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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1369476
審判番号 不服2020-6727  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-18 
確定日 2021-01-12 
事件の表示 特願2015-199650「偏光板」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月13日出願公開、特開2017- 72728、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2015-199650号(以下「本件出願」という。)は、平成27年10月7日の出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 元年 6月13日付け:拒絶理由通知書
令和 元年10月16日提出:意見書
令和 元年10月16日提出:手続補正書
令和 2年 2月 6日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 2年 5月18日提出:審判請求書
令和 2年 5月18日提出:手続補正書


第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、本件出願の請求項1?5に係る発明(令和2年5月18日に提出された手続補正書による補正前のもの)は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:国際公開第2014/157976号
引用文献2:国際公開第2011/021441号
引用文献3:特開2011-225764号公報
(当合議体注:引用文献1は主引例であり、引用文献2及び3は副引例又は周知技術を示す文献である。)


第3 本件発明
本件出願の請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明4」という。)は、令和2年5月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本件発明1は、以下のとおりのものである。

「ポリビニルアルコール系樹脂中に二色性色素を含有する偏光フィルムの一方の面に、重合性化合物を含む硬化性組成物の硬化物から構成される第1硬化物層と、イオン性化合物を含有する粘着層とをこの順に含有する偏光板であって、該硬化性組成物は、重合性化合物の総量100質量%に対して、
(A1)2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物15?60質量%、
(A2)2つ以上のエポキシ基を有する脂肪族エポキシ化合物3?40質量%、
(A4-1)2つ以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物30?60質量%、
および
(A4-2)2つ以上のエポキシ基を有する芳香族エポキシ化合物0.1?20質量%を含有し、
1つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物(A3)の含有量が重合性化合物の総量100質量%に対して10質量%以下である、偏光板。」

また、本件発明2?4は、本件発明1に対してさらに他の発明特定事項を付加したものである。


第4 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
1 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶理由に引用文献1として引用され、本件出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2014/157976号(以下、同じく「引用文献1」という。)には、以下の記載事項がある。なお、訳は当合議体にて行った([73]等に見受けられる化合物間の改行は削除し、登録商標を表す記号(丸囲いのR)は、[R]と代用表記した。)。また、当合議体が発明の認定等に用いた訳の箇所に下線を付した。

(1)「


・・・(省略)・・・


・・・(省略)・・・



翻訳文:「技術分野
[1] 本発明は、両面型偏光板の製造方法およびこれから製造された両面型偏光板に関するものである。
・・・(省略)・・・
発明が解決しようとする課題
[15] 本発明は、上記の問題を解決するためのものであって、偏光子を基準として一方向に特定光量以上の活性エネルギー線を照射し、その他方を10℃?25℃で処理するステップを含むことにより、1回の活性エネルギー線の照射だけでも偏光子の両面の接着剤層とも優れた接着力および剥離力を有するように開発された両面型偏光板の製造方法およびこれから製造された両面型偏光板を提供する。
[16]
課題を解決するための手段
[17] 上記の課題を解決するために、一側面において、本発明は、偏光子の両面に接着剤層を介して透明フィルムを積層するステップと、前記偏光子を基準として一方向に位置したエネルギー源により、200mJ/cm^(2)以上の光量で活性エネルギー線を前記接着剤層へ照射するステップと、前記エネルギー源の反対側に位置する前記透明フィルムの表面を10℃?25℃で処理するステップとを含む両面型偏光板の製造方法を提供する。
・・・(省略)・・・
発明の効果
[29] 本発明にかかる両面型偏光板の製造方法により偏光板を製造する場合、200mJ/cm^(2)以上の光量で活性エネルギー線を照射すると同時に、非照射面を10℃?25℃で処理することにより、非照射面の硬化速度を向上させて、1回の活性エネルギー線照射工程を通じて、偏光子の両面に優れた接着力を有する接着剤層を同時に形成することができて、製造工程が簡単である。」

(2)




翻訳文:「[43] 以下、本発明の製造方法の各ステップをより具体的に説明する。
[44]
[45] まず、偏光子の両面に接着剤層を介して透明フィルムを積層する。
[46]
[47] この時、前記偏光子は特に制限されず、当該技術分野でよく知られている偏光子、例えば、ヨウ素または二色性染料を含むポリビニルアルコール(PVA)からなるフィルムを使用することができる。前記偏光子は、PVAフィルムにヨウ素または二色性染料を染着させて製造できるが、その製造方法は特別に限定されない。本明細書において、偏光子は、保護フィルムを含まない状態を意味し、偏光板は、偏光子と保護フィルムとを含む状態を意味する。
[48]
[49] 一方、前記接着剤層は、活性エネルギー線硬化型接着剤により形成されてよいし、特に、カチオン性接着剤により形成されることが好ましい。ここで、カチオン性接着剤とは、陽イオン重合反応により硬化される化合物を主成分とする接着剤をいう。
[50]
[51] 例えば、前記カチオン性接着剤は、(1)分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物5重量部?90重量部;(2)分子内に少なくとも1個のオキセタニル基を有するオキセタン化合物5重量部?90重量部;および(3)光カチオン性重合開始剤0.5重量部?20重量部を含むことができる。
[52]
[53] 前記(1)エポキシ化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有していればよいし、その種類が特に限定されるものではなく、例えば、芳香族エポキシ、脂環式エポキシ、または脂肪族エポキシのように、当該技術分野でよく知られているエポキシ樹脂を単独または混合して使用することができる。
[54]
[55] この時、前記芳香族エポキシは、分子内に芳香族基を含むエポキシを意味するもので、例えば、ビスフェノールA系エポキシ、ビスフェノールF系エポキシ、ビスフェノールSエポキシ、臭素化ビスフェノール系エポキシのようなビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、およびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のようなノボラック型エポキシ樹脂;クレゾールエポキシ、レゾルシノールグリシジルエーテルなどが使用できる。
[56]
[57] 一方、前記脂環式エポキシは、エポキシ基が脂肪族環を構成する隣接の2個の炭素原子の間に形成されている化合物を意味するもので、例えば、ジシクロペンタジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ジシクロペンタジエンジオキサイド、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートなどが使用できる。
[58]
[59] また、前記脂肪族エポキシとしては、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル;脂肪族多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルなどが使用できる。
[60]
[61] この時、前記脂肪族多価アルコールとしては、例えば、炭素数2?20の範囲内のものを例示することができる。より具体的には、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールFなどの脂環式ジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパンなどの3価以上のポリオールが挙げられる。
[62]
[63] また、前記アルキレンオキサイドとして、より具体的には、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられる。
[64]
[65] 一方、これに限定されるものではないが、本発明の場合、前記エポキシ化合物として、エポキシ化された脂肪族環基、すなわち、脂環式エポキシ環を1つ以上含む第1エポキシ化合物、およびグリシジルエーテル基を1つ以上含む第2エポキシ化合物の組み合わせを使用することが特に好ましい。
[66]
[67] 前記のような第1エポキシ化合物と第2エポキシ化合物との組み合わせを使用する場合、熱衝撃物性が向上した偏光板用接着剤を製造することができ、この時、前記第1エポキシ化合物と第2エポキシ化合物は、1:1?3:1の重量比で混合して使用されることが好ましく、より好ましくは、1:1?2:1の重量比で混合して使用されてもよいし、最も好ましくは、前記第1エポキシ化合物と第2エポキシ化合物が1:1の重量比で混合されて使用される。第1エポキシ化合物と第2エポキシ化合物の重量比率が前記範囲を満足する時、ガラス転移温度、接着力および粘度の面で最も好ましい物性を得ることができる。本発明において、前記第1エポキシおよび第2エポキシは、例えば、それぞれ、接着剤組成物全体の100重量部に対して、20重量部?60重量部で含まれてよい。
[68]
[69] 前記第1エポキシ化合物は、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートジシクロペンタジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、および4-ビニルシクロヘキセンジオキサイドからなるグループより選択された少なくとも1つであってよい。前記第1エポキシ化合物は、Tgを高め、接着層の強度(hardness)を付与するためのもので、最も好ましくは、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートであってよい。
[70]
[71] 前記第2エポキシ化合物は、グリシジルエーテル基を1つ以上含むものであれば特に制限されず、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ノボラックエポキシ、ビスフェノールA系エポキシ、ビスフェノールF系エポキシ、臭素化ビスフェノール系エポキシ、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、n-ブチルグリシジルエーテル、脂肪族グリシジルエーテル(C_(12)-C_(14))、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、o-クレシル(Cresyl)グリシジルエーテル、およびノニルフェニルグリシジルエーテルからなるグループより選択された1種以上であってよい。前記第2エポキシ化合物は、軟性(softness)を付与して接着力を向上させるためのもので、脂肪族環を含むことがより好ましく、最も好ましくは、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルであってよい。
[72]
[73] 次に、前記(2)オキセタン化合物は、分子内に少なくとも1個のオキセタニル基を有するものであれば特に限定されず、当該技術分野でよく知られている多様なオキセタン化合物を使用することができる。例えば、本発明の前記オキセタン化合物としては、3-エチル-3-〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕オキセタン、1,4-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕ベンゼン、1,4-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ベンゼン、1,3-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ベンゼン、1,2-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ベンゼン、4,4’-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ビフェニル、2,2’-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ビフェニル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ビフェニル、2,7-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ナフタレン、ビス〔4-{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}フェニル〕メタン、ビス〔2-{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}フェニル〕メタン、2,2-ビス〔4-{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}フェニル〕プロパン、ノボラック型フェノール-ホルムアルデヒド樹脂の3-クロロメチル-3-エチルオキセタンによるエーテル化変性物、3(4),8(9)-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,3-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕ノルボルナン、1,1,1-トリス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕プロパン、1-ブトキシ-2,2-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕ブタン、1,2-ビス〔{2-(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}エチルチオ〕エタン、ビス〔{4-(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルチオ}フェニル〕スルフィド、1,6-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサンなどが挙げられる。一方、前記オキセタン化合物の含有量は、5?90重量部、より好ましくは10?90重量部程度であることが好ましい。
[72]
[73] 次に、前記(3)陽イオン性光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により陽イオン(cation)種やルイス酸を作り出す化合物であって、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨウ素アルミニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、鉄-アレーン錯体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一方、前記陽イオン性光重合開始剤の含有量は、全体接着剤組成物全体の100重量部に対して、0.5重量部?20重量部程度であり、好ましくは0.5重量部?15重量部程度、より好ましくは0.5重量部?10重量部程度である。」

(3)




・・・(省略)・・・



翻訳文:「[252]
実施例
[253] 製造例1:透明基材フィルムの製造
[254] ポリ(N-シクロヘキシルマレイミド-co-メチルメタクリレート)、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂、およびフェノキシ系樹脂を100:2.5:5の重量比で均一に混合した樹脂組成物を、原料ホッパー(hopper)から押出機までを窒素置換した24φの押出機に供給し、250℃で溶融して、原料ペレット(pellet)を製造した。
[255]
[256] フェノキシ系樹脂は、InChemRez[R]社のPKFE(Mw=60,000、Mn=16,000、Tg=95℃)を使用し、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂は、スチレン85重量%、無水マレイックアンハイドライド15重量%のDylaeck332を使用し、ポリ(N-シクロヘキシルマレイミド-co-メチルメタクリレート)樹脂は、NMR分析の結果、N-シクロヘキシルマレイミドの含有量が6.5重量%であった。
[257]
[258] 得られた原料ペレットを真空乾燥し、260℃で押出機で溶融、コートハンガータイプのT-ダイ(T-die)に通過させ、クロムめっきキャスティングロールおよび乾燥ロールなどを経て、厚さ150μmのフィルムを製造した。このフィルムをパイロット延伸装備を用いて、125℃で、MD方向に、ロールの速度差を利用して170%の割合で延伸して、アクリルフィルムを製造した。
[259]
[260] 前記のような過程により製造されたアクリルフィルムをコロナ処理した後、前記アクリルフィルムの一面に、CK-PUD-F(Chokwangウレタン分散液)を純水で希釈して製造された、固形分含有量10重量%のプライマー組成物に、オキサゾリン架橋剤(日本触媒社、WS700)20重量部を添加したプライマー組成物を、#5バーでコーティングした後、TD方向に、130℃で、テンターを用いて190%延伸して、プライマー層の厚さが400nmのアクリルフィルムを製造した。
[261]
[262] 製造例2-接着剤組成物の製造
[263] (1)接着剤組成物A
3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’エポキシシクロヘキサンカルボキシレート25重量%(Dicel社のCelloxide2021P)、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル25重量%、3-エチル-3-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル]オキセタン(東亜合成、アロンオキセタンDOX221)50重量%を入れて製造した樹脂組成物100重量部に、陽イオン開始剤のCPI100P(Sanapro社)5重量部、ビニルトリエチルシラン5重量部を添加して、偏光板用接着剤組成物Aを製造した。
・・・(省略)・・・
[272] 実施例1
[273] マイクログラビアコーターを用いて、前記製造例1により製造されたアクリルフィルム2枚のプライマー層上に、接着剤組成物Aを、最終接着剤層の厚さが1μmとなるようにそれぞれ塗布した。その後、接着剤組成物が塗布された2枚のアクリルフィルムをPVA素子の両面にラミネートした。その後、UV照射装置(fusion lamp、D bulb)を用いて、PVA素子の一面方向で200mJ/cm^(2)の紫外線を照射し、同時に、前記UV照射装置の反対側に位置するアクリルフィルムの表面をドラムに密着させ、ドラムの温度を20℃に調節して、偏光板を製造した。」

2 引用発明
引用文献1の上記1の記載に基づけば、引用文献1には、製造例2([262]及び[263])の「接着剤組成物A」を用いた、実施例1([272]及び[273])の「偏光板」として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 マイクログラビアコーターを用いて、アクリルフィルム2枚のプライマー層上に、接着剤組成物Aを、最終接着剤層の厚さが1μmとなるようにそれぞれ塗布し、その後、接着剤組成物が塗布された2枚のアクリルフィルムをPVA素子の両面にラミネートし、その後、UV照射装置を用いて、PVA素子の一面方向で200mJ/cm^(2)の紫外線を照射し、同時に、前記UV照射装置の反対側に位置するアクリルフィルムの表面をドラムに密着させ、ドラムの温度を20℃に調節して製造した偏光板であって、ここで、
接着剤組成物Aは、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’エポキシシクロヘキサンカルボキシレート25重量%、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル25重量%、3-エチル-3-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル]オキセタン50重量%を入れて製造した樹脂組成物100重量部に、陽イオン開始剤のCPI100P 5重量部、ビニルトリエチルシラン5重量部を添加して、製造したものである、
偏光板。」


第5 対比・判断
1 本件発明1
(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。

ア 偏光フィルム
引用発明は、「マイクログラビアコーターを用いて、アクリルフィルム2枚のプライマー層上に、下記の接着剤組成物Aを、最終接着剤層の厚さが1μmとなるようにそれぞれ塗布し、その後、接着剤組成物が塗布された2枚のアクリルフィルムをPVA素子の両面にラミネートし、その後、UV照射装置を用いて、PVA素子の一面方向で200mJ/cm^(2)の紫外線を照射し、同時に、前記UV照射装置の反対側に位置するアクリルフィルムの表面をドラムに密着させ、ドラムの温度を20℃に調節して製造した偏光板」である。
上記製法及び技術常識からみて、引用発明の「PVA素子」は、偏光フィルムとして機能するものである。
そうしてみると、引用発明の「PVA素子」は、本件発明1の「偏光フィルム」に相当する。また、引用発明の「PVA素子」は、本件発明1の「偏光フィルム」の「ポリビニルアルコール系樹脂」「を含有する」との要件を満たす。

イ 第1硬化物層
引用発明の「接着剤組成物A」は、「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’エポキシシクロヘキサンカルボキシレート25重量%、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル25重量%、3-エチル-3-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル]オキセタン50重量%を入れて製造した樹脂組成物100重量部に、陽イオン開始剤のCPI100P 5重量部、ビニルトリエチルシラン5重量部を添加して、製造したものである」。
上記製法及び組成からみて、引用発明の「接着剤組成物A」及び「樹脂組成物」は、本件発明1の「硬化性組成物」及び「重合性化合物」に、それぞれ相当する。
また、前記アで述べた製法から理解される積層構造からみて、前記アで述べた引用発明の「最終接着剤層」は、本件発明1の「第1硬化物層」に相当する。
(当合議体注:引用発明の「最終接着剤層」の一方が本願発明の「第1硬化物層」に相当し、他方が請求項4に記載の「第2硬化物層」に相当すると理解される。)
さらに、上記ア及びイの製法からみて、引用発明の「接着剤層」は、本件発明1の「第1硬化物層」の「重合性化合物を含む硬化性組成物の硬化物から構成される」との要件を満たす。

ウ 2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物
上記イの製法及び化合物からみて、引用発明の「3-エチル-3-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル]オキセタン」は、本件発明1の「2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物」に相当する。また、引用発明の「接着剤組成物A」は、本件発明1の「硬化性組成物」の「重合性化合物の総量100質量%に対して」、「(A1)2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物15?60質量%」「を含有」するとの要件を満たす。

エ 脂肪族エポキシ化合物
上記イの製法及び化合物からみて、引用発明の「1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル」は、本件発明1の「2つ以上のエポキシ基を有する脂肪族エポキシ化合物」に相当する。また、引用発明の「接着剤組成物A」は、本件発明1の「硬化性組成物」の「重合性化合物の総量100質量%に対して」、「(A2)「2つ以上のエポキシ基を有する脂肪族エポキシ化合物3?40質量%」「を含有」するとの要件を満たす。

オ 脂環式エポキシ化合物
上記イの製法及び化合物からみて、引用発明の「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」は、本件発明1の「2つ以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物」に相当する。

カ 1つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物
上記イの製法及び組成からみて、引用発明の「接着剤組成物A」は、1つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物を有しない。
そうしてみると、引用発明の「接着剤組成物A」は、本件発明1の「硬化性組成物」の「1つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物(A3)の含有量が重合性化合物の量100質量%に対して10質量%以下である」との要件を満たす。

キ 偏光板
上記ア?カを総合すると、引用発明の「偏光板」は、本件発明1の「偏光板」に相当する。
また、上記アの製法からみて、引用発明は、「PVA素子」の両面に、「最終接着剤層」を含有するといえる。そうしてみると、引用発明は、本件発明1の「偏光フィルムの一方の面に」、「第1硬化物層」を「含有する」との要件を満たす。

(2)一致点及び相違点
以上より、本件発明1と引用発明とは、
「 ポリビニルアルコール系樹脂を含有する偏光フィルムの一方の面に、重合性化合物を含む硬化性組成物の硬化物から構成される第1硬化物層を含有する偏光板であって、該硬化性組成物は、重合性化合物の総量100質量%に対して、
(A1)2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物15?60質量%、
(A2)2つ以上のエポキシ基を有する脂肪族エポキシ化合物3?40質量%、
(A4-1)2つ以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物
を含有し、
1つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物(A3)の含有量が重合性化合物の総量100質量%に対して10質量%以下である、偏光板。」の点で一致し、以下の点で相違するか、一応相違する。

(相違点1)
「偏光フィルム」が、本件発明1は、「ポリビニルアルコール系樹脂中に二色性色素を含有する」ものであるのに対して、引用発明の「PVA素子」は、ポリビニルアルコール系樹脂中に二色性色素を含有するのかどうかが、一応明らかでない点。

(相違点2)
本件発明1が、「第1硬化物層と、イオン性化合物を含有する粘着層とをこの順に含有する」のに対して、引用発明は、下線を付した構成を具備しない点。

(相違点3)
「(A4-1)2つ以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物」が、本件発明1は、「重合性化合物の総量100質量%に対して」、「30?60質量%」含有するのに対して、引用発明は、「樹脂組成物100重量部」に対して、「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’エポキシシクロヘキサンカルボキシレート25重量%」である点。

(相違点4)
「硬化性組成物」が、本件発明1は、「重合性化合物の総量100質量%に対して」、「(A4-2)2つ以上のエポキシ基を有する芳香族エポキシ化合物0.1?20質量%」含有するのに対して、引用発明の「接着剤組成物A」は、2つ以上のエポキシ基を有する芳香族エポキシ化合物を含有しない点。

(3)判断
事案に鑑み、上記相違点3及び上記相違点4について検討する。
引用文献1の[71]には、「第2エポキシ化合物」として、「ビスフェノールF系エポキシ」等の芳香族エポキシ化合物が記載されていて、また、芳香族エポキシ化合物を含有する硬化物層は周知である。
しかしながら、引用文献1の上記記載は、引用文献1の[67]の「第1エポキシおよび第2エポキシは、例えば、それぞれ、接着剤組成物全体の100重量部に対して、20重量部?60重量部で含まれてよい。」との記載に対応するものである。そうしてみると、引用文献1の上記記載は、第2エポキシ化合物の例示として芳香族エポキシ化合物を挙げているにすぎず、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルのような本件発明1でいうところの脂肪族エポキシ化合物に加えて、芳香族エポキシ化合物を含有することが好ましいことを意味するものではない。
そして、引用発明の「接着剤組成物A」には、既に、引用文献1でいうところの「第2エポキシ化合物」である「1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル」(脂肪族エポキシ化合物)が含有されているのであるから、引用発明の「接着剤組成物A」に、さらに、芳香族エポキシ化合物を加える動機付けはない。

さらに進んで検討する。
引用文献1の[67]、[69]には、それぞれ、「前記第1エポキシおよび第2エポキシは、例えば、それぞれ、接着剤組成物全体の100重量部に対して、20重量部?60重量部で含まれてよい。」、「前記第1エポキシ化合物は、Tgを高め、接着層の強度(hardness)を付与するためのもので、最も好ましくは、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートであってよい。」と記載されている。
しかしながら、引用文献1の上記記載は、芳香族エポキシ化合物を加えた場合での「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」の重量%を規定したものではない。そして、引用文献1の他の記載においても、「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」及び芳香族エポキシ化合物を加えた上で、接着剤組成物全体の100重量部に対して、「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」を30?60重量%、芳香族エポキシ化合物を0.1?20重量%とする記載も示唆もない。

そうしてみると、当業者であっても、引用発明に基づいて上記相違点3及び上記相違点4に係る本件発明1の構成とすることが、容易になし得たということはできない。

なお、原査定の理由に示された、国際公開第2011/021441号(以下「引用文献2」という。)、特開2011-225764号公報(以下「引用文献3」という。)のいずれの文献にも、上記相違点3及び上記相違点4に係る本件発明1の構成は、記載されていない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献1?3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

2 本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1の構成を全て具備するものであるから、本件発明2?4も、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献1?3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたということができない。


第6 原査定について
上記第5で述べたように、本件の請求項1?4に係る発明は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1?3に基づいて、容易に発明をすることができたということができない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-12-16 
出願番号 特願2015-199650(P2015-199650)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 清水 督史薄井 義明後藤 大思  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 井口 猶二
神尾 寧
発明の名称 偏光板  
代理人 森住 憲一  
代理人 梶田 真理奈  
代理人 松谷 道子  
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