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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1369770
審判番号 不服2020-819  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-22 
確定日 2021-01-04 
事件の表示 特願2018-203501「電力変換装置」拒絶査定不服審判事件〔令和2年5月7日出願公開、特開2020-72516〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年10月30日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年 9月10日付け:拒絶理由通知書
同年11月 5日 :意見書の提出
同年11月20日付け:拒絶査定
令和2年 1月22日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 3月26日 :上申書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?21に係る発明は、令和2年1月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?21に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に記載係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
なお、各構成の符号(A)?(C)は、説明のために当審で付したものであり、以下、構成A?構成Cと称する。

〔本願発明〕
【請求項1】
(A)少なくとも2つの充放電可能な直流電源に接続され、直流を交流に変換する、あるいは交流を直流に変換する、電力変換回路と、
(B)前記直流電源のうちの少なくとも1つである第1の直流電源と前記電力変換回路との間に接続され、前記第1の直流電源から前記電力変換回路へ流れる電流の値が第1の電流制限値を超えないように電流制限を行う、第1の電流制限部と、
前記電力変換回路と前記第1の直流電源との間に接続され、前記電力変換回路から前記第1の直流電源へ流れる電流の値が第2の電流制限値を超えないように電流制限を行う、第2の電流制限部と
を備えた、
(C)電力変換装置。

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に係るものは次のとおりである。

理由1(新規性):本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2(進歩性):本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:国際公開第2016/147614号
引用文献2:米国特許出願公開第2017/0054303号明細書

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献の記載事項
上記引用文献1(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。
なお、記載事項の下線は、当審で付したものである。

「[0013] <第1実施形態>
本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態にかかる蓄電池装置2Aのブロック図である。この蓄電池装置2Aは、電池パック11(11a,11b)、計測部12(12a,12b)、容量管理部13(13a,13b)、接続スイッチ14(14a,14b)、中継駆動部15、電圧変換部16、制御部17を備える。そして、蓄電池装置2Aは、外部に対して電池パック11から電力供給し、また外部から電力を受けて電池パック11を充電する。」

「[0017] 電池パック11は、複数の蓄電池がモジュール化して形成されている。そして、複数の電池パック11は並列接続され、これが電圧変換部16と並列接続されている。」

「[0023] 接続スイッチ14(14a,14b)は、一端が電池パック11の端子に接続され、他端が電圧変換部16の端子に接続されて、中継駆動部15からの駆動信号に基づきON・OFF動作することで、電池パック11と電圧変換部16との接続状態を制御する。このような接続スイッチ14として、トランジスタ等の半導体スイッチやリレー等の利用が可能である。」

「[0025] 電池パック11からの直流電力を外部に供給するような場合(電池パック11を放電させる場合)には、交流電力に変換して供給する必要がある。また、電池パック11を充電する場合には、供給された交流電力を直流電力に変換する必要がある。そして、いずれの場合も電圧値や電流値を制御する必要がある。

[0026] そこで、電圧変換部16は、かかる機能を備えるパワーコンディショナーシステム等から構成されている。」

「[0071] <第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を説明する。なお、第1実施形態と同一構成に関しては、同一符号を用いて説明を適宜省略する。」

「[0075] 図8は、このような観点から構成された本実施形態にかかる蓄電池装置2Bのブロック図である。この蓄電池装置2Bには、図1に示す蓄電池装置2Aに対して、電流制限器19(19a,19b)、及び、電流制限器19に直列に接続された制限スイッチ20(20a,20b)が追加されている。なお、電流制限器19及び制限スイッチ20は、電流制限部を構成している。」

「[0077] 電流制限器19と制限スイッチ20とは直列に接続され、この接続体が接続スイッチ14と並列に接続されている。」

「[0090] <第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態を説明する。なお、第1,2実施形態と同一構成に関しては、同一符号を用いて説明を適宜省略する。」

「[0092] 図12は、本実施形態にかかる蓄電池装置2Cのブロック図である。図8に示す蓄電池装置2Bの電流制限器は固定抵抗であった。これに対し、本実施形態にかかるこの蓄電池装置2Cの電流制限器は、定電流回路で構成されている。即ち、本実施形態における電流制限部は、制限スイッチ20(20a,20b)と定電流回路21(21a,21b)とにより構成されている。

[0093] 定電流回路21(21a,21b)は、所定の電流値(最大許容電流)未満の電流に対しては設定された電流を流すように機能するが、この最大許容電流以上の電流に対しては、当該最大許容電流に制限する機能を持つ。

[0094] このような構成の蓄電池装置2Cの動作を説明する。なお、以下の説明では、充放電は同じように制御されるので、充電を例に説明する。

[0095] 図13は、この動作手順を示すフローチャートである。図14Aは接続スイッチ14aの動作状態を示した図、図14Bは容量補正対象側の接続スイッチ14bの動作状態を示す図、図14Cは制限スイッチ20aの動作状態を示す図、図14Dは容量補正対象側の制限スイッチ20bの動作状態を示す図である。 なお、制限スイッチ20は、中継駆動部15により駆動される。

[0096] また、図15は電池パック11bの充電電流を示した図である。図15において、実線は充放電要求された充電電流であり、点線は電池パック11bの充電電流を示している。

[0097] ステップSD1: 制御部17は受給電要求に従い電池パック11a、11bの充電を指示する制御信号を出力する。中継駆動部15は制御信号に含まれる充放電指令に基づき、接続スイッチ14a,14bをON動作させ、制限スイッチ20a,20bをOFF動作させる。これにより、電池パック11a、11bの充電が開始される(図14A?図14D及び図15の時刻t0)。このとき各電池パック11a,11bには、充電電流Ia、Ibが流れていたとする。

[0098] ステップSD2,SD3: このような充電を行っている時に、容量チェック判断基準が満たされると、制御部17は電池パック11bの容量補正処理を行うために容量補正指令を含む制御信号を出力する。中継駆動部15は、容量補正指令を受けると、補正対象である電池パック11b側の接続スイッチ14bをOFF状態にする。図15ではこの状態切換を時刻t1で行っている。

[0099] ステップSD4,SD5: これにより、電池パック11bは、電圧変換部16から完全に切り離されて、当該電池パック11bの端子電圧は開放端子電圧に収束する。なお、電池パック11aにはIa+Ibの充電電流が流れる。このような状態で、容量管理部は補正待機時間の経過を待ち、当該時間後に容量補正を行う。

[0100] ステップSD6: 次に中継駆動部15は、制限スイッチ20bをON状態にする。これにより定電流回路21bが電池パック11bの充電電流を最大許容電流とする。なお、このときの最大許容電流は、電池パック11aに流れている電流値と同じ電流値とすることができる。

[0101] このことは、電圧変換部16から見た接続点K(図12参照)の電位が同じ電位と見なせることを意味する。従って、電池パック11a,11bの端子電圧が例え違っていても、電池パック11a,11b間に突入電流が流れるのを防止できる。」

「[図1]



「[図8]



「[図12]



2 引用文献に記載の技術的事項
上記1の記載事項から、引用文献には、以下(1)及び(2)の技術的事項が記載されていると認められる。

(1)上記1の「<第1実施形態>」についての記載事項に基づけば、第1実施形態の蓄電池装置2Aは次のものであると認められる。

「電池パック11(11a,11b)、計測部12(12a,12b)、容量管理部13(13a,13b)、接続スイッチ14(14a,14b)、中継駆動部15、電圧変換部16、制御部17を備える蓄電池装置2Aであって、
蓄電池装置2Aは、外部に対して電池パック11から電力供給し、また外部から電力を受けて電池パック11を充電し、
複数の電池パック11は並列接続され、これが電圧変換部16と並列接続されており、
接続スイッチ14(14a,14b)は、一端が電池パック11の端子に接続され、他端が電圧変換部16の端子に接続されて、中継駆動部15からの駆動信号に基づきON・OFF動作することで、電池パック11と電圧変換部16との接続状態を制御し、
電池パック11からの直流電力を外部に供給するような場合(電池パック11を放電させる場合)には、交流電力に変換して供給する必要があり、また、電池パック11を充電する場合には、供給された交流電力を直流電力に変換する必要があり、そして、いずれの場合も電圧値や電流値を制御する必要があり、そこで、電圧変換部16は、かかる機能を備えるパワーコンディショナーシステム等から構成されている
蓄電池装置2A。」

次に、第2実施形態について、上記1の段落0071の記載事項によれば、「第1実施形態と同一構成に関しては、同一符号を用いて説明を適宜省略する」とされており、前記特定した蓄電池装置2Aの各構成は、全て第2実施形態の図8(上記1)において図1(上記1)と同一の符号が付されて存在するから、第2実施形態の蓄電池装置2Bにおいても備わっているものである。そして、上記1の段落0071の記載事項によれば、「この蓄電池装置2Bには、図1に示す蓄電池装置2Aに対して、電流制限器19(19a,19b)、及び、電流制限器19に直列に接続された制限スイッチ20(20a,20b)が追加されている」とされているから、第2実施形態の蓄電池装置2Bは次のものであると認められる。

「電池パック11(11a,11b)、計測部12(12a,12b)、容量管理部13(13a,13b)、接続スイッチ14(14a,14b)、中継駆動部15、電圧変換部16、制御部17を備える蓄電池装置2Bであって、
蓄電池装置2Bは、外部に対して電池パック11から電力供給し、また外部から電力を受けて電池パック11を充電し、
複数の電池パック11は並列接続され、これが電圧変換部16と並列接続されており、
接続スイッチ14(14a,14b)は、一端が電池パック11の端子に接続され、他端が電圧変換部16の端子に接続されて、中継駆動部15からの駆動信号に基づきON・OFF動作することで、電池パック11と電圧変換部16との接続状態を制御し、
電池パック11からの直流電力を外部に供給するような場合(電池パック11を放電させる場合)には、交流電力に変換して供給する必要があり、また、電池パック11を充電する場合には、供給された交流電力を直流電力に変換する必要があり、そして、いずれの場合も電圧値や電流値を制御する必要があり、そこで、電圧変換部16は、かかる機能を備えるパワーコンディショナーシステム等から構成されており、
電流制限器19及び制限スイッチ20(20a,20b)は、電流制限部を構成しており、
電流制限器19と制限スイッチ20(20a,20b)とは直列に接続され、この接続体が接続スイッチ14と並列に接続されている
蓄電池装置2B。」

さらに、第3実施形態について、上記1の段落0090の記載事項によれば、「第1,2実施形態と同一構成に関しては、同一符号を用いて説明を適宜省略する」とされており、前記特定した蓄電池装置2Aの各構成、及び、蓄電池装置2Bの「制限スイッチ20(20a,20b)」は、全て第3実施形態の図12(上記1)において図1及び図8と同一の符号が付されて存在するから、第3実施形態の蓄電池装置2Cにおいても備わっているものである。そして、上記1の段落0092の記載事項によれば、「本実施形態における電流制限部は、制限スイッチ20(20a,20b)と定電流回路21(21a,21b)とにより構成されている」とされているから、第3実施形態の蓄電池装置2Cは、第2実施形態の蓄電池装置2Bの電流制限部における「電流制限器19」が(上記1の段落0093に記載の機能を持つ)「定電流回路21(21a,21b)」に置き換えられた次のものであると認められる。

「電池パック11(11a,11b)、計測部12(12a,12b)、容量管理部13(13a,13b)、接続スイッチ14(14a,14b)、中継駆動部15、電圧変換部16、制御部17を備える蓄電池装置2Cであって、
蓄電池装置2Cは、外部に対して電池パック11から電力供給し、また外部から電力を受けて電池パック11を充電し、
複数の電池パック11は並列接続され、これが電圧変換部16と並列接続されており、
接続スイッチ14(14a,14b)は、一端が電池パック11の端子に接続され、他端が電圧変換部16の端子に接続されて、中継駆動部15からの駆動信号に基づきON・OFF動作することで、電池パック11と電圧変換部16との接続状態を制御し、
電池パック11からの直流電力を外部に供給するような場合(電池パック11を放電させる場合)には、交流電力に変換して供給する必要があり、また、電池パック11を充電する場合には、供給された交流電力を直流電力に変換する必要があり、そして、いずれの場合も電圧値や電流値を制御する必要があり、そこで、電圧変換部16は、かかる機能を備えるパワーコンディショナーシステム等から構成されており、
定電流回路21(21a,21b)及び制限スイッチ20(20a,20b)は、電流制限部を構成しており、
定電流回路21(21a,21b)と制限スイッチ20(20a,20b)とは直列に接続され、この接続体が接続スイッチ14と並列に接続されており、
定電流回路21(21a,21b)は、所定の電流値(最大許容電流)未満の電流に対しては設定された電流を流すように機能するが、この最大許容電流以上の電流に対しては、当該最大許容電流に制限する機能を持つ
蓄電池装置2C。」

(2)段落0094以降の記載事項によれば、第3実施形態の蓄電池装置2Cの動作は、次のものであると認められる。

「このような構成の蓄電池装置2Cの動作は、
充放電は同じように制御され、充電の例では、
中継駆動部15は、容量補正指令を受けると、補正対象である電池パック11b側の接続スイッチ14bをOFF状態にし、
容量管理部は容量補正を行い、
次に中継駆動部15は、制限スイッチ20bをON状態にすることにより定電流回路21bが電池パック11bの充電電流を最大許容電流とし、このときの最大許容電流は、電池パック11aに流れている電流値と同じ電流値とし、
電池パック11a,11bの端子電圧が例え違っていても、電池パック11a,11b間に突入電流が流れるのを防止できるものである。」

3 引用発明
上記2から、引用文献には、第3実施形態として次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、引用発明の各構成の符号(a)?(i5)は、説明のために当審で付したものであり、以下、構成a?構成i5と称する。

(a)電池パック11(11a,11b)、計測部12(12a,12b)、容量管理部13(13a,13b)、接続スイッチ14(14a,14b)、中継駆動部15、電圧変換部16、制御部17を備える蓄電池装置2Cであって、
(b)蓄電池装置2Cは、外部に対して電池パック11から電力供給し、また外部から電力を受けて電池パック11を充電し、
(c)複数の電池パック11は並列接続され、これが電圧変換部16と並列接続されており、
(d)接続スイッチ14(14a,14b)は、一端が電池パック11の端子に接続され、他端が電圧変換部16の端子に接続されて、中継駆動部15からの駆動信号に基づきON・OFF動作することで、電池パック11と電圧変換部16との接続状態を制御し、
(e)電池パック11からの直流電力を外部に供給するような場合(電池パック11を放電させる場合)には、交流電力に変換して供給する必要があり、また、電池パック11を充電する場合には、供給された交流電力を直流電力に変換する必要があり、そして、いずれの場合も電圧値や電流値を制御する必要があり、そこで、電圧変換部16は、かかる機能を備えるパワーコンディショナーシステム等から構成されており、
(f)定電流回路21(21a,21b)及び制限スイッチ20(20a,20b)は、電流制限部を構成しており、
(g)定電流回路21(21a,21b)と制限スイッチ20(20a,20b)とは直列に接続され、この接続体が接続スイッチ14と並列に接続されており、
(h)定電流回路21(21a,21b)は、所定の電流値(最大許容電流)未満の電流に対しては設定された電流を流すように機能するが、この最大許容電流以上の電流に対しては、当該最大許容電流に制限する機能を持ち、

(i)このような構成の装置の動作は、
(i1)充放電は同じように制御され、充電の例では、
(i2)中継駆動部15は、容量補正指令を受けると、補正対象である電池パック11b側の接続スイッチ14bをOFF状態にし、
(i3)容量管理部は容量補正を行い、
(i4)次に中継駆動部15は、制限スイッチ20bをON状態にすることにより定電流回路21bが電池パック11bの充電電流を最大許容電流とし、このときの最大許容電流は、電池パック11aに流れている電流値と同じ電流値とし、
(i5)電池パック11a,11bの端子電圧が例え違っていても、電池パック11a,11b間に突入電流が流れるのを防止できるものである

(a)蓄電池装置2C。

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

1 構成Aについて
構成eの「電池パック11」は、直流電力を外部に供給するものであるから、構成Aの「直流電源」に相当する。そして、構成aの「電圧変換部16」は、構成cにより、並列接続された複数の電池パック11と並列接続されているから、構成Aの「少なくとも2つの充放電可能な直流電源に接続され」るものといえる。
さらに、構成aの「電圧変換部16」は、構成eにより、電池パック11からの直流電力を外部に供給するような場合(電池パック11を放電させる場合)には、交流電力に変換して供給し、また、電池パック11を充電する場合には、供給された交流電力を直流電力に変換し、いずれの場合も電圧値や電流値を制御する機能を備えるパワーコンディショナーシステム等から構成されているから、構成Aの「直流を交流に変換する、あるいは交流を直流に変換する、電力変換回路」に相当する。
以上から、本願発明と引用発明は、構成Aを備えた点で一致する。

2 構成Bについて
構成gによれば、定電流回路21(21a,21b)と制限スイッチ20(20a,20b)とが直列に接続された接続体は、接続スイッチ14と並列に接続されており、構成dによれば、接続スイッチ14は、「一端が電池パック11の端子に接続され、他端が電圧変換部16の端子に接続され」ているから、上記接続体は、電池パック11と電圧変換部16との間に接続されているものである。ここで、前記接続体における定電流回路21(21a,21b)は、構成hによれば、電流を制限する機能を持つから、「前記直流電源のうちの少なくとも1つである」「直流電源と前記電力変換回路との間に接続され」、「前記電力変換回路と前記」「直流電源との間に接続され」た「電流制限部」である点で構成Bと共通するといえる。

そして、構成i1の充電において、構成i4により、定電流回路21bが電池パック11bの充電電流を最大許容電流とし、このときの最大許容電流は、電池パック11aに流れている電流値と同じ電流値とされるから、構成i4の「電池パック11b」、及び、充電時に電池パック11aに流れている電流値と同じ電流値とされる「最大許容電流」は、構成Bの「第1の直流電源」、及び、「前記電力変換回路から第1の直流電源へ流れる電流の値」についての「第2の電流制限値」にそれぞれ相当する。すると、構成i4の「充電電流を最大許容電流」とすることは、構成Bの「前記電力変換回路から前記第1の直流電源へ流れる電流の値が第2の電流制限値を超えないように電流制限を行う」ことに相当する。

また、構成i1の、充放電は同じように制御されることに基づけば、放電時の構成i4は、定電流回路21bが電池パック11bの放電電流を最大許容電流とし、このときの最大許容電流は、電池パック11aに流れている電流値と同じ電流値とされるから、構成i4の、放電時に電池パック11aに流れている電流値と同じ電流値とされる「最大許容電流」は、構成Bの「前記第1の直流電源から前記電力変換回路へ流れる電流の値」についての「第1の電流制限値」に相当する。すると、構成i4の「充電電流を最大許容電流」とすることは、構成Bの「前記第1の直流電源から前記電力変換回路へ流れる電流の値が第1の電流制限値を超えないように電流制限を行う」ことに相当する。

ここで、構成i4の「定電流回路21b」は、「電池パック11b」に接続されているから、「前記直流電源のうちの少なくとも1つである第1の直流電源と前記電力変換回路との間に接続され」、「前記電力変換回路と前記第1の直流電源との間に接続され」た「電流制限部」である点で、構成Bと共通する。

以上から、引用発明の「定電流回路21b」と、構成Bとは、「前記直流電源のうちの少なくとも1つである第1の直流電源と前記電力変換回路との間に接続され、前記第1の直流電源から前記電力変換回路へ流れる電流の値が第1の電流制限値を超えないように電流制限を行い、前記電力変換回路と第1の直流電源との間に接続され、前記電力変換回路から前記第1の直流電源へ流れる電流の値が第2の電流制限値を超えないように電流制限を行う、電流制限部」である点で共通する。

しかしながら、前記「電流制限部」について、本願発明は、前記第1の直流電源から前記電力変換回路へ流れる電流について電流制限を行う「第1の電流制限部」と、前記電力変換回路から前記第1の直流電源へ流れる電流について電流制限を行う「第2の電流制限部」とを備えるのに対し、引用発明は、定電流回路21bを備えるものの、そのような特定がされていない点で、両者は相違する。

3 構成Cについて
引用発明の「蓄電池装置2C」は、上記1のとおり、構成eにおいて「電力変換回路」に相当する構成を備える装置であるから、本願発明と引用発明は、構成Cである点で一致する。

4 一致点、相違点について
以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

〔一致点〕
(A)少なくとも2つの充放電可能な直流電源に接続され、直流を交流に変換する、あるいは交流を直流に変換する、電力変換回路と、
(B’)前記直流電源のうちの少なくとも1つである第1の直流電源と前記電力変換回路との間に接続され、前記第1の直流電源から前記電力変換回路へ流れる電流の値が第1の電流制限値を超えないように電流制限を行い、
前記電力変換回路と前記第1の直流電源との間に接続され、前記電力変換回路から前記第1の直流電源へ流れる電流の値が第2の電流制限値を超えないように電流制限を行う、電流制限部と
を備えた、
(C)電力変換装置。

〔相違点〕
「電流制限部」について、本願発明は、前記第1の直流電源から前記電力変換回路へ流れる電流について電流制限を行う「第1の電流制限部」と、前記電力変換回路から前記第1の直流電源へ流れる電流について電流制限を行う「第2の電流制限部」とを備えるのに対し、引用発明は、定電流回路21bを備えるものの、そのような特定がされていない点。

第6 判断
上記相違点について、以下に検討する。

引用発明の定電流回路21bは、充放電の各状況に応じて双方向に流れる電流を所定値に制限する機能を備えるものである。引用発明では当該定電流回路21bの具体的な構成が特定されていないところ、引用発明を具体的な回路で実現しようとする場合に、当該定電流回路21bとして前記機能を持つ周知の回路により実現することは、当業者であれば当然に考慮することである。
ここで、電気分野において、双方向に流れる電流を所定値に制限する機能を持つ回路として、寄生ダイオードの順方向を互いに逆方向に直列接続した2つのMOSFETの直列回路は、当業者に周知(例えば、特開2015-50813号公報の段落0031、0032、0039、0040、図1等を参照されたい。)のものである。
したがって、引用発明において、定電流回路21bの構成として上記周知の2つのMOSFETの直列回路の構成を採ること、すなわち上記相違点に係る本願発明の構成を採ることは、当業者が適宜設計する事項にすぎないものといえる。

そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

なお、請求人は、審判請求書の「<引用文献1に対する新規性進歩性の説明>」において、以下の主張を行っている。

(主張1)
「引用文献1は、電池パック11毎に接続されている接続スイッチ14がOFFとなった状態で流れる電流を抑制するために、接続スイッチ14と並列に接続された電流制限器(定電流回路21)を備える構成を必須としており、本願発明とは、目的、構成が全く異なるものである。
さらに、補足説明すると、引用文献1における第1の電流制限部および第2の電流制限部は、同じ役割を果たすものとして複数設けられているに過ぎないものである。」

(主張2)
「本願発明に係る「第1の電流制限部」は、「第1の直流電源から電力変換回路へ流れる電流の値が第1の電流制限値を超えないように電流制限を行う」ことができ、「第2の電流制限部」は、「電力変換回路から第1の直流電源へ流れる電流の値が第2の電流制限値を超えないように電流制限を行う」ことができるものである。換言すると、本願発明に係る「第1の電流制限部」と「第2の電流制限部」とは、電流方向が同一でない電流に対して、個別の値として電流制限をかけられるものであり、引用文献1の「定電流回路21」と、本願発明の第1の電流制限部/第2の電流制限部とが何ら相違しない、とする審査官殿の見解は、本願発明と引用文献1に係る発明との異同を誤って解釈されているものである。」

(主張3)
「引用文献1は、「電池パックと負荷との接続を制御する接続スイッチ」が「電池パック毎に設けられ」、さらに、「電池パックの開放端子電圧を計測する計測部」を設けることを必須の要件としている。これに対して、本願発明は、引用文献1とは目的が全く異なるため、「接続スイッチ」および「計測部」が不要な構成を有するものである。すなわち、本願発明は、引用文献1と同様の技術思想を有する上位概念化された構成を備えるものではなく、引用文献1に係る発明とは、技術思想、目的、構成が全く異なるものであり、構成上差異が出ているとは認められない、とする審査官殿のご見解は、本願発明と引用文献1に係る発明との異同を誤って解釈されているものである。」

さらに、請求人は、令和2年3月26日に提出された上申書において、以下の主張を行っている。

(主張4)
「参考文献1(特開2015-050813号公報)は、前置審査官殿も認められているように、各直流電源に対して各々放電電流制限部(第1の電流制限部に相当)及び充電電流制限部(第2の電流制限部に相当
)を備えるものです。
これに対して、本願発明は、一例として、出願当初の図1に示したように、直流電源200と電力変換回路6との間に第1の電流制限部4および第2の電流制限部5が設けられており、直流電源100と電力変換器6との間には、何れの電流制限器も設けられていません。このような技術的特徴を表現するために、独立請求項1では、「前記直流電源のうちの少なくとも1つである第1の直流電源と前記電力変換回路との間に接続され、前記第1の直流電源から前記電力変換回路へ流れる電流の値が第1の電流制限値を超えないように電流制限を行う、第1の電流制限部」および「前記電力変換回路と前記第1の直流電源との間に接続され、前記電力変換回路から前記第1の直流電源へ流れる電流の値が第2の電流制限値を超えないように電流制限を行う、第2の電流制限部」と記載しています。
すなわち、請求項1における「前記直流電源のうちの少なくとも1つである第1の直流電源」という表現は、参考文献1に記載されたような「各直流電源に対して各々放電電流制限部(第1の電流制限部に相当)及び充電電流制限部(第2の電流制限部に相当)を備える」構成を必須の要件とはせず、1つの直流電源と電力変換回路との間に双方向の電流を制限できる回路を挿入すれば目的を達成できることを意図したものです。
さらに、参考文献1は、要約書の記載からも明らかなように、「セルが複数並列に接続された二次電池の保護機能を強化できる、電池保護回路を提供する」ものであり、段落0036等の記載からも明らかなように、「両セル間で過剰な充放電電流が流れることを防止」するための発明に過ぎません。すなわち、参考文献1に係る発明は、「「各直流電源に対して各々放電電流制限部(第1の電流制限部に相当)及び充電電流制限部(第2の電流制限部に相当)を備える」構成が必須であるとともに、電力変換装置とは全く異なる発明であり、本願発明のように、「電源喪失への耐性を向上させる、電力変換装置を得る」という技術思想までは何ら有していません。
従って、当業者といえども、引用文献1、2に加えて、参考文献1を参酌したとしても、本願発明を容易に想到することはできません。」

しかしながら、上記主張1及び主張3については、 請求項1の記載により特定される本願発明は、上記第5において対比したとおり、引用発明との間に上記第5の4で示した〔相違点〕以外に相違する点は認められず、かつ、第6において判断したとおり、当該〔相違点〕は周知技術に基づき当業者が適宜設計する事項にすぎないものといえるから、当該主張を採用することはできない。

また、上記主張2については、上記第5において対比したとおり、上記引用発明は、充電時に電池パック11aに流れている電流値と同じ電流値とされる「最大許容電流」と、放電時に電池パック11aに流れている電流値と同じ電流値とされる「最大許容電流」とを有するものであり、これらは、個別の値にできない特段の事情は認められないから、本願発明の「第1の電流制限値」及び「第2の電流制限値」と何ら相違するものではない。したがって、当該主張を採用することはできない。

さらに、上記主張4については、特開2015-50813号公報は、上記第6のとおり、充電時と放電時の両方向の電流について電流制限を行う際に、電流制限の構成を各方向についてそれぞれ設けるという周知技術を示すために用いられたものであり、引用発明において当該周知技術を考慮する際に、請求人の主張する、放電電流制限部及び充電電流制限部を「各直流電源に対して各々」備えるという観点や、「電源喪失への耐性を向上させる電力変換装置を得る」との技術思想がないという観点は必要とされないから、当該主張を採用することはできない。

よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-10-23 
結審通知日 2020-10-27 
審決日 2020-11-10 
出願番号 特願2018-203501(P2018-203501)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤穂 嘉紀  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 清水 正一
樫本 剛
発明の名称 電力変換装置  
代理人 吉田 潤一郎  
代理人 上田 俊一  
代理人 大宅 一宏  
代理人 梶並 順  
代理人 曾我 道治  
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