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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
管理番号 1369217
審判番号 不服2019-4441  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-04 
確定日 2020-12-17 
事件の表示 特願2014-247653「こんにゃく粉末と希少糖を組み合わせたサプリメント」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月20日出願公開、特開2016-106578〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年12月8日の出願であって、その後の経緯は以下のとおりである。
平成30年 8月22日付け 拒絶理由通知
同年10月26日 意見書及び手続補正書の提出
平成31年 3月 7日付け 拒絶査定
同年 4月 4日 審判請求書及び手続補正書の提出
令和 2年 4月30日付け 拒絶理由通知
同年 6月10日 意見書及び手続補正書の提出
同年 7月 1日付け 拒絶理由通知
同年 9月 3日 意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?7に係る発明は、令和2年9月3日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
pH4?7の中性あるいは弱酸性に中和したアルカリゲル化こんにゃくの乾燥こんにゃくを砕いた粉、および、希少糖を含み、乾燥こんにゃくを砕いた粉の含有量は全体の40?95重量%であり、希少糖は、少なくともD-プシコースを含む希少糖含有シロップ、および少なくともD-プシコース結晶を含んでいる粉末から選ばれることを特徴とする、粉末混合物またはペースト状混合物のサプリメント形状で経口投与後、消化器官にて水分を吸収して膨潤し、体積が増加して満腹感を増すための抗肥満用加工食品。」

第3 令和2年7月1日付けで通知した拒絶理由の概要
令和2年7月1日付け拒絶理由通知には、理由1及び理由2が示されており、そのうち理由1は概略以下のものである。

この出願の請求項1?7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例1:特開2007-295906号公報
引用例2:国際公開第2014/119718号
参考文献A:国際公開第2006/093292号(周知技術を示す文献)
参考文献B:特表2007-508329号公報(周知技術を示す文献)

第4 当審の判断
1 引用例の記載事項
引用例1、2には次の記載がある。なお、下線は当審が付したものである。

(1)引用例1
(1a)「【請求項1】
加熱殺菌されたこんにゃく粉末が水分を含むと膨張する特性を生かしたダイエット素材としての利用方法」

(1b)「【0005】
こんにゃく乾燥粉末は水を含んで30倍に膨れ上がる。これを利用してこんにゃく製品は作られているが、こんにゃく乾燥粉末が水を含むと膨張する性質を利用して、粉末自体を体内に摂取させるダイエットサプリを作ることが出来る。
食事前に、適量の加熱殺菌されたこんにゃく乾燥粉末を飲むことで、胃に膨満感が生じ、食事の量が激減する。・・・」

(1c)「【0006】
・・・
製品化は、自体公知の酵素或は食品添加物、賦形剤、医薬担体と自体公知の方法で配合し、特性を生かした効能効果を有するこんにゃく乾燥粉末にすることができる。用いる酵素或いは食品添加物は特に限定するものではなく、目的とする効能効果の具体的用途に応じて当業者が適宜選択できる。・・・」

(1d)「【実施例】
【0007】
加熱殺菌されたこんにゃく乾燥粉末を3g、キシリトールを4g、ビタミンCを200mg配合した原料を1袋づつに入れて、実験を行った。
実験に参加した4名は、28歳の男性、86歳の女性、63歳の男性、59歳の女性である。
各人の身長・体重は、28歳の男性 身長167cm・75kg、86歳の女性 身長153cm・体重52kg、63歳の男性 身長171cm・体重71kg、59歳の女性 身長164cm・体重57kgである。
各人、食事の前にこんにゃく粉末サプリメントを1袋づつ摂取して、2週間経過した。
結果、4名の体重は、全員減量に成功した。一番体重が減ったのは28歳の男性で、3kgの減量を確認した。」

(2)引用例2
(2a)「[請求項1]
pHが、2.5?7.4の範囲にあるこんにゃくおよび希少糖を有効成分として含む、血糖値の上昇抑制効果を有するこんにゃく加工飲食品。
[請求項2]
希少糖が、D-プシコースおよび/またはD-アロースである請求項1に記載の血糖値の上昇抑制効果を有するこんにゃく加工飲食品。
・・・
[請求項10]
こんにゃく加工飲食品が、血糖値の上昇抑制のために希少糖の一日用量を0.3?50g/日としてこんにゃくとともに摂取させるためのものである、請求項1ないし9のいずれかに記載の血糖値の上昇抑制効果を有するこんにゃく加工飲食品。」

(2b)「[0004] 一方、希少糖は、近年注目されている甘味剤としても使用できる生理作用を有する糖の一種であって、低カロリー、血糖値改善、動脈硬化改善効果などの報告があることから、生活習慣病予防素材や生体機能改善剤として期待されている。
例えば、・・・食物繊維と、希少糖を有効成分として含有する肝機能、血糖値、血清脂質値、体重増加、および内臓脂肪蓄積の機能改善組成物に関し、食物繊維を組成物全体の1重量%以上、希少糖および/またはその誘導体を組成物全体の2重量%以上含有し、希少糖としてはD-プシコースおよび/またはその誘導体が用いられ、食物繊維としては水溶性食物繊維である難消化性デキストリンが用いられる組成物(・・・)が提案されている。」

(2c)「[0006]・・・
また、希少糖の一種であるD-プシコース純品については、血糖値上昇抑制効果をもとに特定保健用食品に申請中である。一般にカロリーゼロの人工甘味料では味質に問題があったが、D-プシコースは味質が良くカロリーゼロで機能性を持つ天然系甘味料であるので、糖尿病患者向けの甘味料として手軽に利用することが出来れば、彼らにとっては大きな朗報であり、社会問題の解決にも貢献することになる。」

(2d)「[0013]・・・
本発明は、pHが、2.5?7.4の範囲にあるこんにゃくおよび希少糖を組み合わせたものを有効成分として含むことにより、こんにゃく加工飲食品のpHが低pHに調整される結果、希少糖が安定に維持され損失量を抑えることができ、・・・」

(2e)「[0017][本発明のスムージー風飲食品の血糖値上昇抑制効果の例]
本発明のスムージー風飲食品の血糖値上昇抑制効果を実証するために試験を行った。次の5種類の試料を用意し、健康人7人がこれらを飲用した後ブドウ糖を飲用し、30分、60分および120分経過した時点での血糖値を測定した。
(A)空腹時ブドウ糖負荷試験、
(B)希少糖含有試料、
(C)微細粒状こんにゃくおよび希少糖含有試料,
(D)多量の微細粒状こんにゃく含有試料、
(E)少量の微細粒状こんにゃく含有試料、
測定したデータの平均値を算出するとともに測定結果を図1に示した。図1に示された試験結果からは、こんにゃくを飲用することによりブドウ糖負荷試験による血糖値の上昇が抑制されるが、希少糖を同時に飲用することにより、単独では得られない優れた血糖値上昇抑制効果が得られることが判明した。すなわち、本発明の微細粒状こんにゃくと希少糖を含有するスムージー風飲食品は、優れた血糖値の上昇抑制効果を有することが実証された。
本発明は、乏しいインスリンの節約、インスリン感受性の改善、および高血糖の是正が求められる疾患、血漿グルコース濃度(血糖値)の日内異常上昇抑制により症状が改善される、あるいは発病が予防される例えば糖尿病、潜在的糖尿病状態、肥満症、高脂血症、動脈硬化症などの予防および治療を必要とするヒトに対する飲食品および健康飲食品に関するものである。」

(2f)「[0021][こんにゃくの中和工程]
本発明の微細粒状こんにゃくは、アルカリ成分を含む状態で使用することができるが、含まれるアルカリ成分を中和して使用することが好ましい。こんにゃくは、こんにゃくイモまたはこんにゃく精粉を原料として水酸化カルシウム、カン水などのアルカリで凝固させたものであり、通常製造されたこんにゃくのpHは10?12である。・・・
こんにゃくはpH2.5?7.4に中和されていることが好ましく、こんにゃく中のアルカリを中和するのに必要な酸量は所定重量のこんにゃくをホモジナイザーで磨砕し、これに微細粒状こんにゃくのアルカリ分を少なくとも中和できる量の酸性素材を混合して、その場合、有機酸を添加して、pH2.6?7.4になるまでに要する酸量を測定して決めることができる。・・・」

(2g)「[0027]・・・希少糖の成分としては、フラクトースの割合が20?80重量部、グルコースとプシコースの合計の割合が80?20重量部程度で、プシコースがグルコースおよびプシコースの合計を100重量部とした場合、5重量部以上、好ましくは10重量部以上の比率の砂糖の甘味度と味質に近く肥満などの生活習慣病を予防する甘味料(・・・)を使用することができる。該甘味料として、希少糖含有シロップ(商品名:レアシュガースイート:糖含組成は、ブドウ糖38%以上、果糖25%以上、希少糖約15%(そのうちD-プシコース5%以上))が市販されている。・・・」

(2h)「[0028] 希少糖とは、自然界に微量にしか存在しない単糖および糖アルコールと定義づけることができる。 六炭糖(ヘキソース)については、アルドースの場合はL-アロース、L-グロース、L-グルコース、L-ガラクトース、L-アルトロース、L-イドース、L-マンノース、L-タロース、D-タロース、D-マンノース、D-イドース、D-アルトロース、D-ガラクトース、D-グルコース、D-グロース、D-アロースの16種類、ケトースの場合はL-プシコース、L-ソルボース、L-フルクトース、L-タガトース、D-タガトース、D-フルクトース、D-ソルボース、D-プシコースの8種類が存在し、自然界に多量に存在する単糖は、D-グルコース、D-フラクトース、D-ガラクトース、D-マンノース、D-リボース、D-キシロース、L-アラビノースの7種類あり、それ以外の単糖は全て希少糖である。
D-プシコースあるいはD-アロースは天然に微量ではあるが存在する単糖であって、これら希少糖がヒトに対する毒性を有するとの報告はなく、動物に対する毒性は低いと考えられる。」

(2i)「実施例3
[0037] 実施例1と同様にして、表3に記載の組成を有する調味液において、D-プシコースに変えてD-プシコースとD-アロースの混合物からなる希少糖を70g添加してストロベリースムージーを製造した。・・・」

(2j)「実施例5
[0044]グルコース負荷試験に対するマンナンスムージーと希少糖含有シロップ(レアシュガースウィート:RSS)の効果について解析した。
・・・
[0046][マンナンスムージー組成]
・こんにゃく82.5%
・レアーシュガースイート5.5%以上(内D-プシコース0.3%以上)
・果汁パウダー1.2%
・その他食品添加物(pH調整剤、増粘剤(キサンタンガム、加工澱粉)、香料、甘味料(スクラロース)、乳酸カルシウム、酸化防止剤(V.C)、天然色素)2.4%
・水8.4%」

2 引用例1に記載された発明
上記記載事項(1a)?(1d)から、引用例1には、「こんにゃく乾燥粉末、および、食品添加物を配合した粉末サプリメントであって、水を含むと膨張し、飲むことで胃に膨満感が生じる、減量用粉末サプリメント」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

3 対比
引用発明1の「こんにゃく乾燥粉末」は、本願発明の「pH4?7の中性あるいは弱酸性に中和したアルカリゲル化こんにゃくの乾燥こんにゃくを砕いた粉」と、「乾燥こんにゃくを砕いた粉」である点で共通する。そして、引用例1には、「こんにゃく乾燥粉末」を3g、「食品添加物」に該当するキシリトール4gおよびビタミンC200mgを合わせて4.2g配合した実施例が記載されており(記載事項(1d))、当該「こんにゃく乾燥粉末」の含有量は{3/(3+4.2)}×100≒42(%)と算出されるから、引用例1には「こんにゃく乾燥粉末」を「全体の40?95重量%」に相当する割合で含有することが記載されているといえる。
また、引用発明1の「粉末サプリメント」は、本願発明の「粉末混合物またはペースト状混合物のサプリメント形状」の「加工食品」に相当し、引用発明1の「水を含むと膨張し、飲むことで胃に膨満感が生じる」は、本願発明の「経口投与後、消化器官にて水分を吸収して膨潤し、体積が増加して満腹感を増すための」に相当し、引用発明1の「減量用」は、本願発明の「抗肥満用」に相当する。
そして、引用発明1の「食品添加物」は、本願発明の「希少糖」と、「食品添加物」である点で共通する。
そうすると、本願発明と引用発明1とは、
「乾燥こんにゃくを砕いた粉、および、食品添加物を含み、乾燥こんにゃくを砕いた粉の含有量は全体の40?95重量%である粉末混合物またはペースト状混合物のサプリメント形状で経口投与後、消化器官にて水分を吸収して膨潤し、体積が増加して満腹感を増すための抗肥満用加工食品。」
である点で一致し、以下の点において相違する。

(相違点1)
本願発明は、「少なくともD-プシコースを含む希少糖含有シロップ、および少なくともD-プシコース結晶を含んでいる粉末から選ばれる」希少糖を含むのに対し、引用発明1は食品添加物を含むもののそのような特定がない点。
(相違点2)
本願発明は、乾燥こんにゃくを「pH4?7の中性あるいは弱酸性に中和したアルカリゲル化こんにゃく」のものに特定しているのに対し、引用発明1にはそのような特定がない点。

4 判断
(1)相違点1について
引用例1の実施例におけるこんにゃく粉末サプリメントは、食品添加物としてキシリトールを配合したものであるところ、キシリトールは甘味料として周知の成分であるから、当該キシリトールが甘味料として配合されていることは明らかである。
一方、減量目的の飲食品においてカロリーをなるべく低く抑えることは周知であるところ、引用例2には、「D-プシコースは味質が良く、カロリーゼロで機能性を持つ天然系甘味料である」ことが記載されている(記載事項(2c))。
さらに、引用例2には、D-プシコース等の希少糖とこんにゃくを組み合わせることにより、血糖値上昇抑制効果を奏することに加え、肥満症を予防および治療することに関しても記載されている(記載事項(2a)、(2b)、(2e)、(2g))。
そうすると、引用例1に、サプリメント製品に配合する食品添加物は、目的とする効能効果の具体的用途に応じて適宜選択できることが記載されている(記載事項(1c))ことも参酌し、引用発明1の減量用サプリメントにおいて、食品添加物として、カロリーゼロの甘味料であり、さらに肥満症を予防・治療できるD-プシコースのような希少糖を配合することは、当業者が容易になし得たことである。
また、当該D-プシコースとして、自体公知のシロップや結晶粉末(例えば、引用例2の記載事項(2g)参照。)を使用することも、当業者が適宜なし得たことである。

(2)相違点2について
こんにゃくは、コンニャクマンナンを糊化し、アルカリ(水酸化カルシウム等)を用いて凝固させたものであり、通常、製造されたこんにゃくのpH値が10?12であることが周知である(例えば、引用例2の記載事項(2f)参照。)。
そして、引用例2には、こんにゃくおよび希少糖を含む飲食品において、こんにゃくをpH2.5?7.4に中和して用いることにより、希少糖が安定に維持されることが記載されている(引用例2の記載事項(2d)、(2f))。
そうすると、引用発明1のサプリメントにおいて、上記(1)で述べたとおり、D-プシコースを含有させることは当業者が容易になし得たことであるところ、その際にD-プシコースを含む希少糖の安定性を考慮して、pH2.5?7.4程度である自体公知のこんにゃくを使用することは、当業者が適宜なし得たことである。

(3)効果について
本願の発明の詳細な説明には、「pH4?7の中性あるいは弱酸性に中和したアルカリゲル化こんにゃくの乾燥こんにゃくを砕いた粉」を使用した具体例は記載されていないため、特定のこんにゃくを用いたことによる効果は確認できない。
そうすると、本願発明において、引用例1、2の記載事項から予測し得ない効果が奏されたとはいえない。

(4)審判請求人の主張について
ア 審判請求人の主張
審判請求人は、令和2年9月3日提出の意見書において、概ね下記の主張をしている。

(ア)相違点1について
「本願発明はグルコマンナンの粉またはこんにゃくを砕いた粉自体が胃壁の拡張による満腹感を感じる共通した性質を有していることは前提としている。
・・・
食事の際に満腹感を感じるのは、胃壁の拡張のみならず血糖値の上昇のためであるとされている。食物中の炭水化物が分解されて生じるD-グルコースが血糖値を上昇させることで脳の視床下部にある満腹中枢が刺激されることにより、満腹感は感じられる。
D-プシコースは血糖値を上昇させないことから、D-プシコースがグルコマンナンの粉またはこんにゃくを砕いた粉自体による満腹感にどのように関わるかは、分かっていない。少なくともD-プシコースは血糖値を上昇させないことから、D-プシコースがグルコマンナンの粉またはこんにゃくを砕いた粉自体による満腹感を阻害するかもしれないと、少なくとも増加された満腹感を維持させることはないだろうと、予測された。
・・・
しかしながら、血糖値を上昇させないD-プシコースがグルコマンナンの粉またはこんにゃくを砕いた粉自体による満腹感を阻害しないこと、役に立つことを示唆する記載はない。
そうすると、引用発明1のサプリメントにおいて、グルコマンナンの粉またはこんにゃくを砕いた粉自体による増加された満腹感の維持を目的として、キシリトールの少なくとも一部に換えてD-プシコースを採用すること、当該機能の拡大を目的としてD-プシコースを含有させることは、当業者が容易になし得たことであるとは言えない。」(以下、「主張1」という。)

(イ)相違点2について
「ビタミンCはアスコルビン酸であることから、D-プシコースを含有させるとしても、その際に、pH2.5?7.4程度である自体公知のこんにゃくを使用することは考え難いのである。よって、引用発明1のサプリメントにおいて、pH2.5?7.4程度である自体公知のこんにゃくを使用することが当業者が適宜なし得たことであるとは到底いえない。」(以下、「主張2」という。)

(ウ)効果について
「満腹感の誘導や持続には血糖値上昇や高粘性物質による胃拡張が重要であることが知られているが、D-プシコースは血糖値を上昇させないことから、D-プシコースがグルコマンナンの粉またはこんにゃくを砕いた粉自体による増加された満腹感を維持することはないだろうと予測された。そうであるのに、「D-プシコース」がグルコマンナンの粉の胃壁の拡張による満腹感を維持する効果を持つことが実施例で裏付けられた。その結果は、こんにゃくを砕いた粉の胃壁の拡張による満腹感についても、「D-プシコース」が持続させるだろうとの予測は成り立つには十分であり、こんにゃくを砕いた粉の実施例が記載されているに等しいと理解されるべきである。
・・・
そうすると、乾燥こんにゃくを砕いた粉を含有する食品を摂取することによる満腹感が維持されることによる減量効果は、引用例1の記載事項から予測し得るところを超えたものであることがわかるから、本願発明1により格別顕著な効果が奏されたと言える。」(以下、「主張3」という。)

イ 審判請求人の主張についての検討
(ア)主張1について
審判請求人は、D-プシコースがグルコマンナンの粉またはこんにゃくを砕いた粉自体による満腹感を阻害するかもしれないと予測された旨主張するが、そのような予測を裏付ける実験結果や理論的な根拠は具体的に示していない。
一方、D-プシコースの血糖値上昇抑制効果が引用例2等から広く知られているところ、当該効果は、血糖値の急激な上昇を抑制し血糖値を緩やかに上昇させる効果であって、血糖値を全く上昇させなくするものではないから、食事の際にD-プシコースを摂取しても血糖値は上昇すると認められ、そうであれば「脳の視床下部にある満腹中枢が刺激される」から、ある程度の満腹感は感じられるといえる。
そうすると、D-プシコースがグルコマンナンの粉またはこんにゃくを砕いた粉自体による満腹感を阻害すると予測されるとまではいえない。
審判請求人は、満腹感の維持がD-プシコース含有の目的であると主張するが、本願発明において、D-プシコースの含有によりそのような目的が達成されたとは認められない。
よって、上記主張1は採用できない。

(イ)主張2について
審判請求人は、ビタミンCはアスコルビン酸であることから、D-プシコースを含有させるとしても、その際に、pH2.5?7.4程度である自体公知のこんにゃくを使用することは考え難い旨主張するが、その理由について説明されていないし、引用例1の実施例においてアスコルビン酸が配合されていることが上記(2)の判断には影響しないため、当該主張を採用することはできない。

(ウ)主張3について
審判請求人は、「D-プシコース」がグルコマンナンの粉の胃壁の拡張による満腹感を維持する効果を持つことが実施例で裏付けられた旨主張するが、D-プシコースが満腹感を維持するとの効果については、本願明細書に記載がない。そして、本願明細書において実施例として示されているのは、「ファインスーパーマンナン(株式会社荻野商店販売)を3g、希少糖含有シロップ(レアシュガースウィート:RSS)5.5gを練り込んで得たペースト」を3等分してカプセルに入れたサプリメントを、実験者が食事の前に1カプセルずつ摂取して2週間経過後、減量に成功した、ということのみであり、D-プシコースを配合しないものとの比較も示されていないから、D-プシコースが満腹感を維持するとの効果が実施例で裏付けられたということもできない。
また、仮にD-プシコースが満腹感を維持するとの効果が実施例で示されているとしても、D-プシコースが胃壁の拡張による満腹感にどのように作用するかは示されておらず不明であるから、D-プシコースが、こんにゃくを砕いた粉に対してもグルコマンナンの粉と同様に作用すると直ちに認めることはできない。
よって、上記主張3は採用できない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例1、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-09-29 
結審通知日 2020-10-06 
審決日 2020-10-28 
出願番号 特願2014-247653(P2014-247653)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (A23L)
P 1 8・ 537- WZ (A23L)
P 1 8・ 121- WZ (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 直紀  
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 関 美祝
櫛引 智子
発明の名称 こんにゃく粉末と希少糖を組み合わせたサプリメント  
代理人 須藤 晃伸  
代理人 須藤 阿佐子  

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