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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1369518
審判番号 不服2019-11148  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-23 
確定日 2021-01-05 
事件の表示 特願2017-552051「データ伝送方法、デバイス、及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日国際公開、WO2016/161662、平成30年 6月21日国内公表、特表2018-516480、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2015年(平成27年)4月10日を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年11月10日 手続補正書の提出
平成30年10月12日付け 拒絶理由通知書
平成31年 1月23日 意見書,手続補正書の提出
平成31年 4月16日付け 拒絶査定
令和 元年 8月23日 拒絶査定不服審判の請求,
手続補正書の提出
令和 2年 5月20日付け 拒絶理由通知書
令和 2年 8月25日 意見書,手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成31年 4月16日付け 拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1?3,8?10,15?17,22?24,29,30
・引用文献等 2

<引用文献等一覧>
2.Alcatel-Lucent Shanghai Bell, Alcatel-Lucent,LBT and Frame Structure Design for LAA[online], 3GPP TSG RAN WG1 adhoc_LTE_LAA_1503 R1-151071,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_AH/LTE_LAA_1503/Docs/R1-151071.zip>,2015年 3月18日

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2.(明確性)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

3.(実施可能要件)この出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

(1)理由1(進歩性)について
・請求項 1,2,7,8,13,14,19,20,25-26
・引用例等 2

(2)理由2(明確性)について
・請求項 2-6,8-12,14-18,20-26
請求項2に「物理層共通制御チャネル」という記載があるが,当該「物理層共通制御チャネル」は当該技術分野における一般的な用語でないため,当該「チャネル」が具体的にどのようなチャネルを意味するのか不明である。
請求項8,14,20についても同様である。
よって,請求項2,8,14,20に係る発明,請求項2を引用する請求項3-6,25に係る発明,請求項8を引用する請求項9-12,25に係る発明,請求項14を引用する請求項15-18,26に係る発明,及び請求項20を引用する請求項21-24,26に係る発明は明確でない。

(3)理由3(実施可能要件)について
・請求項 3-6,9-12,15-18,21-26
請求項3には,「前記検出ユニットは,前記第1のサービングセルがアンライセンス周波数帯を先行占有しない期間である閉鎖期における第1のサブフレームの予め設定された期間において,前記第1のサービングセルの第1の情報を検出し,
前記管理ユニットは,前記第1の情報に従って,前記時間リソースの開始位置を決定する,請求項1または2に記載のユーザ機器。」と記載され,請求項3が引用する請求項1には,「前記時間リソースは,基地局に属する第1のサービングセルの前記開放期に含まれ,前記第1のサービングセルの前記開放期は,前記第1のサービングセルがアンライセンス周波数帯を占有する期間であり,」との記載があるが,第1のサービングセルがアンライセンス周波数帯を先行占有しない期間において,第1のサービングセルの第1の情報をどのようにして検出できるのか不明であり,またアンライセンス周波数帯を占有しない期間において,第1のサービングセルがアンライセンス周波数帯を占有する期間に含まれる時間リソースの開始位置がどのようにして決定できるのかも不明である。
請求項9,15,21についても同様である。
よって,この出願の発明の詳細な説明は,当業者が請求項3,9,15及び21に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。また,同様の理由により,この出願の発明の詳細な説明は,当業者が請求項3を引用する請求項4-6,25,請求項9を引用する請求項10-12,25,請求項15を引用する請求項16-18,26,及び請求項21を引用する請求項22-24,26に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

引用例等一覧
2.Alcatel-Lucent Shanghai Bell, Alcatel-Lucent,LBT and Frame Structure Design for LAA[online],3GPP TSG RAN WG1 adhoc_LTE_LAA_1503 R1-151071,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_AH/LTE_LAA_1503/Docs/R1-151071.zip>,2015年 3月18日(アップロード)

第4 本願発明
本願請求項1ないし10に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明10」という。)は,令和2年8月25日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
ユーザ機器であって,
時間リソースの少なくとも2つの継続時間情報を検出するように構成される検出ユニットであって,前記時間リソースは,基地局に属する第1のサービングセルの開放期に含まれ,前記第1のサービングセルの前記開放期は,前記第1のサービングセルがアンライセンス周波数帯を占有する期間であり,各継続時間情報は,前記時間リソースの異なる終了時刻を示す,検出ユニットと,
前記検出ユニットによって検出された前記継続時間情報のうち最後の情報に従って,前記時間リソースの前記終了時刻を決定するように構成される管理ユニットと,
を備え,
前記継続時間情報は,前記時間リソースにおける最後のサブフレームの長さについての情報を含む,
ユーザ機器。
【請求項2】
前記継続時間情報は,制御チャネルに保持される,
請求項1に記載のユーザ機器。
【請求項3】
基地局であって,
時間リソースの終了時刻を決定するように構成される管理ユニットと,
前記時間リソースの少なくとも2つの継続時間情報をユーザ機器に送信するように構成される送信ユニットであって,前記継続時間情報は,前記継続時間情報の開始時刻から前記時間リソースの前記終了時刻までの時間長を示すために用いられ,各継続時間情報は,前記時間リソースの異なる終了時刻を示す,送信ユニットと,
を備え,
前記時間リソースは,前記基地局に属する第1のサービングセルの開放期に含まれ,前記第1のサービングセルの前記開放期は,前記第1のサービングセルがアンライセンス周波数帯を占有する期間であり,
前記継続時間情報は,前記時間リソースにおける最後のサブフレームの長さについての情報を含む,
基地局。
【請求項4】
前記継続時間情報は,制御チャネルに保持される,
請求項3に記載の基地局。
【請求項5】
データ伝送方法であって,
ユーザ機器によって,時間リソースの少なくとも2つの継続時間情報を検出する段階であって,前記時間リソースは,基地局に属する第1のサービングセルの開放期に含まれ,前記第1のサービングセルの前記開放期は,前記第1のサービングセルがアンライセンス周波数帯を占有する期間であり,各継続時間情報は,前記時間リソースの異なる終了時刻を示す,段階と,
前記ユーザ機器によって,前記継続時間情報のうち最後の情報に従って,前記時間リソースの前記終了時刻を決定する段階と,
を備え,
前記継続時間情報は,前記時間リソースにおける最後のサブフレームの長さについての情報を含む,
方法。
【請求項6】
前記継続時間情報は,制御チャネルに保持される,
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
データ伝送方法であって,
基地局によって,時間リソースの終了時刻を決定する段階と,
前記基地局によって,前記時間リソースの少なくとも2つの継続時間情報をユーザ機器に送信する段階であって,前記継続時間情報は,前記継続時間情報の開始時刻から前記時間リソースの前記終了時刻までの時間長を示すために用いられ,各継続時間情報は,前記時間リソースの異なる終了時刻を示す,段階と,
を備え,
前記時間リソースは,前記基地局に属する第1のサービングセルの開放期に含まれ,前記第1のサービングセルの前記開放期は,前記第1のサービングセルがアンライセンス周波数帯を占有する期間であり,
前記継続時間情報は,前記時間リソースにおける最後のサブフレームの長さについての情報を含む,方法。
【請求項8】
前記継続時間情報は,制御チャネルに保持される,
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載のユーザ機器と,請求項3または4に記載の基地局とを備える,
無線通信システム。
【請求項10】
プログラムが記録されたコンピュータ可読記憶媒体であって,前記プログラムは,請求項5から8のいずれか1項に記載の方法をコンピュータに実行させる,コンピュータ可読記憶媒体。」

第5 引用例の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶理由及び当審拒絶理由で引用されたAlcatel-Lucent Shanghai Bell, Alcatel-Lucent,LBT and Frame Structure Design for LAA(当審仮訳:LAAのためのLBT及びフレーム構造のデザイン),[online],3GPP TSG RAN WG1 adhoc_LTE_LAA_1503 R1-151071,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_AH/LTE_LAA_1503/Docs/R1-151071.zip>,2015年 3月18日(アップロード)(以下,「引用例」という。)には,以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)

「2.2 LAA Frame structure for DL
In this section, we present some possible solutions/enhancements for LAA DL based on LBE.
One of the advantages of LBE over FBE is that with LBE, the equipment can start CCA at any time as long as it has data to transmit. To fully take advantage of this, the LAA eNB should be allowed to start CCA at any time, without any restriction such as starting CCA at the subframe boundary or at the OFDM symbol boundary.
It has been agreed that some signal(s) can be transmitted by eNB between the time eNB is permitted to transmit and the start of data transmission at least to reserve the channel. One possible way is to continue the signal, e.g. preamble transmission, until the subframe boundary and then start the data transmission, as proposed in [4]. However, because the preamble transmission does not carry any data, this would result in lower spectral efficiency, and cause more interference to other systems due to the extended transmission time. Hence, it would be beneficial to minimize the preamble length and allow a partial subframe (e.g. a few OFDM symbols) to be used for data transmission. The length of the preamble can be decided based on whether the preamble needs to serve any purpose other than occupying the channel, e.g. assisting in synchronization and AGC tuning, or implicit detection of the starting symbol of data transmission. The UE would need to know when the data transmission has started in the subframe in order to perform proper decoding. This could be indicated in a DCI in the next subframe, or implicitly detected through preamble detection.
The eNB is considered to start occupying the channel when it starts the preamble transmission. In some regions, there is a regulatory requirement that a device can occupy the channel continuously only up to the maximum channel occupancy time. The most stringent requirement is expected to be 4 ms in Japan, while in Europe it is up to 10 or 13 ms. Since the preamble transmission can start at any time, possibly in the middle of a subframe, if the data transmission always needs to stop at the subframe boundary, the eNB may not be able to fully utilize the maximum channel occupancy time for each continuous transmission. It would need to contend for the channel again for a new transmission. This would put the LAA eNB in a disadvantageous position compared to e.g. Wi-Fi nodes that can fully utilize the maximum channel occupancy time. The effect would be more significant when the maximum channel occupancy time is short (e.g. in Japan). Hence it is beneficial to allow the data transmission to stop in the middle of a subframe. This concept is not new because DwPTS in TDD already allows a DL transmission using a partial subframe. LAA can maximally reuse the existing specifications in order to minimize the impact. The ending symbol could be indicated in the DCI.
Fig. 1 gives an example, where the SCell and PCell are synchronous, according to the CA framework. The eNB performs (E)CCA and finds the channel available at symbol #8 of subframe #2. It transmits a preamble till the symbol #8 boundary to grab the channel and align the symbol boundary. In this example, the eNB also transmits the preamble in symbol#9, e.g. to facilitate the UE synchronization and AGC tuning.
After that, the eNB transmits data in subsequent symbols of subframe #2. The corresponding resource allocation and MCS information could be indicated by an independent DCI in subframe #3, or by the same DCI for the data transmission occurring in subframe #3.
In this example, the maximum channel occupancy time is assumed to be 4ms. Hence, the eNB continues to transmit data up to symbol #7 in subframe #6 to fulfil the 4ms transmission burst.

Fig. 1 Frame Structure for DL only」(4葉23行目?5葉16行目)

(当審仮訳:
2.2 DLのためのLAAフレーム構造
このセクションでは,LBEに基づくLAA DLのいくつかの可能なソリューション/拡張機能を紹介します。
FBEに対するLBEの利点の1つは,LBEを使用すると,送信するデータがある限り,いつでも機器がCCAを開始できることです。これを十分に活用するには,LAA eNBがサブフレーム境界またはOFDMシンボル境界でCCAを開始するなどの制限なしに,いつでもCCAを開始できるようにする必要があります。
eNBが送信を許可されている時間と少なくともチャネルを予約するためのデータ送信の開始との間に,いくつかの信号がeNBによって送信され得ることが合意された。1つの可能な方法は,信号を継続することです。[4]で提案されているように,サブフレーム境界までプリアンブル送信,その後データ送信を開始します。ただし,プリアンブル伝送ではデータが伝送されないため,スペクトル効率が低下し,伝送時間が長くなるため,他のシステムへの干渉が多くなります。したがって,プリアンブルの長さを最小限に抑え,部分的なサブフレーム(たとえば,いくつかのOFDMシンボル)をデータ送信に使用できるようにすることが有益です。プリアンブルの長さは,プリアンブルがチャネルを占有する以外の目的を果たす必要があるかどうかに基づいて決定できます。同期およびAGCチューニング,またはデータ送信の開始シンボルの暗黙的な検出を支援します。UEは,適切なデコーディングを実行するために,サブフレームでデータ送信がいつ開始されたかを知る必要があります。これは,次のサブフレームのDCIで示されるか,プリアンブル検出によって暗黙的に検出されます。
eNBは,プリアンブル送信を開始すると,チャネルの占有を開始すると見なされます。一部の地域では,デバイスが最大チャネル占有時間までしか継続的にチャネルを占有できないという規制要件があります。最も厳しい要件は,日本では4ミリ秒であると予想されますが,ヨーロッパでは最大10ミリ秒または13ミリ秒です。プリアンブル送信はいつでも,おそらくサブフレームの途中でも開始できるため,データ送信が常にサブフレーム境界で停止する必要がある場合,eNBは各連続送信の最大チャネル占有時間を完全に利用できない場合があります。新しい伝送のためにチャネルを再び争う必要があります。これにより,LAA eNBは,たとえば,最大チャネル占有時間を完全に利用できるWi-Fiノード。最大のチャネル占有時間が短い場合(日本など)には,この影響はさらに大きくなります。したがって,サブフレームの途中でデータ送信を停止できるようにすると便利です。TDDのDwPTSはすでに部分サブフレームを使用したDL送信を許可しているため,この概念は新しいものではありません。 LAAは,影響を最小限に抑えるために,既存の仕様を最大限に再利用できます。終了シンボルはDCIで示すことができます。
図1は,CAフレームワークによる,SCellとPCellが同期している例を示しています。eNBは(E)CCAを実行し,サブフレーム#2のシンボル#8で利用可能なチャネルを見つけます。 シンボル#8の境界までプリアンブルを送信してチャネルを取得し,シンボルの境界を揃えます。 この例では,eNBはプリアンブルをシンボル#9で送信します。例えば,UE同期とAGCチューニングを容易にするため。
その後,eNBはサブフレーム#2の後続のシンボルでデータを送信します。対応するリソース割り当てとMCS情報は,サブフレーム#3の独立したDCI,またはサブフレーム#3で発生するデータ送信の同じDCIによって示すことができます。
この例では,最大チャネル占有時間は4msと想定されています。したがって,eNBは4ms送信バーストを満たすためにサブフレーム#6のシンボル#7までデータを送信し続けます。

(図面は省略)
)

上記の記載及び当業者における技術常識から以下のことがいえる。

ア 引用例の「UEは,適切なデコーディングを実行するために,サブフレームでデータ送信がいつ開始されたかを知る必要があります。これは,次のサブフレームのDCIで示されるか,プリアンブル検出によって暗黙的に検出されます。」との記載によれば,「UE」は,データ送信の開始が示されるDCIを受信することは明らかである。
また,引用例の「終了シンボルはDCIで示すことができます。」との記載によれば,「UE」は,データ送信の終了シンボルが示されるDCIを受信することも明らかである。
そして,データ送信の開始からデータ送信の終了シンボルまではデータ送信される期間であることは明らかであるから,引用例では,「UEは,データ送信される期間の開始を示すDCIと終了シンボルを示すDCIを受信する」ものといえる。

イ 引用例の「Fig.1」(当審仮訳:図1 以下,「図1」という。)によれば,「Unlicensed SCell」(当審仮訳:アンライセンスのSCell 以下,「アンライセンスのSCell」という。)に「Channel Occupancy」(当審仮訳:チャネル占有期間 以下,「チャネル占有期間」という。)で示される期間があることが見て取れ,当該期間が「アンライセンスのSCellがチャネルを占有する期間」であることは明らかである。また,引用例の図1によれば,「チャネル占有期間」で示される期間に「Data in left integral symbols」(当審仮訳:残された整数シンボル内のデータ 以下,「残された整数シンボル内のデータ」という。)及び「Data in one subframe」(当審仮訳:1つのサブフレーム内のデータ 以下,「1つのサブフレーム内のデータ」という。)の期間があることも見て取れる。そして,当該図1と,引用例の「図1は,CAフレームワークによる,SCellとPCellが同期している例を示しています。・・・(中略)・・・その後,eNBはサブフレーム#2の後続のシンボルでデータを送信します。・・・(中略)・・・したがって,eNBは4ms送信バーストを満たすためにサブフレーム#6のシンボル#7までデータを送信し続けます。」との記載を合わせて解釈すると,引用例の「残された整数シンボル内のデータ」及び「1つのサブフレーム内のデータ」の期間が,「データ送信される期間」を示すことは明らかであり,当該期間は,「アンライセンスのSCellがチャネルを占有する期間」に含まれているといえる。
また,引用例の図1には,「アンライセンスのSCell」に(e)CCAの期間があることも見て取れ,さらに,引用例の「eNBは(E)CCAを実行し,サブフレーム#2のシンボル#8で利用可能なチャネルを見つけます。」との記載からすると「アンライセンスのSCell」は,「eNBのアンライセンスのSCell」であること明らかである。
してみると,引用例では,「UE」へ「データ送信される期間は,eNBのアンライセンスのSCellがチャネルを占有する期間に含まれている」といえる。

ウ 引用例の「UEは,適切なデコーディングを実行するために,サブフレームでデータ送信がいつ開始されたかを知る必要があります。これは,次のサブフレームのDCIで示されるか,プリアンブル検出によって暗黙的に検出されます。」との記載によれば,適切なデコーディングを実行するために「UE」は,「受信したDCIに従うこと」は明らかである。

エ 上記「ア」で検討したとおり,引用例のDCIは,データ送信される期間の終了シンボルを示すものであって,引用例の図1及び「したがって,eNBは4ms送信バーストを満たすためにサブフレーム#6のシンボル#7までデータを送信し続けます。」との記載も併せれば,終了シンボルとは最後のサブフレームの終了シンボルを示すことは明らかであるから,「DCIは,データ送信される期間における最後のサブフレームの終了シンボルについての情報を含む」といえる。

以上を総合すると,引用例には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「UEは,データ送信される期間の開始を示すDCIと終了シンボルを示すDCIを受信し,データ送信される期間は,eNBのアンライセンスのSCellがチャネルを占有する期間に含まれており,受信したDCIに従うこと,また,DCIは,データ送信される期間における最後のサブフレームの終了シンボルについての情報を含むUE。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「UE」,「eNB」は,それぞれ,本願発明1の「ユーザ機器」,「基地局」に相当する。
また,引用発明の「アンライセンスのSCell」は,「UE」にデータを送信していることは明らかであるから,アンライセンスのSCellはサービングセルといえる。そうすると,引用発明の「eNBのアンライセンスのSCell」は,本願発明の「基地局に属する第1のサービングセル」に相当する。

(2)引用発明の「データ送信される期間」は,データの送信に利用される時間軸上のリソースであるといえ,本願発明1の「時間リソース」に相当する。
また,引用発明の「データ送信される期間の開始を示すDCI」と「終了シンボルを示すDCI」は,データ送信される期間の開始と終了シンボルを示すのであるから,データ送信される期間の継続する時間を示す情報であるといえ,本願発明1の「時間リソースの少なくとも2つの継続時間情報」に含まれる。
引用発明の「アンライセンスのSCell」が,アンライセンス周波数帯を利用するセルであることは明らかであるから,引用発明の「アンライセンスのSCellがチャネルを占有する期間」は,本願発明1の「第1のサービングセルがアンライセンス周波数帯を占有する期間」,及び当該期間である「第1のサービングセルの開放期」に相当する。
また,引用発明の「終了シンボル」が,データ送信される期間の終了時点となること,すなわち,終了時刻となることは明らかであるので,引用発明の「DCI」と,本願発明の「継続時間情報」とは,「時間リソースの終了時刻を示す」点で共通する。
そして,引用発明の「UE」は,「DCIを受信する」のであるから,DCIを検出すること,また,検出するユニットを備えていることも明らかである。
そうすると,引用発明の「UEは,データ送信される期間の開始を示すDCIと終了シンボルを示すDCIを受信し,データ送信される期間は,eNBのアンライセンスのSCellがチャネルを占有する期間に含まれている」ことと,本願発明1の「ユーザ機器」が,「時間リソースの少なくとも2つの継続時間情報を検出するように構成される検出ユニットであって,前記時間リソースは,基地局に属する第1のサービングセルの開放期に含まれ,前記第1のサービングセルの前記開放期は,前記第1のサービングセルがアンライセンス周波数帯を占有する期間であり,各継続時間情報は,前記時間リソースの異なる終了時刻を示す,検出ユニット」を備えることとは,「ユーザ機器」が「時間リソースの少なくとも2つの継続時間情報を検出するように構成される検出ユニットであって,前記時間リソースは,基地局に属する第1のサービングセルの開放期に含まれ,前記第1のサービングセルの前記開放期は,前記第1のサービングセルがアンライセンス周波数帯を占有する期間であり,継続時間情報は,前記時間リソースの終了時刻を示す,検出ユニット」を備える点で共通する。

(3)上記「(2)」で検討したとおり,引用発明がDCIを検出するユニットを備えていることは明らかであるから,「受信したDCIに従うこと」は,DCIを検出するユニットによって検出されたDCIに従うものであることも明らかである。そして,引用発明の「DCI」は,「データ送信される期間の終了シンボルを示す」ものであるから,「受信したDCIに従うこと」で,データ送信される期間の終了時刻を決定していることは明らかであり,また,UEが当該決定を行うユニットを備えていることも明らかである。そして,当該ユニットを管理ユニットと呼称することは任意である。
そうすると,引用発明で「UE」が「データ送信される期間」の「終了シンボルを示すDCIを受信し」,「受信したDCIに従うこと」と,本願発明1の「ユーザ機器」が「前記検出ユニットによって検出された前記継続時間情報のうち最後の情報に従って,前記時間リソースの前記終了時刻を決定するように構成される管理ユニット」を備えることとは,「ユーザ機器」が,「前記検出ユニットによって検出された前記継続時間情報に従って,前記時間リソースの前記終了時刻を決定するように構成される管理ユニット」を備える点で共通する。

(4)引用発明の「終了シンボル」が,データ送信される期間の終了時点となることは明らかであるから,引用発明の「最後のサブフレームの終了シンボル」は,データ送信される期間における,最後のサブフレームの長さを示すものともいえる。そうすると,引用発明の「DCIは,データ送信される期間における最後のサブフレームの終了シンボルについての情報を含む」ことは,本願発明の「前記継続時間情報は,前記時間リソースにおける最後のサブフレームの長さについての情報を含む」ことに相当する。

以上のことから,本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。

(一致点)
「 ユーザ機器であって,
時間リソースの少なくとも2つの継続時間情報を検出するように構成される検出ユニットであって,前記時間リソースは,基地局に属する第1のサービングセルの開放期に含まれ,前記第1のサービングセルの前記開放期は,前記第1のサービングセルがアンライセンス周波数帯を占有する期間であり,継続時間情報は,前記時間リソースの終了時刻を示す,検出ユニットと,
前記検出ユニットによって検出された前記継続時間情報に従って,前記時間リソースの前記終了時刻を決定するように構成される管理ユニットと,
を備え,
前記継続時間情報は,前記時間リソースにおける最後のサブフレームの長さについての情報を含む,
ユーザ機器。」

(相違点)
継続時間情報に関し,本願発明1では,「各継続時間情報は,前記時間リソースの異なる終了時刻を示す」ものであって,検出された「前記継続期間のうち最後の情報に従って」時間リソースの終了時刻を決定するのに対し,引用発明では,「DCI」はそれぞれ「データ送信される期間の開始を示す」ものと「終了シンボルを示す」ものであって,当該発明特定事項を特定していない点。

上記相違点について検討する。
上記相違点に係る本願発明1の「各継続時間情報は,前記時間リソースの異なる終了時刻を示す」こと,検出された「前記継続期間のうち最後の情報に従って」時間リソースの終了時刻を決定することは,引用例には記載されておらず,また本願出願日前において周知技術であるともいえない。
また,引用発明のDCIは,「データ送信される期間の開始を示すDCI」と「終了シンボルを示すDCI」であるが,このうち「データ送信される期間の開始を示すDCI」は,引用例に「UEは,適切なデコーディングを実行するために,サブフレームでデータ送信がいつ開始されたかを知る必要があります」と記載されているようにデータ送信がいつ開始されたかを知るために必要なものである。してみれば,「データ送信される期間の開始を示すDCI」を「終了シンボルを示すDCI」と異なる終了時刻を示すものとすること,ましてや複数の終了DCIのうち最後の終了DCIで時間リソースの終了を決定するようにする動機付けも存在しない。
したがって,本願発明1は,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし10について
(1)本願発明2,5,6及び9について
本願発明2,5,6及び9も,本願発明1の「各継続時間情報は,前記時間リソースの異なる終了時刻を示す」こと,検出された「前記継続期間のうち最後の情報に従って」時間リソースの終了時刻を決定することと同一の発明特定事項を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。

(2)本願発明3,4,7,8及び10について
本願発明3,4,7,8及び10も,本願発明1の「各継続時間情報は,前記時間リソースの異なる終了時刻を示す」ことと同一の発明特定事項を備えるものであるから,本願発明1と同様に,当業者であっても,引用発明に基づいて,容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定及び当審拒絶理由についての判断
1.特許法29条第2項(原査定及び当審拒絶理由の理由1)について
令和2年8月25日の手続補正により補正された請求項1ないし10は,それぞれ「各継続時間情報は,前記時間リソースの異なる終了時刻を示す」という事項を少なくとも備えるものとなっており,上記「第5」及び「第6」に記載したとおり,本願発明1ないし10は,上記引用例に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって,原査定の理由を維持することはできない。

2.特許法第36条第6項第2号(当審拒絶理由の理由2)について
令和2年8月25日の手続補正により,補正前の請求項2における「物理層共有制御チャネル」との記載が「制御チャネル」と補正された結果,請求項2に係る発明は明確となった。同様に,補正前の請求項8,14,20に対応する請求項4,6,8に係る発明も「制御チャネル」と補正され,また当該補正により請求項2,4を引用する請求項9,請求項6,8を引用する請求項10に係る発明についても,明確となった。
よって,この拒絶理由は解消した。

3.特許法第36条第4項第1号(当審拒絶理由の理由3)について
令和2年8月25日の手続補正により,当該拒絶理由を通知した補正前の請求項3,9,15,21は削除された結果,この拒絶理由は解消した。

第8 むすび
以上のとおり,本願発明1ないし10は,当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-12-15 
出願番号 特願2017-552051(P2017-552051)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
P 1 8・ 536- WY (H04W)
P 1 8・ 537- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 古市 徹宮田 繁仁  
特許庁審判長 廣川 浩
特許庁審判官 永田 義仁
本郷 彰
発明の名称 データ伝送方法、デバイス、及びシステム  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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