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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1369617
審判番号 不服2019-12522  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-20 
確定日 2020-12-24 
事件の表示 特願2016-540905「極端紫外光源用搬送システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月12日国際公開、WO2015/034687、平成28年11月 4日国内公表、特表2016-534409〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)8月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年9月9日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成30年 3月15日付け:拒絶理由通知書
平成30年 6月12日 :意見書・手続補正書
平成30年11月13日付け:拒絶理由通知書(最初)
平成31年 2月12日 :意見書・手続補正書
令和 元年 5月23日付け:拒絶査定
令和 元年 9月20日 :審判請求書

第2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項9に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった次の引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。
引用文献:特開2013-4369号公報(原査定における引用文献3)
周知例1:特開2000-144421号公報(原査定における引用文献2)
周知例2:特開平8-279468号公報(原査定における引用文献4)

第3 当審の判断
1 本願発明の認定
本願の請求項に係る発明は、平成31年2月12日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち、請求項9に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「増幅光ビームを生成するように構成された源と、真空チャンバと、プラズマに変換されたときに極端紫外光を放出する材料を備えたターゲット材を、前記真空チャンバ内の、前記増幅光ビームを受光するように構成されたターゲット位置に向かって誘導するように構成されたターゲット材送達システムと、前記放出された極端紫外光を集光及び反射するように構成されたコレクタと、を有する極端紫外光源と、
フリーラジカルを通過させるように構成された材料を備える導管であって、前記導管は、前記導管の第1の端部により定義される第1の開口と、前記導管の側壁により定義され前記第1の開口から遠ざかる方向に沿って拡大する寸法を有する複数の他の開口と、を定義し、前記導管の前記側壁は、直線部分と、湾曲部分と、を有し、前記他の開口は、前記導管の前記湾曲部分にあり、前記導管は、使用時に金属材料を有し、前記導管の前記側壁は、前記真空チャンバの壁を貫通し、前記第1の開口が前記真空チャンバの外部にあり、前記他の開口が前記真空チャンバの内側にあって前記コレクタに向かって配向されている状態で位置決めされている、導管と、を有するラジカル搬送システムと、
を備える、システム。」

2 引用発明の認定
(1)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2013-4369号公報(以下「引用文献」という。)には、次の記載がある(下線は、当審が付した。以下、同じ。)。
ア 「【特許請求の範囲】」、
「レーザ装置と共に用いられ、外部装置に極端紫外光を供給するよう接続される極端紫外光生成装置であって、
レーザ光を内部に入射させるための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、
前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するためのターゲット供給部と、
前記チャンバに接続される排気ポンプと、
前記チャンバ内に配置される少なくとも1つの光学要素と、
前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内で前記ターゲット物質が前記レーザ光に照射される際に放出されて前記少なくとも1つの光学要素に付着した前記ターゲット物質のデブリをエッチングするために導入されるエッチングガスが通過するエッチングガス導入部と、
前記少なくとも1つの光学要素の温度を制御するための少なくとも1つの温度調節機構と、
を備える、極端紫外光生成装置。」(【請求項1】)、
「前記ターゲット物質は錫である、請求項1記載の極端紫外光生成装置。」(【請求項2】)、
「前記エッチングガスはHラジカルガスである、請求項1記載の極端紫外光生成装置。」(【請求項4】)、
「前記エッチングガス導入部には、前記少なくとも1つの光学要素の表面に向けられた少なくとも1つの開口が設けられる、請求項1記載の極端紫外光生成装置。」(【請求項5】)

イ 「【実施の形態】」、
「以下、本開示を実施するための形態を添付の図面を参照に詳細に説明する。以下の説明において、各図では本開示の内容を理解できる程度に形状、大きさ、および位置関係等が概略的に示されてあるに過ぎず、従って、本開示は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係等に限定されるものではない。各図では、構成の明瞭化のため、断面におけるハッチングの一部が省略されている。また、後述において例示する数値は、本開示の好適な例に過ぎず、従って、本開示は例示された数値に限定されるものではない。」(【0008】)、
「実施の形態1
本開示の実施の形態1によるEUV光生成装置について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施の形態1によるEUV光生成装置1の構成を概略的に示す。」(【0009】)、

「図1に示されるように、EUV光生成装置1は、EUV光生成用の空間を画定する気密性の高いチャンバ11と、チャンバ11と露光装置(不図示)とを光学的に接続する露光装置接続部13と、チャンバ11内にEUV光の生成材料となる錫(Sn)などのターゲット物質を液滴状のドロップレットDとして供給するためのドロップレットコントローラ14aおよびドロップレット生成器14bと、ドロップレットDをプラズマ化するためのパルス状のレーザ光(プリパルスレーザ光L1aおよびメインパルスレーザ光L1b)を出力するよう構成されるプリパルスレーザPLおよびメインパルスレーザMLと、プリパルスレーザPLおよびメインパルスレーザMLならびにドロップレットコントローラ14a等を適宜制御するよう構成されるEUV光生成コントローラ10と、を備えてもよい。チャンバ11内には、ドロップレット生成器14bに設けられたノズル(不図示)の先端を介してドロップレットDが供給されてもよい。」(【0010】)、
「チャンバ11には、ウィンドウW1およびW2が設けられてもよく、プリパルスレーザ光L1aおよびメインパルスレーザ光L1bはそれぞれウィンドウW1およびW2を透過してチャンバ11内部に入射してもよい。チャンバ11内部には、ウィンドウW1およびW2を介して入射したプリパルスレーザ光L1aおよびメインパルスレーザ光L1bをそれぞれチャンバ11内のプラズマ生成領域P1における所定の位置で集光するための軸外放物面ミラーM2およびM3と、プラズマ生成領域P1で生成されたEUV光L2が露光装置接続部13内に設定された中間集光点IFで集光されるように反射するEUV集光ミラーM1と、が設けられてもよい。」(【0011】)、
「このような構成において、EUV光生成コントローラ10は、ドロップレットコントローラ14aを制御することで、ドロップレット生成器14bからドロップレットDが出力されるタイミングを制御してもよい。ドロップレット生成器14bから出力されたドロップレットDは、プラズマ生成領域P1に到着し得る。ドロップレットDがプラズマ生成領域P1に到着するタイミングに合わせて、ドロップレットDには、プリパルスレーザPLから出力されたプリパルスレーザ光L1aがウィンドウW1および軸外放物面ミラーM2を介してEUV集光ミラーM1の側面側から集光されてもよい(1段目のレーザ照射)。これにより、ドロップレットDを構成するターゲット物質が拡散して、液滴状のターゲット物質が弱いプラズマ、中性粒子、クラスターやフラグメント等が混在した状態に変容し得る。以下の説明では、この状態にあるターゲット物質を「拡散したターゲット」と称する。」(【0012】)、
「プラズマ生成領域P1で生成された拡散したターゲットには、メインパルスレーザMLから出力されたメインパルスレーザ光L1bがウィンドウW2および軸外放物面ミラーM3を介してEUV集光ミラーM1の背面側から集光されてもよい(2段目のレーザ照射)。これにより、拡散したターゲットがプラズマ化し得る。EUV光L2は、このプラズマが脱励起する際に放射され得る。なお、EUV集光ミラーM1には、メインパルスレーザ光L1bを通過させるための貫通孔M1aが設けられてもよい。プリパルスレーザPLからプリパルスレーザ光L1aが出力されるタイミングおよびメインパルスレーザMLからメインパルスレーザ光L1bが出力されるタイミングは、EUV光生成コントローラ10によって制御されてもよい。ドロップレットDがプラズマ生成領域P1に到着するタイミングに合わせてこれにプリパルスレーザ光L1aが照射されて、プラズマ生成領域P1で生成された拡散したターゲットにメインパルスレーザ光L1bが照射されてもよい。」(【0013】)、
「プラズマから放射されたEUV光L2は、その反射面が回転楕円面形状のEUV集光ミラーM1によって反射されることで、露光装置接続部13へ向けて反射されてもよい。反射されたEUV光L2は、上述したように、露光装置接続部13内に設定された中間集光点IFで集光されてもよい。その後、EUV光L2は、導波路(たとえば管)(不図示)を介して露光装置へ導波されてもよい。」(【0014】)、
「実施の形態1では、レーザ光の2段階照射によってターゲット物質(ドロップレットD)がプラズマ化されるが、これに限らず、1段階または3段階以上のレーザ照射によってターゲット物質がプラズマ化されてもよい。さらに、実施の形態1では、ターゲット物質が液滴状で供給される場合を例に挙げたが、これに限らず、予めチャンバ11内に配置されたローテーション可能な固体ターゲット物質が用いられてもよい。」(【0015】)、
「プラズマ生成領域P1で生成されたプラズマからは、EUV光L2が放射された後、イオン、原子、帯電した粒子、中性の粒子など、ターゲット物質であるSnの粒子(以下、Snデブリという)が発生し得る。このSnデブリは、プラズマ生成領域P1から放出された後、チャンバ11内に配置されたEUV集光ミラーM1や軸外放物面ミラーM2およびM3などの光学要素に付着し、堆積し得る。」(【0016】)、
「そこで、実施の形態1によるEUV光生成装置1は、チャンバ11内に水素ラジカル(以下、HラジカルまたはH*と記す)を供給するためのラジカル生成器15a?15cと、チャンバ11内のガスを排気するための排気ポンプ12と、を備えてもよい。ただし、ラジカル生成器15a?15cに代えて、水素ガスを供給する水素ガス供給源が用いられてもよい。ラジカル生成器15a?15cから放出されたHラジカルは、チャンバ11内に延在するガス導入管16a?16cを介してチャンバ11内に供給されてもよい。ラジカル生成器15a?15cおよびガス導入管16a?16cは、チャンバ11内に配置された光学要素に付着したSnデブリをエッチングするためのエッチングガス(Hラジカルおよびラジカル化されなかったH_(2)ガス)を光学要素の表面に沿って流してもよい。」(【0017】)、
「ガス導入管16a?16cのガス放出口は、チャンバ11内に配置されたEUV集光ミラーM1や軸外放物面ミラーM2およびM3などの光学要素にそれぞれ向けられるのが好ましい。それにより、Snデブリが付着した光学要素表面に沿って、Hラジカルが流れ、Hラジカルが光学要素表面のSnデブリと反応して、スタナン(SnH_(4))ガスが生成され得る。このスタナンガスは、約-52℃以上で気体である。したがって、SnとHラジカルとを反応させ、スタナンガスを生成することによって、光学要素表面のSnデブリをエッチングすることが可能となる。この結果、光学要素の性能劣化を抑制することができる。なお、実施の形態1および後述する実施の形態において、ガス放出口は、少なくとも1つの開口であっても、スリットであってもよい。」(【0018】)、
「Hラジカルを光学要素表面に沿って流すことによって生成されたスタナンガスは、排気ポンプ12によってチャンバ11外へ排気されてもよい。実施の形態1では、付着したSnデブリを高効率でエッチング反応させるために、水素がラジカルの状態で供給されるのが好ましいが、これに限らず、水素分子(H_(2))の状態で供給されてもよい。この場合、水素分子がプラズマ生成領域P1で放射される紫外光、真空紫外光、EUV光等によってHラジカルへ変容すると、そのHラジカルが光学要素に付着したSnデブリと反応してスタナン(SnH_(4))が生成され得る。この結果、光学要素に付着したSnデブリがエッチングされて光学要素の性能劣化を抑制することができる。この場合、ラジカル生成器15a?15cは必須ではなく、ラジカル生成器15a?15cの代わりに水素ガス供給源が設けられてもよい。水素ガス供給源は露光装置が設置される設備に備えられていてもよいし、EUV光生成装置および露光装置のいずれかに設けられていてもよい。」(【0019】)、
「チャンバ11内には、たとえば板状のパーティション11a?11cが配置されてもよい。このパーティション11a?11cによって、チャンバ11内でのガス(Hラジカル、水素ガス、スタナンガス等)の流れがコントロールされ得る。この結果、光学要素に付着したSnデブリを効率よくエッチングしつつ、生成されたスタナンガスを効率よく排出することが可能となる。パーティション11bと11cとの間に形成される開口部A1は、エッチングガスの流路の機能とメインパルスレーザ光L1bの光路の機能とを果たしてもよい。パーティション11aと11bとの間に形成される開口部A2は、エッチングガスの流路の機能とプリパルスレーザ光L1aの光路の機能とを果たしてもよい。」(【0020】)、
「光学要素(たとえばEUV集光ミラーM1ならびに軸外放物面ミラーM2およびM3)から、デブリが発生する領域であるプラズマ生成領域P1へ向けてガスが流れるように、パーティション11a?11cを用いてガスの流れが制御されることで、光学要素へのSnデブリの入射が抑制され得る。これにより、光学要素へのSnデブリの付着を低減することが可能となり、光学要素の性能劣化をより確実に抑制することが可能となる。」(【0021】)

ウ 「・変形例1
上述した実施の形態におけるガス導入管の変形例について、以下に図面を参照して詳細に説明する。以下の説明では、EUV集光ミラーM1の表面に沿ってHラジカルまたはH2ガスを流すためのガス導入管を例に挙げて説明する。」(【0061】)、
「・変形例2
変形例2によるガス導入管について、図面を参照して詳細に説明する。図13Aは、変形例2によるガス導入管およびEUV集光ミラーをEUV集光ミラーの反射面側から見た際の構成を概略的に示す。図13Bは、図13Aに示されるガス導入管およびEUV集光ミラーの構成を概略的に示すXIIIB-XIIIB面に沿った断面図である。」(【0065】)、

「図13Aおよび図13Bに示されるように、変形例2では、EUV集光ミラーM1に対して複数(たとえば2つ)のラジカル生成器15Aおよび15Bが設けられてもよい。あるいは、ラジカル生成器15Aおよび15Bに代えて、水素ガスを供給するための水素ガス供給源が用いられてもよい。ラジカル生成器15Aおよび15Bは、EUV集光ミラーM1の反射面側から見て、略軸対称に配置されてもよい。ラジカル生成器15Aからは、EUV集光ミラーM1の反射面を外側から囲むように、半弧状のガス導入管16-2aが延在してもよい。同様に、ラジカル生成器15Bからは、EUV集光ミラーM1の反射面を外側から囲むように、半弧状のガス導入管16-2bが延在してもよい。2つの半弧状のガス導入管16-2aおよび16-2bによって、EUV集光ミラーM1の反射面が外側から囲まれてもよい。ガス導入管16-2aおよび16-2bには、EUV集光ミラーM1の反射面に向けて開口された穴が略等間隔で設けられてもよい。ラジカル生成器15Aおよび15Bからガス導入管16-2aおよび16-2b内に送られたHラジカルは、ガス導入管16-2aおよび16-2bに設けられた穴から吹き出し得る。これにより、Hラジカルが、EUV集光ミラーM1の反射面の外周から略満遍なく、EUV集光ミラーの反射面に沿って流れ得る。この結果、EUV集光ミラーM1の特に反射面に付着したSnがエッチングされ得る。」(【0066】)、
「ガス導入管16-2aおよび16-2bは、たとえばドロップレット生成器14bのノズル14c先端から出力されるドロップレットDがプラズマ生成領域P1に向けて進行すること、および、プラズマ生成領域P1を通過したドロップレットDまたはドロップレットDの残骸がドロップレット回収部14dに向けて進行することを妨げないように、その一部に隙間が設けられてもよい。」(【0067】)、
「・変形例4
変形例4によるガス導入管について、図面を参照して詳細に説明する。図15Aは、変形例4によるガス導入管およびEUV集光ミラーをEUV集光ミラーの反射面側から見た際の構成を概略的に示す。図15Bは、図15Aに示されるガス導入管およびEUV集光ミラーの構成を概略的に示すXVB-XVB面に沿った断面図である。」(【0072】)、

「図15Aおよび図15Bに示されるように、変形例4によるガス導入管16-4は、EUV集光ミラーM1の反射面側から見た形状が略直線であって(図15A参照)、EUV集光ミラーM1の反射面に沿って弓状に歪曲した形状でもよい(図15B参照)。ガス導入管16-4の略中央のEUV集光ミラーM1の貫通孔M1aに対応する位置には、この貫通孔M1aを避けるように半弧状に歪曲した歪曲部16-4aが設けられてもよい(図15A参照)。」(【0073】)、
「このような形状を有するガス導入管16-4は、EUV光L2のオブスキュレーション領域E内に配置されるのが好ましい。オブスキュレーション領域とは、EUV集光ミラーによって集光されるEUV光のうち、露光装置において利用されないEUV光の角度範囲に対応する領域のことをいう。すなわち、オブスキュレーション領域は、露光装置において利用されないEUV光の角度範囲に含まれる3次元的な領域である。」(【0074】)、
「ガス導入管16-4には、EUV集光ミラーM1の反射面の表面に沿ってエッチングガスが流れるように開口された穴が両側に略等間隔に設けられてもよい。ラジカル生成器15からガス導入管16-4内に送られたHラジカルは、ガス導入管16-4に設けられた穴から吹き出し得る。これにより、Hラジカルが、EUV集光ミラーM1の中央の貫通孔M1aを通る中心線付近から略満遍なく、EUV集光ミラーM1の反射面に沿って流れ得る。この結果、EUV集光ミラーM1の特に反射面に付着したSnがエッチングされ得る。なお、ラジカル生成器15は水素ガス供給源に代えてもよい。その場合、ガス導入管16-4を介して水素ガスがEUV集光ミラーの反射面に沿って流れ得る。」(【0075】)、
「ガス導入管16-4は、EUV集光ミラーM1の反射面に沿って歪曲していてもよい。この構成により、ドロップレット生成器14bのノズル14c先端からオブスキュレーション領域E内に出力されるドロップレットDのプラズマ生成領域P1への進行を妨げることを抑制できる。」(【0076】)

エ 図1によれば、ラジカル生成器15が、チャンバ11の外部に存在し、ガス導入管16が、チャンバ11の壁を貫通していることが見て取れる。

オ 変形例2に係る図13Aによれば、ガス導入管16-2a及びガス導入管16-2bは、EUV集光ミラーM1の反射面を外側から囲むような半弧状の部分(【0066】)のほかに、EUV集光ミラーM1の反射面側から見て直線状の部分をも備えること、及び、ガス導入管の当該半弧状の部分の側面に、Hラジカルが吹き出すための穴が設けられていること、が見て取れる。

カ 変形例4に係る図15A及び図15Bによれば、ガス導入管16-4は、EUV集光ミラーM1の反射面に沿って弓状に歪曲した部分(【0073】)のほかに、EUV集光ミラーM1の反射面側から見て、かつ、図15AのXVB-XVB面に沿った断面図上において、直線状の部分をも備えていることが見て取れるから、ガス導入管16-4は、(当該弓状に歪曲した部分のほかに、)直線状の部分をも備えていると認められる。さらに、当該各図からは、ガス導入管16-4の当該弓状に歪曲した形状の部分の側面に、Hラジカルが吹き出すための穴が設けられていること、が見て取れる。

(2)上記(1)の各記載によれば、引用文献には、変形例2又は変形例4に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。
「レーザ装置と共に用いられ、外部装置に極端紫外光を供給するよう接続される極端紫外光生成装置であって、
レーザ光を内部に入射させるための少なくとも1つの入射口が設けられたチャンバと、
前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するためのターゲット供給部と、
前記チャンバに接続される排気ポンプと、
前記チャンバ内に配置される少なくとも1つの光学要素と、
前記チャンバに設けられ、前記チャンバ内で前記ターゲット物質が前記レーザ光に照射される際に放出されて前記少なくとも1つの光学要素に付着した前記ターゲット物質のデブリをエッチングするために導入されるエッチングガスが通過するエッチングガス導入部と、
前記少なくとも1つの光学要素の温度を制御するための少なくとも1つの温度調節機構と、
を備える、極端紫外光生成装置であって、(【請求項1】)
前記ターゲット物質は錫であり、(【請求項2】)
前記エッチングガスはHラジカルガスであり、(【請求項4】)
前記エッチングガス導入部には、前記少なくとも1つの光学要素の表面に向けられた少なくとも1つの開口が設けられており、(【請求項5】)
レーザ光は、ターゲット物質をプラズマ化するためのパルス状のものであり、(【0010】)
ターゲット物質は、EUV光の生成材料となるものであり、(【0010】)
プラズマ生成領域P1で生成された拡散したターゲットがプラズマ化し、EUV光L2は、このプラズマが脱励起する際に放射されるものであって、(【0013】)
プラズマから放射されたEUV光L2は、その反射面が回転楕円面形状のEUV集光ミラーM1によって反射されることで、露光装置接続部13へ向けて反射されるものであり、(【0014】)
プラズマ生成領域P1で生成されたプラズマからは、EUV光L2が放射された後、イオン、原子、帯電した粒子、中性の粒子など、ターゲット物質であるSnの粒子(以下、Snデブリという)が発生し、このSnデブリは、プラズマ生成領域P1から放出された後、チャンバ11内に配置されたEUV集光ミラーM1などの光学要素に付着し、堆積するものであり、(【0016】)
チャンバ11内に水素ラジカル(以下、HラジカルまたはH*と記す)を供給するためのラジカル生成器を備え、ラジカル生成器から放出されたHラジカルは、チャンバ11内に延在するガス導入管を介してチャンバ11内に供給され、ラジカル生成器およびガス導入管は、チャンバ11内に配置された光学要素に付着したSnデブリをエッチングするためのエッチングガス(Hラジカルおよびラジカル化されなかったH_(2)ガス)を光学要素の表面に沿って流すものであり、(【0017】)
ガス導入管のガス放出口は、チャンバ11内に配置されたEUV集光ミラーM1などの光学要素に向けられており、(【0018】)
ガス放出口は、少なくとも1つの開口であり、(【0018】)
ラジカル生成器15が、チャンバ11の外部に存在し、ガス導入管16が、チャンバ11の壁を貫通しており、(上記(1)エ)
変形例2では、EUV集光ミラーM1に対して複数(たとえば2つ)のラジカル生成器15Aおよび15Bが設けられており、ラジカル生成器15Aからは、EUV集光ミラーM1の反射面を外側から囲むように、半弧状のガス導入管16-2aが延在し、同様に、ラジカル生成器15Bからは、EUV集光ミラーM1の反射面を外側から囲むように、半弧状のガス導入管16-2bが延在し、ガス導入管16-2aおよび16-2bには、EUV集光ミラーM1の反射面に向けて開口された穴が略等間隔で設けられ、ラジカル生成器15Aおよび15Bからガス導入管16-2aおよび16-2b内に送られたHラジカルは、ガス導入管16-2aおよび16-2bに設けられた穴から吹き出し、これにより、Hラジカルが、EUV集光ミラーM1の反射面の外周から略満遍なく、EUV集光ミラーの反射面に沿って流れ、この結果、EUV集光ミラーM1の特に反射面に付着したSnがエッチングされるものであり、(【0066】)
ガス導入管16-2a及びガス導入管16-2bは、EUV集光ミラーM1の反射面側から見て直線状の部分をも備え、ガス導入管の当該半弧状の部分の側面に、Hラジカルが吹き出すための穴が設けられており、(上記(1)オ)
変形例4では、ガス導入管16-4は、EUV集光ミラーM1の反射面側から見た形状が略直線であって、EUV集光ミラーM1の反射面に沿って弓状に歪曲した形状であり、ガス導入管16-4には、EUV集光ミラーM1の反射面の表面に沿ってエッチングガスが流れるように開口された穴が両側に略等間隔に設けられ、ラジカル生成器15からガス導入管16-4内に送られたHラジカルは、ガス導入管16-4に設けられた穴から吹き出し、これにより、Hラジカルが、EUV集光ミラーM1の中央の貫通孔M1aを通る中心線付近から略満遍なく、EUV集光ミラーM1の反射面に沿って流れ、この結果、EUV集光ミラーM1の特に反射面に付着したSnがエッチングされるものであり、(【0075】)
ガス導入管16-4は、直線状の部分をも備え、ガス導入管16-4の当該弓状に歪曲した形状の部分の側面に、Hラジカルが吹き出すための穴が設けられている、(上記(1)カ)
極端紫外光生成装置。」

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)本願発明の「増幅光ビームを生成するように構成された源と、真空チャンバと、プラズマに変換されたときに極端紫外光を放出する材料を備えたターゲット材を、前記真空チャンバ内の、前記増幅光ビームを受光するように構成されたターゲット位置に向かって誘導するように構成されたターゲット材送達システムと、前記放出された極端紫外光を集光及び反射するように構成されたコレクタと、を有する極端紫外光源と、」との特定事項について
ア 本願発明の「増幅光ビームを生成するように構成された源と、」との特定事項について
引用発明は、「レーザ装置」を備えるとともに、「レーザ光は、ターゲット物質をプラズマ化するためのパルス状のものであり」、「プラズマ生成領域P1で生成された拡散したターゲットがプラズマ化し、EUV光L2は、このプラズマが脱励起する際に放射されるもの」であるから、引用発明の「レーザ光」は、本願発明の「増幅光ビーム」に相当し、引用発明の「レーザ装置」は、本願発明の「増幅光ビームを生成するように構成された源」に相当する。
このように、引用発明は、本願発明の「増幅光ビームを生成するように構成された源」との特定事項を備える。

イ 本願発明の「真空チャンバと、」との特定事項について
引用発明の「チャンバ」は、技術常識に照らせば、本願発明の「真空チャンバ」に相当することが明らかである。
よって、引用発明は、本願発明の「真空チャンバ」との特定事項を備える。

ウ 本願発明の「プラズマに変換されたときに極端紫外光を放出する材料を備えたターゲット材を、前記真空チャンバ内の、前記増幅光ビームを受光するように構成されたターゲット位置に向かって誘導するように構成されたターゲット材送達システムと、」との特定事項について
(ア)引用発明の「EUV光の生成材料となる」「ターゲット物質」は、本願発明の「ターゲット材」に相当する。
そして、引用発明の「ターゲット物質」は、「レーザ光」により「プラズマ化」されるものであり、また、「このプラズマが脱励起する際に」「EUV光L2」が「放射される」のであるから、引用発明の当該「ターゲット物質」は、本願発明でいう「プラズマに変換されたときに極端紫外光を放出する材料を備えた」ものといえる。

(イ)引用発明の「ターゲット物質」が「供給」される「前記チャンバ内の所定の領域」は、上記イにも照らせば、本願発明でいう(「ターゲット物質」が「供給」される)「前記真空チャンバ内の」「ターゲット位置」に相当する。
そして、引用発明の「前記チャンバ内の所定の領域」は、「プラズマ生成領域P1」と一致すると解されるところ、「プラズマ生成領域P1」は、「レーザ光」が「ターゲット物質をプラズマ化する」現象が起きる「領域」であると解されるから、当該「前記チャンバ内の所定の領域」は、本願発明でいう「前記増幅光ビームを受光するように構成された」ものといえる。
さらに、引用発明の「前記チャンバ内の所定の領域にターゲット物質を供給するためのターゲット供給部」は、本願発明の「ターゲット材送達システム」に相当し、また、上記イにも照らせば、当該「ターゲット供給部」は、本願発明の「前記真空チャンバ内の、前記増幅光ビームを受光するように構成されたターゲット位置に向かって誘導するように構成されたターゲット材送達システム」に相当するといえる。

(ウ)よって、引用発明は、本願発明の「プラズマに変換されたときに極端紫外光を放出する材料を備えたターゲット材を、前記真空チャンバ内の、前記増幅光ビームを受光するように構成されたターゲット位置に向かって誘導するように構成されたターゲット材送達システム」との特定事項を備える。

エ 本願発明の「前記放出された極端紫外光を集光及び反射するように構成されたコレクタと、」との特定事項について
引用発明の「EUV光L2」が「反射される」「その反射面が回転楕円面形状のEUV集光ミラーM1」は、本願発明の「前記放出された極端紫外光を集光及び反射するように構成されたコレクタ」に相当する。
よって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。

オ 本願発明の「極端紫外光源」との特定事項について
引用発明の「極端紫外光生成装置」が、本願発明でいう「極端紫外光源」を含むことは明らかである。
よって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。

カ 小括
したがって、引用発明は、本願発明の「増幅光ビームを生成するように構成された源と、真空チャンバと、プラズマに変換されたときに極端紫外光を放出する材料を備えたターゲット材を、前記真空チャンバ内の、前記増幅光ビームを受光するように構成されたターゲット位置に向かって誘導するように構成されたターゲット材送達システムと、前記放出された極端紫外光を集光及び反射するように構成されたコレクタと、を有する極端紫外光源と、」との特定事項を備える。

(2)本願発明の「フリーラジカルを通過させるように構成された材料を備える導管であって、前記導管は、前記導管の第1の端部により定義される第1の開口と、前記導管の側壁により定義され前記第1の開口から遠ざかる方向に沿って拡大する寸法を有する複数の他の開口と、を定義し、前記導管の前記側壁は、直線部分と、湾曲部分と、を有し、前記他の開口は、前記導管の前記湾曲部分にあり、前記導管は、使用時に金属材料を有し、前記導管の前記側壁は、前記真空チャンバの壁を貫通し、前記第1の開口が前記真空チャンバの外部にあり、前記他の開口が前記真空チャンバの内側にあって前記コレクタに向かって配向されている状態で位置決めされている、導管と、を有するラジカル搬送システムと、」との特定事項について
ア 本願発明の「フリーラジカルを通過させるように構成された材料を備える導管であって、」との特定事項について
引用発明の「Hラジカル」は、本願発明の「フリーラジカル」に相当する。
そして、引用発明の「ラジカル生成器から放出されたHラジカル」を「チャンバ11内に供給」するための「チャンバ11内に延在するガス導入管」は、本願発明の「導管」に相当する。
さらに、引用発明の「ガス導入管」は、「Hラジカル」を「チャンバ11内に供給」するためのものであるから、本願発明でいう「フリーラジカルを通過させるように構成された材料を備える」ものであることは、明らかである。
よって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。

イ 本願発明の「前記導管は、前記導管の第1の端部により定義される第1の開口と、前記導管の側壁により定義され前記第1の開口から遠ざかる方向に沿って拡大する寸法を有する複数の他の開口と、を定義し、」との特定事項について
(ア)引用発明の「ガス導入管」は、「管」である以上、その端部に「開口」を備えることが明らかである。そして、引用発明は、「ラジカル生成器から放出されたHラジカルは、チャンバ11内に延在するガス導入管を介してチャンバ11内に供給され」るものであるから、引用発明の「ガス導入管」が備える当該「開口」は、「ラジカル生成器から放出されたHラジカル」を受けるように設けられているということができ、さらに、その「開口」が、本願発明の「前記導管の第1の端部により定義される第1の開口」に相当するといえる。

(イ)引用発明の「ガス導入管」は、「管」である以上、本願発明でいう「側壁」を備えることが明らかである。
そして、引用発明の「変形例2」では、「ガス導入管の当該半弧状の部分の側面に、Hラジカルが吹き出すための穴が設けられて」いるから、引用発明の「ガス導入管16-2aおよび16-2b」において「EUV集光ミラーM1の反射面に向けて」「略等間隔で設けられ」た「開口された穴」は、「Hラジカルが吹き出すための穴」であって、本願発明でいう「前記導管の側壁により定義され」た「複数の他の開口」であるといえる。
また、引用発明の「変形例4」では、「ガス導入管16-4の当該弓状に歪曲した形状の部分の側面に、Hラジカルが吹き出すための穴が設けられている」から、引用発明の「ガス導入管16-4」において「EUV集光ミラーM1の反射面の表面に沿ってエッチングガスが流れるように」「両側に略等間隔に設けられた」「開口された穴」は、「Hラジカルが吹き出すための穴」であって、本願発明でいう「前記導管の側壁により定義され」た「複数の他の開口」であるといえる。

(ウ)以上によれば、引用発明は、本願発明でいう「前記導管は、前記導管の第1の端部により定義される第1の開口と、前記導管の側壁により定義され」た「複数の他の開口と、を定義」するものである。
しかし、引用発明の当該「複数の他の開口」は、「前記第1の開口から遠ざかる方向に沿って拡大する寸法を有する」ものではない。

ウ 本願発明の「前記導管の前記側壁は、直線部分と、湾曲部分と、を有し、」との特定事項について
(ア)引用発明の「変形例2」は、「半弧状のガス導入管16-2a」及び「半弧状のガス導入管16-2b」が「延在」するとともに、「ガス導入管16-2a及びガス導入管16-2bは、EUV集光ミラーM1の反射面側から見て直線状の部分をも備え」るものである。そして、当該「EUV集光ミラーM1の反射面側から見て直線状の部分」は、当該「反射面側」から見ると「直線状」であるが、当該「反射面側」以外の側から見ても「直線状」であるとの明記はない。しかしながら、管として直線状のものを用いることは例示するまでもない慣用技術であって、特段の理由がなければ、直線状のものを用いると考えるのが自然であるところ、変形例2において、このような特段の理由は見当たらない。よって、引用発明の当該「EUV集光ミラーM1の反射面側から見て直線状の部分」を構成する「ガス導入管」の側壁が「直線状」であることは、引用文献に記載されているに等しい事項であるというべきであり、そうすると、当該「直線状の部分」の側壁は、本願発明の「直線部分」に相当する。
また、引用発明の「半弧状のガス導入管16-2a」及び「半弧状のガス導入管16-2b」を構成する「ガス導入管」の側壁は、本願発明の「湾曲部分」に相当する。

(イ)引用発明の「変形例4」は、「EUV集光ミラーM1の反射面に沿って弓状に歪曲した形状」の「ガス導入管16-4」を備えるとともに、「ガス導入管16-4は、直線状の部分をも備え」るものである。
よって、引用発明の「ガス導入管16-4」の当該「直線状の部分」の側壁は、本願発明の「直線部分」に相当し、当該「弓状に湾曲した形状」の部分の側壁は、本願発明の「湾曲部分」に相当する。

(ウ)したがって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。

エ 本願発明の「前記他の開口は、前記導管の前記湾曲部分にあり、」との特定事項について
引用発明の「変形例2」は、「ガス導入管の当該半弧状の部分の側面に、Hラジカルが吹き出すための穴が設けられており」、また、「変形例4」は、「ガス導入管16-4の当該弓状に歪曲した形状の部分の側面に、Hラジカルが吹き出すための穴が設けられている」から、上記イ及びウにも照らせば、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備えるといえる。

オ 本願発明の「前記導管は、使用時に金属材料を有し、」との特定事項について
引用発明は、本願発明の上記特定事項を備えない。

カ 本願発明の「前記導管の前記側壁は、前記真空チャンバの壁を貫通し、前記第1の開口が前記真空チャンバの外部にあり、」との特定事項について
引用発明は、「ラジカル生成器15が、チャンバ11の外部に存在し、ガス導入管16が、チャンバ11の壁を貫通して」いるものであるから、上記イ(ア)及び上記(1)イにも照らせば、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。

キ 本願発明の「前記他の開口が前記真空チャンバの内側にあって前記コレクタに向かって配向されている状態で位置決めされている、」との特定事項について
引用発明では、「ラジカル生成器から放出されたHラジカルは、チャンバ11内に延在するガス導入管を介してチャンバ11内に供給され」るのであるから、引用発明の「変形例2」及び「変形例4」ともに、「Hラジカルが吹き出すための穴」は、本願発明でいう「前記真空チャンバの内側にあ」るといえる。
そして、引用発明の「変形例2」では、「略等間隔で設けられ」た「開口された穴」は、「EUV集光ミラーM1の反射面に向け」られたものであり、また、「変形例4」では、「両側に略等間隔に設けられた」「開口された穴」は、「EUV集光ミラーM1の反射面の表面に沿ってエッチングガスが流れるように」されるのであるから、「変形例2」及び「変形例4」ともに、引用発明の「略等間隔に設けられた」「開口された穴」は、本願発明でいう「前記コレクタに向かって配向されている状態で位置決めされている」ものといえる。
よって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。

ク 本願発明の「導管と、を有するラジカル搬送システムと、」との特定事項について
引用発明が、本願発明の上記特定事項を備えることは明らかである。

ケ 小括
よって、引用発明は、本願発明の「フリーラジカルを通過させるように構成された材料を備える導管であって、前記導管は、前記導管の第1の端部により定義される第1の開口と、前記導管の側壁により定義され」た「複数の他の開口と、を定義し、前記導管の前記側壁は、直線部分と、湾曲部分と、を有し、前記他の開口は、前記導管の前記湾曲部分にあり、」「前記導管の前記側壁は、前記真空チャンバの壁を貫通し、前記第1の開口が前記真空チャンバの外部にあり、前記他の開口が前記真空チャンバの内側にあって前記コレクタに向かって配向されている状態で位置決めされている、導管と、を有するラジカル搬送システムと、」との特定事項を備える。
しかし、引用発明は、「複数の他の開口」について、「前記第1の開口から遠ざかる方向に沿って拡大する寸法を有する」ものではなく、また、「フリーラジカルを通過させるように構成された材料を備える導管」について、「前記導管は、使用時に金属材料を有」するものでもない。

(3)本願発明の「を備える、システム。」との特定事項について
引用発明の「極端紫外光生成装置」は、本願発明の「システム」に相当する。
よって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。

4 一致点及び相違点の認定
上記3によれば、本願発明と引用発明とは、
「増幅光ビームを生成するように構成された源と、真空チャンバと、プラズマに変換されたときに極端紫外光を放出する材料を備えたターゲット材を、前記真空チャンバ内の、前記増幅光ビームを受光するように構成されたターゲット位置に向かって誘導するように構成されたターゲット材送達システムと、前記放出された極端紫外光を集光及び反射するように構成されたコレクタと、を有する極端紫外光源と、
フリーラジカルを通過させるように構成された材料を備える導管であって、前記導管は、前記導管の第1の端部により定義される第1の開口と、前記導管の側壁により定義された複数の他の開口と、を定義し、前記導管の前記側壁は、直線部分と、湾曲部分と、を有し、前記他の開口は、前記導管の前記湾曲部分にあり、前記導管の前記側壁は、前記真空チャンバの壁を貫通し、前記第1の開口が前記真空チャンバの外部にあり、前記他の開口が前記真空チャンバの内側にあって前記コレクタに向かって配向されている状態で位置決めされている、導管と、を有するラジカル搬送システムと、
を備える、システム。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
「複数の他の開口」について、本願発明は、「前記第1の開口から遠ざかる方向に沿って拡大する寸法を有する」のに対し、引用発明は、そうではない点。
[相違点2]
「フリーラジカルを通過させるように構成された材料を備える導管」について、本願発明は、「前記導管は、使用時に金属材料を有」するのに対し、引用発明は、そうではない点。

5 相違点の判断
(1)相違点1について
引用発明は、ガス導入管(16-2a,16-2b,16-4)の一端に設けられたラジカル生成器(15A,15B,15)から送られたHラジカルが、当該ガス導入管に沿って複数個設けられた穴から吹き出されるものであるとともに、当該Hラジカルが、略満遍なく、EUV集光ミラーの反射面に沿って流れるようにしたものといえる。
他方で、管の一端に設けられたガス流入源から送られたガスを、当該管に沿って複数個設けられた穴から吹き出させる際に、それらの各穴からの吹き出しを均一にするために、当該各穴の大きさを、ガス流入源から離れるにしたがって、順次大きくするようにした構成は、広く一般に周知技術である(以下「周知技術1」という。例えば、原査定が提示した特開平8-279468号公報の【0005】・【0006】のほか、特開昭52-42075号公報の特許請求の範囲・第2頁左上欄第18行?右上欄第3行・第3図、特開昭58-179411号公報の第2頁右上欄第4行?第12行、特開平10-194867号公報の【0011】、実公昭49-44517号公報の第1頁左欄末行?右欄第26行・第2図・第3図、特開平11-227675号公報の【0022】・図3(ハ)を参照。)。
そうすると、引用発明において、EUV集光ミラーの反射面に沿って流れるようにされるHラジカルを、略満遍ないようにするために、周知技術1を採用し、相違点1に係る構成を得ることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
引用発明のガス導入管は、ラジカルを通過させるものであるところ、引用文献には、このようなガス導入管をどのような材料で構成するのかにつき明記がないから、当業者は、引用発明を実施するに当たって、ガス導入管をいかなる材料で構成すべきかについて当然に検討するといえる。
そして、ラジカルを搬送する際に、ラジカルの消滅を防ぐために、搬送路の内壁を絶縁体で被覆することは、周知技術(以下「周知技術2」という。例えば、原査定が提示した特開2000-144421号公報の【0015】・【0029】・図3のほか、特開2002-294454号公報の【0049】・図9を参照。)である。
そうすると、当業者であれば、引用発明のガス導入管を構成するに当たり、周知技術2を採用することは適宜なし得たことといえるのであり、そうであれば、管を形成する材料は適宜のものが使用できるのであるから、管の材料として最も典型的な材料の一つであるといえる金属材料を採用することは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。

(3)本願発明の効果について
本願発明の効果は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が予測し得るものである。

(4)請求人の主張について
ア 請求人は、周知技術1に関して原査定が提示した周知例である特開平8-279468号公報が、「第1の開口から遠ざかる方向に沿って拡大する寸法を有する複数の他の開口」を開示しない旨主張する。
そこで検討すると、当該公報の【0005】及び【0006】には、次の記載がある。
「ここでガラス基板Gに成膜される膜厚について高い面内均一性を得るためには、処理ガスをガラス基板Gに均一に供給することが必要である。ところで上述のインジェクタ11に、同じピッチで同じ大きさ(孔径)のガス吹き出し孔12を形成すると、処理ガスは、インジェクタ11の内部を、手前側のガスガス吹き出し孔12から順次吹き出されながら先端側へ向って流れていくので、インジェクタ11内部の処理ガスの流量はガスの流れ方向即ち先端側へ向うにつれて少なくなり、このためインジェクタ11内部の処理ガスの圧力分布は先端側へ向うにつれて負の勾配を有するようになる。従ってこのままではインジェクタ11の長さ方向について処理ガスの流量が均一とならず、ガラス基板Gの表面に均一に供給することはできない。」(【0005】)、
「このため従来では、ガス吹き出し孔12のピッチや径を変えることによって、各ガス吹き出し孔12からのガスの吹き出し量の均一化を図っていた。…」(【0006】)
このように、当該【0006】には、「ガス吹き出し孔12の径を、当該孔12からのガスの吹き出し量の均一化を図るために、変える」との技術的事項が記載されているところ、当該技術的事項は、当該【0005】に記載された、ガス吹き出し孔12を同じピッチで同じ大きさとすると、ガスの流量が先端側に向けて少なくなることを前提とするものであると認められる。すなわち、当該技術的事項は、「ガスの流量が先端側に向けて少なくなることを前提としつつ、ガス吹き出し孔12の径を、当該孔12からのガスの吹き出し量の均一化を図るために、変える」、というものである。
しかるに、ガス吹き出し孔の径が大きくなるほど、その吹き出し孔から吹き出されるガスの量が多くなることが自明であり、その逆もまた、自明である。そうすると、当該技術的事項のように、ガスの流量が先端側に向けて少なくなるという上記前提があるにもかかわらず、ガスの吹き出し量を均一にするというのであれば、ガス吹き出し孔12の径を変える際の変え方は、先端側に向うにつれて大きくしていくほかないことが、明らかである。
このように、当該公報の「ガス吹き出し孔12の」「径を変えることによって、各ガス吹き出し孔12からのガスの吹き出し量の均一化を図」ることの意味は、「ガス吹き出し孔12の」「径を」先端側に向うにつれて大きくなるように「変えることによって、各ガス吹き出し孔12からのガスの吹き出し量の均一化を図」ることであることが、当業者には明らかである。
よって、当該公報は、「第1の開口から遠ざかる方向に沿って拡大する寸法を有する複数の他の開口」との技術的事項を開示していると認められる。

イ また、請求人は、当該公報には、「ガス吹き出し孔12のピッチや径を設定することは非常に困難」である旨の記載がある旨主張するが、そうであるとしても、周知技術1が存在することの認定を左右するものではない。

ウ 以上によれば、請求人の主張は、いずれも採用できない。

(5)相違点の判断の小括
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-07-22 
結審通知日 2020-07-27 
審決日 2020-08-11 
出願番号 特願2016-540905(P2016-540905)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷 潮  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 田中 秀直
山村 浩
発明の名称 極端紫外光源用搬送システム  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  
代理人 江口 昭彦  

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