• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1369525
審判番号 不服2019-7014  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-29 
確定日 2021-01-05 
事件の表示 特願2017-534615「ソフトウェア定義型データセンター、並びにそのためのサービスクラスタスケジューリング方法及びトラフィック監視方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月 6日国際公開、WO2017/113273、平成30年 2月 8日国内公表、特表2018-504038、請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)12月31日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 7月26日 :手続補正書の提出
平成30年 7月24日付け:拒絶理由通知書
平成30年10月31日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 1月23日付け:拒絶査定
令和 元年 5月29日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 7月 6日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知
令和 2年11月 9日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成31年1月23日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし17に係る発明は、以下の引用文献AないしEに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A 特開2012-039188号公報
B 特開2013-105308号公報
C 国際公開第2014/208538号
D 特開2007-110240号公報
E 特表2004-507169号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし17に係る発明は、以下の引用文献1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1 特開2013-105308号公報(拒絶査定時の引用文献B)
2 国際公開第2015/037604号(当審において新たに引用した文献)
3 特開2015-91106号公報(当審において新たに引用した文献)
4 国際公開第2012/098786号(当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願請求項1ないし17に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明17」という。)は、令和2年11月9日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし17は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
ソフトウェア定義型データセンターにおけるサービスクラスタスケジューリング方法であって、前記ソフトウェア定義型データセンターは、ソフトウェア定義型ネットワーキング(SDN)コントローラと複数のエッジスイッチとを備え、前記複数のエッジスイッチは前記SDNコントローラに通信可能に接続され、第1のサービスクラスタ及び第2のサービスクラスタが前記ソフトウェア定義型データセンターに展開され、
前記SDNコントローラが、第2のエッジスイッチにより報告されたユーザのサービス要求パケットを受信する段階であって、前記第2のエッジスイッチは前記ユーザがアクセスするエッジスイッチである、受信する段階と、
前記SDNコントローラが、前記サービス要求パケット内の宛先IPアドレス情報に従って、前記第1のサービスクラスタ及び前記第2のサービスクラスタから前記サービス要求パケットに対応するサービスクラスタを判定する段階であって、前記第1のサービスクラスタは、第1のIPアドレスを共有する少なくとも2つのオンライン仮想マシンを含み、前記第2のサービスクラスタは、第2のIPアドレスを共有する少なくとも2つのオンライン仮想マシンを含み、前記第1のIPアドレスは前記第2のIPアドレスとは異なる、段階と、
前記SDNコントローラが負荷分散ポリシに従って、判定された前記サービスクラスタ内の前記少なくとも2つのオンライン仮想マシンからターゲット仮想マシンを選択する段階であって、前記ターゲット仮想マシンは前記ユーザにサービスを提供する、選択する段階と、
前記SDNコントローラが前記ターゲット仮想マシンと前記ユーザとの間の転送情報を決定する段階と、
前記SDNコントローラが前記転送情報に従って、第1の転送フローテーブル及び第2の転送フローテーブルを生成する段階であって、前記第1の転送フローテーブルは、前記ターゲット仮想マシンのエッジスイッチがパケットを転送するのに用いられ、前記第2の転送フローテーブルは、前記第2のエッジスイッチがパケットを転送するのに用いられる、生成する段階と、
前記SDNコントローラが、前記第1の転送フローテーブルを前記ターゲット仮想マシンの前記エッジスイッチに送出する段階と、
前記SDNコントローラが、前記第2の転送フローテーブルを前記第2のエッジスイッチに送出する段階と、
前記SDNコントローラが、判定された前記サービスクラスタ内の前記少なくとも2つのオンライン仮想マシンに対して負荷監視を実行し、負荷監視結果を定期的に取得する段階であって、前記負荷監視はリソース負荷監視又はトラフィック負荷監視を含む、取得する段階と
を備え、
前記SDNコントローラは、負荷分散装置としての機能を有し、ユーザトラフィックをSDNネットワークの入り口でエッジスイッチに分配し、前記サービスクラスタの健全性チェックと、前記リソース負荷監視又は前記トラフィック負荷監視とに基づいて最適経路を選択する
方法。
【請求項2】
前記SDNコントローラが負荷分散ポリシに従って、判定された前記サービスクラスタ内の前記少なくとも2つのオンライン仮想マシンからターゲット仮想マシンを前記選択する段階は、
前記SDNコントローラが、判定された前記サービスクラスタ内の各オンライン仮想マシンのリソース負荷情報又はトラフィック負荷情報を取得して、最小リソース負荷を有する仮想マシンを前記ターゲット仮想マシンとして選択する段階、又は最小トラフィック負荷を有する仮想マシンを前記ターゲット仮想マシンとして選択する段階を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記SDNコントローラが、判定された前記サービスクラスタ内の各オンライン仮想マシンのリソース負荷情報又はトラフィック負荷情報を前記取得する段階は、
前記SDNコントローラが、判定された前記サービスクラスタ内の各オンライン仮想マシンのリソース負荷情報又はトラフィック負荷情報を前記負荷監視結果から取得する段階を含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記SDNコントローラが、判定された前記サービスクラスタ内の前記少なくとも2つのオンライン仮想マシンに対してトラフィック負荷監視を前記実行する段階は、
前記SDNコントローラが、判定された前記サービスクラスタ内の各オンライン仮想マシンのエッジスイッチにトラフィック統計データ抽出要求を定期的に送出し、各オンライン仮想マシンの前記エッジスイッチによりフィードバックされるT1時点におけるトラフィック統計データ及びT2時点におけるトラフィック統計データを別々に受信する段階と、
前記SDNコントローラが、各オンライン仮想マシンの前記エッジスイッチの前記T1時点における前記トラフィック統計データと前記T2時点における前記トラフィック統計データとの間の差異に従って、各オンライン仮想マシンの前記トラフィック負荷情報を取得する段階と
を含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記SDNコントローラが、判定された前記サービスクラスタ内の各オンライン仮想マシンのエッジスイッチにトラフィック統計データ抽出要求を定期的に前記送出する段階の前に、
前記SDNコントローラが、判定された前記サービスクラスタ内の各オンライン仮想マシンの前記エッジスイッチにトラフィック監視命令を送出する段階をさらに備え、
前記トラフィック監視命令は、判定された前記サービスクラスタ内の各オンライン仮想マシンの前記エッジスイッチに、前記SDNコントローラが送出した転送フローテーブルに対応するパケットトラフィック統計データを収集するよう命令するのに用いられる、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記SDNコントローラが、各オンライン仮想マシンの前記エッジスイッチの前記T1時点における前記トラフィック統計データと前記T2時点における前記トラフィック統計データとの間の差異に従って、各オンライン仮想マシンの前記トラフィック負荷情報を前記取得する段階の前に、
前記SDNコントローラが、前記T1時点における各オンライン仮想マシンのサービス応答トラフィックを前記T1時点における前記トラフィック統計データから抽出する段階、及び前記SDNコントローラが、前記T2時点における各オンライン仮想マシンのサービス応答トラフィックを前記T2時点における前記トラフィック統計データから抽出する段階と
前記SDNコントローラが、前記T1時点における前記サービス応答トラフィックと前記T2時点における前記サービス応答トラフィックとの間の差異を各オンライン仮想マシンの前記トラフィック負荷情報として用いる段階と
をさらに備える
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ソフトウェア定義型データセンターにおけるサービスクラスタトラフィック監視方法であって、前記ソフトウェア定義型データセンターは、ソフトウェア定義型ネットワーキング(SDN)コントローラと複数のエッジスイッチとを備え、前記複数のエッジスイッチは前記SDNコントローラに通信可能に接続され、第1のサービスクラスタ及び第2のサービスクラスタが前記ソフトウェア定義型データセンターにさらに展開され、
前記SDNコントローラが、サービスクラスタ内の各オンライン仮想マシンのエッジスイッチにトラフィック統計データ抽出要求を定期的に送出する段階であって、前記サービスクラスタは、前記第1のサービスクラスタ及び前記第2のサービスクラスタからのサービスリクエストパケット中の宛先IPアドレス情報に従って前記SDNコントローラにより判定され、前記第1のサービスクラスタは第1のIPアドレスを共有する少なくとも2つのオンライン仮想マシンを含み、前記第2のサービスクラスタは第2のIPアドレスを共有する少なくとも2つの仮想マシンを含み、前記第1のIPアドレスは前記第2のIPアドレスとは異なり、前記サービスリクエストパケットは第2のエッジスイッチにより前記SDNコントローラに報告される、段階と、
前記SDNコントローラが、各オンライン仮想マシンの前記エッジスイッチによりフィードバックされるT1時点におけるトラフィック統計データ及びT2時点におけるトラフィック統計データを別々に受信する段階と、
前記SDNコントローラが、各オンライン仮想マシンの前記エッジスイッチの前記T1時点における前記トラフィック統計データと前記T2時点における前記トラフィック統計データとの間の差異に従って、各オンライン仮想マシンのトラフィック負荷情報を取得する段階と、
前記SDNコントローラが、判定された前記サービスクラスタ内の前記少なくとも2つのオンライン仮想マシンに対して負荷監視を実行し、負荷監視結果を定期的に取得する段階であって、前記負荷監視はリソース負荷監視又はトラフィック負荷監視を含む、取得する段階と
を備え、
前記SDNコントローラは、負荷分散装置としての機能を有し、ユーザトラフィックをSDNネットワークの入り口でエッジスイッチに分配し、前記サービスクラスタの健全性チェックと、前記リソース負荷監視又は前記トラフィック負荷監視とに基づいて最適経路を選択する
方法。
【請求項8】
前記SDNコントローラが、判定された前記サービスクラスタ内の各オンライン仮想マシンの前記エッジスイッチにトラフィック監視命令を送出する段階であって、前記トラフィック監視命令は、判定された前記サービスクラスタ内の各オンライン仮想マシンの前記エッジスイッチに、前記SDNコントローラが送出した転送フローテーブルに対応するパケットトラフィック統計データを収集するよう命令するのに用いられる、送出する段階をさらに備える、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記SDNコントローラが、各オンライン仮想マシンの前記エッジスイッチの前記T1時点における前記トラフィック統計データと前記T2時点における前記トラフィック統計データとの間の差異に従って、各オンライン仮想マシンのトラフィック負荷情報を前記取得する段階は特に、
前記SDNコントローラが、前記T1時点における各オンライン仮想マシンのサービス応答トラフィックを前記T1時点における前記トラフィック統計データから抽出する段階、及び前記SDNコントローラが、前記T2時点における各オンライン仮想マシンのサービス応答トラフィックを前記T2時点における前記トラフィック統計データから抽出する段階と
前記SDNコントローラが、前記T1時点における前記サービス応答トラフィックと前記T2時点における前記サービス応答トラフィックとの間の差異を各オンライン仮想マシンの前記トラフィック負荷情報として用いる段階と
を備える
請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
ソフトウェア定義型ネットワーキング(SDN)コントローラと複数のエッジスイッチとを備えたソフトウェア定義型データセンターであって、前記複数のエッジスイッチは前記SDNコントローラに通信可能に接続され、第1のサービスクラスタ及び第2のサービスクラスタが前記ソフトウェア定義型データセンターに展開され、
前記複数のエッジスイッチは、前記SDNコントローラにパケット転送情報を要求し、前記SDNコントローラが送出した転送フローテーブルに従ってパケットを転送し、
前記SDNコントローラは、ユーザがアクセスするエッジスイッチである第2のエッジスイッチにより報告された前記ユーザのサービス要求パケットを受信し、前記サービス要求パケット内の宛先IPアドレス情報に従って、前記第1のサービスクラスタ及び前記第2のサービスクラスタからの前記サービス要求パケットに対応するサービスクラスタを判定し、前記第1のサービスクラスタは、第1のIPアドレスを共有する少なくとも2つのオンライン仮想マシンを含み、前記第2のサービスクラスタは、第2のIPアドレスを共有する少なくとも2つのオンライン仮想マシンを含み、前記第1のIPアドレスは前記第2のIPアドレスとは異なり、前記SDNコントローラは、負荷分散ポリシに従って、判定された前記サービスクラスタ内の前記少なくとも2つのオンライン仮想マシンから、前記ユーザにサービスを提供するターゲット仮想マシンを選択し、前記ターゲット仮想マシンと前記ユーザとの間の転送情報を決定し、前記転送情報に従って、第1の転送フローテーブル及び第2の転送フローテーブルを生成し、前記第1の転送フローテーブルを前記ターゲット仮想マシンの前記エッジスイッチに送出し、前記第2の転送フローテーブルを前記第2のエッジスイッチに送出し、前記第1の転送フローテーブルは、前記ターゲット仮想マシンの前記エッジスイッチがパケットを転送するのに用いられ、前記第2の転送フローテーブルは、前記第2のエッジスイッチがパケットを転送するのに用いられ、前記SDNコントローラは、判定された前記サービスクラスタ内の前記少なくとも2つのオンライン仮想マシンに対して負荷監視を実行し、負荷監視結果を定期的に取得し、前記負荷監視はリソース負荷監視又はトラフィック負荷監視を含み、
前記SDNコントローラは、負荷分散装置としての機能を有し、ユーザトラフィックをSDNネットワークの入り口でエッジスイッチに分配し、前記サービスクラスタの健全性チェックと、前記リソース負荷監視又は前記トラフィック負荷監視とに基づいて最適経路を選択する、
ソフトウェア定義型データセンター。
【請求項11】
前記SDNコントローラが前記ターゲット仮想マシンを選択することは特に、判定された前記サービスクラスタ内の各オンライン仮想マシンのリソース負荷情報又はトラフィック負荷情報を取得すること、及び最小リソース負荷を有する仮想マシンを前記ターゲット仮想マシンとして選択すること、又は最小トラフィック負荷を有する仮想マシンを前記ターゲット仮想マシンとして選択することを含む、
請求項10に記載のソフトウェア定義型データセンター。
【請求項12】
前記負荷監視結果は、判定された前記サービスクラスタ内の各オンライン仮想マシンのリソース負荷情報又はトラフィック負荷情報を含む、
請求項11に記載のソフトウェア定義型データセンター。
【請求項13】
ソフトウェア定義型ネットワーキング(SDN)コントローラと複数のエッジスイッチとを備えたソフトウェア定義型データセンターであって、前記複数のエッジスイッチは前記SDNコントローラに通信可能に接続され、第1のサービスクラスタ及び第2のサービスクラスタが前記ソフトウェア定義型データセンターに展開され、
前記複数のエッジスイッチは、前記SDNコントローラにパケット転送情報を要求し、前記SDNコントローラが送出した転送フローテーブルに従ってパケットを転送し、
前記SDNコントローラは、サービスクラスタ内の各オンライン仮想マシンのエッジスイッチにトラフィック統計データ抽出要求を定期的に送出し、前記サービスクラスタは、前記第1のサービスクラスタ及び前記第2のサービスクラスタからのサービスリクエストパケット中の宛先IPアドレス情報に従って、前記SDNコントローラにより判定され、前記第1のサービスクラスタは、第1のIPアドレスを共有する少なくとも2つのオンライン仮想マシンを含み、前記第2のサービスクラスタは、第2のIPアドレスを共有する少なくとも2つのオンライン仮想マシンを含み、前記第1のIPアドレスは前記第2のIPアドレスとは異なり、前記サービスリクエストパケットは第2のエッジスイッチにより前記SDNコントローラに報告され、前記SDNコントローラは、各オンライン仮想マシンの前記エッジスイッチによりフィードバックされるT1時点におけるトラフィック統計データ及びT2時点におけるトラフィック統計データを別々に受信し、各オンライン仮想マシンの前記エッジスイッチの前記T1時点における前記トラフィック統計データと前記T2時点における前記トラフィック統計データとの間の差異に従って、各オンライン仮想マシンのトラフィック負荷情報を取得し、前記SDNコントローラは、判定された前記サービスクラスタ内の前記少なくとも2つのオンライン仮想マシンに対して負荷監視を実行し、負荷監視結果を定期的に取得し、前記負荷監視はリソース負荷監視又はトラフィック負荷監視を含み、
前記SDNコントローラは、負荷分散装置としての機能を有し、ユーザトラフィックをSDNネットワークの入り口でエッジスイッチに分配し、前記サービスクラスタの健全性チェックと、前記リソース負荷監視又は前記トラフィック負荷監視とに基づいて最適経路を選択する、
ソフトウェア定義型データセンター。
【請求項14】
前記SDNコントローラはさらに、判定された前記サービスクラスタ内の各オンライン仮想マシンの前記エッジスイッチにトラフィック監視命令を送出し、前記トラフィック監視命令は、判定された前記サービスクラスタの各オンライン仮想マシンの前記エッジスイッチに、前記SDNコントローラが送出した前記転送フローテーブルに対応するパケットトラフィック統計データを収集するよう命令するのに用いられる、
請求項13に記載のソフトウェア定義型データセンター。
【請求項15】
前記SDNコントローラは特に、前記T1時点における各オンライン仮想マシンのサービス応答トラフィックを前記T1時点における前記トラフィック統計データから抽出し、前記T2時点における各オンライン仮想マシンのサービス応答トラフィックを前記T2時点における前記トラフィック統計データから抽出し、前記T1時点における前記サービス応答トラフィックと前記T2時点における前記サービス応答トラフィックとの間の差異を各オンライン仮想マシンの前記トラフィック負荷情報として用いる、
請求項13又は14に記載のソフトウェア定義型データセンター。
【請求項16】
プロセッサと、
メモリと、
バスと、
通信インタフェースと
を備えたコンピューティングデバイスであって、
前記メモリは実行命令を格納し、前記プロセッサ及び前記メモリは前記バスを用いて接続され、前記コンピューティングデバイスが動作すると、前記コンピューティングデバイスが請求項1から6のいずれか一項に記載の方法を実行するように、前記プロセッサは前記メモリに格納された前記実行命令を実行する、
コンピューティングデバイス。
【請求項17】
プロセッサと、
メモリと、
バスと、
通信インタフェースと
を備えたコンピューティングデバイスであって、
前記メモリは実行命令を格納し、前記プロセッサ及び前記メモリは前記バスを用いて接続され、前記コンピューティングデバイスが動作すると、前記コンピューティングデバイスが請求項7から9のいずれか一項に記載の方法を実行するように、前記プロセッサは前記メモリに格納された前記実行命令を実行する、
コンピューティングデバイス。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のため当審が付与した。(以降についても同様。)

「【0001】
本発明は、負荷分散システム、負荷分散装置、負荷分散方法および負荷分散プログラムに関する。」

「【0021】
[負荷分散システムの構成(実施例1)]
以下の実施例1では、テナントに提供される複数のサーバを有するデータセンタを、実施例1に係る負荷分散システムの一例として説明する。
【0022】
図1は、実施例1に係るデータセンタの構成例を示す図である。図1に示すように、実施例1に係るデータセンタは、サーバ0?サーバ4の5台の物理サーバを有し、これらの物理サーバをテナントである企業に貸し出すサービスを提供する。例えば、図1に示すサーバ1およびサーバ2はテナントAに貸し出され、サーバ3およびサーバ4は、テナントBに貸し出された状態にある。そして、スイッチ200およびサーバ0?サーバ4を収容するローカルネットワーク内に2つの仮想ネットワークが構築される。
【0023】
テナントAに貸し出されているサーバ1およびサーバ2は、ローカルネットワーク内に構築された仮想ネットワークの1つに属する。そして、図1に示すように、サーバ1およびサーバ2が属する仮想ネットワークは、識別子として付与された「VLAN(Virtual Local Area Network)=20」で管理されている。また、テナントBに貸し出されているサーバ3およびサーバ4は、サーバ1およびサーバ2が属する仮想ネットワークとは異なる仮想ネットワークに属する。そして、サーバ3およびサーバ4が属する仮想ネットワークは、識別子として付与された「VLAN(Virtual Local Area Network)=40」で管理されている。このように、データセンタは、VLAN単位でマルチテナントの形態をとっている。マルチテナントとは、複数の顧客企業間でハードウェアやソフトウェアなどのリソースを共有する方式であり、ハードウェアのみを共有し、仮想マシン上で顧客ごとに異なるソフトウェアを用意する方式や、アプリケーションソフトやデータベースのスキーマ(設定)までを共有し、設定情報やデータベースの内容のみが顧客ごとに異なる方式などがある。
【0024】
サーバ1?4は、ネットワークインターフェースカードを1枚装備し、データセンタ内のローカルネットワークに接続される。また、サーバ1?4では、テナントに利用させるための仮想マシンが稼動しており、サーバ1では、テナントAに利用させるための仮想マシン「A.1」および「A.2」が稼動し、サーバ2では、テナントAに利用させるための仮想マシン「A.3」および「A.4」が稼動している。また、サーバ3では、テナントBに利用させるための仮想マシン「B.1」および「B.2」が稼動しており、サーバ4では、テナントBに利用させるための仮想マシン「B.3」および「B.4」が稼動している。また、サーバ1?4は、それぞれブリッジを有し、サーバ内で稼動する仮想マシンにはブリッジを介して接続される。
【0025】
サーバ0は、サーバ1?4に対するクライアントからのアクセスを制御する負荷分散装置として機能する。クライアントは、サーバ0を介して、データセンタ内のサーバ1?4(サーバ1?4で稼動する仮想マシン)へのアクセスが可能となる。
【0026】
図1に示すように、サーバ0は、ネットワークインターフェースカード(NIC:Network Interface Card)を2枚装備し、一方のネットワークインターフェースカード(NIC1)は、インターネットに接続され、他方のネットワークインターフェースカード(NIC2)は、データセンタ内のローカルネットワークに接続される。
【0027】
そして、サーバ0は、図1に示すように、オープンフロースイッチ110と、コントローラ120と、負荷分散処理部130とを有する。
【0028】
オープンフロースイッチ110は、フローテーブルに設定されたフロー情報(オープンフロー)に従って、オープンフローによるパケット通信の制御処理を行う、ソフトウェアで実行された仮想スイッチである。なお、オープンフローとは、MAC(Media Access Control)アドレスやIP(Internet Protocol)アドレス、ポート番号などの組合せによって決定される一連の通信をフローと定義し、フロー単位で通信経路を制御する方式である。また、フローテーブルは、オープンフロースイッチ110がパケットを宛先に転送するために、パケットに挿入されたアドレス情報を変換する(書き換える)ためのフロー情報を記憶するテーブルである。フローテーブルには、後述する負荷分散処理部130によりフロー情報が設定される。」

「【0030】
また、オープンフロースイッチ110は、ゲートウェイから、テナントサーバへのリクエストパケットであるHTTP(Hypertext Transfer Protocol)パケットを受信すると、フローテーブルに対応するフロー情報があるかどうかを確認する。オープンフロースイッチ110は、対応するフロー情報がフローテーブルになければ、リクエストパケット転送用のフロー情報の問合せをコントローラ120に送信する。また、オープンフロースイッチ110は、コントローラ120によりフローテーブルに設定されたフロー情報に基づいて、ゲートウェイから受信したリクエストパケットのアドレス情報を書き換えてテナントサーバへ転送する。例えば、オープンフロースイッチ110は、フロー情報に従って、リクエストパケットの宛先として記入されている転送先IPアドレスを、データセンタ内にある対応テナントサーバに割り当てられたプライベートアドレスに書き換え、データセンタ内にある対応テナントサーバのMACアドレスをリクエストパケットに記入し、データセンタ内にある対応テナントサーバが属する仮想ネットワークのVLANIDをリクエストパケットに付与する。実施例1において、テナントサーバとは、リクエストパケットの宛先であるデータセンタ内の物理サーバ(あるいは、物理サーバ内で稼動する仮想マシン(例えば、A.1?A.4、B.1?B.4など))に該当する。」

「【0034】
また、コントローラ120は、オープンフロースイッチ110から、リクエストパケットの転送用のフロー情報の問合せを受信すると、負荷分散処理部130に転送する。また、コントローラ120は、負荷分散処理部130から、リクエストパケットの転送用の対応フロー情報を受信すると、オープンフロースイッチ110が有するフローテーブルに対して、対応フロー情報に含まれるプライベートアドレス、リクエストパケットの宛先であるテナントサーバ(仮想マシン)のMACアドレス、リクエストパケットの宛先であるテナントサーバが属する仮想ネットワークのVLANIDを、リクエストパケットの転送用のフロー情報として設定する。
【0035】
また、コントローラ120は、オープンフロースイッチ110から、リプライパケットの転送用のフロー情報の問合せを受信すると、負荷分散処理部130に転送する。また、コントローラ120は、負荷分散処理部130から、リプライパケットの転送用の対応フロー情報を受信すると、オープンフロースイッチ110が有するフローテーブルに対して、対応フロー情報に含まれる、リプライパケットの送信元であるテナントサーバのグローバルアドレス、サーバ0のMACアドレスを、リプライパケットの転送用のフロー情報として設定する。
【0036】
負荷分散処理部130は、特定のテナントサーバにアクセスが集中しないように、クライアントからのアクセスを制御する。図2に、負荷分散処理部130の構成例を示す。図2は、負荷分散処理部の構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、負荷分散処理部130は、パケット処理部131と、arp処理部132と、MACアドレス格納部133と、回答送信部134と、リクエストパケット処理部135と、テナントサーバ情報格納部136と、リクエストパケット振分け部137と、リプライパケット処理部138と、リプライ情報格納部139とを有する。
【0037】
具体的に説明すると、パケット処理部131は、コントローラ120からarpパケットを受信した場合には、arpパケットの処理をarp処理部132に指示する。また、パケット処理部131は、リクエストパケットに関するフロー情報の問合せをコントローラ120から受信した場合には、問合せの処理をリクエストパケット処理部135に指示する。また、パケット処理部131は、リプライパケットに関するフロー情報の問合せをコントローラ120から受信した場合には、問合せの処理をリプライパケット処理部138に指示する。」

「【0041】
リクエストパケット処理部135は、パケット処理部131からの指示に応じて、リクエストパケットの処理を実行する。例えば、リクエストパケット処理部135は、リクエストパケットに関するフロー情報の問合せ処理の指示があると、リクエストパケットの転送先IPアドレスと同一のアドレスに対応付けられたテナントサーバリストおよびVLANIDをテナントサーバ情報格納部136から取得する。そして、リクエストパケット処理部135は、取得したテナントサーバリストおよびVLANIDをリクエストパケット振分け部137に送出する。
【0042】
図4に、実施例1に係るテナントサーバ情報格納部136に格納されているレコードの一例を示す。図4は、実施例1に係るテナントサーバ情報格納部に格納されているレコードの一例を示す図である。図4に示すように、テナントサーバ情報格納部136は、テナントサーバが外部(クライアントなど)に公開するグローバルアドレスであるテナントサーバアドレスに対応付けて、テナントサーバとして物理サーバ内で稼動する仮想マシンに割り当てられた仮想的なプライベートアドレスと、仮想マシンに割り当てられている仮想的なMACアドレスとの組合せの一覧を、テナントサーバリストとして記憶するとともに、データセンタ内に構築される仮想ネットワークのうちテナントサーバとして稼動する仮想マシンが属する仮想ネットワークを識別するために仮想ネットワークごとに固有に付与されたVLANIDを記憶する。例えば、テナントサーバ情報格納部136は、テナントAが公開するグローバルアドレス「120.18.20.105」に対応付けて、テナントサーバAとしてサーバ1内で稼動する仮想マシンA.1に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.20」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:A4」の対、テナントサーバAとしてサーバ1内で稼動する仮想マシンA.2に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.21」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:A5」の対、テナントサーバAとしてサーバ2内で稼動する仮想マシンA.3に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.22」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:A6」の対、テナントサーバAとしてサーバ2内で稼動する仮想マシンA.4に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.23」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:A7」の対をテナントサーバリストとして記憶するとともに、テナントサーバAとしてサーバ1およびサーバ内2内で稼動する4つの仮想マシンA.1?A.4が属する仮想ネットワークの識別子「VLANID=20」を記憶している。同様に、テナントサーバ情報格納部136は、テナントBが公開するグローバルアドレス「23.100.51.12」に対応付けて、テナントサーバBとしてサーバ3内で稼動する仮想マシンB.1に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.24」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:B4」の対、テナントサーバBとしてサーバ3内で稼動する仮想マシンB.2に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.25」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:B5」の対、テナントサーバBとしてサーバ4内で稼動する仮想マシンB.3に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.26」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:B6」の対、テナントサーバBとしてサーバ4内で稼動する仮想マシンB.4に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.27」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:B7」の対をテナントサーバリストとして記憶するとともに、テナントサーバBとしてサーバ3およびサーバ4内で稼動する4つの仮想マシンB.1?B.4が属する仮想ネットワークの識別子「VLANID=40」が記憶されている。
【0043】
リクエストパケット振分け部137は、リクエストパケットの振り分け先を決定する処理を行う。例えば、リクエストパケット振分け部137は、リクエストパケット処理部135から、テナントサーバリストおよびVLANIDを受け取ると、テナントサーバリスト(テナントサーバとして稼動する複数の仮想マシンのそれぞれに対応するプライベートアドレスとMACアドレスとの組合せの一覧)の中から、公知の分散アルゴリズムを利用して、リクエストパケットの振り分ける先を決定する。分散アルゴリズムとしては、スタティック負荷分散やダイナミック負荷分散のどちらを利用してもよく、例えば、スタティック負荷分散であればラウンドロビン、ダイナミック負荷分散であれば最速応答時間、最小負荷、最小コネクションなどを利用することができる。なお、分散アルゴリズムを利用した負荷分散技術には、例えば、「DNSを用いた広域負荷分散の実装(情報処理学会研究報告、1998年5月15日)」などがある。そして、リクエストパケット振分け部137は、リクエストパケットの振り分け先を決定すると、振り分け先として決定した仮想マシンに割り当てられているプライベートアドレスおよびMACアドレス、振り分け先の仮想マシンが属する仮想ネットワークを識別するVLANIDをフロー情報として、回答送信部134に送出する。」

「【0069】
図7に、実施例2に係るデータセンタの構成例を示す。図7は、実施例2に係るデータセンタの構成例を示す図である。図7に示すように、データセンタ内に構築された複数の仮想ネットワーク(VLAN=20、VLAN=40)の境界が、データセンタ内に配置された複数のサーバの中のある1つのサーバ2内にある場合についても、上述した実施例1の処理(図6)を適用することにより、仮想ネットワーク単位で、テナントサーバへのアクセスを制御することができる。
【0070】
例えば、図7に示すサーバ1?4には、ブリッジの代わりに、オープンフロースイッチを設置する。これにより、例えば、データセンタに負荷に応じて、サーバ数を柔軟に変更することができる。
【0071】
そして、図7に示すように、サーバ2では、VLAN=20の仮想ネットワークに属する仮想マシンA.3と、VLAN=40の仮想ネットワークに属する仮想マシンB.0が稼動している。これに応じて、サーバ0が有する負荷分散処理部130のテナントサーバ情報格納部136およびリプライ情報格納部139のレコードを書き換えることにより、上述した実施例1の処理(図6)を適用できる。以下、実施例2に係るテナントサーバ情報格納部136のレコードの構成例、および実施例2に係るリプライ情報格納部139のレコードの構成例を説明する。
【0072】
図8に、実施例2に係るテナントサーバ情報格納部136に格納されているレコードの一例を示す。図8は、実施例2に係るテナントサーバ情報格納部に格納されているレコードの一例を示す図である。図8に示すように、テナントサーバ情報格納部136は、実施例2に係るデータセンタの構成に応じた情報を記憶しており、例えば、テナントAがクライアントなどに公開するグローバルアドレス「120.18.20.105」に対応付けて、データセンタ内でテナントサーバとして稼動する仮想マシンA.1に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.20」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:A4」の対、仮想マシンA.2に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.21」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:A5」の対、仮想マシンA.3に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.22」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:A6」の対を記憶するとともに、テナントサーバAとして稼動する3つの仮想マシンA.1?A.3が属する仮想ネットワークのVLANID「20」が記憶されている。また、図8に示すように、テナントサーバ情報格納部136は、テナントBが外部に公開するグローバルアドレス「23.100.51.12」に対応付けて、データセンタ内でテナントサーバとして稼動する仮想マシンB.0に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.23」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:B4」の対、データセンタ内でテナントサーバとして稼動する仮想マシンB.1に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.24」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:B5」の対、仮想マシンB.2に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.25」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:B6」の対、仮想マシンB.3に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.26」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:B7」の対、仮想マシンB.4に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.27」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:B8」の対をテナントサーバリストとして記憶するとともに、テナントサーバBとして稼動する5つの仮想マシンB.0?B.4が属する仮想ネットワークのVLANID「40」が記憶されている。」

「【図1】


前記【0022】を参酌すると、当該【図1】から、「実施例1」として、データセンタが、スイッチ200を介して接続されるサーバ0?サーバ4の5台の物理サーバを有してなる様子が見て取れる。
また、当該【図1】から、ゲートウェイは、インターネットを介してクライアントからのアクセスを受け付けるものであることが見て取れる。

「【図2】



「【図7】


前記【0022】、【0069】ないし【0071】を参酌すると、当該【図7】から、「実施例2」として、データセンタが、スイッチ200を介して接続されるサーバ0?サーバ4の5台の物理サーバを有してなる様子が見て取れる。
また、当該【図7】からも、ゲートウェイは、インターネットを介してクライアントからのアクセスを受け付けるものであることが見て取れる。

(2)引用発明
したがって、上記引用文献1には、主に「実施例2」に関連して、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。なお、括弧内は、引用文献1記載事項のうち参照すべき箇所を示す。

「 テナントに提供される複数のサーバを有するデータセンタにおける負荷分散システム、負荷分散方法又は負荷分散プログラムであって、(【0001】、【0021】、【図1】、【図7】)
前記データセンタは、複数の物理サーバを複数の企業(テナント)に貸し出すサービスを提供するものであり、(【0022】)
テナントに貸し出されるサーバは、仮想ネットワーク(VLAN)を構成し、データセンタは、VLAN単位のマルチテナントの形態をとり、(【0023】)
例えば、データセンタは、スイッチ200を介して接続されるサーバ0?サーバ4の5台の物理サーバを有し、(【0022】、【図1】、【図7】)
サーバ0は、サーバ1?4に対するクライアントからのアクセスを制御する負荷分散装置として機能するものであり、(【0025】)
サーバ0は、オープンフロースイッチ110と、コントローラ120と、負荷分散処理部130と、ゲートウェイと接続するネットワークインターフェースカード(NIC1)と、スイッチ200と接続するネットワークインターフェースカード(NIC2)とを有し、(【0026】、【0027】、【図1】、【図7】)
ゲートウェイは、インターネットを介してクライアントからのアクセスを受け付けるものであり、(【図1】、【図7】)
負荷分散処理部130は、パケット処理部131,arp処理部132、MACアドレス格納部133、回答送信部134、リクエストパケット処理部135、テナントサーバ情報格納部136、リクエストパケット振分け部137、リプライパケット処理部138と、リプライ情報格納部139とを有し、(【0036】、【図2】)
サーバ1?4は、それぞれ2つの仮想マシン(A.1とA2、A.3とB.0、B.1とB.2、B.3とB.4)と、オープンフロースイッチと、ネットワークインターフェースカードとを有し、サーバ1のA.1とA.2、サーバ2のA.3はVLANの識別子(VLANID)が20の仮想ネットワーク(テナントA)に属し、サーバ2のB.0、サーバ3のB.1とB.2、サーバ4のB.3とB.4はVLANの識別子(VLANID)が40の仮想ネットワーク(テナントB)に属し、(【0024】、【0069】?【0072】、【図7】)
テナントサーバ情報格納部136は、テナントサーバが外部(クライアントなど)に公開するグローバルアドレスであるテナントサーバアドレスに対応付けて、テナントサーバとして物理サーバ内で稼動する仮想マシンに割り当てられた仮想的なプライベートアドレスと、仮想マシンに割り当てられている仮想的なMACアドレスとの組合せの一覧を、テナントサーバリストとして記憶するとともに、データセンタ内に構築される仮想ネットワークのうちテナントサーバとして稼動する仮想マシンが属する仮想ネットワークを識別するために仮想ネットワークごとに固有に付与されたVLANIDを記憶するものであり、(【0042】)
具体的には、テナントサーバ情報格納部136は、テナントAがクライアントなどに公開するグローバルアドレス「120.18.20.105」に対応付けて、データセンタ内でテナントサーバとして稼動する仮想マシンA.1に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.20」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:A4」の対、仮想マシンA.2に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.21」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:A5」の対、仮想マシンA.3に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.22」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:A6」の対を記憶するとともに、テナントサーバAとして稼動する3つの仮想マシンA.1?A.3が属する仮想ネットワークのVLANID「20」が記憶され、テナントBが外部に公開するグローバルアドレス「23.100.51.12」に対応付けて、データセンタ内でテナントサーバとして稼動する仮想マシンB.0に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.23」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:B4」の対、データセンタ内でテナントサーバとして稼動する仮想マシンB.1に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.24」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:B5」の対、仮想マシンB.2に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.25」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:B6」の対、仮想マシンB.3に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.26」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:B7」の対、仮想マシンB.4に割り当てられたプライベートアドレス「192.168.100.27」とMACアドレス「52:20:00:AA:FF:B8」の対をテナントサーバリストとして記憶するとともに、テナントサーバBとして稼動する5つの仮想マシンB.0?B.4が属する仮想ネットワークのVLANID「40」が記憶されており、(【0072】、【図8】)
オープンフロースイッチ110は、フローテーブルに設定されたフロー情報に従って、オープンフローによるパケット通信の制御処理を行うものであり、(【0028】)
オープンフロースイッチ110は、ゲートウェイからテナントサーバへのリクエストパケットを受信し、対応するフロー情報がフローテーブルになければ、リクエストパケット転送用のフロー情報の問合わせをコントローラ120に送信し、(【0030】)
コントローラ120は、オープンフロースイッチ110からリクエストパケット転送用のフロー情報の問合わせを受信すると、負荷分散処理部130に転送し、(【0035】)
負荷分散処理部130のパケット処理部131は、コントローラ120からリクエストパケット転送用のフロー情報の問合わせを受信した場合、問い合わせの処理をリクエストパケット処理部135に指示し、(【0037】)
リクエストパケット処理部135は、パケット処理部131の指示に応じて、リクエストパケットの転送先IPアドレスと同一のアドレスに対応付けられたテナントサーバリストおよびVLANIDをテナントサーバ情報格納部136から取得してリクエストパケット振分け部137に送出し、(【0041】)
リクエストパケット振分け部137は、テナントサーバリスト(テナントサーバとして稼働する複数の仮想マシンのそれぞれに対応するプライベートアドレスとMACアドレスとの組合せの一覧)の中から、公知の分散アルゴリズム、例えば、スタティック負荷分散(ラウンドロビン)又はダイナミック負荷分散(最速応答時間、最小負荷、最小コネクションなど)を利用して、リクエストパケットの振分け先を決定し、決定した仮想マシンに割り当てられているプライベートアドレスおよびMACアドレス、振り分け先の仮想マシンが属する仮想ネットワークを識別するVLANIDをフロー情報として、回答送信部134に送出し、(【0043】)
コントローラ120は、負荷分散処理部130からリクエストパケットの転送用の対応フロー情報を受信すると、オープンフロースイッチ110が有するフローテーブルに対して、対応フロー情報に含まれるプライベートアドレス、リクエストパケットの宛先であるテナントサーバ(仮想マシン)のMACアドレス、リクエストパケットの宛先であるテナントサーバが属する仮想ネットワークのVLANIDを、リクエストパケットの転送用のフロー情報として設定する、(【0034】)、
負荷分散システム、負荷分散方法又は負荷分散プログラム。」

2 引用文献2?4について
(1)引用文献2について
当審拒絶理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。

「[0005] 一方で、オープンフロー(OpenFlow)(非特許文献1、2参照)に代表される、SDN(Software Defined Network)技術と、それを用いた仮想化技術が提案されている。…(後略)」

(2)引用文献3について
当審拒絶理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。

「【0003】
そこで、OpenFlowでは、スイッチの標準機能である受信パケットの統計情報を、制御装置から定期的に取得して監視する仕組みが考えられている(例えば、下記非特許文献1参照)。さらに、その仕組みを利用して統計情報を監視することで、トラフィック量が増加した際は該当フローに属するパケットを廃棄する方法がある(例えば、下記特許文献1参照)。」

(3)引用文献4について
当審拒絶理由に引用された引用文献4には、次の事項が記載されている。

「[0029] コントローラは、オープンフロープロトコルに準拠した統計情報収集用の制御メッセージをスイッチに送信することで、スイッチからフロー毎の統計情報を取得し、トラフィック監視に活用する。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
以下、本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「データセンタ」は、「データセンター」である点において、本願発明1の「ソフトウェア定義型データセンター」と共通する。
引用発明において、「VLANの識別子(VLANID)が20の仮想ネットワーク」と「VLANの識別子(VLANID)が40の仮想ネットワーク」は、異なるテナントが使用するものであり、各テナントは、一般的には異なる「サービス」をクライアントに提供するものである。また、複数の仮想マシンにより構成される各「仮想ネットワーク」は、仮想マシンの「クラスタ」といい得るものである。よって、引用発明の「仮想ネットワーク」は、本願発明1の「サービスクラスタ」に相当する。
引用発明の「負荷分散方法」は、異なるサービスを提供する仮想ネットワーク内の仮想マシンへの「負荷分散をスケジューリングする方法」といえる。
そうすると、引用発明の「負荷分散方法」は、本願発明1の「ソフトウェア定義型データセンターにおけるサービスクラスタスケジューリング方法」と「データセンターにおける負荷分散をスケジューリングする方法」である点において共通するといえる。

イ 引用発明の「負荷分散処理部130」と、オープンフロースイッチ10のフローテーブルを設定する「コントローラ120」とは、本願発明1の「ソフトウェア定義型ネットワーキング(SDN)コントローラ」と、負荷分散、フロー情報の設定などの制御を行う「コントローラ」である点において共通するといえる。

ウ 引用発明の「サーバ0」の「オープンフロースイッチ110」と「サーバ1?4」の「オープンフロースイッチ」は、「データセンタ」に備えられ、サーバ0?4とスイッチ200から構成されるローカルネットワークからみて実質的な端部(エッジ)に位置し、サーバ0?4の「負荷分散処理部130」と「コントローラ120」や「仮想マシン」と、直接または間接的に通信可能であるから、本願発明1の「前記SDNコントローラに通信可能に接続され」る「複数のエッジスイッチ」と、「前記コントローラに通信可能に接続され」る「複数のエッジスイッチ」である点で共通するといえる。

エ 引用発明において、各「仮想ネットワーク(VLAN)」は、「データセンタに展開され」ているといえる。
また、引用発明の「VLANの識別子(VLANID)が20の仮想ネットワーク」、「VLANの識別子(VLANID)が40の仮想ネットワーク」はそれぞれ、本願発明1の「第1のサービスクラスタ」、「第2のサービスクラスタ」に相当する。

オ 引用発明の「クライアント」は、本願発明1の「ユーザ」に相当する。
よって、引用発明において、ゲートウェイが、インターネットを介して「クライアント」から受け付ける、テナントサーバへの「リクエストパケット」は、本願発明1の「ユーザのサービス要求パケット」に相当する。
引用発明は、「オープンフロースイッチ110は、ゲートウェイからテナントサーバへのリクエストパケットを受信し、対応するフロー情報がフローテーブルになければ、リクエストパケット転送用のフロー情報の問合わせをコントローラ120に送信し、コントローラ120は、オープンフロースイッチ110からリクエストパケット転送用のフロー情報の問合わせを受信すると、負荷分散処理部130に転送し、」との構成を備えるものであるから、「負荷分散処理部130」と「コントローラ120」は、「オープンフロースイッチ110」により報告された「リクエストパケット」を受信しているといえる。
よって、引用発明の「オープンフロースイッチ110」は、本願発明1の「第2のエッジスイッチ」に相当し、また、引用発明の「負荷分散処理部130」と「コントローラ120」が、「オープンフロースイッチ110」から「リクエストパケット」を受信する段階は、本願発明1の「前記SDNコントローラが、第2のエッジスイッチにより報告されたユーザのサービス要求パケットを受信する段階であって、前記第2のエッジスイッチは前記ユーザがアクセスするエッジスイッチである、受信する段階」と、「前記コントローラが、第2のエッジスイッチにより報告されたユーザのサービス要求パケットを受信する段階であって、前記第2のエッジスイッチは前記ユーザがアクセスするエッジスイッチである、受信する段階」である点で共通するといえる。

カ 引用発明の「リクエストパケットの転送先IPアドレス」は、本願発明1の「前記サービス要求パケット内の宛先IPアドレス情報」に相当する。
また、引用発明の「負荷分散処理部130」は、「パケット処理部132の指示に応じて、リクエストパケットの転送先IPアドレスと同一のアドレスに対応付けられたテナントサーバリストおよびVLANIDをテナントサーバ情報格納部136から取得」するものであって、「VLANID」は、仮想ネットワークのいずれか1つを識別するものであるから、引用発明は、「リクエストパケットの転送先IPアドレス」に従って、2つの仮想ネットワークから、「リクエストパケット」に対応する仮想ネットワークを判定するものといえる。
そうすると、引用発明は、本願発明1の「(コントローラが)前記サービス要求パケット内の宛先IPアドレス情報に従って、前記第1のサービスクラスタ及び前記第2のサービスクラスタから前記サービス要求パケットに対応するサービスクラスタを判定する段階」との構成を備える。

キ 引用発明において、「テナントサーバ情報格納部136」に格納されている、VLANの識別子が20の仮想ネットワーク(テナントA)の「グローバルアドレス」である「120.18.20.105」、VLANの識別子が40の仮想ネットワーク(テナントB)の「グローバルアドレス」である「23.100.51.12」はそれぞれ、「IPアドレス」といい得るものであり、本願発明1の「第1のIPアドレス」及び「第2のIPアドレス」に相当する。
また、当該構成から、引用発明は、本願発明1の「前記第1のIPアドレスは前記第2のIPアドレスとは異なる」との構成を備えている。
引用発明において、「仮想マシン」は、リクエストパケットの振分け先として決定されるものであり、かつ、「テナントサーバとして稼働する」もの、すなわち、「オンライン」状態であることを前提としている。そうすると、引用発明の「仮想マシン」は、本願発明1の「オンライン仮想マシン」に相当する。
また、引用発明においては、テナントAのグローバルアドレス「120.18.20.105」を、仮想マシンA.1?A.3が共有し、テナントBのグローバルアドレス「23.100.51.12」を、仮想マシンB.1?B.4が共有しているといえるから、引用発明は、本願発明1の「前記第1のサービスクラスタは、第1のIPアドレスを共有する少なくとも2つのオンライン仮想マシンを含み、前記第2のサービスクラスタは、第2のIPアドレスを共有する少なくとも2つのオンライン仮想マシンを含み、前記第1のIPアドレスは前記第2のIPアドレスとは異なる」との構成を備える。

ク 引用発明の「公知の負荷分散アルゴリズム」は、本願発明1の「負荷分散ポリシ」に相当する。また、引用発明において、当該「公知の負荷分散アルゴリズム」を利用してリクエストパケットの振り分け先として「決定」される「仮想マシン」は、クライアント(ユーザ)にサービスを提供するものであることは明らかであるから、本願発明1の「ターゲット仮想マシン」に相当する。また、前記「決定」は、「選択」といい換えることができるから、引用発明は、本願発明1の「(コントローラが)負荷分散ポリシに従って、判定された前記サービスクラスタ内の前記少なくとも2つのオンライン仮想マシンからターゲット仮想マシンを選択する段階であって、前記ターゲット仮想マシンは前記ユーザにサービスを提供する、選択する段階」との構成を備える。

ケ 引用発明は、「プライベートアドレスおよびMACアドレス、振り分け先の仮想マシンが属する仮想ネットワークを識別するVLANID」を「フロー情報」として送出しているから、当該「フロー情報」を決定していることは明らかである。
よって、引用発明は、本願発明1の「(コントローラが)前記ターゲット仮想マシンと前記ユーザとの間の転送情報を決定する段階」を備える。

コ 引用発明は、「オープンフロースイッチ110が有するフローテーブル」に対して、前記「フロー情報」を「リクエストパケット転送用のフロー情報」として設定するものである。
そうすると、引用発明は、実質的に、「オープンフロースイッチ110」が有する「フローテーブル」を生成し、これを「オープンフロースイッチ110」に送出していることに等しい。
さらに、引用発明において、「オープンフロースイッチ110は、フローテーブルに設定されたフロー情報に従って、オープンフローによるパケット通信の制御処理を行うもの」であり、ここで、「パケット通信の制御処理」には「パケットを転送する」制御を含むことは明らかである。
また、「フローテーブル」に「フロー情報」を設定することは、クライアントからのアクセスである「リクエストパケット」の振り分け先を設定するものであるから、当該「フロー情報」は、振り分け先として決定された「仮想マシン」とクライアントとの間の転送を設定するものである。
そうすると、引用発明の「フロー情報」、「オープンフロースイッチ110が有するフローテーブル」はそれぞれ、本願発明1の「転送情報」、「第2の転送フローテーブル」に相当する。
よって、引用発明は、本願発明1の「(コントローラが)前記転送情報に従って、第1の転送フローテーブル及び第2の転送フローテーブルを生成する段階であって、前記第1の転送フローテーブルは、前記ターゲット仮想マシンのエッジスイッチがパケットを転送するのに用いられ、前記第2の転送フローテーブルは、前記第2のエッジスイッチがパケットを転送するのに用いられる、生成する段階」と、「前記転送情報に従って、第2の転送フローテーブルを生成する段階であって、前記第2の転送フローテーブルは、前記第2のエッジスイッチがパケットを転送するのに用いられる、生成する段階」である点で、共通するといえる。

また、引用発明は、本願発明1の「(コントローラが)前記第2の転送フローテーブルを前記第2のエッジスイッチに送出する段階」との構成を備えるといえる。

サ 引用発明の「コントローラ120」の「リクエストパケット振分け部137」は、「テナントサーバリスト(テナントサーバとして稼働する複数の仮想マシンのそれぞれに対応するプライベートアドレスとMACアドレスとの組合せの一覧)の中から、公知の分散アルゴリズム、例えば、スタティック負荷分散(ラウンドロビン)又はダイナミック負荷分散(最速応答時間、最小負荷、最小コネクションなど)を利用して、リクエストパケットの振分け先を決定し、決定した仮想マシンに割り当てられているプライベートアドレスおよびMACアドレス、振り分け先の仮想マシンが属する仮想ネットワークを識別するVLANIDをフロー情報として、回答送信部134に送出し」及び「コントローラ120」は「負荷分散処理部130からリクエストパケットの転送用の対応フロー情報を受信すると、オープンフロースイッチ110が有するフローテーブルに対して、対応フロー情報に含まれるプライベートアドレス、リクエストパケットの宛先であるテナントサーバ(仮想マシン)のMACアドレス、リクエストパケットの宛先であるテナントサーバが属する仮想ネットワークのVLANIDを、リクエストパケットの転送用のフロー情報として設定する」との構成において、「負荷分散処理部130」と「コントローラ120」は、「公知の分散アルゴリズム」を利用して「リクエストパケット」の振分け先を決定する機能を備えているから、「負荷分散装置としての機能を有し」ているといえる。
また、「コントローラ120」は、ネットワークの入り口に位置しており、また、振り分けるリクエストパケットに対応する「フロー情報」を、「振り分け先」となる「オープンフロースイッチ110」が有するフローテーブルに設定することにより対応するフローを振分け先となる「オープンフロースイッチ110」に「分配」し、そのことにより負荷分散に最適な経路を選択しているといえる。さらに、前記「フロー情報」は、「ユーザトラフィック」といい得るものである。
よって、引用発明と、本願発明1の「前記SDNコントローラは、負荷分散装置としての機能を有し、ユーザトラフィックをSDNネットワークの入り口でエッジスイッチに分配し、前記サービスクラスタの健全性チェックと、前記リソース負荷監視又は前記トラフィック負荷監視とに基づいて最適経路を選択する」とは、「前記コントローラは、負荷分散装置としての機能を有し、ユーザトラフィックをネットワークの入り口でエッジスイッチに分配し、最適経路を選択する」との構成を備える点において共通する。

(2)一致点・相違点
以上からすると、本願発明1と引用発明とは、以下の点において一致ないし相違する。

[一致点]
データセンターにおける負荷分散をスケジューリングする方法であって、前記データセンターは、コントローラと複数のエッジスイッチとを備え、前記複数のエッジスイッチは前記コントローラに通信可能に接続され、第1のサービスクラスタ及び第2のサービスクラスタが前記データセンターに展開され、
前記コントローラが、第2のエッジスイッチにより報告されたユーザのサービス要求パケットを受信する段階であって、前記第2のエッジスイッチは前記ユーザがアクセスするエッジスイッチである、受信する段階と、
前記コントローラが、前記サービス要求パケット内の宛先IPアドレス情報に従って、前記第1のサービスクラスタ及び前記第2のサービスクラスタから前記サービス要求パケットに対応するサービスクラスタを判定する段階であって、前記第1のサービスクラスタは、第1のIPアドレスを共有する少なくとも2つのオンライン仮想マシンを含み、前記第2のサービスクラスタは、第2のIPアドレスを共有する少なくとも2つのオンライン仮想マシンを含み、前記第1のIPアドレスは前記第2のIPアドレスとは異なる、段階と、
前記コントローラが負荷分散ポリシに従って、判定された前記サービスクラスタ内の前記少なくとも2つのオンライン仮想マシンからターゲット仮想マシンを選択する段階であって、前記ターゲット仮想マシンは前記ユーザにサービスを提供する、選択する段階と、
前記コントローラが前記ターゲット仮想マシンと前記ユーザとの間の転送情報を決定する段階と、
前記コントローラが前記転送情報に従って、第2の転送フローテーブルを生成する段階であって、前記第2の転送フローテーブルは、前記第2のエッジスイッチがパケットを転送するのに用いられる、生成する段階と、
前記コントローラが、前記第2の転送フローテーブルを前記第2のエッジスイッチに送出する段階と
を備え、
前記コントローラは、負荷分散装置としての機能を有し、ユーザトラフィックをネットワークの入り口でエッジスイッチに分配し、最適経路を選択する
方法。」

[相違点]
<相違点1>
本願発明1は、「ソフトウェア定義型ネットワーキング(SDN)」に基づくものであるのに対し、引用発明は、この点が不明である点。よって、一致点である「データセンター」、「コントローラ」及び「ネットワーク」がそれぞれ、本願発明1では、「ソフトウェア定義型データセンター」、「ソフトウェア定義型ネットワーキング(SDN)コントローラ」及び「SDNネットワーク」であるのに対し、引用発明の「データセンタ」、「負荷分散処理部130」と「コントローラ120」及び「ネットワーク」が、SDNに基づくものであるのか否か不明である点。
また、一致点である「データセンターにおける負荷分散に係る方法」が、本願発明1は、「ソフトウェア定義型データセンターにおけるサービスクラスタスケジューリング方法」であるのに対し、引用発明は、「ソフトウェア定義型データセンターにおける」との前提のない「負荷分散をスケジューリングする方法」である点。

<相違点2>
本願発明1は、「前記ターゲット仮想マシンのエッジスイッチがパケットを転送するのに用いられ」る「第1の転送フローテーブル」を生成する段階と、「前記SDNコントローラが、前記第1の転送フローテーブルを前記ターゲット仮想マシンの前記エッジスイッチに送出する段階」とを備えるのに対し、引用発明においては、仮想マシン側にある、サーバ1?4が備える「オープンフロースイッチ」が、フローテーブルを備えるか否か不明であり、よって、「コントローラ120」が、サーバ1?4が備える「オープンフロースイッチ」のフローテーブルを生成し、これを、サーバ1?4が備える「オープンフロースイッチ」に送出することについて特定していない点。

<相違点3>
本願発明1は、「前記SDNコントローラが、判定された前記サービスクラスタ内の前記少なくとも2つのオンライン仮想マシンに対して負荷監視を実行し、負荷監視結果を定期的に取得する段階であって、前記負荷監視はリソース負荷監視又はトラフィック負荷監視を含む、取得する段階」との構成を備えるのに対し、引用発明は、当該構成について特定しない点。

<相違点4>
共通点である「前記コントローラは、負荷分散装置としての機能を有し、ユーザトラフィックをネットワークの入り口でエッジスイッチに分配し、最適経路を選択する」に関し、本願発明1は、「前記SDNコントローラは、負荷分散装置としての機能を有し、ユーザトラフィックをSDNネットワークの入り口でエッジスイッチに分配し、前記サービスクラスタの健全性チェックと、前記リソース負荷監視又は前記トラフィック負荷監視とに基づいて最適経路を選択する」との構成を備えるのに対し、引用発明は、「公知の負荷分散アルゴリズム」をどのような監視データに基づいて実行するのかについて具体的に特定しない点。

(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3及び4について先に検討する。
相違点3及び4は、「SDNコントローラ」による「負荷」に関する監視と、監視結果に基づく経路制御に関するもので互いに関連するといえるから、まとめて検討する。
引用文献3及び4には、「スイッチ」の「トラフィック」を「監視」すること、及び、引用文献3には「該当フローに属するパケットを廃棄する」ことが記載されているが、これらはいずれも、相違点3に係る本願発明1の「SDNコントローラ」が、「サービスクラスタ内」の「少なくともオンライン仮想マシンに対して負荷監視を実行」すること、及び、相違点4に係る「SDNコントローラ」が、「前記サービスクラスタの健全性チェック」と、「前記リソース負荷監視」又は「前記トラフィック負荷監視」とに基づいて「最適経路を選択」すること、のいずれにも該当しない。
よって、相違点3及び4に係る本願発明1の構成は、上記引用文献1ないし4には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
また、引用発明における「公知の負荷分散アルゴリズム」に、引用文献3又は4に記載された「スイッチ」の「トラフィック」を「監視」する技術を適用する動機付けは存在しないし、仮に、適用し得たとしても、相違点3及び4に係る本願発明1の構成には至らない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし17について
請求項1を引用する本願発明2ないし17も、相違点3及び4に係る本願発明1の構成と同一又は同等の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
令和2年11月9日に提出された手続補正書による補正により、補正後の請求項1ないし17は、相違点3及び4に係る本願発明1の構成と同一又は同等の構成を備えるものとなった。
当該構成は、原査定における引用文献AないしE(当審拒絶理由における引用文献1を含む。)には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし17は、当業者であっても、原査定における引用文献AないしEに基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-12-15 
出願番号 特願2017-534615(P2017-534615)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大石 博見  
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 北川 純次
林 毅
発明の名称 ソフトウェア定義型データセンター、並びにそのためのサービスクラスタスケジューリング方法及びトラフィック監視方法  
代理人 龍華国際特許業務法人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ