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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C11D |
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管理番号 | 1369469 |
審判番号 | 不服2020-716 |
総通号数 | 254 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-01-20 |
確定日 | 2021-01-07 |
事件の表示 | 特願2016-572751「食器洗浄機洗剤フレグランス組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月17日国際公開、WO2015/189296、平成29年 6月29日国内公表、特表2017-517616、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)6月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年6月10日、欧州特許庁)を国際出願日とするものであって、主な手続の経緯は次のとおりである。 令和元年5月16日付け:拒絶理由通知 同年8月20日 :手続補正書、意見書の提出 同年9月13日付け:拒絶査定 令和2年1月20日 :手続補正書、審判請求書の提出 第2 拒絶査定の概要 拒絶査定(以下、「原査定」という。)は、令和元年5月16日付けの拒絶理由通知書に示した理由3により拒絶すべきである、というものであり、その概要は次のとおりである。 「本願請求項1?11に係る発明は、下記の引用文献1?5、6に記載された発明及び周知技術等に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.特表2001?524595号公報 2.特表2002-518525号公報 3.特表平11-507096号公報 4.特開2006-45430号公報 5.特開2009-126885号公報 6.特表2013-518009号公報(周知技術を示す文献)」 第3 本願発明 本願請求項1?11に係る発明(以下、項番号に応じて、「本願発明1」などという。)は、令和2年1月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 スターチカプセル化フレグランス組成物を含む、食器洗浄機洗剤組成物であって、ここでスターチカプセル化フレグランス組成物は、スターチカプセル化材料を含む水性相中にフレグランス油を分散させることにより調製され、ここでスターチカプセル化材料が、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーを含む、前記食器洗浄機洗剤組成物。 【請求項2】 ホスファートを含まない、請求項1に記載の食器洗浄機組成物。 【請求項3】 スターチカプセル化フレグランス組成物が、1以上の粒子のスターチカプセル化フレグランス組成物である、請求項1または2に記載の食器洗浄機洗剤組成物。 【請求項4】 スターチカプセル化フレグランス組成物が、オクテニルコハク酸デンプンを含む、請求項1?3のいずれか一項に記載の食器洗浄機洗剤組成物。 【請求項5】 スターチカプセル化フレグランス組成物が、マルトデキストリンを含む、請求項1?4のいずれか一項に記載の食器洗浄機洗剤組成物。 【請求項6】 スターチカプセル化フレグランス組成物が、スターチカプセル化フレグランス組成物中に25重量%未満のフレグランス成分を含み、4000μg/l以上の蒸気圧を有する、請求項1?5のいずれか一項に記載の食器洗浄機洗剤組成物。 【請求項7】 スターチカプセル化フレグランス組成物が、15,000ppm未満の水への溶解度を有するフレグランス成分を含む、請求項1?6のいずれか一項に記載の食器洗浄機洗剤組成物。 【請求項8】 粒子状組成物の形態を有する、請求項1?7のいずれか一項に記載の食器洗浄機洗剤組成物。 【請求項9】 単位分量または小袋形態を有する、請求項1?8のいずれか一項に記載の食器洗浄機洗剤組成物。 【請求項10】 食器洗浄機洗剤組成物が、圧搾された粒子状形態である、請求項9に記載の食器洗浄機洗剤組成物。 【請求項11】 水溶性ラップに包まれた、請求項1?10のいずれか一項に記載の食器洗浄機洗剤組成物。」 第4 引用文献の記載、引用文献に記載された発明(引用発明) 1 引用文献の記載 (1)引用文献1(下線は、当審が付与した。) 引用文献1には、「洗剤タブレット」(発明の名称)について、次の記載がある。 摘記1a: 「【0001】 [技術分野] 本発明は、圧縮部分および非圧縮部分を包含する洗剤タブレットであって、非圧縮部分が香料構成成分を包含する洗剤に関する。」 摘記1b: 「【0007】 [発明の要約] 本発明によれば、圧縮部分および非圧縮部分を包含する洗剤タブレットであって、圧縮部分が6.3KN/cm^(2)より大きい圧縮圧を用いて調製され、非圧縮部分が香料構成成分を包含する洗剤タブレットが提供される。」 摘記1c: 「【0024】 本発明の好ましい態様では、非圧縮部分はゲルを包含する。この態様では、ゲルは洗剤タブレットの圧縮部分に送達されるが、しかしそれは、好ましくは圧縮部分により提供される型中に送達される。 ゲルは、香料構成成分およびその他の任意の洗剤構成成分の他に、増粘系を包含する。… 【0025】 前記のように、ゲルは必要なゲルの粘性または濃度を提供するために増粘系を包含する。増粘系は、典型的には非水性液体希釈剤および有機または高分子ゲル化添加剤を包含する。 a)液体希釈剤:… 【0029】 b)ゲル化添加剤:ゲル化剤または添加剤は、増粘系を仕上げるために本発明の非水性溶媒に付加される。ゲルの適切な相安定性および許容可能な流動学のために必要なゲルを生成するためには、有機ゲル化剤は一般に、増粘系中の溶媒とゲル化剤との比が典型的には99:1?1:1の範囲の程度まで存在する。さらに好ましくは、比は19:1?4:1の範囲である。 【0030】 本発明の好ましいゲル化剤は、ヒマシ油誘導体、ポリエチレングリコール、ソルビトールおよび関連有機チクサトロープ(thixatrope)、オルガノクレイ、セルロースおよびセルロース誘導体、プルロニック(pluronic)、ステアレートおよびステアレート誘導体、糖/ゼラチン組合せ、デンプン、グリセロールおよびその誘導体、有機酸アミド、例えばN-ラウリル-L-グルタミン酸ジ-n-ブチルアミド、ポリビニルピロリドン、ならびにそれらの混合物から選択される。」 摘記1d: 「【0041】 香料構成成分 本発明の香料構成成分は、封入香料、前香料(properfume)またはそれらの混合物を包含し得る。香料構成成分は、本発明の洗剤タブレットの非圧縮部分内に懸濁または分散される。… 【0043】 封入香料とは、封入物質を包含するカプセル内に封入される香料、または好ましくは多孔質の担体物質上に負荷され、これが次に好ましくは封入物質を包含するカプセル内に封入される香料を意味する。 【0044】 洗剤タブレットの使用中の種々の時点で香料効果の送達を可能にする広範な種々のカプセルが存在する。 異なる封入物質を有するこのようなカプセルの例は、薬物のマイクロカプセル封入により提供されるカプセルである。ここでは、香料は、高分子であり得る物質で完全に被覆されるカプセルコアを包含する。米国特許第4,145,184号(Brain等、1979年3月20日発行)および米国特許第4,234,627号(Schilling等、1980年11月18日発行)は、香料の拡散を本質的に阻止する頑強なコーティング物質の使用を教示する。 【0045】 本発明の香料中に用いられる封入物質の選択は、ある程度、使用される特定の香料および香料が放出される条件による。いくつかの香料は、他の香料より多量の防護を必要とし、したがってそれとともに用いられる封入物質が選択される。 香りを付けた粒子の封入物質は、好ましくは水溶性または水分散性封入物質である。 適切な水溶性コーティング斑の例としては、メチルセルロース、マルトデキストリンおよびゼラチンといった物質が挙げられるが、これらに限定されない。このようなコーティングは、1重量%?25重量%の粒子を包含し得る。 特に適切な水溶性封入物質は、GB1,464,616に記載されているような多糖およびポリヒドロキシ化合物のマトリックスから成るカプセルである。… 【0048】 封入香料粒子は、封入物質および香料を含有する噴霧乾燥エマルションにより香料を封入マトリックスと混合することにより製造され得る。さらに、噴霧乾燥塔からの製品の粒子サイズは修正され得る。これらの修正は、特定の加工処理工程、例えば粒子サイズを拡大するための後塔塊状集積(アグロメレーション)工程(例えば流動床)および/または封入体の表面特性が改質される処理工程、例えば封入体の吸湿性を低減するための疎水性シリカによるダスティングを包含し得る。 特に好ましい封入工程は、乳化工程とその後の噴霧乾燥および最終的にはシリカによるダスティングである。エマルションは、以下の工程により生成される: 【0049】 a)1:2の比で、室温で水中にデンプンマトリックスを分散する。エマルションがこの温度で完成され得るように、デンプンは予備ゲル化されるのが好ましい。これは次に香料損失を最小限にする。高い水中デンプン濃度および高い香料負荷を成し遂げるには、「低粘性」デンプンでなければならない。 【0050】 b)次に、香料油を前記の混合物に0.8?1.05:1:2の比で付加した後、高剪断ミキサーを用いて混合を乳化する。剪断動作は、1ミクロンより小さい油滴を生じなければならず、エマルションはこの形態で少なくとも20分間安定でなければならない(デンプンの機能は、一旦機械的に製造されたエマルションを安定化することである)。 【0051】 c)スピニングディスク噴霧器を装備したコカレント(co-current)塔中で、混合物を噴霧乾燥する。乾燥空気注入口温度は、低い150?200℃である。この種の噴霧乾燥は、香料の最小損失および高乾燥率を確実にする。顆粒は50?150ミクロンの粒子サイズを有する。 d)その結果生じる乾燥封入物は、顆粒の表面に5%までの非封入化油を含有し得る。流動特性を改良するために、リボンブレンダーにより2%までの疎水性シリカを封入物に任意に付加し得る。」 摘記1e: 「【0311】[実施例]実施例に用いられる略語洗剤組成物において、構成成分の略語は以下の意味を有する:STPP:ナトリウムトリポリホスフェートクエン酸塩:クエン酸三ナトリウム二水和物重炭酸塩:炭酸水素ナトリウムクエン酸:無水クエン酸炭酸塩:無水炭酸ナトリウムケイ酸塩:非晶質ケイ酸ナトリウム(SiO_(2):Na_(2)O比=1.6?3.2)PB1:無水過ホウ酸ナトリウム一水和物PB4:表示式NaBO_(2)・3H_(2)O・H_(2)O_(2)の過ホウ酸ナトリウム四水和物 【0312】非イオン性:非イオン性界面活性剤C_(13)?C_(15)の混合エトキシル化/プロポキシル化脂肪アルコール。平均エトキシル化度3.8、平均プロポキシル化度4.5。商品名プルラファック(BASF)。TAED:テトラアセチルエチレンジアミンHEDP:エタン1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸DETPMP:ジエチルトリアミンペンタ(メチレン)ホスホネート。デクエスト2060の商品名でMonsantoから販売されている。PAAC:ペンタアミンアセテートコバルト(III)塩パラフィン:Winog70の商品名でWintershallから販売されているパラフィン油。 【0313】プロテアーゼ:タンパク質分解酵素アミラーゼ:デンプン分解酵素BTA:ベンゾトリアゾールPA30:平均分子量約4,500のポリアクリル酸硫酸塩:無水硫酸ナトリウムPEG4000:分子量約4000のポリエチレングリコール(Hoechst)PEG8000:分子量約8000のポリエチレングリコール(Hoechst)糖:家庭用ショ糖 【0314】ゼラチン:ブルーム強度65のA型ゼラチン(Sigma)デンプン:改質カルボキシメチルセルロース、商品名ニムセル(metcaserle)香料封入体:37%の改質デンプン、11%のソルビトールおよび1%のヒュームドシリカ(Drytec C.P.)の組成で封入される香料油。トリアセチン:グリセリントリアセテートの商品名チキサトロール:チキサトロールの商品名でRheoxから販売されているヒマシ油PVP:分子量300,000のポリビニルピロリドンPEO:分子量45,000のポリエチレンオキシドpH:20℃で蒸留水中の1%溶液として測定下記の実施例では、レベルはすべて圧縮部分、非圧縮部分またはコーティング層の重量%で示されている。 【0315】実施例1食器洗浄機に用いるのに適した本発明の洗剤タブレットの例を以下で説明する。活性洗剤構成成分の組成物を改良型12ヘッド回転タブレット成形機のパンチキャビティに送達して、13KN/cm^(2)で組成物を圧縮することにより、圧縮部分を調製する。改良型タブレット成形機は、圧縮部分が型を有するタブレットを提供する。実施例A?Fの目的のために、非圧縮部分は香料構成成分およびゲル化剤を包含する。非圧縮部分はそれから圧縮部分の型に注ぎ込まれる。次に洗剤タブレットに状態調節工程を施し、この間に非圧縮部分が硬化する。 【0316】 【表1】 【0317】 【表2】 (2)引用文献2 引用文献2には、「香料組成物」(発明の名称)について、次の記載がある。 摘記2a: 「【0028】修飾デンプン封入香料組成物の製造以下は、本発明による洗濯およびクリーニング組成物向け修飾デンプン封入香料組成物の製造のために適したプロセスの非制限例である。1.CAPSUL修飾デンプン(National Starch Chemical)225gを24℃で水450gに加える。2.混合液を600RPM(直径2インチのタービンインペラー)で20分間攪拌する。3.香料組成物75gをデンプン溶液の渦近くに加える。4.形成されたエマルジョンを(600RPMで)更に20分間攪拌する。5.15ミクロン未満の香料小滴サイズに達したとき、そのエマルジョンをスプレー乾燥タワーにポンプ導入し、乾燥のため同向き空気流でスピニングディスクから噴霧する。入口空気温度を205?210℃に設定し、出口空気温度を98?103℃で一定にする。6.デンプン封入香料組成物の乾燥粒子を乾燥機出口で集める。 【0029】最終HIA香料粒子の分析(すべて重量ベース%):総香料油24.56%封入油24.46%遊離/表面油0.10%デンプン72.57%水分2.87%粒径分布<50μm16%50?500μm83%>500μm1% 【0030】修飾デンプン封入香料組成物の更に別な好ましい製法はGB1,464,616で記載されており、その組成物は多糖物質の混合物からなり、これは混合物の少くとも20重量%の量で存在して、アルコール、例えばソルビトール、植物タイプ糖、ラクトン、モノエーテルおよびアセタールから選択されるポリヒドロキシ化合物、および修飾デンプンである。そのプロセスでは、水中において、混合物がスプレー乾燥の温度で軟化するような割合で、修飾デンプンおよびポリヒドロキシ化合物の溶液を形成し、その油状物を溶解状態で乳化させ、そのエマルジョンをスプレー乾燥して、そこから水を除去する。」 摘記2b: 「【0096】 下記の洗濯およびクリーニング組成物の例で用いられる略記 洗濯およびクリーニング組成物において、略記された成分表示は以下の意味を有している: 洗剤組成物において、略記された成分表示は以下の意味を有している:… HIA1 :香料組成物例1のデンプン封入HIA香料粒子(59%活性) HIA2 :香料組成物例2のデンプン封入HIA香料粒子(59%活性) HIA3 :香料組成物例3のデンプン封入HIA香料粒子(59%活性) 下記処方例において、すべてのレベルは別記されないかぎり組成物の重量%として示されており、完全処方組成物中における香料組成物の配合は、(cap)として後で記載されたような封入により、別記されないかぎりスプレーオンで行う。封入されるとき、配合は乾燥添加物として行う。HIAについて、特定された量は香料組成物または封入香料組成物によりデリバリーされる香料の量である。… 【0113】 【0114】 」 (3)引用文献3 引用文献3には、「ブルーミング香料を含んでなるビルダー入り自動食器洗浄組成物」(発明の名称)について、次の記載がある。 摘記3a:第78頁7行目?20行目、第83頁例10、第85頁例16 「シクロデキストリン/香料錯体 流動性スラリーを、β-シクロデキストリン約1kgと水約1リットルとを、KitchenAidTMミキサーのステンレススチール製混合ボール中でプラスチックコーティングした重質混合翼を用いて混合することによって調製する。香料約175gを徐々に添加しながら、混合を継続する。液体様スラリーは直ぐに増粘し始め、クリーム状ペーストとなる。攪拌を約30分間継続する。次に、水約0.5リットルをペーストに加え、十分に混合する。攪拌を、更に約30分間再開する。 この間に、水を再度添加する前ほどではないが、錯体は再度増粘する。生成するクリーム状錯体を、トレー状に薄い層状に伸ばし、風乾する。これにより、顆粒状固形物約1.1kgが生成し、これを微粉末に粉砕する。シクロデキストリン/香料錯体は、洗面所ボール洗剤ブロックを作成する微粉砕および/または錠剤成型工程で香料の放出/損失なしで完全なままであるので、水分活性化カプセル封入香料として極めて好ましい。… 例V 例VII (4)引用文献4 引用文献4には、「自動食器洗浄機用洗浄剤組成物」(発明の名称)について、次の記載がある。 摘記4a: 「【実施例】 【0055】 (1)香料粒子の作成 表1に示す各香料組成物を用い、各香料粒子を作成した。なお、香料粒子は次のようにして作成した。 【0056】 各香料組成物650g、デキストリン(松谷化学株式会社製:パインフローKH)1560g、硫酸ナトリウム(四国化成工業株式会社製:粉砕A6芒硝)5720g、二酸化ケイ素(徳山ソーダ株式会社製:トクシールNR)1820g、食用三二酸化鉄(癸巳化成株式会社製)2.6g、赤色106号(アイゼン保土谷株式会社製)0.91gをナウターミキサー(ホソカワミクロン(株))に仕込み、ジャケット温度を75℃にして、混合して昇温した。次に、粉体の温度が60℃になった時点で、予め溶融させたポリエチレングリコール(花王株式会社製:KPEG-6000LA)2210gと固体状態のポリエチレングリコール(花王株式会社製:KPEG-6000LA)1040gを添加し、更に混合してから混合物を抜出した。この時の混合物の温度は、66℃であった。次に、得られた混合物を押出造粒機(不二パウダル株式会社製:ペレッターダブルEDX-60型)により孔径0.7mmのスクリーンを通して押出し、圧密化した。更に、押出造粒物を冷却した後、整粒機(パワーミルで1回粉砕し、更に、コーミルにて1回粉砕)で粉砕し、ピンク色に着色した香料粒子を得た。この時、何れの香料組成物を用いた場合ともに製造設備への付着はほとんどなく、製造適性は良好であった。 【0057】 【表1】 」 (5)引用文献5 引用文献5には、「粒子の表面改質方法」(発明の名称)について、次の記載がある。 摘記5a: 「【請求項1】 下記工程〔1〕及び〔2〕を有する粒子の表面改質方法。 工程〔1〕:少なくとも、有効成分を担持する平均粒径100?3000μmの粒子A、平均粒径10?100μmの層状粘土鉱物(b-1)、及び非イオン界面活性剤(b-2)を接触させる工程。 工程〔2〕:工程〔1〕で得られた粒子Cと、平均粒径0.1?10μmの微粉末Dとを接触させる工程。… 【請求項6】 非イオン性界面活性剤(b-2)が、以下の一般式(II) 【化2】 (式中、X、Y、及びZは、平均付加モル数であり、X>0、Z>0、X+Y+Z=4?20を満たす。また、Rは炭素数8?18の炭化水素基、EOはエチレンオキサイド基、POはプロピレンオキサイド基である。)で表されるポリオキシアルカンジイルアルキルエーテルである請求項1?4のいずれかに記載の粒子の表面改質方法。」 摘記5b: 「【0081】[表面改質粒子] 本発明の表面改質粒子は、粒子Aの表面に、層状粘土鉱物(b-1)及び非イオン界面活性剤(b-2)を含む複合体Bからなる複合体層、及び微粉末Dからなる微粉末層が順に積層してなるものである。このような表面改質粒子は、好ましくは上述した粒子の表面改質方法によって製造することができる。 複合体層及び微粉末層は、各々粒子Aの表面から表面改質粒子の表面側に向かって順に積層されるが、複合体層は必ずしも粒子A表面の全面を覆う必要はなく、微粉末層は必ずしも複合体層の全面を覆う必要はない。すなわち、粒子Aの表面に微粉末層が存在することもあるし、表面改質粒子の表面に複合体層が存在することもあるし、また、粒子Aがむき出しとなった状態の箇所が存在することもある。粒子A表面の全面は、複合体層または微粉末層のいずれかに覆われていることが好ましいが必須ではなく、粒子A表面の30?100%がいずれかの層で覆われていることが好ましく、40?100%がより好ましく、50?100%がさらに好ましい。」 摘記5c: 「【0088】調製例1:噴霧乾燥粒子の調製 水410質量部を、攪拌翼を有した1m^(3)の混合槽に加え、水温が45℃に達した後に、硫酸ナトリウム110質量部、亜硫酸ナトリウム8質量部、蛍光染料2質量部を添加して、10分間攪拌した。次いで、炭酸ナトリウム120質量部、40質量%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液150質量部を添加して10分間攪拌し、さらに塩化ナトリウム40質量部、結晶性アルミノケイ酸塩160質量部を添加し、15分間攪拌してスラリー水分50質量%の均質なスラリーを得た。このスラリーの最終温度は50℃であった。285℃の窒素ガスを噴霧乾燥塔に塔下部より供給しながら、スラリーをポンプで噴霧乾燥塔(向流式)に供給し、塔頂付近に設置した圧力噴霧ノズルから噴霧圧2.5MPaで噴霧を行った。窒素ガスは、塔頂から98℃で排出された。得られた噴霧乾燥粒子1の水分は0%、平均粒径は290μm、嵩密度は510g/L、担持能は65mL/100g、粒子強度は350kg/cmであった。 【0089】調製例2:界面活性剤組成物の調製非イオン界面活性剤を840質量部とポリエチレングリコール69質量部とを80℃に加熱し、ドデシルベンゼンスルホン酸960質量部と48%水酸化ナトリウム水溶液258質量部を添加、撹拌して界面活性剤組成物を調製した。 【0090】調製例3:界面活性剤担持粒子(粒子A)の調整レディゲミキサー(松坂技研(株)製、容量130L、ジャケット付)に、調整例1で調製した噴霧乾燥粒子を50質量部投入し、主軸(攪拌翼の回転数:60rpm、周速:1.6m/s)の攪拌を開始した。ジャケットには80℃の温水を10L/分で流した。そこに、80℃に昇温した調製例2で調製した界面活性剤組成物25質量部を2分間かけて投入し、その後5分間攪拌を行って、噴霧乾燥粒子に界面活性剤組成物を担持させて、界面活性剤担持粒子(粒子A)を調製した。 【0091】実施例1:表面改質粒子1の調整 レディゲミキサー(松坂技研(株)製、容量130L、ジャケット付)に、調製例3で調製した界面活性剤担持粒子75質量部を投入し、主軸(攪拌翼の回転数:60rpm、周速:1.6m/s)の攪拌を開始した。5質量部の層状粘土鉱物を投入し、5質量部の非イオン性界面活性剤をスプレー投入し、5分間攪拌を行った。次に、5質量部の結晶性アルミノケイ酸塩を投入し、主軸(回転数:120rpm、周速:3.1m/s)とチョッパー(回転数:3600rpm、周速:28m/s)の攪拌を30秒間行った。レディゲミキサーの運転条件を、主軸(攪拌翼、回転数:60rpm、周速:1.6m/s)に戻し、さらに10質量部の結晶性アルミノケイ酸塩を投入する。さらにもう一度主軸(回転数:120rpm、周速:3.1m/s)とチョッパー(回転数:3600rpm、周速:28m/s)の攪拌を30秒間行った後、排出し、実施例1の表面改質粒子1を得た。得られた表面改質粒子1の組成及び評価を第1表に示す。… 【0095】実施例5:表面改質粒子5の調整25℃で蒸気圧0.133?133Paの成分として、リリアール、フルテート、α-ダマスコン、及びポアレートの混合物、25℃で蒸気圧0.13Pa未満の成分として、メチル-β-ナフチルケトンを80/20(質量比)の割合で混合した調合香料を調製した。該調合香料、デキストリン、硫酸ナトリウム、二酸化珪素、ベンガラ、赤色226号を下記の配合でナウターミキサー(ホソカワミクロン(株)製)に仕込み、ジャケット温度を75℃にして、混合して昇温した。次に、粉体の温度が60℃になった時点で、あらかじめ溶融させたポリエチレングリコールと固体状態のポリエチレングリコールを70/30(質量比)の割合で21質量部を添加し、さらに混合してから混合物を抜出した。この時の混合物の温度は、66℃であった。次に、得られた混合物を押出造粒機(「ペレッターダブルEDX-60型」:不二パウダル(株)製)により孔径0.7mmのスクリーンを通して押出し、圧密化した。さらに、押出造粒物を冷却した後、整粒機(パワーミルで1回粉砕し、さらに、コーミルにて1回粉砕)で粉砕し、篩にかけて粒径が355μm以下の粒子を除くことで、赤色に着色した香料粒子を得た。実施例1の界面活性剤担持粒子75質量部を、上記の香料粒子75質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして表面改質粒子5を得た。得られた表面改質粒子5の組成及び評価を第1表に示す。香料粒子の組成調合香料:10質量部デキストリン(「パインフローKH」:松谷化学(株)製):12質量部ポリエチレングリコール(「KPEG-6000LA」:花王(株)製):21質量部硫酸ナトリウム(「粉砕芒硝A6」:四国化成工業(株)製):38質量部硫酸ナトリウム(「粉砕芒硝A12」:四国化成工業(株)製):5質量部二酸化珪素(「トクシールNR」:徳山ソーダ(株)製):14質量部「ベンガラ」(三好化成工業(株)):0.02質量部「赤色226号」(癸巳化成製):0.03質量部」 2 引用文献1に記載された発明(引用発明) (1)引用文献1の【0007】(摘記1b)から、引用文献1には、圧縮部分及び非圧縮部分を包含する洗剤タブレットであって、圧縮部分が6.3KN/cm^(2)より大きい圧縮圧を用いて調製され、非圧縮部分が香料構成成分を包含する洗剤タブレットについて記載されていると認められる。 (2)洗剤タブレットの具体例である実施例Aは、【0314】、【0315】(摘記1e)から、食器洗浄機に用いるのに適した洗剤タブレットであって、非圧縮部分の香料構成成分は、表1において香料を唯一含む成分である、香料封入体(37%の改質デンプン、11%のソルビトール及び1%のヒュームドシリカの組成で封入される香料油)であることが理解できる。 ここで、上記香料封入体は、【0043】(摘記1d)から、カプセル内に香料油が封入されたものであり、【0049】?【0051】(摘記1d)の記載から、(改質)デンプンを予備ゲル化し、室温で水中にデンプンマトリックスを分散させ、香料油を付加した後、高剪断ミキサーを用いて乳化し、噴霧乾燥して得られたものであることが理解できる。 また、【0051】(摘記1d)から、ヒュームドシリカ(疎水性シリカ)は封入物に付加されたものであり、【0030】(摘記1c)から、ソルビトールはゲル化剤であることが理解できる。 (3)そして、【0315】(摘記1e)から、洗剤タブレットは、まず、圧縮部分を調製し、圧縮部分が型を有するタブレットを提供し、次に、香料構成成分及びゲル化剤を包含する非圧縮部分は、圧縮部分の型に注ぎ込まれて、状態調節工程を施し、この間に非圧縮部分が硬化して得られるものであることが理解できる。 (4)そうすると、引用文献1には、洗剤タブレットについて、特に、香料構成成分に着目すると、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「圧縮部分及び非圧縮部分を包含する洗剤タブレットであって、圧縮部分が6.3KN/cm^(2)より大きい圧縮圧を用いて調製され、非圧縮部分が香料構成成分を包含する洗剤タブレットであって、 香料構成成分は、香料油が37%の改質デンプン、11%のソルビトール及び1%のヒュームドシリカの組成のカプセル内に封入された香料封入体であって、 香料封入体は、改質デンプンを予備ゲル化し、室温で水中に改質デンプンマトリックスを分散させ、香料油を付加した後、高剪断ミキサーを用いて乳化し、噴霧乾燥して得られたものである、 食器洗浄機に用いるのに適した洗剤タブレット。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の香料封入体の「37%の改質デンプン、11%のソルビトール及び1%のヒュームドシリカの組成のカプセル」は、改質デンプンはスターチの一種であり、改質デンプンから香料封入体のカプセルが形成されているから、本願発明1の「スターチカプセル」に相当する。 イ 引用発明の「改質デンプン」、「香料油」及び「香料封入体」は、本願発明1の「スターチカプセル化材料」、「フレグランス」及び「スターチカプセル化フレグランス組成物」にそれぞれ相当する。 ウ 引用発明の「改質デンプンを予備ゲル化し、室温で水中に改質デンプンマトリックスを分散させ、香料油を付加した後、高剪断ミキサーを用いて乳化」する構成について、引用発明の「水中」及び「乳化」は、本願発明1の「スターチカプセル化材料を含む水性相中にフレグランス油を分散させることにより調製され」た構成の「水性相中」及び「分散」に相当するから、引用発明の「改質デンプンを予備ゲル化し、室温で水中に改質デンプンマトリックスを分散させ、香料油を付加した後、高剪断ミキサーを用いて乳化」する構成は、本願発明1の「スターチカプセル化材料を含む水性相中にフレグランス油を分散させることにより調製」する構成に相当する。 エ 引用発明の「食器洗浄機に用いるのに適した洗剤タブレット」は、本願発明1の「食器洗浄機洗剤組成物」に相当する。 オ ア?エから、本願発明1と引用発明とは、 [一致点] 「スターチカプセル化フレグランス組成物を含む、食器洗浄機洗剤組成物であって、ここでスターチカプセル化フレグランス組成物は、スターチカプセル化材料を含む水性相中にフレグランス油を分散させることにより調製された前記食器洗浄機洗剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) 「スターチカプセル化材料」について、本願発明1は「エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーを含む」ものであるのに対して、引用発明のカプセルは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーを含まない点。 (2)判断 引用文献1には、引用発明の香料封入体のカプセルに、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーを含ませることについては記載も示唆もない。また、当該コポリマーは非イオン性界面活性剤であり、引用発明の香料封入体のカプセルは改質デンプン等を含むものであるから、そのようなカプセルに、非イオン性界面活性剤を含ませればカプセルの特性が変化することは明らかであるところ、当該コポリマーを含ませることによって、当該カプセルがどのような特性を有するものとなるのかは当業者にとって不明としかいうほかなく、引用発明の香料封入体のカプセルに、当該コポリマーを含ませる動機付けを見いだすことができない。 一方、本願明細書【0018】には、「エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドに基づくブロックコポリマーが、驚くべきことに、加工デンプンカプセル化材料に、圧力に対する高い耐性を与えることを発見し、これは、25重量%超、および最大50重量%のパフューム充填、例えば32重量%のパフューム充填においてさえ、錠剤製造の間に粒子から著しく低減したパフューム浸出を導く」と記載されている。 また、同【0076】の表2からは、スターチカプセル化材料に、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドに基づくブロックコポリマーを含まないサンプルA、Bに対し、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドに基づくブロックコポリマーを含むサンプルCは、保管後に錠剤に残る総パフューム油の量が向上したことが理解できる。 そうすると、本願明細書において、加工デンプンカプセル化材料に、圧力に対する高い耐性を与え、錠剤製造の間に粒子から著しく低減したパフューム浸出を導くという、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項による作用効果が実施例において確認されているといえる。 したがって、本願発明1は、引用発明からは予測し得ない格別顕著な作用効果を奏するものであると認められる。 なお、拒絶査定において、特に、引用文献5の実施例5が引用されているので、念のため当該実施例5について検討する。 実施例5の表面改質粒子5は、調合香料、デキストリン、硫酸ナトリウム、二酸化硅素、ベンガラ及び赤色226号を混合し、さらに、ポリエチレングリコールを混合した混合物を押出造粒し、得られた押出造粒物を粉砕することで香料粒子(【0095】)を得て、次にこの香料粒子に対して、層状粘土鉱物、非イオン性界面活性剤及び結晶性アルミノケイ酸塩を接触させること(【0091】)で得られたものである。 そうすると、当該表面改質粒子において、デキストリンはスターチに由来するものだとしても、香料粒子に含まれていて、香料のカプセル化のためには用いられていないから、スターチカプセル化材料ではない。 また、非イオン性界面活性剤はデキストリンに含有されているものでもない。 よって、引用文献5には、カプセル化材料にエチレンオキシドやプロピレンオキシドといった非イオン性界面活性剤を含ませることについては記載されていない。 また、上記摘示した事項(第4 1(2)?(4))から明らかなように、引用文献2?4、6のいずれにも、カプセルにエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーを含ませることについては記載も示唆もされておらず、そのようなことが、本願の出願時において当業者にとって周知技術であるともいえない。 (3)まとめ 以上のとおり、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2?6に記載された事項及び周知技術等に基づいて容易に発明できたものではない。 2 本願発明2?11について 本願発明2?11は、本願発明1を直接的又は間接的に引用し、さらに限定するものであるから、本願発明1と同様な理由から、引用発明、引用文献2?6に記載された発明及び周知技術等に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-12-23 |
出願番号 | 特願2016-572751(P2016-572751) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(C11D)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 林 建二 |
特許庁審判長 |
川端 修 |
特許庁審判官 |
古妻 泰一 木村 敏康 |
発明の名称 | 食器洗浄機洗剤フレグランス組成物 |
代理人 | 葛和 清司 |