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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01R |
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管理番号 | 1369774 |
審判番号 | 不服2020-2272 |
総通号数 | 254 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-02-19 |
確定日 | 2021-01-04 |
事件の表示 | 特願2016-136715号「検査治具」拒絶査定不服審判事件〔平成30年1月18日出願公開、特開2018-9796号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年7月11日の特許出願であって、令和元年8月28日付けの拒絶理由通知に対し、同年9月30日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年12月25日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ(原査定の謄本の送達日:令和2年1月7日)、これに対して、令和2年2月19日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲及び明細書についての補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 本件補正の概要 本件補正は、以下の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。 (1)本件補正前 「【請求項1】 複数のソケットを備えた中板と、 前記複数のソケットの一部を遮蔽するガイド板と、 前記ガイド板が遮蔽しないソケットに取り付けられた取付け部と、 前記取付け部に固定されたプローブと、 を備えることを特徴とする検査治具。」 (2)本件補正後 「【請求項1】 複数のソケットを備えた中板と、 前記複数のソケットの一部を遮蔽するガイド板と、 前記ガイド板が遮蔽しないソケットに取り付けられた取付け部と、 前記取付け部に固定されたプローブと、 を備え、 前記ガイド板には前記ソケットと重なる位置に、前記ガイド板を貫通する開口が形成され、 前記開口は、前記開口を通って前記取付け部を前記ソケットに取り付け可能なように形成されていることを特徴とする検査治具。」 2 本件補正についての当審の判断 本件補正は、請求項1において、「前記ガイド板には前記ソケットと重なる位置に、前記ガイド板を貫通する開口が形成され、前記開口は、前記開口を通って前記取付け部を前記ソケットに取り付け可能なように形成されていること」という構成を追加することにより、「ガイド板」の構成を限定することを含むものである。 そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、以下では、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、について検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記「1 本件補正の概要」の「(2)本件補正後」において示した次に特定されるとおりのものである。 符号A?Gについては、構成を分説するため当審が付した。 「【請求項1】 A 複数のソケットを備えた中板と、 B 前記複数のソケットの一部を遮蔽するガイド板と、 C 前記ガイド板が遮蔽しないソケットに取り付けられた取付け部と、 D 前記取付け部に固定されたプローブと、 を備え、 E 前記ガイド板には前記ソケットと重なる位置に、前記ガイド板を貫通する開口が形成され、 F 前記開口は、前記開口を通って前記取付け部を前記ソケットに取り付け可能なように形成されていること G を特徴とする検査治具。」 (2)引用文献 ア 引用文献1 原査定の拒絶の理由において引用された実願昭59-69096号のマイクロフィルム(実開昭60-181674号 昭和60年12月2日発行。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 第1頁第15行?第5頁第17行 「(技術分野) 本考案は,電子部品を実装したプリント基板の検査装置あるいは調整装置に用いるピンボードの改良に関するものである。 (従来技術とその問題点) 電子部品を実装したプリント基板の性能の確認や調整を行うための装置においては,基板への信号の入出力を行う部分に,従来からいわゆるピンボードが用いられて来た。このピンボードは,固定ボードの上に多数のコンタクトピンを配置したもので,各コンタクトピンは,対象となるプリン卜基板のパターンに合わせて配列されている。 このピンボードによって,基板回路上の所定の位置に入力信号を印加すると共に,必要な箇所から信号を出力し,基板各部分の性能のチェックや調整作業に利用する。 しかしながら,従来のピンボードは,コンタクトピンが固定配置されているため,対象基板毎に準備する必要があり,また,同じ基板であっても設計変更が行われるとピン位置の変更が必要であり,場合によっては再製作を必要としていた。 このように,従来のピンボードは.特に多品種少量生産現場や製品のライフサイクルの短い分野では,取扱い上の不便さが極めて大きく,対象基板の機種変更や設計変更に容易に対応できるピンボードの開発が要望されていた。 (目的) 本考案は,このような従来のピンボードの問題点を解決し,対象基板の設計的変化に容易に対応が可能なピンポードの構造方式を提供する事を目的とする。さらに本考案の他の目的は,多品種中少量生産工程においても,費用発生の低減が可能なピンボードの取扱い方式を提供することにある。 (実施例) 前記の目的を達成するための本考案の基本原理を第1図に示す。本考案によるピンボード10は,その一つの構成方法として基部11,回路ボード12,ソケットボード13,メッシュボード14およびプラグ15を組み合わせた形をとる。このうちメッシュボードは一定の格子間隔,たとえば2.5mmの間隔で2次元的に配列された挿入部17を有し,この挿部にプラグ15が自由に挿入できるようになっている。また,プラグ15は,コンタクトピン18が結合されると同時にその底部にコンタクタ19があり,プラグを挿入部17に挿入した時,このコンタクタ19がソケット16と電気的に結合するようになっている。 一方,プラグには,15-aのように1個の挿入部に対応するシングルタイプと,15-bのように複数個の挿入部に対応するマルチタイプとがある。また,プラグに結合されるコンタクトピンは,基板の条件に応じて,たとえば18-aのような単針タイプや18-bのような複針タイプが選択して用いられるようになっている。 さらに,プラグ上のコンタクトピンの位置として,図示してあるように,プラグの中央位置と,それ以外の位置を取るものに分けられている。特に,前記のマルチタイプのプラグでは,プラグに対するコンタクトピンの位置がかなり自由に設定できるようになっている。 以上に述べた本考案の基本原理から,以下の特徴が明らかである。 (1)対象基板の機種変更や設計変更があった場合,プラグの配列を変更するだけで対処が可能。 (2)メッシュをプリント基板の設計に一般的に用いられる定格子間隔に設定しておけば,回路パターン図段階でプラグの配列を決定でき,速応性が高い。 (3)回路設計の都合で基板上のチェックポイントが定格子からずれるような場合は,プラグの中央からずれた位置にコンタクピンが結合されたプラグを使用すればよい。またチェックポイントが,特殊な配列となる場合はマルチタイプのプラグを使用する事によって対処できる。 以上に述べた内容はあくまでも本考案の基本原理であり,種々の変形や省略が場合によって可能である。たとえば,回路ボードとソケットボードは統一できる場合があり、各ボードは必ずしもい一体構造である必要はない。また,プラグの断面形状は,第1図では正方形で示したが,他の形状も取り得る。」 「第1図 ![]() 」 上記記載内容及び図示内容を総合すれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「電子部品を実装したプリント基板の検査装置に用いるピンボード10であって、 基部11、回路ボード12、ソケットボード13、メッシュボード14及びプラグ15を組み合わせた形をとり、 前記メッシュボード14は一定の格子間隔で2次元的に配列された挿入部17を有し、この挿入部17に前記プラグ15が自由に挿入できるようになっており、 前記プラグ15は、コンタクトピン18が結合されると同時にその底部にコンタクタ19があり、前記プラグ15を前記挿入部17に挿入した時、このコンタクタ19がソケット16と電気的に結合するようになっている、 ピンボード10。」 イ 引用文献2 原査定の拒絶の理由において引用された特開2016-70863号公報(平成28年5月9日発行。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 「【0047】 図4は、本実施の形態1にかかるプローブユニットの要部の構成を示す部分断面図であって、図2におけるプローブの配置とは異なる配置の一例を示す図である。今回使用する半導体集積回路の電極配置が前回使用した半導体集積回路(例えば半導体集積回路100)の電極配置と異なる場合、第1絶縁プレート50、第2絶縁プレート60および絶縁ブロック70を交換してなるプローブユニット1aにより、対応可能である。 【0048】 図4に示すプローブホルダ4aは、上述した金属ブロック40と、樹脂、マシナブルセラミック、シリコンなどの絶縁性材料を用いて形成され、第1部材41の上面に配置される略板状の第1絶縁プレート50aと、樹脂、マシナブルセラミック、シリコンなどの絶縁性材料を用いて形成され、第2部材42の下面に配置される略板状の第2絶縁プレート60aと、樹脂、マシナブルセラミック、シリコンなどの絶縁性材料を用いて形成され、第1部材41の下面側で収容されて配置される絶縁ブロック70aと、を有する。 【0049】 第1絶縁プレート50aには、グランド用プローブ2の先端部21aを挿通可能な第1孔51aと、信号用プローブ3の先端部31aを挿通可能な第2孔52aと、が形成されている。第2孔52aの開口の径は、先端部31aの径以上であって、先端部21aまたはフランジ部31cの径より小さければ適用可能である。 【0050】 第2絶縁プレート60aには、グランド用プローブ2の先端部22aを挿通可能な第1孔61aと、信号用プローブ3の先端部32aを挿通可能な第2孔62aと、が形成されている。第2孔62aの開口の径は、先端部32aの径以上であって、先端部22aまたはフランジ部32bの径より小さければ適用可能である。 【0051】 絶縁ブロック70aは、収容部45に嵌合可能な略直方体状をなす。絶縁ブロック70aには、グランド用プローブ2のコイルばね23を挿通可能な第1孔71aと、信号用プローブ3のコイルばね33を挿通可能な第2孔72aと、が形成されている。第1孔71aの開口の径は、大径部432b,442と略同一である。また、第2孔72aの開口の径は、大径部432b,442よりも小さい。 【0052】 プローブホルダ4aでは、金属プレート40に対して第1絶縁プレート50a、第2絶縁プレート60aおよび絶縁ブロック70aが取り付けられた際に、ホルダ孔43,44、第1孔51a、第1孔61a、第1孔71aの互いの軸線が一致する。また、このとき、ホルダ孔43,44、第2孔52a、第2孔62a、第2孔72aにおいても、互いの軸線が一致している。 【0053】 このように、使用する半導体集積回路の電極パターンに応じて孔が形成された第1絶縁プレート50a、第2絶縁プレート60aおよび絶縁ブロック70aに交換することによって、プローブの配置を変更することができる。また、金属ブロック40は、使用する半導体集積回路ごとに新たに用意する必要がないため、新たな金属ブロックの製造にかかるコストの削減や、新たな金属ブロックを作製する際の加工処理の手間などを省くことができる。 【0054】 ここで、樹脂、マシナブルセラミック、シリコンなどの絶縁性材料を用いて形成される絶縁プレートおよび絶縁ブロックは、金属ブロック40を作製する場合と比して、成形処理や孔の形成処理が容易である。このような観点からも、使用する半導体集積回路の電極パターンに応じて絶縁プレートおよび絶縁ブロックを作製し、金属ブロックに取り付けることが好ましい。 【0055】 また、配置され得る電極位置全てに孔が形成された金属ブロック40に対し、第1絶縁プレート50、第2絶縁プレート60および絶縁ブロック70や、第1絶縁プレート50a、第2絶縁プレート60aおよび絶縁ブロック70aでは、電極配置に応じてプローブ(グランド用プローブ2および信号用プローブ3)を挿通する孔が形成される。このため、絶縁プレートおよび絶縁ブロック、例えば、第1絶縁プレート50、第2絶縁プレート60および絶縁ブロック70が金属ブロック40に取り付けられた際、電極配置に対応しないホルダ孔43は、第1絶縁プレート50と絶縁ブロック70とによって封鎖される。同様に、電極配置に対応しないホルダ孔44は、第2絶縁プレート60と絶縁ブロック70とによって封鎖される。これにより、金属ブロック40のホルダ孔43,44へのプローブの誤配置を防止することができる。 【0056】 上述した実施の形態1によれば、配置され得る電極位置全てにプローブ(グランド用プローブ2および信号用プローブ3)を挿通可能な孔が形成された金属ブロック40に対し、プローブを挿通可能な孔が電極配置に応じて形成された第1絶縁プレート50、第2絶縁プレート60および絶縁ブロック70(第1絶縁プレート50a、第2絶縁プレート60aおよび絶縁ブロック70a)を使用する半導体集積回路100に応じて交換するようにしたので、プローブの配置の変更が可能であるとともに、プローブを適切に配置することができる。」 「【図2】 ![]() 」 「【図4】 ![]() 」 上記記載内容及び図示内容を総合すれば、引用文献2には以下の技術事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 [引用文献2記載事項] 「今回使用する半導体集積回路の電極配置が前回使用した半導体集積回路の電極配置と異なる場合、第1絶縁プレート50、第2絶縁プレート60および絶縁ブロック70を交換することにより対応するプローブユニット1aのプローブホルダ4aにおいて、(【0047】?【0048】、【図4】) プローブホルダ4aが、金属ブロック40と、第1部材41の上面に配置される略板状の第1絶縁プレート50aと、第2部材42の下面に配置される略板状の第2絶縁プレート60aと、第1部材41の下面側で収容されて配置される絶縁ブロック70aと、を有しており、 (【0048】、【図4】) 第1絶縁プレート50aには、グランド用プローブ2の先端部21aを挿通可能な第1孔51aと、信号用プローブ3の先端部31aを挿通可能な第2孔52aと、が形成されており、(【0049】、【図4】) 第2絶縁プレート60aには、グランド用プローブ2の先端部22aを挿通可能な第1孔61aと、信号用プローブ3の先端部32aを挿通可能な第2孔62aと、が形成されており、(【0050】、【図4】) 絶縁ブロック70aには、グランド用プローブ2のコイルばね23を挿通可能な第1孔71aと、信号用プローブ3のコイルばね33を挿通可能な第2孔72aと、が形成されており、(【0051】、【図4】) 金属プレート40に対して第1絶縁プレート50a、第2絶縁プレート60aおよび絶縁ブロック70aが取り付けられた際に、ホルダ孔43,44、第1孔51a、第1孔61a、第1孔71aの互いの軸線が一致し、このとき、ホルダ孔43,44、第2孔52a、第2孔62a、第2孔72aにおいても、互いの軸線が一致しており、(【0052】、【図4】) 配置され得る電極位置全てに孔が形成された金属ブロック40に対し、第1絶縁プレート50、第2絶縁プレート60および絶縁ブロック70や、第1絶縁プレート50a、第2絶縁プレート60aおよび絶縁ブロック70aでは、電極配置に応じてプローブ(グランド用プローブ2および信号用プローブ3)を挿通する孔が形成され、絶縁プレートおよび絶縁ブロックが金属ブロック40に取り付けられた際、電極配置に対応しないホルダ孔43は、第1絶縁プレート50と絶縁ブロック70とによって封鎖され、電極配置に対応しないホルダ孔44は、第2絶縁プレート60と絶縁ブロック70とによって封鎖され、これにより、金属ブロック40のホルダ孔43,44へのプローブの誤配置を防止することができるようにした、 (【0055】、【図2】、【図4】) プローブホルダ4a。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明を対比する。 なお、対比の見出しは(a)、(c)、(d)、(g)とし、本件補正発明の構成の分説に対応させている。 (a)本件補正発明の「ソケット」に関し、本願の明細書の段落【0015】及び【0016】には、以下の記載がある。下線は当審が付与した。 「【0015】 図2は、実施の形態1に係る検査治具の斜視図である。中板12は複数のソケット16を備える。各々のソケット16には、中板12の上面に正方形の穴17が形成されている。穴17は、中板12を貫通している。また、全てのソケット16は同じ形状である。複数のソケット16は格子状に配置されている。ソケット16の配置は、これ以外でも良く、例えば千鳥配置でも良い。また、穴17の形状は正方形以外でも良く、例えば長方形または円形でも良い。また、中板12が備えるソケット16の数は任意で良く、検査対象に合わせて決める。 【0016】 複数のソケット16の一部には、取付け部42が取り付けられる。取付け部42は直方体である。また、取付け部42の上面および底面は正方形である。取付け部42は穴17に収まる形状である。取付け部42は、矢印80に示すように下方に向かって穴17に挿入されることで、ソケット16に取り付けられる。取付け部42の形状は、ソケット16に取り付けが可能であれば直方体以外でも良い。」 上記記載から、本件補正発明の「ソケット」は、中板12を貫通する穴17が形成された部分であって、取付け部42が取り付けられる部分を指すものと解することができる。 そうすると、引用発明の「挿入部17」は、本件補正発明の「ソケット」に相当し、この「挿入部17」は「一定の格子間隔で2次元的に配列され」ているから、引用発明の「一定の格子間隔で2次元的に配列された挿入部17」は、本件補正発明の「複数のソケット」に相当する。 したがって、引用発明の「一定の格子間隔で2次元的に配列された挿入部17を有」する「メッシュボード14」は、本件補正発明の「複数のソケットを備えた中板」に相当する。 (c)引用発明の「プラグ15」は、「挿入部17」に「自由に挿入できるようになって」いるから、本件補正発明の「ソケットに取り付けられた取付け部」に相当する。 (d)引用発明の「コンタクトピン18」は、「プラグ15」に「結合」されており、本件補正発明の「前記取付け部に固定されたプローブ」に相当する。 (g)引用発明の「電子部品を実装したプリント基板の検査装置に用いるピンボード10」は、本件補正発明の「検査治具」に相当する。 上記対比により、本件補正発明と引用発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 [一致点] 「複数のソケットを備えた中板と、 ソケットに取り付けられた取付け部と、 前記取付け部に固定されたプローブと、 を備える、 検査治具。」 [相違点] 本件補正発明では、「前記複数のソケットの一部を遮蔽するガイド板」を備えており(構成B)、「取付け部」が「取り付けられ」た「ソケット」は、「前記ガイド板が遮蔽しないソケット」であり(構成C)、「前記ガイド板には前記ソケットと重なる位置に、前記ガイド板を貫通する開口が形成され」(構成E)、「前記開口は、前記開口を通って前記取付け部を前記ソケットに取り付け可能なように形成されている」(構成F)のに対して、引用発明では、そのような構成を備えていない点。 (4)判断 ア 上記引用文献2記載事項には、「配置され得る電極位置全てに孔が形成された金属ブロック40に対し、第1絶縁プレート50、第2絶縁プレート60および絶縁ブロック70や、第1絶縁プレート50a、第2絶縁プレート60aおよび絶縁ブロック70aでは、電極配置に応じてプローブ(グランド用プローブ2および信号用プローブ3)を挿通する孔が形成され、絶縁プレートおよび絶縁ブロックが金属ブロック40に取り付けられた際、電極配置に対応しないホルダ孔43は、第1絶縁プレート50と絶縁ブロック70とによって封鎖され、電極配置に対応しないホルダ孔44は、第2絶縁プレート60と絶縁ブロック70とによって封鎖され、これにより、金属ブロック40のホルダ孔43,44へのプローブの誤配置を防止することができるようにした、プローブホルダ4a」が開示されている。 イ 上記(3)の(a)において検討したとおり、本件補正発明の「ソケット」は、中板12を貫通する穴17が形成された部分であって、取付け部42が取り付けられる部分を指すものと解することができるから、上記引用文献2記載事項において、「金属ブロック40」にある「配置され得る電極位置全てに」「形成された」「孔」は、本件補正発明の「ソケット」に対応するものであり、「絶縁ブロック70」や「絶縁ブロック70a」は、「金属ブロック40」の「孔」のうち、「電極配置に対応しないホルダ孔」を「封鎖」するものであるから、このような絶縁ブロックは、本件補正発明の「前記複数のソケットの一部を遮蔽するガイド板」に対応するものである。 ウ また、上記絶縁ブロックに形成された「孔」は、本件補正発明の「ソケットと重なる位置に」、「ガイド板」に「形成」された「ガイド板を貫通する開口」に対応し、この絶縁ブロックの「孔」は「プローブ(グランド用プローブ2および信号用プローブ3)を挿通する」ものであるから、このような「孔」を絶縁ブロックに形成することは、本件補正発明の「前記開口は、前記開口を通って前記取付け部を前記ソケットに取り付け可能なように形成されている」ことに対応する。 エ ここで、引用発明及び引用文献2記載事項は、いずれも検査用プローブの支持手段である点で共通しているから、引用発明において、引用文献2記載事項において開示された、電極配置に対応しないホルダ孔を封鎖する技術を採用することにより、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは当業者ならば容易に想到し得たことである。 (5)請求人の主張について 審判請求書において、請求人は、 「 ここで、引用文献2の図2等に開示される第1絶縁プレート50および第2絶縁プレート60は、請求項1および段落0040に記載されている通り、コンタクトプローブを抜止するものです。このため、引用文献2の図2および段落0035-0036に示されるように、第1絶縁プレート50の第2孔52の開口の径は、フランジ部31cの径より小さく形成され、第2絶縁プレート60の第2孔62の開口の径はフランジ部32bの径より小さく形成されます。このため、引用文献2では、第1絶縁プレート50および第2絶縁プレート60が取り付けられた状態で、プローブユニットにコンタクトプローブを取り付けることはできません。 また、引用文献2の請求項1、段落0039および図2には、導電ブロック40がコンタクトプローブを抜止することが開示されています。絶縁ブロック70は、図2、段落0032に示されるように、導電ブロック40の内部に収容されているため、絶縁ブロック70が取り付けられた状態で、プローブユニットにコンタクトプローブを取り付けることはできません。 このように、引用文献1、2には、ガイド板の開口は、開口を通って取付け部をソケットに取り付け可能なように形成されること及びその効果が開示も示唆もされていません。従って、請求項1に係る発明は、引用文献1、2から当業者が容易に想到し得たことではなく、進歩性の要件を満たしているものと考えます。」(第4頁第5?22行) と主張している(下線は当審が付与した。)。 しかしながら、上記引用文献2記載事項において、絶縁ブロックの孔にプローブが挿通されるのは、第1絶縁プレート50および第2絶縁プレート60が取り付けられる前の時点であって、かつ、金属ブロック40を構成する第1部材41と第2部材42を積層する前の時点であるから、その時点において、絶縁ブロックは、金属ブロック40の孔のうち、電極配置に対応しないホルダ孔を封鎖しており、このような絶縁ブロックをガイドとしてプローブを取り付けることは可能である。 また、本件補正発明の奏する効果についても、引用発明及び引用文献2記載事項から当業者が予測可能な範囲内のものにすぎず、格別顕著なものであるということはできない。 したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。 3 小括 以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記第2において述べたとおり却下されたので、本願の請求項1?8に係る発明は、令和元年9月30日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次に特定されるとおりである。 「【請求項1】 複数のソケットを備えた中板と、 前記複数のソケットの一部を遮蔽するガイド板と、 前記ガイド板が遮蔽しないソケットに取り付けられた取付け部と、 前記取付け部に固定されたプローブと、 を備えることを特徴とする検査治具。」 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、 本願発明は、下記の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:実願昭59-69096号のマイクロフィルム(再掲) (実開昭60-181674号) 引用文献2:特開2016-70863号公報(再掲) というものである。 3 引用文献に記載された事項 上記引用文献1には、上記「[引用発明]」において認定したとおりの「引用発明」が記載されていると認められ、上記引用文献2には、上記「[引用文献2記載事項]」において認定したとおりの技術事項が記載されていると認められる。 4 対比・判断 本願発明は、本件補正発明の構成E及びFを省いたものであり、その他の構成は、本件補正発明の構成と同じである。 そうすると、本願発明の構成を全て含み、さらに他の構成E及びFを付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の3に示したとおり、引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-10-26 |
結審通知日 | 2020-10-27 |
審決日 | 2020-11-09 |
出願番号 | 特願2016-136715(P2016-136715) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01R)
P 1 8・ 575- Z (G01R) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 青木 洋平 |
特許庁審判長 |
中塚 直樹 |
特許庁審判官 |
濱本 禎広 濱野 隆 |
発明の名称 | 検査治具 |
代理人 | 久野 淑己 |
代理人 | 高田 守 |
代理人 | 高橋 英樹 |