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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1369738
審判番号 不服2019-2149  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-15 
確定日 2021-01-04 
事件の表示 特願2017-513190「充電回路及び移動端末」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 8日国際公開、WO2016/192007、平成29年 9月28日国内公表、特表2017-529043〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)6月1日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年3月8日:翻訳文の提出
平成30年3月5日付け:拒絶理由通知書
平成30年6月11日:意見書、手続補正書の提出
平成30年10月11日付け:拒絶査定
平成31年2月15日:審判請求書、手続補正書の提出
令和2年2月18日付け:拒絶理由通知書
令和2年4月2日:意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、令和2年4月2日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「 【請求項2】
移動端末の充電インタフェースとバッテリー(電池)の間に配置される充電回路であって、
第一回路と、磁気結合素子と、第二回路と、を含み、
前記第一回路と、前記磁気結合素子と、前記第二回路は、順次に前記充電インタフェースと前記バッテリーの間に直列に接続され、
前記第一回路は、少なくとも4つのスイッチトランジスタを備え、前記充電インタフェースから第一電流を受け、前記第一電流を変化した大きさ及び方向を有する第二電流に転換するように構成され、
前記磁気結合素子は、第一コイルと、第二コイルとを含み、
前記第一コイルを前記第一回路に接続し、前記第二コイルを前記第二回路に接続し、前記充電回路の直流(DC)電流路を切断するように、前記第一コイルと前記第二コイルとが互いに離隔され、
前記磁気結合素子は、第三電流を生成するために、変化した大きさ及び方向を有する前記第二電流を利用することにより、電磁誘導の仕方で前記第一コイルから前記第二コイルまでエネルギーを転換するように構成され、
前記第二回路は、前記第三電流を、バッテリーを充電するように前記バッテリーの充電に適している第四電流に調整するように構成され、
前記第一回路は、フルブリッジ回路と、前記フルブリッジ回路を制御する制御回路と、を含み、
前記フルブリッジ回路は、第一スイッチトランジスタと、第二スイッチトランジスタと、第三スイッチトランジスタと、第四スイッチトランジスタと、を含み、
前記第一スイッチトランジスタは、前記充電インタフェースに接続されるように構成される第一端と、前記第一コイルの第二端に接続される第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、を有し、
前記第二スイッチトランジスタは、前記第一スイッチトランジスタの第二端に接続される第一端と、接地されるように構成される第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、
を有し、
前記第三スイッチトランジスタは、前記充電インタフェースに接続されるように構成される第一端と、前記第一コイルの第一端に接続される第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、を有し、
前記第四スイッチトランジスタは、前記第三スイッチトランジスタの第二端に接続される第一端と、接地されるように構成される第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、
を有する、充電回路。」

第3 拒絶の理由
令和2年2月18日の当審が通知した拒絶理由のうち理由3は
・本件出願の請求項1ないし5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない
・本件出願の請求項6及び7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2及び3に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない
・本件出願の請求項8に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない
というものである。

引用文献1:特開2014-3753号公報
引用文献2:特開2012-110211号公報
引用文献3:特開2009-247142号公報
引用文献4:特開2011-155799号公報

第4 引用文献
1 引用文献1
引用文献1には、充放電システムに関して、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

(1)「【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る充放電システムを示す回路図である。図1に示す充放電システム1は、例えば、電気自動車やプラグインハイブリッド車両などの電動車両に搭載され、車載バッテリの充放電を行うものであり、第1のシステム入出力端子対T1,T2が車両の充電口であり、第2のシステム入出力端子対T3,T4がバッテリ2に接続される。なお、バッテリ充電の際には、車両外部の電源(例えば、自宅や共用施設などに設けられた電源コンセント)が、充電ケーブル等を介して第1のシステム入出力端子対T1,T2に接続され、バッテリ放電の際には、第1のシステム入出力端子対T1,T2に交流電力が生成されることとなる。」

(2)「【0019】
この充放電システム1は、ノイズフィルタ10と、AC/DC変換部(第3の電力変換部)20と、コンデンサ25と、DC/AC変換部(第1の電力変換部)30と、トランス40と、AC/DC変換部(第2の電力変換部)50と、コンデンサ55と、制御部60と、AC/DC変換部20用の絶縁電源71,72,73と、DC/AC変換部30及びAC/DC変換部50用の絶縁電源74,75,76と、切換部81,82,83とを備えている。なお、絶縁電源74,75,76が特許請求の範囲に記載の第1?第3の絶縁電源に相当し、これらの絶縁電源74,75,76を含む絶縁電源70が特許請求の範囲に記載の絶縁電源に相当する。また、切換部81,82,83が特許請求の範囲に記載の第1?第3の切換部に相当し、これらの切換部81,82,83を含む切換部80が特許請求の範囲に記載の切換部に相当する。」

(3)「【0020】
ノイズフィルタ10は、第1のシステム入出力端子対T1,T2に供給される商用交流電力のノイズを除去するためのものである。ノイズが除去された交流電力は、AC/DC変換部20の第1の入出力端子対20T1,20T2へ供給される。」

(4)「【0021】
AC/DC変換部20は、バッテリ充電時にはPFC機能を有する整流回路として機能し、バッテリ放電時にはインバータ回路として機能する。AC/DC変換部20は、コンデンサ21と、インダクタ22a,22bと、第1?第4のn型トランジスタ(スイッチング素子)23a?23d及び第1?第4のダイオード(整流素子)24a?24dを含むフルブリッジ回路とによって構成されている。なお、第1?第4のトランジスタ23a?23dとしては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-SemiconductorField Effect Transistor)等の大電力用トランジスタを用いることができる。本実施形態では、第1?第4のトランジスタ23a?23dとしてIGBTを用いた場合を例示する。
・・(略)・・
【0025】
このAC/DC変換部20の第2の入出力端子対20T3,20T4間には、コンデンサ25が電気的に接続されている。また、AC/DC変換部20の第2の入出力端子対20T3,20T4は、それぞれDC/AC変換部30の第1の入出力端子対30T1,30T2に接続されている。」

(5)「【0026】
AC/DC変換部30(当審注:「AC/DC変換部30」は「DC/AC変換部30」の誤記と認められる。)は、バッテリ充電時にはインバータ回路として機能し、バッテリ放電時には整流回路として機能する。AC/DC変換部30(当審注:「AC/DC変換部30」は「DC/AC変換部30」の誤記と認められる。)は、第1?第4のn型トランジスタ(スイッチング素子)31a?31dと、第1?第4のダイオード(整流素子)32a?32dとを含むフルブリッジ回路によって構成されている。なお、第1?第4のトランジスタ31a?31dとしては、IGBTやMOSFET等の大電力用トランジスタを用いることができる。本実施形態では、第1?第4のトランジスタ31a?31dとしてIGBTを用いた場合を例示する。」

(6)「【0027】
第1のトランジスタ31aのコレクタは第1の入出力端子対の一方30T1に接続されており、第1のトランジスタ31aのエミッタは第2のトランジスタ31bのコレクタに接続されている。第2のトランジスタ31bのエミッタは第1の入出力端子対の他方30T2に接続されている。同様に、第3のトランジスタ31cのコレクタは第1の入出力端子対の一方30T1に接続されており、第3のトランジスタ31cのエミッタは第4のトランジスタ31dのコレクタに接続されている。第4のトランジスタ31dのエミッタは第1の入出力端子対の他方30T2に接続されている。」

(7)「【0028】
第1のトランジスタ31aのエミッタ及び第2のトランジスタ31bのコレクタはトランス40の1次側コイルの一方の端子に接続されており、第3のトランジスタ31cのエミッタ及び第4のトランジスタ31dのコレクタはトランス40の1次側コイルの他方の端子に接続されている。」

(8)「【0030】
ここで、車両に搭載される電気機器の接地電位はフローティング電位であり、車両外部の電源と車載バッテリ2とを絶縁する必要がある。トランス40は、車両外部の電源と車載バッテリ2とを絶縁するためのものである。トランス40の二次側コイルは、AC/DC変換部50の第1の入出力端子対50T1,50T2に接続されている。」

(9)「【0031】
AC/DC変換部50は、バッテリ充電時には整流回路として機能し、バッテリ放電時にはインバータ回路として機能する。AC/DC変換部50は、第1?第4のn型トランジスタ(スイッチング素子)51a?51d及び第1?第4のダイオード(整流素子)52a?52dを含むフルブリッジ回路によって構成されている。なお、第1?第4のトランジスタ51a?51dとしては、IGBTやMOSFET等の大電力用トランジスタを用いることができる。本実施形態では、第1?第4のトランジスタ51a?51dとしてIGBTを用いた場合を例示する。
・・(略)・・
【0035】
このAC/DC変換部50の第2の入出力端子対50T3,50T4間には、コンデンサ55が電気的に接続されている。また、AC/DC変換部50の第2の入出力端子対50T3,50T4は、それぞれ第2のシステム入出力端子対T3,T4に接続されている。」

(10)「【0036】
また、AC/DC変換部20の第1?第4のトランジスタ23a?23d、DC/AC変換部30の第1?第4のトランジスタ31a?31d、及び、AC/DC変換部50の第1?第4のトランジスタ51a?51d各々のゲートは、制御部60に接続されている。制御部60は、これらのトランジスタにおけるコレクタ-エミッタ間の導通状態を制御する制御電圧(又は制御電流)を生成する。これらの制御電圧は、絶縁電源71?76に供給される。」

(11)「【0054】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、AC/DC変換部(第3の電力変換部)20、DC/AC変換部(第1の電力変換部)30、及び、AC/DC変換部(第2の電力変換部)を備え、AC/DC変換を行う充放電システムを例示したが、本発明の特徴は、AC/DC変換部(第3の電力変換部)20を備えず、DC/DC変換を行う充放電システムにも適用可能である。この種のDC/DC変換型の充放電システムは、例えば急速充電を行う場合(充電)や、系統電源(商用電源)との連携を行うPCSに車載バッテリを接続する場合(放電)に適用されることが検討されている。」

(12)「【0056】
また、本実施形態では、車載バッテリ等の充放電を行う大電力系の充放電システムを例示したが、携帯端末等のバッテリの充放電を行う小電力系の充放電システムにも適用可能である。」

すなわち、引用文献1に記載された充放電システムは
(a)上記(1)によれば、充放電システム1は、第1のシステム入出力端子対T1、T2が充電口であり、第2のシステム入出力端子対T3、T4がバッテリ2に接続される。
(b)そして、当該充放電システム1は、上記(2)によれば、DC/AC変換部30と、トランス40と、AC/DC変換部50と、制御部60とを備え、
(c)さらに、ノイズフィルタ10と、AC/DC変換部20と、コンデンサ25を備える。
ここで、前記ノイズフィルタ10は、上記(3)によれば、第1のシステム入出力端子対T1、T2に供給される商用交流電力のノイズを除去するためのものであり、ノイズが除去された交流電力はAC/DC変換部20へ供給される。
また、前記AC/DC変換部20は、上記(4)によれば、整流回路として機能し、コンデンサ25及びDC/AC変換部30の第1の入出力端子対30T1、30T2に接続されている。
そして、一般に整流回路の後段のコンデンサは整流回路で変換された信号を平滑化するものであるから(必要であれば、特開2011-130524号公報の【0024】、図4を参照。)、前記コンデンサ25は整流回路として機能する前記AC/DC変換部20で整流された信号を平滑化するものといえる。
そうすると、DC/AC変換部30の第1の入出力端子対30T1、30T2には、充電口(第1のシステム入出力端子対T1、T2)から入力され、ノイズフィルタ10でノイズが除去された交流電流をAC/DC変換部20で整流しコンデンサ25で平滑化した直流電流が入力されるものと認められる。
(d)前記DC/AC変換部30は、上記(5)によれば、インバータ回路として機能し、第1ないし第4のn型トランジスタ(スイッチング素子)31aないし31dを含むフルブリッジ回路によって構成されている。
(e)当該第1ないし第4のトランジスタ31aないし31dは、上記(7)によればトランス40の1次側コイルに接続されているから、当該DC/AC変換部30はトランス40の1次側コイルに接続されているといえる。
(f)前記トランス40は、上記(8)によれば、外部の電源とバッテリ2とを絶縁するためのものであり、
(g)トランス40の二次側コイルは、AC/DC変換部50に接続されている。
(h)そして、上記(7)及び(8)によれば、当該トランス40は前記1次側コイルと前記二次側コイル(以下、「2次側コイル」という。)を含むものといえる。
(i)前記AC/DC変換部50は、上記(9)によれば、整流回路として機能し、第2のシステム入出力端子対T3、T4に接続されている。
(j)ここで、前記第1のトランジスタ31aは、上記(6)によればコレクタが第1の入出力端子対の一方30T1に接続されており、上記(7)によればエミッタがトランス40の1次側コイルの一方の端子に接続されており、上記(10)によればゲートが制御部60に接続されている。
(k)また、前記第2のトランジスタ31bは、上記(6)によればコレクタが第1のトランジスタ31aのエミッタに接続されており、エミッタが第1の入出力端子対の他方30T2に接続されており、上記(10)によればゲートが制御部60に接続されている。
(l)また、前記第3のトランジスタ31cは、上記(6)によればコレクタが第1の入出力端子対の一方30T1に接続されており、上記(7)によればエミッタがトランス40の1次側コイルの他方の端子に接続されており、上記(10)によればゲートが制御部60に接続されている。
(m)また、前記第4のトランジスタ31dは、上記(6)によればコレクタが第3のトランジスタ31cのエミッタに接続されており、エミッタが第1の入出力端子対の他方30T2に接続されており、上記(10)によればゲートが制御部60に接続されている。
(n)そして、前記充放電システム1は、上記(11)によれば、AC/DC変換部20を備えず、DC/DC変換を行う充放電システムにも適用可能なものである。
(o)また、前記充放電システム1は、上記(12)によれば、携帯端末のバッテリの充電を行う小電力系の充放電システムにも適用可能であるから、携帯端末のバッテリの充電を行う充放電システム1といえる。

以上によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「第1のシステム入出力端子対T1、T2が充電口であり、第2のシステム入出力端子対T3、T4がバッテリ2に接続され、
DC/AC変換部30と、トランス40と、AC/DC変換部50と、制御部60とを備え、
当該DC/AC変換部30の第1の入出力端子対30T1、30T2には充電口から入力されてノイズが除去された交流電流をAC/DC変換部20で整流しコンデンサ25で平滑化した直流電流が入力され、
前記DC/AC変換部30は、インバータ回路として機能し、第1ないし第4のトランジスタ(スイッチング素子)31aないし31dを含むフルブリッジ回路によって構成され、
前記DC/AC変換部30は前記トランス40の1次側コイルに接続されており、
前記トランス40は、外部の電源とバッテリ2とを絶縁するためのものであり、
当該トランス40の2次側コイルは前記AC/DC変換部50に接続されており、
当該トランス40は、1次側コイルと2次側コイルを含み、
前記AC/DC変換部50は、整流回路として機能し、前記第2のシステム入出力端子対T3、T4に接続され、
前記第1のトランジスタ31aは、コレクタが第1の入出力端子対の一方30T1に、エミッタがトランス40の1次側コイルの一方の端子に、ゲートが制御部60に接続されており、
前記第2のトランジスタ31bは、コレクタが第1のトランジスタ31aのエミッタに、エミッタが第1の入出力端子対の他方30T2に、ゲートが制御部60に接続されており、
前記第3のトランジスタ31cは、コレクタが第1の入出力端子対の一方30T1に、エミッタがトランス40の1次側コイルの他方の端子に、ゲートが制御部60に接続されており、
前記第4のトランジスタ31dは、コレクタが第3のトランジスタ31cのエミッタに、エミッタが第1の入出力端子対の他方30T2に、ゲートが制御部60に接続されている、
AC/DC変換部20を備えずDC/DC変換を行う充放電システムに適用可能な、
携帯端末のバッテリの充電を行う充放電システム1。」


2 引用文献2
引用文献2には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

(1)「【0059】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。先の実施形態においてはスイッチング素子を2つ用いたハーフブリッジ方式のインバーター回路によって矩形波を生成していたが、他の実施形態においては、スイッチング素子を4つ用いたフルブリッジ方式のインバーター回路によって矩形波を生成する。
【0060】
図7は本発明の他の実施形態に係る電力伝送システムにおける電力伝送部を説明する図であり、図8は本発明の他の実施形態に係る電力伝送システムにおけるスイッチング素子のオンオフ制御を示す図である。」

(2)「【図7】



上記(1)によれば、図7にはスイッチング素子を4つ用いたフルブリッジ方式のインバーター回路が図示されており、上記(2)によれば、スイッチング素子SW3及びSW4の低電位側が接地されていることが見てとれる。

以上によれば、引用文献2には次の技術事項が記載されている。
「フルブリッジ方式のインバーター回路において2つのスイッチング素子の低電位側を接地すること。」

第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の充放電システム1は携帯端末のバッテリの充電を行うものであるから、当該充放電システム1の「充電口」と「バッテリ2」は、本願発明の移動端末の「充電インタフェース」と「バッテリー(電池)」に相当する。また、DC/AC変換部30、トランス40、AC/DC変換部50及び制御部60は、当該充放電システム1が備えるものであるから充電回路といえる。そして、当該充放電システム1は、第1のシステム入出力端子対T1、T2が充電口であり、第2のシステム入出力端子対T3、T4がバッテリ2に接続されているから、前記DC/AC変換部30、トランス40、AC/DC変換部50及び制御部60は、当該充電口とバッテリ2の間に配置されるものである。したがって、引用発明と本願発明は、「移動端末の充電インタフェースとバッテリー(電池)の間に配置される充電回路であ」る点で共通する。

(2)引用発明のDC/AC変換部30は、フルブリッジ回路によって構成されるものであり、当該「フルブリッジ回路」は、本願発明の「フルブリッジ回路」に相当する。また、引用発明の「制御部60」は、当該フルブリッジ回路のトランジスタのゲートに接続されるものであり、当該フルブリッジ回路を制御するものといえるから、本願発明の「制御回路」に相当する。そして、本願発明の「第一回路」は、「フルブリッジ回路と、前記フルブリッジ回路を制御する制御回路と、を含」むものであるから、引用発明の「DC/AC変換部30」及び「制御部60」は、本願発明の「第一回路」に相当する。

(3)引用発明のフルブリッジ回路に含まれる「第1ないし第4のトランジスタ(スイッチング素子)31aないし31d」は、本願発明の「4つのスイッチトランジスタ」に相当する。また、引用発明のDC/AC変換部30に入力される「直流電流」は、本願発明の「第一電流」に相当する。そして、引用発明のDC/AC変換部30はフルブリッジ回路によって構成されるインバータ回路として機能するから、引用発明と本願発明は、「第一回路」が「少なくとも4つのスイッチトランジスタを備え、第一電流を受け、前記第一電流を変化した大きさ及び方向を有する第二電流に転換するように構成され」る点で共通する。ただし、本願発明の「第一回路」は「前記充電インタフェースから第一電流を受け」るのに対して、引用発明の「DC/AC変換部30の第1の入出力端子対30T1、30T2」には「充電口から入力されてノイズが除去された交流電流をAC/DC変換部20で整流しコンデンサ25で平滑化した直流電流が入力され」る点で相違する。

(4)引用発明のトランス40の「1次側コイル」と「2次側コイル」は、本願発明の「第一コイル」と「第二コイル」に相当する。そして、引用発明の「1次側コイルと2次側コイルを含」む「トランス40」は、本願発明の、「第一コイルと、第二コイルとを含」む「磁気結合素子」に相当する。

(5)また、引用発明のトランス40は1次側コイルと2次側コイルを含むから、トランスの動作として、1次側コイルにインバータ回路として機能するDC/AC変換部30からの電流が流れると、電磁誘導により2次側コイルに電流が誘導されると解される。したがって、引用発明の「トランス40」と本願発明の「磁気結合素子」は、「第三電流を生成するために、変化した大きさ及び方向を有する前記第二電流を利用することにより、電磁誘導の仕方で前記第一コイルから前記第二コイルまでエネルギーを転換するように構成され」る点で共通する。

(6)引用発明のAC/DC変換部50は、トランス40の2次側コイルに接続され、整流回路として機能し、第2のシステム入出力端子対T3、T4に接続される。そして、当該第2のシステム入出力端子対T3、T4はバッテリ2に接続されるから、引用発明の「AC/DC変換部50」は、2次側コイルに誘導された電流を整流してバッテリ2に供給するものといえる。したがって、引用発明の「AC/DC変換部50」は、本願発明の「前記第三電流を、バッテリーを充電するように前記バッテリーの充電に適している第四電流に調整するように構成され」る「第二回路」に相当する。

(7)そして、上記(2)、(4)及び(6)によれば、引用発明と本願発明は、「充電回路」が「第一回路と、磁気結合素子と、第二回路と、を含」む点で共通する。また、上記(1)によれば、引用発明のDC/AC変換部30、トランス40及びAC/DC変換部50は、充電口とバッテリ2の間に配置されるものであるところ、DC/AC変換部30はトランス40の1次側コイルに接続されており、当該トランス40の2次側コイルはAC/DC変換部50に接続されているから、引用発明と本願発明は、「前記第一回路と、前記磁気結合素子と、前記第二回路は、順次に前記充電インタフェースと前記バッテリーの間に直列に接続され」る点で共通する。

(8)ここで、引用発明のトランス40は、1次側コイルにDC/AC変換部30が、2次側コイルにAC/DC変換部50が接続されており、1次側コイルと2次側コイルは、外部の電源とバッテリ2とを絶縁するから、DC/AC変換部30とAC/DC変換部50の間の直流電流路を切断するものといえる。したがって、引用発明の「トランス40」と本願発明の「磁気結合素子」は、「前記第一コイルを前記第一回路に接続し、前記第二コイルを前記第二回路に接続し、前記充電回路の直流(DC)電流路を切断するように、前記第一コイルと前記第二コイルとが互いに離隔され」る点で共通する。

(9)引用発明のDC/AC変換部30の「フルブリッジ回路」は第1ないし第4のトランジスタ(スイッチング素子)31aないし31dを含むから、引用発明の「フルブリッジ回路」と「第一スイッチトランジスタと、第二スイッチトランジスタと、第三スイッチトランジスタと、第四スイッチトランジスタと、を含」む点で共通する。

(10)引用発明の第1ないし第4のトランジスタ31aないし31dの「コレクタ」、「エミッタ」及び「ゲート」は、本願発明の第一ないし第四スイッチトランジスタの「第一端」、「第二端」及び「制御端」に相当する。また、引用発明の「1次側コイルの一方の端子」及び「1次側コイルの他方の端子」は、本願発明の「第一コイルの第一端」及び「第一コイルの第二端」に相当する。

(11)そうすると、引用発明の「第1のトランジスタ31a」は、コレクタが第1の入出力端子対の一方30T1に、エミッタがトランス40の1次側コイルの一方の端子に、ゲートが制御部60に接続されているから、本願発明の「第三スイッチトランジスタ」に相当するとともに、「第一端と、前記第一コイルの第一端に接続される第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、を有」する点で共通する。ただし、本願発明の「第三スイッチトランジスタ」の「第一端」は「前記充電インタフェースに接続されるように構成される」のに対して、引用発明の「第1のトランジスタ31a」の「コレクタ」は「第1の入出力端子対の一方30T1」に接続されており、AC/DC変換部20を介して充電口と接続されている点で相違する。

(12)引用発明の「第2のトランジスタ31b」は、コレクタが第1のトランジスタ31aのエミッタに、エミッタが第1の入出力端子対の他方30T2に、ゲートが制御部60に接続されているから、本願発明の「第四スイッチトランジスタ」に相当するとともに、「前記第三スイッチトランジスタの第二端に接続される第一端と、第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、を有する」点で共通する。ただし、本願発明の「第四スイッチトランジスタ」の「第二端」は「接地されるように構成される」のに対して、引用発明の「第2のトランジスタ31b」の「エミッタ」は「第1の入出力端子対の他方30T2」に接続されている点で相違する。

(13)引用発明の「第3のトランジスタ31c」は、コレクタが第1の入出力端子対の一方30T1に、エミッタがトランス40の1次側コイルの他方の端子に、ゲートが制御部60に接続されているから、本願発明の「第一スイッチトランジスタ」に相当するとともに、「第一端と、前記第一コイルの第二端に接続される第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、を有」する点で共通する。ただし、本願発明の「第一スイッチトランジスタ」の「第一端」は「前記充電インタフェースに接続されるように構成される」のに対して、引用発明の「第3のトランジスタ31c」の「コレクタ」は「第1の入出力端子対の一方30T1」に接続されており、AC/DC変換部20を介して充電口と接続されている点で相違する。

(14)引用発明の「第4のトランジスタ31d」は、コレクタが第3のトランジスタ31cのエミッタに、エミッタが第1の入出力端子対の他方30T2に、ゲートが制御部60に接続されているから、本願発明の「第二スイッチトランジスタ」に相当するとともに、「前記第一スイッチトランジスタの第二端に接続される第一端と、第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、を有」する点で共通する。ただし、本願発明の「第二スイッチトランジスタ」の「第二端」は「接地されるように構成される」のに対して、引用発明の「第4のトランジスタ31d」の「エミッタ」は「第1の入出力端子対の他方30T2」に接続されている点で相違する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「 移動端末の充電インタフェースとバッテリー(電池)の間に配置される充電回路であって、
第一回路と、磁気結合素子と、第二回路と、を含み、
前記第一回路と、前記磁気結合素子と、前記第二回路は、順次に前記充電インタフェースと前記バッテリーの間に直列に接続され、
前記第一回路は、少なくとも4つのスイッチトランジスタを備え、第一電流を受け、前記第一電流を変化した大きさ及び方向を有する第二電流に転換するように構成され、
前記磁気結合素子は、第一コイルと、第二コイルとを含み、
前記第一コイルを前記第一回路に接続し、前記第二コイルを前記第二回路に接続し、前記充電回路の直流(DC)電流路を切断するように、前記第一コイルと前記第二コイルとが互いに離隔され、
前記磁気結合素子は、第三電流を生成するために、変化した大きさ及び方向を有する前記第二電流を利用することにより、電磁誘導の仕方で前記第一コイルから前記第二コイルまでエネルギーを転換するように構成され、
前記第二回路は、前記第三電流を、バッテリーを充電するように前記バッテリーの充電に適している第四電流に調整するように構成され、
前記第一回路は、フルブリッジ回路と、前記フルブリッジ回路を制御する制御回路と、を含み、
前記フルブリッジ回路は、第一スイッチトランジスタと、第二スイッチトランジスタと、第三スイッチトランジスタと、第四スイッチトランジスタと、を含み、
前記第一スイッチトランジスタは、第一端と、前記第一コイルの第二端に接続される第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、を有し、
前記第二スイッチトランジスタは、前記第一スイッチトランジスタの第二端に接続される第一端と、第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、
を有し、
前記第三スイッチトランジスタは、第一端と、前記第一コイルの第一端に接続される第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、を有し、
前記第四スイッチトランジスタは、前記第三スイッチトランジスタの第二端に接続される第一端と、第二端と、前記制御回路に接続される制御端と、
を有する、充電回路。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明の「第一回路」は「前記充電インタフェースから第一電流を受け」るのに対して、引用発明の「DC/AC変換部30の第1の入出力端子対30T1、30T2」には「充電口から入力されてノイズが除去された交流電流をAC/DC変換部20で整流しコンデンサ25で平滑化した直流電流が入力され」る点。
(相違点2)
本願発明の「第三スイッチトランジスタ」及び「第一スイッチトランジスタ」の「第一端」は「前記充電インタフェースに接続されるように構成される」のに対して、引用発明の「第1のトランジスタ31a」及び「第3のトランジスタ31c」の「コレクタ」は「第1の入出力端子対の一方30T1」に接続されており、AC/DC変換部20を介して充電口と接続されている点。
(相違点3)
本願発明の「第四スイッチトランジスタ」及び「第二スイッチトランジスタ」の「第二端」は「接地されるように構成される」のに対して、引用発明の「第2のトランジスタ31b」及び「第4のトランジスタ31d」の「エミッタ」は「第1の入出力端子対の他方30T2」に接続されている点。

2 判断
事案に鑑み、まず、相違点3について検討する。
回路の低電位側を接地することは例示するまでもなく周知の技術であるところ、引用文献2に記載されるようにフルブリッジ方式のインバーター回路においては2つのスイッチング素子の低電位側を接地することが知られているから(上記「第4 2」を参照。)、引用発明のフルブリッジ回路に、引用文献2に記載された技術事項を採用して、当該回路の低電位側である第2のトランジスタ31b及び第4のトランジスタ31dのエミッタを接地することにより、相違点3に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。
次に、相違点1及び2について検討する。引用発明は、AC/DC変換部20を備えずDC/DC変換を行う充放電システムに適用可能であるから、引用発明の充電口として直流電流を入力するものを用いてDC/AC変換部30の第1の入出力端子対30T1、30T2に接続することにより、相違点1及び2に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。
審判請求人は令和2年4月2日提出の意見書において
「 2)引用文献1の図1に記載された充放電システムは、段落[0018]に記載されたように電気自動車やプラグインハイブリッド車両などの電動車両に搭載され、車載バッテリの充放電を行うものである。
これに対し、本願発明は移動端末の分野に属するものである。
このように、本願発明と引用文献1に記載された発明とは技術分野において相違する。この技術分野の相違により、本願発明と引用文献1に記載された発明とは構成において相違がある。
請求項2に係る発明では、審査官殿が述べられたように、第一回路が、充電インタフェースから第一電流を受ける。
これに対し引用文献1に記載された発明では、車両搭載用という技術分野に属することから、車両で発生するノイズを除去するためのノイズフィルタ10と、AC/DC変換部20と、コンデンサ25と、DC/AC変換部30とを備え、ノイズフィルタ10によりノイズを除去した交流電流がAC/DC変換部20、コンデンサ26で整流された直流電流が、D/AC変換部30に入力されるように構成されている。
このような相違は、技術分野の相違により生じたものであり、本願発明における移動端末の分野で充電に用いる際にMOSトランジスタの信頼性を向上させることを課題としている当業者は、車両搭載用という技術分野に用いる引用文献1を参照して、上記構成上の相違点を有する請求項2の構成に到達することは、容易ではないものと思料する。」
と主張する。
しかし、引用文献1には、DC/DC変換を行う充放電システムにも適用可能である旨、また、携帯端末等のバッテリの充放電を行う小電力系の充放電システムにも適用可能である旨が記載されているから(上記「第4 1(11)及び(12)」を参照。)、上記主張は採用できない。
したがって、請求項2に係る発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項2に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-08-05 
結審通知日 2020-08-07 
審決日 2020-08-21 
出願番号 特願2017-513190(P2017-513190)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大手 昌也高橋 優斗  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 山田 正文
石川 亮
発明の名称 充電回路及び移動端末  
代理人 永井 浩之  
代理人 朝倉 悟  
代理人 吉元 弘  
代理人 中村 行孝  
代理人 関根 毅  

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