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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1369408
審判番号 不服2019-15312  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-15 
確定日 2020-12-09 
事件の表示 特願2017-556135「通信処理方法及び電子装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 9日国際公開、WO2017/020711、平成30年 6月14日国内公表、特表2018-515979〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成28年(2016年)7月21日(パリ優先による優先権主張外国庁受理 2015年8月5日 中国)を国際出願日とする出願であって、手続きの経緯の概要は以下のとおりである。
平成30年11月 7日付け:拒絶理由通知
平成31年 2月13日 :意見書・手続補正書の提出
令和 1年 7月 8日付け:拒絶査定
令和 1年11月15日 :拒絶査定不服審判の請求・手続補正書の提


第2 令和1年11月15日にされた手続補正についての補正却下の決定
[結論]
令和1年11月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりに補正された。(下線部は補正箇所を示す。)
「【請求項1】
通信処理方法であって、第1電子装置に適用され、
前記第1電子装置を第1通信状態にするように制御し、前記第1通信状態において、前記第1電子装置は、少なくとも一つの第2電子装置と音声データのインタラクションを行うことと、
第1操作に応答して、前記少なくとも一つの第2電子装置にビデオフレームのシェア要求を送信し、第1通信状態から第2通信状態に切り替えるように前記第1電子装置を制御し、前記第2通信状態において、前記少なくとも一つの第2電子装置との音声データのインタラクションを保持し、かつ少なくとも一つの第2電子装置と前記第1電子装置の送信するビデオフレームをシェアして、前記少なくとも一つの第2電子装置に前記ビデオフレームを表示するようにすることと、
前記第1電子装置が前記少なくとも一つの第2電子装置からビデオフレームのシェア要求を受信するときに、前記少なくとも一つの第2電子装置より送信された少なくとも一つのビデオフレームを受信して表示することと、
第2操作に応答して、前記第2通信状態から第1通信状態に切り替えるように前記第1電子装置を制御することと、
を含む、前記通信処理方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成31年2月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1は次のとおりである。
「【請求項1】
通信処理方法であって、第1電子装置に適用され、
前記第1電子装置を第1通信状態にするように制御し、前記第1通信状態において、前記第1電子装置は、少なくとも一つの第2電子装置と音声データのインタラクションを行うことと、
第1操作に応答して、第1通信状態から第2通信状態に切り替えるように前記第1電子装置を制御し、前記第2通信状態において、前記少なくとも一つの第2電子装置との音声データのインタラクションを保持し、かつ少なくとも一つの第2電子装置とビデオフレームをシェアすることと、
第2操作に応答して、前記第2通信状態から第1通信状態に切り替えるように前記第1電子装置を制御することと、
前記第1通信状態において、前記少なくとも一つの第2電子装置より送信された少なくとも一つのビデオフレームを受信することと、
を含む、前記通信処理方法。」

2 補正の適否
請求項1についての本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された「第1操作に応答して、第1通信状態から第2通信状態に切り替えるように前記第1電子装置を制御し、前記第2通信状態において、前記少なくとも一つの第2電子装置との音声データのインタラクションを保持し、かつ少なくとも一つの第2電子装置とビデオフレームをシェアすること」を「第1操作に応答して、前記少なくとも一つの第2電子装置にビデオフレームのシェア要求を送信し、第1通信状態から第2通信状態に切り替えるように前記第1電子装置を制御し、前記第2通信状態において、前記少なくとも一つの第2電子装置との音声データのインタラクションを保持し、かつ少なくとも一つの第2電子装置と前記第1電子装置の送信するビデオフレームをシェアして、前記少なくとも一つの第2電子装置に前記ビデオフレームを表示するようにすること」に限定するとともに、「第2操作に応答して、前記第2通信状態から第1通信状態に切り替えるように前記第1電子装置を制御すること」を「前記第1電子装置が前記少なくとも一つの第2電子装置からビデオフレームのシェア要求を受信するときに、前記少なくとも一つの第2電子装置より送信された少なくとも一つのビデオフレームを受信して表示すること」に限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献と引用発明等
原査定の拒絶理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2014/168030号(国際公開日 2014年(平成26年)10月16日、以下「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)

ア 「[0032] [第1実施例]
〔装置構成〕
図3は、第1実施例における通信端末10のハードウェア構成例を概念的に示す図である。第1実施例における通信端末10は、PC、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末のようないわゆるコンピュータである。例えば、通信端末10は、CPU(Central Processing Unit)2、メモリ3、表示ユニット4、タッチセンサ5、通信ユニット6、撮像ユニット7、マイクロフォンユニット8、スピーカユニット9等を有する。CPU2は、他の各ユニットとバス等の通信線により接続される。
[0033]-[0037](略)
[0038] 但し、説明の便宜のため、第1実施例では、通信端末10で実行され得るユーザ間コミュニケーション手段の種別として、図2の例に従って、端末操作コミュニケーション、音声通話、ビデオ通話、及びペイント通話が例示される。そして、第1実施例では、各ユーザ間コミュニケーション手段のプライベート性のレベルは、端末操作コミュニケーション、音声通話、ビデオ通話、ペイント通話の順に、高くなるように設定される。
[0039] 更に、第1実施例では、各ユーザ間コミュニケーション手段の実行状態として、片方向状態と両方向状態との2つの状態がそれぞれ設けられる。片方向状態とは、一方のユーザが、或る種別のユーザ間コミュニケーション手段の利用を相手のユーザに要求しながら、一方的にその種別に対応するコミュニケーションメディアデータを相手通信端末に送っている状態を意味する。両方向状態とは、両方のユーザが、その種別のユーザ間コミュニケーション手段の利用に合意し、その種別に対応するコミュニケーションメディアデータを送り合っている状態を意味する。
[0040] 図4は、第1実施例におけるユーザ間コミュニケーションの状態遷移を概念的に示す図である。図4に示されるように、第1実施例では、ユーザ間コミュニケーションの実行状態が8つの実行状態で管理され、各実行状態が、図4に示されるように、コミュニケーション中におけるユーザ間の親密度と対応付けられる。このように、コミュニケーションの実行状態が、コミュニケーション中におけるユーザ間の親密度と対応付けられて管理されることにより、ユーザ間コミュニケーション手段のユーザビリティの向上が図られる。
[0041] 第1実施例における通信端末10は、図4に示される実行状態の並び、即ち、ユーザ間コミュニケーションの段階に基づいて、或る時点において、4種のユーザ間コミュニケーション手段の中の利用可能な手段の範囲を決定する。以降の説明では、図4に示されるように、ユーザ間の親密度の高低に合わせて、ユーザ間コミュニケーション手段の高低を表現するものとする。例えば、音声通話の1段階上位のユーザ間コミュニケーション手段は、ビデオ通話であり、音声通話の1段階下位のユーザ間コミュニケーション手段は、端末操作コミュニケーションである。
[0042] 〔処理構成〕
図5は、第1実施例における通信端末10の処理構成例を概念的に示す図である。第1実施例における通信端末10は、通信制御部11、表示制御部12、操作検出部13、種別特定部14、データ取得部15、送信部16、受信部17、提示処理部18等を有する。これら各処理部は、例えば、CPU2によりメモリ3に格納されるプログラムが実行されることにより実現される。また、当該プログラムは、例えば、CD(Compact Disc)、メモリカード等のような可搬型記録媒体やネットワーク上の他のコンピュータからインストールされ、メモリ3に格納されてもよい。
[0043] 通信制御部11は、表示制御部12の処理によりコミュニケーション開始時に表示される開始画面(詳細は後述する)に対するユーザ操作が操作検出部13により検出され、そのユーザ操作により選択された相手通信端末と自通信端末10との間で通信を確立する。ここで、通信確立とは、自通信端末10と相手通信端末との間で相互に通信可能な状態になることを意味する。例えば、SIP(Session Initiation Protocol)が利用される場合には、セッション確立が通信確立に相当する。また、Skype(登録商標)の原理では、スーパーノード等と呼ばれる他のノードを介して相互に通信可能になることが通信確立に相当する。また、回線交換網が利用される場合には、呼接続状態が通信確立に相当する。但し、第1実施例では、通信形態及び通信確立手法は制限されない。よって、通信を確立をさせるための相手通信端末の特定情報も制限されない。相手通信端末の特定情報は、例えば、電話番号、IP(Internet Protocol)アドレス、メールアドレス、ユーザID等であり、予め、通信端末10により保持される。
[0044] 操作検出部13は、上述の実施形態における操作検出部101に相当する。第1実施例における操作検出部13は、タッチセンサ5から送られる接触情報又は近接情報に基づいて、表示ユニット4のモニタに表示される表示画面に対するユーザ操作を検出する。例えば、操作検出部13は、端末操作コミュニケーション時のユーザ操作を検出する。また、操作検出部13は、モニタに対するペイント操作をユーザ操作として検出する。ペイント操作とは、通信端末10で起動されるペイントツールを用いて、ユーザが、絵や字を描くように、表示ユニット4のモニタに対して行う操作である。
[0045] 種別特定部14は、上述の実施形態における種別特定部102に相当する。第1実施例における種別特定部14は、操作検出部13により検出されるユーザ操作に基づいて、端末操作コミュニケーション、音声通話、ビデオ通話及びペイント通話の中のいずれか1つのユーザ間コミュニケーション手段の種別を特定する。このとき、種別特定部14は、上述の実施形態で説明したように、4種のユーザ間コミュニケーション手段の段階的切り替えを可能とするために、相手通信端末宛てに送信された種別要求情報に対する相手通信端末からの返信状況に応じて、現ユーザ間コミュニケーション手段の種別からの切り替えが許可されるユーザ間コミュニケーション手段の種別の範囲を決定する。以降、現ユーザ間コミュニケーション手段の種別からの切り替えが許可されるユーザ間コミュニケーション手段の種別の範囲を切り替え許可範囲と表記する場合もある。
[0046] 例えば、種別特定部14は、図4に示されるようなユーザ間コミュニケーション手段の並び(段階)の中で、最下位のユーザ間コミュニケーション手段が両方向状態で行われている場合にのみ、複数段階飛び越したユーザ間コミュニケーション手段への切り替えが許可されるように、切り替え許可範囲を決定することができる。これは、最下位のユーザ間コミュニケーション手段が両方向状態で実行されていれば、ユーザ間でコミュニケーションを行うことについて最低限の了承がなされたと考えられるからである。最低限の了承がなされていれば、親密度の段階を或る程度飛ばしたとしても、そのユーザ間で心理的負担が著しく増す可能性は低いと考えられる。但し、最低限の了承がなされたとみなすのに利用されるユーザ間コミュニケーション手段は、最下位のユーザ間コミュニケーション手段が望ましいが、予め指定された最下位以外のユーザ間コミュニケーション手段であってもよい。
[0047] 第1実施例では、種別特定部14は、端末操作コミュニケーションが両方向状態で行われている場合にのみ、複数段階飛び越したユーザ間コミュニケーション手段への切り替えが許可されるように、切り替え許可範囲を決定することができる。この場合、種別特定部14は、端末操作コミュニケーションを両方向状態で行っている場合、切り替え許可範囲を、音声通話、ビデオ通話、及びペイント通話に決定する。一方、種別特定部14は、端末操作コミュニケーションの利用について相手通信端末から返信を受けていない場合、切り替え許可範囲を音声通話のみに制限する。
[0048] このような形態によれば、様々なコミュニケーションシーンに適応することができる。例えば、端末操作コミュニケーションが両方向状態で行われた後、通信端末10のユーザからの音声通信の要求に相手が応答してくれない場合、通信端末10のユーザは、別の手段(例えば、ビデオ通話)であれば応答してくれるかもしれないとの希望を持って、ビデオ通話でトライしてみることができる。また、端末操作コミュニケーションが両方向状態で行われた後、通信端末10のユーザは、段階を追うのが面倒であるため、いきなりペイント通話を要求することもできる。
[0049] また、種別特定部14は、図4に示されるようなユーザ間コミュニケーション手段の並び(段階)の順にのみ、段階的に、ユーザ間コミュニケーション手段の切り替えが行われるように、制御することができる。この場合、ユーザ間コミュニケーション手段の切り替えの制限は厳しくなるが、ユーザは、どのような相手とコミュニケーションを取る場合でも、安心してコミュニケーションを取ることができる。この場合、種別特定部14は、自通信端末10から送信された種別要求情報に対し、相手通信端末から返信を受信していない場合、その種別要求情報が示すユーザ間コミュニケーション手段の種別(現ユーザ間コミュニケーション手段の種別)より下位のユーザ間コミュニケーション手段の種別のみを、切り替えが許可されるユーザ間コミュニケーション手段の種別の範囲に決定する。一方、種別特定部14は、相手通信端末から返信を受けている場合、現ユーザ間コミュニケーション手段の種別より下位及び一段上位のユーザ間コミュニケーション手段の種別のみを、切り替えが許可されるユーザ間コミュニケーション手段の種別の範囲に決定する。
[0050] 種別特定部14は、上述のように決めた切り替え許可範囲以外のユーザ間コミュニケーション手段の種別に対応するユーザ操作が操作検出部13により検出された場合、そのユーザ操作を無視してもよいし、そのユーザ操作に対応するユーザ間コミュニケーション手段は受け付けられない旨のエラー表示を表示するように表示制御部12に依頼するようにしてもよい。
[0051] データ取得部15は、上述の実施形態におけるデータ取得部103に相当する。第1実施例におけるデータ取得部15は、種別特定部14によりユーザ間コミュニケーション手段の種別が特定されると、その特定された種別に応じて、撮像ユニット7やマイクロフォンユニット8を動作させ、その特定された種別に対応する自通信端末10のユーザのコミュニケーションメディアデータを取得する。
[0052] 種別特定部14が端末操作コミュニケーションを特定した場合、データ取得部15は、操作検出部13により検出されたユーザ操作に基づいて、端末操作コミュニケーションにおけるユーザ操作の内容を示す端末操作情報をコミュニケーションメディアデータとして生成する。ここで、端末操作コミュニケーションにおけるユーザ操作の内容は、操作位置、操作回数、操作速度、操作の大きさ、操作の強さ、操作種別(画面タッチ、ボタン操作、振る操作など)などにより示される。例えば、端末操作コミュニケーションにおいて、ユーザがモニタの或る位置を2回叩く(ノックする)操作を行った場合、端末操作情報は、叩かれた位置、叩かれた回数(2回)、操作種別(叩く)を示す。また、ユーザが通信端末10を3回振る操作を行った場合、端末操作情報は、振られた回数(3回)及び操作種別(振る)を示す。また、ユーザがモニタの或る位置から或る位置までなでる操作を1回行った場合、端末操作情報は、開始点及び終了点の位置、撫でられた回数(1回)、操作種別(フリック又はドラッグ)を示す。但し、第1実施例は、端末操作コミュニケーションで行われるユーザ操作の内容を制限しない。
[0053] データ取得部15は、種別特定部14が音声通話を特定した場合、マイクロフォンユニット8を動作させることにより、自通信端末10のユーザの音声データをコミュニケーションメディアデータとして取得する。データ取得部15は、種別特定部14がビデオ通話を特定した場合、マイクロフォンユニット8及び撮像ユニット7を動作させることにより、自通信端末10のユーザの音声データ及び動画データをコミュニケーションメディアデータとして取得する。以降、音声データ及び動画データという表記は、実現されるデータ単位(ファイル等)の数を意味しているわけではない。音声データ及び動画データは、1つのデータ単位で実現されてもよいし、2つのデータ単位で実現されてもよい。
[0054] データ取得部15は、種別特定部14がペイント通話を特定した場合、ビデオ通話時と同様に、自通信端末10のユーザの音声データ及び動画データを取得すると共に、操作検出部13によりユーザ操作として検出されるペイント操作の軌跡情報をコミュニケーションメディアデータとして更に取得する。
[0055] 一方で、データ取得部15は、自通信端末10がコミュニケーションを要求された側である場合、その要求に合意することを示す特定のユーザ操作が操作検出部13により検出されるまで、その要求された種別に対応するコミュニケーションメディアデータの取得処理を停止する。第1実施例における通信端末10は、このようなデータ取得部15の制御により、ユーザ間コミュニケーション手段の片方向状態を実現する。具体的には、相手通信端末から音声通話を要求されている場合、自通信端末10のデータ取得部15は、自通信端末10のユーザによりその要求に合意されるまで、マイクロフォンユニット8からの音声データの取得処理を停止する。また、相手通信端末からビデオ通話を要求されている場合、自通信端末10のデータ取得部15は、自通信端末10のユーザによりその要求に合意されるまで、撮像ユニット7からの動画データの取得処理を停止する。このような場合、データ取得部15は、撮像ユニット7及びマイクロフォンユニット8を動作させないようにしてもよい。
[0056] 送信部16は、上述の実施形態における送信部104に相当する。送信部16は、当該種別要求情報及び当該コミュニケーションメディアデータを通信制御部11の処理により確立された通信リソースを用いて相手通信端末宛てに送信する。種別要求情報が端末操作コミュニケーションを示す場合には、コミュニケーションメディアデータとして端末操作情報が送信される。また、種別要求情報が音声通話を示す場合には、音声データが送信される。種別要求情報がビデオ通話を示す場合には、音声データ及び動画データが送信される。種別要求情報がペイント通話を示す場合には、音声データ、動画データ及びペイント操作の軌跡情報が送信される。
[0057] 受信部17は、相手通信端末から通信制御部11の処理により確立された通信リソースを用いて送信される上記種別要求情報及び上記コミュニケーションメディアデータを受信する。この受信部17の処理は、自通信端末10のユーザが、種別要求情報で示される種別のユーザ間コミュニケーション手段の利用を相手通信端末のユーザから要求されている場合に実行される。
[0058] 提示処理部18は、受信部17により受信された種別要求情報及びコミュニケーションメディアデータに基づいて、その種別要求情報に対応する出力手法により、そのコミュニケーションメディアデータを出力する。出力手法は、例えば、表示出力、音声出力及び振動出力の少なくとも1つである。第1実施例では、表示出力及び音声出力のいずれか一方又はその組み合わせの出力手法が用いられる。具体的には、提示処理部18は、種別要求情報が音声通話を示す場合、受信された音声データに基づいて、音声出力する。また、提示処理部18は、種別要求情報がビデオ通話を示す場合、受信された音声データ及び動画データに基づいて、音声出力及び動画の表示出力を行う。提示処理部18は、種別要求情報がペイント通話を示す場合、音声出力と共に、動画及びペイント操作の軌跡情報で示されるペイント軌跡を表示出力する。
[0059] 提示処理部18は、受信部17により受信された種別要求情報が端末操作コミュニケーションを示す場合には、端末操作情報が示す操作種別に対応する出力方法で、端末操作情報が示すユーザ操作の内容に対応する提示内容を出力する。例えば、受信部17で受信された端末操作情報が、叩かれた位置、叩かれた回数(2回)、操作種別(叩く)を示す場合、提示処理部18は、操作種別(叩く)に対応して、表示ユニット4に、叩かれた位置に対応する表示位置に、叩かれた回数分の波紋模様を表示させる。この場合に、提示処理部18は、上記表示出力と共に、スピーカユニット9に、叩かれた回数分のノック音を音声出力させるようにしてもよい。端末操作コミュニケーションでは、操作を行う側の通信端末10とその操作内容が伝達される側の通信端末10とで、その操作内容を示す同様の出力が行われることが望ましい。
[0060] 更に、提示処理部18は、上述のようにコミュニケーションメディアデータを出力すると共に、種別要求情報が示すユーザ間コミュニケーション手段の種別をユーザに提示する画像やテキスト情報を出力するようにしてもよい。
[0061] 表示制御部12は、ユーザ間コミュニケーション手段の段階に応じて、所定の表示画面を表示ユニット4に表示させる。所定の表示画面の詳細については後述する。また、表示制御部12は、提示処理部18により表示出力が指示された場合に、表示対象のコミュニケーションメディアデータを表示するために表示画面を更新する。
[0062] 例えば、表示制御部12は、コミュニケーション開始時には、複数の通信相手候補を示す複数の表示要素が自通信端末10のユーザと各通信相手候補との関係に対応する位置及び形態で描画される表示画面(以降、開始画面と表記する)を表示させる。通信相手候補は、相手通信端末自体を示してもよいし、そのユーザを示してもよい。各通信相手候補を示す各表示要素は、画像であってもよいし、テキスト情報であってもよい。各表示要素の描画位置及び描画形態は、電話帳等に予め設定されている通信相手候補の関係情報(親族、友達、恋人、会社の同僚など)で決められてもよいし、ユーザ間コミュニケーションの頻度で決められてもよい。例えば、近しい間柄の通信相手候補ほど、その表示要素が画面中央に大きく表示され、疎遠な通信相手通信端末候補の表示要素は固められて画面の隅に小さく表示されるようにしてもよい。
[0063] 図6は、開始画面の例を示す図である。図6の例に示される開始画面GSでは、4つの通信相手候補を示す4つの表示要素GS1、GS2、GS3及びGS4が散在的に示されている。各表示要素は、通信相手候補の顔画像でそれぞれ形成される。また、表示要素GS4は、複数の通信相手候補を示す。通信端末10は、表示要素GS4がユーザにより選択されると、その表示要素GS4で示される複数の通信相手候補の各々を個別の表示要素にそれぞれ展開し表示するようにしてもよい。
[0064] 〔動作例〕
《通信方法》
まず、第1実施例における通信方法について図7A及び図7Bを用いて説明する。以下の説明では、通信端末10が当該通信方法の実行主体となるが、通信端末10に含まれる上述の各処理部が実行主体となってもよい。
[0065] 図7Aは、ユーザ間コミュニケーションを要求する側における、第1実施例の通信端末10の動作例を示すフローチャートである。ユーザ間コミュニケーションを要求する側である場合には、通信端末10は、次のように動作する。
[0066] 通信端末10は、図6の例に示されるような開始画面に対するユーザ操作を検出することにより、そのユーザ操作で選択された相手ユーザが利用する通信端末(相手通信端末)を特定する(S70)。そして、通信端末10は、その特定により取得される相手通信端末の特定情報に基づいて、その相手通信端末と自通信端末10との間で通信を確立する(S71)。
[0067] 続いて、通信端末10は、自通信端末10のモニタに表示される表示画面に対するユーザ操作を検出する(S72)。通信端末10は、タッチセンサ5から送られる接触情報又は近接情報を用いてそのユーザ操作を検出することができる。ここで検出されるユーザ操作は、ユーザ間コミュニケーションを終了させる操作(終了操作)、そのユーザが利用を望むユーザ間コミュニケーション手段の種別に対応する操作などである。但し、表示画面に対するユーザ操作自体の詳細については後述する。
[0068] 通信端末10は、終了操作を検出すると(S73;YES)、(S71)で確立された通信を切断する(S79)。これにより実行されていたユーザ間コミュニケーションも終了する。
[0069] 通信端末10は、ユーザ間コミュニケーション手段の種別に対するユーザ操作を検出すると(S72、S73;NO)、そのユーザ操作に対応するユーザ間コミュニケーション手段の種別が切り替え許可範囲内であるか否かを判定する(S74)。このとき、まだユーザ間コミュニケーションを開始していない場合には、通信端末10は、端末操作コミュニケーションのみを切り替え許可範囲に設定している。通信端末10は、そのユーザ操作に対応するユーザ間コミュニケーション手段の種別が切り替え許可範囲内にないと判定すると(S74;NO)、次のユーザ操作の検出を待つ。
[0070] 一方、通信端末10は、そのユーザ操作に対応するユーザ間コミュニケーション手段の種別が切り替え許可範囲内にあると判定すると(S74;YES)、そのユーザ間コミュニケーション手段の種別を特定する(S75)。まだユーザ間コミュニケーションを開始していない場合には、通信端末10は、端末操作コミュニケーションを特定する。そして、通信端末10は、その特定されたユーザ間コミュニケーション手段の種別を現ユーザ間コミュニケーション手段の種別に設定する。
[0071] 通信端末10は、その特定されたユーザ間コミュニケーション手段の種別に対応するコミュニケーションメディアデータを取得する(S76)。端末操作コミュニケーションが特定された場合、通信端末10は、端末操作情報を生成する。また、音声通話が特定された場合、通信端末10は、マイクロフォンユニット8から音声データを取得する。ビデオ通話が特定された場合、通信端末10は、当該音声データと共に、撮像ユニット7から動画データを取得する。ペイント通話が特定された場合、通信端末10は、音声データ及び動画データと共に、タッチセンサ5からペイント操作の軌跡情報を取得する。
[0072] 続いて、通信端末10は、(S75)で特定されたユーザ間コミュニケーション手段の種別を示す種別要求情報、及び、(S76)で取得されたコミュニケーションメディアデータを相手通信端末宛てに送信する(S77)。
[0073] 更に、通信端末10は、(S75)で更新された現ユーザ間コミュニケーション手段の種別と、(S77)での送信に対する相手通信端末からの返信の状況とに応じて、当該切り替え許可範囲を決定する(S78)。通信端末10は、切り替え許可範囲の決定後、次のユーザ操作の検出を待つ。例えば、通信端末10は、端末操作コミュニケーションを両方向状態で行った後であれば、現ユーザ間コミュニケーション手段よりも上位及び下位のユーザ間コミュニケーション手段の種別を切り替え許可範囲に決定する。一方、通信端末10は、端末操作コミュニケーションの利用について相手通信端末から返信を受けていない場合、切り替え許可範囲を音声通話及び音声通話よりも下位のユーザ間コミュニケーション手段の種別に決定する。
[0074] 図7Bは、ユーザ間コミュニケーションを要求される側における、第1実施例の通信端末10の動作例を示すフローチャートである。ユーザ間コミュニケーションを要求される側である場合、通信端末10は、次のように動作する。
[0075] 通信端末10は、図7Aの(S71)と同様に、相手通信端末との間で通信を確立する(S80)。ユーザ間コミュニケーションを要求される側となる場合、通信確立の要求の送信元が相手通信端末である。そして、通信端末10は、相手通信端末から、種別要求情報及びコミュニケーションメディアデータを受信する(S81)。これにより、通信端末10は、受信された種別要求情報により示される種別のユーザ間コミュニケーション手段の利用を相手通信端末から要求された状態となる。
[0076] 通信端末10は、受信された種別要求情報が示すユーザ間コミュニケーション手段の種別を表す表示要素を表示ユニット4のモニタに表示させる(S82)。更に、通信端末10は、受信された種別要求情報に対応する出力手法により、その受信されたコミュニケーションメディアデータを出力する(S83)。
[0077] このとき、通信端末10は、受信された種別要求情報が示すユーザ間コミュニケーション手段の種別に対応する、通信端末10のユーザのコミュニケーションメディアデータの取得処理を行っていない(停止させている)。これにより、通信端末10及び相手通信端末は、受信された種別要求情報が示す種別のユーザ間コミュニケーション手段が、相手通信端末からの一方向状態で実行される状態となる。
[0078] この状態で、通信端末10は、自通信端末10のモニタに表示される表示画面に対するユーザ操作を検出する(S84)。ここで検出されるユーザ操作は、ユーザ間コミュニケーションを終了させる操作(終了操作)、相手通信端末から要求されたユーザ間コミュニケーション手段の利用に合意(応答)する操作などである。但し、表示画面に対するユーザ操作自体の詳細については後述する。
[0079] 通信端末10は、終了操作を検出すると(S85;YES)、(S80)で確立された通信を切断する(S89)。これにより実行されていたユーザ間コミュニケーションも終了する。通信端末10は、検出されたユーザ操作が相手通信端末から要求されたユーザ間コミュニケーション手段の利用に応答する操作でない場合(S86;NO)、次のユーザ操作の検出を待つ。
[0080] 通信端末10は、相手通信端末から要求されたユーザ間コミュニケーション手段の利用に応答する操作を検出すると(S84、S85;NO、S86;YES)、そのユーザ間コミュニケーション手段の種別に対応する、通信端末10のユーザのコミュニケーションメディアデータの取得を開始する(S87)。このとき、例えば、通信端末10は、そのユーザ間コミュニケーション手段の種別に基づいて、マイクロフォンユニット8、撮像ユニット7等を起動させるようにしてもよい。
[0081] 通信端末10は、相手通信端末から要求されたユーザ間コミュニケーション手段の種別を示す種別要求情報、及び、(S87)で取得されたコミュニケーションメディアデータを相手通信端末宛てに送信する(S88)。これにより、通信端末10及び相手通信端末は、受信された種別要求情報が示す種別のユーザ間コミュニケーション手段が、相手通信端末からの一方向状態で実行される状態から、そのユーザ間コミュニケーション手段が両方向状態で実行される状態に移行する。
[0082] 《画面制御方法》
次に、第1実施例における画面制御方法について図8A、図8B、図8C及び図8Dを用いて説明する。図8A、図8B、図8C及び図8Dは、第1実施例の通信端末10において制御される表示画面の遷移を示す図である。以下、画面制御方法の実行主体を通信端末10として説明するが、当該実行主体は通信端末10の各処理部であってもよい。また、以下では、表示画面の遷移を、図7A及び図7Bで示される通信端末10の動作の各工程と適宜関連付けて説明する。
[0083] 以下の説明では、通信端末10が或る表示画面を表示ユニット4のモニタに表示させることを、通信端末10が或る表示画面を表示すると簡略化して表現する。また、通信端末10のユーザがユーザAと表記され、相手通信端末のユーザがユーザBと表記される。また、相手通信端末も第1実施例の通信端末10と同じ構成を持つと仮定する。
[0084] 図8Aは、端末操作コミュニケーションが利用される場合の表示画面の遷移を示す図である。まず、通信端末10は、通信端末10のユーザにユーザ間コミュニケーションの相手を選ばせるために、図6の例に示されるような開始画面GSを表示する。開始画面GSでは、上述したように、複数の通信相手候補を示す表示要素がユーザAと各通信相手候補との関係に対応する位置及び形態で描画される。
[0085] 通信端末10は、開始画面GSの中でユーザBを示す表示要素を選択するユーザAの操作(タップ操作)を検出する。これにより、通信端末10は、相手通信端末を特定することができ(S70)、更に、その相手通信端末との間で通信を確立することができる(S71)。この通信の確立に伴って、通信端末10は、コミュニケーション相手に選択されたユーザBを示す画像を含む表示画面G1-Aを表示し、相手通信端末は、ユーザAを示す画像を含む表示画面G1-Bを表示する。ユーザA及びBを示す各画像は、予め、通信端末10及び相手通信端末に保持されていてもよいし、通信により相互に交換されてもよい。但し、このままの状態では、ユーザA及びBは、未だ、ユーザ間コミュニケーションを行うことはできない。
[0086] 通信端末10は、端末操作コミュニケーションに対応するユーザAの操作を検出する(S72)。図8Aの例では、通信端末10は、ユーザAによる表示画面G1-Aを2回タップする操作を端末操作コミュニケーションに対応するユーザ操作として検出する。更に、通信端末10は、図8Aの例に示されるように、そのユーザ操作を視覚的に表すために、そのユーザ操作の行なわれた位置を中心とする波紋模様を表示する。このとき、端末操作コミュニケーションは、切り替え許可範囲内であるため(S74;YES)、通信端末10は、そのユーザ操作に応じて、端末操作コミュニケーションを特定する(S75)。なお、端末操作コミュニケーションに対応するユーザ操作は、2回タップする操作に制限されない。また、通信端末10は、端末操作コミュニケーション以外の種別に対応するユーザ操作が検出された場合、そのユーザ間コミュニケーション手段の種別が切り替え許可範囲内でないため(S74;NO)、そのユーザ操作を無視するようにしてもよい。続いて、通信端末10は、2回タップする操作を示す端末操作情報を生成し(S76)、端末操作コミュニケーションを示す種別要求情報とその端末操作情報とが相手通信端末宛てに送信する(S77)。
[0087] 相手通信端末は、種別要求情報及び端末操作情報を受信し(S81)、その端末操作情報で示されるユーザ操作に対応する波紋模様を通信端末10におけるユーザ操作位置に対応する位置に表示する(表示画面G1-B)(S82)。図8Aの例では、波紋模様の表示によりユーザ操作の内容が提示されたが、通信端末10は、そのユーザ操作の内容に対応する音声(2回のノック音)を出力してもよいし、振動を出力してもよい。このようにして、ユーザAによる通信端末10を2回タップする操作が伝達され、あたかもドアをノックする操作のように相手通信端末に出力される。
[0088] ユーザBは、ユーザAとの端末操作コミュニケーションを了承する場合、相手通信端末に対してユーザAと同様のユーザ操作を行えばよい。相手通信端末は、このユーザ操作を検出すると(S84)、上述の通信端末10と同様に、波紋模様を表示し(G2-B)、端末操作コミュニケーションを示す種別要求情報及び端末操作情報を通信端末10宛てに送信する(S88)。これにより、通信端末10は、表示画面G2-Aに示されるように、ユーザBの操作に対応する波紋模様を相手通信端末におけるユーザ操作位置に対応する位置に表示する。
[0089] 図8Aの例では、ユーザAによる2回のタップ操作が1度だけ通信端末10から相手通信端末に伝達されたが、ユーザAにより、端末操作コミュニケーションに対応するユーザ操作が複数回行われた場合には、そのユーザ操作が検出される度に、端末操作情報がそれぞれ伝達される。具体的には、2回のタップ操作が伝達された後、ユーザAにより異なる位置に5回のタップ操作が行われた場合、その5回のタップ操作が更に伝達及び出力される。また、上述の説明では、通信確立のタイミングは、開始画面GSで相手のユーザBが選択された際であったが、表示画面G1-Aにおいて最初に端末操作コミュニケーションに対応するユーザ操作が検出された際であってもよい。第1実施例では、通信確立タイミングは制限されない。
[0090] このような端末操作コミュニケーションは、個人情報を全く用いないため、ユーザ間コミュニケーションを開始させる第1ステージの手段には最適である。更に、端末操作コミュニケーションによれば、端末操作の位置や回数や速度等を伝達することができるため、詳細な情報を共有することは困難であるが、最低限の情報を共有することはできる。例えば、回数や速度により、緊急性やコミュニケーションを希望する程度を伝達することができる。
[0091] 図8Bは、音声通話が利用される場合の表示画面の遷移を示す図である。このとき、通信端末10及び相手通信端末は、図8Aで示されるように、既に、端末操作コミュニケーションを両方向状態で実行している。よって、例えば、通信端末10は、切り替え許可範囲を、音声通話、ビデオ通話及びペイント通話に決定している。
[0092] 通信端末10は、ユーザAによる表示画面G2-Aを1本指で長押しする操作(タッチ操作)を音声通話に対応するユーザ操作として検出する(S72)。通信端末10は、音声通話が切り替え許可範囲内であるため、音声通話を現ユーザ間コミュニケーション手段として特定し、音声通話を示す表示要素G31を表示する(表示画面G3-A)。更に、通信端末10は、マイクロフォンユニット8を起動し、マイクロフォンユニット8により集音されたユーザAの声を示す音声データをコミュニケーションメディアデータとして取得する(S76)。通信端末10は、音声通話を示す種別要求情報及び音声データを相手通信端末宛てに送信する(S77)。
[0093] 相手通信端末は、種別要求情報及び音声データを受信し(S81)、通信端末10と同様の、音声通話を示す表示要素G32を表示すると共に(表示画面G3-B)、受信された音声データに基づいて、ユーザAの音声をスピーカユニット9から出力する(S82、S83)。表示要素G32の表示及びユーザAの音声出力により、ユーザBは、ユーザAが音声通話を要求していることを知ることができる。但し、このとき、未だ、相手通信端末は、ユーザBの音声データの取得処理を停止させている。よって、この段階では、ユーザAの音声のみが相手通信端末から出力されており、ユーザBの音声は通信端末10へ伝達されていない。
[0094] ユーザBは、ユーザAと両方向状態で音声通話を行うことを了承する場合、相手通信端末に表示される表示要素G32に対してユーザAと同様のユーザ操作を行えばよい。相手通信端末は、そのユーザ操作を検出すると(S84)、ユーザBの音声データの取得処理を開始する(S87)。そして、相手通信端末は、音声通話を示す種別要求情報及び取得された音声データを通信端末10宛てに送信する(S88)。これにより、通信端末10は、受信された音声データに基づいて、ユーザBの音声をスピーカユニット9から出力する。このとき、通信端末10は、表示画面G4-A及びG4-Bに示されるように、音声通話が両方向状態で実行されたことを示すように表示要素G31及びG32を変化(変色、変形など)させてもよい。」

イ 「[0111] [第2実施例]
第2実施例では、ユーザ間コミュニケーション手段の切り替えに関し、第1実施例とは異なるユーザインタフェースが提供される。以下、第2実施例における通信端末10について、第1実施例と異なる内容を中心に説明する。以下の説明では、第1実施例と同様の内容については適宜省略される。
[0112] 〔装置構成及び処理構成〕
第2実施例における通信端末10の装置構成(図3参照)及び処理構成(図5参照)は、第1実施例と同様である。
[0113] 表示制御部12は、自通信端末10のユーザと、コミュニケーション相手として選択された他のユーザとを示す各表示要素がそれぞれ描画される表示画面を表示ユニット4のモニタに表示させる。更に、表示制御部12は、受信部17により受信された種別要求情報に基づいて、表示画面に含まれる自通信端末10のユーザを示す表示要素と相手通信端末のユーザを示す表示要素との間の位置関係を変更する。このような第2実施例における表示画面自体の詳細については後述する。また、第2実施例では、各ユーザを示す表示要素自体は制限されない。
[0114] 操作検出部13は、表示画面に含まれる自通信端末10のユーザを示す表示要素と他のユーザを示す表示要素との間の距離を変更するユーザ操作を検出する。この検出されるユーザ操作には、表示要素間を近づける操作、表示要素間を引き離す操作などが含まれる。
[0115] 操作検出部13が上述のように表示要素間の距離を変更するユーザ操作を検出した場合、種別特定部14は、その距離の変化に応じて、自通信端末10のユーザと他のユーザとの間で実行されている現ユーザ間コミュニケーション手段の種別とは異なる他のユーザ間コミュニケーション手段の種別を特定する、又は、現ユーザ間コミュニケーション手段の実行の停止を決定する。例えば、種別特定部14は、各ユーザの表示要素間を接近させるユーザ操作が検出された場合、現ユーザ間コミュニケーション手段よりもプライベート性がより高いユーザ間コミュニケーション手段を特定する。逆に、種別特定部14は、各ユーザの表示要素間を引き離すユーザ操作が検出された場合、現ユーザ間コミュニケーション手段よりもプライベート性がより低いユーザ間コミュニケーション手段を特定する、又は、現ユーザ間コミュニケーション手段の実行の停止を決定する。また、種別特定部14は、両方向状態で或るユーザ間コミュニケーション手段が実行されている場合に、各ユーザの表示要素間を引き離すユーザ操作が検出された場合、そのユーザ間コミュニケーション手段を片方向状態で実行する状態に遷移するようにしてもよい。例えば、種別特定部14は、両方向状態で音声通話が実行されている場合、音声データの取得処理及び送信処理を停止し、相手通信端末のユーザの音声の出力のみを行うようにしてもよい。
[0116] 〔動作例〕
《通信方法》
第2実施例における通信方法は、図7A及び図7Bに示されるような第1実施例と同様である。例えば、上述のような表示要素間の距離を変更するユーザ操作は、図7Aの(S72)で検出され、新たなユーザ間コミュニケーション手段の特定は、図7Aの(S75)で行われる。また、表示要素間の表示位置の変更は、図7Bの(S82)で実行される。
[0117] 《画面制御方法》
以下、第2実施例における画面制御方法について図9A、図9B及び図10を用いて説明する。図9A、図9B及び図10は、第2実施例の通信端末10において制御される表示画面の遷移を示す図である。以下、画面制御方法の実行主体を通信端末10として説明するが、当該実行主体は通信端末10の各処理部であってもよい。また、以下では、表示画面の遷移を、図7A及び図7Bで示される通信端末10の動作の各工程と適宜関連付けて説明する。
[0118] 図9Aは、第2実施例における、音声通話が利用される場合の表示画面の遷移を示す図である。このとき、通信端末10及び相手通信端末は、図8Aで示されるように、既に、端末操作コミュニケーションを両方向状態で実行しており、切り替え許可範囲を、音声通話、ビデオ通話及びペイント通話に決定していると仮定する。第1実施例と同様に、通信端末10は表示画面G3-Aを表示し、相手通信端末は表示画面G3-Bを表示する。
[0119] 相手通信端末は、ユーザBによる表示画面G3-Bの表示要素G32を1本指で長押しする操作(タッチ操作)を音声通話に対応するユーザ操作として検出する(S84)。相手通信端末は、そのユーザ操作を検出すると(S84)、ユーザBの音声データの取得を開始すると共に(S87)、図9Aに示されるような表示画面G4-B2を表示する。表示画面G4-B2では、コミュニケーション相手となるユーザAを示す表示要素G42と、相手通信端末のユーザBを示す表示要素G43とが所定の距離離れて表示される。また、マイクを表す表示要素G41が、ユーザBを示す表示要素G43の近くに表示される。この表示要素G41により、相手と自分との区別が付きやすくなる。
[0120] 一方、通信端末10は、相手通信端末から送られた音声データに基づいて、ユーザBの音声をスピーカユニット9から出力する。このとき、通信端末10は、表示画面G4-A2を表示する。表示画面G4-A2においても、表示画面G4-B2と同様に、コミュニケーション相手となるユーザBを示す表示要素G44と、通信端末10のユーザAを示す表示要素G45とが所定の距離離れて表示される。更に、マイクを表す表示要素G41が、ユーザAを示す表示要素G45の近くに表示される。
[0121] 図9Bは、第2実施例における、ビデオ通話が利用される場合の表示画面の遷移を示す図である。このとき、例えば、通信端末10は、切り替え許可範囲を、音声通話、ビデオ通話及びペイント通話に決定している。
[0122] 通信端末10は、表示画面G5-A2における、自通信端末10のユーザAを示す表示要素G51をユーザBを示す表示要素G52に近づける操作(ドラッグ操作)をビデオ通話に対応するユーザ操作として検出する(S72)。図9Bの例では、表示要素G51及びG52が上下方向に離れて表示されているため、表示要素G51が上方に引き上げられる操作が検出される。
[0123] 通信端末10は、ビデオ通話が切り替え許可範囲内であるため、ビデオ通話を現ユーザ間コミュニケーション手段として特定し、撮像ユニット7により撮像された動画を示す動画データ及び音声データをコミュニケーションメディアデータとして取得する(S76)。このとき、通信端末10は、撮像ユニット7により撮像された動画をユーザAを示す表示要素G51内に表示させる。これにより、表示画面G5-A2によれば、ユーザAを示す表示要素G51には動画が表示され、ユーザBを示す表示要素G52には静止画が表示されるため、通信端末10は、ユーザAに、ビデオ通話の片方向状態であることを容易に把握させることができる。
[0124] 相手通信端末は、ビデオ通話を示す種別要求情報、音声データ及び動画データを受信し(S81)、ユーザAの動画及び音声を出力する(S82)。このとき、相手通信端末は、表示画面G5-B2において、コミュニケーション相手のユーザAを示す表示要素G53を、ユーザBを示す表示要素G54に近づけると共に、その表示要素G53内にユーザAの動画を表示する。これにより、表示画面G5-B2によれば、ユーザAを示す表示要素G53には動画が表示され、ユーザBを示す表示要素G54には静止画が表示されるため、相手通信端末は、ユーザBに、コミュニケーション相手から、ビデオ通話の利用が要求されたことを容易に把握させることができる。
[0125] ユーザBは、ユーザAと両方向状態でビデオ通話を行うことを了承する場合、相手通信端末に表示される自身の表示要素G54を、ユーザAを示す表示要素G53に近づけるユーザ操作を行えばよい。相手通信端末は、そのユーザ操作を検出すると(S84)、音声データ及び動画データの取得を開始すると共に(S87)、撮像ユニット7により撮像された動画をユーザBを示す表示要素G54内に表示させる(表示画面G5-B3及びG6-B2)。これにより、表示要素G53にはユーザAの動画が表示され、表示要素G54にはユーザBの動画が表示されるため、相手通信端末は、ユーザBに、ビデオ通話の両方状態が開始されたことを容易に把握させることができる。
[0126] このとき、通信端末10は、ユーザBの音声を出力すると共に、表示画面G6-A2において、ユーザBを示す表示要素G55を、ユーザAを示す表示要素G56に近づけ、かつ、ユーザBを示す表示要素G55内にユーザBの動画を表示する。
[0127] 図10は、第2実施例における、両方向状態でビデオ通話が利用される場合の表示画面の遷移を示す図である。第2実施例における通信端末10は、ビデオ通話において動画の表示領域の拡大又は縮小の操作を相手通信端末に伝達することもできる。まず、表示画面G6-A2及びG6-B2に示されるように、通信端末10及び相手通信端末において、両方向状態でビデオ通話が利用されている場合が想定される。
[0128] 相手通信端末は、ユーザBによるユーザB自身を示す表示要素G58を拡大する操作(ピンチアウト操作)を検出すると、表示要素G58を拡大表示する(表示要素G59)。相手通信端末は、その拡大操作が行われたことを示す情報と、拡大後の大きさを示すリサイズ情報とを通信端末10に送信する。
[0129] これにより、通信端末10は、ユーザBを示す表示要素G55を、受信されたリサイズ情報が示すサイズに拡大表示する(表示要素G60)。このような制御は、通信端末10から相手通信端末に対しても同様に実行される。更に、ユーザを示す表示要素を縮小する操作についても同様に実行される。
[0130] 更に、通信端末10は、ユーザAによる、ユーザA自身を示す表示要素G56を、ユーザBを示す表示要素G60から引き離す操作を検出すると、ユーザAとユーザBとの間のユーザ間コミュニケーションを終了させる。ここで検出されるユーザ操作は、図7Aに示される終了操作の検出(S73)又は図7Bに示される終了操作の検出(S85)に相当する。また、通信端末10は、上記ユーザ操作の検出により、ユーザ間コミュニケーションの終了ではなく、現ユーザ間コミュニケーション手段よりも下位のユーザ間コミュニケーション手段への切り替えを行うようにしてもよい。図10の例では、通信端末10は、ビデオ通話より1段下位の音声通話に切り換えるようにしてもよい。」



ウ 図7A

エ 図7B

オ 図8B



カ 図9B

キ 図10

上記イの第2実施例は、ユーザ間コミュニケーション手段の切り替えに関するもの([0111])であり、そのうち[0121]-[0126]、図9Bは、第2実施例における、ビデオ通話が利用される場合について記載され、[0127]-[0130]、図10には、第2実施例における、両方向状態でビデオ通話が利用される場合について記載されている。そして、図9Bと図10とは表示画面「G6-A2」及び「G6-B2」が共通するから、前記ビデオ通話が利用される場合及び両方向状態でビデオ通話が利用される場合は、一連の実施例であるといえ、この一連の実施例、すなわち、通信端末10と相手通信端末との通信方法について、以下の事項が記載されているといえる。

A 通信端末10は、切り替え許可範囲を、音声通話、ビデオ通話及びペイント通話に決定しており([0121])、
B 通信端末10は、表示画面G5-A2における、自通信端末10のユーザAを示す表示要素G51をユーザBを示す表示要素52に近づける操作(ドラッグ操作)をビデオ通話に対応するユーザ操作として検出し(S72)([0122])、
C 通信端末10は、ビデオ通話が切り替え許可範囲内であるため、ビデオ通話を現ユーザ間コミュニケーション手段として特定し、撮像ユニット7により撮像された動画を示す動画データ及び音声データをコミュニケーションメディアデータとして取得し(S76)([0123])、
D 相手通信端末は、ビデオ通話を示す種別要求情報、音声データ及び動画データを受信し(S81)、ユーザAの動画及び音声を出力し(S82)、このとき、相手通信端末は、表示画面G5-B2において、その表示要素G53内にユーザAの動画を表示し([0124])、
E ユーザBは、ユーザAと両方向状態でビデオ通話を行うことを了承する場合、相手通信端末に表示される自身の表示要素G54を、ユーザAを示す表示要素G53に近づけるユーザ操作を行い、相手通信端末は、そのユーザ操作を検出すると(S84)、音声データ及び動データの取得を開始すると共に(S87)、撮像ユニット7により撮像された動画をユーザBを示す表示要素G54内に表示させ([0125])、このとき、通信端末10は、ユーザBの音声を出力するとともに、表示画面G6-A2において、ユーザBを示す表示要素G55内にユーザBの動画を表示し([0126])、
F 更に、通信端末10は、ユーザAによる、ユーザA自身を示す表示要素G56を、ユーザBを示す表示要素G60から引き離す操作を検出すると、ビデオ通話より1段下位の音声通話に切り換える([0130])こと。

ここで、引用文献には、「以下の説明では、第1実施例と同様の内容については適宜省略される。」([0111])及び「第2実施例における通信方法は、図7A及び図7Bに示されるような第1実施例と同様である。」([0116])と記載されているから、上記アの第1実施例の記載を参照すると、上記A、D及びEに関する下記A’、D’及びE’の事項は、引用文献に記載されているに等しい事項といえる。

A’ 上記Aの、「通信端末10は、切り替え許可範囲を、音声通話、ビデオ通話及びペイント通話に決定して」いることは、[0046]、[0047]及び[0119]の記載からみて、通信端末10は、相手通信端末と端末操作コミュニケーションを両方向状態で行うように制御し、前記端末操作コミュニケーションを両方向で行っている場合のことである。
そして、「端末操作コミュニケーションを両方向状態で行っている」場合には、[0039]、[0086]、[0088]及び[0089]の記載から、端末操作情報を送り合っているといえる。
そうすると、図9Bのビデオ通話が利用される場合のフローは、「通信端末10は、相手通信端末と端末操作コミュニケーションを両方向状態で行うように制御し、前記端末操作コミュニケーションにおいて、端末操作情報を送り合って」いる状態からビデオ通話に切り替えるものといえる。

D’ 上記Dの「相手通信端末は、ビデオ通話を示す種別要求情報、音声データ及び動画データを受信し(S81)」が、[0072]、図7Aの(S77)の記載からみて、通信端末10がビデオ通話を示す種別要求情報、音声データ及び動画データを相手通信端末宛てに送信する(S77)ことに伴う事項である。

E’ 上記Eの「通信端末10は、ユーザBの音声を出力するとともに、表示画面G6-A2において、ユーザBを示す表示要素G55内にユーザBの動画を表示し」が、[0081]、図7Bの(S88)の記載からみて、通信端末10が相手通信端末からビデオ通話を示す種別要求情報、音声データ及び動画データを受信することに伴う事項である。

さらに、第2実施例の通信端末10の種別特定部14は、「各ユーザの表示要素間を接近させるユーザ操作が検出された場合、現ユーザ間コミュニケーション手段よりもプライベート性がより高いユーザ間コミュニケーション手段を特定する。逆に、種別特定部14は、各ユーザの表示要素間を引き離すユーザ操作が検出された場合、現ユーザ間コミュニケーション手段よりもプライベート性がより低いユーザ間コミュニケーション手段を特定する」([0115])ものであり、第1実施例についての「各ユーザ間コミュニケーション手段のプライベート性のレベルは、端末操作コミュニケーション、音声通話、ビデオ通話、ペイント通話の順に高くなるように設定され」([0038])ている。

以上より、引用文献には、通信装置10の通信方法について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「通信端末10は、相手通信端末と端末操作コミュニケーションを両方向状態で行うように制御し、前記端末操作コミュニケーションにおいて、端末操作情報を送り合っており、
通信端末10は、表示画面G5-A2における、自通信端末10のユーザAを示す表示要素G51をユーザBを示す表示要素52に近づける操作(ドラッグ操作)をビデオ通話に対応するユーザ操作として検出し(S72)、
通信端末10は、ビデオ通話が切り替え許可範囲内であるため、ビデオ通話を現ユーザ間コミュニケーション手段として特定し、撮像ユニット7により撮像された動画を示す動画データ及び音声データをコミュニケーションメディアデータとして取得し(S76)、
通信端末10は、ビデオ通話を示す種別要求情報、音声データ及び動画データを相手通信端末宛てに送信し(S77)、
相手通信端末は、ビデオ通話を示す種別要求情報、音声データ及び動画データを受信し(S81)、ユーザAの動画及び音声を出力し(S82)、このとき、相手通信端末は、表示画面G5-B2において、その表示要素G53内にユーザAの動画を表示し、
ユーザBは、ユーザAと両方向状態でビデオ通話を行うことを了承する場合、相手通信端末に表示される自身の表示要素G54を、ユーザAを示す表示要素G53に近づけるユーザ操作を行い、相手通信端末は、そのユーザ操作を検出すると(S84)、音声データ及び動データの取得を開始すると共に(S87)、撮像ユニット7により撮像された動画をユーザBを示す表示要素G54内に表示させ、
このとき、通信端末10は、相手通信端末からビデオ通話を示す種別要求情報、音声データ及び動画データを受信し、ユーザBの音声を出力するとともに、表示画面G6-A2において、ユーザBを示す表示要素G55内にユーザBの動画を表示し、
更に、通信端末10は、ユーザAによる、ユーザA自身を示す表示要素G56を、ユーザBを示す表示要素G60から引き離す操作を検出すると、ビデオ通話より1段下位の音声通話に切り換えるものであり、
各ユーザの表示要素間を接近させるユーザ操作が検出された場合、現ユーザ間コミュニケーション手段よりもプライベート性がより高いユーザ間コミュニケーション手段を特定し、逆に、各ユーザの表示要素間を引き離すユーザ操作が検出された場合、現ユーザ間コミュニケーション手段よりもプライベート性がより低いユーザ間コミュニケーション手段を特定するものであり、
各ユーザ間コミュニケーション手段のプライベート性のレベルは、端末操作コミュニケーション、音声通話、ビデオ通話、ペイント通話の順に高くなるように設定されている、
通信端末10の通信方法。」

(3)本件補正発明と引用発明の対比
本件補正発明と引用発明を対比する。

ア 引用発明の「通信端末10」及び「相手通信端末」は、それぞれ本件補正発明の「第1電子装置」及び「第2電子装置」に相当する。

イ 引用発明の「端末操作コミュニケーションを両方向状態で行うこと」は本件補正発明の「第1通信状態」に対応し、引用発明の「送り合う」ことは本件補正発明の「インタラクションを行う」ことに相当する。そうすると、引用発明の「通信端末10は、相手通信端末と端末操作コミュニケーションを両方向状態で行うように制御し、前記端末操作コミュニケーションにおいて、端末操作情報を送り合って」いることと、本件補正発明の「前記第1電子装置を第1通信状態にするように制御し、前記第1通信状態において、前記第1電子装置は、少なくとも一つの第2電子装置と音声データのインタラクションを行うこと」とは、「前記第1電子装置を第1通信状態にするように制御し、前記第1通信状態において、前記第1電子装置は、少なくとも一つの第2電子装置と所定のデータのインタラクションを行うこと」の点で共通する。

ウ 引用発明の「表示画面G5-A2における、自通信端末10のユーザAを示す表示要素G51をユーザBを示す表示要素52に近づける操作(ドラッグ操作)」は、本件補正発明の「第1操作」に相当する。
また、引用発明の「動画データ」、「ビデオ通話」及び「ビデオ通話を示す種別要求情報」は、それぞれ本件補正発明の「ビデオフレーム」、「第2通信状態」及び「ビデオフレームのシェア要求」に相当する。
そして、引用発明の通信端末10が、「ビデオ通話を示す種別要求情報」「及び動画データを相手通信端末宛てに送信」することは、本願補正発明の「前記少なくとも一つの第2電子装置にビデオフレームのシェア要求を送信」すること、及び、「少なくとも一つの第2電子装置と前記第1電子装置の送信するビデオフレームをシェア」することに相当し、引用発明の相手通信端末が、「動画データを受信し」、「表示画面G5-B2において、その表示要素G53内にユーザAの動画を表示」することは、本願補正発明の「前記少なくとも一つのビデオフレームを受信して表示すること」に相当する。
そうすると、引用発明の「通信端末10は、表示画面G5-A2における、自通信端末10のユーザAを示す表示要素G51をユーザBを示す表示要素52に近づける操作(ドラッグ操作)をビデオ通話に対応するユーザ操作として検出し(S72)、
通信端末10は、ビデオ通話が切り替え許可範囲内であるため、ビデオ通話を現ユーザ間コミュニケーション手段として特定し、撮像ユニット7により撮像された動画を示す動画データ及び音声データをコミュニケーションメディアデータとして取得し(S76)、
通信端末10は、ビデオ通話を示す種別要求情報、音声データ及び動画データを相手通信端末宛てに送信し(S77)、
相手通信端末は、ビデオ通話を示す種別要求情報、音声データ及び動画データを受信し(S81)、ユーザAの動画及び音声を出力し(S82)、このとき、相手通信端末は、表示画面G5-B2において、その表示要素G53内にユーザAの動画を表示し、」は、本件補正発明の「第1操作に応答して、前記少なくとも一つの第2電子装置にビデオフレームのシェア要求を送信し、第1通信状態から第2通信状態に切り替えるように前記第1電子装置を制御し、前記第2通信状態において、前記少なくとも一つの第2電子装置との音声データのインタラクションを保持し、かつ少なくとも一つの第2電子装置と前記第1電子装置の送信するビデオフレームをシェアして、前記少なくとも一つの第2電子装置に前記ビデオフレームを表示するようにすること」とは、「第1操作に応答して、前記少なくとも一つの第2電子装置にビデオフレームのシェア要求を送信し、第1通信状態から第2通信状態に切り替えるように前記第1電子装置を制御し、前記第2通信状態において、少なくとも一つの第2電子装置と前記第1電子装置の送信するビデオフレームをシェアして、前記少なくとも一つの第2電子装置に前記ビデオフレームを表示するようにすること」で、共通する。

エ 引用発明の通信端末10が、「相手通信端末からビデオ通話を示す種別要求情報」「及び動画データを受信し、」「表示画面G6-A2において、ユーザBを示す表示要素G55内にユーザBの動画を表示」することは、本願補正発明の「前記第1電子装置が前記少なくとも一つの第2電子装置からビデオフレームのシェア要求を受信するときに、前記少なくとも一つの第2電子装置より送信された少なくとも一つのビデオフレームを受信して表示すること」に相当する。

オ 引用発明の「ユーザAによる、ユーザA自身を示す表示要素G56を、ユーザBを示す表示要素G60から引き離す操作」は、本件補正発明の「第2操作」に相当する。
そうすると、引用発明の「通信端末10は、ユーザAによる、ユーザA自身を示す表示要素G56を、ユーザBを示す表示要素G60から引き離す操作を検出すると、ビデオ通話より1段下位の音声通話に切り換える」ことと、本件補正発明の「第2操作に応答して、前記第2通信状態から第1通信状態に切り替えるように前記第1電子装置を制御すること」とは、「第2操作に応答して、前記第2通信状態から所定の通信状態に切り替えるように前記第1電子装置を制御すること」である点で共通する。

カ 引用発明の「通信端末10の通信方法」は、本件補正発明の「通信処理方法であって、第1電子装置に適用され」るといえる。

上記アないしカより、本件補正発明と引用発明とは以下の点で一致し、また相違する。

<一致点>
「通信処理方法であって、第1電子装置に適用され、
前記第1電子装置を第1通信状態にするように制御し、前記第1通信状態において、前記第1電子装置は、少なくとも一つの第2電子装置と所定のデータのインタラクションを行うことと、
第1操作に応答して、前記少なくとも一つの第2電子装置にビデオフレームのシェア要求を送信し、第1通信状態から第2通信状態に切り替えるように前記第1電子装置を制御し、前記第2通信状態において、少なくとも一つの第2電子装置と前記第1電子装置の送信するビデオフレームをシェアして、前記少なくとも一つの第2電子装置に前記ビデオフレームを表示するようにすることと、
前記第1電子装置が前記少なくとも一つの第2電子装置からビデオフレームのシェア要求を受信するときに、前記少なくとも一つの第2電子装置より送信された少なくとも一つのビデオフレームを受信して表示することと、
第2操作に応答して、前記第2通信状態から所定の通信状態に切り替えるように前記第1電子装置を制御することと、
を含む、前記通信処理方法。」

<相違点1>
第1通信状態において、本件補正発明では「音声データのインタラクションを行う」ものであるのに対し、引用発明は「端末操作情報を送り合」うものである点。
これに伴い、本件補正発明では、第1通信状態から切り替えた第2通信状態において、「音声データのインタラクションを保持」するのに対し、引用発明では、前記第1通信状態が「音声データのインタラクションを行う」ものでないから「音声データのインタラクションを保持」するものではない点。

<相違点2>
本件補正発明では、「第2操作に応答して、前記第2通信状態から第1通信状態に切り替える」のに対し、引用発明では、第2操作に応答して、ビデオ通話(第2通信状態)から、音声通話に切り替える点。

(4)判断
相違点1及び2についてまとめて検討する。
引用文献には、図4、[0039]、上記アの音声通話が利用される場合([0091]-[0094]、図8B)及び上記イの音声通話が利用される場合([0118]-[0120]、図9A)に関し、「通信端末10は、相手通信端末と音声通話を両方向状態で行い、音声データを送り合うこと。」(以下「引用文献記載事項」という。)が記載されている。ここで、引用文献記載事項の「相手通信端末と音声通話を両方向状態で行い、音声データを送り合う」ことは、本件補正発明の「第1通信状態において、前記第1電子装置は、少なくとも一つの第2電子装置と音声データのインタラクションを行うこと」に相当する。

ここで、引用発明は、
「各ユーザの表示要素間を接近させるユーザ操作が検出された場合、現ユーザ間コミュニケーション手段よりもプライベート性がより高いユーザ間コミュニケーション手段を特定し、逆に、各ユーザの表示要素間を引き離すユーザ操作が検出された場合、現ユーザ間コミュニケーション手段よりもプライベート性がより低いユーザ間コミュニケーション手段を特定するものであり、
各ユーザ間コミュニケーション手段のプライベート性のレベルは、端末操作コミュニケーション、音声通話、ビデオ通話、ペイント通話の順に高くなるように設定され」
るものであるから、通信端末10を、音声通話の状態で各ユーザの表示要素間を接近させるユーザ操作が検出された場合にビデオ通話を特定し、該ビデオ通話の状態で各ユーザの表示要素間を引き離すユーザ操作が検出された場合に前記音声通話を特定することは、引用発明が想定する範囲内の事項である。

したがって、引用発明において、引用文献記載事項を採用して、「音声通話を両方向状態で行う」状態(第1通信状態)から、「表示画面G5-A2における、自通信端末10のユーザAを示す表示要素G51をユーザBを示す表示要素52に近づける操作(ドラッグ操作)」(第1操作)に応答して音声通話よりプライベート性の高いビデオ通話(第2通信状態)に切り替え、さらに、「ユーザAによる、ユーザA自身を示す表示要素G56を、ユーザBを示す表示要素G60から引き離す操作」(第2操作)に応答して、ビデオ通話よりプライベート性の低い前記「音声通話を両方向状態で行う」状態(第1通信状態)に切り替えるようにすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
ここで、音声データを送り合う音声通話から、音声データ及び動画データを相手通信端末宛てに送信するビデオ通話に切り替えるときに、プライベート性のレベルを考慮すれば通信端末10が相手通信端末からの音声データの受信をしない理由はないから、相手通信端末との間で音声データを送り合う状態を維持することは、当業者が適宜になし得ることである。

したがって、本件補正発明は、引用文献と引用文献記載事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができない。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和1年11月15日にされた手続補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成31年2月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前に、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない、というものを含むものである

引用文献:国際公開第2014/168030号

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項及び引用発明は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比、判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から「第1操作に応答して、前記少なくとも一つの第2電子装置にビデオフレームのシェア要求を送信し、第1通信状態から第2通信状態に切り替えるように前記第1電子装置を制御し、前記第2通信状態において、前記少なくとも一つの第2電子装置との音声データのインタラクションを保持し、かつ少なくとも一つの第2電子装置と前記第1電子装置の送信するビデオフレームをシェアして、前記少なくとも一つの第2電子装置に前記ビデオフレームを表示するようにすること」及び「前記第1電子装置が前記少なくとも一つの第2電子装置からビデオフレームのシェア要求を受信するときに、前記少なくとも一つの第2電子装置より送信された少なくとも一つのビデオフレームを受信して表示すること」の下線部の限定事項を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-06-30 
結審通知日 2020-07-07 
審決日 2020-07-21 
出願番号 特願2017-556135(P2017-556135)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 寺谷 大亮  
特許庁審判長 吉田 隆之
特許庁審判官 中野 浩昌
岡本 正紀
発明の名称 通信処理方法及び電子装置  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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