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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 B60Q
管理番号 1369473
審判番号 不服2020-7928  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-09 
確定日 2021-01-05 
事件の表示 特願2017-543108号「車両状態表示システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月 6日国際公開、WO2017/056995、請求項の数(29)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)9月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年9月30日、米国(US)、3件あり)を国際出願日とする特許出願であって、平成30年3月28日に手続補正がされ、平成31年4月8日付けで拒絶理由が通知され、令和1年5月16日に意見書が提出され、同年5月22日付けで拒絶理由が通知され、同年7月11日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年9月4日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年11月7日に意見書が提出されたが、令和2年3月25日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年6月9日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2.原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
1.(新規事項)令和1年7月11日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

・請求項1-2、4-29
補正後の請求項1記載の
「前記光表示器は、少なくとも車両のフロントの位置と、フロントクォータパネルの位置とに配置され」は願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されていないし自明でもない。
[0013]には、
「車両センサ26、28、30、及び32は、好ましくは車両10のフロントクォータパネル34a及び34b並びにリヤクォータパネル36a及び36bに外部から取り付けられる。」
と記載されているから、フロントクォータパネル34a、34bの位置に配置されるのは光表示器ではなく、車両センサ26、28、30、32である。
また、図1には上面図しか記載がなく、フロントクォータパネル34a、34bの位置に光表示器22が配置されているか明確でない(上下方向に離れているかもしれない)。図3-8にはフロントクォータパネル34a、34bが記載されていない。
出願人・代理人は意見書において、
「(2)しかしながら、「フロントクォータパネル」は、自動車分野における一般用語であり、当業者であれば明示的な記載がなくても本願発明の図5?8から「フロントクォータパネル」の位置や範囲は理解可能であると思料します。なお、日本では、「フロントクォータパネル」よりも「フロントフェンダ」のほうが多用されておりますが、そのような事情に関わらず、インターネット及び特許公報では、詳しい説明なしに「フロントクォータパネル」という部品名称が多数使用されております。
以下では、インターネット及び特許公報において「フロントクォータパネル」が記載されている事例を挙げ、「フロントクォータパネル」が自動車分野の一般用語であることをご説明いたします。

これらの事例から明らかなように、「フロントクォータパネル」は、自動車分野における一般用語であり、当業者であれば明示的な記載がなくても本願発明の図5?8から「フロントクォータパネル」の位置や範囲は理解可能です。したがいまして、令和1年7月11日付け手続補正書で行った補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、という認定は妥当ではないと思料します。」
と主張している。
上記事項について検討する。「フロントクォータパネル」が自動車分野における一般用語であることに反論はない。しかしながら、本願発明の図5?8から「フロントクォータパネル」の位置や範囲まで理解可能であるとはいえない。出願人・代理人は上記証拠を提示することにより、各文献において、フロントクォータパネルがどこかにあることを示してはいるが、本願明細書又は図面の、特に図5-8のどれが本願請求項1記載のフロントクォータパネルであるのかについては言及していない。よって、本願図5-8のどれがフロントクォータパネルであるのか特定できない以上、フロントクォータパネルの位置が記載されているとはいいがたい。
よって、出願人・代理人の上記主張は採用できない。

第3.当審の判断
1.補正の内容
平成30年3月28日付け手続補正書に記載された特許請求の範囲請求項1は、以下のとおりである。
「【請求項1】
外部移動物体を感知する検知システムと、
車両の周りに延在して設けられた光表示器と、を備え、
前記光表示器は、前記外部移動物体の方向を表示する車両状態表示システム。」
これに対し、令和1年7月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された(下線は当審において付与した。)。
「【請求項1】
外部移動物体を感知する検知システムと、
車両の周りに延在して設けられた光表示器と、を備え、
前記光表示器は、少なくとも車両のフロントの位置と、フロントクォータパネルの位置とに配置され、前記外部移動物体の方向を表示する車両状態表示システム。」

2.新規事項
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「光表示器」について、「少なくとも車両のフロントの位置と、フロントクォータパネルの位置とに配置され」ることを付加した補正(以下、「補正事項」という。)である。
上記補正事項が、特許法第184条の6第2項でみなされた願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものか否かを検討する。
(1)当初明細書等の上記補正事項に関連する記載事項は、以下のとおりである(当審にて、特に注目すべき記載に下線を付した。)。
・「【0011】
図1及び図2に示すように、車両状態表示システム12は、制御器14、音声発生器16、ディスプレイシステム18、検知システム20、及び光表示システム(光表示器)22を含む。また、車両状態表示システム12は、車両位置決定システム24と通信する。」
・「【0013】
一実施形態においては、車両状態表示システム12は検知システム20を含むことができる。好ましくは、この検知システムは、車両に比較的近い遠隔目標を検知するように構成される複数の車両センサ26、28、30、及び32を含む。例えば、図1に示すように、車両センサ26、28、30、及び32は、好ましくは車両10のフロントクォータパネル34a及び34b並びにリヤクォータパネル36a及び36bに外部から取り付けられる。しかし、センサ26、28、30、及び32は、車両10の任意の適切な外部部分に取り付けられてよく、そのような適切な外部部分は、フロント及びリヤのバンパ、外部ミラー、又は適切な領域の任意の組み合わせを含む。センサ26、28、30、及び32はデータを位置決定システム24へ送信し、位置決定システム24は、次いでセンサデータを用いて車両10の位置を計算することができる。」
・「【0016】
図1?8に示すように、車両状態表示システム12は光表示システム22を含む。光表示システム22は、少なくとも車両10のフロント42上の点灯デバイス38と車両10の周囲に延在する光バンド40とを含み得る。点灯デバイス38のそのような配置により、車両10は、車両10の前にある外部目標P(例えば車両10が接近しつつある歩行者又は遠隔車両)に明確に意図を表示することができる。但し、点灯デバイス38は、所望に応じて又は適切さに応じて車両10の任意の場所に配置し得る。」
・「【0018】
このように、光表示システム22は、車両10の状態を外部目標P(歩行者及び遠隔車両等)に対して表示する複数のモード(又はオンモード)を有する。これら複数のモードは、 光表示システム22が「オン」、即ち点灯デバイスが点灯されており又はディスプレイが文字列をディスプレイしているモードである。複数のモードの各々は、他のモードと異なるものとすることができる。
【0019】
図4?8に示すように、光バンド40は、点灯するその複数の部分40a、40b及び40cを有することができる。従って、歩行者又は遠隔車両等の外部目標Pが検知システム20によって感知され又は検知された場合、光バンド40はその外部目標Pの方向を表示することができる。光バンド40は、一般的には、車両10のフロントの点灯デバイス38の側部38a及び38bに接続され、車両10の周りに延在し(即ち車両10を包囲し)又は車両10の周りに実質的に延在している。
【0020】
従って、外部目標Pが検知されると、光バンド40は、図4?6に示すように、外部目標Pの方向に又は外部目標Pに隣接して光バンド40の一部分(例えば部分40a)を表示させる。追加的には、図7及び8に示すように、多様な(即ち複数の)外部目標が検知された場合に各目標を個々に表示することができ(部分40a及び40b)、あるいは大集団が車両10に隣接して一緒に群をなしている場合には、光バンド40はその集団の方向の大きな部分40cを表示することができる。
・図1、図6?図8には、以下の内容が示されている。











(2)フロントクォータパネルについて
例えば、デジタル大辞泉には、「クオーターパネル」(英語表記) quarter panelについて、「乗用車の外装で、ボンネットとドア、およびドアとトランクリッドにはさまれた部分。ふつう、前後車輪の上部を覆う鋼鈑を指す。」と記載されているように、そのフロント部分である「フロントクォータパネル」は、乗用車の外装で、ボンネットとドアにはさまれた前車輪の上部を覆うパネル部分を指すと解するのが自然である。
(3)判断
上記(1)の段落【0011】、【0016】の下線部の記載から、光表示システム22である光表示器は、少なくとも車両10のフロント42上の点灯デバイス38と車両10の周囲に延在する光バンド40とを含むことが理解でき、段落【0013】の下線部の記載と図1の図示内容からみて、フロントクォータパネル34a、34bを含む車両の周囲に光バンド40が配置されていることが理解でき、段落【0019】、【0020】の下線部の記載と図6?図8の図示内容及び上記(2)の「フロントクォータパネル」の定義を踏まえると、光表示器である光バンド40の一部分40a、40b、40cは、少なくともフロントクォータパネルの位置に配置されていることが理解できる。
そうすると、これらの記載事項と図示内容からみて当初明細書等には、 「光表示器は、少なくとも車両のフロントの位置と、フロントクォータパネルの位置とに配置され」ていることが記載されていることは明らかである。
したがって、かかる補正事項を含む本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものと認めることはできない。
よって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

第4.むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-12-10 
出願番号 特願2017-543108(P2017-543108)
審決分類 P 1 8・ 55- WY (B60Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 竹中 辰利  
特許庁審判長 一ノ瀬 覚
特許庁審判官 島田 信一
藤井 昇
発明の名称 車両状態表示システム  
代理人 とこしえ特許業務法人  

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