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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F21S
管理番号 1369645
審判番号 不服2019-16999  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-17 
確定日 2020-12-23 
事件の表示 特願2016-559592号「複数の光源をもつ非対称転向フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 8日国際公開、WO2015/153329、平成29年 4月20日国内公表、特表2017-511573号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)3月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年4月1日 (US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年3月22日に上申書及び手続補正書が提出され、同年11月26日付けで拒絶理由が通知され、平成31年3月4日に意見書及び手続補正書が提出され、令和1年8月9日付けで拒絶査定がされ、その後、同年12月17日に拒絶査定不服審判が請求され、令和2年1月15日付けで拒絶理由が通知され、同年5月19日に意見書及び誤訳訂正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?6に係る発明は、令和2年5月19日に提出された誤訳訂正書により訂正及び補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「互いに向きが異なる光分布を有する第1の光源及び第2の光源と、
第1の主表面及び第2の主表面を含む非対称転向フィルムであって、前記第1の主表面が、実質的に平滑であり、前記第2の主表面は、第1の形状を有する第1の面及び異なる第2の形状を有する第2の面を各々が含む、複数の微細構造を含む、非対称転向フィルムと、
偏光子と、を備え、
前記第1の光源からの光が、前記第2の面ではなく前記第1の面により優先的に反射され、前記第1の光源からの光は前記第1の面により全反射され、
前記第2の光源からの光が、前記第1の面ではなく前記第2の面により優先的に反射され、前記第2の光源からの光は前記第2の面により全反射され、
前記非対称転向フィルムが前記偏光子にラミネートされる、
光学システム。」

第3 拒絶の理由
令和2年1月15日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの「理由2」は、次のとおりのものである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


請求項1に対して、引用文献1
請求項2?5、7に対して、引用文献1、2
請求項6に対して、引用文献1?3

〔刊行物等一覧〕
引用文献1:特開2005-49857号公報
引用文献2:特開2010-277098号公報
引用文献3:米国特許出願公開第2011/0228387号明細書

第4 引用文献1の記載事項等
1 記載事項
引用文献1には次の事項が記載されている(下線は当審で付加。以下同様。)。
(1a)「【請求項1】
互いにほぼ平行の方向に延び互いに反対側に位置する第1の光入射端面及び第2の光入射端面並びに光出射面を有する導光体と、前記第1の光入射端面及び前記第2の光入射端面にそれぞれ隣接して配置された第1の一次光源及び第2の一次光源と、前記光出射面に対向して配置される入光面及びその反対側に位置する出光面を有する光偏向素子とを備えた光源装置であって、
前記導光体の光出射面またはその反対側に位置する裏面の少なくとも一方の面に平均傾斜角が0.5?15°の指向性光出射機能部が形成されており、
前記光偏向素子の入光面には前記第1の光入射端面及び前記第2の光入射端面とほぼ平行な方向に延びた互いに平行な複数のプリズム列が形成されており、該プリズム列のそれぞれは前記第1の一次光源に近い側の第1のプリズム面と前記第2の一次光源に近い側の第2のプリズム面とを有しており、
前記第1のプリズム面は、前記プリズム列の延在方向に延びる第1領域と、前記プリズム列の延在方向に延びる第2領域とを有しており、
前記プリズム列の頂角は80?120°であり、前記第2領域は前記第1領域よりプリズム列形成平面法線方向に対する傾斜角度が小さく、前記第1領域と前記第2領域との傾斜角度の差は5?20°であることを特徴とする光源装置。」

(1b)「【0001】
本発明は、液晶表示装置等の表示装置を構成するエッジライト方式の光源装置およびこれに使用される光偏向素子に関するものであり、特に、互いに異なる2つ以上の方向に指向性をもって光を出射させることで、これら2つ以上の方向からの表示画像の観察に特に適するように構成した光源装置に関するものである。
・・・
【0003】
液晶表示装置は、基本的にバックライト部と液晶表示素子部とから構成されている。バックライト部としては、液晶表示装置のコンパクト化の観点から、導光体の側端面に対向するように一次光源を配置したエッジライト方式のものが多用されている。」

(1c)「【0017】
図1は、本発明による光源装置の一つの実施形態を示す模式的斜視図である。図1に示されているように、本発明の光源装置は、互いに平行にY方向に延び互いに反対側に位置する2つの側端面を光入射端面31とし、これと略直交する一つの表面(主面)を光出射面33とする導光体3と、この導光体3の2つの光入射端面31にそれぞれ隣接して配置されそれぞれ光源リフレクタ2で覆われた2つの一次光源1と、導光体3の光出射面上に隣接して配置された光偏向素子4と、導光体3の光出射面33と反対側にある裏面34に隣接して配置された光反射素子5と、光偏向素子4上に配置された光拡散素子6とから構成される。なお、本実施形態では、光偏向素子4上に光拡散素子6を配置したが、光拡散素子6は必要に応じて配置することができ、光拡散素子6を配置しない構成とすることもできる。
【0018】
導光体3は、XY面と平行に配置されており、全体として矩形板状をなしている。導光体3は4つの側端面を有しており、そのうちYZ面と平行な1対の側端面を光入射端面31とする。図1において右側に位置する側端面31が第1の光入射端面であり、図1において左側に位置する側端面31が第2の光入射端面である。各光入射端面31にはそれぞれ一次光源1が配置されており、一次光源1から発せられた光は各光入射端面31に入射し導光体3内へと導入される。図1において右側に位置する一次光源1が第1の一次光源であり、図1において左側に位置する一次光源1が第2の一次光源である。
【0019】
導光体3の光入射端面31に略直交した2つの主面は、それぞれXY面と略平行に位置しており、いずれか一方の面(図では上面)が光出射面33となる。この光出射面33またはその裏面34のうちの少なくとも一方の面に粗面や、プリズム列、レンチキュラーレンズ列、V字状溝等の多数のレンズ列を光入射端面31と略平行に形成したレンズ面からなる指向性光出射機能部を付与することによって、光入射端面31から入射した光を導光体3中を導光させながら光出射面33から光入射端面31および光出射面33に直交する面(XZ面)内の出射光光度分布において指向性のある光を出射させる。」

(1d)「【0032】
図3は、本発明の一実施形態である光偏向素子4のプリズム列の形状の説明図である。光偏向素子4は主表面の一方を入光面41とし他方を出光面42とする。入光面41には多数のプリズム列が略並列に配列されている。これらのプリズム列は、その延在方向が導光体3の光入射端面31と略平行となるように導光体3の光出射面33上に配置されている。各プリズム列は、第1の一次光源に近い側に位置する第1のプリズム面411と第2の一次光源に近い側に位置する第2のプリズム面412の2つのプリズム面を有する。第1のプリズム面411は、Y方向に延び且つそれぞれが単一平面からなり且つ互いに傾斜角度の異なる第1領域4111および第2領域4112から構成されている。第1領域4111はプリズム列の頂部に近い領域であり、第2領域4112は第1領域4111に連なっており第1領域4111よりプリズム列の頂部から遠くに位置する領域である。なお、本発明において、平面などの面の傾斜角度とは、プリズム列の底面に対応するプリズム列形成平面43と直交する方向(以下「プリズム列形成平面法線方向」という)に対する各平面などの面の傾斜角度をいう。
【0033】
第1領域4111は傾斜角度αをなし、第2領域4112は傾斜角度α’をなし、第2のプリズム面412は傾斜角度βをなしている。プリズム列の頂角(α+β、プリズム頂角)は、80?120°が好ましく、80?110°がより好ましい。プリズム頂角が80°未満の場合にはプリズム列形成平面法線方向から所要の角度だけ異なる方向の光出射指向性を得ることが困難になる傾向にあり、プリズム頂角が120°を越える場合には十分な輝度を得ることが困難になる傾向にある。プリズム頂角のプリズム列形成平面法線方向に対する左右の振り分け角α,βは、40?60°、好ましくは40?55°とすることが望ましい。また、第1領域4111と第2領域4112との傾斜角度の差(α-α’)は、5?20°が好ましく、7?17°がより好ましく、10?15°がさらに好ましい。この傾斜角度の差(α-α’)が5°未満または20°を越える場合には、プリズム列形成平面の法線方向から所要の角度だけ異なる方向に指向性を有する
光を出射させることが困難になる傾向にある。
【0034】
図3に示した実施形態においては、第1の一次光源から発せられ第1の光入射端面に入射して導光体3内に導入された光は、光出射面33から図3中で左上向きに斜めに出射し、入光面41の第1のプリズム面411から光偏向素子4内に導入され、第2のプリズム面412により内面全反射され、プリズム列形成平面法線方向に対して左斜めの方向(第2の角度をなす方向)に出射する。この経路の光を符号L2で示す。一方、第2の一次光源から発せられ第2の光入射端面に入射して導光体3内に導入された光は、光出射面33から図3中で右上向きに斜めに出射し、入光面41の第2のプリズム面412から光偏向素子4内に導入される。その一部が第1のプリズム面411の第1領域4111により内面全反射されプリズム列形成平面法線方向に対して右斜めの方向(第1の角度をなす方向)に出射する。この経路の光を符号L11で示す。また、他の一部が第1のプリズム面411の第2領域4112により内面全反射されプリズム列形成平面法線方向に出射する。この経路の光を符号L12で示す。」

(1e)【図3】は次のとおりである。

(1f)「【0047】
本発明においては、第1領域4111、第2領域4112、第3領域4121、第4領域4122の少なくとも1つの領域を凸または凹状の曲面から構成し、他の領域を平面で構成することで、特定方向に出射する出射光の指向性の程度を制御することができる。
・・・
【0049】
以上の実施形態においては、プリズム列形成平面法線方向と、この方向に対して左右方向にあるそれぞれ1つの方向との3つの方向に指向性を有する出射光を出射させる場合を例として説明したが、本発明においては、指向性の方向は3つに限定されるものではなく、2つの方向であっても4つ以上の方向であってもよい。」

(1g)「【0053】
一次光源1はY 方向に延在する線状の光源であり、例えば蛍光ランプや冷陰極管を用いることができる。なお、本発明においては、一次光源1としては線状光源に限定されるものではなく、LED光源、ハロゲンランプ、メタハロランプ等のような点光源を使用することもできる。・・・」

(1h)「【0070】
一方、屈折率1.5064のアクリル系紫外線硬化性樹脂を用いて、図9に示したような断面の形状(角度)及び寸法(単位μm)のプリズム列が略並列に連設されたプリズム列形成面を、厚さ125μmのポリエステルフィルムの一方の表面に形成したプリズムシートを作製した。」

(1i)「【0075】
[実施例5]
プリズムシートのプリズム列として図17に示したような断面の形状(角度)及び寸法(単位μm)のものを使用し、導光体の長さ300mmの辺(長辺)に対応する一方の側端面に沿って冷陰極管を配置したこと以外は実施例1と同様にして、光源装置を得た。この光源装置の光入射端面および光出射面の双方に垂直な面内での出射光光度分布(XZ面内)を求めたところ、図18の通り3方向の指向性をもつものであった。」

(1j)【図17】は次のとおりである。


2 引用発明
上記「1」の各記載事項より、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「互いにほぼ平行の方向に延び互いに反対側に位置する第1の光入射端面31及び第2の光入射端面31並びに光出射面33を有する導光体3と、前記第1の光入射端面31及び前記第2の光入射端面31にそれぞれ隣接して配置された、LED光源、ハロゲンランプ、メタハロランプ等のような点光源からなる第1の一次光源1及び第2の一次光源1と、前記光出射面33に対向して配置される入光面41及びその反対側に位置する出光面42を有する光偏向素子4とを備えた液晶表示装置のバックライト部を構成するエッジライト方式の光源装置であって、
前記導光体3の裏面34に平均傾斜角が0.5?15°のプリズム列からなる指向性光出射機能部が形成されており、
前記光偏向素子4の入光面41には前記第1の光入射端面31及び前記第2の光入射端面31とほぼ平行な方向に延びた互いに平行な複数のプリズム列が形成されており、該プリズム列のそれぞれは前記第1の一次光源1に近い側の第1のプリズム面411と前記第2の一次光源1に近い側の第2のプリズム面412とを有しており、
前記第1のプリズム面411は、前記プリズム列4の延在方向に延びる第1領域4111と、前記プリズム列の延在方向に延びる第2領域4112とを有しており、
第1領域4111は傾斜角度αをなし、第2領域4112は傾斜角度α’をなし、第2のプリズム面412は傾斜角度βをなし、プリズム列の頂角(α+β)は80?120°であり、前記第2領域4112は前記第1領域4111よりプリズム列形成平面法線方向に対する傾斜角度が小さく、前記第1領域4111と前記第2領域4112との傾斜角度の差は5?20°であり、
第1の一次光源1から発せられ第1の光入射端面31に入射して導光体3内に導入された光は、光出射面33から図3中で左上向きに斜めに出射し、入光面41の第1のプリズム面411から光偏向素子4内に導入され、第2のプリズム面412により内面全反射され、プリズム列形成平面法線方向に対して左斜めの方向に出射し、第2の一次光源1から発せられ第2の光入射端面31に入射して導光体3内に導入された光は、光出射面33から図3中で右上向きに斜めに出射し、入光面41の第2のプリズム面412から光偏向素子4内に導入され、その一部が第1のプリズム面411の第1領域4111により内面全反射されプリズム列形成平面法線方向に対して右斜めの方向に出射し、他の一部が第1のプリズム面411の第2領域4112により内面全反射されプリズム列形成平面法線方向に出射する、光源装置。」

第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)後者の「第1の一次光源1」は後者の「第1の光源」に相当し、以下同様に、「第2の一次光源1」は「第2の光源」に、「出光面42」は「第1の主表面」に、「入光面41」は「第2の主表面」に、「光源装置」は「光学システム」にそれぞれ相当する。
また、後者の「出光面42」は、実質的に平滑であることが技術的に明らかである。

(2)後者の「光偏向素子4」の「複数のプリズム列」の個々のプリズムは、微細構造であることが明らかであるから、前者の「複数の微細構造」に相当するといえる。また、後者の「光偏光素子4」と前者の「非対称転向フィルム」とは「非対称転向手段」である点で共通するといえる。

(3)前者の「第2の面」について、請求項1を引用する請求項4の
「前記複数の微細構造の各微細構造が、第3の形状を有する第3の面を更に含み、前記第1の光源からの光が、前記第2の面ではなく前記第1の面及び前記第3の面により優先的に反射されかつ前記第1の面及び前記第3の面が連なっているか、あるいは前記第2の光源からの光が、前記第1の面ではなく前記第2の面及び前記第3の面により優先的に反射されかつ前記第2の面及び前記第3の面が連なっている、請求項1ないし3のいずれかに記載の光学システム。」
という記載を踏まえれば、「第2の面」に付加的に他の面を有するものも包含していることは明らかである。
そうすると、後者の「第2のプリズム面412」は前者の「第1の面」に相当し、同様に「第1のプリズム面411」の「第1領域4111」は「第2の面」に相当するといえる。

(4)前者の「異なる配光の光分布を有する第1の光源及び第2の光源」に関して、国際特許出願の明細書の翻訳文の段落【0002】の「いくつかの実施形態では、本光学システムは、第1の光源及び第2の光源のうちの少なくとも1つからの光を移送するように構成された光導体を更に含む。」との記載や、同様の内容が記載された段落【0023】、【0026】、【0032】等の記載を踏まえれば、前者の「光学システム」は、「光導体」(後者における「導光体3」が相当。)を設けるものも包含していることが明らかである。
そして、後者の「LED光源、ハロゲンランプ、メタハロランプ等のような点光源からなる第1の一次光源1及び第2の一次光源1」は、「導光体3」の「互いに反対側に位置する第1の光入射端面31及び第2の光入射端面31」に光を入射させるものであるから、互いに向きが異なる光分布を有するものであることが技術的に明らかである。

(5)上記(1)?(4)を踏まえると、後者の
「互いにほぼ平行の方向に延び互いに反対側に位置する第1の光入射端面31及び第2の光入射端面31並びに光出射面33を有する導光体3と、前記第1の光入射端面31及び前記第2の光入射端面31にそれぞれ隣接して配置された、LED光源、ハロゲンランプ、メタハロランプ等のような点光源からなる第1の一次光源1及び第2の一次光源1と、前記光出射面33に対向して配置される入光面41及びその反対側に位置する出光面42を有する光偏向素子4とを備えた液晶表示装置のバックライト部を構成するエッジライト方式の光源装置であって、
前記導光体3の裏面34に平均傾斜角が0.5?15°のプリズム列からなる指向性光出射機能部が形成されており、
前記光偏向素子4の入光面41には前記第1の光入射端面31及び前記第2の光入射端面31とほぼ平行な方向に延びた互いに平行な複数のプリズム列が形成されており、該プリズム列4のそれぞれは前記第1の一次光源1に近い側の第1のプリズム面411と前記第2の一次光源1に近い側の第2のプリズム面412とを有しており、
前記第1のプリズム面411は、前記プリズム列4の延在方向に延びる第1領域4111と、前記プリズム列の延在方向に延びる第2領域4112とを有しており、
第1領域4111は傾斜角度αをなし、第2領域4112は傾斜角度α’をなし、第2のプリズム面412は傾斜角度βをなし、プリズム列の頂角(α+β)は80?120°であり、前記第2領域4112は前記第1領域4111よりプリズム列形成平面法線方向に対する傾斜角度が小さく、前記第1領域4111と前記第2領域4112との傾斜角度の差は5?20°であり」
という事項と、前者の
「互いに向きが異なる光分布を有する第1の光源及び第2の光源と、
第1の主表面及び第2の主表面を含む非対称転向フィルムであって、前記第1の主表面が、実質的に平滑であり、前記第2の主表面は、第1の形状を有する第1の面及び異なる第2の形状を有する第2の面を各々が含む、複数の微細構造を含む、非対称転向フィルムと」
という事項とは、
「互いに向きが異なる光分布を有する第1の光源及び第2の光源と、
第1の主表面及び第2の主表面を含む非対称転向手段であって、前記第1の主表面が、実質的に平滑であり、前記第2の主表面は、第1の形状を有する第1の面及び第2の形状を有する第2の面を各々が含む、複数の微細構造を含む、非対称転向手段と」
という点において共通するといえる。

(6)前者の「光学システム」は、「光導体」を設けるものも包含していることが明らかであることは、上記(4)で述べたとおりであるところ、前者の
「前記第1の光源からの光が、前記第2の面ではなく前記第1の面により優先的に反射され、前記第1の光源からの光は前記第1の面により全反射され、
前記第2の光源からの光が、前記第1の面ではなく前記第2の面により優先的に反射され、前記第2の光源からの光は前記第2の面により全反射され」
という事項について、「第1の光源」及び「第2の光源」から「光導体」を介さずに直接入光するもののみであることの特定はない。
そうすると、上記(1)?(5)をも踏まえると、後者の
「第1の一次光源1から発せられ第1の光入射端面31に入射して導光体3内に導入された光は、光出射面33から図3中で左上向きに斜めに出射し、入光面41の第1のプリズム面411から光偏向素子4内に導入され、第2のプリズム面412により内面全反射され、プリズム列形成平面法線方向に対して左斜めの方向に出射し、第2の一次光源1から発せられ第2の光入射端面31に入射して導光体3内に導入された光は、光出射面33から図3中で右上向きに斜めに出射し、入光面41の第2のプリズム面412から光偏向素子4内に導入され、その一部が第1のプリズム面411の第1領域4111により内面全反射されプリズム列形成平面法線方向に対して右斜めの方向に出射し、他の一部が第1のプリズム面411の第2領域4112により内面全反射されプリズム列形成平面法線方向に出射する」
という事項は、前者の上記事項に相当するといえる。

(7)以上のことより、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点〕
「互いに向きが異なる光分布を有する第1の光源及び第2の光源と、
第1の主表面及び第2の主表面を含む非対称転向手段であって、前記第1の主表面が、実質的に平滑であり、前記第2の主表面は、第1の形状を有する第1の面及び第2の形状を有する第2の面を各々が含む、複数の微細構造を含む、非対称転向手段と、
前記第1の光源からの光が、前記第2の面ではなく前記第1の面により優先的に反射され、前記第1の光源からの光は前記第1の面により全反射され、
前記第2の光源からの光が、前記第1の面ではなく前記第2の面により優先的に反射され、前記第2の光源からの光は前記第2の面により全反射される、
光学システム。」

〔相違点1〕
「非対称転向手段」に関し、本願発明が「非対称転向フィルム」であるのに対し、引用発明は「光偏光素子4」であって、当該「光偏光素子4」がフィルムであることの特定がない点。

〔相違点2〕
「第2の面」の「第2の形状」に関し、本願発明が「第1の面」の「第1の形状」と「異なる」形状であるのに対し、引用発明は異なる形状の特定がない点。

〔相違点3〕
本願発明が「偏光子と、を備え」、「前記非対称転向フィルムが前記偏光子にラミネートされる」ものであるのに対し、引用発明は偏光子の特定がない点。

2 判断
(1)相違点1について
引用文献1の記載事項(1h)には、「光偏光素子4」をポリエステルフィルムの一方の表面にプリズムシートを形成することにより作製したことが示されており、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項は、引用発明も実質的に有しているといえる。あるいは、記載事項(1h)に基づき、引用発明の「光偏光素子4」をフィルムとして、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を有するものとすることは、当業者であれば所望により適宜なし得たことである。

(2)相違点2について
引用文献1の記載事項(1i)、(1j)には、「第2のプリズム面412」の「傾斜角度β」と「第1のプリズム面411」の「第1領域4111」の「傾斜角度α」とを異ならせることが示されており、上記記載事項(1i)、(1j)に基づき、引用発明において、所望とする光分布を得るため、「第2のプリズム面412」と「第1のプリズム面411」の「第1領域4111」の面形状を異ならせて、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を有するものとすることは、当業者であれば所望により適宜なし得たことである。

(3)相違点3について
「ラミネート」の字義は「合板にすること。また、プラスチック-フィルム・アルミ箔・紙などを重ねて貼り合わせること。」(広辞苑第7版)であるところ、引用発明と同じ技術分野である液晶表示装置のバックライト部を構成する光源装置において、転向フィルムと偏光子がラミネート(接着)されるものは、本願の優先日前の周知技術(例えば、特表2009-522602号公報(特に段落【0010】の「このようなディスプレイシステム100は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)あるいはLCD-TVに用いられる。」、【0011】の「吸収偏光子108、110およびLCパネル102は合同して、バックライト112から出てディスプレイ100を通って観察者までの光の透過率を制御する。」、【0092】の「偏向フィルム732に付着された補強偏光フィルム730の例示的な実施形態は図7Cに模式的に図示される。補強層730は、繊維補強層704に付着された反射偏光層702を含有する。偏向フィルム732は、例えば偏向フィルム732と偏光層702の間の(図示されていない)接着剤層を用いて、任意の好適な方法を用いて反射偏光層702に付着されてもよい。」、【0096】の「光パワーを与える層を含有する補強偏光フィルム800の例示的な実施形態は図8Aに模式的に図示される。補強層800は、繊維補強層804に付着された反射偏光層802を含有する。光パワーフィルム806は、例えば光パワーフィルム806と偏光層802の間の接着剤層(図示されていない)を用いて、任意の好適な方法を用いて反射偏光層802に付着され得る。」、【0098】の「光パワーを提供する層を含有する補強偏光フィルム820のもう1つの例示的な実施形態は図8Bに模式的に図示される。補強層820は、繊維補強層804に付着された反射偏光層802を含有する。光パワーフィルム822は、例えば光パワーフィルム822と偏光層802の間の接着層(図示されていない)を用いて、任意の好適な方法を用いて反射偏光層802に付着されてもよい。」、【図7C】、【図8A】、【図8B】等参照。)、特表2008-517328号公報(特に段落【0016】の「このようなディスプレイデバイス100は、例えばLCDモニターまたはLCD-TVに用いることができる。」、【0017】の「吸収偏光子108、110とLCパネル102とが組み合わさって、ディスプレイ100を通り抜けるバックライト112から観察者への光の透過を制御する」、【0028】の「光管理層配列120はまた、明るさ向上層128を含むこともできる。」及び「ディスプレイデバイスに使用することができるプリズム状明るさ向上層の例には、ミネソタ州セントポールのスリー・エム・カンパニーから入手できるプリズムフィルムのビキュイティ(登録商標)BEFIIおよびBEFIIIの製品系列が挙げられ」、【0050】の「図4Cに図式的に示すように、明るさ向上層410を、例えば接着剤層412を介して用いることにより反射偏光子406に取り付けることができる。」、【図4C】等参照。)等。)といえるものであって、引用発明において、このような周知技術を採用して、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項を有するものとすることは、当業者であれば所望により適宜なし得たことである。

そして、本願発明の作用効果について検討しても、引用発明、引用文献1の記載事項及び周知技術に対して、当業者が予測できないほどの格別のものはない。

3 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、引用文献1の記載事項及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献1の記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-07-14 
結審通知日 2020-07-21 
審決日 2020-08-04 
出願番号 特願2016-559592(P2016-559592)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河村 勝也  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
氏原 康宏
発明の名称 複数の光源をもつ非対称転向フィルム  
代理人 赤澤 太朗  
代理人 浅村 敬一  
代理人 佃 誠玄  
代理人 野村 和歌子  

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