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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1369661
審判番号 不服2019-17313  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-23 
確定日 2021-01-21 
事件の表示 特願2018- 23732「超音波システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月14日出願公開、特開2018- 89408、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)9月19日(パリ条約による優先権主張 2010年9月20日 米国)を国際出願日として出願した特願2013-530207号の一部を、平成30年2月14日に新たに外国語書面出願したものであって、平成30年12月7日付けで拒絶理由が通知され、平成31年3月8日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和元年8月19日付けで拒絶査定されたところ、同年12月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において、令和2年7月29日付けで拒絶理由が通知され、同年10月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、令和2年10月22付けの手続補正(以下「本件補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-10は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
超音波振動子ハウジング内の保持された超音波振動子と、
前記超音波振動子ハウジングに固定的に保持されて、複数の個々のセンサーを備える磁場検出器と、
第1端に皮下プローブ先端を有するプローブを備えたプローブ組立体であって、前記磁場検出器によって検出可能な磁石を備えた標的を備えるプローブ組立体と、
前記磁場検出器と通信するプロセッサであって、当該磁場検出器からのデータを解析して当該磁場検出器に対する前記皮下プローブ先端の予測される位置を決定するように構成され、当該皮下プローブ先端の当該予測される位置を当該皮下プローブ先端の実際の位置と相関付けるように構成された、プロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、磁気不在下に前記複数の個々のセンサーのそれぞれの電圧オフセットの量を含むようにプログラムされており、
前記プロセッサは、前記センサーの出力の生来的な偏差並びに前記磁場検出器の製造に起因する偏差を勘案し、
前記プロセッサは、相関付ける際にそれぞれのセンサー出力が電圧オフセットに基いて調節されるように構成されている、超音波システム。
【請求項2】
前記磁場検出器は、複数のホール効果センサーを備える、請求項1に記載の超音波システム。
【請求項3】
前記プローブは、針を備える、請求項1に記載の超音波システム。
【請求項4】
超音波振動子ハウジング内の保持された超音波振動子と、
前記超音波振動子ハウジングに固定的に保持された磁場検出器と、
第1端に皮下プローブ先端を有するプローブを備えたプローブ組立体であって、前記磁場検出器によって検出可能な磁石を備えた標的を備えるプローブ組立体と、
前記磁場検出器と通信するプロセッサであって、当該磁場検出器からのデータを解析して当該磁場検出器に対する前記皮下プローブ先端の予測される位置を決定するように構成され、当該皮下プローブ先端の当該予測される位置を当該皮下プローブ先端の実際の位置と相関付けるように構成された、プロセッサと、
を備え、
前記磁場検出器は、前記超音波振動子ハウジングの長さに沿って配列された複数のセンサーを備え、
前記プロセッサは、磁気不在下に前記複数の個々のセンサーのそれぞれの電圧オフセットの量を含むようにプログラムされており、
前記プロセッサは、前記センサーの出力の生来的な偏差並びに前記磁場検出器の製造に起因する偏差を勘案し、
前記プロセッサは、相関付ける際にそれぞれのセンサー出力が電圧オフセットに基いて調節されるように構成されている、超音波システム。
【請求項5】
前記超音波振動子ハウジングに取り付けられているか取り付け可能なプローブ案内を更に備え、
前記プローブ案内は、前記超音波振動子ハウジングに対して既知の関係にあるプローブ経路を画定する、請求項1又は4に記載の超音波システム。
【請求項6】
前記標的の前記磁石は、永久磁石である、請求項1又は4に記載の超音波システム。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記皮下プローブ先端が皮下経路を移動するとき、当該皮下プローブ先端の前記相関付けられた位置をリアルタイムで更新するように構成されている、請求項1又は4に記載の超音波システム。
【請求項8】
前記プロセッサは、相関付ける際に前記プローブの撓みを勘案するように構成されている、請求項1又は4に記載の超音波システム。
【請求項9】
前記超音波振動子は、走査平面を画定し、
前記プローブ組立体は、前記超音波振動子ハウジングに固定的に保持されるとき前記プローブの経路を画定し、当該プローブの前記経路は、前記走査平面と既知の関係にある、
請求項1又は4に記載の超音波システム。
【請求項10】
前記プローブの前記経路は、前記走査平面に一致している、請求項9に記載の超音波システム。」

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特表2007-510514号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審にて付した。以下同様。)

(引1a)「【0015】 他の実施形態では医療用プローブ装置が、処理ユニットと連絡した移動検出器などの検出器を含む。例えば、この検出器は、プローブがプローブガイドの中を誘導されるときのプローブの移動を検出し、その情報をデータストリームによって処理ユニットに伝達する。処理ユニットはさらに超音波変換器と接触することができ、ソノグラムを形成するために利用することができる。処理ユニットは、データストリーム中の情報を使用して、標的に対するプローブの相対位置に関する情報をモニタ上に表示することができる。例えば、このデータストリームを利用して、プローブが場の中を移動するときのプローブの仮想リアルタイム画像を形成し、プローブの画像をソノグラム上に表示することができる。一般にこの実施形態ではプローブの経路が、ソノグラム上に表示された平面に平行な線を画定する。」

(引1b)「【0022】 本発明は、医療手技中に経皮プローブを誘導する際に使用する改良された装置および方法を対象とする。より具体的には本発明の超音波装置は、自体を貫通し、プローブを収容するように構成された開口を有する超音波変換器ハウジングを含む。一実施形態ではこの開口がプローブガイドの役目を果たす。任意選択でこの開口を、プローブの取外し可能なプローブガイドを収容するように構成することができる。」

(引1c)「【0031】 本発明に従って、図1に、本発明に基づく超音波変換器ハウジング(全体を100で表す)の一実施形態を示す。この実施形態では変換器ハウジングが、超音波を送受信する超音波変換器(全体を120で表す)を含む。超音波変換器120は、当技術分野で広く知られている任意のタイプの超音波変換器とすることができる。例えば、一実施形態ではこの超音波変換器が、2次元または3次元アレイとして配置された1つまたは複数の圧電性結晶材料から形成された圧電変換器である。このような材料には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの強誘電性圧電性セラミックス結晶材料が含まれる。一実施形態では、アレイを構成する素子が、参照によって本明細書に組み込まれる特許文献1に記載されているものなどの、単一の圧電基板上に取り付けられた個々の電極または電極セグメント(segment)である。超音波変換器120は一般に複数の素子から形成されるが、単結晶デバイスも本発明によって包含される。」

(引1d)「【0052】
本発明の一実施形態によれば、超音波プローブ装置がクランプを含む。クランプは、適当な任意の構成のクランプとすることができ、一実施形態では、プローブガイド開口の中にプローブをしっかりと保持し、プローブの先端の移動を制限しまたは防ぐために、クランプが変換器ハウジングと機械的に連絡している。これは例えば、内部標的にプローブを挿入した後の後続の手技中のプローブ先端の移動ができるだけ小さいことが好ましいときに特に有益である。例えば、中心静脈カテーテル法の最中、カニューレ針による静脈の最初の穿刺の後、静脈への長いガイドワイヤの挿入の前に、プローブ先端の移動によって、プローブ先端が静脈から外れ、手技全体をやり直すことが必要となることがある。」

(引1e)「【0061】
図9に、仮想プローブの画像をソノグラム上にオーバレイすることができる本発明の一実施形態を示す。この特定の実施形態では超音波システムが検出器158を含む。検出器158は、超音波装置に入り、プローブガイド119の中を通過して体内に入るプローブ156の移動を認識し監視することができる。プローブ156は次いで、プローブ画像168としてモニタ164上に画像化することができる。モニタ164はさらにソノグラム166を示すことができる。
【0062】
当技術分野で広く知られている可能な異なるさまざまな検出器を検出器158として利用することができる。検出器158は例えば、赤外線(IR)、超音波、光学、レーザまたは他の移動検出機構を利用することができる。さらに、本発明にとって検出器158の位置は重要ではない。図9に示された実施形態では検出器158が、無菌シール110のシールド135上に位置する。しかし他の実施形態では、検出器がシステム内の別の場所に位置することができ、これには例えば、変換器ハウジング100と一体の位置、またはプローブ自体の一部分など変換器ハウジング100の外部が含まれる。
【0063】
検出器158からの信号は、注射器170あるいはプローブ156の他の部分から反射されてデータストリームを生成することができ、このデータストリームは、情報ケーブル159によって処理ユニット162に送ることができる。処理ユニット162は例えば、標準ラップトップまたはデスクトップコンピュータプロセッサ、あるいは当技術分野で知られている自己内蔵型の超音波システムの部分とすることができ、適当な認識および解析ソフトウェアをロードすることができ、検出器158からのデータストリームを受け取り解析することができる。処理ユニットはさらに、ケーブル124を介して超音波変換器からデータを受け取る当技術分野で広く知られている標準画像化ソフトウェアを含むことができる。プローブ156は所定の長さのプローブとすることができ、この所定の長さは、使用者によって処理ユニット162に入力された入力データとし、またはデフォルトの長さとしてシステムに予めプログラムしておくことができる。したがって、検出器158および超音波変換器120から受け取られたデータストリームを解析することによって、超音波変換器120、超音波変換器ハウジングのベース128、検出器158または都合のよい他の基準点に対するプローブ先端157の相対位置を計算するように、処理ユニット162をプログラムすることができる。処理ユニット162は、この位置情報をケーブル163を介してモニタ164にディジタル情報として伝達することができ、この情報は例えば、数値フォーマットとして、または血管160などの標的の画像167を含むソノグラム166とともに表示された仮想プローブ168の任意選択のリアルタイム画像として、モニタ上に表示することができる。」

(2)引用文献1に記載された発明
ア 上記(引1a)の「医療用プローブ装置」、(引1b)の「超音波装置」、(引1d)の「超音波プローブ装置」及び上記(引1e)の「超音波システム」は、同じものを指しているから、「超音波システム」として整理した。また、上記(引1a)の「超音波変換器ハウジング100」、(引1b)の「変換器ハウジング」及び(引1c)の「変換器ハウジング100」は、いずれも同じものを指しているから、「超音波変換器ハウジング100」として整理した。

イ 上記アを踏まえると、上記(引1a)?(引1d)より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「経皮プローブを誘導する際に使用する超音波システムは、
処理ユニットと連絡した移動検出器などの検出器と、
プローブを収容するように構成された開口を有する超音波変換器ハウジングと、
クランプと
を含み、

超音波変換器ハウジング100は、
超音波を送受信する超音波変換器120を含み、

クランプは、
プローブガイド開口の中にしっかりと保持され、
プローブの先端の移動を制限しまたは防ぐために、クランプが超音波変換器ハウジング100と機械的に連絡し、
内部標的にプローブを挿入した後の後続の手技中のプローブ先端の移動ができ、

検出器158は、
プローブガイド119の中を通過して体内に入るプローブ156の移動を認識し監視することができ、
超音波変換器ハウジング100と一体の位置、または超音波変換器ハウジング100の外部の場所に位置し、
プローブ156の他の部分から反射されてデータストリームを生成し、

処理ユニット162は、
コンピュータプロセッサとすることができ、
検出器158からのデータストリームを受け取り解析することができ、
検出器158および超音波変換器120から受け取られたデータストリームを解析することによって、超音波変換器120、超音波変換器ハウジング100のベース128、検出器158または都合のよい他の基準点に対するプローブ先端157の相対位置を計算し、

この計算された位置情報は、
ケーブル163を介してモニタ164にディジタル情報として伝達され、
血管160などの標的の画像167を含むソノグラム166とともに表示された仮想プローブ168の任意選択のリアルタイム画像として、モニタ上に表示される
超音波システム。」

2 引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(米国特許出願公開第2010/0228119号明細書)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引2a)「[0087] Referring to FIG. 15, in various embodiments, a fiduciary cannula containing magnetic material 1500 is inserted through the tissue of interest. This cannula is used to provide feedback to the console indicating the probe tip's z-axis position above an anatomical feature, e.g., a retina. In this embodiment, the probe 1505 contains a coil 1510 in the needle assembly and is inserted into the fiduciary cannula. The cannula contains magnets or magnetized elements that are aligned such that, when the probe 1505 is inserted into the cannula, the magnetic field induces a current in the coil 1510 that is measured and from which the direction of movement, rate of movement, and position of probe is derived. The coil 1510 may be connected to additional electronics (such as an amplifier to assist in measuring and conditioning the signal) that are located either in the handheld probe 1505 or in the console. In some embodiments, the endoillumination functionality is disabled or intensity-limited when the tip of probe 1505 is located within a specific range of the tissue. For example, the system may be implemented to require a surgeon using the probe at approximately 3 mm from a retina to bring the probe to approximately 10 mm from the retina before endoillumination may be enabled or increased in intensity. (FIG. 15 depicts such a 7-mm range of travel.) In this manner, the surgeon is prevented from shining too much light on the retina in close proximity thereto (as phototoxicity to the retina depends on intensity, distance of light from the retina and wavelengths of light). Furthermore, this feedback system may also implement selective wavelength filtering, where more dangerous (e.g., phototoxic) wavelengths are reduced in intensity or disabled at close distances (e.g., 3 mm) but increased as distance increases. Another embodiment implements magnetic-field sensing using a Hall-effect sensor instead of the coil; yet another embodiment incorporates the sensing element (e.g., coil or Hall-effect sensor) in the cannula and incorporates the magnet in the probe needles (alternately, the needles are magnetized).」(当審訳:「[0087]?図15を参照すると、様々な実施形態において、磁気材料1500を含む基準カニューレは関心のある組織を通って挿入される。このカニューレは、プローブチップの例えば、網膜のような解剖学的特徴の上のZ軸方向の位置を指示するコンソールにフィードバックを提供するために使用される。この実施形態では、プローブ1505は、針アッセンブリの中のコイル1510を含み、基準カニューレ内に挿入される。プローブ1505が、カニューレに挿入されると、カニューレは、測定ができ、動きの方向、動きの速度、およびプローブの位置が導き出せるような、誘導コイル1510内に電流を誘導する位置に配置された磁石または磁化されたエレメントを含む。コイル1510は、ハンドヘルドプローブ1505内やコンソールのいずれかに配置される追加の電子回路(信号の測定及び調整を補助するためのアンプなど)に接続することができる。いくつかの実施形態では、プローブ1505の先端は、組織の特定の領域内にあるときに内部照明機能は無効化され又は制限される。例えば、システムは、内部照明を有効にするか強度を上げる前に、プローブを網膜から約10mmにするために外科医が網膜から約3mmでプローブを使用することを要求するように実施することができる。(図15は7mm範囲の移動を示す)。このようにして、外科医は、極めて近傍にある網膜上に光を過剰に照射することを阻止する(強度、網膜からの光の距離、光の波長に依存する網膜への光毒性として)。さらに、このフィードバック・システムはまた、選択的な波長フィルタリングを実現してもよい。この場合(例えば光毒性として)より危険な波長は、強度において減少し、又は、距離を(例えば、3mmに)近接することを禁止するが、距離が増加するにつれて増加する。別の実施形態は、コイルの代わりにホール効果センサーを用いて磁界検出を実施し、さらに別の実施形態は、カニューレ内の感知素子(例えば、コイルまたはホール効果センサ)を内蔵しており、プローブ針に(代替的に、針が磁化された)磁石を内蔵している。」)

(引2b)「



第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「超音波変換器ハウジング100」及び「超音波システム」は、本願発明1の「超音波振動子ハウジング」及び「超音波システム」に相当する。

イ 引用発明の「超音波変換器120」は、「超音波を送受信する」から「超音波」を送信するデバイスを有していることは明らかであって、「超音波変換器120」は、「超音波変換器ハウジング100」に含まれる。そして、本願発明1の「超音波振動子」も「超音波」を送信するデバイスであるから、引用発明の「超音波を送受信する超音波変換器120を含む、超音波変換器ハウジング100」と、本願発明1の内部に「超音波振動子」を「保持」する「超音波振動子ハウジング」とは、内部に「超音波」を送信するデバイスを保持している点で共通する。

ウ 引用発明の「検出器158」と、本願発明1の「複数の個々のセンサーを備える磁場検出器」とは、検出器である点で共通する。そして、引用発明の「検出器158」は、「音波変換器ハウジング100と一体の位置、または超音波変換器ハウジング100の外部の場所に位置し」ているから、引用発明の「音波変換器ハウジング100と一体の位置、または超音波変換器ハウジング100の外部の場所に位置し」ている「検出器158」と、本願発明1の「前記超音波振動子ハウジングに固定的に保持されて、複数の個々のセンサーを備える磁場検出器」とは、「前記超音波振動子ハウジングに固定的に保持され」た「検出器」である点で共通する。

エ 引用発明の「プローブ156」は、「経皮プローブを誘導する際に使用する超音波システム」に使用されるものであるから、引用発明の「内部標的にプローブを挿入」する「プローブ先端」を有する「プローブ156」は、本願発明1の「第1端に皮下プローブ先端を有するプローブを備えたプローブ組立体」に相当する。
また、引用発明の「検出器158は、プローブガイド119の中を通過して体内に入るプローブ156の移動を認識し監視することができ」ることから、「プローブ156」には、「検出器158」によって検出可能な「プローブ156の移動を認識し監視する」ための何らかの標的を備えていることは明らかである。
そうすると、引用発明の「検出器158」によって検出可能な「プローブ156の移動を認識し監視する」ための標的を備えた「プローブ156」と、本願発明1の「前記磁場検出器によって検出可能な磁石を備えた標的を備えるプローブ組立体」とは、「前記検出器によって検出可能な標的を備えるプローブ組立体」である点で共通する。

オ 引用発明の「処理ユニット162は、コンピュータプロセッサ」であって、「検出器158からのデータストリームを受け取り解析することができ、検出器158および超音波変換器120から受け取られたデータストリームを解析することによって、超音波変換器120、超音波変換器ハウジング100のベース128、検出器158または都合のよい他の基準点に対するプローブ先端157の相対位置を計算す」るから、引用発明の「検出器158からのデータストリームを受け取解析することができ、検出器158および超音波変換器120から受け取られたデータストリームを解析することによって、超音波変換器120、超音波変換器ハウジング100のベース128、検出器158または都合のよい他の基準点に対するプローブ先端157の相対位置を計算す」る「コンピュータプロセッサ」である「処理ユニット162」と、本願発明1の「前記磁場検出器と通信するプロセッサであって、当該磁場検出器からのデータを解析して当該磁場検出器に対する前記皮下プローブ先端の予測される位置を決定するように構成され、当該皮下プローブ先端の当該予測される位置を当該皮下プローブ先端の実際の位置と相関付けるように構成された、プロセッサ」とは、「前記検出器と通信するプロセッサであって、当該検出器からのデータを解析して当該検出器に対する前記皮下プローブ先端の予測される位置を決定するように構成され、当該皮下プローブ先端の当該予測される位置を当該皮下プローブ先端の実際の位置と相関付けるように構成された、プロセッサ」である点で共通する。

カ 上記ア?オから、本願発明1と引用発明との間には、以下の一致点及び相違点がある。

(一致点)「超音波振動子ハウジング内の保持された超音波振動子と、
前記超音波振動子ハウジングに固定的に保持された検出器と、
第1端に皮下プローブ先端を有するプローブを備えたプローブ組立体であって、前記検出器によって検出可能な標的を備えるプローブ組立体と、
前記検出器と通信するプロセッサであって、当該検出器からのデータを解析して当該検出器に対する前記皮下プローブ先端の予測される位置を決定するように構成され、当該皮下プローブ先端の当該予測される位置を当該皮下プローブ先端の実際の位置と相関付けるように構成された、プロセッサと、
を備えた、超音波システム。」

(相違点1)検出器が、本願発明1は、「複数の個々のセンサーを備える磁場検出器」であって、「プローブ組立体」に「前記磁場検出器によって検出可能な磁石を備えた標的を備える」ものであるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。

(相違点2)プロセッサが、本願発明1は、「磁気不在下に前記複数の個々のセンサーのそれぞれの電圧オフセットの量を含むようにプログラムされており」、「前記センサーの出力の生来的な偏差並びに前記磁場検出器の製造に起因する偏差を勘案し」、「相関付ける際にそれぞれのセンサー出力が電圧オフセットに基いて調節されるように構成されている」のに対し、引用発明は、そのような特定がない点。

(2)判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
引用文献2には、「プローブ1505が、カニューレに挿入されると、カニューレは、・・・プローブの位置が導き出せるような、誘導コイル1510内に電流を誘導する位置に配置された磁石を含み」、「カニューレ内の感知素子」は、「プローブ針」に「磁石を内蔵し」ているとの記載より、「プローブの位置」を磁場により検出する本願発明1の「磁場検出器」に相当する「感知素子」を有している旨の記載はあるものの、該「感知素子」の出力の生来的な偏差や、製造に起因する偏差を勘案し、該「感知素子」からの出力を調整する構成に関し何ら記載されておらず、該構成は、当該技術分野において周知の構成であるともいえない。
そうすると、上記相違点2に係る構成は、引用発明や引用文献2に記載された周知技術から、当業者が容易に想到できたものであるとはいえないから、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2?10について
本願発明2?10も、本願発明1の「プロセッサ」が、「磁気不在下に前記複数の個々のセンサーのそれぞれの電圧オフセットの量を含むようにプログラムされており」、「前記センサーの出力の生来的な偏差並びに前記磁場検出器の製造に起因する偏差を勘案し」、「相関付ける際にそれぞれのセンサー出力が電圧オフセットに基いて調節されるように構成されている」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、本件補正前の請求項1?11について上記引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、本件手続補正により補正された請求項1?10は、それぞれ「プロセッサ」が、「磁気不在下に前記複数の個々のセンサーのそれぞれの電圧オフセットの量を含むようにプログラムされており」、「前記センサーの出力の生来的な偏差並びに前記磁場検出器の製造に起因する偏差を勘案し」、「相関付ける際にそれぞれのセンサー出力が電圧オフセットに基いて調節されるように構成されている」という事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1?10は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第1号について
当審では、本件補正前の請求項1の「前記プロセッサは、相関付ける際に前記システムの製造に起因する偏差を勘案するように構成されている」と特定されており、該「システムの製造に起因する偏差」には、文理解釈上、「磁場検出器」以外のシステム構成要素に関係する「製造に起因する偏差」も含まれており、「磁場検出器」以外のシステム構成要素に関係する「製造に起因する偏差を勘案するように構成」といえるという点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、本件補正において、「システムの製造に起因する偏差」は、「前記センサーの出力の生来的な偏差並びに前記磁場検出器の製造に起因する偏差」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

2 特許法第36条第6項第2号について
(1)当審では、補正前の請求項1、4及び9では「前記超音波振動子ハウジングに関連付けられ」と特定されているが、本件出願明細書には「プローブと関連付けられ」との記載があるものの、上記「ハウジングに関連付けられ」のと記載はなく、該特定の「関連付けられ」が「固定的に保持される」ことを意味するのか、あるいは、「相対的に移動可能に保持される」ことを意味しているのか不明であり、その技術的意味を把握することができないから不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、本件補正において、「前記超音波振動子ハウジングに固定的に保持された」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(2)当審では、補正前の請求項1及び4では「磁石を備えた標的を備えるプローブ組立体」と特定されているが、補正前の請求項6では、「前記標的は、永久磁石である」と特定されていることを考慮すると、上記「磁石を備えた」が「磁石を含む」を意味するのか、あるいは、「磁石からなる」を意味するのか不明であって、その技術的意味を把握することができないから不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、本件補正において、請求項6の「前記標的は、永久磁石である、」を、「前記標的の前記磁石は、永久磁石である、」と補正された結果、請求項1及び4の「磁石を備えた」が「磁石を含む」であることが明確になったので、この拒絶の理由は解消した。

(3)当審では、補正前の請求項1において、「前記プロセッサは、相関付ける際に前記システムの製造に起因する偏差を勘案するように構成されている」と特定されているが、該「前記システム」では、請求項1において前出の「どの構成」を意味するのか不明であり、その技術的意味を把握することができないから不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、本件補正において、「前記プロセッサは、磁気不在下に前記複数の個々のセンサーのそれぞれの電圧オフセットの量を含むようにプログラムされており、前記プロセッサは、前記センサーの出力の生来的な偏差並びに前記磁場検出器の製造に起因する偏差を勘案し、前記プロセッサは、相関付ける際にそれぞれのセンサー出力が電圧オフセットに基いて調節されるように構成されている、」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(4)当審では、補正前の請求項5では「前記超音波振動子に取り付けられているか取り付け可能なプローブ案内を更に備え」と特定されているが、該特定では「プローブ案内」と「超音波振動子ハウジング」との関係が不明であり、その技術的意味を把握することができないから不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、本件補正において、請求項5の「前記超音波振動子」を、「前記超音波振動子ハウジング」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1?10は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-01-06 
出願番号 特願2018-23732(P2018-23732)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (A61B)
P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 冨永 昌彦  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 磯野 光司
福島 浩司
発明の名称 超音波システム  
代理人 小見山 泰明  
代理人 宮前 徹  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 中西 基晴  

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