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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
管理番号 1369007
異議申立番号 異議2019-700873  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-01-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-07 
確定日 2020-11-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6508559号発明「活性エネルギー線硬化性組成物及びそれを用いたフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6508559号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。 特許第6508559号の請求項1、3、4に係る特許を維持する。 特許第6508559号の請求項2に係る特許異議申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6508559号(出願日:平成29年10月26日、優先日:平成28年12月1日)は、平成31年4月12日付けでその特許権の設定登録がされ、令和元年5月8日にその特許公報が発行され、その後、請求項1?4に係る特許に対して、同年11月7日に特許異議申立人 前田洋志(以下、「申立人」という。)から特許異議の申立てがなされたものである。そして、その後の経緯は以下のとおりである。

令和2年1月30日付け:取消理由の通知
同年4月 2日 :訂正の請求及び意見書の提出(特許権者)

なお、令和2年6月23日付けで、申立人に対し、特許権者からの訂正の請求及び意見書を送付して意見書の提出を求めたが、申立人からの回答はなかった。

第2 訂正の可否
1 訂正の内容
令和2年4月2日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。なお、訂正前の請求項1?4は一群の請求項である。

訂正事項1:特許請求の範囲の請求項1の「前記シリカ粒子(B)が、湿式法で製造されたものであり、」を、
「前記シリカ粒子(B)が、表面未処理のものであり、湿式法で製造されたものであり、」に訂正する。
訂正事項2:特許請求の範囲の請求項2を削除する。
訂正事項3:特許請求の範囲の請求項3の「請求項1又は2記載の」を、
「請求項1記載の」に訂正する。
訂正事項4:特許請求の範囲の請求項4の「請求項1又は2記載の」を、
「請求項1記載の」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る「シリカ粒子(B)」に関し、例えば調整例1及び2の記載、すなわち、「シリカ粒子(東ソー・シリカ株式会社製「ニップシル E-220A」、平均粒子径:1.7μm、表面未処理品)」及び「シリカ粒子(東ソー・シリカ株式会社製「ニップシル BY-200」、平均粒子径:1.7μm、表面未処理品)」に基づき限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
訂正事項2は、請求項の削除を目的とするものと認められる。
訂正事項3及び4は、訂正事項2により請求項2が削除されたため、請求項2を引用しない形式にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
また、訂正事項1?4のいずれも、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3 本件訂正後の請求項1?14に係る発明
本件訂正により訂正された訂正請求項1?4に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等と、まとめて「本件訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。

【請求項1】
活性エネルギー線硬化性化合物(A)及びシリカ粒子(B)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物の製造方法であって、前記シリカ粒子(B)が、表面未処理のものであり、湿式法で製造されたものであり、1次平均粒子径を有するシリカ粒子が二次凝集したものを粉砕したものであり、前記シリカ粒子(B)の配合量が、活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、1?60質量部の範囲であり、前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜表面のぬれ張力が35?60mN/mの範囲であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物の製造方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有することを特徴とするフィルムの製造方法。

第4 取消理由通知について
1 取消理由通知の概要
当審は、令和2年1月30日付け取消理由通知において、概要以下のとおりの取消理由を通知した。
「A (実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
B (サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
C (明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。


2 理由A、Bについて(その1)

(4)しかし、この実施例及び比較例のみならず、本件発明の詳細な説明のいかなる記載を参考にしても、本件発明に係る「活性エネルギー線硬化性組成物」の硬化塗膜表面のぬれ張力を「35?60mN/m」の範囲に調整するにはどのようにすればよいのか、当業者といえども理解できない。
上記(2)に示すように、「前記ぬれ張力を所望の範囲とするためには、前記シリカ粒子(B)の種類、表面処理、配合量等を適宜調整することにより行うことができる。」といっても、その「適宜調整」をどのようにすれば実施しうるのか理解できず、また、実施例及び比較例をみても、どのような特徴(例えば、原材料、合成方法、加工方法、あるいはそれ以外の何らかの技術的な特徴)が「活性エネルギー線硬化性組成物」の硬化塗膜表面のぬれ張力を「35?60mN/m」の範囲に調整するために必要であるのか、皆目見当が付かない。

(5)このため、本件請求項1に規定されるぬれ張力の発現をどのようにすれば調整しうるのか、本件発明の詳細な説明のいかなる記載を参酌しても理解することができない。
よって、本件発明の詳細な説明は、本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

(6)そして、上記(4)において指摘した事項に鑑みると、本件発明は、本件請求項1に規定されるぬれ張力をどのように実施しうるのか明らかではない。
よって、本件発明は、本件発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。

3 理由A、Bについて(その2)

(3)しかし、「OCA」すなわち「高透明性粘着テープ」とは上記実施例での評価で用いられたものに限らない。また、「等」とあるため、他の何らかの接着あるいは粘着性の物質との「接着密着性」をも考慮する必要があるところ、そのような物質が何であるのか判然としない。

(4)そうすると、本件発明の課題である「OCA等に対する高い接着密着性」を本件発明において発現させるためにはどのような構成を採用すればよいのか、皆目見当が付かない。
また、この課題を「OCA」「に対する高い接着密着性」と解しても、本件実施例1、2、4?13で使用されるシリカあるいは表面処理シリカを用いた、実施例1に記載される重合性成分を用いた活性エネルギー線硬化性組成物以外の物が、上記【0077】に記載されるもの以外の任意のOCAに対して高い接着密着性を有しうるものなのか、皆目見当が付かない。

(5)このため、本件発明は、「OCA等に対する高い接着密着性」という課題をどのようにすれば解決しうるのか、本件発明の詳細な説明のいかなる記載を参酌しても理解することができない。
よって、本件発明の詳細な説明は、本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

(6)そして、上記(4)において指摘した事項に鑑みると、本件発明が「OCA等に対する高い接着密着性」という課題を解決するためには、どのようにすれば実施しうるのか明らかではない。
よって、本件発明は、本件発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。

4 理由B、Cについて

(4)そうすると、上記(2)で示した箇所には、シリカ粒子の平均粒子径は「シリカ粒子が二次凝集したもの」の「二次凝集後の粒度分布におけるD50での粒子径」、すなわち粒子径を測定するためのシリカ粒子は、粉砕に供する前のものと解されるところ、上記(3)で示した箇所には、粒子径を測定するためのシリカ粒子は、粉砕した後のものであることが明示されており、両者は一致しない。

(5)このため、本件請求項2に規定される「前記二次凝集したシリカ粒子の平均粒子径」とは、一体どのような粒子径なのか判然としない。
よって、本件発明2は、本件発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、また、本件発明2は明確でない。
本件発明2を引用する本件発明3及び4についても同様である。」

2 「2 理由A、Bについて(その1)」で示した取消理由
本件訂正発明に係る「シリカ粒子(B)」は、「表面未処理のものであり、湿式法で製造されたものであり、1次平均粒子径を有するシリカ粒子が二次凝集したものを粉砕したもの」であり、更に、本件訂正発明では、「シリカ粒子(B)の配合量」は、「活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、1?60質量部の範囲」である。
そして、これらの条件を満たした場合、例えば実施例1並びに2において、本件発明に係る「活性エネルギー線硬化性組成物」の硬化塗膜表面のぬれ張力を「35?60mN/m」の範囲に調整できることが具体的に示されている。
そうすると、本件発明の詳細な説明の記載から、本件請求項1に規定されるぬれ張力の調整を理解することができ、本件発明の詳細な説明は、本件訂正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものといえる。
また、本件訂正発明は、本件発明の詳細な説明に記載したものといえる。
よって、この取消理由には理由がない。

3 「理由A、Bについて(その2)」で示した取消理由
本件訂正発明は、「活性エネルギー線硬化性組成物」の硬化塗膜表面のぬれ張力を「35?60mN/m」の範囲とするものである。本件発明の詳細な説明の記載からは、含有される「シリカ粒子(B)」が、「表面未処理のものであり、湿式法で製造されたものであり、1次平均粒子径を有するシリカ粒子が二次凝集したものを粉砕したものであり」、「前記シリカ粒子(B)の配合量が、活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、1?60質量部の範囲」であるようにして、係る「活性エネルギー線硬化性組成物」がこの程度のぬれ張力を有するようにしたことで、任意のOCAに優れた密着性を有するものとすることができると解することができる。
そうすると、本件発明の詳細な説明の記載から、本件訂正発明が「OCA等に対する高い接着密着性」という課題を解決しうるものと理解することができ、本件発明の詳細な説明は、本件訂正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものといえる。
また、本件訂正発明は、本件発明の詳細な説明に記載したものといえる。
よって、この取消理由には理由がない。

4 「4 理由B、Cについて」で示した取消理由
この取消理由は、本件請求項2に係る発明に対するものであるが、本件訂正により、本件請求項2は削除された。
したがって、この取消理由には理由がない。

5 まとめ
以上のことから、令和2年1月30日付け取消理由通知で通知した取消理由にはいずれも理由がなく、これらの取消理由によっては本件訂正発明に係る特許を取り消すことはできない。

第5 異議申立ての理由についての検討
1 申立人の異議申立ての理由について
申立人の異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。
甲第1号証:国際公開第2014/192654号
甲第2号証:東ソー・シリカ株式会社のウェブサイト「製品紹介」-「Nipsil 一般用シリカ」(http://www.n-silica.co.jp/products/nipsil.html)(平成31年3月6日検索)
甲第3号証:日本アエロジル株式会社「製品案内 AEROSIL」第6版、2016年4月
甲第4号証:株式会社シンマルエンタープライゼスのウェブサイト「ホーム」-「ビーズミル」-「ビーズミルとは」(http://www.shinmaru-e.com/dynomill_detail.php?eid=00007)(令和元年10月31日検索)
甲第5号証:株式会社シンマルエンタープライゼスのウェブサイト「ホーム」-「ビーズミル」-「ビーズミルとは」(http://www.shinmaru-e.com/products_series.php?series=4)(令和元年10月31日検索)
(以下、甲第1?5号証を「甲1」?「甲5」という。)

・申立ての理由1(異議申立書3.(4)具体的な理由(その1))
本件発明1?4は、甲1に記載された発明である。また、本件発明1?4は、甲1に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたものである。
・申立ての理由2(同(5)具体的な理由(その2))
本件発明1?4は、「前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜表面のぬれ張力が35?60mN/mの範囲である」との規定は、望ましい姿や単なる願望を表現しているに過ぎず、また、この規定により属するカテゴリーが不明であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
・申立ての理由3(同(6)具体的な理由(その3))
本件発明2?4は、規定されるシリカ粒子の平均粒子径の意味が理解できないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
・申立ての理由4(同(7)具体的な理由(その4))
本件発明1,3,4は、シリカ粒子の平均粒子径を発明特定事項としておらず、発明の課題を解決するのに必須の発明特定事項を欠いているから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
・申立ての理由5(同(8)具体的な理由(その5))
本件発明1?4は、規定されるシリカ粒子がどのような未処理品あるいは表面処理品であっても、「活性エネルギー線硬化性組成物」の硬化塗膜表面のぬれ張力が「35?60mN/m」となるか不明であるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
・申立ての理由6(同(9)具体的な理由(その6))
本件発明2?4は、所望の平均粒子径のシリカ粒子を得るための諸条件が本件明細書に記載されていないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
・申立ての理由7(同(10)具体的な理由(その7))
本件発明の詳細な説明は、本件発明2に規定されるシリカ粒子を得ることができる程度に明確かつ十分に記載したものとは言えないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 各申立ての理由についての検討
(1)申立ての理由1について
ア 甲1の記載事項
(ア)「請求の範囲
[請求項1]活性エネルギー線硬化性化合物(A)、及び、一次平均粒子径が1?50nmの範囲のシリカ粒子が凝集したものであり、粒度分布におけるD90での粒子径が200?800nmの範囲であるシリカ粒子(B)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。
[請求項2]前記シリカ粒子(B)の配合量が、活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、1?60質量部の範囲である請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[請求項3]請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させたことを特徴とする硬化物。
[請求項4]請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有することを特徴とするフィルム。」

(イ)「[0045](製造例1:シリカ分散体(1)の調製)
シリカ粒子(東ソー・シリカ株式会社製「E-220A」、一次平均粒子径:25nm、二次平均粒子径:1.5μm)10gに、メチルエチルケトン40gを加え、ディスパーミルにより混合した後、3-アクリロキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM-5103」)0.5gを添加し、ディスパーミルによりさらに混合し、得られた混合液をビーズミル(ウィリー・エ・バッコーフェン社製「ダイノミルECM」;メディア:ジルコニウムビーズ、ビーズ径:0.3?0.4mm、ビーズ充填率:60%)を用いて、2時間粉砕・分散して、シリカ粒子の含有比率が20質量%のシリカ分散体(1)を得た。このシリカ分散体(1)中のシリカ粒子の一次平均粒子径は25nmであり、粒度分布におけるD90での粒子径は450nmであった。

[0050](実施例1)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製「DPHA」、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート35質量%含有;以下、「DPHA」と略記する。)40質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(第一工業製薬株式会社製「TMPTA」;以下、「TMPTA」と略記する。)20質量部、ウレタンアクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックス OT-1000」、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートとを反応させたもの;以下、「OT-1000」と略記する。)40質量部、製造例1で得られたシリカ分散体(1)200質量部(シリカ粒子として40質量部)及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア 184D」、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;以下、「Irg.184D」と略記する。)5質量部を均一に攪拌した後、メチルエチルケトンで希釈して、不揮発分40質量%の活性エネルギー線硬化性組成物(1)を調製した。
[0051][評価用フィルムの作製]
上記で得られた活性エネルギー線硬化性組成物(1)を、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基材上に、ワイヤーバーコーター#24を用いて塗工し、25℃で10秒間乾燥した後、80℃の乾燥機で1分間乾燥した。その後、紫外線硬化装置(窒素雰囲気下、フュージョンランプ(Hバルブ、紫外線照射量300J/m^(2))を用いて硬化させ、評価用フィルムを作製した。
[0052][硬化塗膜外観の評価]
上記で得られた評価用フィルムの硬化塗膜表面を目視で観察し、下記の基準にしたがって硬化塗膜外観を評価した。
A:白化、ブツ、スジのいずれも見られない。
B:白化、ブツ、スジのいずれかが見られる。
C:白化、ブツ、スジのうち、2つ以上が見られる。」

イ 甲1に記載された発明との対比及び判断
(ア)甲1に記載された発明
甲1には、下記の引用発明1が記載されていると認められる。
「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製「DPHA」、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート35質量%含有)40質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(第一工業製薬株式会社製「TMPTA」)20質量部、ウレタンアクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックス OT-1000」、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートとを反応させたもの)40質量部、
シリカ粒子(東ソー・シリカ株式会社製「E-220A」、一次平均粒子径:25nm、二次平均粒子径:1.5μm)10gに、メチルエチルケトン40gを加え、ディスパーミルにより混合した後、3-アクリロキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM-5103」)0.5gを添加し、ディスパーミルによりさらに混合し、得られた混合液をビーズミル(ウィリー・エ・バッコーフェン社製「ダイノミルECM」;メディア:ジルコニウムビーズ、ビーズ径:0.3?0.4mm、ビーズ充填率:60%)を用いて、2時間粉砕・分散して得られた、シリカ粒子の含有比率が20質量%のシリカ分散体(1)200質量部(シリカ粒子として40質量部)及び
光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア 184D」、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)5質量部を均一に攪拌した後、メチルエチルケトンで希釈して調製した、不揮発分40質量%の活性エネルギー線硬化性組成物(1)の製造方法。」

(イ)本件訂正発明1について
・本件訂正発明1と引用発明1との対比
引用発明1の「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製「DPHA」、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート35質量%含有)40質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(第一工業製薬株式会社製「TMPTA」)20質量部、ウレタンアクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックス OT-1000」、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートとを反応させたもの)40質量部」は、本件訂正発明1の「活性エネルギー線硬化性化合物(A)」に相当する。
引用発明1の「シリカ粒子(東ソー・シリカ株式会社製「E-220A」、一次平均粒子径:25nm、二次平均粒子径:1.5μm)10gに、メチルエチルケトン40gを加え、ディスパーミルにより混合した後、3-アクリロキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM-5103」)0.5gを添加し、ディスパーミルによりさらに混合し、得られた混合液をビーズミル(ウィリー・エ・バッコーフェン社製「ダイノミルECM」;メディア:ジルコニウムビーズ、ビーズ径:0.3?0.4mm、ビーズ充填率:60%)を用いて、2時間粉砕・分散して得られた、シリカ粒子の含有比率が20質量%のシリカ分散体(1)200質量部(シリカ粒子として40質量部)」は、本件訂正発明1の、「湿式法で製造されたものであり、1次平均粒子径を有するシリカ粒子が二次凝集したものを粉砕したもの」である「シリカ粒子(B)」に相当する。
また、引用発明1における、本件訂正発明1の「活性エネルギー線硬化性化合物(A)」及び「シリカ粒子(B)」に相当する成分の配合量は、本件訂正発明1の「前記シリカ粒子(B)の配合量が、活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、1?60質量部の範囲」を満たす。
そうすると、本件訂正発明1と引用発明1とは以下の点で一致する。
「活性エネルギー線硬化性化合物(A)及びシリカ粒子(B)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物であって、前記シリカ粒子(B)が、湿式法で製造されたものであり、1次平均粒子径を有するシリカ粒子が二次凝集したものを粉砕したものであり、前記シリカ粒子(B)の配合量が、活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、1?60質量部の範囲であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。」
そして、両者は以下の点で相違する。
相違点1:本件訂正発明1は「シリカ粒子(B)」が「表面未処理のもの」であるのに対し、引用発明1は表面処理を施してある点。
相違点2:本件訂正発明1は「前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜表面のぬれ張力が35?60mN/mの範囲である」のに対し、引用発明1はこれを明らかにしていない点。

・判断
相違点2に関し、硬化膜表面のぬれ張力は組成物の成分及び各成分の含有量、更には製造工程によって影響されると解されるところ、甲1には、甲1発明により製造された組成物を[0051]の工程により硬化させたフィルムの表面のぬれ張力について記載されておらず、甲1の他の記載をみても、甲1には「活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜表面のぬれ張力」を「35?60mN/m」の範囲とすることは記載されておらず、またその範囲に収まると解することはできない。そして、甲1からは該硬化性組成物の硬化塗装表面のぬれ張力を調整することの記載ないし示唆を見いだすことができない。
そうすると、相違点1について検討するまでもなく、本件訂正発明1は甲1に記載された発明であるとはいえない。
また、甲1のみならず、いかなる甲各号証の記載並びに技術常識を勘案しても、引用発明1に係る硬化性組成物の硬化塗装表面のぬれ張力を「35?60mN/m」の範囲とすることが当業者において容易に想到しうることといえる根拠を見いだすことができない。
そうすると、本件訂正発明1は甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(ウ)本件訂正発明3,4について
本件訂正発明3,4は、本件訂正発明1を引用するものである。そして、上述のとおり、本件訂正発明1は甲1に記載された発明であるとも、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものともいうことはできないことに鑑みると、本件訂正発明3,4についても、甲1に記載された発明であるとも、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものともいうことはできない。

(エ)まとめ
よって、申立ての理由1には理由がない。

(2)申立ての理由2について
本件訂正発明は、「活性エネルギー線硬化性組成物」の硬化塗膜表面のぬれ張力を「35?60mN/m」の範囲となるように、「活性エネルギー線硬化性組成物」に含有される「シリカ粒子(B)」を、「表面未処理のものであり、湿式法で製造されたものであり、1次平均粒子径を有するシリカ粒子が二次凝集したものを粉砕したものであり」、「前記シリカ粒子(B)の配合量が、活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、1?60質量部の範囲」であるように選択することを特定したものであり、本件訂正発明において、該ぬれ張力を「35?60mN/m」と特定する技術的意味は明確であると認められる。
このように、本件訂正発明の技術的意味は明確であるから、申立ての理由2には理由がない。

(3)申立ての理由3,6,7について
本件請求項2は本件訂正により削除されたため、申立ての理由3,6,7には理由がない。

(4)申立ての理由4について
申立人は、「本件特許明細書の段落0026の記載によれば、アンチブロッキング性および透明性はシリカ粒子の平均粒子径(定義・意味が不明確である点は前述の通りであるが)によって決定される。
しかし、本件特許発明1は、シリカ粒子の平均粒子径を発明特定事項としていない。
つまり、本件特許発明1は、発明の課題を解決するのに必須の発明特定事項を欠き、発明の詳細な説明に開示された内容を超えて特許を請求するものである。」(申立書14頁11?17行)と主張する。
しかし、【0026】には、アンチブロッキング性と透明性の向上に関し、
「シリカ粒子の二次凝集後の粒度分布におけるD50での粒子径(以下、単に「平均粒子径」と略記する。)は、高いアンチブロッキング性と高い透明性を両立できることから、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましく、120nm以上がさらに好ましい。また、同様の理由から、シリカ粒子の二次凝集後の平均粒子径は、500nm以下が好ましく、400nm以下がより好ましく、300nm以下がさらに好ましい。」
と、あくまでも好ましい範囲を記載するに留まる。そして、この範囲を満たしていないものがアンチブロッキング性と透明性を有さないものと解される根拠は、本件発明の詳細な説明のいずれからも見いだすことはできない。
このため、本件訂正発明は、本件発明の詳細な説明に記載したものといえ、申立ての理由4には理由がない。

(5)申立ての理由5について
申立ての理由5は、上記取消理由通知の「2 理由A、Bについて(その1)」と同旨である。したがって、上記第4 2と同旨により、申立ての理由5には理由がない。

3 まとめ
以上のことから、申立人が主張する申立ての理由にはいずれも理由がなく、これらの申立の理由によっては本件訂正発明に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、異議申立ての理由及び当審からの取消理由によっては、請求項1,3,4に係る特許を取り消すことはできない。また、他に当該特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項2に係る特許については、上述のとおり、この請求項を削除する訂正を含む本件訂正が認容されるため、特許異議申立ての対象となる特許が存在しないものとなったことから、同請求項に係る特許についての特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化性化合物(A)及びシリカ粒子(B)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物の製造方法であって、前記シリカ粒子(B)が、表面未処理のものであり、湿式法で製造されたものであり、1次平均粒子径を有するシリカ粒子が二次凝集したものを粉砕したものであり、前記シリカ粒子(B)の配合量が、活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、1?60質量部の範囲であり、前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜表面のぬれ張力が35?60mN/mの範囲であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物の製造方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有することを特徴とするフィルムの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-10-29 
出願番号 特願2018-523031(P2018-523031)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08F)
P 1 651・ 537- YAA (C08F)
P 1 651・ 536- YAA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 柳本 航佑中西 聡  
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 橋本 栄和
大熊 幸治
登録日 2019-04-12 
登録番号 特許第6508559号(P6508559)
権利者 DIC株式会社
発明の名称 活性エネルギー線硬化性組成物及びそれを用いたフィルム  
代理人 小川 眞治  
代理人 根岸 真  
代理人 大野 孝幸  
代理人 根岸 真  
代理人 岩本 明洋  
代理人 岩本 明洋  
代理人 大野 孝幸  
代理人 小川 眞治  

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