• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1369258
審判番号 不服2020-7350  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-29 
確定日 2021-01-12 
事件の表示 特願2016-522576「レーザ顕微切離システム及び核酸含有試料の検査方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月 8日国際公開、WO2015/000879、平成28年 8月25日国内公表、特表2016-525700、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)7月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年7月1日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

平成30年 5月30日付け:拒絶理由通知書
平成30年12月 3日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 4月15日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 9月17日 :意見書の提出
令和 2年 2月 6日付け:拒絶査定(原査定)
令和 2年 5月29日 :審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年2月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項 1-10
・引用文献等 1、4-5

・請求項 11-15
・引用文献等 1-6

<引用文献等一覧>
1.特開昭63-302366号公報
2.国際公開第2012/159769号
3.特公昭50-036194号公報(周知技術を示す文献)
4.特開平11-148887号公報(周知技術を示す文献)
5.特表2000-504824号公報(周知技術を示す文献)
6.中国特許出願公開第101788527号明細書(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願請求項1-15に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、平成30年12月3日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
落射光装置(76)、顕微鏡対物レンズ(41)及びレーザユニット(70)を有する顕微鏡(10)を含むレーザ顕微切離システム(100)であって、
レーザユニット(70)のレーザビームの光路(b)は落射光装置(76)及び顕微鏡対物レンズ(41)を介して延伸し、調整可能な交点において顕微鏡対物レンズ(41)の対象面と交差し、
電気泳動ゲル(91)を有する電気泳動ユニット(90)は、対象面の下方に取付けられているか又は連結手段(35)によって取付け可能であり、 電気泳動ゲル(91)は、少なくとも1つのゲルポケット(92)を有し、レーザ顕微切離システム(100)は、対象面に対し平行にかつ定義された基準位置に対し相対的に電気泳動ゲル(91)を位置決めするための位置決め手段(96)を含み、かくして、対象面に配置可能な試料(51)から落下するレーザユニット(70)のレーザビームによって得られる切離片(99)は、少なくとも1つのゲルポケット(92)の中で捕獲可能であり、 位置決め手段(96)は、電気泳動ゲル(91)を試料(51)に対し相対的に位置決めするために適合されている、
レーザ顕微切離システム。」

なお、本願発明2-15は、本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審において付した。以下同様である。)。

1 「第1図は本発明によるレーザー光走査型顕微鏡を用いた染色体切断及び回収システムを示す図である。図中、1は光学顕微鏡、2はハーフミラー、3は集光レンズ、4は試料台、5はArレーザー、6は音響光学変調器、7、8はミラー、9はビームエキスパンダ、10は音響光学変調器用ドライバ、11、12はX、Yスキャナ、13はシャッタ、14は走査ユニット、15、16はガルバノメーターミラー、17はオートフォーカス装置、18は自動X-Yステージ、19はインターフェース、20は制御用計算機、21はフレームメモリ、22はCCDカメラ、23はテレビモニタである。
図において、Arレーザー5から出た光ビームは音響光学変調器(以下AOMと言う)6を透過する。このAOM6は、AOM用ドライバ10により駆動されてレーザービームの出力を変化させ、レーザービームを試料切断位置の決定用光プローブとするか、或いは切断用光ビームとするかの使い分けに使用する。即ち、光プローブ用としては、AOM出力強度を抑え、切断用としては出力強度を大きくするようにArレーザー5からのレーザービームを変調している。AOM6を透過した光ビームは、ミラー7、8で反射され、ビームエキスパンダー9によってビーム径を拡大し、これによりビーム広がり角を小さくすると共に、エネルギー分布をなだらかにする。ビームエキスパンダー9の出力光ビームはガルバノメーターミラー15、16からなる走査ユニット14で2次元的に走査され、この偏向走査された光ビームは無限遠鏡筒系の顕微鏡内の中間に位置したハーフミラー2により集光レンズ3に導かれ、集光レンズ3の集光能力に近いビーム径までに絞られて試料台4上の試料面に集光される。
なお、レーザー光源は、Arレーザーを使用したが目的に応じて変更すればよく、Arレーザー5に代えてYAGレーザーなどのパルスレーザーを使用することも可能であり、この場合は光プローブとしてHe-NeレーザーをYAGレーザーの光軸に合わせて使用し、選択位置探索はHe-Neレーザービームで行い、切断はYAGレーザービームにより行うようにすることが望ましい。さらに、YAGレーザーはビームパターンの形状が理想的ではないため、空間フィルターをビームエキスパンダー9の前に置きビーム整形するようにするのが良い。
以上説明した部分が、試料面上に非常によく集光された光ビームを2次元的に走査させるための基本部分であり、実際に効率よく試料を切断するにあたり、制御用計算機20により、全体を制御して各部のタイミングを合わせるようにしている。
次に、顕微鏡視野1内における光スポットの制御方法について説明すると、例えば制御用計算機20におけるマウスのディジタイジング機能を用い、2次元の位置情報をX軸、Y軸走査用のミラー15、16のドライバーのXスキャナ、Yスキャナにそれぞれ与えることによりランダムスキャンを行うことができる。即ち、AOMを制御して得られる出力を抑えたArレーザー光もしくはHe-Neレーザー光をプローブとして試料探索し、ハーフミラー2を通してCCDカメラ22によりTVモニター23上に映しだされる試料の任意の場所にレーザービームを持っていくことができ、こうして切断したい場所を光プローブで位置決めし、そのときのアドレス情報を計算機20内のメモリに入れておく。そして、高出力レーザーで切断する際、メモリ内のアドレス情報を読み出し、それにより自動的に切断位置を照射することができ、その結果、高出力レーザーによる無用な散乱光がハーフミラー2を介してTVモニター23に映し出されるのを防止することができる。シャッタ13はこうした切断場所以外での高出力レーザーによる散乱光が入るのを防止し、CCDカメラの保護をしている。
自動X-Yステージ18は、試料探索の際、随時顕微鏡視野外の試料を視野内に持っていくときに使用され、またオートフォーカス装置17は、集光されるレーザービームの焦点 距離と光学顕微鏡の焦点距離との差に違いが生ずる時、切断時と試料探索時のピント面を自動補正する。
また染色体のようなバンド構造を見る時、光学顕微鏡の画像では充分でない場合、レーザスキャニング顕微鏡として使用すれば、画像補正として利用できる。
また、試料を透過したレーザー光量を図示しない光検出器で検出することにより、その位置における強度の変調度が分り、従ってレーザービームをラスタースキャンし、その透過光量を図示しない光検出器で検出し、フレームメモリ21に書き込んでいくことにより染色体試料の画像データが得られ、染色体を正確に効率よく切断することが可能となる。
次に切断した染色体の選択的回収について説明する。
原理としては光アフィニティー試薬を光励起することにより特定の染色体の場所のヒストン蛋白質に共有結合させた化合物をつくり、その化合物をイオン化して他の電荷をもたない染色体と区別しようとするものである。
例として光アフィニティー試薬にアジド化合物を用いた場合の光励起反応を第2図に示す。
アジド化合物(RN_(3))は光を照射することにより、図示するようにカルベン(RN:)と窒素(N_(2))に分かれる。このカルベンは染色体の主構成要素であるヒストン蛋白質と共有結合を起こす。またアジド化合物にカルボキシル基(COOH)などを含ませておくと、水溶液のpHを変えることでイオン解離すなわち-COO^(-)とH^(+)とすることができ特定部分のみ電荷を与えることができる。
そこで、前述のようにして染色体を切断した後、回収したい部分の位置を計算機1内のメモリにアドレスしておく。全試料切断後、試料台4上の試料に光アフィニティー試薬の溶液を投与する。その後アドレスした番地に基づき、計算機20によりオートステージ18を制御して顕微鏡視野内に導き、アドレスコントロールのプログラムに従って回収したい部分にレーザビームを照射し反応を起こさせる。そして、必要な試料全て終えたならば、試料をすべてスライドガラスより剥がす作業をする。これはあらかじめスライドガラス上に有機薄膜を張っておき、その上に試料をのせて置くため、薄膜を溶かすことにより容易 に試料を剥がすことが可能となる。有機薄膜材質として、アセトンに溶解するメタクリレート膜、または40℃の温水に溶解するアガロースなどが適している。
剥離した染色体を含む溶液のpHを操作し、回収したい染色体の微少断片に電荷をもたせるようにし、その後電気泳動法によって電荷を持つものと持たないものとに分けることにより高効率の回収を行うことができる。」(第3頁右上欄第5行-第4頁右下欄第15行)

2 したがって、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「Arレーザー5から出た光ビームは音響光学変調器(以下AOMと言う)6を透過し、AOM6を透過した光ビームは、ミラー7、8で反射され、ビームエキスパンダー9によってビーム径を拡大し、ビームエキスパンダー9の出力光ビームはガルバノメーターミラー15、16からなる走査ユニット14で2次元的に走査され、この偏向走査された光ビームは無限遠鏡筒系の顕微鏡内の中間に位置したハーフミラー2により集光レンズ3に導かれ、集光レンズ3の集光能力に近いビーム径までに絞られて試料台4上の試料面に集光され、
高出力レーザーで試料を切断し、
試料をすべてスライドガラスより剥し、
剥離した染色体を含む溶液のpHを操作し、回収したい染色体の微少断片に電荷をもたせるようにし、
その後電気泳動法によって電荷を持つものと持たないものとに分けることにより高効率の回収を行う、
レーザー光走査型顕微鏡を用いた染色体切断及び回収システム。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「『音響光学変調器(以下AOMと言う)6』、『ミラー7、8』、『ビームエキスパンダー9』、『ガルバノメーターミラー15、16』、『走査ユニット14』、『ハーフミラー2』」は、本願発明1の「落射光装置(76)」に、
引用発明の「集光レンズ3」は、本願発明1の「顕微鏡対物レンズ(41)」に、
引用発明の「Arレーザー5」は、本願発明1の「レーザユニット(70)」に、
引用発明の「レーザー光走査型顕微鏡を用いた染色体切断及び回収システム」は、本願発明1の「顕微鏡(10)を含むレーザ顕微切離システム(100)」に、
引用発明の「Arレーザー5から出た光ビームは音響光学変調器(以下AOMと言う)6を透過し、AOM6を透過した光ビームは、ミラー7、8で反射され、ビームエキスパンダー9によってビーム径を拡大し、ビームエキスパンダー9の出力光ビームはガルバノメーターミラー15、16からなる走査ユニット14で2次元的に走査され、この偏向走査された光ビームは無限遠鏡筒系の顕微鏡内の中間に位置したハーフミラー2により集光レンズ3に導かれ、集光レンズ3の集光能力に近いビーム径までに絞られて試料台4上の試料面に集光され」は、本願発明1の「レーザユニット(70)のレーザビームの光路(b)は落射光装置(76)及び顕微鏡対物レンズ(41)を介して延伸し、調整可能な交点において顕微鏡対物レンズ(41)の対象面と交差し」に、
それぞれ相当する。

イ 引用発明の「高出力レーザーで試料を切断し、試料をすべてスライドガラスより剥し、剥離した染色体を含む溶液」と本願発明1の「対象面に配置可能な試料(51)から落下するレーザユニット(70)のレーザビームによって得られる切離片(99)は、少なくとも1つのゲルポケット(92)の中で捕獲可能であり」とは「対象面に配置可能な試料(51)からレーザユニット(70)のレーザビームによって得られる切離片(99)は、捕獲可能であり」の点で一致する。

ウ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「落射光装置(76)、顕微鏡対物レンズ(41)及びレーザユニット(70)を有する顕微鏡(10)を含むレーザ顕微切離システム(100)であって、
レーザユニット(70)のレーザビームの光路(b)は落射光装置(76)及び顕微鏡対物レンズ(41)を介して延伸し、調整可能な交点において顕微鏡対物レンズ(41)の対象面と交差し、
対象面に配置可能な試料(51)からレーザユニット(70)のレーザビームによって得られる切離片(99)は、捕獲可能である、
レーザ顕微切離システム。」

(相違点1)
本願発明1は「電気泳動ゲル(91)を有する電気泳動ユニット(90)は、対象面の下方に取付けられているか又は連結手段(35)によって取付け可能であり、電気泳動ゲル(91)は、少なくとも1つのゲルポケット(92)を有」するのに対し、引用発明は「電気泳動法によって電荷を持つものと持たないものとに分けることにより高効率の回収を行う」ものの、電気泳動ゲルを有する電気泳動ユニットを有しない点。

(相違点2)
本願発明1は「レーザ顕微切離システム(100)は、対象面に対し平行にかつ定義された基準位置に対し相対的に電気泳動ゲル(91)を位置決めするための位置決め手段(96)を含み」、「位置決め手段(96)は、電気泳動ゲル(91)を試料(51)に対し相対的に位置決めするために適合されている」のに対し、引用発明はそのような位置決め手段を有しない点。

(相違点3)
レーザビームによって得られる切断片について、本願発明1は対象面に配置可能な試料(51)から落下するレーザユニット(70)のレーザビームによって得られる切離片(99)は、少なくとも1つのゲルポケット(92)の中で捕獲可能であるのに対し、引用発明はそのような構成を採用していない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討する。
ア レーザ顕微切離システムにおいて、レーザユニットのレーザビームによって得られる切離片を、対象面に配置可能な試料から落下させることにより回収する技術は、周知技術(必要ならば、引用文献4(特に、【0022】、図2、図3参照。)、引用文献5(特に、図5参照。)を参照されたい。)である。

イ 引用発明は、高出力レーザーで試料を切断し、試料をすべてスライドガラスより剥がしていることから、レーザ顕微切離システムの当該周知技術を採用することは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。

ウ しかしながら、引用発明に当該周知技術を採用したとしても、切断した試料を落下させ回収容器に回収することにとどまり、直接、ゲルポケットに捕獲可能にすることにはならない。

エ ここで、引用発明にはゲル電気泳動とまでは記載されていないが、電気泳動に関する技術において、ゲル電気泳動が一般的に知られ、ゲル電気泳動においてゲルポケットが一般的に知られているので、このような技術を引用発明に適用することについて検討する。
仮に、上記「一般的に知られた技術」を引用発明に適用したとしても、上記ウで落下させることにより回収容器に回収した切離片を、その後、回収容器からゲルポケットに入れてゲル電気泳動すると考えるのが自然である。

さらに、引用文献1には、染色体を切断した後、光アフィニティー試薬の溶液を投与し、反応させ、pHを操作し、電気泳動法によって回収することが記載されており、また、上記周知技術として例示した引用文献4の【0020】-【0022】には、光を切断片(10)に照射し、切断片(10)をスライドグラス(2)から剥離させ、マイクロチューブ(13)に回収し、定法に従いDNAを抽出し、PCR増幅し、アガロースゲル電気泳動する旨記載されているように、一般に、切断試料は、何らかの前処理した後、ゲル電気泳動するものである。
そうすると、引用発明に上記周知技術と上記「一般的に知られた技術」とを採用したとしても、切断した試料を落下させた後に、光アフィニティー試薬の溶液を投与し、反応させ、pHを操作する等の前処理をする必要があり、その前処理をゲルポケットで行うとは考えにくいことから、切断した試料を落下させた後に、直接、ゲルポケットに入れてゲル電気泳動することには、阻害要因があるというというべきである。

オ したがって、上記相違点1、2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2-15について
本願発明2-15は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-12-18 
出願番号 特願2016-522576(P2016-522576)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小倉 宏之  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 野村 伸雄
吉野 三寛
発明の名称 レーザ顕微切離システム及び核酸含有試料の検査方法  
代理人 内田 潔人  
代理人 加藤 朝道  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ