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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1369762 |
審判番号 | 不服2019-14057 |
総通号数 | 254 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-10-23 |
確定日 | 2021-01-04 |
事件の表示 | 特願2016-515515「集積静電チャックを備えた基板キャリア」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月26日国際公開、WO2015/042304、平成28年12月15日国内公表、特表2016-539489〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2014年(平成26年) 9月18日(優先権主張 2013年(平成25年) 9月20日,以下「優先日」という。),2014年(平成26年) 5月 9日,米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成28年 3月18日付け:国内書面の提出 平成30年 7月25日付け:拒絶理由通知書 平成31年 1月31日 :意見書,手続補正書の提出 令和 1年 6月25日付け:拒絶査定(原査定) 令和 1年10月23日 :審判請求書,手続補正書の提出 第2 令和 1年10月23日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和 1年10月23日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1-15の記載は次のとおりである。(下線部は,補正箇所である。以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。) 「 【請求項1】 処理システム内で使用するように適合された基板キャリアであって,基板キャリアは, 支持ベースと, 互い違いに配置された電極フィンガーが内部に形成され,支持ベース上に配置された電極アセンブリと, 電極アセンブリの状態を制御するように適合された基板キャリアのオンボード上のコントローラと, 電源を電極アセンブリと電気的に切断するように構成された支持ベースに結合されたコネクタであって,支持ベース及び電極アセンブリは,処理システム内で搬送されるように適合された単一体を含んでいるコネクタと, 支持ベースの側から延びるレールであって,システムによって単一体を搬送するように適合された駆動システムとインターフェース接続するように構成されたレールとを含む基板キャリア。 【請求項2】 コネクタは, 接触パッド,プラグ及びソケットコネクタ,バナナコネクタ,スペードコネクタ,及びねじ端子のうちの少なくとも1つを含む,請求項1記載の基板キャリア。 【請求項3】 基板キャリアのオンボードにあり,電極アセンブリに結合されたエネルギー蓄積装置を含む,請求項1記載の基板キャリア。 【請求項4】 エネルギー蓄積装置は,電極アセンブリ及びコネクタに電気的に結合されている,請求項3記載の基板キャリア。 【請求項5】 基板キャリアは,ガス源,流体源,およびチャッキング電源に結合するように構成されている,請求項1記載の基板キャリア。 【請求項6】 電極アセンブリは,独立して制御可能な電極アセンブリのアレイを含む,請求項1記載の基板キャリア。 【請求項7】 電極アセンブリは,複数の分配電極を含む,請求項1記載の基板キャリア。 【請求項8】 分配電極は,第2電極と互い違いに配置された少なくとも1つの第1電極を含む,請求項7記載の基板キャリア。 【請求項9】 エネルギー蓄積装置は,電池,コンデンサ,スーパーキャパシタ,及びウルトラバッテリーのうちの少なくとも1つを含む,請求項7記載の基板キャリア。 【請求項10】 支持ベース内に配置されたリザーバを含む,請求項1記載の基板キャリア。 【請求項11】 リザーバは,チェックバルブ又はアイソレーションバルブを有するコネクタに結合される,請求項10記載の基板キャリア。 【請求項12】 基板キャリアの表面にガスを供給するためのコネクタを含む,請求項1記載の基板キャリア。 【請求項13】 (a)基板キャリアであって, 支持ベースと, 支持ベース上に配置された複数の電極アセンブリと, 電極アセンブリの状態を制御するように適合された基板キャリアのオンボード上のコントローラと, 電源を電極アセンブリに電気的に切断するように構成された支持ベースに結合されたコネクタであって,支持ベース及び電極アセンブリは,処理システム内で搬送されるように適合された単一体を含んでいるコネツタと, 支持ベースの側から延びるレールであって,システムによって単一体を搬送するように適合された駆動システムとインターフェース接続するように構成されたレールと含む基板キャリアと, (b)基板キャリアに基板が静電的に結合された基板キャリアを受け取るように適合された処理チャンバと, (c)コネクタに自動的に結合するように操作可能な係合コネクタとを含む処理システム。 【請求項14】 係合コネクタは,ローディングシステム,ロードロックチャンバ,及び処理チャンバのうちの少なくとも1つの中に配置される,請求項13記載の処理システム。 【請求項15】 基板キャリアのオンボードにあり,電極アセンブリに結合されたエネルギー蓄積装置を含む,請求項13記載の処理システム。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の,平成31年 1月31日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-18の記載は次のとおりである。(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。) 「 【請求項1】 処理システム内で使用するように適合された基板キャリアであって,基板キャリアは, 支持ベースと, 互い違いに配置された電極フィンガーが内部に形成され,支持ベース上に配置された電極アセンブリと, 電極アセンブリの状態を制御するように適合された基板キャリアのオンボード上のコントローラと, 電源を電極アセンブリと電気的に切断するように構成された支持ベースに結合されたコネクタを含み,支持ベース及び電極アセンブリは,処理システム内で搬送されるように適合された単一体を含む基板キャリア。 【請求項2】 コネクタは, 接触パッド,プラグ及びソケットコネクタ,バナナコネクタ,スペードコネクタ,及びねじ端子のうちの少なくとも1つを含む,請求項1記載の基板キャリア。 【請求項3】 基板キャリアのオンボードにあり,電極アセンブリに結合されたエネルギー蓄積装置を含む,請求項1記載の基板キャリア。 【請求項4】 エネルギー蓄積装置は,電極アセンブリ及びコネクタに電気的に結合されている,請求項3記載の基板キャリア。 【請求項5】 支持ベースの側から延びるレールを含む,請求項1記載の基板キャリア。 【請求項6】 レールは,システムを通して本体を搬送するように適合された駆動システムとインターフェース接続するように構成されている,請求項5記載の基板キャリア。 【請求項7】 電極アセンブリは,独立して制御可能な電極アセンブリのアレイを含む,請求項1記載の基板キャリア。 【請求項8】 電極アセンブリは,複数の分配電極を含む,請求項1記載の基板キャリア。 【請求項9】 分配電極は,第2電極と互い違いに配置された少なくとも1つの第1電極を含む,請求項8記載の基板キャリア。 【請求項10】 エネルギー蓄積装置は,電池,コンデンサ,スーパーキャパシタ,及びウルトラバッテリーのうちの少なくとも1つを含む,請求項8記載の基板キャリア。 【請求項11】 支持ベース内に配置されたリザーバを含む,請求項1記載の基板キャリア。 【請求項12】 リザーバは,チェックバルブ又はアイソレーションバルブを有するコネクタに結合される,請求項11記載の基板キャリア。 【請求項13】 基板キャリアの表面にガスを供給するためのコネクタを含む,請求項1記載の基板キャリア。 【請求項14】 (a)基板キャリアであって, 支持ベースと, 支持ベース上に配置された複数の電極アセンブリと, 電極アセンブリの状態を制御するように適合された基板キャリアのオンボード上のコントローラと, 電源を電極アセンブリに電気的に切断するように構成された支持ベースに結合されたコネクタを含み,支持ベース及び電極アセンブリは,処理システム内で搬送されるように適合された単一体を含む基板キャリアと, (b)基板キャリアに基板が静電的に結合された基板キャリアを受け取るように適合された処理チャンバと, (c)コネクタに自動的に結合するように操作可能な係合コネクタとを含む処理システム。 【請求項15】 係合コネクタは,ローディングシステム,ロードロックチャンバ,及び処理チャンバのうちの少なくとも1つの中に配置される,請求項14記載の処理システム。 【請求項16】 基板キャリアのオンボードにあり,電極アセンブリに結合されたエネルギー蓄積装置を含む,請求項14記載の処理システム。 【請求項17】 処理システム内で基板を搬送するための方法であって, 基板キャリア上に基板を搬送する工程であって,基板キャリアは基板キャリアのオンボードにあるコントローラを含み,コントローラは基板キャリア内の電極アセンブリの状態を制御するように適合されている工程と, 電源に電気的に結合された電極アセンブリに電力を供給することによって,基板キャリアに基板を静電吸着させる工程と, 基板が基板キャリア上に吸着されたときに,基板キャリアから電源を電気的に切断する工程と, 実質的に鉛直方向で基板キャリアに静電吸着されながら基板を搬送する工程とを含む方法。 【請求項18】 電源を電気的に切断する工程は,処理チャンバ内又は基板ロードステーション内で基板キャリアから電源を自動的に切断する工程を含む,請求項17記載の方法。」 2 補正の目的 本件補正は上記「1 本件補正について(補正の内容)」のとおり,本件審判の請求と同時にする補正であり,特許請求の範囲について補正をしようとするものであるから,本件補正が,特許法第17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か,すなわち,本件補正が,特許法第17条の2第5項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由を示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて,以下に検討する。 (1)補正前の請求項と補正後の請求項とを比較すると,補正後の請求項1-5,6-12,13-15は,補正前の請求項1-5,7-13,14-16に対応することは明らかである。 (2)よって,本件補正は,下記の補正事項1-6よりなるものである。 ア 補正事項1 補正前の請求項1の「基板キャリア」について,「電源を電極アセンブリと電気的に切断するように構成された支持ベースに結合されたコネクタを含み,支持ベース及び電極アセンブリは,処理システム内で搬送されるように適合された単一体を含む」という記載を,補正後の請求項1の「電源を電極アセンブリと電気的に切断するように構成された支持ベースに結合されたコネクタであって,支持ベース及び電極アセンブリは,処理システム内で搬送されるように適合された単一体を含んでいるコネクタと」という記載に変更する補正。 イ 補正事項2 補正前の請求項1の「基板キャリア」について,補正後の請求項1のとおり,「支持ベースの側から延びるレールであって,システムによって単一体を搬送するように適合された駆動システムとインターフェース接続するように構成されたレールとを含む」と限定を加える補正。 ウ 補正事項3 補正前の請求項5の「基板キャリア」について,補正後の請求項5のとおり,「ガス源,流体源,およびチャッキング電源に結合するように構成されている」と限定を加える補正。 エ 補正事項4 補正前の請求項14の「基板キャリア」について,「電源を電極アセンブリと電気的に切断するように構成された支持ベースに結合されたコネクタを含み,支持ベース及び電極アセンブリは,処理システム内で搬送されるように適合された単一体を含む」という記載を,補正後の請求項13の「電源を電極アセンブリと電気的に切断するように構成された支持ベースに結合されたコネクタであって,支持ベース及び電極アセンブリは,処理システム内で搬送されるように適合された単一体を含んでいるコネツタと」という記載に変更する補正。 オ 補正事項5 補正前の請求項14の「基板キャリア」について,補正後の請求項13のとおり,「支持ベースの側から延びるレールであって,システムによって単一体を搬送するように適合された駆動システムとインターフェース接続するように構成されたレールとを含む」と限定を加える補正。 カ 補正事項6 補正前の請求項6,17,18を削除し,請求項の項番を整える補正。 (3)補正事項1-5について 補正事項1-2は,補正前の請求項1の発明特定事項を限定的に減縮することを目的とするものである。 補正事項3は,補正前の請求項5の発明特定事項を限定的に減縮することを目的とするものである。 補正事項4,5は,補正前の請求項14の発明特定事項を限定的に限縮することを目的とするものである。 また,本件補正によっても,補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。 (4)小括 したがって,上記補正事項1-5は特許請求の範囲の減縮(限定的減縮)を目的とするものであり,また,上記補正事項6は請求項の削除を目的とするものであるから,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮,及び同条同項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当するといえることから,特許法第17条の2第5項の規定に適合するものである。 3 独立特許要件 以上のように,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする上記補正事項1-5を含むものである。 そこで,補正後の請求項1に記載される発明が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。 3-1 特許法第36条第6項第2号についての検討 (1)補正後の請求項1に記載される発明は,「電源を電極アセンブリと電気的に切断するように構成された支持ベースに結合されたコネクタであって,支持ベース及び電極アセンブリは,処理システム内で搬送されるように適合された単一体を含んでいるコネクタ」という記載を含むものである。 (2)ここで,「支持ベース及び電極アセンブリは,処理システム内で搬送されるように適合された単一体を含んでいるコネクタ」という記載からは,「支持ベース及び電極アセンブリ」が「単一体」を含んでいるとも,「コネクタ」が「単一体」を含んでいるとも,「支持ベース及び電極アセンブリ」が「コネクタ」であるとも解され,「支持ベース及び電極アセンブリ」及び「処理システム内で搬送されるように適合された単一体」,「コネクタ」それぞれの構成要素間の相互関係が不明である結果,「支持ベース及び電極アセンブリ」及び「処理システム内で搬送されるように適合された単一体」,「コネクタ」それぞれの構成を特定できず,特許を受けようとする発明が明確でない。 (3)小括 したがって,補正後の請求項1に記載される発明は,特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないため,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-2 特許法第29条第2項についての検討 (1)上記3-1で述べたとおり,補正後の請求項1に記載の発明は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであるが,補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が,特許法第29条第2項に違反するものであるかについても,以下,検討する。 本件補正発明は,上記1(1)に記載した,以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 処理システム内で使用するように適合された基板キャリアであって,基板キャリアは, 支持ベースと, 互い違いに配置された電極フィンガーが内部に形成され,支持ベース上に配置された電極アセンブリと, 電極アセンブリの状態を制御するように適合された基板キャリアのオンボード上のコントローラと, 電源を電極アセンブリと電気的に切断するように構成された支持ベースに結合されたコネクタであって,支持ベース及び電極アセンブリは,処理システム内で搬送されるように適合された単一体を含んでいるコネクタと, 支持ベースの側から延びるレールであって,システムによって単一体を搬送するように適合された駆動システムとインターフェース接続するように構成されたレールとを含む基板キャリア。」 ただし,本件補正発明の,「電源を電極アセンブリと電気的に切断するように構成された支持ベースに結合されたコネクタであって,支持ベース及び電極アセンブリは,処理システム内で搬送されるように適合された単一体を含んでいるコネクタと」という記載は上記3-1で述べたとおり明確でないため,補正前の請求項1の記載を参酌して,「電源を電極アセンブリと電気的に切断するように構成された支持ベースに結合されたコネクタであって,支持ベース及び電極アセンブリは,処理システム内で搬送されるように適合された単一体を含み」であると解して検討を進める。 (2)引用例 (2-1)引用例1に記載されている技術的事項及び引用発明 ア 本願優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の拒絶査定の理由である平成30年 7月25日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2007- 96056号公報(平成19年 4月12日出願公開,以下,「引用例1」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同じ。) A 「【0008】 本発明のスパッタ装置用キャリアは,ガラス基板をベース基板とする処理基板をキャリアに搭載した状態で,インラインで,搬送しながらスパッタ処理を行い,該処理基板の一面側にスパッタ成膜を施すスパッタ装置において用いられる,処理基板を搭載するキャリアであって,搭載された処理基板のスパッタ処理面側でない裏面側から,裏面の少なくとも一部を,静電吸着により吸着して,裏面側に引っ張る静電吸着部を設けていることを特徴とするものである。 そして,上記のスパッタ装置用キャリアであって,枠体に,順に,処理基板,裏板を嵌め込み,処理基板を保持する処理基板保持部を備えていることを特徴とするものであり,前記裏板に静電吸着部を配していることを特徴とするものである。 また,上記いずれかのスパッタ装置用キャリアであって,前記処理基板が,ガラス基板の一面側に各色の着色層をカラーフィルタとして形成したカラーフィルタ形成基板であることを特徴とするものである。」 B 「【0014】 はじめに,本発明のスパッタ装置の実施の形態の第1の例を,図1に基づいて説明する。 第1の例のスパッタ装置は,ディスプレイパネル用のG6世代サイズ(1800mm×1500mmサイズ)以上の大サイズの透明なガラス基板をベース基板とする処理基板130を,キャリアに搭載して立てた状態で,インラインで,搬送しながらスパッタ処理を行い,処理基板の一面側に電極用のITO膜をスパッタ成膜する,スパッタ装置で,図7に示す各部の構成配列と同じ構成配列のスパッタ装置である。 図4に示すように,スパッタ処理の際には,処理基板130の成膜する側の面とターゲット250とを,平行に対向させ,且つ,処理基板130側を上側として鉛直方向242から斜めに傾けて配するもので,図1(a)に示すように,キャリア100を鉛直方向から斜めに傾けて配しており,傾けた状態のまま搬送する。 第1の例のスパッタ装置は,処理基板保持部101は支持部150に位置固定するもので,簡単には,図9(b)に示すキャリア800全体を傾け,且つ,裏板120に静電吸着部145を配して用いるものである。回転体190自体が傾いているものである。本例においては,このような傾けた回転体190,歯車210を,搬送路に沿い複数配置して搬送を行う。 キャリア100は,枠体110に,順に,処理基板130,裏板120を嵌め込み,処理基板130を保持する処理基板保持部101を備えたものである。 そして,枠体110に搭載された処理基板130のスパッタ処理面側でない裏面側から,処理基板130の裏面の少なくとも一部を,静電吸着により吸着して,裏面側に引っ張る静電吸着部145を,裏板120に一体として設けている。(図2参照) 尚,図1(a)の電極140の領域が静電吸着する領域で,裏板120の電極140領域を含む吸着する部分を,ここでは,静電吸着部(吸着パッド部とも言う)145と言う。 ここでは,処理基板130として,G6世代サイズの透明なガラス基板の一面側に各色の着色層をカラーフィルタとして形成したカラーフィルタ形成基板を用い,そのカラーフィルタ形成面側にITO膜をスパッタ成膜するものである。」 C 「【0016】 本例のスパッタ装置は,図9に示されるスパッタ装置と同じように,搬送されながらスパッタ処理を行うもので,各チャンバーの配置や処理基板の搬入から搬出までのスパッタ装置本体での流れは,基本的に,図9に示されるスパッタ装置と同じである。 キャリア100の搬送も,基本的には図9に示されるスパッタ装置と同じで,駆動用モーター210からの駆動力を歯車(図示していない)との噛み合わせで伝える溝を切った溝形成部200が,キャリア下部に設けられており,更に,歯車による磨耗を極力抑えるために,キャリア100の溝形成部200の進行方向両側,下側に,平坦部を有する搬送支持レール171,172が,キャリアの荷重を支えるために設けられており,本体側にある前記の歯車とは異なるボビンのような回転体190にキャリア側の搬送支持レール171,172の平坦部が乗っかるようになっている。本例においては,このような回転体190,歯車210を,搬送路に沿い複数配置して搬送を行う。 本例におけるキャリア100が,図9に示すキャリア760と異なるのは,回転軸152にて,枠体110とこれに搭載する処理基板130と裏板120とを一体として,回転して,傾けることができる構造である点で,図9に示すキャリア860の場合は,枠体861は支持部864に固定で処理基板863が鉛直方向に立つものである。本例においては,図1に示すように,処理基板130(図9の863に相当)を,キャリア130(図9の860に相当)に搭載して鉛直方向に対し傾けて立てた状態とし,インラインで,搬送しながら,図4に示すように,ターゲットと対向させ,スパッタ処理を行い,処理基板の一面側に電極用のITO膜をスパッタ成膜する。 第1の例のスパッタ装置においては,図9に示すスパッタ装置と異なり,キャリア130(図9の860に相当)に搭載した枠体110を鉛直方向から斜めに傾けており,傾いた状態で,搬送,スパッタ処理を行う。」 D 「【0019】 静電吸着機構について,図3に基づいて,更に,説明しておく。 尚,図3は,処理基板130が枠体110に搭載され,裏板120が置かれ状態の,一断面図である。 ここで,裏板120には,静電吸着用の電極140を,絶縁性材層122に埋めるように設けられており,図3に示すように,電源220により電圧をかけると,例えば,絶縁材層122の表面側が+に,また,処理基板130のベース基板であるガラス基板の表面側が-に電荷が誘起される。 これにより,処理基板130と裏板120とがクーロン力で吸引した状態となる。 この後,電源220の電圧を切った場合にも,この状態は維持される。 本例における,キャリア100はこのような現象を利用して,クーロン力で処理基板の裏面を裏板120側に引っ張り,処理基板130にソリが発生すうる方向と逆に力を作用させるものである。 具体的には,キャリア100の枠体110への処理基板130の搭載,裏板120の設置を大気中で行った後,図3のように,電源により電極140へ電圧をかけて,絶縁性材層122と処理基板130のベース基板であるガラス基板に,電荷を誘起し,更に,電源からの電圧を切っておく。 そして,この後,ローディングチャンバー(図9の811に相当)へとキャリア100を投入する。 これにより,本例におけるキャリア100では,ローディングチャンバーからアンローディングチャンバーまでの,搬送,スパッタ処理等においても,処理基板130の裏面には,裏板120側に引っ張られるクーロン力が働く。 このクーロン力が,処理基板130を鉛直方向242から斜めに傾けたことによる,自重に対向するため,処理基板130の自重によるソリ発生をないものとできる。 尚,図5(a)に示すように,図9(b)に示すようなキャリアにおいては,枠体110は処理基板を鉛直方向242に立てているため,その自重によるソリ発生しないが,図5(b)に示すように,処理基板を鉛直方向242から斜めに傾けた場合には,ソリが発生する。 尚,ここで,275はソリ発生による隙間で,裏板120は剛性が大きく,強固で,ソリが発生しないものとしている。 本例では,先にも述べたように,キャリア100へ,一体となった処理基板130と裏板120とを搭載する際,一体となった処理基板130と裏板120とを,枠体110にただ載せるだけで,裏板120は,静電吸着とその自重で処理基板130の裏面側に接するものであり,上記のソリ発生の原因となる自重に対抗して,枠体110に搭載された処理基板130のスパッタ処理面側でない裏面側から,裏面の少なくとも一部を,静電吸着により吸着して,裏面側に引っ張っていることとなる。」 E 「 図1 」 F 「 図3 」 イ ここで,引用例1に記載されている事項を検討する。 (ア)上記Aの「本発明のスパッタ装置用キャリアは,ガラス基板をベース基板とする処理基板をキャリアに搭載した状態で,インラインで,搬送しながらスパッタ処理を行い,該処理基板の一面側にスパッタ成膜を施すスパッタ装置において用いられる,処理基板を搭載するキャリア」との記載からすると,引用例1には,“処理基板をキャリアに搭載した状態で,スパッタ処理を行うスパッタ装置において用いられる,処理基板を搭載するキャリア”が記載されていると認められる。 (イ)上記Bの「第1の例のスパッタ装置は,処理基板保持部101は支持部150に位置固定する」との記載,「キャリア100は,枠体110に,順に,処理基板130,裏板120を嵌め込み,処理基板130を保持する処理基板保持部101を備えたものである。」との記載,上記Eの図1の記載からすると,引用例1の“キャリア100”は,“支持部150”に“処理基板保持部101”が位置固定され,また,“処理基板保持部101”は“裏板120”を備えることが記載されていると認められる。 (ウ)上記Bの「裏板120の電極140領域を含む吸着する部分を,ここでは,静電吸着部(吸着パッド部とも言う)145と言う」との記載,上記Dの「ここで,裏板120には,静電吸着用の電極140を,絶縁性材層122に埋めるように設けられており,図3に示すように,電源220により電圧をかけると,例えば,絶縁材層122の表面側が+に,また,処理基板130のベース基板であるガラス基板の表面側が-に電荷が誘起される。」との記載,上記Fの図3の記載からすると,引用例1の“裏板120”には,“静電吸着用の電極140“が設けられていると認められる。 (エ)上記Cの「キャリア100の搬送も,基本的には図9に示されるスパッタ装置と同じで,駆動用モーター210からの駆動力を歯車(図示していない)との噛み合わせで伝える溝を切った溝形成部200が,キャリア下部に設けられており,更に,歯車による磨耗を極力抑えるために,キャリア100の溝形成部200の進行方向両側,下側に,平坦部を有する搬送支持レール171,172が,キャリアの荷重を支えるために設けられており,本体側にある前記の歯車とは異なるボビンのような回転体190にキャリア側の搬送支持レール171,172の平坦部が乗っかるようになっている。本例においては,このような回転体190,歯車210を,搬送路に沿い複数配置して搬送を行う。」との記載,上記Eの図1の記載からすると,引用例1の“キャリア100”には“溝形成部200”が設けられており,“溝形成部200”とスパッタ装置の搬送路に設けられた“歯車210”との噛み合せで“キャリア100”が搬送されると認められる。 ここで,特に上記Eの図1の記載を参照すると,“溝形成部200”は,“キャリア100”の“支持部150”に設けられていることは明らかである。 ウ 以上,(ア)-(エ)で示した事項から,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「 処理基板をキャリアに搭載した状態で,スパッタ処理を行うスパッタ装置において用いられる,処理基板を搭載するキャリアであって, キャリアは,支持部に処理基板保持部が位置固定され,処理基板保持部は裏板を備え, 裏板には,静電吸着用の電極が設けられており, 支持部には溝形成部が設けられ,スパッタ装置の搬送路に設けられた歯車と溝形成部との噛み合せで搬送されるキャリア。」 (2-2)引用例2に記載されている技術的事項 ア 本願優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,特開2007-157886号公報(平成19年 6月21日出願公開,以下,「引用例2」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。 G 「【0014】 以下,本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。 実施の形態1. 図1は,本発明の実施の形態1による静電力を利用した表面処理用治具100の断面図である。上側ケース101,下側ケース102,フィルムキャパシタ(電荷保持部)103,誘導コイル(電流供給部)104,整流回路105,制御回路106,昇圧回路107,導通電極108,電極パターン109,絶縁層110を備えている。」 H「【0016】 上側ケース101の上には電極パターン109が設けられており,上側ケース101に埋め込まれた導通電極108を通してケース内部の回路と接続されている。電極パターン109の上には絶縁層110が設けられている。電極パターン109は,図2(A)に示すように,双極方式の電極パターンである。」 I 「【0018】 フィルムキャパシタ103は,軽量化,小型化に適しているが,多くても数十V程度の電圧しか得られないため,制御回路106,昇圧回路107を通して数百?1kVに昇圧し,導通電極108を通して電極パターン109に供給する。ここで,表面処理用治具100が基板を吸着するためには,一般に数百?1kVの電圧が必要である。 【0019】 表面処理用治具100と基板(被加工基板)200の吸着原理について説明する。基板200は、絶縁層110の上に設置される。電極パターン109に電圧が印加されることにより、図3に示すように絶縁層110上の基板200が分極し、表面処理用治具100と基板200がコンデンサーを構成する状態となり、両者は静電力により吸着する。」 J 「【0024】 特に,基板200を真空装置内に移す場合,真空装置は密封されるためコードなどが取り付けられていると不便であるが,実施の形態1による表面処理用治具100を用いれば,表面処理用治具100に装着したままで基板200を真空装置内に入れることができる。 【0025】 このように,基板200の製造工程を通して,表面処理用治具100を取り付けておくことができるため,表面処理用治具100の着脱による工数の増加を防止でき,廃棄物の量も減らすことができる。」 K 「 図1 」 L 「 図2 」 イ ここで,引用例2に記載されている事項を検討する。 (ア)上記Jの「特に,基板200を真空装置内に移す場合,真空装置は密封されるためコードなどが取り付けられていると不便であるが,実施の形態1による表面処理用治具100を用いれば,表面処理用治具100に装着したままで基板200を真空装置内に入れることができる。」との記載,「このように,基板200の製造工程を通して,表面処理用治具100を取り付けておくことができる」との記載からすると,引用例2には,“基板200の製造工程を通して,基板200に取り付けておくことができる表面処理用治具100”が記載されていると認められる。 (イ)上記Gの「図1は,本発明の実施の形態1による静電力を利用した表面処理用治具100の断面図である。上側ケース101,下側ケース102,フィルムキャパシタ(電荷保持部)103,誘導コイル(電流供給部)104,整流回路105,制御回路106,昇圧回路107,導通電極108,電極パターン109,絶縁層110を備えている。」との記載,上記Kの図1の記載からすると,引用例2の“表面処理用治具100”は,“制御回路106”,“電極パターン109”を備えている。 (ウ)上記Hの「上側ケース101の上には電極パターン109が設けられており,上側ケース101に埋め込まれた導通電極108を通してケース内部の回路と接続されている。電極パターン109の上には絶縁層110が設けられている。電極パターン109は,図2(A)に示すように,双極方式の電極パターンである。」との記載,上記Lの図2の記載からすると,引用例2の“電極パターン109”は,“互いに違いに配置された電極パターン”であると認められる。 (エ)上記Iの「電極パターン109に電圧が印加されることにより、図3に示すように絶縁層110上の基板200が分極し、表面処理用治具100と基板200がコンデンサーを構成する状態となり、両者は静電力により吸着する。」との記載からすると,“電極パターン109”は,“基板200”を吸着するものであることは明らかである。 (オ)上記Iの「フィルムキャパシタ103は,軽量化,小型化に適しているが,多くても数十V程度の電圧しか得られないため,制御回路106,昇圧回路107を通して数百?1kVに昇圧し,導通電極108を通して電極パターン109に供給する。」との記載からすると,“制御回路106”は,“電極パターン109”に供給する電圧を制御しているものと認められる。 ウ 以上,(ア)-(オ)で示した事項から,引用例2には,次の事項が記載されている(以下,「引用例2記載事項」という。)ものと認められる。 「 基板の製造工程を通して,基板に取り付けておくことができる表面処理用治具であって, 互いに違いに配置された基板を吸着するための電極パターンと, 電極パターンに供給する電圧を制御する制御回路と, を備えること。」 (3)対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「キャリア」は「処理基板をキャリアに搭載した状態で,スパッタ処理を行うスパッタ装置において用いられる」ものであるから,以下の相違点を除き,本件補正発明の「基板キャリア」と,「処理システム内で使用するように適合された」ものである点で一致する。 (イ)引用発明の「支持部」は本件補正発明の「支持ベース」に相当する。 また,引用発明の「静電吸着用の電極」は,「支持部」に位置固定された「処理基板保持部」に備えられているから,支持部上に配置されているといえる。 すると,引用発明の「静電吸着用の電極」は,本件補正発明の「電極アセンブリ」と,「支持ベース上に配置された」ものである点で一致する。 (ウ)上記(2-1)アのFの図3の記載を参照すると,裏板120は電極140と電源220とを接続するための,何らかの「端子」を備えていることは明らかである。 すると,引用発明の「裏板」に備えられている「端子」は,「電極と電源とを接続するため」のものであるから,本件補正発明の「コネクタ」に相当するといえる。 (エ)引用発明の「静電吸着用の電極」は,「支持部」に位置固定された「処理基板保持部」に備えられ,スパッタ装置内を一体となって搬送されることは明らかであるから,引用発明において「支持部」及び「処理基板保持部」,「静電吸着用の電極」は,「処理システム内で搬送されるように適合された単一体」であるといえる。 (オ)引用発明の「溝形成部」は,「支持部」に設けられており,「スパッタ装置の搬送路に設けられた歯車」との噛み合わせで「キャリア」を搬送させるものであるから,本件補正発明の「レール」と,「搬送路接続部」である点で共通する。 イ 以上から,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。 <一致点> 「 処理システム内で使用するように適合された基板キャリアであって,基板キャリアは, 支持ベースと, 支持ベース上に配置された電極アセンブリと, 電源を電極アセンブリと電気的に切断するように構成された支持ベースに結合されたコネクタであって,支持ベース及び電極アセンブリは,処理システム内で搬送されるように適合された単一体を含み, 支持ベースから延びる搬送路接続部であって,システムによって単一体を搬送するように適合された駆動システムとインターフェース接続するように構成された搬送路接続部とを含む基板キャリア。」 <相違点1> 電極アセンブリに関して,本件補正発明は,「互い違いに配置された電極フィンガーが内部に形成され」と特定されているのに対して,引用発明は,そのように特定されていない点。 <相違点2> 本件補正発明は,「電極アセンブリの状態を制御するように適合された基板キャリアのオンボード上のコントローラ」を備えるのに対し,引用発明は,コントローラについて特定されていない点。 <相違点3> 搬送路接続部に関して,本件補正発明は,「支持ベースの側から伸びるレール」と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。 (4)当審の判断 上記相違点1-3について検討する。 ア 相違点1について 引用例2記載事項にあるように,基板の製造工程を通して基板を取り付けておく表面処理用治具において,基板を吸着させる静電チャックに用いられる電極の形状として,互い違いに配置された電極パターンは周知の技術である。 引用発明と引用例2記載事項とは,どちらも,基板の処理システム内で使用するように適合された基板キャリアに関するものであり,引用発明の電極と引用例2記載事項の電極パターンとは,基板を吸着するための電極と作用・機能が共通するものであるから,引用発明の電極の形状として,引用例2記載事項の互い違いに配置された電極パターンを採用することにより,上記相違点1に係る発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について 引用例2記載事項にあるように,基板の製造工程を通して基板を取り付けておく表面処理用治具において,電極パターンに供給する電圧を制御する制御回路を備えることは周知の技術である。 引用発明と引用例2記載事項とは,どちらも,基板の処理システム内で使用するように適合された基板キャリアに関するものであり,引用発明の電極と引用例2記載事項の電極パターンとは,基板を吸着するための電極と作用・機能が共通するものであるから,引用発明においても,引用例2記載事項の電極パターンに供給する電圧を制御する制御回路を備えることにより,上記相違点2に係る発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 ウ 相違点3について 駆動力の伝達手段として,例えば,回転するローラとそれに接続されるレールのような構成は周知技術であると認められる。 してみると,駆動力の伝達手段として,引用発明の歯車とそれに噛み合う溝形成部に変え,周知のレールを採用することは、当業者が容易に相当し得たことである。 ここで,レールを支持ベースの側から伸びると特定することも,駆動源の位置や接続手法等を考慮して,当業者が実施に当たり適宜なし得る設計的事項にすぎない。 (5)小括 上記で検討したごとく,相違点1-3に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明及び当該技術分野の周知技術の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 したがって,本件補正発明は,上記引用発明及び引用例2に記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 補正却下の決定のむすび よって,上記3-1(3),3-2(5)より,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和 1年10月23日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成31年 1月31日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-18に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,上記「第2 令和 1年10月23日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「(1) 本件補正について(補正の内容)」の「(2)本件補正前の特許請求の範囲」に,補正前の請求項1として記載されたとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,以下のとおりである。 (1)この出願の請求項1に係る発明は,下記の引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて,その本願優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用例1: 特開2007- 96056号公報 引用例2: 特開2007-157886号公報 3 引用例に記載されている技術的事項及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1,2は,前記「第2 令和 1年10月23日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「3-2 特許法第29条第2項に規定する要件についての検討」の「(2)引用例」に引用例1,2として記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は,前記「第2 令和 1年10月23日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「3-2 特許法第29条第2項に規定する要件についての検討」で検討した本件補正発明に関する限定事項を削除したものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が,前記「第2 令和 1年10月23日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「3-2 特許法第29条第2項に規定する要件についての検討」の「(2)引用例」-「(4)当審の判断」に記載したとおり,引用発明及び引用例2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,上記限定事項を省いた本願発明も同様の理由により,引用発明及び引用例2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-07-22 |
結審通知日 | 2020-07-28 |
審決日 | 2020-08-12 |
出願番号 | 特願2016-515515(P2016-515515) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 儀同 孝信、馬場 慎 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
小田 浩 ▲吉▼澤 雅博 |
発明の名称 | 集積静電チャックを備えた基板キャリア |
代理人 | 安齋 嘉章 |