒7はこれらとともに、第1のコネクタ2の底部41から離隔して移動する構造を有している。
すなわち、引用発明では、第1の封止部材6は、その脚部62が第1のコネクタ本体4の基端部のハブ部42から離隔しない構造であるため、第1のコネクタ本体4の軸方向に延在する長大な封止部材として構成されているのに対して、引用文献2に記載された第1の封止部材6及び摺動部材74は、第1のコネクタ2の底部41から離隔して設けられた封止部材として構成されており、引用発明のものに比べて小型の構造となっている。
構成部材の小型化は、引用発明のコネクタ組立体に限らず、機械分野における一般的な課題であるから、引用発明にも内在する課題といえる。そうすると、引用発明において引用文献2の記載事項を参酌し、より小型の封止部材を採用して、引用発明について、上記相違点1における本願発明に係る構成のシール装置を備えるものとすることは、当業者において動機付けが存在し、当業者であれば容易に想到し得ることといえる。
したがって、引用発明に対して引用文献2の記載事項を適用し、上記相違点1に係る本願の請求項1に係る発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について
引用発明において、第1のコネクタ2が備えるリング状部材9が当該第1のコネクタ2から不意に外れてしまわないような構造とすることは、システムの操作性において求められる自明の要請といえる。また、引用発明における、リング状部材を用いた第1、第2のコネクタ間の流体経路の係脱は、引用発明が属する中空針を介した液体移送を行うコネクタ組立体の技術分野における特有の技術事項ではなく、流路を相互接続する一般的な管継手の技術分野全般に共通するものであるといえる。これらのことを踏まえれば、引用発明において、上記第4の3において示した周知の技術を採用することは、当業者であれば容易に想到し得ることといえる。
したがって、引用発明において上記周知の技術を採用し、上記相違点2に係る本願の請求項1に係る発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(3)相違点3について
上記第4の1において示した引用文献1の摘記事項カ.?ク.によれば、引用文献1に記載されたコネクタ組立体は、次のような構造を備えている。
まず、上記カ.によれば、第1のコネクタ2及び第2のコネクタ3はともに円筒状をなすものであり、構造上、両者は互いに対して軸回りに回転可能となっている。
次に、上記キ.、ク.によれば、第2のコネクタ3には、第1のコネクタ2に対して挿入されてから組立状態を経て抜去されるまでの過程で、第1のコネクタ本体4の内周部47によってその内側に向かって圧縮される嵌合部材12が設けられており、当該嵌合部材12により、第2のコネクタ3は第1のコネクタ本体4の内周部47に確実に嵌合する。そして、第1のコネクタ2から第2のコネクタ3が抜去される際、第1のコネクタ2のコイルバネ8は、その付勢力により第2のコネクタ3を先端方向に押し出そうとするが、第2のコネクタ3が不本意に押し出されて第1のコネクタ2から飛び出すのを確実に防止するため、嵌合部材12と第1のコネクタ本体4の内周部47との摺動抵抗が、コイルバネ8の付勢力よりも大きくなるように設定されている。
したがって、リング状部材9を係合解除方向に操作しただけでは、第2のコネクタ3は第1のコネクタ2から抜け出してこないようになっているが、その後、通常の使用形態として、当該摺動抵抗に打ち勝つ力で第2のコネクタ3を引き抜く操作をすることにより、第2のコネクタ3は第1のコネクタ2から引き離されるものである。
つまり、第1のコネクタ2の内周部47と嵌合部材12との摺動抵抗は、コイルバネ8の付勢力に打ち勝つ大きさではあるが、通常の使用形態における手動の引き抜き操作には屈する程度の大きさであり、したがって、所定の力を加えれば、第2のコネクタ3は、第1のコネクタ2に対して軸方向に可動であるといえる。
そして、このような摺動抵抗の大きさは、リング状部材9が、その軸が第1のコネクタ本体4の軸とほぼ一致する位置であって、リング状部材9の第1の係合部91が第2のコネクタ3の第2の係合部105と係合した状態においても同程度のものであることは明らかであり、この状態においては、第2のコネクタ3は、第1のコネクタ2に対して軸方向に動かすことはできないものの、軸回りに回転させるようには動かすことができるというべきである。
そうすると、引用発明において、第2のコネクタ3は第1のコネクタ2に対して回転可能であるといえ、相違点3は、実質的な相違点であるとはいえない。

そして、上記相違点を勘案しても、本願発明の奏する効果は、引用発明、引用文献2の記載事項及び引用文献3に例示される周知技術の奏する効果から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
してみると、本願発明は、引用発明、引用文献2の記載事項及び引用文献3に例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

よって、本願発明は、引用発明、引用文献2の記載事項及び引用文献3に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2の記載事項及び引用文献3に例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-06-25 
結審通知日 2020-06-30 
審決日 2020-07-15 
出願番号 特願2016-528134(P2016-528134)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 智弥  
特許庁審判長 内藤 真徳
特許庁審判官 栗山 卓也
関谷 一夫
発明の名称 コネクタを有する流体閉鎖移送システム  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ