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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B67D
管理番号 1369558
審判番号 不服2020-3439  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-12 
確定日 2021-01-12 
事件の表示 特願2018-223847「飲料供給装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月11日出願公開、特開2019- 55822、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月24日に出願した特願2014-260643号(以下、「原出願」という。)の一部を平成30年11月29日に新たな特許出願としたものであって、令和元年9月20日付けの拒絶理由の通知に対し、令和元年11月26日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和2年1月27日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対して令和2年3月12日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がなされ、令和2年5月12日に前置報告がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年1月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1に係る発明は、以下の引用文献1-3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願の請求項2に係る発明は、以下の引用文献1-3に記載された発明及び引用文献4-5に記載された周知技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表2013-508227号公報
2.米国特許出願公開第2013/0106690号明細書
3.特開2000-82165号公報
4.特開平6-325259号公報
5.特開2008-123339号公報

第3 本願発明
本願の請求項1-2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明2」という。)は、令和2年3月12日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
複数種類の飲料を供給する飲料供給装置であって、
前記複数種類のうちのいずれか1つの飲料を吐出する複数の飲料供給口と、
前記複数種類の飲料のそれぞれに対応する選択肢を表示するとともに、前記複数種類のうちの1つの飲料の選択肢の選択操作を受け付けるタッチパネルと、
前記複数の飲料供給口のうち、前記選択操作により選択された飲料が吐出される飲料供給口を特定し、前記特定された飲料供給口に対応する飲料容器置き場を報知するよう前記タッチパネルを制御する制御部と、
前記複数の飲料供給口のうち、少なくとも1つの飲料供給口の位置に対応しない位置に設けられた物理ボタンと、を備え、
前記制御部は、前記選択操作により1つの飲料の選択肢が選択された後、選択された選択肢を拡大表示するとともに、選択されなかった選択肢の表示を終了し、前記選択操作により選択された飲料の吐出指示のために操作される物理ボタンの位置を示す情報を報知するよう前記タッチパネルを制御し、
前記物理ボタンが押下されることにより前記複数の飲料供給口のうち前記選択操作により選択された飲料に対応する飲料供給口から前記選択された飲料を吐出する、
飲料供給装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記選択操作により飲料が選択された後、前記選択操作により選択された飲料の吐出指示のために操作される物理ボタンを報知するよう前記物理ボタンを制御する、
請求項1に記載の飲料供給装置。」

第4 引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下、同様。)。

(1)「【0050】
図1は、飲料調製用自動装置(1)の1実施態様を概略的に示している。該装置(1)は、調製ユニット(6)と制御ユニット(2)とを有している。調製ユニット(6)は、複数の処方から選択されうるところの処方にしたがって飲料を調製するために構成されている。調製ユニット(6)は、例えば、複数の飲料、例えば水、紅茶、コーヒー、チョコレートミルクおよびスープを調製できる。実際の実施態様において、飲料は、添加物、例えば砂糖、ミルクおよび香りを与えられることができる。所望されるならば、注がれる飲料の温度も設定できる。1実施態様において、調製ユニット(6)は、とりわけコーヒー、砂糖およびミルク等を貯蔵するためのホールダー(61a、61b、61c)を有している。図示された実施態様は、さらに加熱ユニット(62)、配量バルブ(63b、63c)および飲料出口(64)を有している。」

(2)「【0051】
制御ユニット(2)は、表示パネル(3)と入力手段(4)とを有し、該入力手段(4)は、ユーザーが表示パネル(3)に表示された画像要素を指定することによって、調製されるべき飲料についての処方を、複数の処方から選択することを可能にする。図示された実施態様においては、入力手段(4)は、表示パネル(3)上に配置された透明接触式感知パネルである。接触すると、入力手段(4)は、表示パネル(3)の接触された位置を示すところの位置信号(x、y)を配信する。別の実施態様においては、ユーザーは、非接触な仕方で、例えばその位置を指すことによってまたは音声命令を与えることによって、表示パネル(3)上の位置を指定することができる。」

(3)「【0052】
制御ユニット(2)は、さらに、ユーザーによって与えられた指示への視覚的に見うる反応を、表示パネル(3)によって表示するため、および自動装置(1)の調製ユニット(6)を制御するための操作ユニット(5)を有している。この目的のために、操作ユニット(5)は入力手段から位置信号(x、y)を受け、そして操作ユニット(5)は画像信号(Sb)で表示パネル(3)を制御する。操作ユニット(5)は制御信号(Sc)で調製ユニットを制御する。さらに、操作ユニット(5)は、調製ユニット(6)から調製ユニットの状態を示すところの状態信号(St)を受けることができる。状態信号(St)は、例えば、ホールダー(61a、61b、61c)の充填度合い、または加熱ユニット(62)によって達成された温度の高さを示すことができる。」

(4)「【0053】
表示パネル(3)は、調製されるべき飲料の処方についての相互に排他的な設定のための選択フィールド(31a、31b、31c)を有している。相互に排他的な設定とは、例えば「コーヒー」「紅茶」「チョコレートミルク」の選択である。操作の間、これら選択フィールドは、当該設定を表す文字列または画像がそれら選択フィールド中に表示されることにより、ユーザーへ分かるようにされる。制御ユニット(2)は、ユーザーが選択フィールドの1つ、例えば(31b)を指定することを通じて、設定の1つを選択できるようにする。選択がなされた後で、少なくとも1つの設定フィールドを伴う収集フィールド(35)が、処方の選択された設定を表示する。指定されなかった選択フィールド(31a、31c)は、可視かつ選択可能のままである。結果として既存の機器とは対照的に、例え選択が既になされていてもユーザーは選択を容易に変えることができる。」

(5)「【0054】
図2は、該自動装置の構成要素の実用的な配置を示している。図1の部分に対応する図2の部分は、同じ参照符号を有している。図示された実用的な実施態様においては、該装置は、図1に示された部分のためのハウジング(7)を有している。ハウジング(7)は、さらに、ビーカー(75)を支持するための支持部(71)を有している。ビーカー(75)は、例えば、ユーザーによってまたは置く機構によってそこに置かれうる。」

(6)「【0059】
図示された典型的な本実施例において、表示パネルは、別のフィールド(36、37、38)における追加的な画像要素を示している。フィールド(36)は起動フィールドである。本フィールドの指定は、収集フィールド(35)において示された飲料の実際の調製および注入をもたらす。フィールド(37)はリセットフィールドである。本フィールドの指定は、制御システムを初期状態にする。フィールド(38)は、情報フィールドである。本フィールド(38)の指定は、装置の可能性に関する情報をユーザーに提供するところの表示された情報画像の表示をもたらす。可能性として、例えば、報知板としての表示パネルの使用、ニュース、天気予報および交通情報を表示するための表示パネルの使用がありうる。」

(7)「【0064】
図6は、本発明に従う制御ユニット(2)の第2の実施態様における表示パネル(3)の可能性のある表示を示している。表示パネル(3)は、ここでは、フィールド(30a、30b、30c、30d)を備えたメインメニュー(30)を表示している。メインメニュー(30)は、ユーザーが1回の指定で飲料を選択できるようにしている。フィールド(30a)の指定は、例えば、強いコーヒーが注がれることになる。フィールド(30d)の指定は、チョコレートミルクが注がれることになり、そしてフィールド(30b)の指定は、無作為化原理で選択された組成物の飲料を注ぐことになる。この場合、フィールド(30c)が指定され、制御ユニット(2)は、ユーザー自身が調製されるべき飲料を構成することを可能にする。」

(8)「【0065】
この場合の表示パネル(3)は、調製されるべき飲料の処方のための相互に並列に並べられた設定フィールド(35a、35d、35e)を伴っている細長い収集フィールド(35)を表示している。設定フィールド(35a、35d、35e)の各々は、現在選択されている組成物の1側面を示している。さらに、表示パネル(2)(当審注:(3)の誤記と思われる。)は、選択フィールドの系列(31、32および33)を収集フィールド(35)に対して横切るように表示している。各系列の選択フィールドの1つは、各設定フィールドと一致している。それ以外の選択フィールドは設定フィールドの隣に配置され、そして代替的な設定を選択するのに使われうる。系列(31、32および33)は、それぞれ設定フィールド(35a、35dおよび35e)と関連せられている。収集フィールド(35)に対して横切るように、表示パネルは、例えば、選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)の第1系列(31)を表示しており、この表示中の選択フィールド(31c)は設定フィールド(35a)と一致している。収集フィールド(35)に対して横切るように、選択フィールド(32a、32b、32c)の第2系列(32)が表示されおり、この表示におけるその選択フィールド(32b)は設定フィールド(35d)と一致している。さらに表示パネル(3)は、収集フィールド(35)に対して横切るように、選択フィールド(33a、33b、33c、33d、33xおよび33e)の第3の系列(33)を表示しており、この表示におけるその選択フィールド(33x)は設定フィールド(35e)と一致している。加えるに、収集フィールド(35)は、ここでは詳細には説明されないが、また別の設定フィールドおよび関連した選択フィールドを有している。表示された状況においては、ユーザーは系列(31)から選択フィールド(31c)を指定し終えているので、個別の設定が設定フィールド(35a)によって取り上げられる。もしユーザーが異なる選択フィールド、例えば選択フィールド(31b)を指定したとすると、このことは、結果として、指定された選択フィールド(31b)に関連した設定フィールド(35a)の個別の設定は、選択フィールド(31b)に属している代替の設定で置き換えられ、かつ本選択フィールド(31b)に表示された画像が各設定フィールド(35a)内に表示される。実際には、このことは、選択フィールド(31)の全欄が、方向(31r)へ、選択フィールド(31b)が設定フィールド(35a)に一致するまで移動されることによって、ユーザーへ知られるようにすることが出来る。もし表示パネル(3)が、この置き換え後に全系列を同じ順番に表示するための十分なスペースを提供できなければ、選択フィールドは例えば回転様式で表示されうる。この場合には、新たな順番は、(31e、31a、31b、31c、31d)である。」

(9)「【0066】
ここで記載された実施態様においては、設定フィールド(35a、35d、35e)が、(選択されていない)選択フィールドに比べて強調されたコントラストで表示されている。この仕方で、どの設定が選択されたかがユーザーにとって一目で明瞭である。これは、示された表示において、設定フィールド(35a、35d、35e)が、収集フィールド(35)を貫いて延在するところの接続要素(39)上に配置されることによって一層明瞭になる。接続要素(39)は、細長い要素として、ここでは直線部分を有する曲線の形状で示されている。ある時、それは、流れる曲線、または線の代わりにチューブとして示されうる。」

(10)「【0067】
本実施態様においては、図示された接続要素(39)が、収集フィールドから調製後の飲料を注ぐための飲料出口(64)の方向に延在している。この接続要素(39)は、収集フィールド(35)と飲料出口(54)(当審注:(64)の誤記と思われる。)との間の相互関係を明瞭にしている。もし2以上の飲料出口がある場合には、ビーカーまたはカップが置かれるべき場所がこの仕方で指示されうる。」

(11)「【0068】
飲料の調製を開始するための起動フィールド(36)は、収集フィールド(35)と、飲料出口(64)へ延在しているところの接続要素(39)の端点(39e)との間の接続要素(39)上に置かれている。」

(12)「【0073】
選択フィールドの第2列(31)は、5種類の飲料、「水」「エスプレッソ」「クリームコーヒー」「カプチーノ」および「ラテマッキアート」からの選択を提供する。」

(13)記載事項(1)、(10)及び(12)並びに図6の図示内容によると、飲料調製用自動装置(1)は、調製ユニット(6)を有し、当該調製ユニット(6)が、「水」、「エスプレッソ」、「クリームコーヒー」、「カプチーノ」及び「ラテマッキアート」の5種類の飲料を調製でき、飲料出口(64)から飲料を注ぐものであるから、飲料調製用自動装置(1)は、複数種類の飲料を注ぐものといえる。

(14)記載事項(1)、(10)及び(12)並びに図2及び図6の図示内容によると、飲料調製用自動装置(1)は2以上の飲料出口(64)を有し、調製ユニット(6)が複数種類の飲料のうちのいずれか1つの飲料を調製するから、2以上の飲料出口(64)のそれぞれは、調製ユニット(6)で調製された複数種類のうちのいずれか1つの飲料を注ぐものといえる。

(15)記載事項(8)及び(12)並びに図6の図示内容によると、表示パネル(3)は、選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)の第1系列(31)を収集フィールド(35)に対して横切るように表示し、選択フィールドの第1列(31)は、5種類の飲料、「水」、「エスプレッソ」、「クリームコーヒー」、「カプチーノ」及び「ラテマッキアート」からの選択を提供するものであるから、表示パネル(3)は、複数種類の飲料のそれぞれに対応する選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)を表示しているといえる。

(16)記載事項(2)、(8)及び(12)並びに図1及び図6の図示内容によると、入力手段(4)は、表示パネル(3)上に配置された透明接触式感知パネルであって、複数種類の飲料のそれぞれに対応する選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)のうちの1つの飲料の選択フィールドの選択を受け付けているといえる。

(17)記載事項(7)及び(10)並びに図6の図示内容によると、制御ユニット(2)は、収集フィールド(35)から調製後の飲料を注ぐための飲料出口(64)の方向に接続要素(39)を延在させ、ビーカー又はカップが置かれるべき場所を指示するよう表示パネル(3)を制御しているといえる。

(18)図6の図示内容によると、表示パネル(3)で表示される起動フィールド(36)は、ビーカー(75)へ飲料を注ぐ飲料出口(64)の位置に対して右側上方の位置に表示されているといえる。

(19)記載事項(4)、(8)及び(9)並びに図6の図示内容によると、制御ユニット(2)は、収集フィールド(35)に対して選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)が選択されると、選択された選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)を、選択されていない選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)に比べて強調されたコントラストで収集フィールド(35)において表示するとともに、選択されていない選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)を選択可能のまま表示しているといえる。

(20)記載事項(2)、(6)及び(11)並びに図6の図示内容によると、制御ユニット(2)は、収集フィールド(35)において表示された飲料の調製及び注入をもたらす起動フィールド(36)を、収集フィールド(35)から飲料出口(64)に延在する接続要素(39)上に表示するように表示パネル(3)を制御しているといえる。

(21)記載事項(6)及び(10)並びに図6の図示内容によると、起動フィールド(36)の指定によって、収集フィールド(35)において表示された飲料を実際に調製し、収集フィールド(35)と接続要素(39)で接続された飲料出口(64)から調製後の飲料の注入をもたらすから、起動フィールド(36)が指定されることにより、収集フィールド(35)において表示された飲料が調製されて、調製後の飲料に対応する飲料出口(64)から調製後の飲料をビーカー又はカップに注入しているといえる。

2.引用発明
したがって、前記引用文献1の記載事項(1)?(21)及び図面の図示内容を総合すると、前記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数種類の飲料を注ぐ飲料調製用自動装置(1)であって、
複数種類のうちのいずれか1つの飲料を注ぐ複数の飲料出口(64)と、
複数種類の飲料のそれぞれに対応する選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)を表示する表示パネル(3)と、
表示パネル(3)上に配置された透明接触式感知パネルであって、複数種類の飲料のそれぞれに対応する選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)のうちの1つの飲料の選択フィールドの選択を受け付ける入力手段(4)と、
収集フィールド(35)から調製後の飲料を注ぐための飲料出口(64)の方向に接続要素(39)を延在させ、ビーカー又はカップが置かれるべき場所を指示するよう表示パネル(3)を制御する制御ユニット(2)と、
制御ユニット(2)による表示パネル(3)の制御により、選択された飲料を注ぐ飲料出口(64)の位置に対して右側上方の位置に表示された起動フィールド(36)と、を備え、
制御ユニット(2)は、収集フィールド(35)に対して選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)が選択されると、選択された選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)を、選択されていない選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)に比べて強調されたコントラストで収集フィールド(35)において表示するとともに、選択されていない選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)を選択可能のまま表示し、収集フィールド(35)において表示された飲料の調製及び注入をもたらす起動フィールド(36)を、収集フィールド(35)から飲料出口(64)に延在する接続要素(39)上に表示するように表示パネル(3)を制御し、
起動フィールド(36)が指定されることにより、収集フィールド(35)において表示された飲料が調製されて、調製後の飲料に対応する飲料出口(64)から調製後の飲料を注ぐ、
飲料調製用自動装置(1)。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
以下、本願発明1と引用発明とを対比する。

引用発明の「飲料調製用自動装置(1)」は、本願発明1の「飲料供給装置」に相当し、引用発明の「複数種類の飲料を注ぐ飲料調製用自動装置(1)」は、本願発明1の「複数種類の飲料を供給する飲料供給装置」に相当する。また、引用発明の「飲料出口(64)」は、本願発明1の「飲料供給口」に相当し、引用発明の「複数種類のうちのいずれか1つの飲料を注ぐ複数の飲料出口(64)」は、本願発明1の「複数種類のうちのいずれか1つの飲料を吐出する複数の飲料供給口」に相当する。
引用発明の「表示パネル(3)」と「入力手段(4)」とは、表示パネル(3)に表示される選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)のうちの1つの選択フィールドの選択を、表示パネル(3)上に配置された透明接触式感知パネルにより受け付けるものであるから、両者を合わせたものが、本願発明1の「タッチパネル」に相当する。また、引用発明の「選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)」は、複数種類の飲料のそれぞれに対応し、ユーザーの選択操作によって選択されるものであるから、本願発明1の「選択肢」に相当する。すると、引用発明の「複数種類の飲料のそれぞれに対応する選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)を表示する表示パネル(3)と、表示パネル(3)上に配置された透明接触式感知パネルであって、複数種類の飲料のそれぞれに対応する選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)のうちの1つの飲料の選択フィールドの選択を受け付ける入力手段(4)」は、本願発明1の「前記複数種類の飲料のそれぞれに対応する選択肢を表示するとともに、前記複数種類のうちの1つの飲料の選択肢の選択操作を受け付けるタッチパネル」に相当する。
引用発明の「制御ユニット(2)」は、本願発明1の「制御部」に相当する。また、引用発明の「調製後の飲料」は、本願発明1の「選択された飲料」に相当し、引用発明の「ビーカー又はカップが置かれるべき場所」は、本願発明1の「飲料容器置き場」に相当する。そして、引用発明の「収集フィールド(35)から調製後の飲料を注ぐための飲料出口(64)の方向に接続要素(39)を延在させ、ビーカー又はカップが置かれるべき場所を指示するよう表示パネル(3)を制御する制御ユニット(2)」という事項は、制御ユニット(2)が、調製後の飲料を注ぐための飲料出口(64)を特定して、この飲料出口(64)に対応したビーカー又はカップが置かれるべき場所を表示パネル(3)で指示しているといえるから、本願発明1の「複数の飲料供給口のうち、前記選択操作により選択された飲料が吐出される飲料供給口を特定し、前記特定された飲料供給口に対応する飲料容器置き場を報知するよう前記タッチパネルを制御する制御部」という事項に相当する。
引用発明の「制御ユニット(2)による表示パネル(3)の制御により、選択された飲料を注ぐ飲料出口(64)の位置に対して右側上方の位置に表示された起動フィールド(36)」において、起動フィールド(36)の表示位置は選択された飲料を注ぐ飲料出口(64)の位置に対して右側上方にあり、起動フィールド(36)と選択された飲料を注ぐ飲料出口(64)との位置関係について特段の対応関係は把握できないから、起動フィールド(36)は選択された飲料を注ぐ飲料出口(64)の位置に対応しない位置に表示されているといえる。また、選択された飲料を注ぐ飲料出口(64)は複数の飲料出口(64)のうちの1つであるといえるから、引用発明の「制御ユニット(2)による表示パネル(3)の制御により、選択された飲料を注ぐ飲料出口(64)の位置に対して右側上方の位置に表示された起動フィールド(36)」と、本願発明1の「複数の飲料供給口のうち、少なくとも1つの飲料供給口の位置に対応しない位置に設けられた物理ボタン」とは、「複数の飲料供給口のうち、少なくとも1つの飲料供給口の位置に対応しない位置にある操作部」である点において共通する。
引用発明の「制御ユニット(2)は、収集フィールド(35)に対して選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)が選択されると、選択された選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)を、選択されていない選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)に比べて強調されたコントラストで収集フィールド(35)において表示するとともに、選択されていない選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)を選択可能のまま表示し、収集フィールド(35)において表示された飲料の調製及び注入をもたらす起動フィールド(36)を、収集フィールド(35)から飲料出口(64)に延在する接続要素(39)上に表示するように表示パネル(3)を制御」するという事項において、「起動フィールド(36)」は、操作されることにより収集フィールド(35)において表示された飲料の注入をもたらし、飲料出口(64)に延在する接続要素(39)上に表示されることによって、その位置がユーザーに対して報知されているといえる。すると、引用発明の「制御ユニット(2)は、収集フィールド(35)に対して選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)が選択されると、選択された選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)を、選択されていない選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)に比べて強調されたコントラストで収集フィールド(35)において表示するとともに、選択されていない選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)を選択可能のまま表示し、収集フィールド(35)において表示された飲料の調製及び注入をもたらす起動フィールド(36)を、収集フィールド(35)から飲料出口(64)に延在する接続要素(39)上に表示するように表示パネル(3)を制御」するという事項と、本願発明1の「制御部は、前記選択操作により1つの飲料の選択肢が選択された後、選択された選択肢を拡大表示するとともに、選択されなかった選択肢の表示を終了し、前記選択操作により選択された飲料の吐出指示のために操作される物理ボタンの位置を示す情報を報知するよう前記タッチパネルを制御」するという事項は、「制御部は、前記選択操作により1つの飲料の選択肢が選択された後、選択された選択肢の表示を継続し、前記選択操作により選択された飲料の吐出指示のために操作される操作部の位置を示す情報を報知するよう前記タッチパネルを制御」するという点において共通する。
引用発明の「起動フィールド(36)が指定されることにより、収集フィールド(35)において表示された飲料が調製されて、調製後の飲料に対応する飲料出口(64)から調製後の飲料を注ぐ」という事項と、本願発明1の「物理ボタンが押下されることにより前記複数の飲料供給口のうち前記選択操作により選択された飲料に対応する飲料供給口から前記選択された飲料を吐出する」という事項とは、「操作部が操作されることにより複数の飲料供給口のうち選択操作により選択された飲料に対応する飲料供給口から選択された飲料を吐出する」という点において共通する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、
「複数種類の飲料を供給する飲料供給装置であって、
前記複数種類のうちのいずれか1つの飲料を吐出する複数の飲料供給口と、
前記複数種類の飲料のそれぞれに対応する選択肢を表示するとともに、前記複数種類のうちの1つの飲料の選択肢の選択操作を受け付けるタッチパネルと、
前記複数の飲料供給口のうち、前記選択操作により選択された飲料が吐出される飲料供給口を特定し、前記特定された飲料供給口に対応する飲料容器置き場を報知するよう前記タッチパネルを制御する制御部と、
前記複数の飲料供給口のうち、少なくとも1つの飲料供給口の位置に対応しない位置にある操作部と、を備え、
前記制御部は、前記選択操作により1つの飲料の選択肢が選択された後、選択された選択肢の表示を継続し、前記選択操作により選択された飲料の吐出指示のために操作される操作部の位置を示す情報を報知するよう前記タッチパネルを制御し、
前記操作部が操作されることにより前記複数の飲料供給口のうち前記選択操作により選択された飲料に対応する飲料供給口から前記選択された飲料を吐出する、
飲料供給装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
選択された飲料の吐出指示のために操作される操作部について、本願発明1は、「物理ボタン」が「設けられ」、「押下」されることにより複数の飲料供給口のうち選択操作により選択された飲料に対応する飲料供給口から前記選択された飲料を吐出するのに対し、引用発明は、表示パネル(3)で表示された「起動フィールド(36)」であって物理的に「押下」されるボタンではなく、「指定」されることにより、収集フィールド(35)において表示された飲料が調製されて、調製後の飲料に対応する飲料出口(64)から調製後の飲料を注ぐ点。

[相違点2]
飲料の選択肢が選択された後の選択肢の表示について、本願発明1は、「選択された選択肢を拡大表示するとともに、選択されなかった選択肢の表示を終了」するのに対し、引用発明は、選択された「選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)」をコントラストによって強調するものの拡大表示しておらず、選択されていない選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)を選択可能のまま表示している点。

[相違点3]
操作部の位置を示す情報について、本願発明1は、「物理ボタンの位置を示す情報」を報知するのに対し、引用発明は、表示パネル(3)上の「起動フィールド(36)」の位置を報知するものの、物理的なボタンの位置を報知するものではない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、前記相違点2について、先に検討する。
前置報告書において周知技術を示す文献として引用した特開2010-67185号公報(以下、「引用文献6」という。)の段落【0061】-【0063】並びに図2及び9-11に、飲料ディスペンサ2の液晶表示部12において、商品がタッチパネルにより選択されると、選択された商品に関する情報を大きく表示するとともに、選択されなかった商品に関する情報を表示しない事項が記載され、同じく、前置報告書において周知技術を示す文献として引用した独国特許出願公開第102013200686号明細書(以下、「引用文献7」という。)の段落【0072】及び【0093】-【0099】並びに図6及び7に、飲料調製機器のクイック選択領域7において、ユーザが所望のタイルに触れることによってタイル状に表示された飲料が選択されると、選択された飲料を拡大表示するとともに、選択されなかった飲料の表示を終了する事項が記載されているように、タッチパネル操作によって供給する飲料を選択する装置において、選択された選択肢を拡大表示するとともに、選択されなかった選択肢の表示を終了するという技術的事項は、本願の原出願の出願前において周知技術であったといえる。
そして、引用発明と前記周知技術とは、ともにユーザによるタッチパネル操作によって供給する飲料を選択する点で共通するものの、引用発明は、飲料の選択が既になされていてもユーザーが容易に選択を変更できるようにするために(引用文献1の段落【0053】)、「選択されていない選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)を選択可能のまま表示」するものである。したがって、引用発明の「選択されていない選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)を選択可能のまま表示」することに代えて、前記周知技術である「選択されなかった選択肢の表示を終了する」ことを採用したとすると、引用発明において、既にされた飲料の選択をユーザーが容易に変更することができなくなるから、当該事項を採用することには阻害要因があるといえる。
さらに、引用発明は、選択フィールドの系列を収集フィールド(35)に対して横切るように表示するものであり(引用文献1の段落【0065】及び図6)、ユーザによる選択操作がされていなくても、いずれかの選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)が収集フィールド(35)内にあるものである。そして、「起動フィールド(36)」が指定されたときに飲料の調製を始めるものであって、「起動フィールド(36)」が指定されるまでは全ての選択フィールド(31a、31b、31c、31d、31e)を表示することによって、飲料の選択を容易に変更可能にするものであり(引用文献1の段落【0053】、図6)、「起動フィールド(36)」が指定されるまでは飲料の選択が確定されているとはいえない。一方、前記周知技術は、選択された選択肢を拡大表示した時点においては飲料の選択が既に確定されているといえる(例えば、引用文献6の段落【0063】及び図11、引用文献7の段落【0099】及び図7に記載されたものは、選択された選択肢を拡大表示した画面において、飲料のサイズを決定する操作を促しており、前の画面に戻って飲料の選択を変更することができるものの、飲料の選択は既に確定しているといえる。)。このように、引用発明と前記周知技術とは前提とする技術が異なっており、飲料の選択が既に確定されている状態の表示形態である前記周知技術を、「起動フィールド(36)」が指定されるまで飲料の選択が確定されない引用発明において採用することは、当業者であっても容易に想到できることとはいえない。
また、この相違点2に係る「選択された選択肢を拡大表示するとともに、選択されなかった選択肢の表示を終了」するという事項について、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2?引用文献5のいずれにも、何ら記載も示唆もされていない。
そうすると、引用発明において、引用文献2?引用文献5及び周知技術を検討しても、前記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を得ることは、当業者にとっても容易であるとはいえない。

したがって、本願発明1は、相違点1及び相違点3について検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項、引用文献3に記載された技術的事項、引用文献4?5に記載されたような周知技術及び引用文献6?7に記載されたような周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。


2.本願発明2について
請求項2は請求項1を引用するものであり、本願発明2も、本願発明1の前記相違点2に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2は、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項、引用文献3に記載された技術的事項、引用文献4?5に記載されたような周知技術及び引用文献6?7に記載されたような周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1は前記相違点2に係る発明特定事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項、引用文献3に記載された技術的事項及び引用文献4?5に記載されたような周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-12-16 
出願番号 特願2018-223847(P2018-223847)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B67D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 角田 貴章  
特許庁審判長 柿崎 拓
特許庁審判官 長馬 望
神山 貴行
発明の名称 飲料供給装置  
代理人 特許業務法人鷲田国際特許事務所  

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