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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01J
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01J
管理番号 1368944
審判番号 不服2019-6085  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-10 
確定日 2020-12-02 
事件の表示 特願2017- 90966「直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月28日出願公開、特開2017-227625〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成29年5月1日(パリ条約による優先権主張 2016年6月24日 大韓民国)の出願であって、平成30年4月18日付けで拒絶理由が通知され、同年8月7日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成31年1月9日付けで拒絶査定(原査定)がされたところ、令和元年5月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされ、その後、当審において令和2年3月6日付けで拒絶理由が通知され、同年6月8日に意見書が提出されたものである。


第2 本願発明

令和元年5月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1には、以下の事項が記載されている。

「 【請求項1】
一側から照射される光が入射されるレンズモジュール;
一つの単位ブロックで構成され、レンズモジュールを経て入射された光を反射及び透過させてそれぞれ異なる三つの方向に分光させる分光モジュール;
前記分光モジュールを通じてそれぞれ異なる三つの方向に分光される各々の光の進行経路上に配置され、三つの方向に分光される各々の光を透過して偏光特性を変換させる偏光変換モジュール;
前記偏光変換モジュールを経てそれぞれ異なる三つの方向に分光される各々の光の進行経路上にそれぞれ配置され、透過される光を特定スペクトルを含む単色光に変換させるフィルターモジュール;及び
前記フィルターモジュールを通じて透過された各々の単色光の出射角に対応するように配置され、前記各々の単色光によって得られる輝度、色度、及び欠陥の中で少なくともいずれか一つの計測ができるように構成された計測モジュール;
を含み、
前記偏光変換モジュールは、直線偏光を円偏光に変換させる波長板を含む、
直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計。」
(以下「本願発明」という。)


第3 当審の拒絶理由通知書の概要

当審の拒絶の理由である、令和2年3月6日付け拒絶理由通知の理由は、概略、次のとおりのものである。

1 発明の詳細な説明において、直線偏光により計測誤差が生じる原理について説明されておらず、測定値も示されていないことから、レンズモジュールと分光モジュールとの間に偏光変換モジュールを設ける態様よりも優れた計測性能を有していることが十分に裏付けられているとは認められない。
よって、本願の請求項1ないし6は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるから、本願の請求項1ないし6に記載された発明は発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 発明の詳細な説明には、どのようなフィルターモジュール及び計測モジュールを用いれば、発明の課題を解決することができるのかは記載されておらず、当業者が「直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計」である請求項1ないし6に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


第4 本願の発明の詳細な説明の記載

1 本願の発明の詳細な説明の記載には、以下の記載がある(図面の簡単な説明の記載を含む。下線は当審で付加した)。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計に係り、より詳細には、入射される光の直線偏光を円偏光に変換した後、輝度及び色度計測が行われるように構成されて、直線偏光の入射によって生じ得る計測誤差を補正した輝度色度計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、光学が発達するにつれ、ディスプレイ装置の技術的成長が速く進行し、これを用いた産業もまたその範囲がますます広がっている。
【0003】
最近のディスプレイ装置の技術動向は、柔軟性(flexible)、防水(waterproof)、透明(transparent)、着用可能(wearable)などの機能を有するパネルの開発と共に、大型化または小型化、超薄化を実現するための方向へ技術開発が活発に行われている。
【0004】
さらに、ディスプレイ装置本来の機能である映像再現性を向上させるための技術も主なイッシュとして依然としてその重要性が高いと言える。
【0005】
これにより、ディスプレイ装置が持つハードウェア(hardware)の改良発展だけでなく、ディスプレイ装置の正確な性能を計測する技術もハードウェアの発達に合わせてより精密に、そして向上された結果を導出できるように開発することが要求されている。
【0006】
ディスプレイ装置の性能を計測するための多様な方法の中で、カラー再現性及び輝度を測定し、ホワイトバランス(whitebalance)を調整する技術が注目されており、従来の場合、カラー再現性及び輝度を測定するにあたり、分光方式を採用する点測定色度計が幅広く実施されている。
【0007】
しかし、普通のディスプレイ装置は、画素別に液晶が並ぶ方向を電気的に調節することにより画素の明るさを変化させるために、偏光フィルム(polaroidfilm)を通じてバックライトから出る光を透過させる構造を有しているので、ディスプレイ装置を通じて照射される光には直線偏光が含まれる場合が多く、このような直線偏光が色度または輝度測定の誤差を増加させる原因となっている。
【0008】
そして、このような直線偏光は、ディスプレイ装置から照射される光源を通じて色度及び輝度を測定するにあたって、ディスプレイ装置の整列が横方向または縦方向に変化することが計測値の差を大きく見せる原因となり、より正確な色度及び輝度の計測を難しくしている。
【0009】
よって、このような問題点を解決するための方法が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するために案出された発明であって、計測対象から入射される光の偏光特性によって、色度及び輝度が計測された結果値に生じる誤差を克服し、より正確な色度及び輝度計測ができる輝度色度計を提供するためのものである。
【0011】
本発明の課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、以下の記載から当業者に明確に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を果たすために、本発明の直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計は、一側から照射される光が入射されるレンズモジュール、レンズモジュールを通じて入射された光を透過して偏光特性を変換させる偏光変換モジュール、一つの単位ブロックで設けられ、偏光変換モジュールを経て入射された光を反射及び透過させて、それぞれ異なる三つの方向に分光させる分光モジュール、分光モジュールを通じてそれぞれ異なる三つの方向に分光される各々の光の進行経路上にそれぞれ配置され、三つの方向に分光される各々の光に対して特定スペクトルを含む単色光だけ透過させるフィルターモジュール、及びフィルターモジュールを通じて透過された各々の単色光の出射角に対応するように配置され、各々の単色光によって得られる輝度、色度、及び欠陥の中で少なくともいずれか一つの計測ができるように構成された計測モジュールを含む。
【0013】
また、本発明の直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計は、一側から照射される光が入射されるレンズモジュール、一つの単位ブロックで構成され、レンズモジュールを経て入射された光を反射及び透過させてそれぞれ異なる三つの方向に分光させる分光モジュール、分光モジュールを通じてそれぞれ異なる三つの方向に分光される各々の光の進行経路上に配置され、三つの方向に分光される各々の光を透過して偏光特性を変換させる偏光変換モジュール、偏光変換モジュールを経てそれぞれ異なる三つの方向に分光される各々の光の進行経路上にそれぞれ配置され、透過される光を特定スペクトルを含む単色光に変換させるフィルターモジュール、及びフィルターモジュールを通じて透過された各々の単色光の出射角に対応するように配置され、各々の単色光によって得られる輝度、色度、及び欠陥の中で少なくともいずれか一つの計測ができるように構成された計測モジュールを含む。
【0014】
なお、偏光変換モジュールは、直線偏光を円偏光に変換させる波長板を含んでもよい。
【0015】
また、波長板は、互いに垂直の方向に振動する直線偏光が4分の1波長の光路差を生じさせるように厚さが決められた4分の1波長板(quarter-waveplate)であってもよい。
【0016】
また、分光モジュールは、入射された光を反射及び透過させ、それぞれ異なる二つの方向に分光させる第1分光体、及び第1分光体を通じて透過された光を反射及び透過させ、それぞれ異なる二つの方向に分光させる第2分光体を含み、第1分光体に光が入射された地点からそれぞれ異なる三つの方向に分光され、各々のフィルターモジュールに到達するまでの距離が全て同一に構成されてもよい。
【0017】
また、第1分光体に入射される光の総量を1とするとき、それぞれ異なる三つの方向に分光される光の量は、それぞれ前記光の総量の3分の1であってもよい。
【0018】
また、フィルターモジュールを通じて透過された各々の単色光によって得られるそれぞれの結像は、互いに同じ視野範囲を有してもよい。
【0019】
また、フィルターモジュールは、それぞれ異なる三つの方向に分光される各々の光を三刺激値の中でX値に当たるスペクトル、Y値に当たるスペクトル、及びZ値に当たるスペクトルに変換させてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計は、直線偏光を有する光の特性を円偏光を持つように変換させて色度及び輝度を測定することで、計測対象物の整列方向と無関係に、同様に信頼性の高い色度及び輝度の計測値を導出することができる効果を奏する。
【0021】
また、分光モジュールに備えられるプリズムのような分光体を通じて生じ得る直線偏光も円偏光に変換させて計測モジュールに至るように構成されているので、色度及び輝度に対する計測信頼度を向上させる効果を奏する。
【0022】
本発明の効果は、以上で言及した効果に制限されず、言及されていない他の効果は請求範囲の記載から当業者に明確に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例による直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計の
斜視図である。
【図2】本発明の一実施例による直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計の
分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施例による直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計の
断面図である。
【図4】本発明の一実施例による直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計を
示す概略図である。
【図5】従来技術を通じて計測対象物の整列を異ならせながら三刺激値を測定したデ
ータを示すものである。
【図6】本発明の一実施例による直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計を
通じて、計測対象物の整列を異ならせながら三刺激値を測定したデータを示すもので
ある。
【図7】本発明の一実施例による直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計に
含まれるλ/4波長板の特性を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の目的を具体的に実現できる本発明の望ましい実施例を添付の図面を参照して説明する。本実施例を説明するにあたり、同じ構成に対しては同じ名称及び同じ符号が使われ、これによる付加的な説明は省略する。
【0025】
本発明による直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計は、下記のように実施されることができる。
【0026】
図1は、本発明の一実施例による直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計の斜視図である。図2は、本発明の一実施例による直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計の分解斜視図である。図3は、本発明の一実施例による直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計の断面図である。
【0027】
図1ないし図3を参照すると、本発明の一実施例による直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計は、その構成を大きく分けて、一側から照射される光が入射されるレンズモジュール100、レンズモジュール100を通じて入射された光を透過して偏光特性を変換させる偏光変換モジュール200、一つの単位ブロックで構成され、偏光変換モジュール200を経て入射された光を反射及び透過させてそれぞれ異なる三つの方向に分光させる分光モジュール400、分光モジュールを通じてそれぞれ異なる三つの方向に分光される各々の光の進行経路上にそれぞれ配置され、三つの方向に分光される各々の光に対して特定スペクトルを含む単色光だけ透過させるフィルターモジュール500、及びフィルターモジュール500を通じて透過された各々の単色光の出射角に対応するように配置され、各々の単色光によって得られるそれぞれの輝度、色度、及び欠陥の中で少なくともいずれか一つの計測ができるように構成された計測モジュール600を含む。
【0028】
或いは、前記輝度色度計は、一側から照射される光が入射されるレンズモジュール100、一つの単位ブロックで構成され、レンズモジュール100を経て入射された光を反射及び透過させ、それぞれ異なる三つの方向に分光させる分光モジュール400、分光モジュール400を通じてそれぞれ異なる三つの方向に分光される各々の光の進行経路上に配置され、三つの方向に分光される各々の光を透過して偏光特性を変換させる偏光変換モジュール200、偏光変換モジュール200を経てそれぞれ異なる三つの方向に分光される各々の光の進行経路上にそれぞれ配置され、透過される光を特定スペクトルを含む単色光に変換させるフィルターモジュール500、及びフィルターモジュール500を通じて透過された各々の単色光の出射角に対応するように配置され、各々の単色光によって得られるそれぞれの輝度、色度、及び欠陥の中で少なくともいずれか一つの計測ができるように備えられる計測モジュール600を含んでもよい。
【0029】
以下、前記それぞれの構成を具体的に説明する。
【0030】
レンズモジュール100は、オブジェクトレンズ(対物レンズ)及びアタッチメントレンズなどを含む複数個のレンズから構成されている。
【0031】
このように複数個のレンズから構成されるレンズモジュール100は、複数個のレンズが入射される光の経路上に連続的に配置されることで作られる組み合わせで構成されてもよい。
【0032】
レンズモジュール100は、測定対象Sになるディスプレイ装置から発散される光を集光して、分光モジュール400または偏光変換モジュール200に向けて透光させることができ、複数個のレンズ120が第1ハウジング110の内側の周りに締結されて相互に組み合わせられることによって、球面収差、コマ収差、及び色収差を十分に修正するように構成されてもよい。
【0033】
このようなレンズモジュール100に使われるオブジェクトレンズは、フラウンホーファー型、ガウス型、及びテーラー型のいずれかで構成されてもよい。
【0034】
これは例示的なものであり、本発明が適用される実施例が多様な形状及び組み合わせで具現されてもよいことは明らかである。
【0035】
本発明の一実施例では、レンズモジュール100を通じて透光された光を集光させて光の直進性と集光性とを高めるためのテレセントリックモジュールがさらに含まれてもよい。テレセントリックモジュールは、レンズモジュール100と分光モジュール400との間、または、レンズモジュール100と偏光変換モジュール200との間に配置されることができる。また、テレセントリックモジュールは、レンズモジュール100を通じて透光されて分光モジュール400または偏光変換モジュール200に入射される光の進行経路上に配置されてもよい。
【0036】
偏光変換モジュール200は、第2ハウジング210の内側に拘束される波長板220を含んでもよい。
【0037】
波長板220は、互いに垂直の方向に振動する直線偏光の間に1/4波長の光路差を生じさせるように、厚さが定められた複屈折板である4分の1波長板によって具現されてもよく、一側で波長板220の法線に沿って入射された直線偏光を円偏光に変換させ、波長板220の法線に沿って他側に透過させる。
【0038】
直線偏光及び円偏光は、偏光の一種であって、光波の振動方向が1方向である。すなわち、光の進行を考えるとき、振動が1平面内に含まれる光を直線偏光と言い、光波の振動方向が円振動であることを円偏光と言う。
【0039】
4分の1波長板は、円偏光を直線偏光に変換するとともに、直線偏光を円偏光に変換して透過させる特性を有する。本発明の一実施例において、4分の1波長板は、測定対象Sとなるディスプレイ装置からレンズモジュール100を経て入射される光の直線偏光を、偏光変換モジュール200を経て円偏光に変換するように構成される。
【0040】
本発明の第1実施例として、偏光変換モジュール200は、レンズモジュール100と接するように配置されてもよく、レンズモジュール100を経て入射された光の直線偏光を円偏光に変換して透過し、分光モジュール400に伝達するように構成されてもよい。
【0041】
また、本発明の第2実施例として、偏光変換モジュール200は、後述する分光モジュール400を通じてそれぞれ異なる三つの方向に分光される光の経路上にフィルターモジュール500と接するように配置されてもよい。
【0042】
それぞれ異なる経路上に三つの偏光変換モジュール200を設けた場合、測定対象Sであるディスプレイ装置から入射される光の直線偏光だけでなく、分光モジュール400に備えられるプリズムのような光学部品を通じて生じ得る直線偏光までも円偏光に変換して透過するようになるので、第1実施例と比べてより優れた計測性能を示す効果を得ることができる。
【0043】
分光モジュール400は、一つの単位ブロックで構成され、レンズモジュール100または偏光変換モジュール200を通じて入射される光の経路を保全するための光路の役割をする鏡筒300を通じてレンズモジュール100または偏光変換モジュール200と結合されてもよい。
【0044】
分光モジュール400は、鏡筒300を経て透光される光の一部を反射し、残りを透過させることでそれぞれ異なる三つの方向に分光させる。
【0045】
図4は、本発明の一実施例による直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計を示す概略図である。
【0046】
図4に示すように、分光モジュール400は、鏡筒300を経て透光される光の一部を反射させて残りを透過させる第1分光体422、及び第1分光体422を通じて透過された光の一部を反射させて残りを透過させる第2分光体424を含む一つの単位ブロックで構成されてもよい。
【0047】
すなわち、一つの単位ブロックの内部に、既に設定された角度で分光体420の第1分光体422及び第2分光体424が設けられることで、鏡筒300を経て透光される光路に沿って進む光をそれぞれ異なる三つの方向に分光させることができる。なお、このとき、第1分光体422及び第2分光体424の設定角度に応じて分光される光の方向を変えることができる。第1分光体422及び第2分光体424の分光透光率は、0度?45度の間で構成されてもよい。
【0048】
また、分光モジュール400は、鏡筒300を経て入射される光が到逹する第1分光体422及び第2分光体424の入射面と、三つの方向に分光された各々の光が出射される出射面とが垂直になるように、すなわち、透過される光の入射角と出射角とが垂直になるように構成されている。
【0049】
また、分光モジュール400は、分光体420に入射される光の総量を1とすると、三つの方向に分光されて出射面を通じて出射される各々の光の量が光の総量の1/3になるように構成されている。
【0050】
さらに、前述のテレセントリックモジュールによってレンズモジュール100または偏光変換モジュール200を通じて分光モジュール300に入射される光の入射角は、分光体420の入射面に対して垂直になるように維持されるので、直進性及び集光性が確保される。
【0051】
また、テレセントリックモジュールによって分光モジュール400を経てそれぞれ異なる三つの方向に分光されるので、フィルターモジュール500に入射される各々の光の入射角が一定の角度で維持されるだけでなく、集光されて入射されるように構成されてもよい。
【0052】
一方、分光モジュール400は、それぞれ異なる三つの方向に分光される各々の光が前記一つの単位ブロックに入射されてから出射されるまでの進行距離が同一になるよう構成されてもよい。
【0053】
具体的には、第1分光体422を通じて反射される光の進行距離と、第1分光体422を透過して第2分光体424を通じて反射される光の進行距離と、第1分光体422と第2分光体424を全て透過する光の進行距離とが、全て同一になるように構成されてもよい。
【0054】
分光モジュール400に入射された後、分光して出射される各光の進行距離が同一である場合、それぞれ同じ視野範囲(FOV:Fieldof View)を有する均一な結像を計測モジュール600で獲得できるという長所がある。また、テレセントリックモジュールを通じて分光モジュールから出射されて干渉フィルターモジュールに入射される光の角度を一定に維持させられるだけでなく、集光された状態でフィルターモジュール500に入射させられるという長所がある。
【0055】
一方、フィルターモジュール500は、前述の分光モジュール400または偏光変換モジュール200に接するように配置され、分光モジュール400または偏光変換モジュール200を経てそれぞれ異なる三つの方向に分光された各々の光の進行経路上に配置されるそれぞれ三つのフィルター520によって具現化される。
【0056】
フィルター520は、第4ハウジング510の内側に配置されて、薄膜上で起きる干渉現象を利用して特定のスペクトルを有する単色光だけを分離するものであり、分光モジュール400を通じて分光された各々の光に対して特定スペクトルを含む単色光だけ透過させる。
【0057】
このとき、それぞれのフィルター520によってフィルタリングされる各々の単色光には、国際照明委員会(CIE:CommissionInternationale del'Eclairage)で規定している標準表色系(CIE 1931 standard colorimetric system)による三刺激値によるX、Y、Z領域の特定スペクトルが含まれてもよい。
【0058】
より具体的には、三つのフィルター520は、三刺激値の中で400?550nmのスペクトルを含むZ値を有する単色光のみを透過させるフィルター、450?700nmのスペクトルを含むY値を有する単色光のみを透過させるフィルター、500?700nmのスペクトルを含むX値を有する単色光のみを透過させるフィルターであってもよい。
【0059】
フィルターモジュール500におけるそれぞれのフィルター520は、計測正確度を向上させるために、入射される光が一定の角度を維持できるように設けられている。
【0060】
計測モジュール600は、フィルターモジュール500を経て透過された前記各々の単色光の出射角に対応するように配置され、前記各々の単色光によって得られる各々の結像の輝度、色度、及び欠陥の中で少なくともいずれか一つの測定ができるように構成されている。
【0061】
また、計測モジュール600は、前記それぞれのフィルター520に対応する個数設けられ、各々の計測モジュール600を通じて得られる各々の結像が、同じ視野範囲(FOV:Fieldof View)を有するように構成されてもよい。
【0062】
図5は、従来技術を通じて計測対象物の整列を異ならせながら三刺激値を測定したデータを示すものである。計測対象Sとなるディスプレイ装置を通じて照射される光の直線偏光は、ディスプレイ装置を横方向に整列して計測するときと、縦方向に整列して計測するときとで、計測値に差が生じる。
【0063】
すなわち、ディスプレイ装置の色度、輝度、及び欠陥を本発明の一実施例によって計測するとき、同じ地点の計測値であっても、ディスプレイ装置の整列状態、整列された角度等によって大きい誤差を有することになる。
【0064】
図6は、本発明の一実施例による直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計を通じて計測対象物の整列を異ならせながら三刺激値を測定したデータを示すものである。計測対象Sのディスプレイ装置の整列状態、整列角度にかかわらず、同じ地点の三刺激値の計測値が一定に導出される。
【0065】
図7は、本発明の一実施例による直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計に含まれるλ/4波長板の特性を示す概略図である。
【0066】
以上、本発明による望ましい実施例を説明したが、前述した実施例の他にも本発明がその趣旨や範疇から脱することなく、他の特定形態で具体化できるという事実は、当該技術分野における通常の知識を有する者には自明なことである。よって、上述した実施例は制限的なものではなく例示的ものとして解釈されるべきであり、本発明は上述した説明に限定されず、添付した請求項の範疇及びそれに同等の範囲内で変更されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
100:レンズモジュール
110:第1ハウジング
120:レンズ
200:偏光変換モジュール
210:第2ハウジング
220:波長板
300:鏡筒
400:分光モジュール
410:第3ハウジング
420:分光体
422:第1分光体
424:第2分光体
430:テレセントリックモジュール
500:フィルターモジュール
510:第4ハウジング
520:フィルター
600:計測モジュール」

2 また、図面の記載は以下のとおりである。

【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】



第5 判断

1 特許法第36条第6項第1号について

(1)本願発明が解決しようとする課題

上記【0006】ないし【0010】の記載によれば、本願発明は、分光方式を採用する点測定色度計を用いてディスプレイ装置のカラー再現性及び輝度を測定する場合、ディスプレイ装置を通じて照射される光には直線偏光が含まれることから、ディスプレイ装置の整列が横方向又は縦方向に変化することが計測値の差を大きく見せる原因となり、より正確な色度及び輝度の計測を難しくしているという問題に対処し、計測対象から入射される光の偏光特性によって生じる色度及び輝度の計測値の誤差を克服し、より正確な色度及び輝度計測ができる輝度色度計を提供することを課題としている。

(2)課題解決手段

ア 課題を解決する手段に係る上記【0012】及び【0013】には、光を透過して偏光特性を変換させる偏光変換モジュールを備えた輝度色度計が記載され、上記【0014】には、「偏光変換モジュールは、直線偏光を円偏光に変換させる波長板を含んでもよい」と記載されている。

イ 上記【0012】に記載された輝度色度計は、「光を反射及び透過させて、それぞれ異なる三つの方向に分光させる分光モジュール」の光入射側に偏光変換モジュールが配置されており、偏光変換モジュールが「分光モジュールを通じてそれぞれ異なる三つの方向に分光される各々の光の進行経路上に配置され」る本願発明とは、偏光変換モジュールの配置が異なる(以下、【0012】に記載された輝度色度計に係る偏光変換モジュールの配置を「除外態様」という。)。

ウ これに対し、上記【0013】に記載された輝度色度計は、偏光変換モジュールが「分光モジュールを通じてそれぞれ異なる三つの方向に分光される各々の光の進行経路上に配置され」ており、偏光変換モジュールの配置が本願発明と一致する(以下、【0013】に記載された輝度色度計に係る偏光変換モジュールの配置を「本願態様」という。)。

エ また、上記【0020】及び【0021】には、発明の効果として、「本発明の直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計は、直線偏光を有する光の特性を円偏光を持つように変換させて色度及び輝度を測定することで、計測対象物の整列方向と無関係に、同様に信頼性の高い色度及び輝度の計測値を導出することができる効果を奏する。」「また、分光モジュールに備えられるプリズムのような分光体を通じて生じ得る直線偏光も円偏光に変換させて計測モジュールに至るように構成されているので、色度及び輝度に対する計測信頼度を向上させる効果を奏する。」と記載され、上記【0042】には、「それぞれ異なる経路上に三つの偏光変換モジュール200を設けた場合、測定対象Sであるディスプレイ装置から入射される光の直線偏光だけでなく、分光モジュール400に備えられるプリズムのような光学部品を通じて生じ得る直線偏光までも円偏光に変換して透過するようになるので、第1実施例と比べてより優れた計測性能を示す効果を得ることができる。」と記載されている。

オ 以上のことから、本願発明は、輝度色度計の分光モジュールを通じてそれぞれ異なる三つの方向に分光される各々の光の進行経路上に偏光変換モジュールを配置することにより、上記の課題を解決しようとしているものと認められる。

(3)課題解決手段と効果の関係

ア 上記【0026】には、【図1】ないし【図3】に本発明の一実施例の輝度色度計を示す旨が記載され、上記【0045】には、【図4】に本発明の一実施例の輝度色度計を示す旨が記載されている。そして、【図1】ないし【図3】及び【図4】に記載された輝度色度計の偏光変換モジュールの配置は、除外態様に対応している。

イ 上記【0062】及び【0064】には、ディスプレイ装置を横方向に整列して計測した計測値と、縦方向に整列して計測した計測値について、従来技術では【図5】に示すように計測値に差が生じ、本発明の一実施例では【図6】に示すように計測値が一定に導出される旨記載されている。上記アに示したように、「本発明の一実施例」とされる【図1】ないし【図3】及び【図4】に記載された輝度色度計の偏光変換モジュールの配置は、除外態様に対応していることから、【0064】に記載された「本発明の一実施例」においても、偏光変換モジュールの配置は除外態様であると認められる。また、従来技術の測定値を示す【図5】の表には、「波長板の付着前」と記載されているところ、上記【0014】及び【0036】から「波長板」は偏光変換モジュールに相当するものであるから、従来技術は「本発明の一実施例」から偏光変換モジュールである波長板を除いたものに相当するといえる。
なお、上記【0063】には、「すなわち、ディスプレイ装置の色度、輝度、及び欠陥を本発明の一実施例によって計測するとき、同じ地点の計測値であっても、ディスプレイ装置の整列状態、整列された角度等によって大きい誤差を有することになる。」と記載されているが、当該記載は上記【0062】及び【0064】の記載と整合しないことから、【0063】の「本発明の一実施例」は「従来技術」の誤記と思われる。

ウ 【図5】及び【図6】は、「本発明の一実施例」の測定値差が「従来技術」の測定値差よりも少ないことを示しているが、発明の詳細な説明には、直線偏光により計測値差が生じる原理を説明する記載はない。

エ 直線偏光の性質として、屈折率の異なる媒質間の界面に直線偏光が入射する際、界面に対して光軸が傾斜している場合には、電場の振動方向が入射面に平行なp偏光と振動方向が入射面に垂直なs偏光とで反射率が異なることは、技術常識である。
当該技術常識を考慮すると、直線偏光成分を含むことにより測定誤差が生じる原因は、測定光を検出する前に傾斜面に入射させることにより、反射光及び透過光の光量が直線偏光の振動方向に依存して異なることであると認められる。
そして、「鏡筒300を経て透光される光の一部を反射させて残りを透過させる第1分光体422、及び第1分光体422を通じて透過された光の一部を反射させて残りを透過させる第2分光体424を含む一つの単位ブロックで構成され」る「分光モジュール400」の入射側に偏光変換モジュール(波長板)を配置する「本発明の一実施例」においては、分光モジュール400の傾斜する反射・透過面(【図4】参照)に入射する前に直線偏光を円偏光に変換するため、分光モジュール400で生じる光量差を防止することができ、【図6】の測定結果をもたらしていると認められる。

オ しかしながら、本願態様は分光モジュールの出射側に偏光変換モジュールを配置するものであるから、本願態様を採用する本願発明は、分光モジュールで生じる光量差を防止することができるとはいえない。

カ 上記イで示したように、【図6】の測定値は除外態様に対応するものであるから、発明の詳細な説明及び図面には、本願態様に対応する測定値は開示されていない。
上記【0042】には、本願態様に関して「それぞれ異なる経路上に三つの偏光変換モジュール200を設けた場合、測定対象Sであるディスプレイ装置から入射される光の直線偏光だけでなく、分光モジュール400に備えられるプリズムのような光学部品を通じて生じ得る直線偏光までも円偏光に変換して透過するようになるので、第1実施例(当審注:「除外態様」に相当する。)と比べてより優れた計測性能を示す効果を得ることができる。」と記載されているところ、分光モジュールにより生じた直線偏光が偏光変換モジュールにより円偏光に変換されることは理解できる。
しかしながら、発明の詳細な説明には、直線偏光により計測誤差が生じる原理についての説明がないことから、円偏光に変換することにより計測誤差が減少すると直ちに理解することはできない。

キ 本願発明は、測定光の入射側から順に、レンズモジュール、分光モジュール、偏光変換モジュール、フィルターモジュール及び計測モジュールを備えており、偏光変換モジュールにより直線偏光を円偏光に変換された測定光は、フィルターモジュールを経て計測モジュールに入射する。
本願発明においては、フィルターモジュール及び計測モジュールの構造的な特定はされていないが、一般的なカラーフィルター及び光検出器には測定光が垂直に入射することを踏まえると、フィルターモジュール及び計測モジュールに直線偏光が入射しても、フィルターモジュール及び計測モジュールの内部で直線偏光の振動方向の差による誤差が生じるとはいえない。
他方、偏光変換モジュールには、分光モジュールにより三つの方向に分光された測定光が入射する。分光モジュールは、「光を反射及び透過させてそれぞれ異なる三つの方向に分光させる」ものであるところ、分光のための反射・透過面が入射光の光軸に対して傾斜していることは技術常識(【図4】参照)であるから、直線偏光成分を含む測定光が分光モジュールに入射すると、分光された測定光の光量は測定光に含まれる直線偏光の振動方向に依存して変化するといえる。そのため、偏光変換モジュールに入射する測定光は、分光モジュールで生じる直線偏光の光量変化の影響を受けたものであり、また、偏光変換モジュールには係る光量変化を補正する機能はなく、フィルターモジュール及び計測モジュールは直線偏光の影響を受けないものであるから、偏光変換モジュールの有無により測定値の誤差に差異が生じるとはいえない。

ク 仮に、フィルターモジュール及び計測モジュールが直線偏光の振動方向に依存して透過光及び検出光の光量に変化を生じるものであったとしても、偏光変換モジュールによって改善することができるフィルターモジュール及び計測モジュールの構造に起因する誤差は、分光モジュールで生じる光量差を許容することができるほど大きなものであるとはいえない。
したがって、本願発明は、直線偏光によって生じる計測誤差を減少させることができるとはいえない。ましてや、除外態様に相当する「第1実施例と比べてより優れた計測性能を示す効果を得ることができる」(【0042】)とはいえない。

(4)小括

そうすると、発明の詳細な説明の効果に関する記載だけでは、本件出願の優先日当時の技術常識を参酌しても、本願発明の偏光変換モジュールの配置及び各モジュールの機能の範囲内であれば、計測対象から入射される光の偏光特性によって生じる色度及び輝度の計測値の誤差を克服し、より正確な色度及び輝度計測ができる輝度色度計を提供するという本願発明の課題を解決できると当業者において認識できる程度に記載しているとはいえない。
したがって、本願発明は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。

(5)請求人の主張について

ア 請求人は、令和2年6月8日提出の意見書において、
「図5と図6:測定対象物Sの向きに関係なく、直線偏光成分が存在する場合(図5)と直線偏光成分が円偏光成分に変換される場合(図6)を比較します。6の場合は、エラーがほとんどないことを説明しています。
すなわち、直線偏光を含む光が偏光変換モジュール200を通過しない場合と通過する場合とで比較しています。
請求項1に係る発明では、分光モジュール400も直線偏光成分を誘起する要素であるため、直線偏光を生じさせるすべての要素(レンズモジュール100、分光モジュール400)の後に偏光変換モジュール200を適用します。その後、直線偏光による誤差の原因を取り除き、計測することができます。」
と主張する。

イ しかしながら、上記(3)イで指摘したように【図6】は本願発明とは異なる除外態様に対応する測定値を示すものであり、本願発明の効果を示すものではない。
また、請求人は、直線偏光により測定誤差が生じる原理について、何ら説明していない。
したがって、請求人の上記主張は、当審の上記判断を左右するものではない。

なお、令和2年3月6日付け拒絶理由通知において、「●付言」として、「(1)意見書において、本願態様について【図6】と同様のデータが提示され、測定対象のディスプレイ装置の整列状態が異なることにより生じる計測値の差が、本願態様において除外態様よりも減少することが実証されれば、上記理由1は解消する。」、「(2)・・・意見書において、直線偏光により計測誤差が生じる原理、及び、直線偏光を円偏光に変換することにより計測誤差が補正される理由についての説明がされ、従来周知のフィルターモジュール及び計測モジュールを用いた場合においても計測誤差が補正されることが理解できれば、上記理由2は解消する。」と指摘したが、請求人は、これに対して何ら対応してこなかった。

2 特許法第36条第4項第1号について

(1)発明の詳細な説明には、直線偏光により測定誤差が生じる原理を説明する記載はない。

(2)また、上記1(3)イで指摘したように、【図6】に示された測定値は除外態様に対応するものであるから、発明の詳細な説明及び図面には、本願発明に対応する測定値は開示されていない。

(3)本願発明は、分光モジュールとフィルターモジュール及び計測モジュールの間に偏光変換モジュールが配置されていることから、フィルターモジュール及び計測モジュールが直線偏光の振動方向に依存して透過光及び検出光の光量に変化を生じるものであるならば、直線偏光による計測誤差を改善することができる余地がある。
しかしながら、発明の詳細な説明には、フィルターモジュール及び計測モジュールの構造について説明する記載はなく、一般に、測定光はフィルターモジュール及び計測モジュールに垂直に入射するものであり、【図1】ないし【図4】に示されたフィルターモジュール及び計測モジュールも光軸に対して垂直に配置されていることから、フィルターモジュール及び計測モジュールに直線偏光が入射することにより、測定誤差が生じるとはいえない。

(4)偏光変換モジュールについて、上記【0015】及び【0037】に1/4波長板を含むことが記載されているが、発明の詳細な説明には、上記1(3)キで指摘した分光モジュールで生じた光量差を補正することができる構造を有することは記載されていない。

(5)本願発明が「直線偏光による計測誤差が補正された」計測値を提供することができるものであるならば、本願発明において特定されるレンズモジュール、分光モジュール、偏光変換モジュール、フィルターモジュール及び計測モジュールに加えて、何らかの構造が必要であると認められるが、発明の詳細な説明には当該構造を開示する記載はないし、当該構造が本件出願の優先日当時の技術常識であったともいえない。

(6)したがって、発明の詳細な説明は、当業者が「直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計」である本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。

(7)請求人の主張について

ア 請求人は、令和2年6月8日提出の意見書において、
「直線偏光成分が円偏光成分に変換された後の光は、フィルターモジュール500および計測モジュール600に到達するため、フィルターモジュール500および計測モジュール600が従来のものと同じであっても、『直線偏光による計測誤差の補正』の特性には影響しません。」
と主張する。

イ しかしながら、上記(3)で指摘したように、フィルターモジュール及び計測モジュールには、計測光が垂直に入射することから、直線偏光が入射することにより測定誤差が生じるとはいえない。
また、請求人は、測定誤差が補正される原理について、何ら説明していない。
したがって、請求人の上記主張は、当審の上記判断を左右するものではない。


第6 むすび

以上のとおりであるから、本件出願は、本願発明を含む特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-07-01 
結審通知日 2020-07-07 
審決日 2020-07-20 
出願番号 特願2017-90966(P2017-90966)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (G01J)
P 1 8・ 537- WZ (G01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中澤 真吾塚本 丈二  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 磯野 光司
渡戸 正義
発明の名称 直線偏光による計測誤差が補正された輝度色度計  
代理人 山田 卓二  
代理人 徳山 英浩  

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