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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1369303
審判番号 不服2020-4460  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-03 
確定日 2021-01-07 
事件の表示 特願2016- 74095「複合ケーブル及び複合ハーネス」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月12日出願公開、特開2017-188200、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年4月1日の出願であって、令和1年10月21日付けで拒絶理由が通知され、それに対して同年12月27日付けで手続補正がなされたが、令和2年1月8日付けで拒絶査定がなされ、それに対して同年4月3日に拒絶査定不服の審判請求がされたものである。

第2 原査定の理由の概要
原査定(令和2年1月8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1乃至7
・引用文献等 1乃至4

<引用文献等一覧>
1.特開2014-220043号公報
2.国際公開第2012/105142号(周知技術を示す文献)
3.特開2015-49998号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2012-124005号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1?7に係る発明は、令和1年12月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される発明であり、本願の請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
第1中心導体と前記第1中心導体の外周に被覆されている第1絶縁体とを有する1対の第1電線が撚り合されてなる第1対撚線と、
第2中心導体と前記第2中心導体の外周に被覆されている第2絶縁体とを有する1対の第2電線が撚り合されてなる第2対撚線と、
前記第1中心導体及び前記第2中心導体よりも断面積が大きい第3中心導体と前記第3中心導体の外周に被覆されている第3絶縁体とを有し、前記第1電線及び前記第2電線よりも外径が大きく、かつ周方向において前記第1対撚線と前記第2対撚線との間に配置されている一対の第3電線と、
前記第1対撚線、前記第2対撚線、及び前記一対の第3電線が撚り合わされてなる集合体の周囲に螺旋状に巻き付けられているテープ部材と、を備え、
前記両対撚線の撚り方向、前記集合体の撚り方向、及び前記テープ部材の巻き付け方向が、同じ方向であり、
前記第1対撚線の撚りピッチが、前記集合体の撚りピッチよりも小さく、前記テープ部材の巻きピッチが、前記集合体の撚りピッチよりも小さく、前記第1対撚線の撚りピッチ以上である、
複合ケーブル。
【請求項2】
前記第2対撚線の撚りピッチが、前記集合体の撚りピッチよりも小さく、前記テープ部材の巻きピッチが、前記集合体の撚りピッチよりも小さく、前記第2対撚線の撚りピッチ以上である、
請求項1に記載の複合ケーブル。
【請求項3】
前記テープ部材は、その前記集合体と接触する面が、不織布、紙、樹脂層のいずれかからなる、
請求項1または2に記載の複合ケーブル。
【請求項4】
前記第3電線が、車両の車輪に搭載された電動パーキングブレーキ用の電気モータに駆動電流を供給するための電源線からなる、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の複合ケーブル。
【請求項5】
前記両対撚線の少なくとも一方は、車両の車輪に搭載されたセンサ用の信号線からなる、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の複合ケーブル。
【請求項6】
前記集合体は、前記第1対撚線、前記第2対撚線、前記1対の第3電線、及び前記テープ部材との間に配置された糸状の複数の介在を有し、
前記複数の介在は、前記第1対撚線、前記第2対撚線、及び前記1対の第3電線と共に撚り合わせられており、
前記複数の介在の撚り方向は、前記集合体の撚り方向と同じであり、前記テープ部材の巻き付け方向と同じである、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の複合ケーブル。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の複合ケーブルと、
前記第1電線、前記第2電線、及び前記第3電線の端部のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタと、を備えた、
複合ハーネス。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1(特開2014-220043号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。以下、同様。)
「【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電気絶縁ケーブル10の構成を示す断面図である。電気絶縁ケーブル10は、例えば、車両に搭載された電動パーキングブレーキ(Electro Mechanical Parking Brake:EPB)に用いられるものであり、ブレーキキャリパーを駆動するモータに電気信号を送信するためのケーブルとして用いることができる。
【0021】
図1に示すように、電気絶縁ケーブル10は、コア電線1と、コア電線1に巻き付けられた紙テープ2(テープ部材の一例)と、コア電線1に巻き付けられた紙テープ2の外周を覆うシース3とを有している。本例の電気絶縁ケーブル10の外径は、6?12mmの範囲、好ましくは、8.3?10.3mmの範囲に含まれるように設定される。
【0022】
コア電線1は、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第1のコア材4(コア材の一例)が互いに撚り合されて形成される。2本の第1のコア材4の各々は、導体5と導体5の外周を覆うように形成された絶縁層6とから構成されている。
【0023】
導体5は、例えば、銅合金からなる銅合金線であり、外径0.08mの素線を複数本撚り合されて形成された撚線である。導体5を構成する素線の本数としては、360?610本程度である。このように構成された導体5の断面積(複数本の素線の合計断面積)は、1.5?3.0mm^(2)の範囲、好ましくは、1.8?2.5mm^(2)の範囲に含まれるように設定される。また、導体5の外径は、1.5?3.0mmの範囲、好ましくは、2.0?2.6mmの範囲に含まれるように設定される。なお、導体5を構成する材料としては、銅合金線に限られず、錫めっき軟銅線や軟銅線等のような所定の導電性と柔軟性を有する材料であればよい。
【0024】
絶縁層6は、難燃性のポリオレフィン系樹脂で形成され、例えば、難燃剤が配合されることで難燃性が付与された難燃性の架橋ポリエチレンで形成される。絶縁層6の厚さは、0.2?0.8mmの範囲、好ましくは、0.3?0.7mmの範囲に含まれるように設定される。絶縁層6の外径は、2.5?4.0mmの範囲、好ましくは、2.8?3.8mmの範囲に含まれるように設定されている。なお、絶縁層6を構成する材料としては、難燃性のポリオレフィン系樹脂に限られず、架橋フッ素系樹脂等の他の材料で形成しても良い。
【0025】
紙テープ2は、コア電線1の外周に螺旋状に巻き付けられ、コア電線1と後述する内部シース7との間に配置される。紙テープ2は、その厚さが0.02?0.06mmの範囲、好ましくは、0.03?0.05mmの範囲に含まれるものが用いられる。なお、材料としては紙テープに限られず、ポリエステルなど樹脂材料で形成された人工繊維のテープを用いても良い。また、巻き付け方としては、螺旋巻きに限られず、縦添えであっても良い。また、巻き方向としては、Z巻きでもS巻きでも良い。また巻き方向は、コア電線1の各コア部材4の撚り方向と反対の向きにしても良い。紙テープ2の巻き方向とコア部材4の撚り方向とを反対にすることにより、巻き付けられた紙テープ2の表面に凹凸が生じにくく、外径が安定し易い。」

「【0036】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図3を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一構成の部分には同一符号を付すことで説明を省略する。図3は、第2の実施形態に係る電気絶縁ケーブル30の断面を示している。本例の電気絶縁ケーブル30は、電動パーキングブレーキの電気信号を送信する用途に加えて、アンチロックブレーキシステム(Antilock Brake System:ABS)の動作を制御する電気信号を送信するのに用いることができる。
【0037】
図3に示すように、本例の電気絶縁ケーブル30は、コア電線1Aが、2本の第1のコア材4に加えて、ABS用の信号を送信するためのサブユニット31を有する点で第1の実施形態と異なっている。
【0038】
サブユニット31は、第1のコア材4の直径より小さく互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第2のコア材32(コア材の一例)が互いに撚り合されて形成されている。2本の第2のコア材32の各々は、導体33と導体33の外周を覆うように形成された絶縁層34とから構成されている。
【0039】
導体33は、例えば、銅合金からなる銅合金線であり、外径0.08mの素線を複数本撚り合されて形成された撚線である。導体33を構成する素線の本数は、50?70本、好ましくは、60本程度である。このように構成された導体33の断面積は、0.18?0.40mm^(2)の範囲に含まれるように、好ましくは、0.3mm^(2)程度に設定される。また、導体33の外径は、0.6?1.0mmの範囲に含まれるように、好ましくは、0.8mm程度に設定される。なお、導体33を構成する材料としては、銅合金線に限られず、錫めっき軟銅線や軟銅線等のような所定の導電性と柔軟性を有する材料であればよい。
【0040】
絶縁層34は、難燃性のポリオレフィン系樹脂で形成され、例えば、難燃性の架橋ポリエチレンで形成される。絶縁層34の厚さは、0.2?0.4mmの範囲に含まれるように、好ましくは、0.3mm程度に設定される。絶縁層34の外径は、1.2?1.6mmの範囲に含まれるように、好ましくは、1.4mm程度に設定されている。なお、絶縁層34を構成する材料としては、難燃性の架橋ポリオレフィン系樹脂に限られず、架橋フッ素系樹脂等の他の材料で形成しても良い。
【0041】
上記のように構成されたサブユニット31と2本の第1のコア材4とが一括して撚り合されてコア電線1Aが形成される。このコア電線1Aに対して、外周に紙テープ2が巻き付けられ、さらにその外周に内部シース7と外部シース8が押出被覆で形成されて電気絶縁ケーブル30が形成される。
【0042】
以上説明したように、電気絶縁ケーブル30はABS用の信号を送信するためのサブユニット31を有し、このサブユニット31は、その導体33の断面積が0.18?0.40mm^(2)の範囲に含まれる第2のコア材32が2本撚り合わせて形成されている。そして、このサブユニット31が2本の第1のコア材4と撚り合されてコア電線1Aが形成されている。このコア電線1Aを有する電気絶縁ケーブル30は、車両に搭載される電動パーキングブレーキのための電気信号だけでなく、アンチロックブレーキシステムのための電気信号を送信することができる。このように1つのケーブルで2種類のシステムを動作させる電気信号を送信できるため、ケーブルの利便性が向上する。
【0043】
なお、本発明は、上述した第1?2の実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0044】
例えば、コア電線を構成するコア材として、導体の断面積が1.5?3.0mm^(2)の範囲に含まれる第1のコア材4と、導体の断面積が0.18?0.40mm^(2)の範囲に含まれる第2のコア材32とを例示したが、これに限られない。例えば、導体の断面積が0.18?3.0mm^(2)の範囲に含まれるコア材を少なくとも2本有するケーブル構成であれば本発明を適用することができる。また、導体の断面積が1.5?3.0mm2の範囲に含まれる第1のコア材4を少なくとも2本含むケーブル構成であれば本発明を適用することができる。」

上記【0023】?【0041】の記載(特に下線部)及び図3によれば、引用文献1には、以下の電気絶縁ケーブルの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「各々が導体33より断面積が大きい導体5と導体5の外周を覆うように形成された絶縁層6とから構成され、互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第1のコア材4と、
各々が導体33と導体33の外周を覆うように形成された絶縁層34とから構成され、第1のコア材4の直径より小さく互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第2のコア材32が、互いに撚り合されて形成されているサブユニット31とを有し、
上記サブユニット31が上記2本の第1のコア材4と撚り合されてコア電線1Aが形成され、
上記コア電線1Aに対して、外周に紙テープ2が螺旋状に巻き付けられ、さらにその外周に内部シース7と外部シース8が押出被覆で形成された、
電気絶縁ケーブル30。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2(国際公開第2012/105142号)には、図4とともに次の事項が記載されている。

「[0036] 図4に示す信号ケーブル20Aは、駆動信号系の2本の同軸線30,30、出力信号系の2本の同軸線31,31、電源系統(グランドを含む)の6本の単純線24,…を有し、3本の単純線(例えば、何れも電源線)を撚り束ねて複合ケーブル22Aとしてユニット化すると共に、3本の単純線(例えば、2本の電源線と1本のグランド線)を撚り束ねて複合ケーブル23Aとしてユニット化している。

[0037] 複合ケーブル22A,23Aは、ケーブル中心軸Oを図中垂直方向に通る直線Lを挟んでほぼ対称となる位置に配置され、他の駆動信号系の2本の同軸線30,30、及び出力信号系の同軸線31,31はユニット化せず、同軸線30,30同士は互いに直線Lを挟んだ対称位置に配置される。同軸線31,31同士においても互いに直線Lを挟んだ対称位置に配置される。さらに、同軸線30,30と同軸線31,31の組同士は、複合ケーブル22A,23Aが略一直線上に配置される中心軸、即ち直線Lとケーブル中心軸Oにて直交する軸線(不図示)に対して略対称となる位置に配置されている。このような信号ケーブル20Aでは、駆動信号線と出力信号線の間にユニット化した単純線の複合ケーブル22A,23Aが挟み込まれる配置となるため、駆動信号線と出力信号線との物理的距離を確保することができ、駆動信号と出力信号とのクロストークの影響を低減することができる。

[0038] この場合、複合ケーブル22A,23Aと他の同軸線30,31との間に生じる隙間に介在物55’を配置しても良いが、複合ケーブル22A,23Aが駆動信号線(同軸線30,30)と出力信号線(同軸線31,31)との間の壁の役割を果たす。このため、図4の信号ケーブル20Aでは、あえて介在物55’を充填しなくても、駆動信号線と出力信号線との間の物理的な距離を十分に確保することができ、駆動信号と出力信号とのクロストークの影響を低減することができる。」

上記記載(特に、下線部)及び図4によれば、引用文献2には、以下の技術事項が記載されていると認められる。
「信号ケーブルにおいて、駆動信号線30,30の組と出力信号線31,31の組の間にユニット化した単純線の複合ケーブル22A,23Aが挟み込まれる配置にすることにより、駆動信号線と出力信号線との物理的距離を確保することができ、駆動信号と出力信号とのクロストークの影響を低減することができること。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3(特開2015-49998号公報)には、図とともに次の事項が記載されている。
「【0013】
以下、本発明の基本的構成を、添付図面を参照しながら説明する。
図1及び図2の電源用ケーブル1において、複数本の金属素線を撚り合わせた導体部2、導体部2を滑り素材3で被覆した被覆付き導体部4、導体部2及び/又は(滑り素材3で被覆した)被覆付き導体部4を複数本撚り合わせた複合導体部5、複合導体部5の中央に緩衝材6、複合導体部5の上に抑えの滑り素材7、絶縁体8、シールド層9、外層10が同芯円上に施される。
【0014】
導体部2の構成は、集合撚り、同芯撚り等の撚り線である。材質は、錫めっき軟銅線、銀めっき軟銅線などが好ましい。耐屈曲性及び耐捻回性の観点より、撚り方向は複合導体部5等に統一されている方が好ましい。
・・・中略・・・
【0016】
導体部2及び/又は(滑り素材3で被覆した)被覆付き導体部4を束ね撚り合わせたものを複合導体部5と呼ぶ。複合導体部5の中心部には、屈曲による衝撃を緩和するために、緩衝材6が施される。複合導体部5を撚り合わせる方向は、導体部2と同じが好ましい。
【0017】
複合導体部5の上には、滑り素材7のような抑え構造を施すと良い。抑えの滑り素材7の材質は、前記滑り素材3と同じくフッ素樹脂が好ましく、可撓性の観点からテープ巻き構造が好ましい。その場合、テープ巻きの方向は導体部2及び複合導体部5と同じが好ましい。」

上記記載(特に下線部)及び図1、2によれば、引用文献3には、以下の技術事項が記載されていると認められる。
「電源用ケーブルにおいて、複数本の金属素線を撚り合わせた導体部2、導体部2を滑り素材3で被覆した被覆付き導体部4、導体部2及び/又は(滑り素材3で被覆した)被覆付き導体部4を複数本撚り合わせた複合導体部5、複合導体部5の中央に緩衝材6、複合導体部5の上に抑えの滑り素材7、絶縁体8、シールド層9、外層10が同芯円上に施され、複合導体部5を撚り合わせる方向は、導体部2と同じが好ましく、合導体部5の上の抑えの滑り素材7は、可撓性の観点からテープ巻き構造が好ましく、テープ巻きの方向は導体部2及び複合導体部5と同じが好ましいこと。」

4.引用文献4について
原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献4(特開2012-124005号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0020】
図1に示すように、充電ケーブル1は、充電電流を流す被覆電線である一対の動力線2と、被覆電線からなる複数の信号線3と、複数の信号線3の回りに巻き付けられた信号線押さえ巻きテープ4と、動力線2及び信号線3と共に撚り合わされている介在糸5と、介在糸5と共に撚り合わされた動力線2及び信号線3の外側に巻き付けられた押さえ巻きテープ6と、押さえ巻きテープ6の外側に巻き付けられた加熱用導線7と、加熱用導線7の外側を覆うシース8と、を備えている。
・・・中略・・・
【0024】
上記介在糸5は、例えば複数のポリプロピレン糸からなり、充電ケーブル1の外形を丸くするために、上記動力線2及び信号線3と共に撚り合わされている。上記押さえ巻きテープ6は、例えば帯状の不織布からなり、互いに撚り合わされている動力線2、信号線3及び介在糸5の外周に巻き付けられて、これらを束ねる。」

上記記載及び図1によれば、引用文献4には、以下の技術事項が記載されていると認められる。
「被覆電線である一対の動力線2と、被覆電線からなる複数の信号線3と、複数の信号線3の回りに巻き付けられた信号線押さえ巻きテープ4と、動力線2及び信号線3と共に撚り合わされている介在糸5と、介在糸5と共に撚り合わされた動力線2及び信号線3の外側に巻き付けられた押さえ巻きテープ6と、を備えているケーブルにおいて、上記介在糸5は、複数のポリプロピレン糸からなり、充電ケーブル1の外形を丸くするために、上記動力線2及び信号線3と共に撚り合わされ、上記押さえ巻きテープ6は、互いに撚り合わされている動力線2、信号線3及び介在糸5の外周に巻き付けられて、これらを束ねること。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「導体33」、「絶縁層34」、「第2のコア材32」は、それぞれ本願発明1の「第1中心導体」、「第1絶縁体」、「第1電線」に相当する。
そうすると、引用発明の「サブユニット31」は、「各々が導体33と導体33の外周を覆うように形成された絶縁層34とから構成され」、「互いに略同一の直径をそれぞれ有する2本の第2のコア材32が、互いに撚り合されて形成されている」から、本願発明1の「第1対撚線」に相当するといえる。
(イ)引用発明の「導体5」、「絶縁層6」、「第1のコア材4」は、それぞれ本願発明1の「第3中心導体」、「第3絶縁体」、「第3電線」に相当する。
そして、引用発明の「2本の第1のコア材4」は、「各々が導体33より断面積が大きい導体5と導体5の外周を覆うように形成された絶縁層6とから構成され、互いに略同一の直径をそれぞれ有」し、「第2のコア材32」は「第1のコア材4の直径より小さ」いことから、「第1のコア材4」の外径は「第2のコア材32」の外径より大きいといえる。そうすると、引用発明の「2本の第1のコア材4」は、本願発明1の「前記第1中心導体及び前記第2中心導体よりも断面積が大きい第3中心導体と前記第3中心導体の外周に被覆されている第3絶縁体とを有し、前記第1電線及び前記第2電線よりも外径が大きく、かつ周方向において前記第1対撚線と前記第2対撚線との間に配置されている一対の第3電線」と、“前記第1中心導体よりも断面積が大きい第3中心導体と前記第3中心導体の外周に被覆されている第3絶縁体とを有し、前記第1電線よりも外径が大きい、一対の第3電線”である点で共通するといえる。
(ウ)引用発明の「紙テープ2」は、本願発明1の「テープ部材」に対応する。そして、引用発明の「紙テープ2」は、「上記サブユニット31が上記2本の第1のコア材4と撚り合されてコア電線1Aが形成され、上記コア電線1Aに対して、」外周に螺旋状に巻き付けられているから、本願発明1の「前記第1対撚線、前記第2対撚線、及び前記一対の第3電線が撚り合わされてなる集合体の周囲に螺旋状に巻き付けられているテープ部材」と、“前記第1対撚線及び前記一対の第3電線が撚り合わされてなる集合体の周囲に螺旋状に巻き付けられているテープ部材”である点で共通するといえる。
(エ)引用発明の「電気絶縁ケーブル30」は、後述する相違点を除き、本願発明1の「複合ケーブル」に対応するといえる。

(一致点)
「第1中心導体と前記第1中心導体の外周に被覆されている第1絶縁体とを有する1対の第1電線が撚り合されてなる第1対撚線と、
前記第1中心導体よりも断面積が大きい第3中心導体と前記第3中心導体の外周に被覆されている第3絶縁体とを有し、前記第1電線よりも外径が大きい第3電線と、
前記第1対撚線及び前記一対の第3電線が撚り合わされてなる集合体の周囲に螺旋状に巻き付けられているテープ部材と、を備える、
複合ケーブル。」

(相違点1)
本願発明1は、「第2中心導体と前記第2中心導体の外周に被覆されている第2絶縁体とを有する1対の第2電線が撚り合されてなる第2対撚線」を備えており、「一対の第3電線」は、「周方向において前記第1対撚線と前記第2対撚線との間に配置され」、「集合体」は、「前記第1対撚線、前記第2対撚線、及び前記一対の第3電線が撚り合わされてなる」のに対し、引用発明は、「第2対撚線」を備えておらず、上記のような「一対の第3電線」の配置、「集合体」の構成は特定されていない点。

(相違点2)
本願発明1は、「前記両対撚線の撚り方向、前記集合体の撚り方向、及び前記テープ部材の巻き付け方向が、同じ方向」であるのに対し、引用発明は、「前記両対撚線の撚り方向、前記集合体の撚り方向、及び前記テープ部材の巻き付け方向が、同じ方向」という特定がない点。

(相違点3)
本願発明1は、「前記第1対撚線の撚りピッチが、前記集合体の撚りピッチよりも小さく、前記テープ部材の巻きピッチが、前記集合体の撚りピッチよりも小さく、前記第1対撚線の撚りピッチ以上である」のに対し、引用発明は、そのような構成は特定されていない点。

(2)判断
事案に鑑みて、上記相違点3について検討する。
「第1対撚線の撚りピッチ」、「集合体の撚りピッチ」、及び「テープ部材の巻きピッチ」について、「前記第1対撚線の撚りピッチが、前記集合体の撚りピッチよりも小さく、前記テープ部材の巻きピッチが、前記集合体の撚りピッチよりも小さく、前記第1対撚線の撚りピッチ以上である」と特定することは、上記引用文献2-4のいずれにも記載されておらず、示唆されてもいない。
そうすると、引用発明において、上記引用文献2-4に記載された技術事項を適用したとしても、上記相違点3に係る本願発明1の構成には至らない。

また、上記相違点3に係る本願発明1の構成は、本願出願前において周知技術であったとはいえず、引用発明において、上記相違点3に係る本願発明1の構成とする動機付けもない。

加えて、本願発明1は、上記相違点3に係る本願発明1の構成を有することにより、
「対撚線3,5の撚りピッチP1,P2と集合体7の撚りピッチP3が同じであると、第1電線2や第2電線4と第3電線6との位置関係が長手方向で常に同じとなり、複合ケーブル1の外観がいびつになってしまう可能性がある。そのため、対撚線3,5の撚りピッチP1,P2と集合体7の撚りピッチP3とを異ならせる・・・ことが望ましい。対撚線3,5の撚りピッチP1,P2を集合体7の撚りピッチP3よりも大きくすると、集合体7を撚り合わせる際に対撚線3,5の撚りピッチP1,P2が変動してしまうおそれがあるため、対撚線3,5の撚りピッチP1,P2は、少なくとも集合体7の撚りピッチP3よりも小さいことが望ましい。」(【0063】)、「集合体7の撚りピッチP3とテープ部材8の巻きピッチP4とが同じであると、テープ部材8の外周にシース9を被覆した際の圧力により、テープ部材8が対撚線3,5と第3電線6との間に入り込み易くなり、テープ部材8を巻き付けた集合体7の断面形状がいびつになって外観が劣化したり、集合体7がテープ部材8の内部で滑りにくくなり可撓性が低下したりするおそれがある。よって、集合体7の撚りピッチP3とテープ部材8の巻きピッチP4とを異ならせる・・・ことが望ましい。」(【0065】)、「また、テープ部材8の巻きピッチP4は、対撚線3,5の撚りピッチP1,P2以上に・・・することで、対撚線3,5と接触している部分におけるテープ部材8の歪みを低減でき、複合ケーブル1の断面形状を円形状に成形しやくなる。」(【0066】)、「テープ部材8の巻きピッチP4を、対撚線3,5の撚りピッチP1,P2以上とすることで、屈曲による負荷の一部をテープ部材8に負担させ、対撚線3,5に屈曲による負荷が集中してしまうことを抑制でき、屈曲耐久性を向上させることが可能になる。」(【0067】)という明細書記載の効果を奏するものである。

したがって、上記相違点1、2を検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明および引用文献2-4記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2?7について
本願発明2-7は、上記相違点3に係る本願発明1の構成と同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明および引用文献2-4記載の技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-12-23 
出願番号 特願2016-74095(P2016-74095)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 辻本 泰隆
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 複合ケーブル及び複合ハーネス  

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