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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1369419
審判番号 不服2020-3326  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-10 
確定日 2020-12-10 
事件の表示 特願2016-72548号「泡噴出容器」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月5日出願公開、特開2017-178433号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月31日の出願であって、令和元年12月2日付けで拒絶査定がされた。これに対し、令和2年3月10日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


第2 本願発明について
1 本願発明
特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明は、令和元年9月20日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち、請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものであると認める。

「可撓性を有する胴部を備え、内部が内容物の収容空間となる容器本体と、
前記容器本体の口部に装着されるキャップ部とノズルとを備えたノズルキャップと、
前記ノズルに連なる混合室を内部に備えるとともに該混合室を前記収容空間に連ねる空気導入孔および内容物導入孔を底部に備える区画筒体と、
前記混合室と前記ノズルとの間に設けられ、前記混合室に導入された内容物と空気とを混合し発泡させる発泡部材と、
該発泡部材と前記ノズルとの間に設けられ、前記ノズルから前記発泡部材への内容物の流れを阻止するとともに前記発泡部材から前記ノズルへの内容物の流れを許容する第1逆止弁と、
前記区画筒体の外側に設けられ、前記ノズルを前記収容空間に連ねる戻し流路と、
前記戻し流路に設けられ、前記収容空間から前記戻し流路を通した前記ノズルの側への内容物の流れを阻止するとともに前記ノズルから前記戻し流路を通した前記収容空間への内容物の流れを許容する第2逆止弁と、
前記ノズルの内部に設けられ、前記第1逆止弁を通過した内容物を整泡させる整泡部材と
を備えることを特徴とする泡噴出容器。」

2 引用文献
(1) 引用文献1
令和元年7月11日付けで通知した拒絶理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2012-246040号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
(ア)「【請求項1】
収納する液体(L)を泡状にして吐出する注出容器であって、前記液体(L)を収納する容器本体(1)と該容器本体(1)の口筒部(2)に装着されるキャップ体(11)を有し、前記容器本体(1)はスクイズ操作可能に可撓性を有し、
前記キャップ体の頂壁(12)には吐出口(16)に連通する管状流路(P)を形成する管状部(15)を配設し、該管状部(15)の上流側端部に前記液体(L)の発泡機構(K)を配設し、該管状部(15)の周壁の、前記発泡機構(K)より下流側の所定の位置に吸気孔(17)を開設し、該吸気孔(17)に逆止弁を配設し、前記吸気孔(17)により、吐出口(16)と容器本体(1)の内部を連通する構成としたことを特徴とする注出容器。」

(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体のスクイズ性を利用して内容液を発泡状にして注出する注出容器に関するものである。」

(ウ)「【0020】
以下、本発明の実施の形態を実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1?図3は本発明による注出容器の第1実施例を示すものであり、図1は部分的に縦断した側面図、図2は容器の部材であるキャップ体11の平面図、図3は容器の部材である発泡部21の平面図である。
この注出容器は、ブロー成形による容器本体1、この容器本体1の口筒部2に組付き固定されるキャップ体11、このキャップ体11の下端部に組付き固定される発泡部21、円筒体の上端にネットを取り付けたメッシュ部材31、ディップチューブと称される吸引チューブ32の計4ケの部材から構成されている。
なお、図3では発泡部21の形状がわかり易いように、空間以外の部分を黒く塗り潰すようにしている。
【0021】
本実施例では、容器本体1は高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂製で、円筒状の胴部4の上端に肩部を介して口筒部2を起立設したブロー成形による壜体であり、胴部4は手によってスクイズ操作ができるように可撓性を有すると共に、押圧力を解除した際には弾性的に元の形状に復元できるものである。
【0022】
キャップ体11は低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂製の射出成形品で、全体としては有頂円筒状であり、容器本体1の口筒部2に螺合組付きする螺合筒13を有し、この螺合筒13の内側には、口筒部2に嵌入するシール筒14が配設されている。
また、頂壁12にはL字状に管状部15が配設されており、この管状部15により後述する泡状液体FLの吐出口16に至る管状流路Pが形成されている。
ここで、L字状の管状部15のうち、水平に延設される部分を水平部15a、鉛直、すなわち容器本体1の軸方向に延設される部分を鉛直部15bとする。
そして、本実施例では上記した管状部15の水平部15aの周壁の、下端部の容器本体1の内部に連通する位置に吸引孔17が形成されている。
【0023】
発泡部21はLDPE樹脂製の射出成形品で全体としては筒状の形状をしており、管状部15の上流側端部に相当する鉛直部15bに外嵌する嵌合筒片22を有し、この嵌合筒片22の外側に外鍔状の底壁22aを介して外筒片23が配設され、さらにこの外筒片23の上端から外鍔状に薄肉リング状の弁体24が連設されている。また、嵌合筒片22の内周壁にはメッシュ部材31の上下方向の位置決めをするための係止突条28が周設されている。
ここで、図3(a)は図1の容器の発泡部21に吸引チューブ32を嵌入した状態の要部を縦断して示す斜視図であり、(b)は(a)中で通気孔26の形成されていない部分を縦断して示す斜視図で、これら図3(a)、(b)に示されているように、係止突条28の内側に垂下筒片27が垂下延設されており、さらにこの係止突条28の前後方向の2箇所の周壁を切除して前後一対の通気孔26が形成されている。
【0024】
そして、次のような手順で上記説明した4ケの部材を組付け固定し、図1に示すような組立て状態とする。
1)メッシュ部材31を発泡部21の嵌合筒片22に嵌入し、係止突条28の上に載置する。
2)吸引チューブ32の上端を発泡部21の垂下筒片27に嵌入する。
3)キャップ体11の管状部15の鉛直部15bを発泡部21の嵌合筒片22の上端部に嵌入して、キャップ体11と発泡部21を組付ける。
4)キャップ体11の螺合筒13を容器本体1の口筒部2に螺合し、キャップ体11を容器本体1に組付け固定する。
【0025】
そして、図1に示すような組立て状態では、発泡部21の弁体24が逆止弁としての機能を発揮するようにキャップ体11の吸気孔17を塞ぎ、
また、メッシュ部材31は管状部15の鉛直部15bの下端と係止突条28に挟持され強固に固定され、またメッシュ部材31の下端と、垂下筒片27の上端の間には、後述するように液体と気体が合流して混合する気液混合室Rが形成され、この気液混合室Rとメッシュ部材31により、通状の液体を泡状液体にする発泡機構Kが構成される。
【0026】
次に、図4、5は図1の注出容器の使用態様を説明するためのもので、図4は図1の容器の胴部4を押圧した状態を説明するための縦断側面図、図5は図4の状態から押圧を解除した状態を説明するための縦断側面図である。
図4で、図中、白抜き矢印で示される方向に手で胴部4を押圧するようにスクイズ操作をすると、容器内部の圧力が上昇し、容器本体1内に収納される液Lは吸引パイプ32内を上昇して気液混合室Rに流入すると共に、容器の上部に存在する気体(空気)Arが発泡部21の内鍔周片25に形成された通気孔26を介して、垂下筒片27の上端部周縁から気液混合室Rに流入し、気液混合室Rで液体Lと気体Arが混合する。」

(エ)「【図1】



(オ)「【図3】



(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1の上記記載を総合すると、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「手によってスクイズ操作ができるように可撓性を有する胴部4を備え、液Lを収納する容器本体1と
容器本体1の口筒部2に螺合組付きする螺合筒13を有し、泡状液体FLの吐出口16に至る管状流路Pが形成されているL字状に管状部15が配設されているキャップ体11
通気孔26が形成され、吸引チューブ32の上端を嵌入する垂下筒片27からなる発泡部21と
発泡部21の嵌合筒片22に嵌入し、係止突条28の上に載置するメッシュ部材31と
メッシュ部材31の下端と、垂下筒片27の上端の間には、液体と気体が合流して混合する気液混合室Rが形成されており、
管状部15の水平部15aの周壁の、下端部の容器本体1の内部に連通する位置にが形成されている吸引孔17と、
逆止弁としての機能を発揮するようにキャップ体11の吸気孔17を塞ぐ弁体24と
を備える注出容器。」

(3)引用文献2
令和元年7月11日付けで通知した拒絶理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である実願昭61-116233号(実開昭63-23251号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「『考案が解決しようとする問題点』
上記従来の泡噴出容器にあっては、その発泡用の多孔部材が乾燥することが多く、すると、付着液体乾燥により液体成分が多孔部材内に蓄積されることで目塞りを起し、このため発泡機能を損う欠点があった。」(3頁10?15行)
(イ)「『考案の効果』
本案は既述のように、多孔部材16上方の第1筒部8内に外気吸入防止弁10を設けたから、栓状部材5に対してヘッド21を引き上げた状態のまま、つまり栓状部材に対するヘッドの押下げを忘れたような場合も、その外気吸入防止弁によって多孔部材16が外気に触れることがなく、従ってその乾燥を防止して付着液体乾燥による多孔部材の目塞りを防止でき、又ノズル孔基端にも第2弁座25を設けて栓状部材に対する引き上げ状態で容器を倒立状とし、かつノズル前端を下向きとしたとき、上記玉弁9がその第2弁座に着座してノズル孔基端を閉塞するよう設けたから、容器倒立状態では液体も泡も噴出されないこととなって、従来のように液体が噴出することがない。更に外気吸入弁15を設けたから、容器体の胴部圧搾後の弾性復元も迅速に行われることとなって便利である。」(8頁下から3行?9頁14行)

(4)引用文献3
令和元年7月11日付けで通知した拒絶理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平7-215352号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は液状洗剤等を泡状に吐出可能とする泡吐出容器に関する。」
(イ)「【0014】請求項2に記載の本発明によれば下記の作用がある。○3(○内に数字の3)オーバーキャップの泡吐出通路に設けられる泡均質化手段は、泡吐出使用後にオーバーキャップが閉位置に設定された状態でも大気に接していて、当該泡均質化手段の付着残存液の乾燥固化を生じ易い。ところが、この泡均質化手段がネットである場合には、このネットの付着残存液が乾燥固化してネットの目が詰まったとしても、ネットはスポンジや焼結体からなる多孔体と異なり薄肉であるため、次回の泡吐出開始時に泡吐出通路を通る泡の流れによって直ちに固化物を溶解して目詰まりを解消でき、全く不都合を生じない。」
(ウ)「【0032】また、オーバーキャップ13は、封止部13Eによって開かれたベースキャップ12の泡流出通路34に連通して外部に開口する泡吐出通路44を備える。オーバーキャップ13は、泡吐出通路44の先端開口部に、泡均質化用ネット22が溶着されたノズル21を圧入密着状態にて嵌合されている。
【0033】従って、泡吐出容器10では、泡吐出時に、ベースキャップ12において前述の如く生成せしめられた泡は、オーバーキャップ13が開位置に設定された状態下で、ベースキャップ12の泡流出通路34から泡吐出通路44に流入し、ネット22でより均質化されて外部に吐出される。」

3 本願発明と引用発明の対比・判断
(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「胴部4」は、その構造及び機能から、本願発明の「胴部」に相当する。同様に「液L」は「内容物」に、「容器本体1」は「容器本体」に、「螺合筒13」は「キャップ部」に、「管状部15」は「ノズル」に、「キャップ体11」は「ノズルキャップ」に、「通気孔26」は「空気導入孔」に、「気液混合室R」は「混合室」に、「発泡部21」は「区画筒体」にそれぞれ相当する。

(イ)引用発明の「手によってスクイズ操作ができるように可撓性を有する胴部4を備え、液Lを収納する容器本体1」は、容器本体1の内部が液Lの収容空間となっていることが明らかであるから、本願発明の「可撓性を有する胴部を備え、内部が内容物の収容空間となる容器本体」に相当する。

(ウ)引用発明の「容器本体1の口筒部2に螺合組付きする螺合筒13を有し、泡状液体FLの吐出口16に至る管状流路Pが形成されているL字状に管状部15が配設されているキャップ体11」は、容器本体1の口筒部2に螺合組付きする螺合筒13と管状部15とを備えたキャップ体11と表現できるから、本願発明の「前記容器本体の口部に装着されるキャップ部とノズルとを備えたノズルキャップ」に相当する。

(エ)引用発明の「通気孔26が形成され、吸引チューブ32の上端を嵌入する垂下筒片27からなる発泡部21」は、発泡部21が「メッシュ部材31の下端と、垂下筒片27の上端の間には、液と気体が合流して混合する気液混合室Rが形成されて」いるものであって、気液混合室Rが管状部15に連なることが明らかである。
また、通気孔26から容器本体11内の収容空間の空気が気液混合室Rに導入され、吸引チューブ32から液Lが導入されるから、図3も参照すると、発泡部21の底部には、通気孔26と垂下筒片27が嵌入する液Lの導入孔が設けられているといえる。
そうすると、引用発明の当該事項は、本願発明の「前記ノズルに連なる混合室を内部に備えるとともに該混合室を前記収容空間に連ねる空気導入孔および内容物導入孔を底部に備える区画筒体」に相当する。

(オ)引用発明の「発泡部21の嵌合筒片22に嵌入し、係止突条28の上に載置するメッシュ部材31」は、図1も参照すると、メッシュ部材31が気液混合室Rと管状部15との間に設けられ、液と気体を混合して発泡させているといえるから、本願発明の「前記混合室と前記ノズルとの間に設けられ、前記混合室に導入された内容物と空気とを混合し発泡させる発泡部材」に相当する。

(カ)引用発明の「管状部15の水平部15aの周壁の、下端部の容器本体1の内部に連通する位置にが形成されている吸引孔17」を有する態様は、吸引孔17が管状部15と容器本体1の内部とを連結しており、発泡部21の外側に設けられているから、本願発明の「前記区画筒体の外側に設けられ、前記ノズルを前記収容空間に連ねる戻し流路」を有する態様に相当する。

(キ)引用発明の「逆止弁としての機能を発揮するようにキャップ体11の吸気孔17を塞ぐ弁体24」は、弁体24が管状部15と容器本体1の内部とを連結する吸気孔17に設けられ、容器本体1の内部から管状部15への液Lの流れを阻止し、管状部15から容器本体1の内部への液Lの流れを許容するものであるから、本願発明の「前記戻し流路に設けられ、前記収容空間から前記戻し流路を通した前記ノズルの側への内容物の流れを阻止するとともに前記ノズルから前記戻し流路を通した前記収容空間への内容物の流れを許容する第2逆止弁」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「可撓性を有する胴部を備え、内部が内容物の収容空間となる容器本体と、
前記容器本体の口部に装着されるキャップ部とノズルとを備えたノズルキャップと、
前記ノズルに連なる混合室を内部に備えるとともに該混合室を前記収容空間に連ねる空気導入孔および内容物導入孔を底部に備える区画筒体と、
前記混合室と前記ノズルとの間に設けられ、前記混合室に導入された内容物と空気とを混合し発泡させる発泡部材と、
前記区画筒体の外側に設けられ、前記ノズルを前記収容空間に連ねる戻し流路と、
前記戻し流路に設けられ、前記収容空間から前記戻し流路を通した前記ノズルの側への内容物の流れを阻止するとともに前記ノズルから前記戻し流路を通した前記収容空間への内容物の流れを許容する第2逆止弁と、
を備えた泡噴出容器。」

の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明は、「該発泡部材と前記ノズルとの間に設けられ、前記ノズルから前記発泡部材への内容物の流れを阻止するとともに前記発泡部材から前記ノズルへの内容物の流れを許容する第1逆止弁」を備えるのに対して、引用発明は、第1逆止弁が設けられていない点。
<相違点2>
本願発明は、「前記ノズルの内部に設けられ、前記第1逆止弁を通過した内容物を整泡させる整泡部材」を備えるのに対して、引用発明は、整泡部材を有していない点。

(2) 当審の判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
引用文献2(3頁10?15行、8頁下から3行?9頁14行等)には、泡噴出容器において、発泡用の多孔部材の目詰まり等を防止するために、多孔部材16の上方の第1筒部8内に外気吸入防止弁10を設ける点(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
そして、引用文献2記載事項の「泡噴出容器」は、その作用から本願発明の「泡噴出容器」に相当し、同様に「発泡用の多孔部材」は「発泡部材」に、「外気吸入防止弁10」は「前記ノズルから前記発泡部材への内容物の流れを阻止するとともに前記発泡部材から前記ノズルへの内容物の流れを許容する第1逆止弁」に相当する。また、引用文献2記載事項の「外気吸入防止弁10を設け」た「多孔部材16の上方の第1筒部8内」は、「ノズル22」と「多孔部材16」との間であるから、本願発明の「該発泡部材と前記ノズルとの間に設けられ」た「第1逆止弁」に相当する。
そうすると、上記引用文献2記載事項を本願発明の文言に置き換えると、引用文献2には、泡噴出容器において、発泡部材の目詰まり等を防止するために、発泡部材とノズルとの間に設けられ、前記ノズルから前記発泡部材への内容物の流れを阻止するとともに前記発泡部材から前記ノズルへの内容物の流れを許容する第1逆止弁を設ける点が記載されているといえる。
そして、引用発明は、メッシュ部材31が、外気に連通した構造であって、乾燥し、目詰まりを起こすことが予想されるものであるから、引用発明において、メッシュ部材31の目詰まりを防止するために、上記引用文献2記載事項を適用し、上記相違点1に係る本願発明の事項とすることは、当業者が容易に相当し得たことである。

<相違点2について>
引用文献3には、泡吐出容器において、泡をさらにクリーミーに均質化するために、泡吐出通路44の先端開口部に、泡均質化用ネット22が溶着されたノズル21を圧入密着にて嵌合させる点(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。
そして、引用文献3記載事項の「泡吐出容器」は、その作用から本願発明の「泡噴出容器」に相当し、同様に「泡吐出通路44の先端開口部」は「ノズル」に、「泡均質化用ネット22」は「内容物を整泡させる整泡部材」に相当する。
そうすると、上記引用文献3記載事項を本願発明の文言に置き換えると、引用文献3には、泡噴出容器において、泡をさらにクリーミーに均質化するために、ノズルに内容物を整泡させる整泡部材を設ける点が記載されているといえる。
そして、引用発明において、泡をさらにクリーミーに均質化することは当然の課題であるから、そのために、上記引用文献3記載事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たことであり、その場合、泡均質化用ネットは、泡吐出通路の先端開口部に設けることとなるから、当然に引用発明の吸引孔17より先端側に設けられることとなる。

<本願発明の奏する効果について>
本願発明の奏する効果は、引用発明及び引用文献2、3記載事項から、当業者が想到し得る範囲のものであって、格別なものでない。

<請求の主張について>
請求人は、令和2年3月10日の審判請求書で、「当業者が、多孔部材16に付着した液体が外気に触れることを防止するために引用文献2に記載の外気吸入防止弁10(本願発明の第1逆止弁に対応)を採用したにも関わらず、外気吸入防止弁10よりも吐出口側に引用文献3に記載の泡均質化手段22(本願発明の整泡部材に対応)を採用すると、外気吸入防止弁10の採用により多孔部材16に付着した液体の乾燥を抑制するように構成したにも関わらず、外気吸入防止弁10よりも吐出口側に新たな整泡部材を採用して、当該整泡部材に付着した液体が外気に触れることによる乾燥を引き起こすことになります。このように、当業者が、新たに液体の乾燥を引き起こす泡均質化手段22を採用する動機づけが存在しないため、引用文献1において、引用文献2に記載の外気吸入防止弁10を採用し、更に引用文献2の目的に反する引用文献3の泡均質化用ネット22をノズル内に採用して、本願発明に容易に想到することはできない」旨主張する。
しかし、引用文献3記載事項の「ネット22」は、引用文献3の【0014】に、「付着残存液乾燥固化して目が詰まったとしても、・・・、次回の泡突出開始時に泡吐出通路を通る泡の流れによって直ちに固化物を溶解して目詰まりを解消でき、全く不都合を生じない。」と記載されているように、そもそも目詰まりの問題を有しないものであるから、請求人の上記主張は、失当である。

4 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2、3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


第3 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。



 
審理終結日 2020-09-30 
結審通知日 2020-10-06 
審決日 2020-10-20 
出願番号 特願2016-72548(P2016-72548)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 信秀  
特許庁審判長 森藤 淳志
特許庁審判官 佐々木 正章
藤井 眞吾
発明の名称 泡噴出容器  
代理人 片岡 憲一郎  
代理人 杉村 憲司  
代理人 杉村 光嗣  

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