• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
管理番号 1369733
審判番号 不服2018-12308  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-13 
確定日 2021-01-04 
事件の表示 特願2015-553186「システムの装置の動作に影響を与えるためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月24日国際公開、WO2014/111783、平成28年 5月12日国内公表、特表2016-513378〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)12月31日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2013年 1月17日、欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成28年12月16日 :手続補正書の提出
平成30年 1月22日付け:拒絶理由通知
平成30年 3月 5日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 6月 4日付け:拒絶査定
平成30年 9月13日 :拒絶査定不服審判の請求
令和 1年 9月 5日付け:拒絶理由通知
令和 2年 1月16日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
令和 2年 1月16日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「 【請求項1】
第2の装置の動作に影響を与えるためのシステムにおいて用いられる第1の装置であって、前記第1の装置は、
前記第2の装置の動作に少なくとも一時的に影響を与えるための前記第2の装置への入力であるデータである設定データを格納するためのストレージと、
ユーザの身体に続く身体送信チャネルを介して前記設定データを前記第2の装置に送信するための第1の身体結合通信インタフェースと、
を有し、
前記設定データは、前記第1の装置及び前記第2の装置が、同期して動作できるようにするため、同期化データに従って前記第2の装置の動作を同期化するための前記同期化データを有し、前記同期化データは、前記第2の装置に格納されるスケジュールを変更するためのスケジュール情報を有し、
前記設定データは、限られた期間、前記第2の装置の動作に影響を与える、第1の装置。」

第3 拒絶の理由
令和 1年 9月 5日の当審が通知した拒絶理由は、概略、次のとおりのものである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2007-141094号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

a.「【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、管理者の管理下において使用者に貸与する際に、管理者によって運転可能な可使用状態と運転不能な禁使用状態との設定ができるようにし、禁使用状態として第三者による不正使用を防止しながらも、可使用状態では人体側通信装置を装着することなく誰でもが使用できるようにした不正使用防止機能付き機器を提供することにある。」

b.「【0029】
(実施形態1)
本実施形態では、機器として電動工具のような可搬型の機器を想定している。図1(b)に示すように、機器1は人体に装着される人体側通信装置2との間で人体Hを伝送路LNに用いたデータ通信が可能となるように構成されている。人体側通信装置2は、腕に装着される器体20を有し、器体20における人体Hとの対向面には、腕の長さ方向に離間して配置された2個の接触電極21,22が設けられる。また、機器1のハウジング10の外面には単極のタッチ電極11が露出するとともに、タッチ電極11に指先を触れた人体Hに対向することによって人体Hと静電結合する結合電極12が設けられる。図においてキャパシタのシンボルは静電結合であることを表している。結合電極12は、ハウジング10が絶縁材料であればハウジング10に内蔵することができ、またハウジング10の材料に限らずハウジング10の外側に露出させることができる。図1(b)に示すように、指先をタッチ電極11に触れると、タッチ電極11と接触電極21との間で腕を通る伝送路LNが形成され、また、接触電極22と結合電極12との間には人体Hを通るとともに静電結合している部位の空間を通る伝送路LNが形成される。したがって、人体側通信装置2と機器1との間では、上述した伝送路LNを利用したデータ通信が可能になる。」

c.「【0038】
人体側通信装置2から伝送される指示内容には、機器1における機器本体14が運転可能である可使用状態と運転不能である禁使用状態とがあり、他に機器1の使用に関する使用限度に関する設定内容も指示される。これらの指示内容については後述する。また、識別情報の間の規定の関係は、単純に一致することとしてもよいが、両識別情報に適宜の変換ルールを定めておき変換ルールを適用した結果が一致することとしてもよい。機器側制御部13には、判定手段13bでの判定結果に応じて機器本体14を可使用状態と禁使用状態とに切り換える切換手段13cも設けられる。なお、機器本体14は、機器1として実質的な機能を有する部位を意味している。
【0039】
機器側制御部13は、電源を投入するとタッチ電極11と結合電極12との間に印加さえる電圧を電圧検出部17で監視する受信モードで動作し、受信モードにおいて人体側通信装置2からの送信信号を受信すると、送信信号に応答して人体側通信装置2に応答信号を返すとともに通信モードに移行する。人体側通信装置2では応答信号を受信すると待機モードから通信モードに移行し、機器1と人体側通信装置2との間でデータ通信が可能になる。
【0040】
通信モードでは、人体側通信装置2の記憶部24に格納されたデータが人体Hを伝送路LNとして機器1に伝送される。機器1に設けた切換手段13cでは、人体側通信装置2から伝送されたデータが可使用状態を指示していれば、機器本体14を運転可能にし、禁使用状態を指示していれば、機器本体14を運転不能にする。」
【0041】
ここで、機器本体14の運転の可能と不能とは、機器本体14への給電を遮断する技術を用いる。ただし、機器本体14がマイクロコンピュータなどの制御回路を用いて制御される機器である場合には、制御回路に対して運転不能を指示したり、機器1に設けた操作部の指示を制御回路が受け付けないように指示したりする技術を採用することも可能である。
【0042】
上述した装置の使用例について説明する。人体側通信装置2から伝送する可使用状態を指示するデータを「RELEASE」とし、禁使用状態を指示するデータを「LOCK」とする。また、人体側通信装置2の記憶部24には、「RELEASE」と「LOCK」との一方のデータが格納されているものとする。
【0043】
いま、データが「LOCK」である人体側通信装置2を装着した人が機器1に設けたタッチ電極11に触れると、タッチ電極11と結合電極12との間に電圧が印加され、機器側制御部13では人体側通信装置2に応答信号を返送して通信モードに移行する。人体側通信装置2では応答信号を受信することによって、機器側制御部13との間でリンクが確立したと判断し、記憶部24から読み出した「LOCK」というデータを機器側制御部13に送信する。機器側制御部13は「LOCK」というデータを受け取ると、機器本体14を運転不能にし、以後は機器1の使用を禁止する。同様にして、データが「RELEASE」である人体側通信装置2を装着した人が機器1に設けたタッチ電極11に触れると、機器本体14は運転可能になり、以後は機器1の使用が可能になる。
【0044】
上述のように、データが「RELEASE」である人体側通信装置2は、機器1を可使用状態にするものであるから、機器1を管理する管理者のみが使用するように管理し、機器1の使用者には使用させない。つまり、機器1は管理者のみによって可使用状態に切換可能とする。なお、データが「LOCK」である人体側通信装置2を使用するのは、必ずしも管理者のみでなくてもよい。また、データの種類ごとに人体側通信装置2を設けているが、1台の人体側通信装置2の記憶部24に複数種類のデータを格納しておき、図示しにスイッチによって機器1に転送するデータの種類を選択するようにしてもよい。
【0045】
ところで、機器1を可使用状態に切り換えるには人体側通信装置2が必須であるが、禁使用状態に切り換える操作は、必ずしも人体側通信装置2を用いなくてもよい。すなわち、切換手段13cとは別に可使用状態から禁使用状態に手操作で切り換えるロックスイッチ13dを設けてもよい。ロックスイッチ13dは一旦操作されると機器1は禁使用状態に切り換えられるから、ふたたび可使用状態に切り換えるには人体側通信装置2を用いることになる。
【0046】
ロックスイッチ13dの操作部の態様はどのようなものでもよいが、機器1の使用中に不用意に操作されることがないように、位置および形状を設定するのが望ましい。たとえば、機器1の使用時に触れないように凹所内に押釦式の操作部を設けるようにする。また、ロックスイッチ13dは、電源スイッチと兼用してもよい。つまり、機器1の運転と停止とを行うスイッチとは別に電源スイッチを設けておき、電源スイッチをオフにしたときに機器1が禁使用状態に切り換えられるようにすればよい。
【0047】
ロックスイッチ13dを設ける場合であっても、人体側通信装置2を用いて禁使用状態に切り換える機能は有効にしておくのが望ましく、ロックスイッチ13dの操作を使用者に任せ、使用者がロックスイッチ13dの操作を忘れている場合には、管理者が人体側通信装置2を用いて禁使用状態に切り換えるようにすればよい。」

d.「【0048】
(実施形態2)
実施形態1では、機器1を可使用状態にして使用者に貸与するから、使用者が機器1を管理していないと可使用状態のままで第三者に使用されてしまうことがある。そこで、第三者による機器1の使用の可能性を低減するには、可使用状態に切り換えた機器1に使用限度を設定しておくのが望ましい。本実施形態では、人体側通信装置2と通信処理手段13aとの間のデータ通信により、人体側通信装置2から機器1に対して使用限度を設定する例を説明する。すなわち、使用限度が設定された機器1は使用限度に達すると禁使用状態に切り換えられるのであって、仮に第三者が機器1を使用したとしても、使用限度に達すると使用できなくなるから、機器1の不正使用が抑止されることになる。
【0049】
使用限度は、禁使用状態に切り換える時刻、可使用状態を計測する時間、可使用状態において機器1を運転させる回数の少なくとも1種類で指定する。
【0050】
使用限度を時刻で指定する場合には、現在時刻を計時する時計部(図示せず)を切換手段13cに設けておき、また人体側通信装置2から切換手段13cに対してあらかじめ停止時刻を転送しておく。この構成では、切換手段13cは、時計部で計時する時刻が停止時刻になると自動的に禁使用状態に切り換える。したがって、作業現場において始業時に機器1を貸し出すようにし、このとき停止時刻として機器1を回収する時刻を設定しておけば、機器1の回収時には自動的に禁使用状態になり、機器1が使用不能になる。本例では、停止時刻のみを設定する場合を例示したが、機器1を運転可能にする開始時刻を停止時刻と併せて設定可能としてもよい。開始時刻を設定している場合は、機器1が使用可能である期間を開始時刻から停止時刻までに制限することによって、停止時刻のみを設定する場合よりもさらに不正な使用を抑制することができる。」

e.「【0057】
上述のように構成された外部装置3を用いることにより、人体側通信装置2を装着した人がタッチ電極31に触れることによって、人体側通信装置2に設けた記憶部24の内容を書き換えることが可能である。すなわち、人体側通信装置2に設けた制御部23は、人体側通信装置2が外部装置3との間でデータ通信を行ったときに記憶部24の内容を書き換える書換手段として機能する。また、人体側通信装置2を装着した人が機器1のタッチ電極11に触れたときには、記憶部24に格納されたデータが切換手段13cへの指示として機器1に伝送されるから、上述した禁使用状態を指示する「LOCK」や可使用状態を指示する「RELEASE」の各データのほか、上述した各種の使用限度のデータなどを外部装置3を用いて記憶部24に書き込むことにより、人体側通信装置2から機器1に対して様々な指示を与えることが可能になる。すなわち、制御部23は通信処理手段13aとの間でデータ通信を行うときには切換手段13cに記憶部23の内容を転送する書込手段として機能する。
【0058】
外部機器3のデータの設定は情報機器3aを用いて行い、外部機器3から人体側通信装置2の記憶部24へのデータの転送には、インターフェース装置3bのタッチ電極31に触れるだけでよいから、人体側通信装置2では機器1に転送するデータを自由に書換可能としながらも、データの転送操作はきわめて簡単である。このように、1台の人体側通信装置2を用いて記憶部24の内容を書き換えることにより機器1に対して様々な指示を与えることができるから、指示内容ごとに人体側通信装置1を設ける必要がない。」

2.引用発明
上記記載より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「禁使用状態を指示する「LOCK」や可使用状態を指示する「RELEASE」の各データのほか、使用限度のデータなどを、機器1に伝送する人体側通信装置2(【0007】、【0038】、【0049】、【0057】)であって、前記人体側通信装置2は、
機器1の切換手段13cに転送する、禁使用状態を指示する「LOCK」や可使用状態を指示する「RELEASE」の各データのほか、使用限度のデータなどが書き込まれる記憶部24(【0057】)と、
腕を通る伝送路LN、及び人体Hを通るとともに静電結合している部位の空間を通る伝送路LNを利用して、記憶部24に格納されたデータを転送するための接触電極21,22とを有し(【0029】、【0040】、【0057】)、
人体側通信装置2は、可使用状態に切り換えた機器1に使用限度を設定し、機器1は使用限度に達すると禁使用状態に切り換えられるものであり(【0048】)、
人体側通信装置2は、「RELEASE」のデータにより機器1を可使用状態にし(【0043】?【0044】)、使用限度を時刻で指定する場合には、機器1の切換手段13cに対してあらかじめ停止時刻を転送し、切換手段13cは停止時刻として設定される時刻になると自動的に機器1を禁使用状態に切り換える(【0048】?【0050】)、人体側通信装置2。」

第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1.引用発明の「機器1」、「人体側通信装置2」、「記憶部24」は、それぞれ本願発明の「第2の装置」、「第1の装置」、「ストレージ」に相当する。

2.引用発明の、転送される「停止時刻」は、使用限度を時刻で指定する場合の、機器1を禁使用状態に切り換える時刻であるから、「使用限度」を設定するための情報であり、「記憶部24」に書き込まれ、機器1に伝送される「使用限度のデータ」に含まれる。
また、引用発明における「人体側通信装置2」が「機器1」に伝送する「禁使用状態を指示する「LOCK」や可使用状態を指示する「RELEASE」の各データのほか、使用限度のデータなど」は、いずれも、機器1を禁使用状態、あるいは可使用状態とするデータであるから、機器1の動作は、これらのデータにより制御されるもので、機器1の動作に影響を与えるものといえる。
そして、引用発明の「可使用状態に切り換えた機器1に使用限度を設定」することは、機器1を可使用状態とすることが、「一時的」であることに対応するから、引用発明の「禁使用状態を指示する「LOCK」や可使用状態を指示する「RELEASE」の各データのほか、使用限度のデータなど」は、本願発明の「第2の装置の動作に少なくとも一時的に影響を与えるための前記第2の装置への入力であるデータである設定データ」に相当する。

3.引用発明の「機器1」及び機器1の動作に影響を与える「禁使用状態を指示する「LOCK」や可使用状態を指示する「RELEASE」の各データのほか、使用限度のデータなど」を伝送する「人体側通信装置2」からなる構成は、「第2の装置の動作に影響を与えるためのシステム」といえる。

4.引用発明の「腕を通る伝送路LN、及び人体Hを通るとともに静電結合している部位の空間を通る伝送路LN」は、腕あるいは人体Hを通る伝送路であるから、本願発明の「ユーザの身体に続く身体送信チャネル」に相当し、引用発明の当該伝送路LNを利用してデータを転送するための「接触電極21,22」は、本願発明の「第1の身体結合通信インタフェース」に相当する。

5.引用発明において、「使用限度を時刻で指定する場合」の「使用限度のデータ」は、機器1を禁使用状態とする時刻を指定するデータであるから、機器1の動作は人体側通信装置2が指定する時刻に時間的に同期させられるものであり、引用発明の「使用限度のデータ」は、本願発明の、「第1の装置及び第2の装置が、同期して動作できるようにするため」、「前記第2の装置の動作を同期化するための同期化データ」に相当する。
また、「使用限度のデータ」に含まれる「停止時刻」は、「可使用状態に切り換えた機器1」を「禁使用状態に切り換える」ために「停止時刻として設定される時刻」であるから、「停止時刻」を転送することにより、機器1が可使用状態である期間が設定される、すなわち機器1に格納されるスケジュールとなるものであるということができ、本願発明の「第2の装置に格納されるスケジュールを変更するためのスケジュール情報」と引用発明の上記「停止時刻」とは、「第2の装置に格納されるスケジュールのためのスケジュール情報」である点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、相違する。
[一致点]
「 第2の装置の動作に影響を与えるためのシステムにおいて用いられる第1の装置であって、前記第1の装置は、
前記第2の装置の動作に少なくとも一時的に影響を与えるための前記第2の装置への入力であるデータである設定データを格納するためのストレージと、
ユーザの身体に続く身体送信チャネルを介して前記設定データを前記第2の装置に送信するための第1の身体結合通信インタフェースと、
を有し、
前記設定データは、前記第1の装置及び前記第2の装置が、同期して動作できるようにするため、同期化データに従って前記第2の装置の動作を同期化するための前記同期化データを有し、前記同期化データは、第2の装置に格納されるスケジュールのためのスケジュール情報を有し、
前記設定データは、前記第2の装置の動作に影響を与える、第1の装置。」

[相違点1]
「スケジュール情報」が、本願発明では、「第2の装置に格納されるスケジュールを変更するためのスケジュール情報」であるのに対し、引用発明では、「可使用状態に切り換えた機器1」を「禁使用状態に切り換える」ために転送される「停止時刻」である点。

[相違点2]
本願発明は、前記設定データは、「限られた期間」、前記第2の装置の動作に影響を与えるのに対して、引用発明には、特に明記されていない点。

第6 判断
上記相違点について、検討する。
[相違点1について]
引用発明は、人体側通信装置2から「禁使用状態を指示する「LOCK」や可使用状態を指示する「RELEASE」の各データのほか、使用限度のデータなど」を、機器1に伝送して、機器1が可使用状態である期間を設定するものであるところ、さらに「禁使用状態を指示する「LOCK」や可使用状態を指示する「RELEASE」の各データのほか、使用限度のデータなど」を伝送して機器1の切換手段13cに設定されるデータを上書きし、一旦、設定した期間を変更できるように構成すること(この場合、機器1に転送される「停止時刻」は、本願発明の「第2の装置に格納されるスケジュールを変更するためのスケジュール情報」に相当することとなる。)は、当業者が容易に想到し得る。

[相違点2について]
引用発明は、「可使用状態を指示する「RELEASE」のデータにより可使用状態にし」、「使用限度のデータ」に含まれる「停止時刻」に機器1を運転不能な禁使用状態へ切り換えるものであり、機器1が可使用状態とされるのは、人体側通信装置2により、可使用状態に切り換えたときから、設定された停止時刻までの限られた期間に限られる。
そうすると、引用発明においても、「可使用状態を指示する「RELEASE」のデータ」及び「使用限度のデータ」は、機器1を可使用状態としてから使用限度のデータに含まれる停止時刻までの「限られた期間」、機器1の動作に影響を与えるものであり、相違点2は、実質的に相違するものではない。

したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易になしえたものである。

第7 意見書の主張について
請求人は、令和2年1月16日に提出された意見書において、次の主張をする。
「引用文献1の機器1において、使用限度を設定することは、例えば、設定した停止時刻になったときに機器1を禁使用状態にすることであり、これは、単に機器1を禁使用状態にする時点を設定することであるから、機器1の禁使用状態の期間、すなわち、「第2の装置の動作に影響を与える」「限られた期間」を設定することではない。」

しかしながら、引用発明は、「可使用状態を指示する「RELEASE」のデータにより」「可使用状態にし」、「使用限度のデータ」に含まれる「禁使用状態へ切り換える」「停止時刻」に機器1を運転不能な禁使用状態へ切り換えるものであり、機器1が可使用状態とされるのは、人体側通信装置2により、可使用状態に切り換えたときから、停止時刻として設定される時刻までの限られた期間となる。そして、機器1が停止時刻として設定される時刻に禁使用状態に切り換わったあとは、機器1は非動作の状態を取ることとなるから、人体側通信装置2から転送される、「記憶部24に書き込まれ」ている、「禁使用状態を指示する「LOCK」や可使用状態を指示する「RELEASE」の各データのほか、使用限度のデータなど」により、機器1の動作に影響は与えられていない。
そうすると、人体側通信装置2から転送される、「記憶部24に書き込まれ」ている、「禁使用状態を指示する「LOCK」や可使用状態を指示する「RELEASE」の各データのほか、使用限度のデータなど」により、機器1の動作に影響が与えられるのは、可使用状態に切り換えられたときから、使用限度のデータに含まれる停止時刻までの「限られた期間」であり、上記主張は採用できない。

また、「もし仮に、引用文献1の機器において、機器を禁使用状態に設定した後、所定の期間が経過したときに、機器を可使用状態に自動的に切り換える構成とするならば、機器は管理者のみによって可使用状態に切換可能とするという上記記載に反する事態となるから、そのような構成とすることには阻害要因があると言える。」旨、主張する。
しかしながら、引用文献1は、使用限度のデータにより、機器を禁使用状態に切り換えるものであり、上記主張のように「機器を可使用状態に自動的に切り換える」ものではないから、当該主張は採用できない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。






 
別掲
 
審理終結日 2020-07-14 
結審通知日 2020-07-20 
審決日 2020-08-04 
出願番号 特願2015-553186(P2015-553186)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩井 一央金子 秀彦  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 衣鳩 文彦
富澤 哲生
発明の名称 システムの装置の動作に影響を与えるためのシステム及び方法  
代理人 五十嵐 貴裕  
代理人 特許業務法人M&Sパートナーズ  
代理人 浅村 敬一  
代理人 笛田 秀仙  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ